特許第6103885号(P6103885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103885
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】キャップ付き筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/02 20060101AFI20170316BHJP
   B43K 23/08 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B43K8/02 140
   B43K23/08 100
   B43K23/08 110
   B43K23/08 120
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-241323(P2012-241323)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-91227(P2014-91227A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 敬吾
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0003051(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0112083(US,A1)
【文献】 米国特許第01615506(US,A)
【文献】 独国実用新案第20101197(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 8/02
B43K 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、該軸筒から突出した筆記部と、該筆記部に被せられたキャップ部と、該キャップ部を前端側に接続したアーム部と、付勢部材とを備え、
前記軸筒は、筆記部軸方向に対し直交する一方向の寸法が、該一方向に直交し且つ筆記部軸方向に対しても直交する他方向の寸法よりも小さい扁平状に形成され、
前記軸筒には、前記アーム部を支持する支持軸が設けられ、
前記キャップ部は、前記軸筒に相対し筆記部軸方向に沿って後退することにより前記筆記部に被さり逆方向へ前進することにより前記筆記部から離隔するように設けられ、
前記アーム部は、前記キャップ部が前記筆記部から離隔した状態で前記一方向へ回動するように前記支持軸に対し回転可能且つ進退可能に嵌り合う支持孔と、筆記部軸方向に沿って延設されて前記支持軸を内在する中空部分とを有し、
前記付勢部材は、前記中空部分の内側にて、一端側が前記支持軸に止着されるとともに、他端側が前記アーム部における前記支持孔よりも前記キャップ部側に止着され、これら二つの止着箇所を引き合う引張バネであることを特徴とするキャップ付き筆記具。
【請求項2】
前記アーム部は、前記軸筒を間に置くようにして一対に設けられ、
前記キャップ部は、前記一対のアーム部の前端側に接続され、
前記軸筒には、前記一対のアーム部の一方に対応する前記支持軸と、前記一対のアーム部の他方に対応する他の支持軸とが設けられ、
前記一対のアーム部の一方には、前記付勢部材が設けられ、
前記一対のアーム部の他方には、前記キャップ部が前記筆記部から離隔した際に前記キャップ部及び該アーム部を回動させるように、他の付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のキャップ付き筆記具。
【請求項3】
前記他の付勢部材は、一端側を前記軸筒に係合するとともに他端側を前記他方のアーム部に係合して、前記他の支持軸の周りに設けられたねじりコイルバネであることを特徴とする請求項2記載のキャップ付き筆記具。
【請求項4】
前記他方のアーム部に設けられて前記他の支持軸に嵌り合う支持孔は、筆記部軸方向へわたって略同幅の案内部と、該案内部よりも反キャップ部側で筆記部軸方向に交差する方向へ幅を広げた懐部とを有することを特徴とする請求項2又は3記載のキャップ付き筆記具。
【請求項5】
前記他の支持軸の先端側には、先端軸部が設けられ、
前記他方のアームには、前記先端軸部を回転自在且つ所定量進退自在に支持する補助案内溝が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4何れか1項記載のキャップ付き筆記具。
【請求項6】
前記軸筒は、前記一方向における一端側の面に接続部を有するとともに、同一方向における他端側の面には、前記接続部に着脱可能な被接続部を有することを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載のキャップ付き筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱されるキャップによって筆記部を覆ったり露出したりするようにしたキャップ付き筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術には、例えば特許文献1に記載のもののように、軸筒(ペン軸1)と、該軸筒の前端側に固定された筆記部(ペン先3)と、該筆記部を切欠状の保持部(11)によって部分的に覆う封緘具(9)と、該封緘具(9)を一端側に有するとともに他端側が前記軸筒に枢支された枠杆(4)とを備え、筆記部(ペン先3)から封緘具(9)を外す際には、該筆記部(ペン先3)に対し封緘具(9)の切欠状の保持部(11)を交差方向へ通過させるようにして、封緘具(9)を回動させるようにしたボールペンがある。
また、他の従来技術としては、例えば特許文献2に記載のもののように、軸筒(外側バレル12)と、該軸筒の前端側に突出可能に没入された筆記部(ペン先16)と、前記軸筒の前端開口を塞ぐキャップ(20)と、該キャップを一端側に有するとともに他端側が前記軸筒に枢支されたアーム(18)と、該アーム(18)の回転運動を筆記部(ペン先16)の直線運動に変換するギヤ歯(32)及びスリーブギヤ歯(28)とを備え、キャップ(20)の開放動作に伴うアーム(18)の回動に連動して、筆記部(ペン先16)を軸筒前端から突出させ、同アーム(18)の逆方向の回動に連動して筆記部(ペン先16)を軸筒前端に没入させるようにした「ペン先が引き込み自在式の筆記具」が知られている。
これら従来の筆記具によれば、軸筒からキャップを完全に分離しないで用いられるため、キャップの紛失を防ぐことができる。
【0003】
しかしながら、前者の従来技術では、切欠状の前記保持部によってボールペンチップである筆記具を保護するものなので、前記保持部の側方側が外部に連通しており、筆記部を密閉することができない。このため、万が一筆記部からインク漏れを生じた場合には漏れたインクを外部へ流出させてしまうおそれがある。特に、前記筆記部をサインペンやマーカーペンのペン先として構成した場合には、該ペン先を密閉するのが困難であり、前記のようなインク流出に加えて、インクを揮発させてしまうおそれもある。
また、後者の従来技術では、筆記部が前後方向へ移動する構造であるため、筆記の際に、筆圧の変化によって筆記部が前後へがたつくおそれがある。その上、アームの回動に連動して筆記部を出没させるようにしているため、その機構が複雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−70082号公報
【特許文献2】特表2011−500371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、キャップの紛失を防ぐことができる上、筆記性能の低下を阻むことができ、且つ簡素な構造を有するキャップ付き筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための一手段は、軸筒と、該軸筒から突出した筆記部と、該筆記部に被せられたキャップ部と、該キャップ部を前端側に接続したアーム部と、付勢部材とを備え、前記軸筒は、筆記部軸方向に対し直交する一方向の寸法が、該一方向に直交し且つ筆記部軸方向に対しても直交する他方向の寸法よりも小さい扁平状に形成され、前記軸筒には、前記アーム部を支持する支持軸が設けられ、前記キャップ部は、前記軸筒に相対し筆記部軸方向に沿って後退することにより前記筆記部に被さり逆方向へ前進することにより前記筆記部から離隔するように設けられ、前記アーム部は、前記キャップ部が前記筆記部から離隔した状態で前記一方向へ回動するように前記支持軸に対し回転可能且つ進退可能に嵌り合う支持孔と、筆記部軸方向に沿って延設されて前記支持軸を内在する中空部分とを有し、前記付勢部材は、前記中空部分の内側にて、一端側が前記支持軸に止着されるとともに、他端側が前記アーム部における前記支持孔よりも前記キャップ部側に止着され、これら二つの止着箇所を引き合う引張バネであることを特徴とする。

【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されているので、キャップの紛失を防ぐことができる上、筆記性能の低下を阻むことができ、且つ簡素な構造を有するキャップ付き筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るキャップ付き筆記具の一例を示す斜視図。
図2】同キャップ付き筆記具の平面図。
図3】同キャップ付き筆記具を前方側から視た図。
図4図2の(IV)‐(IV)線に沿う断面図。
図5図1の(V)‐(V)線に沿う断面図。
図6】同キャップ付き筆記具の動作を示す断面図であり、(a)は筆記部にキャップ部を被せた状態、(b)はキャップ部から筆記部が引き離された状態を示す。
図7】同キャップ付き筆記具の動作を示す断面図であり、(c)はキャップ部に対し軸筒を回動させた状態、(d)は回動後の軸筒を後退させた状態を示す。
図8図2の(VIII)‐(VIII)線に沿う断面図であり、(a)は筆記部にキャップ部が被された状態、(b)はキャップ部から筆記部が引き離された状態、(c)はキャップ部に対し軸筒を90度回転させた状態、(d)はキャップ部に対し軸筒を180度回転させた状態、(e)180度回動した軸筒を後退させた状態を示す。
図9図2の(IX)‐(IX)線に沿う断面図であり、(a)は筆記部にキャップ部が被された状態、(b)は筆記部からキャップ部が引き離された状態、(c)はキャップ部に対し軸筒を90度回転させた状態、(d)はキャップ部に対し軸筒を180度回転させた状態、(e)は180度回動した軸筒を後退させた状態を示す。
図10】同キャップ付き筆記具を複数連結した状態を示す。
図11】本発明に係るキャップ付き筆記具について、一部断面で示す動作説明図であり、(a)は筆記部にキャップ部が被された状態、(b)は筆記部からキャップ部が引き離された状態、(c)は軸筒をキャップ部に対し180度回転させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態の第一の特徴は、軸筒と、該軸筒から突出した筆記部と、該筆記部に被せられたキャップ部と、該キャップ部を前端側に接続したアーム部とを備え、前記軸筒は、筆記部軸方向に対し直交する一方向の寸法が、該一方向に直交し且つ筆記部軸方向に対しても直交する他方向の寸法よりも小さい扁平状に形成され、前記キャップ部は、前記軸筒に相対し筆記部軸方向に沿って後退することにより前記筆記部に被さり逆方向へ前進することにより前記筆記部から離隔するように設けられ、前記アーム部は、前記キャップ部が前記筆記部から離隔した状態で、前記一方向へ回動するように、前記軸筒に枢支されている。
この構成によれば、キャップ部を筆記部軸方向へ進退させて筆記部に被せたり同筆記部から離隔したりすることができる上、キャップ部を筆記部から離隔した状態では、アーム部を回転させることにより、キャップ部及びアーム部が筆記の邪魔にならないように配置することができる。
また、キャップ部を筆記部軸方向へ進退させて着脱する構造であるため、キャップ部を筆記部周方向へ連続するように形成すれば、該キャップ部による密閉性を向上することが可能である。また、筆記部を軸筒に対し進退させる機構が不要である。
よって、キャップ部の紛失を防ぐことができる上、筆記性能の低下を阻むことができ、且つ簡素な構造とすることができる。
【0010】
第二の特徴としては、前記アーム部は、前記軸筒に対し筆記部軸方向へ進退可能に枢支され、この進退によって前記キャップ部を前記筆記部に被せたり前記筆記部から離隔したりする。
この構成によれば、アーム部を進退可能に枢支する構造によってキャップ部に対し軸筒を進退させることができ、その進退構造を、具体的な簡素構造とすることができる。
【0011】
第三の特徴としては、前記アーム部と前記軸筒とのうちの一方に、支持軸を設けるとともに、その他方には前記支持軸を回転可能且つ進退可能に支持する長尺状の支持孔を設けた。
この構成によれば、アーム部を回転可能かつ進退可能にする構造を、簡素な具体的構造とすることができる。
【0012】
第四の特徴としては、前記アーム部は、前記軸筒を間に置くようにして一対に設けられる。
この構成によれば、軸筒を間に挟むようにして配置される二つのアーム部により、該アーム部及びキャップ部に対する軸筒の移動を安定的かつスムーズに行うことができる。
【0013】
第五の特徴としては、前記キャップ部が前記筆記部から離隔した際に前記キャップ部及び前記アーム部を回動させるように、付勢部材を設けた。
この構成によれば、キャップ部から筆記部を離隔すれば、キャップ部及びアーム部に対し軸筒が付勢部材の付勢力によって回転するので、速やかに筆記姿勢をとることができる。
【0014】
第六の特徴としては、前記付勢部材は、一端側を前記軸筒に係合するとともに他端側を前記アーム部に係合して、前記アーム部の回転中心部の周りに設けられたねじりコイルバネである。
この構成によれば、キャップ部及びアーム部に対し軸筒を強制的に回転させるための、具体的構造を得ることができる。
【0015】
第七の特徴としては、前記アーム部を後退方向へ付勢する付勢部材を設けた。
この構成によれば、筆記部にキャップ部を被せる動作を付勢部材の付勢力により行うことができる上、筆記部にキャップ部が被せられた状態を付勢部材の付勢力により維持することができ、ひいては、キャップと軸筒との間に隙間が形成されて該隙間からインクが漏れるようなことを防ぐことができる。
【0016】
第八の特徴としては、前記一方向における一端側の面に接続部を有するとともに、同一方向における他端側の面には、前記接続部に着脱可能な被接続部を有する。
この構成によれば、複数のキャップ付き筆記具を省スペースに接続することができ、ひいては、当該キャップ付き筆記具の収納性や搬送性等を向上することが可能になる。
【0017】
また、より好ましい特徴としては、長尺状の前記支持孔の後端側において、該支持孔の幅を、その前側部分よりも、前記アーム部の進退方向に対する交差方向へ広くする。
この構成によれば、軸筒をアーム部に対し後退させると、支持軸が長尺状の支持孔における後側の幅広部分に嵌り合ったり擦れたりして前進し難くなる。よって、後退させた軸筒が不意に元の前進位置に戻ってしまうようなことを防ぐことができる。
【0018】
また、上記形態とは独立して作用効果を奏する他の好ましい形態では、軸筒と、該軸筒から突出した筆記部と、該筆記部に被せられたキャップ部と、該キャップ部を前端側に接続したアーム部とを備え、前記アーム部を、前記軸筒を間に置くようにして一対に設けるとともに、筆記部軸方向に対する交差方向へ回動するように、前記軸筒に枢支したキャップ付き筆記具において、
前記軸筒の一方の側部と他方の側部に、それぞれ、支持軸を突設するとともに、これら二つの支持軸のうち、その一方を他方に対し後方へずらして配置し、
前記一対のアーム部には、それぞれ、前記支持軸を回転可能に支持する支持孔を設けるとともに、これら二つの支持孔のうち、少なくとも後方へずらした前記一方の支持軸に対応する支持孔を、前後方向へ長尺状に形成し、
前記キャップ部及び前記アーム部に対し前記軸筒が略180度回転した際に、前記一方の支持軸が、対応する前記支持孔の長尺方向の端部に当接して、前記軸筒がキャップ部側へ移動しないようにした(図11参照)。
この構成によれば、前記キャップ部及び前記アーム部に対し軸筒が略180度回転した際に、その軸筒がキャップ部側へ移動しないため、速やかに筆記姿勢をとることができる。
【0019】
なお、本明細書中、「筆記部軸方向」とは、筆記部の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、キャップが軸筒から離れる方向側を意味する。また、「後」とは、キャップが軸筒に近づく方向側を意味する。また、「筆記部径方向」とは、筆記部軸方向に対し直交する方向を意味する。
【0020】
次に、上記形態の好ましい具体例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
<キャップ付き筆記具1について>
キャップ付き筆記具1は、図1図10に示すように、軸筒10と、該軸筒10に不動に設けられた筆記部20と、軸筒10内で筆記部20へインクを供給するインク含浸体30と、筆記部20に被せられたキャップ部40と、該キャップ部40を前端側に接続するとともにその後端側が軸筒10に支持された略U字状の一対のアーム部51,52と、キャップ部40が筆記部20から離隔した際にキャップ部40及びアーム部51,52に対し軸筒10を回動させる第一の付勢部材60と、アーム部51,52に対し軸筒10を近づける方向(図5によれば左方向)へ付勢する第二の付勢部材70とを具備している。
【0022】
軸筒10は、合成樹脂材料から一体に成形され、インク含浸体30を内在する本体部11と、該本体部11から前方へ突出して筆記部20を保持する筒状保持部12とを有する。
この軸筒10は、図示例によれば、厚み方向(図4における上下方向)へ分割された一半部10aと他半部10bとを凹凸嵌合することで構成される。
なお、軸筒10の他例としては、例えば、筆記部軸方向の前後に分割された複数の部材からなる態様等とすることも可能である。
【0023】
本体部11は、筆記部軸方向に対し直交する一方向(図4の上下方向)の寸法が、該一方向に直交し且つ筆記部軸方向に対しても直交する他方向(図5の上下方向)の寸法よりも小さい扁平中空状に形成され、その内部の空間にインク含浸体30を有する。この本体部11の平面視形状は、図示例によれば、略正方形状である(図2参照)。
この本体部11における前記他方向(図5の上下方向)の両端部には、後述するアーム部51,52を支持するための支持軸11a,11bが設けられる。
本体部11における前記一方向の両端部には、接続部11cと、該接続部11cに着脱可能な被接続部11dとが設けられる(図10参照)。
また、本体部11の内部には、インク含浸体30を挿入するための略円柱状のインク収容室11e(図5参照)が設けられ、このインク収容室11eの内壁面には、インク含浸体30を支持するための複数のリブ11e1が突設される。
【0024】
支持軸11aは、本体部11の前記他方向の一端部(図5によれば下端部)において、本体部11中心よりも前側(図5によれば左側)の部分から突出している。そして、この支持軸11aは、基端側に位置する基軸部11a1と、該基軸部11a1の先端側に接続されるとともに後述する第一の付勢部材60によって回転方向の一方へ付勢された被付勢軸部11a2と、該被付勢軸部11a2の先端側に接続されるとともに該被付勢軸部11a2よりも小径な先端軸部11a3とを有する略円柱状に構成される。
【0025】
基軸部11a1は、アーム部51の軸筒中心側の内壁(詳細には支持孔51a)に挿入され嵌り合い、アーム部51に対し回転自在且つ所定量進退自在に支持される。
被付勢軸部11a2は、その外周面に第一の付勢部材60を巻き付けるとともに該第一の付勢部材60の一端側を止着している。
先端軸部11a3は、アーム部51の外側の壁面(詳細には補助案内溝51b)に嵌り合って、軸筒10の回転時及び進退時のがたつきを防止する。
【0026】
また、アーム部52側の支持軸11bは、本体部11の前記他方向の一端部(図5によれば上端部)において、前記支持軸11aと略同軸となるように突出している。そして、このアーム部52は、基端側に位置する基軸部11b1と、該基軸部11b1の先端側に接続されるとともに後述する第二の付勢部材70によってキャップ部40方向へ付勢された被付勢軸部11b2とを有し、略円柱状に構成される。
【0027】
基軸部11b1は、アーム部52の軸筒中心側の内壁(詳細には支持孔52a)に挿入され嵌り合い、アーム部51に対し回転自在且つ所定量進退自在に支持される。
被付勢軸部11b2は、後述する第二の付勢部材70の一端側が止着される。
【0028】
接続部11c及び被接続部11dは、本体部11を平面視した際の四角側に配置される。接続部11cは、二つの半円状外面を有する突起である。また、被接続部11dは、接続部11cの外周面にならう形状の凹部であり、接続部11cに対し嵌脱可能となるように形成される(図10参照)。
【0029】
また、筒状保持部12は、本体部11前端から筆記部軸方向に沿って前方へ突出するとともに、その内部をインク収容室11eに連通させた円筒状に形成されている(図4及び図5参照)。この筒状保持部12は、図示例によれば、本体部11と一体に成形されているが、本体部11とは別体の部材を本体部11に対し接続した構成とすることも可能である。
この筒状保持部12の内周面には、筆記部20の外周面に当接して該筆記部20を保持する複数の縦リブ12aが、周方向に間隔を置いて設けられる。この縦リブ12a間の空間は、インク含浸体30のインクの吐出に伴って外気をインク収容室11a内へ導入する通気路として作用する。
【0030】
筆記部20は、多数の合成繊維を集束してなる軸状の繊維集束体であり、その後端部を本体部11内でインク含浸体30に圧入させるとともに、前端部を本体部11前端の筒状保持部12から前方へ突出しており、インク含浸体30に含浸されたインクを、多数の繊維間の毛細管力によって前方へ導く(図4及び図5参照)。
この筆記部20の前端部は、図示例によれば、前方へ向かって厚みを徐々に狭くした楔状に形成され、その突端の傾斜する直線状部分21が被筆記面(図示しない紙面等)に当接されるようにしている。このような形状の筆記部20は、チゼルタイプと呼称される場合がある。
前記直線状部分21は、軸筒径方向に対し傾斜し且つ扁平状の本体部11の厚み方向の両端面に平行する直線状に形成される。この構成によれば、軸筒10が厚み方向に挟まれて把持され筆記が行われた際に、最大限に太い線を筆記することが可能となる。
【0031】
また、インク含浸体30は、多数の合成繊維からなる略円柱状の中綿又はフェルトにインクを含浸させたものである。
【0032】
キャップ部40は、前端側を閉鎖した有底円筒状に形成され、アーム部51,52の前端に一体的に接続され、軸筒10に相対し筆記部軸方向に沿って後退することにより筆記部20に被さり、逆方向へ前進することにより筆記部20から離れるように設けられる。
このキャップ部40は、後端側の内縁を軸筒10の筒状保持部12前端外周面に全周にわたって嵌め合せ、内部を気密に保持する。
なお、図示例によれば、キャップ部40は、複数の部材から有底円筒状に形成されるが、他例としては、単一の部材から有底円筒状に形成した態様や、後述するアーム部51,52と一体の部材とした態様等とすることが可能である。
【0033】
また、一対のアーム部51,52は、合成樹脂材料等から一体略U字状に成形され、その前端側に、上記キャップ部40を嵌合固定している(図5参照)。
これらアーム部51,52の後端側は、キャップ部40が筆記部20から離隔した状態で、本体部11の厚み方向に直交する回転軸(詳細には支持軸11a,11b)を中心にして前記厚み方向へ回動するように、軸筒10の本体部11に対し進退自在であって且つ回転自在に枢支されている。
これらアーム部51,52の各々は、図示例によれば、軸筒10の厚み方向に並ぶ二つの部材を凹凸状に嵌合して中空状に構成される(図8及び図9参照)。
【0034】
一方のアーム部51は、中空の略横向きL字状に形成され、本体部11に対向する壁面に、軸筒軸方向へわたる長尺状の支持孔51aを有する。
【0035】
支持孔51aは、本体部11における支持軸11aを遊嵌可能な幅を有するとともに、キャップ部40を筆記部軸方向へ着脱可能な長さを有する長孔であり、支持軸11aの基軸部11a1を回転自在且つ所定量進退自在に支持する。
より詳細に説明すれば、支持孔51aは、図8(a)に示すように、筆記部軸方向へわたって略同幅の案内部51a1と、該案内部51a1よりも後側で筆記部軸方向に交差する方向(図8(a)によれば上方)へ幅を広げた懐部51a2とを有する。この構成によれば、アーム部51,52の後退により支持軸11aが相対的に後退した際に(図8(b)参照)、支持軸11aが、懐部51a2との嵌合や摩擦等により元の状態(図8(a)参照)に戻り難くなる。
なお、図示例によれば、懐部51a2は、筆記部軸方向に交差する方向の一方(図8(a)によれば上方)のみに幅を広げた形状としたが、この懐部51a2の他例としては、筆記部軸方向に交差する方向の両方向(図8(a)によれば上下)に幅を広げた形状とすることも可能である。
【0036】
また、同アーム部51における外壁の内側には、支持軸11aの先端軸部11a3を回転自在且つ所定量進退自在に支持する補助案内溝51bが設けられる(図5参照)。
【0037】
また、アーム部52は、前記アーム部51と対称の中空の略横向きL字状に形成され、本体部11に対向する壁面に、軸筒軸方向へわたる長尺状の支持孔52aを有する(図5参照)。
【0038】
この支持孔52aは、本体部11における支持軸11bの基軸部11b1を遊嵌可能な幅を有するとともに、キャップ部40を筆記部軸方向へ着脱可能な長さを有する長孔であり、支持軸11bの基軸部11b1を回転自在且つ所定量進退自在に支持する。
【0039】
また、第一の付勢部材60は、一端側を軸筒10側の支持軸11aに止着するとともに、他端側を一方のアーム部51に接触させて、回転中心部となる支持軸11aの被付勢軸部11a2に巻かれたねじりコイルバネであり、アーム部51を一方向へ回転させるように付勢している。
この第一の付勢部材60は、アーム部51,52が軸筒10に相対し進退する際には、前記他端側(図5によれば、第一の付勢部材60の左端部)をアーム部51の内壁面に摺接させる。
【0040】
また、第二の付勢部材70は、一端側を軸筒10側の支持軸11b(詳細には被付勢軸部11b2)に、該支持軸11bの回転を妨げないように止着するとともに、他端側を他方のアーム部52に止着した引張バネであり、筆記部20の前方にキャップ部40を配置した状態のアーム部52を、後退方向(図5によれば右方向)へ付勢する。
【0041】
次に、上記構成のキャップ付き筆記具1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
【0042】
筆記部収納状態(図6(a),図8(a)及び図9(a)参照)では、筆記部20にキャップ部40が覆い被せられ、キャップ部40の後端側の内周面が、軸筒10における筒状保持部12の前端側外周面に対し全周にわたって密接して嵌合し、この嵌合状態が第二の付勢部材70の引張力により保持される。
したがって、この状態では、万が一、筆記部20からインクの流出があったとしても、インクが外部へ流出するのを阻むことができる。
【0043】
前記状態において、軸筒10が手指等により筆記部軸方向に沿って引っ張られると、該軸筒10が第二の付勢部材70の引張力に抗して後方(図6によれば右方向)へスライドする。この際、軸筒10側の支持軸11a,11bは、アーム部51,52の支持孔51a,52aに沿って後方へ直進する。
そして、前記直進により、筆記部20がキャップ部40から離隔するとともに、軸筒10側の支持軸11a,11bが、それぞれ、アーム部51,52の支持孔51a,52aの後端内縁に当接する(図6(b),図8(b),図9(b)参照)。
この当接状態では、図8(b)に示すように、支持軸11aが、支持孔51aの懐部51a2内に位置するため、該懐部51a2との嵌合や摩擦等により、元の状態(図8(a)参照)に戻り難くなる。
【0044】
次に、軸筒10から手指等を離すと、軸筒10は、第一の付勢部材60の付勢力によって筆記部軸方向に交差する方向へ自動的に回転し、元の状態から180度回転した位置となる(図7(c),図8(c)(d),図9(c)(d)参照)。
そして、この回転後の位置で、軸筒10は、第二の付勢部材70に引っ張られて、キャップ部40及びアーム部51,52に対し近付き、支持軸11a,11bの外周面を、それぞれ支持孔51a,52aの後端内縁に当接させて静止する(図11(d),図8(e)及び図9(e)参照)。
【0045】
この状態で、本体部11が、親指と人差指によって厚み方向に挟まれるとともに、一方のアーム部51が中指によって下方から受けられるようにして把持され、筆記が行われる。この際、キャップ部40及びアーム部51,52は、軸筒10後部寄りに位置するため(図7(d)参照)、筆記の邪魔になることがない。
【0046】
また、筆記部20にキャップ部40を被せて嵌合する際には、上記と逆の動作を行えばよい。
【0047】
また、上記構成のキャップ付き筆記具1は、複数重ね合わせるようにして接続することが可能である。詳細に説明すれば、図10に示すように、下側のキャップ付き筆記具1に対し、上側のキャップ付き筆記具1を重ね合わせ押圧すれば、下側のキャップ付き筆記具1の被接続部11dに対し、上側のキャップ付き筆記具1の接続部11cが嵌り合い、上下のキャップ付き筆記具1,1が安定した接続状態となる。
よって、複数のキャップ付き筆記具1を省スペースに接続することができ、ひいては、当該キャップ付き筆記具1の収納性や搬送性等を向上することができる。
【0048】
<キャップ付き筆記具2について>
次に、本実施の形態の他の具体例について説明する。なお、以下に示すキャップ付き筆記具において、上述したキャップ付き筆記具1と略同構造の箇所については、同一の符号を付けることで重複する詳細説明を省略する。
【0049】
図11に示すキャップ付き筆記具2では、キャップ付き筆記具1の構成において、二つの支持軸11a,11bのうち、その一方(図11によれば支持軸11b)を他方よりも寸法wだけ後方側へずらして配置し、キャップ部40及びアーム部51,52が他方の支持軸11aを中心にして略180度回転した場合に、前記一方の支持軸11bが対応する支持孔52aの後端内縁52a1に当接して(図11(c)参照)、キャップ部40及びアーム部51,52が前進しないようにしている。
【0050】
このキャップ付き筆記具2において、支持軸11bに対応する支持孔52aは、キャップ部40が筆記部20から離隔した状態(図11(b)の状態)で、支持軸11aの中心線を境に左右の長さが略同一の長孔状に形成される。
【0051】
このキャップ付き筆記具2によれば、略180度回転した後の軸筒10がキャップ部40に近づく方向へ移動しないため、キャップ部40から軸筒10を外し回転させて筆記可能な状態にするまでの動作を短縮化することができ、ひいては、速やかに筆記姿勢をとることができる。
その上、図11(c)に示すように、筆記部20がアーム部51,52よりも前方へ突出する量を多く確保でき、ひいては、アーム部51,52が筆記面(例えば紙面等)に接触するのを防ぐこともできる。
【0052】
なお、図示例によれば、キャップ部40を進退可能且つ回動可能に支持する構造として、キャップ部40と一体のアーム部51,52を軸筒10に対し進退可能且つ回動可能に枢支したが、他例としては、アーム部を軸筒に対し回動可能に枢支するとともに、キャップ部をアーム部に対し進退可能に接続した態様とすることも可能である。
【0053】
また、図示例によれば、特に好ましい態様として一対のアーム部51,52によりキャップ部40を支持するようにしたが、他例としては、単一のアーム部によってキャップ部40を支持する構造とすることも可能である。
【0054】
また、図示例によれば、支持軸11bの先端側とアーム部52の外側の壁面とを係合させなかったが(図5参照)、支持軸11aとアーム部51の補助案内溝51bの関係と同様にして、支持軸11bの先端側をアーム部52の外側の壁面に係合させ、アーム部51の回転時及び進退時のがたつきを、より効果的に防止することも可能である。
逆に、支持軸11a,11bの基軸部11a1,11b1とアーム部51,52との係合のみで回転時及び進退時のがたつきを十分に防止できれば、前記先端軸部11a3及び補助案内溝51b等の構成を省くことも可能である。
【0055】
また、図示例によれば、第一の付勢部材60をねじりコイルバネにより構成したが、この第一の付勢部材60の他例としては、ゼンマイの一端を支持軸11aに止着するとともにその他端をアーム部51に止着した態様や、支持軸11a自体を弾性的にねじり回転可能なゴムやスプリング等により構成した態様等とすることも可能である。
【0056】
また、図示例によれば、第二の付勢部材70を引張コイルバネにより構成したが、この第二の付勢部材70の他例としては、圧縮コイルバネや、板バネ、ゴム等を用いた態様とすることも可能である。
【0057】
また、図示例のキャップ付き筆記具1,2は、ラインマーカーや、蛍光ペン、蛍光マーカー、ホワイトボードマーカー、フェルトペン、サインペン等を含むマーキングペンとして構成したが、他例としては、略同様の構造を用いて、ボールペンや修正ペン等を構成することも可能である。
【0058】
また、図示例のキャップ付き筆記具1,2に付加する構成として、軸筒10がキャップ部40から離隔して略180度回動した状態で、アーム部51,52を軸筒10に係脱可能に係止する係止手段を設けるようにしてもよい。この係止手段は、例えば、アーム部51,52と軸筒10とのうちの一方に、係止突起を設けるとともに、その他方に、前記回動によって乗り越え嵌合し逆方向への回動により外れる被係止突起を設ければよい。
【0059】
また、図示例によれば、軸筒10、キャップ部40及びアーム部51,52は、それぞれ合成樹脂材料により成形されるが、キャップ部40の着脱や二つのキャップ付き筆記具1,1(又は2,2)同士の連結及び離脱を可能にする程度の弾性を有すれば、金属材料等、他の材料から形成することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1,2:キャップ付き筆記具 10:軸筒
11:本体部 11a,11b:支持軸
11c:接続部 11d:被接続部
12:筒状保持部 20:筆記部
40:キャップ部 51,52:アーム部
51a,52a:支持孔 60:第一の付勢部材
70:第二の付勢部材
図1
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図11