(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筆記部を前方へ突出した軸筒と、該軸筒に枢支されるとともにその枢支部を中心にした円弧運動により前記筆記部を覆ったり開放したりするキャップとを備えたマーキングペンにおいて、
前記軸筒は、前記筆記部を前方へ突出させた本体部と、該本体部よりも細身に形成されるとともに該本体部から前方へ突出して前記筆記部の外周を筒状に保持する筒状保持部とを具備し、
前記キャップは、前記本体部に枢支される外筒と、該外筒の内側に設けられる内筒とを備え、一方向への円弧運動により前記内筒を前記筒状保持部に対し前方側から嵌め合せるとともに前記外筒を前記本体部に当接させ、逆方向への円弧運動により前記本体部及び前記筒状保持部から離脱するように構成され、
前記外筒と前記本体部との当接面は、前記筒状保持部の中心軸に直交し且つ前記枢支部の回転中心部を通る仮想平面に対し、前記枢支部から離れるにつれて軸筒後方へ向かうように傾斜するとともに、前記筒状保持部と交差する傾斜面状に形成されていることを特徴とするマーキングペン。
前記本体部は、前記筒状保持部の軸心方向に対し直交する一方向の寸法が、該一方向に直交し且つ前記軸心方向に対しても直交する他方向の寸法よりも小さい扁平状に形成され、前記一方向である厚み方向における一方側の面に接続部を有するとともに、その他方側の面には、前記接続部に対し着脱可能な被接続部を有することを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載のマーキングペン。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態の第一の特徴は、筆記部を前方へ突出した軸筒と、該軸筒に枢支されるとともにその枢支部を中心にした円弧運動により前記筆記部を覆ったり開放したりするキャップとを備えたマーキングペンにおいて、前記軸筒は、前記筆記部を前方へ突出させた本体部と、該本体部よりも細身に形成されるとともに該本体部から前方へ突出して前記筆記部の外周を筒状に保持する筒状保持部とを具備し、前記キャップは、前記本体部に枢支される外筒と、該外筒の内側に設けられる内筒とを備え、一方向への円弧運動により前記内筒を前記筒状保持部に対し前方側から嵌め合せるとともに前記外筒を前記本体部に当接させ、逆方向への円弧運動により前記本体部及び前記筒状保持部から離脱するように構成され、前記内筒と前記筒状保持部とが嵌り合う軸筒軸方向の位置を、前記枢支部の位置に対応させるとともに、前記外筒と前記本体部とが当接し合う軸筒軸方向の位置を、前記枢支部の位置よりも後方側に配置した(
図1〜
図3参照)。
これらの構成によれば、キャップを閉鎖方向へ円弧運動させると、該キャップの内筒が筒状保持部に嵌り合うとともに、その嵌合位置よりも軸筒軸方向の後方側でキャップの外筒が本体部に当接し、その閉鎖動作性が良好である。そして、この閉鎖状態では、内筒と筒状保持部とが枢支部と同じ軸方向位置で嵌合し、その嵌合箇所を外筒により覆うことができる。
また、キャップを開放方向へ円弧運動させると、該キャップの内筒が筒状保持部から離れるとともに、外筒が本体部から離れ、その開放動作性が良好である。
そして、キャップを軸筒から離した状態では、本体部におけるキャップとの当接面が、枢支部の位置よりも後方側に位置し、この当接面よりも前方へ細身の筒状保持部が突出して、該筒状保持部が筆記部を保持するため、前記当接面と被筆記面との距離を比較的大きく確保でき、筆記時における良好な使用感を得ることができる(
図6参照)。
【0010】
第二の特徴は、前記外筒と前記本体部との当接面が、前記枢支部から離れるにつれて軸筒後方へ向かう傾斜面状であって、且つ前記筒状保持部と交差する傾斜面状に形成されている(
図2参照)。
この構成によれば、筆記姿勢の際に、本体部における傾斜面状の前記当接面が、被筆記面に近接し難い位置関係となり(
図6参照)、筆記時における良好な使用感を得ることができる。
【0011】
第三の特徴は、前記筒状保持部及び前記筆記部を、前記本体部の中心軸よりも枢支部から離して配置した。
この構成によれば、キャップの回動半径が比較的大きくなり、より良好な嵌脱性を得ることができる上、軸筒を開放状態のキャップと逆側の部分を手前側に向けるようにして筆記姿勢をとった場合(
図6参照)に、筒状保持部及び筆記部が手前側で被筆記面に近づくため、筆記部及び筆記線の視認性が向上し、筆記時における使用感をいっそう向上することができる。
【0012】
第四の特徴は、開放した際の前記キャップが、前記本体部における枢支部寄りの部分に嵌り合って係止されるようにした。
この構成によれば、開放した際のキャップを、筆記時に邪魔にならないように係止できる上、その係止構造を、本体部における枢支部寄りの部分に容易に確保することができる。
【0013】
第五の特徴は、前記本体部は、前記筒状保持部の軸心方向に対し直交する一方向の寸法が、該一方向に直交し且つ前記軸心方向に対しても直交する他方向の寸法よりも小さい扁平状に形成され、その厚み方向の一方側の面に接続部を有するとともに、その他方側の面には、前記接続部に対し着脱可能な被接続部を有する。
この構成によれば、複数の当該マーキングペンを省スペースに接続することができ、ひいては、当該マーキングペンの収納性や搬送性等を向上することが可能になる。
【0014】
また、本実施の形態の更なる特徴としては、前記本体部における前記他方向の一端面に前記枢支部を設けるとともに、前記他方向の他端面には凸曲面状の曲面部を設ける。
この構成によれば、本体部における枢支部と反対側の部分を人差し指と親指の間に挟むとともに、曲面部を中指で受けて筆記姿勢を取った際に、良好な把持感触を得ることができ(
図6参照)、ひいては当該マーキングペンの使用感を一層向上することができる。
【0015】
また、本実施の形態の更なる特徴としては、キャップにより気密性を向上するために、前記内筒及び前記筒状保持部は円筒状に形成され、前記内筒は前記筒状保持部の外周部に全周にわたって嵌り合う。
【0016】
また、本実施の形態の更なる特徴としては、より収納性及び搬送性等を向上するために、閉鎖状態の前記キャップ及び前記軸筒の外観形状を、扁平な略直方体状に形成する。
【0017】
また、本実施の形態の更なる特徴としては、前記キャップを全開した状態の保持を良好にするために、前記キャップにおける枢支部側に、前記キャップを全開した際に前記本体部に嵌り合うように突片部を設けるとともに、前記本体部には前記突片部を嵌脱する嵌合凹部を設け、前記突片部には、前記嵌合凹部に嵌り合った際に、該嵌合凹部の平坦状の内側面に押圧される小突起を有する。
【0018】
なお、本明細書中、軸筒軸方向とは、軸筒の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、軸筒軸方向の一方側であって筆記部の先端方向を意味する。また、「後」とは、軸筒軸方向の前記一方側に対する逆方向側を意味する。また、「軸筒径方向」とは、軸筒軸方向に対し直交する方向を意味する。また、「軸筒径外方向」又は「軸筒遠心方向」とは、軸筒径方向に沿って軸筒中心から離れる方向を意味する。「軸筒径内方向」又は「軸筒求心方向」とは、軸筒径方向に沿って軸筒中心へ近づく方向を意味する。
【0019】
次に、上記形態の好ましい具体例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
このマーキングペン1は、繊維集束体からなる筆記部を前方へ突出した軸筒10と、該軸筒10に枢支されるとともにその枢支部12cを中心にした双方向への円弧運動により前記筆記部を覆ったり開放したりするキャップ20とを備え、キャップ20を閉鎖した状態で扁平な略直方体状であって且つ平面視矩形状に構成される(
図1〜
図3参照)。
【0021】
軸筒10には、筆記部11と、該筆記部11を前方へ突出させた本体部12と、該本体部12よりも細身に形成されるとともに該本体部12から前方へ突出して前記筆記部11の外周を筒状に保持する筒状保持部13と、本体部12内に設けられたインク含浸体14と、軸筒10の後端開口部を閉鎖する尾栓15とが具備される(
図3参照)。
【0022】
筆記部11は、多数の合成繊維を集束してなる繊維集束体であり、その後端部を本体部12内でインク含浸体14に圧入させるとともに、前端部を本体部12前端の筒状保持部13から前方へ突出しており、インク含浸体14に含浸されたインクを、多数の繊維間の毛細管力によって前方へ導く(
図3参照)。
この筆記部11の前端部は、図示例によれば、前方へ向かって厚みを徐々に狭くした楔状に形成され、その突端の傾斜する直線状部分11aが被筆記面Xに当接されるようにしている(
図6参照)。このような形状の筆記部11は、チゼルタイプと呼称される場合がある。
前記直線状部分11aは、軸筒径方向に対し傾斜し且つ軸筒11の扁平状の本体部12の平坦状部分12aに平行する直線状に形成される。この構成によれば、軸筒10が厚み方向に挟まれて把持され筆記が行われた際(
図6参照)に、最大限に太い線を転写することが可能である。
【0023】
本体部12は、筒状保持部13の軸心方向に対し直交する一方向(
図2の奥行方向)の寸法が、該一方向に直交し且つ前記軸心方向に対しても直交する他方向(
図2の左右方向)の寸法よりも小さい扁平状に形成される。
より詳細に説明すれば、この本体部12は、厚み方向(前記一方向)の両端面をそれぞれ平坦状部分12a(
図1参照)とし、その前端部に傾斜面部12b(
図2参照)を有し、傾斜面部12bの前寄りの部分に交差する端面に枢支部12c(
図2参照)を有し、前記交差する端面における後方側に全開状態のキャップ20に嵌り合う嵌合凹部12d(
図3参照)を有し、傾斜面部12bの後寄りの部分に交差する端面に断面半円状の曲面部12e(
図1参照)を有し、両平坦状部分12aの一方と他方に接続部12fと被接続部12g(
図7参照)を有し、内部にはインク含浸体14を収納するインク収容部12h(
図3参照)を有する。
【0024】
平坦状部分12aは、本体部12の厚み方向の一端側と他端側に略平行に配置された平坦状の面である。これら平坦状部分12aは、
図6に示すように、当該マーキングペン1が使用される際に、親指pと人差し指iによって挟まれる面である。
この平坦状部分12aには、前記厚み方向の一端側の壁部と、他端側の壁部に、後述する接続部12f及び被接続部12gを構成するための、貫通孔12a1,12a2(
図7参照)が設けられる。
【0025】
傾斜面部12bは、枢支部12cから軸筒径方向(
図2によれば左右方向)へ離れるにつれて軸筒後方へ向かう平坦な傾斜面状であって、且つ筒状保持部13と交差する傾斜面状に形成される。この傾斜面部12bを前方へ延長した仮想平面は、枢支部12cの略中心部を通過するようになっている。
そして、この傾斜面部12bは、閉鎖された際のキャップ20を受ける受面として作用する。
この傾斜面部12bの傾斜角度は、筆記部11前端の直線状部分11aの傾斜角度と略同等の角度、又は直線状部分11aよりも若干急こう配な角度に設定される。この角度設定によれば、
図6に示すように、筆記部11前端の直線状部分11aを被筆記面Xに当接させて筆記が行われた際に、キャップ20と逆側の手前となる部分と被筆記面Xとの間の距離hを比較的広く確保することができ、ひいては、本体部12の前端側が被筆記面Xに近接又は接触するのを防ぐとともに、筆記部11及び該筆記部11による筆記線の視認性を向上して、筆記時の使用感を良好にすることができる。
【0026】
枢支部12cは、本体部12の厚み方向に交差する方向であって軸筒軸方向でない方向(
図2の左右方向)の端面における前端寄りに設けられた円筒状の突起であり、その軸心方向を、本体部12の厚み方向へ向けている。この枢支部12cは、本体部12の厚み方向に間隔を置いて二つ設けられる。そして、これら二つの本体部12,12の間にキャップ20の軸部21cを枢支している(
図5参照)。
【0027】
嵌合凹部12dは、本体部12における枢支部12c寄りの部分に形成された凹部であり、軸筒軸方向へわたる溝状を呈し、その内部の対向する内側面12d1,12d1(
図4参照)を、略平行な平坦面状に形成している。
【0028】
曲面部12eは、本体部12の厚み方向に直交し且つ軸筒軸方向にも直交する方向(
図2の左右方向)において、嵌合凹部12dと逆側の端面に形成された断面半円状の凸曲面である(
図1及び
図4参照)。
この曲面部12eは、当該マーキングペン1が、
図6に示すように、厚み方向へ親指pと人差し指iに挟まれて把持された際に、中指mに接触する部分となり、このように3点支持された際の把持感触を良好にしている。
【0029】
接続部12fは、
図7に示すように、本体部12の一方の平坦状部分12aから突出する凸部であり、被接続部12gは、本体部12の他方の平坦状部分12aに形成された凹部である。
接続部12fの突端側の両側面(
図7によれば左右の端面)には、被接続部12gの係止用の小突起12f1,12f1が設けられる。各小突起12f1は、図示例によれば、軸筒軸方向へ連続するする縦リブ状の単一の突起としているが、他例としては、部分的な突起を軸筒軸方向へ間隔を置いて複数設けるようにしてもよい。
この接続部12fは、図示例によれば、本体部12と別体の部材を、本体部12の貫通孔12a1に嵌め合せることで構成されるが、本体部12と一体成形することも可能である。
【0030】
被接続部12gは、接続部12fに嵌脱可能な断面凹状に形成され、詳細に説明すれば、本体部12の貫通孔12a2の内縁と、その内部で前記内縁よりも幅広な内側面12g1とからなる断面略凹状(
図7参照)に形成される。
この被接続部12gは、図示例によれば、本体部12とは別体の部材を、本体部12に嵌合することで構成されるが、本体部12と一体成形することも可能である。
【0031】
インク収容部12hは、本体部12内において前端側を筒状保持部13に連通するとともに後端側を開放し、他の部分を壁面とした空間である。このインク収容部12hには、後方側からインク含浸体14が挿入され、その後、このインク収容部12hの後端開口部は、尾栓15によって閉鎖される。
インク含浸体14は、多数の合成繊維からなる中綿又はフェルトにインクを含浸させたものである。
【0032】
また、筒状保持部13は、本体部12前端の傾斜面部12bから軸筒軸方向に沿って前方へ突出するとともに、その内部を前記インク収容部12hに連通させた円筒状に形成されている。この筒状保持部13は、図示例によれば、本体部12と一体に成形されているが、本体部12とは別体の部材を本体部12に対し接続してなる構成とすることも可能である。
この筒状保持部13は、より詳細に説明すれば、その前端側に、後部側よりも一回りほど外径を小さくした円筒状の小径部13aを有する。この小径部13aは、キャップ20の内筒22が弾性的に嵌脱されるようにその外径が調整されている。
この筒状保持部13は、本体部12の中心軸よりも枢支部12cから遠い位置に設けられる。すなわち、この筒状保持部13の中心軸は、本体部12の中心軸に対し、反枢支部側へ適宜な幅wだけ離れて配置される(
図2参照)。前記幅は、後述するキャップ20の嵌脱性が良好なように適宜に調整された寸法である。
【0033】
また、筒状保持部13とキャップ20の内筒とが嵌り合う軸筒軸方向の位置は、枢支部12cの位置に対応している。
図示例について、より具体的に説明すれば、筒状保持部13の前端面(より詳細には小径部13aの前端面)の軸筒軸方向の位置(
図2の上下方向位置)と、枢支部12cの中心部の軸筒軸方向の位置とが略一致するように、筒状保持部13が配置されている。すなわち、筒状保持部13の前端面を延長した仮想平面上に、枢支部12cの中心部が位置する(
図2参照)。
この配置によれば、キャップ20の円弧運動、及び該円弧運動によるキャップ20の内筒22と筒状保持部13との嵌脱をスムーズに行うことができる。
【0034】
そして、上記構成の筒状保持部13には、筆記部11が挿通され、筒状保持部13は、筆記部11の外周部を筒状に覆って保持する。
【0035】
また、キャップ20は、本体部12に枢支される外筒21と、該外筒21の内面に対し間隔を置いて設けられる内筒22とを具備する一体形状に形成され、一方向(
図3によれば時計方向)への円弧運動により内筒22を筒状保持部13に対し前方側から嵌め合せるとともに外筒21を本体部12前端の傾斜面部12bに当接させ、逆方向への円弧運動により本体部12及び筒状保持部13から離脱する。
【0036】
外筒21は、キャップ20の閉鎖状態において、本体部12の外周面に対し前方へ連続するように設けられ、その前端側を底部とするとともに後端側を開口部とした有底筒状に形成される。
この外筒21は、厚み方向の両端各々に位置する平坦状部分21aと、後端側で本体部12前端の傾斜面部12bに対し当接する傾斜状開口端部21bと、平坦状部分12aの枢支部12cに嵌り合う軸部21cと、本体部12の嵌合凹部12dに嵌脱する突片部21dと、本体部12の曲面部12eに連続するように設けられた凸曲状の曲面部21eとを有する。
【0037】
平坦状部分21aは、本体部12の平坦状部分12aに連続するように設けられた平坦状の面である。この平坦状部分21aは、当該マーキングペン1が
図7に示すように厚み方向へ複数接続され重ね合わせられた際に、キャップ20同士を当接させて、その接続状態を安定させる。
【0038】
傾斜状開口端部21bは、枢支部12cから軸筒径方向へ離れるのにつれて軸筒後方へ向かう傾斜状の開口端面である。この傾斜状開口端部21bと本体部12の傾斜面部12bとの当接箇所は、キャップ20の内筒22と筒状保持部13との嵌合箇所よりも軸筒後方側に位置している。この配置によれば、筒状保持部13及び筆記部11がより前方側に位置するため、筆記時に筆記部11及び筆記線が視認し易い上、前記嵌合箇所の側方が外筒21によって覆われるため、インクの流出防止にもなる。
【0039】
軸部21cは、キャップ20の厚み方向に交差する方向であって軸筒軸方向でない方向(
図2の左右方向)の端面における後端寄りに設けられた軸状の突起であり、その軸心方向を、キャップ20の厚み方向へ向けている。
より詳細に説明すれば、この軸部21cは、その軸方向の両端に円柱状の突起21c1,21c1(
図5参照)を有する。これら両突起21c1,21c1は、キャップ20の全開状態(
図2に示す状態)において、本体部12側の枢支部12c,12c間を弾性的に押し拡げるようにしてこれら枢支部12c,12c間に挿入され(
図5参照)、回転自在に支持される。なお、
図5中の符号21c11は、枢支部12c,12c間への軸部21cの挿入を容易にする面取り部である。この面取り部21c11は、キャップ20の全開状態において、各突起21c1の軸筒10寄りの角部分に、C面取り状又はR面取り状に形成される。
【0040】
突片部21dは、閉鎖状態のキャップ20の前端側であって、且つ軸部21c寄りの角部分に設けられ、キャップ20における他の部分よりも薄肉な三角板状に形成されている。
この突片部21dの厚み方向の両端面には、本体部12の嵌合凹部12dに圧接するための突起21d1,21d1が設けられる。各突起21d1は、図示例によれば、凸曲面状に突出する突起であり、
図4に示すように、突片部21dが嵌合凹部12dに嵌り合った際に、嵌合凹部12dの内側面12d1に圧接され、その際の摩擦抵抗によってキャップ20の全開状態を保持する。
なお、この平坦状部分21aには、必要に応じて、ストラップ又はストラップを取り付けるための貫通孔を設けてもよい。
【0041】
また、内筒22は、外筒21内の底面から後方へ突出してその突端である開口端部を後方へ向けた有底略円筒状に形成される。この内筒22の開口端部は、外筒21の開口端部よりも前側に位置し、筒状保持部13の前端側の外周面に対し、その前方側から嵌り合う。この嵌合状態では、内筒22と筒状保持部13とは同軸状に位置するとともに全周にわたって密接し、その内部の空間を密閉する。そして、この密閉状態で、内筒22内には、筆記部11の前端側の部分が位置する(
図3参照)。
【0042】
次に、上記構成のマーキングペン1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
キャップ20を軸筒10から引き離すようにして円弧運動させると、キャップ20の内筒22前端が筒状保持部13から引き離される。この際、キャップ20の内筒22は、筆記部11等に干渉することなくスムーズに回動する。
そして、回動したキャップ20は、突片部21dを嵌合凹部12dに嵌め合せるとともに、該突片部21dの突起21d1を、嵌合凹部12d内の内側面12d1に圧接させることで、全開状態(
図2に示す状態)に保持される。
【0043】
全開状態のマーキングペン1は、
図6に示すように、曲面部12eを手前側に向けて、両平坦状部分12aが親指pと人差し指iに挟まれ、さらに、曲面部12eが中指mに受けられて、筆記姿勢がとられる。そして、この筆記姿勢にて、筆記部11前端の直線状部分11aが被筆記面Xに当接されて、筆記線(図示せず)が引かれる。
この際、キャップ20は軸筒10の前側(
図6によれば左側)に位置し、本体部12の手前側の部分と被筆記面Xとの間には適当な距離hが確保される。このため、筆記時にキャップ20が邪魔になったり、筆記部11や筆記線が見え難くなるようなことがなく、使用感が良好である。
【0044】
また、キャップ20を閉鎖する際には、キャップ20を軸筒10に対し逆方向へ回動させれば、キャップ20の突片部21dが本体部12の嵌合凹部12dから外れる。そして、前記逆方向へ回動したキャップ20は、内筒22を筒状保持部13に嵌め合せるとともに、その嵌合位置よりも軸筒後方側で外筒21を傾斜面部12bに当接させて閉鎖状態となる。
この閉鎖状態では、内筒22の後端側の内周面は、筒状保持部13の前端側の外周面に嵌合し、その内部を良好な密閉状態に維持する。
【0045】
キャップ閉鎖状態のマーキングペン1は、複数厚み方向へ積み重ねるようにして接続することが可能である。
図7を参照して説明すれば、下側のマーキングペン1における被接続部12gに対し、上側のマーキングペン1における接続部12fが凹凸状に嵌り合う。より詳細には、接続部12fが本体部12の貫通孔12a2に挿通される際に、接続部12fの小突起12f1が、貫通孔12a2の内縁に圧接され若干弾性変形して該内縁よりも本体部12内側へ移動し、その後に弾性的に復元する。したがって、接続部12fが被接続部12gに嵌り合った状態では、接続部12fの小突起12f1が前記貫通孔12a2の内縁に係止されて不用意には抜けないようになる。
よって、厚み方向へ多数接続されたマーキングペン1を、平坦面上に載置することができ、収納性及び運搬性等が良好である。
【0046】
なお、本体部12、接続部12f、キャップ20及び尾栓15は、それぞれ合成樹脂材料により成形されるが、キャップ20の着脱や二つのマーキングペン1,1同士の連結及び離脱を可能にする程度の弾性を有すれば、金属材料等、他の材料から形成することも可能である。
【0047】
また、図示例では、外筒21と本体部12とが当接し合う軸筒軸方向の位置を、枢支部12cの位置よりも後方側に配置するために、外筒21後端部及び本体部12前端部を傾斜面状に形成したが、他例としては、外筒21後端部及び本体部12前端部を、枢支部12cから離れるにつれて階段状に後退する形状とすることも可能である。
【0048】
また、図示例では、特に好ましい態様として、軸筒10及びキャップ20を、軸筒軸方向に略直交する幅方向へ長尺な断面形状(扁平状)としたが、他例としては、これら軸筒10及びキャップ20を、断面円形状や、断面多角形状、その他の断面形状とすることも可能である。
【0049】
また、図示例では、複数のマーキングペン1を接続するための接続部12f及び被接続部12gを、本体部12における厚み方向の両端面に設けたが、他例としては、接続部12f及び被接続部12gをキャップ20における厚み方向の両端面に設けることも可能である。
更に、他例としては、接続部12f及び被接続部12gを本体部12又はキャップ20における横幅方向(
図2によれば左右方向)の両端面に設けて、複数のマーキングペン1が横幅方向へ接続されるようにしたり、被接続部12gと本体部12を、それぞれキャップ20の前端面と本体部12の後端面に設け、複数のマーキングペン1が軸筒軸方向へ接続されるようにしたり等することも可能である。
【0050】
また、図示例によれば、マーキングペン1は、中綿式のマーキングペンを構成したが、他例としては、中綿やフェルト等を用いずに軸筒10内に直接インクを充填した直液式のマーキングペンを構成することも可能である。
【0051】
また、図示例によれば、本体部12側の二つの枢支部12c,12c間にキャップ20側の単一の軸部21cを支持する構造としたが、他例としては、二つの枢支部12c,12cをキャップ20側に設けるとともに単一の軸部21cを本体部12側に設けた態様や、単一の枢支部(図示せず)と単一の軸部(図示せず)とを回転自在に嵌め合せた態様等とすることも可能である。