特許第6103887号(P6103887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーチキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000002
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000003
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000004
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000005
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000006
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000007
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000008
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000009
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000010
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000011
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000012
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000013
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000014
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000015
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000016
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000017
  • 特許6103887-電力貯蔵システム 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103887
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】電力貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/00 20060101AFI20170316BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 10/39 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20170316BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   A62C3/00 D
   A62C3/16 C
   H01M10/42 P
   H01M10/48 301
   H01M10/39 Z
   H01M2/10 S
   H01M2/10 K
   G08B17/06 D
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-241682(P2012-241682)
(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-90782(P2014-90782A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】茨木 博
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−031206(JP,A)
【文献】 特開2009−142419(JP,A)
【文献】 特開2000−058111(JP,A)
【文献】 特開2011−062341(JP,A)
【文献】 特開2005−149977(JP,A)
【文献】 特開2008−226488(JP,A)
【文献】 特開2011−254906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/00−37/50
H01M 2/10,10/00−10/667
A62D 1/00,1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナトリウム・硫黄電池を容器に収納したモジュール電池を複数備え、電力を前記モジュール電池に蓄電して利用すると共に、前記ナトリウム・硫黄電池の火災を検出した場合に、消火用エアロゾルを前記容器内に噴出して消火する発煙消火装置を備えた電力貯蔵システムに於いて、
前記モジュール電池の容器は、断熱構造を備えた断熱箱と断熱蓋で構成され、
前記発煙消火装置は、装置本体と噴出管で構成され、
前記発煙消火装置の装置本体は、
前記断熱蓋の外側に固定され、前記噴出管の接続口を備えた筐体と、
前記筐体に収納され、燃焼により前記消火用エアロゾルを発生する固形消火剤と、
前記筐体から前記噴出管を通して引き込まれた信号線に接続して容器内に配置された温度検出素子により容器内温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部による検出温度が前記ナトリウム・硫黄電池の火災による所定温度以上の場合に、ヒータの通電加熱により前記固形消火剤に点火して燃焼させる点火回路部と、
前記点火回路部に電源を供給する電池電源と、
を備え、
前記発煙消火装置の噴出管は、一端が前記筐体の接続口に連結されると共に、他端が前記断熱蓋を貫通して容器内に導入されて噴出口が開口し、前記発生した消火用エアロゾルを前記容器内に噴出可能であることを特徴とする電力貯蔵システム。
【請求項2】
請求項1記載の電力貯蔵システムに於いて、前記発煙消火装置の噴出管は、前記容器内に位置する前記噴出口に、前記消火用エアロゾルの噴出力で破壊開放する閉鎖板を備えたことを特徴とする電力貯蔵システム。
【請求項3】
請求項記載の電力貯蔵システムに於いて、
前記温度検出部は、前記容器内に複数の温度検出素子を分散配置して、前記筐体から前記噴出管を通して前記容器内に引き出した複数の信号線の各々に接続され
前記点火回路部は、前記複数の温度検出素子の少なくとも何れかによる検出温度が前記ナトリウム・硫黄電池の火災による所定温度以上の場合に、ヒータの通電加熱により前記固形消火剤に点火して燃焼させることを特徴とする電力貯蔵システム。
【請求項4】
請求項1又は3記載の電力貯蔵システムに於いて、前記温度検出素子は容器内温度に応じた起電力を発生する熱電対であることを特徴とする電力貯蔵システム。
【請求項5】
請求項1又は3記載の電力貯蔵システムに於いて、
前記温度検出素子は、火災による熱を受けた場合の絶縁被覆の溶融により一対の信号線を短絡状態に接触させる熱感知ケーブルであり、
前記点火回路部は、前記熱感知ケーブルの短絡を検出した場合に、ヒータの通電加熱により前記固形消火剤に点火して燃焼させることを特徴とする電力貯蔵システム

【請求項6】
請求項記載の電力貯蔵システムに於いて、前記点火回路部は、前記ヒータの通電加熱により前記固形消火剤に点火して燃焼させた場合に、消火起動信号を外部に出力することを特徴とすることを特徴とする電力貯蔵システム。
【請求項7】
請求項記載の電力貯蔵システムに於いて、前記点火回路部は、外部から点火信号入力した場合に、ヒータの通電加熱により前記固形消火剤に点火して燃焼させることを特徴とする電力貯蔵システム。
【請求項8】
請求項記載の電力貯蔵システムに於いて、
前記発煙消火装置の筐体は、
前記筐体内部に支持部材を介して浮いた状態に配置され、前記固形消火剤を収納した消火剤収納ケースと、
前記消火剤収納ケースから噴出した前記消火用エアロゾルを前記接続口に導く煙道を形成する煙道構造と、
前記煙道に配置した火炎噴出防止部材と、
を備えたことを特徴とする電力貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム・硫黄電池に電力を貯蔵して電力需要を平準化するためなどに利用する電力貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナトリウム・硫黄電池(「NAS電池」ともいう)を用いた電力貯蔵システムは、昼夜間の格差の大きい電力需要の平準化のためのシステム、例えば夏期の電力需要の急増する時間帯へ電力を供給するいわゆるピークカット用の電力貯蔵システムとして、あるいは自然災害時の非常用電源システムとして、その他各種用途に、実用化が進められ、普及が始まっている。
【0003】
ナトリウム・硫黄電池は、一方に陰極活物質である溶融金属ナトリウムを配置すると共に、他方には陽極活物質である溶融硫黄を配置し、両者をナトリウムイオンに対して選択的な透過性を有するベータ・アルミナ固体電解質で隔離し、約300℃で動作させる高温二次電池であり、エネルギー密度が他の電池に比べて高く、設備がよりコンパクトで、また自己放電が殆どないために電池効率が高く、更には、メンテナンスが容易である等の優れた特徴を有するものである。
【0004】
また電力貯蔵システムは、ナトリウム・硫黄電池を所定個数単位に直列接続して1つのストリングスを構成し、このストリングスを所定数並列接続してモジュール電池を構成し、更に、所定数のモジュール電池をパッケージ内に配置して直列並列に接続してシステムを構成している。
【0005】
モジュール電池は、断熱箱と断熱蓋で断熱容器を構成し、断熱箱にヒータパネルを設け、その中に円筒形のナトリウム・硫黄電池を複数並べて配置し、複数のナトリウム・硫黄電池の隙間には乾燥砂を充填している。
【0006】
このようなナトリウム・硫黄電池を用いた電力貯蔵システムの広範な普及に伴い、モジュール電池に収納したナトリウム・硫黄電池の異常に起因した火災が報告されている。
【0007】
この火災は、モジュール電池を構成するナトリウム・硫黄電池の1本に製造不良があり、このナトリウム・硫黄電池が開放破壊したことにより、高温の活物質(溶融物)が漏出して他のナトリウム・硫黄電池との間で短絡を起こし、1000アンペアを超える循環電流が継続して流れて温度が上昇し、これに伴い多数のナトリウム・硫黄電池がモジュール電池内で開放破壊し、約2000度の火炎が上部に配置したモジュール電池内での開放破壊を引き起こして延焼拡大し、同様に、高温の活物質が下部に配置したモジュール電池内へ大量に流出し、同様にナトリウム・硫黄電池を溶解させ、延焼拡大したものである。
【0008】
この火災に対し、消防隊は乾燥砂による消火を行ったが、鎮圧までに8時間、鎮火まで15日間という期間を要している。
【0009】
この火災に対し最近、第三者機関の評価により、火災発生原因及び延焼拡大要因が明らかとなり、「ナトリウム・硫黄電池を設置する一般取扱所の火災対策について」とする通達が消防庁から行われ、今後の対応として、モジュール電池内の単電池間のヒューズ追加、モジュール電池内に単電池を隔てる短絡防止板の追加、モジュール電池間の延焼防止板の追加を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−149977号公報
【特許文献2】特開2008−226488号公報
【非特許文献1】消防庁危険物保安室長、“ナトリウム・硫黄電池を設置する一般取扱所の火災対策について”、平成24年6月7日、[平成24年9月20日検索]、インターネット<URL: http://www.fdma.go.jp/concern/law/tuchi2406/.../240607−ki154.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような従来のナトリウム・硫黄電池を用いた電力貯蔵システムにあっては、モジュール電池に収納した1本のナトリウム・硫黄電池から火災が発生した場合、ナトリウム・硫黄電池の間に充填している乾燥砂により、漏出した高温の活物質が周囲へ流れて広がることを抑えると共に、活物質を吸着して不活性化し、隣接電池の連鎖破損を抑制して自己消火すること(自己消火性)を期待しているが、万一自己消火しなかった場合には、漏出したナトリウムと硫黄による高温反応が起こり、これによってモジュール電池の容器が溶解し、隣接するモジュール電池に延焼拡大する恐れがあり、火災が起きても確実にモジュール電池の容器内で積極的に火災を消火して連鎖拡大させないことが強く望まれる。
【0012】
本発明は、モジュール電池の容器内で発生したナトリウム・硫黄電池の火災を、容器内で確実に消火して連鎖拡大させないことを可能とする電力貯蔵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(電力貯蔵システム)
本発明は、複数のナトリウム・硫黄電池を容器に収納したモジュール電池を複数備え、電力をモジュール電池に蓄電して利用すると共に、ナトリウム・硫黄電池の火災を検出した場合に、消火用エアロゾルを容器内に噴出して消火する発煙消火装置を備えた電力貯蔵システムに於いて、
モジュール電池の容器は、断熱構造を備えた断熱箱と断熱蓋で構成され、
発煙消火装置は、装置本体と噴出管で構成され、
発煙消火装置の装置本体は、
断熱蓋の外側に固定され、噴出管の接続口を備えた筐体と、
筐体に収納され、燃焼により消火用エアロゾルを発生する固形消火剤と、
筐体から噴出管を通して引き込まれた信号線に接続して容器内に配置された温度検出素子により容器内温度を検出する温度検出部と、
温度検出部による検出温度がナトリウム・硫黄電池の火災による所定温度以上の場合に、ヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させる点火回路部と、
点火回路部に電源を供給する電池電源と、
を備え、
発煙消火装置の噴出管は、一端が筐体の接続口に連結されると共に、他端が断熱蓋を貫通して容器内に導入されて噴出口が開口し、発生した消火用エアロゾルを容器内に噴出可能であることを特徴とする。
【0015】
(噴出管の噴出口閉鎖)
発煙消火装置の噴出管は、容器内に位置する噴出口に、消火用エアロゾルの噴出力で破壊開放する閉鎖板を備える。
【0017】
(複数の温度検出素子の分散配置)
温度検出部は、容器内に複数の温度検出素子を分散配置して、筐体から噴出管を通して容器内に引き出した複数の信号線の各々に接続され
点火回路部は、複数の温度検出素子の少なくとも何れかによる検出温度がナトリウム・硫黄電池の火災による所定温度以上の場合に、ヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させる。
【0018】
温度検出素子は容器内温度に応じた起電力を発生する熱電対である。
【0019】
(熱感知ケーブル)
温度検出部は、火災による熱を受けた場合の絶縁被覆の溶融により一対の信号線を短絡状態に接触させる熱感知ケーブルであり、
点火回路部は、熱感知ケーブルの短絡を検出した場合に、ヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させる。
【0020】
点火回路部はヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させた場合に、消火起動信号を外部に出力する
【0021】
(点火信号の外部入力)
点火回路部は、外部から点火信号入力した場合に、ヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させる。
【0022】
(発煙消火装置の筐体構造)
発煙消火装置の筐体は、
筐体内部に支持部材を介して浮いた状態に配置され、固形消火剤を収納した消火剤収納ケースと、
消火剤収納ケースから噴出した消火用エアロゾルを接続口に導く煙道を形成する煙道構造と、
煙道に配置した火炎噴出防止部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0023】
(基本的な効果)
本発明の電力貯蔵システムは、複数のナトリウム・硫黄電池を収納した高温動作型のモジュール電池の容器に発煙消火装置を配置し、ナトリウム・硫黄電池の異常に伴う火災を検出した場合に、発煙消火装置から消火用エアロゾルを容器内に噴出して消火するようにしたため、ナトリウム・硫黄電池が、製造不良、内部ショート、過充電等の種々の原因によるベータ・アルミナ固体電解質管の破損によりナトリウムと硫黄が接触して高温反応を起こし、電池温度が著しく上昇し、その結果、ナトリウム・硫黄電池の破裂開放や発火が起き、活物資であるナトリウムと硫黄の漏出した場合に、この火災を検出して発煙消火装置から消火用エアロゾルを容器内に噴出し、モジュール電池の容器内で消火抑制して、他のナトリウム・硫黄電池の活物質漏れの連鎖を防止し、またモジュール電池を火元として他のモジュール電池に延焼して大きな火災に拡大してしまうことを未然に防止することを可能とする。
【0024】
また、発煙消火装置がナトリウム・硫黄電池を収納したモジュール電池の容器内に噴出する消火用エアロゾルは、固形消火剤を点火・燃焼させることで発生しており、消火用エアロゾルは2μm程度の微粒子であり、その主成分は例えば金属の酸化物、炭酸塩或いは燐酸塩或いはその混合物等を含有する。具体的な一例としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどを主成分とし、これに窒素、二酸化炭素、水蒸気などが含まれ、水系消火剤を使用できない電気火災に好適な消火抑制ができる。
【0025】
また、モジュール電池の容器内は、外気から遮断された密閉空間であり、発煙消火装置から噴出した消火用エアロゾルは確実に容器内に滞留してほとんど外部に漏れ出すことがなく、ナトリウム・硫黄電池の異常で起きたモジュール電池の容器内の火災を、確実に消火抑制することが可能となる。
【0026】
(発煙消火装置を断熱蓋外側に配置することによる効果)
ナトリウム・硫黄電池は、溶融ナトリウムと溶融硫黄をそれぞれ負極と正極の活物質として使用し、電解質にはナトリウムイオン伝導性のセラミックスであるベータ・アルミナを使用し、約300℃で運転することから、モジュール電池の容器は、断熱構造(真空断熱構造)を備えた断熱箱と断熱蓋からなる断熱容器で構成している。このためモジュール電池に発煙消火装置を設ける場合、モジュール電池の断熱容器内の高温雰囲気の影響を受けない配置及び構造とすることが重要である。
【0027】
そこで、発煙消火装置は、装置本体と噴出管で構成し、噴出管を介して装置本体を表面温度が60℃程度と比較的低いモジュール電池の断熱蓋の外側の離れた位置に配置し、当該装置本体に一端を連結した噴出管の他端を、断熱蓋を貫通して容器内に導入して噴出口を開口したため、容器内の温度が約300℃と高温であっても、内部に開口した噴出口から可能な限り離れた断熱蓋の外側に装置本体を配置することで、断熱容器から噴出管を介して発煙消火装置の装置本体へ伝わる熱を、噴出管を外気に曝して冷却することによる放熱で温度を下げ、モジュール電池容器内の高温雰囲気の影響を可能な限り低減可能とする。
【0028】
(噴出管の噴出口閉鎖による効果)
発煙消火装置の噴出管は、容器内に位置する噴出口に、消火用エアロゾルの噴出力で破壊開放する封止板を設けることにより、容器内の高温雰囲気が噴出管に入ることを阻止し、モジュール電池容器内の高温雰囲気の影響を抑制し、発煙消火装置の温度を可能な限り低減可能とする。
【0029】
(発煙消火装置の構造による効果)
発煙消火装置は、筐体、固形消火剤、温度検出部、点火回路部で構成した装置としており、水系の消火手段に比べると、例えばブックサイズ程度のコンパクトで且つ軽量とすることができ、ナトリウム・硫黄電池を収納したモジュール電池の容器に外付けしても、容器の設置スペースに大きく影響することはない。
【0030】
また消火に必要な消火用エアロゾルを得るための固形消火剤の重量は、例えば1立方メートル当たり80グラム〜200グラム程度となることが知られており、ナトリウム・硫黄電池を収納するモジュール電池容器内の空き容積は、例えば0.5立方メートル程度であり、これに必要な固形消火剤は40グラム〜100グラム程度であり、必要な固形消火剤が少なくて済むため、発煙消火装置はブックサイズ程度のコンパクトなサイズとすることが可能である。
【0031】
また、必要とする固形消火剤の量が少なくてすむため、固形消火剤を燃焼して消火用エアロゾルを発生しても、固形消火剤の燃焼による炎や発熱を少なくすることができ、ナトリウム・硫黄電池による火災を逆に煽ってしまうような不具合は起きない。
【0032】
(複数の温度検出素子の分散配置)
温度検出部は、容器内に複数の温度検出素子を分散配置して、筐体から噴出管を通して容器内に引き出した複数の信号線の各々に接続したため、モジュール電池の例えば断熱蓋に信号線を貫通して容器内に配置した温度検出素子と容器外側の装置本体とを接続する必要がなくなり、容器内に配置した温度検出素子と外部に配置した装置本体との間の信号線接続が簡単にできる。
【0033】
(消火起動信号の外部出力による効果)
また、発煙消火装置の点火回路部は、ヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させた場合に、外部へ消火起動信号を出力するため、例えば消火起動信号に基づきシステムの監視センタ等に消火起動を表示して報知することを可能とする。
【0034】
(点火信号の外部入力による効果)
発煙装置の点火回路部は、外部から点火信号を入力した場合に、ヒータの通電加熱により固形消火剤に点火して燃焼させるようにしたため、温度検出部によるモジュール電池の火災検出に基づく自動消火に加え、例えばモジュール電池の高温異常を監視センタの運転員がモジュール温度異常警報から気付いた場合などに、監視センタ装置の手動操作に基づき、発煙消火装置を遠隔的に起動して、消火用エアロゾルを容器内に噴出して、火災を抑制消火することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】屋外設置した本発明の電力貯蔵システムを示した説明図
図2】モジュール電池を一部破断して内部構造と共に示した斜視図
図3】モジュール電池を一部破断して内部構造と共に示した正面図
図4】モジュール電池の平面図
図5】モジュール電池の断熱蓋を内側から示した平面図
図6】モジュール電池の発煙消火装置を配置した部分の側面断面図
図7】発煙消火装置の実施形態を示した断面図
図8】発煙消火装置の蓋を外して筐体内部を示した説明図
図9】噴出管の断熱蓋に対する取付構造を示した断面図
図10】噴出ヘッドの噴出口に設けた封止板を示した説明図
図11】発煙消火装置に設けた点火回路部の実施形態を示した回路図
図12】発煙消火装置を起動して消火用エアロゾルを容器内に噴出する消火動作を示した説明図
図13】発煙消火装置を2台設置したモジュール電池を示した説明図
図14図13のモジュール電池を一部破断して内部構造と共に示した断面図
図15図13のモジュール電池の平面図
図16】断熱プレートの着脱自在な構造をもつ断熱蓋を用いたモジュール電池を示した斜視図
図17図16の断熱蓋に断熱プレートを配置した状態を示した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0036】
[電力貯蔵システムの概要]
図1は屋外設置した本発明による電力貯蔵システムの外観を示した説明図である。図1に示すように、屋外に設置した電力貯蔵システム10は、例えば4基のパッケージ12を横に連設しており、パッケージ12は前部に両開きの扉14を備え、扉14の内部は架台16により上下に例えば5段に仕切られており、架台16の各々に多数のナトリウム・硫黄電池を格納したモジュール電池18を収納しており、電力貯蔵システム10全体として、本実施形態では合計20台のモジュール電池18を収納している。なお、電力貯蔵システム10に収納するモジュール電池18の台数は、必要とする出力及び容量に対応した適宜の台数とする。
【0037】
パッケージ12の扉14は、架台16に搭載したモジュール電池18の位置に対応して吸気ギャラリ20を設け、また、パッケージ12の上部には屋根構造をもつ排気口22を設けている。これによりモジュール電池18の高温運転中に、吸気ギャラリ20から吸入された空気がモジュール電池18の周囲を通って上部の排気口22から排出されるように自然換気が行われ、高温運転しているモジュール電池18から放出した熱を外部に逃がし、モジュール電池18に収納しているナトリウム・硫黄電池を、約280℃から約36O℃の範囲で温度制御できるように放熱特性を確保する。
【0038】
[モジュール電池の概要]
図2はモジュール電池を一部破断して内部構造と共に示した斜視図、図3はモジュール電池を一部破断して内部構造と共に示した正面図、図4はモジュール電池の平面図、図5はモジュール電池の断熱蓋を内側から示した平面図、及び図6はモジュール電池の発煙消火装置を配置した部分の側面断面図である。
【0039】
図2乃至図6に示すように、モジュール電池18は、ナトリウム・硫黄電池30が約300℃で運転する高温動作型の電池であるため、昇温及び保温機構として機能する。モジュール電池18は、上部に開口した断熱箱24と、断熱箱24の開口に密閉装着する断熱蓋26で構成した断熱容器であり、断熱箱24と断熱蓋26の断熱構造は真空断熱構造としている。断熱箱24と断熱蓋26の材質は、熱伝導率の小さい例えばステンレスを使用する。
【0040】
断熱箱24の内部には、ヒータパネル28を側面及び底面に配置し、底面のヒータパネル28の上に仕切板25を配置し、仕切板25の上に多数のナトリウム・硫黄電池30を並べて配置し、ナトリウム・硫黄電池30の間の隙間には珪砂などの乾燥砂32を充填している。
【0041】
ナトリウム・硫黄電池30は、円筒型で、ナトリウムイオン伝導性を有する有底袋状のベータ・アルミナ固体電解質管の内部に負活性物質として溶融ナトリウムを、外部に正極活性物資として溶融硫黄を配置した構造であり、上部外側に負極端子を取出し、上部内側に正極端子を取出している。
【0042】
モジュール電池18に収納したナトリウム・硫黄電池30はヒータパネル28による昇温と保温により約300℃で動作する。具体的には、ナトリウム・硫黄電池30の充電時には温度が低下するため、例えば290℃を下回らないように運転する。一方、ナトリウム・硫黄電池30の放電時には、抵抗成分によるジュール熱や熱力学的な反応熱などにより温度が上昇するため、電池機能が失われる許容運転温度360℃を超えないように運転する。ナトリウム・硫黄電池30には、過電流から電池を守るためのヒューズを設けている。
【0043】
乾燥砂32は、モジュール内温度を均一に保ち、且つ熱容量を付与し、さらに非常時に自己消火剤としての機能(自己消火性)を有する。ここで、乾燥砂の自己消火性とは、ナトリウム・硫黄電池の開放破壊により漏出した高温の活物質が周囲へ流れて広がることを抑えると共に、活物質を吸着して不活性化し、隣接電池の連鎖破損を抑制して消火するこという。
【0044】
また、モジュール電池18は、ナトリウム・硫黄電池30の異常により漏れ出した活物質を外部に漏らさないための障壁になる共に、外部から発生する種々の障害要因がナトリウム・硫黄電池30に与える影響を軽減して安全性を確保する役割を果たす。
【0045】
モジュール電池18の安全性では、断熱容器が重要な機能を果たす。断熱容器を構成する断熱箱24及び断熱蓋26の内板は溶接などにより液密性を維持するので、ナトリウム・硫黄電池30の開放破壊で漏れ出した高温の活物質をモジュール電池18内に保持できる。また、外部からの火災、水害、落下衝撃などの障害要因に対して障壁となり、内部への影響を緩和し、ナトリウム・硫黄電池30を保護する。
【0046】
更に、ナトリウム・硫黄電池30間に充填された乾燥砂32は、モジュール電池18内の酸素量を制限し、このためナトリウム・硫黄電池30の開放破壊で漏れ出した高温の活物質の酸化反応を制限し、反応熱も制限するので、ナトリウム・硫黄電池30の活物質漏れを他の隣接したナトリウム・硫黄電池30へ連鎖拡大させないことを可能とする。
【0047】
モジュール電池18は、例えば横幅約2.2メートル、奥行き約1.8メートル、高さ約0.7メートルといった略ダブルベッド程度の大きさであり、またナトリウム・硫黄電池30は例えば直径約9センチメートル、高さ約60センチメートルといった大きさであり、モジュール電池18の断熱箱24の中に例えば320本のナトリウム・硫黄電池30を配列収納している。
【0048】
モジュール電池18に収納したナトリウム・硫黄電池30は、8本のナトリウム・硫黄電池30を直列接続したストリングスを5つ並列接続して1ブロックを形成し、320本で8ブロックを形成して直列接続している。ナトリウム・硫黄電池30は約2ボルト、80アンペアの出力であり、詳細には、充電時は約2.19ボルト、放電時は約1.94ボルトとなる。このためモジュール電池18の電圧は、充電時は約140ボルト、放電時は約124ボルトとなり、また出力は約50kWとなる。
【0049】
また、図1に示した電力貯蔵システム10は、パッケージ12の架台16に収納した5台のモジュール電池を直列接続していることから、この場合の電圧は、充電時は約700ボルト、放電時は約620ボルトとなり、また出力は約250kWとなる。更に図1にあっては、4基のパッケージ12について並列接続していることから、出力は約1000kWとなる。
【0050】
また、過去に起きた火災の原因究明に基づく安全対策として、ナトリウム・硫黄電池30の開放破壊で漏出した高温の活物質がブロック間を跨ぐことのないように、モジュール電池18内に、ナトリウム-硫黄電池30を隔てる短絡防止板(鋼板)を設ける。更に、図1に示すように、多段の架台16に収納したモジュール電池18の各々について、隣接モジュールへの延焼拡大を防止するため、上下間延焼防止板(鋼板)と側面延焼防止板(鋼板)を設ける。
【0051】
[発煙消火装置の概要]
図2乃至図6に示すように、モジュール電池18は前述した乾燥砂の自己消火性を含む各種の安全対策を講じているが、これに加えて本実施形態あっては、モジュール電池18の断熱容器内でナトリウム・硫黄電池の異常により発生した火災を積極的に消火抑制するため、発煙消火装置40を設けている。
【0052】
発煙消火装置40は、モジュール電池18に収納しているナトリウム・硫黄電池30の異常による火災を検出した場合に、消火用エアロゾルをモジュール電池18の断熱容器内に噴出して消火抑制し、乾燥砂32の充填による自己消火性と相俟って、異常を起こしたナトリウム・硫黄電池30の火災に留め、それ以上の延焼拡大を抑制することを更に確実に可能とする。
【0053】
またモジュール電池18に発煙消火装置40を設ける場合、約300℃で運転しているモジュール電池18の断熱容器内の高温雰囲気の影響を受けない位置に発煙消火装置40を配置すると共に、十分な断熱及び放熱のための構造をとることが重要である。
【0054】
発煙消火装置40は、装置本体42と噴出管44で構成し、装置本体42を断熱容器内の高温雰囲気による影響が少ない例えば断熱蓋26の外側面に、上部が断熱蓋26の上面から飛び出すように配置する。
【0055】
装置本体42で発生した消火用エアロゾルは、モジュール電池18の上面の略中央から断熱容器内に噴出して空き空間に拡散充満できるようにする必要があり、そのため断熱蓋26の上面略中央にエルボ45を配置し、エルボ45の下側に断熱蓋26を貫通して断熱容器内に先端を位置する噴出ヘッド50を装着し、噴出ヘッド50の噴出口を断熱容器内に開口している。なお、噴出管44、エルボ45及び噴出ヘッド50は、請求項の噴出管に対応する。
【0056】
噴射ヘッド50の先端開口には、後述するように、消火用エアロゾルの噴出力で破壊開放する封止板を設けており、噴出管44の内部をモジュール電池18の断熱容器内部から分離し、約300℃で運転している断熱容器内の熱気が噴出管44に入らないようにしている。
【0057】
断熱蓋26の外側面となる離れた位置に配置した装置本体42と、断熱蓋26上面中央の噴出ヘッド50を装着したエルボ45の間は、噴出管44により連結している。噴出管44は断熱蓋26の上面から浮かせた状態で、装置本体42とエルボ45の間を連結することにより、断熱蓋26の熱を直接受けない断熱構造とし、また外気に曝すことで十分な冷却ができるようにしている。噴出管44としては熱伝導率の高い薄肉の鋼管やアルミ管などを使用する。
【0058】
モジュール電池18の断熱蓋26の内側には例えば4箇所に分けて温度検出部として機能するシース熱電対46を配置している。シース熱電対46には、装置本体42から引き出した4本の信号線48を噴出管44、エルボ45及び噴出ヘッド50の内部を通して断熱蓋26の内側に引き込んで接続している。このようにシース熱電対46に接続する信号線48を、噴出管44、エルボ45及び噴出ヘッド50の中を通して断熱容器内に導入することで、断熱蓋26に信号線を通すための構造を必要とせず、断熱蓋26の構造を簡単にできる。
【0059】
[発煙消火装置の詳細]
図7は発煙消火装置の実施形態を示した断面図、図8は発煙消火装置の蓋を外して筐体内部を示した説明図である。
【0060】
(発煙消火装置の装置本体)
図7及び図8に示すように、モジュール電池18における断熱蓋26の外側面には、発煙消火装置40の装置本体42を取付けている。発煙消火装置40は、長手方向の一端に開口した扁平箱状の筐体54と、筐体54の開口に装着する蓋部材56で構成し、筐体54の開口に蓋部材56を密閉装着し、ビス57により固定している。
【0061】
筐体54の断熱蓋外側面への装着面には、噴出管接続口58を外部に突出して固定しており、ここに噴出管44の一端を差し込み固定し、消火用エアロゾルを噴出管接続口58から噴出管44へ噴出可能としている。
【0062】
また、図8に示すように、筐体54の断熱蓋外側面への装着面の4箇所には、通し穴を開口した取付リブ82を溶接などにより固定しており、取付リブ82により断熱蓋外側面に対し浮いた状態で筐体54を支持固定し、断熱蓋26からの熱の伝達を最小限に抑えるための断熱構造としている。
【0063】
装置本体42の内部には、固形消火剤62を収納した消火剤収納ケース60を組み込んでいる。消火剤収納ケース60は、筐体54の噴出管接続口58を設けた方向を前方(図示上方)とすると、後方(図示下方)に開口した箱型のケース部材であり、ケース先端側にL字形の支持片64を溶接などで固定し、蓋部材56の筐体54に対する装着固定により、装置本体42の内部に浮いた状態となるように消火剤収納ケース60を位置決め支持している。
【0064】
また消火剤収納ケース60の後方(図示下方)については、横方向に屈曲した一対の支持片66、及び側面を後方(図示下方)に延在して先端をL字形に屈曲した一対の支持片65を形成し、蓋部材56の筐体54に対する装着固定により、装置本体42の内部に浮いた状態となるように消火剤収納ケース60を位置決め支持している。
【0065】
この消火剤収納ケース60の支持構造は、筐体54及び蓋部材56に対する接触を最小限に抑え、固形消火剤62の燃焼による熱が外側の筐体54及び蓋部材56に伝わり難い空気層を介在した断熱構造としている。
【0066】
ここで、筐体54、蓋部材56、消火剤収納ケース60、支持片64,65,66、及び取付リブ82は、固形消火剤62の燃焼により消火用エアロゾルを発生することから、固形消火剤62の燃焼による熱に耐える構造とするため金属材料で作られている。
【0067】
消火剤収納ケース60の内部には固形消火剤62を収納し、固形消火剤62にはヒータ70を埋め込み固定している。
【0068】
また、装置本体42の内部には点火回路部68を設けている。点火回路部68に対しては、コネクタ72側より、プラグ74を介してケーブル52を接続している。ケーブル52には、電源線、点火制御信号を入力する信号線、及び消火起動信号を出力する信号線が入っている。また点火回路部68からは4本の信号線48が引き出され、噴出管接続口58、噴出管44、エルボ45及び噴出ヘッド50の中を通って、図4に示したように、モジュール電池18の断熱容器内に引き込まれ、そこにシース熱電対46を接続している。
【0069】
点火回路部68は、ナトリウム・硫黄電池の異常に伴う火災をシース熱電対48による検出温度から判別した場合に、ヒータ70に通電して加熱することにより固形消火剤62に点火して燃焼させ、この燃焼により消火用エアロゾルを発生し、噴出管接続口58、噴出管44,エルボ45を通って噴出ヘッド50からモジュール電池18の断熱容器内へ消火用エアロゾルを噴出させる。
【0070】
固形消火剤62の燃焼により発生する消火用エアロゾルは、2μm程度の超微粒子であり、その主成分は、金属の酸化物、炭酸塩あるいは燐酸塩あるいはその混合物等を含有している。
【0071】
具体的な一例としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどを主成分とし、これに窒素、二酸化炭素、水蒸気などが含まれている。このような主成分を持つ消火用エアロゾルにあっては、消火用エアロゾルそのものに毒性がなく、環境に優しい発生ガスということができる。なお、固形消火剤62の成分は、上記に限定されず、ナトリウム・硫黄電池火災の消火抑制に有効な適宜の成分を含有した固形消火剤とすることができる。
【0072】
固形消火剤62の燃焼により発生した消火用エアロゾルによる消火作用は、モジュール電池18の収納容器内を消火用エアロゾルで満たすことで、ナトリウム・硫黄電池の異常により漏れ出した活物質の燃焼の活性中心を消滅、抑制する作用により消火を行うものであり、水系消火剤を使用することのできない電気火災に好適な消火作用が得られる。
【0073】
また固形消火剤62の量はモジュール電池18の断熱容器内の空き容積に応じて決まる。閉鎖空間となる消火対象エリア1立方メートル当たりを消火するに必要な消火用エアロゾルを発生するための固形消火剤62の重量は、80グラム〜200グラム程度であり、これに基づき、消火対象とするモジュール電池18の断熱容器内の空き容積に応じた量の固形消火剤62を消火剤収納ケース60に収納している。
【0074】
本実施形態の発煙消火装置40が消火対象とするモジュール電池18の容器内容積は、例えば2.5立方メートル程度であり、これに多数のナトリウム・硫黄電池30を収納して、その間に乾燥砂32を充填していることから、例えばモジュール電池18の断熱容器内の空き容積を20%の0.5立方メートルとした場合、この空き容積に必要な固形消火剤の重量は40グラム〜100グラムとなる。
【0075】
発煙消火装置40の大きさは、必要とする固形消火剤62の重量で決まり、最大でも100グラム程度で済むことから、この程度の重量の固形消火剤62を収納する装置本体42は例えばB5からA4程度のブックサイズに小型化が可能となる。
【0076】
固形消火剤62を収納した発煙消火装置40の内部には、消火剤収納ケース60の後方(図示下方)からその周囲を通って前方(図示上方)の噴出管接続口58へ至る煙道75を形成している。このように後方(図示下方)から前方(図示上方)に回りこむ煙道75の形成は、固形消火剤62と噴出管接続口58との距離を離し、且つ炎の出る向きと噴出管接続口58が同じ方向とならないよう煙道75を屈曲させた構成とし、固形消火剤62の燃焼による炎が噴出管接続口58から噴出管44の中に直接吹き出さないようにしている。
【0077】
また固形消火剤62による炎の噴出を更に効果的に防止するためには、必要に応じて煙道75の途中に、金網などのエアロゾルだけを通過するような火炎噴出防止部材80を配置することが望ましい。本実施形態では、消火剤収納ケース60の後部開口(図示下方開口)から延在した支持片65の内側に火炎噴出防止部材80を配置している。
【0078】
火炎噴出防止部材80の具体例としては、ガラスや磁器などの細径パイプを複数並べて炎の噴出しを抑制する構造、複数の金網を分離配置して炎の噴出しを抑制する構造、ガラスや磁器などのボールを複数配置して炎の噴出しを抑制する構造、更には複数の金網の間にガラスや磁器などのボールを複数配置して炎の噴出しを抑制する構造などがある。
【0079】
(噴出管と噴出ヘッドの構成)
図9は噴出管の断熱蓋に対する取付構造を示した断面図、図10は噴出ヘッドの噴出口に設けた封止板を示した説明図である。
【0080】
図9に示すように、モジュール電池18は断熱蓋26の略中央に通し穴26aを形成し、通し穴26aの中に、エルボ45によって筒状の噴出ヘッド50を配置している。エルボ45は水平方向の接続口に噴出管44の先端を挿入連結し、垂直方向の接続口に下方から筒状の噴出ヘッド50を挿入固定し、垂直方向の接続口の外側にフランジ45aを一体に形成し、フランジ45aを通し穴26aの外側に固定することで、通し穴26aの中に噴出ヘッド50を貫通して支持している。
【0081】
噴出ヘッド50の下端の開口には耐熱樹脂性の封止板84を装着している。噴出ヘッド50の開口部には内径に張り出した内径フランジ部50aを形成し、内径フランジ部50aの外側に耐熱性のシールパッキン(図示せず)を介して封止板84を配置し、その外側に押えリング86を配置し、複数のねじ88により押えリング86を内径フランジ部50aにねじ込むことで封止板84を固定している。
【0082】
また噴出管44、エルボ45及び噴出ヘッド50の中を通してきた信号線48は、噴出ヘッド50の内側フランジ50aの手前の4箇所に設けた通し穴50bから断熱蓋26の内側に引き込まれ、信号線48を通した状態で通し穴50bは耐熱性のシール剤により密閉している。
【0083】
封止板84は、断熱蓋26の内部に突出している噴出ヘッド50の開口を閉鎖し、運転状態で約300℃に保たれている断熱容器内の高温の雰囲気が噴出ヘッド50、エルボ45及び噴出管44の中に入らないように遮断し、外部に露出しているエルボ45及び噴出管44の温度上昇を抑制する。また、噴出管44が十分な長さを有することで、エルボ45に装着した噴出ヘッド50から離れた断熱蓋26の外側面に配置している発煙消火装置の装置本体42に熱が伝播する間に、噴出管44が外気に曝されることで高い冷却効果が得られ、装置本体42の温度上昇を防いでいる。
【0084】
モジュール電池18の断熱蓋26の上面温度は、点検員などが手を触れても安全な例えば60℃を超えない温度としており、発煙消火装置40における装置本体42の温度も、断熱蓋26の上面温度と同じ例えば60℃を超えない温度とすることができる。この場合、噴射ヘッド50を支持しているエルボ45の温度は60℃を超えて高温となっているが、噴出管44の温度は噴出ヘッド50から離れるほど、外気に曝されていることで低下し、装置本体42の連結位置では確実に例えば60℃以下に抑えることができる。
【0085】
このため装置本体42内には燃焼により消火用エアロゾルを発生する固形消火剤62を収納しているが、装置本体42内の雰囲気温度は60℃以下に保たれており、固形消火剤の発火温度に対し十分に低い温度に保つことで、モジュール電池18の高温動作による加熱で固形消火剤62が着火してしまう誤動作を確実に防止することを可能とする。また装置本体42内には、電気回路として点火回路部68を収納しているが、装置本体42内の雰囲気温度を例えば60℃以下に保つことで、回路部品の温度による誤作動や劣化を抑制し、安定した回路動作を維持することを可能とする。
【0086】
封止板84は、図10に示すように、その表面に固形消火剤62の燃焼により消火用エアロゾルを発生した場合の圧力増加で破裂させるための切り込み溝を形成している。封止板84の切り込み溝は、開口縁に沿って形成した外側リング溝90、中心部分に形成した内側リング溝92、及び外側リング溝90と内側リング溝92を連結するように径方向に放射状に形成した複数本の直線溝94で形成している。
【0087】
封止板84の強度は、その厚さ、材質、及び切り込み溝の深さを調整することで、必要とする所定の強度に設定することができ、これによって固形消火剤62の燃焼による消火用エアロゾルの発生で増加した内部圧力が封止板84の設定強度に対応した圧力を超えた場合に、封止板84を破裂させてモジュール電池18の断熱容器内へ消火用エアロゾルを噴出させることができる。
【0088】
固形消火剤62の燃焼による消火用エアロゾルの発生で封止板84にその強度を越える圧力が加った場合、封止板84の外側については外側リング溝90の部分で割れ、また封止板84の中心側については内側リング溝92の部分で割れ、更に直線溝94の部分で割れることで、封止板84の噴出ヘッド50の開口に相対した部分を確実に分離飛散できる。
【0089】
また、封止板84の外側に金属製の押えリング86を配置することによって、封止板84が圧力増加で破裂する際に、押えリング86の内縁の部分が封止板84の外側リング溝90の部分で外側に折れるときの支点となり、外側リング溝90の部分が内部圧力の増加による押し出しで確実に折れることで割れ、封止板84の噴出ヘッド50の開口に相対した部分を確実に分離飛散することができる。
【0090】
(点火回路部の構成)
図11は発煙消火装置に設けた点火回路部の実施形態を示した回路図である。
【0091】
図11に示すように、点火回路部68はコネクタ95によりモジュール電池の断熱容器内に配置したシース熱電対46を信号線48により接続している。シース熱電対46は、ステンレスなどの極細な耐熱金属保護管46bの中に熱電対素子46aを配置してセラミックを高圧充填しており、外形が例えば1ミリメートル以下と細いことから、簡単に曲げて必要な場所に配置することができる。
【0092】
また、点火回路部68は、コネクタ72に対するプラグ74の接続により、ケーブル52を接続しており、ケーブル52には、電源線76、外部から点火制御信号を入力する信号線77、及び外部に消火起動信号を出力する信号線78が含まれている。
【0093】
点火回路部68は、マルチプレクサ96、アンプ98、トランジスタ100、常開リレー接点110,112,114を備えたリレー108、抵抗102,104,106を備えている。
【0094】
マルチプレクサ96は、信号線48を介して例えば4本のシース熱電対46を接続し、所定の周期で4つの入力を順次切替えてアンプ98に出力している。アンプ98はマルチプレクサ96により切り替えられている4本のシース熱電対46の熱電対素子46aが発生した起電力により流れる電流信号を増幅して起電力検出信号を出力する。シース熱電対46による温度検出は、熱により熱電対素子46aが発生する起電力を利用できるため、熱電対素子46aに電流を流す必要がなく、消費電力を低減することができる。
【0095】
アンプ98の出力は、抵抗106を介してPNP型のトランジスタ100のベースに接続する。モジュール電池18が約300℃で運転している通常監視状態でアンプ98の出力はHレベルにあり、エミッタ、ベース間は略ゼロボルトであることからオフとなり、コレクタ側に負荷として接続したリレー108を非作動状態としている。
【0096】
リレー108は、その常開リレー接点112を介してヒータ70を電源ライン間に接続している。また、リレー108の常開リレー接点110をトランジスタ100のエミッタ,コレクタ間に接続し、ラッチ回路を形成している。更に、消火起動信号を外部に出力するめに常開リレー接点114を接続している。
【0097】
モジュール電池18の断熱容器内の4箇所に設置したシース熱電対46のいずれかが、ナトリウム・硫黄電池30の異常による熱を受けて所定の火災判断温度に対応した起電力を発生して電流が流れると、アンプ98は起電力の発生で流れた入力電流を増幅し、その出力をLレベルに引き込む。このため、抵抗106に生ずる電圧によりトランジスタ100のエミッタ、ベース間にバイアス電圧が加わり、これによってトランジス100がオンしてリレー108を作動する。
【0098】
リレー108が作動すると常開リレー接点112が閉じ、ヒータ70に通電し、ヒータ70の通電による加熱で固形消火剤62に点火し、固形消火剤62の燃焼によりエアロゾルを発生して、モジュール電池18の断熱容器内へ噴出させる。
【0099】
またリレー108の作動により常開リレー接点110が閉じることで、リレー108を作動状態にラッチし、これによってシース熱電対46からの起電力の変動による誤動作を防ぐようにしている。
【0100】
更に、常開リレー接点114が閉じることで、コネクタ72及びプラグ74を介して信号線78から外部に対し消火動作が行われたことを示す消火起動信号を出力し、例えば電力貯蔵システムの監視センタに設けた監視装置へ送って、火災発生と発煙消火装置の起動を報知させる。
【0101】
ここで、点火回路部68で検出するモジュール電池容器内の火災判断温度は、モジュール電池18が運転可能な上限温度は約360であることから、それより高い例えば400℃の火災判断温度を設定する。なお、火災判断温度としては、検出感度を高くしたい場合には、例えば400℃より低い360℃以上の所定温度とし、また火災を確実に検出したい場合は、例えば400℃より高い所定温度とする。
【0102】
また、点火回路部68にプラグ74及びコネクタ72を介して外部からの信号線77を接続し、信号線77のプラス側をアンプ98の出力に接続している。信号線77を介して外部から点火制御信号が入力した場合、トランジスタ100のオンによるリレー108の作動で常開リレー接点110,112,114を閉じ、ヒータ70の通電で固形消火剤に点火して消火用エアロゾルを発生し、発煙消火装置40を遠隔操作により消火起動可能とする。
【0103】
このような点火制御信号による発煙消火装置の遠隔消火起動は、例えば電力貯蔵システム10の監視センタでは図1のパッケージ12に収納しているモジュール電池18の内部温度を測定表示して監視していることから、特定のモジュール電池で例えば400℃を超えるような異常な温度上昇が起きた場合、火災の可能性があると判断し、温度異常を起こしているモジュール電池18の発煙消火装置40へ係員の操作に基づき点火制御信号を送信して消火起動させるような使い方を可能とする。
【0104】
なお、本実施形態にあっては、点火回路部68を発煙消火装置40の装置本体42に収納した場合を例にとっているが、点火回路部68を装置本体42から分離して別の回路部筐体の中に収納し、この回路部筐体を図1に示したパッケージ12内の温度が高くならない場所に設置し、回路部筐体とモジュール電池18に設けた発煙消火装置40の装置本体42との間をケーブル接続するようにしても良い。
【0105】
また、回路部筐体には、パッケージ12の架台16に収納している5台のモジュール電池18に設けた各発煙消火装置40の点火回路部68をまとめて収納し、それぞれケーブル接続して使用する。これより点火回路部68を収納した回路部筐体内の温度を、点検回路部68の許容動作温度範囲となる例えば50℃~0℃に収めることができ、点検回路部68の信頼性を高め、十分な耐久性を確保することを可能とする。
【0106】
(発煙消火装置の動作)
図12はモジュール電池18に設けた発煙消火装置40の動作を示した説明図である。図12において、発煙消火装置40に収納した点火回路部68がモジュール電池18の断熱容器内に配置したシース熱電対46(図参照)の起電力で流れる電流からの火災を検出した場合、又は外部から点火制御信号が入力した場合、ヒータ70に通電加熱して固形消火剤62に点火し、固形消火剤62を燃焼して消火用エアロゾルを発生する。
【0107】
固形消火剤62の燃焼により発生した消火用エアロゾルは、消火剤収納ケース60の後方開口(図示下方開口)から火炎噴出防止部材80を介して噴き出した後、周囲の空洞である煙道75を通って前方(図示上方)に移動し、噴出管接続口58、噴出管44、エルボ45及び封止板84で閉鎖した噴出ヘッド50内へ消火用エアロゾル120を噴出し、噴出ヘッド50の内部圧力が増加する。この消火用エアロゾルの発生で増加した内部圧力が封止板84の設定強度に対応した圧力を超えると、封止板84が破裂して噴出ヘッド50の閉鎖を解除し、モジュール電池18の断熱容器内へ消火用エアロゾル120を一気に噴出させ、断熱容器内を消火用エアロゾル120で満たし、ナトリウム・硫黄電池30の異常による火災を消火抑制する。
【0108】
この場合、固形消火剤62の燃焼による炎は消火剤収納ケース60の後方(図示下方)に噴き出し、また、火炎噴出防止部材80が炎の吹き出しを抑制し、炎が前方(図示上方)の噴出管接続口58から噴出管44の中に噴き出すようなことはない。また固形消火剤62の燃焼により消火剤収納ケース60が加熱されるが、筐体54及び蓋部材56に対する接触は支持片64,65,66によりほぼ浮動状態に支持して接触部分が少ない断熱構造としているため、熱伝導による外側の筐体54及び蓋部材56の温度上昇を抑制し、発煙消火装置40の過熱が火災の要因となることを防止している。
【0109】
[モジュール電池の第2実施形態]
図13は発煙消火装置を2台設置したモジュール電池を示した説明図、図14図13のモジュール電池を一部破断して内部構造と共に示した断面図、図15図13のモジュール電池の平面図である。
【0110】
図13図14及び図15に示すように、本実施形態にあっては、モジュール電池18に発煙消火装置40を2台設置しており、発煙消火装置40は装置本体42、噴出管44及び噴出ヘッドを装着したエルボ45で構成している。2台の発煙消火装置40の装置本体42は、モジュール電池18における断熱蓋26の長手方向の外側面に上部を突出して配置し、装置本体42の突出部に一端を連結した噴出管44を、断熱蓋26の上面を半分に分けた場合のそれぞれの略中央に配置したエルボ45に連結し、エルボ45の下部に配置した噴出ヘッドを断熱蓋26の通し穴に貫通して内部に開口している。この詳細は、図6図9に示した場合と基本的に同様である。
【0111】
また、モジュール電池18における断熱蓋26の内側には、各噴出管44を連結したエルボ45に装着した噴出ヘッドの2箇所の開口位置を中心に、例えば放射方向の4箇所に分けて温度検出部として機能するシース熱電対46を配置しており、シース熱電対46には、各装置本体42から引き出した4本の信号線48をそれぞれの噴出管44、エルボ45及び噴出ヘッド50の内部を通して断熱蓋26の内側に引き込んで接続している。
【0112】
また、2台の発煙消火装置40はケーブル52で相互に接続しており、一方の発煙消火装置40に信号線接続しているシース熱電対46に基づき火災を検出して固形消火剤の燃焼により消火用エアロゾルを発生して断熱容器内に噴出した場合、他方の発煙消火装置40へケーブル52内の信号線を介して点火制御信号を送り、固形消火剤を燃焼して消火用エアロゾルを発生して断熱容器内に噴出する連携動作を行うようにしている。
【0113】
このようにモジュール電池18の断熱容器に2台の発煙消火装置40を設けることで、シース熱電対46による温度検出点の数を増加し、断熱容器内に配列している例えば320本のナトリウム・硫黄電池30のいずれかが異常により活物質を漏出して反応した場合の異常温度を迅速に検出し、固形消火剤の燃焼により消火用エアロゾルを発生して断熱容器内に噴出して消火抑制することを可能とする。
【0114】
また、2台の発煙消火装置40の連携動作により、消火に使用する固形消火剤の量を増加させて消火性能を簡単に増加できる。更に、2台の発煙消火装置40を連携動作した場合、万一、一方の発煙消火装置40が固形消火剤の点火に失敗した場合、他方の発煙消火装置40が正常に固形消火剤に点火することで、フェールセーフ機能をもたせることができる。なお、モジュール電池18に設ける発煙消火装置40の数は、必要に応じて3台以上としても良い。
【0115】
[モジュール電池の第3実施形態]
図16は放熱量を変更するための断熱プレートを着脱自在な構造をもつ断熱蓋を用いたモジュール電池を示した斜視図、図17図16の断熱蓋に断熱プレートを配置した状態を示した斜視図である。
【0116】
モジュール電池18の断熱容器における放熱は、断熱箱24と断熱蓋26で構成した断熱容器内に収納した多数のナトリウム・硫黄電池を高温動作した場合の温度分布を均一にするため、モジュール全体の放熱量のうちの約70〜80%を断熱蓋26の上面から行うような熱設計としている。具体的には、断熱箱24は真空断熱構造とするが、断熱蓋26は真空断熱構造を設けない大気断熱構造とする。
【0117】
なお、断熱箱24及び断熱蓋26を真空断熱構造とし、断熱箱24の真空度を高くし、断熱蓋26の真空度を低くすることで、モジュール全体の放熱量のうちの約70〜80%を断熱蓋26の上面から行うようにしても良い。
【0118】
モジュール電池18の発熱量は、ユーザ負荷が大きい場合は、発熱量が大きいことから、断熱蓋26の大気断熱構造で対応することができる。しかし、ユーザ負荷が小さい場合や経年変化で発熱量が低下した場合には、断熱蓋26の放熱量を下げるように変更する必要がある。
【0119】
そこで図16の実施形態にあっては、大気断熱構造をもつ断熱蓋26の上面に山形の仕切部で分けられたプレート収納部115を複数形成し、断熱蓋26の放射熱量を下げたい場合には、図17に示すように、断熱蓋26のプレート収納部115に断熱プレート116を配置し、これによって簡単に断熱蓋26の上面放熱量を変更可能としている。断熱プレート116は、例えば断熱材となるガラスマットをアルミガラスクロスでカバーした構造とする。
【0120】
このような上面放熱量を変更可能な構造を備えたモジュール電池18に発煙消火装置40を設ける場合には、図2の実施形態と同様に、装置本体42、噴出管44、下部に噴出ヘッドを装着したエルボ45で構成した発煙消火装置40を設けるが、エルボ45を配置したプレート収納部115に配置する断熱プレート116は、図17に示すように、先端側にエルボ45を通す長手方向の切欠118を形成した構造とすることで、発煙消火装置40を設けていても、断熱プレート116の着脱により、上面放熱量を簡単に変更することができる。
【0121】
[本発明の変形例]
(点火回路部)
上記の実施形態にあっては、発煙消火装置の点火回路部に外部から電源を供給して動作しているが、一次電池を用いた電池電源を内蔵して点火回路部を動作するようにしても良い。
【0122】
また、点火回路部は、上記の実施形態に限定されず、ナトリウム・硫黄電池の異常による火災を検出して固定消火剤に点火する回路機能、外部から点火制御信号を入力して固形消火剤に点火する回路機能、及び消火起動信号を外部に出力する回路機能を備えれば、適宜の回路とすることができる。
【0123】
(温度検出部)
また、温度検出部は、シース熱電対を用いた上記の実施形態に限定されず、モジュール電池が動作する約300℃の高温環境で火災に伴う温度上昇を検知する適宜の温度検出素子を用いた温度検出部としても良い。
【0124】
例えば、温度検出部として、モジュール電池の断熱容器内に、熱感知ケーブルを布設しても良い。この場合、熱感知ケーブルの布設は、多数のナトリウム・硫黄電池の配列位置の上部を通過するようにする。熱感知ケーブルは、モジュール電池の動作温度に耐えることのできる絶縁材料で絶縁被覆した2本の撚られた信号線であり、2本の信号線の間に発煙消火装置から電圧を印加しておき、ナトリウム・硫黄電池の開放破壊による高熱を受けた場合の絶縁被覆の溶融により一対の信号線が短絡状態に接触し、感知電流が流れることで火災を検出する。
【0125】
本実施形態の熱感知ケーブルに使用する絶縁材料としては、例えば600℃の耐熱性もつマイカ(雲母)を主成分としたマイカテープを使用して絶縁被覆した熱感知ケーブルを使用することができる。
【0126】
また、熱感知ケーブルを設けた場合の点火回路部は、図11の点火回路部68において、マルチプレクサ96及びアンプ98を除き、抵抗104をマイナス側から切り離して熱感知ケーブルの一方の信号線を接続し、熱感知ケーブルの他方の信号線をマイナス側に接続した回路構成とすれば良い。
【0127】
(噴出管と噴出ヘッドの構成)
噴出ヘッド50の封止板84の材質は、耐熱樹脂製ではなく、耐熱ガラスや耐熱ガラスシート或いはガラス繊維樹脂を使用することができる。
【0128】
また、噴出ヘッド50に封止板84を設けず、噴出管44に点火回路部68に搭載されたヒータ70の通電回路に連動するアクチュエータを有した開閉弁を設け、消火用エアロゾル120の噴出と同時に常時遮断している発煙消火装置40とモジュール電池18を連通させても良い。
【0129】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0130】
10:電力貯蔵システム
12:パッケージ
14:扉
16:架台
18:モジュール電池
20:吸気ギャラリ
22:排気口
24:断熱箱
26:断熱蓋
28:ヒータパネル
30:ナトリウム・硫黄電池
32:乾燥砂
40:発煙消火装置
42:装置本体
44:噴出管
45:エルボ
46:シース熱電対
48,77,78:信号線
50:噴出ヘッド
52:ケーブル
54:筐体
56:蓋部材
58:噴出管接続口
60:消火剤収納ケース
62:固形消火剤
64,65,66:支持片
68:点火回路部
70:ヒータ
72:コネクタ
74:プラグ
75:煙道
76:電源線
80:火炎噴出防止部材
84:封止板
96:マルチプレクサ
98:アンプ
100:トランジスタ
108:リレー
110,112,114:常開リレー接点
115:プレート収納部
116:断熱プレート
118:切欠
120:消火用エアロゾル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17