特許第6103919号(P6103919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工工作機械株式会社の特許一覧

特許6103919高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103919
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 3/02 20060101AFI20170316BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   H05H3/02
   H01L21/02 B
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-276259(P2012-276259)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-120402(P2014-120402A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】三菱重工工作機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】津野 武志
(72)【発明者】
【氏名】木ノ内 雅人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 崇之
(72)【発明者】
【氏名】井手 健介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 毅典
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−529612(JP,A)
【文献】 特開昭62−180935(JP,A)
【文献】 特開2008−088931(JP,A)
【文献】 特開2008−302370(JP,A)
【文献】 特開2000−238000(JP,A)
【文献】 特開平10−305488(JP,A)
【文献】 特開平10−092702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 3/02
G21K 1/00
G21K 5/04
C23C 14/34
B23K 20/20
B23K 20/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の回りに設けられ、内部空間を有する筒状のリング形状を有し、前記リングの前記中心軸側の側面に等間隔又は連続的に並んだ複数の照射孔部を備える筐体と、
前記筐体の前記内部空間の延伸方向に沿って伸びるように前記内部空間に設けられた電極体と
を具備し、
前記筐体および前記電極体は、それぞれ前記筐体の前記内部空間にサドルフィールド型の電界を発生させる陰極および陽極として構成され、
前記筐体の前記内部空間から放出されるビームは、前記複数の照射孔部の各々を通過して前記リングの前記中心軸に向いている
高速原子ビーム源。
【請求項2】
請求項1に記載の高速原子ビーム源において、
前記複数の照射孔部に対応する前記リングの前記側面中心の法線としての複数の照射軸は、前記リングの前記中心軸上の一点で交わる
高速原子ビーム源。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高速原子ビーム源において、
前記筐体は、前記リングを分割した円弧の形状を有する複数の部分筐体を備え、
前記電極体は、前記複数の部分筐体の内部に設けられ、前記円弧に沿って伸びる複数の電極体を備える
高速原子ビーム源。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高速原子ビーム源において、
前記電極体は、前記リングの前記内部空間の延伸方向に沿って伸び、上下に平行に並んだ二本の電極棒を含む
高速原子ビーム源。
【請求項5】
請求項3に記載の高速原子ビーム源において、
前記複数の部分筐体の各々は、
前記リングの前記側面が、前記リングの前記中心軸を中心とする円に外接するように並んだ複数の平面で形成されている
高速原子ビーム源。
【請求項6】
請求項3に記載の高速原子ビーム源において、
前記複数の部分筐体の各々は、複数の箱形筐体を含み、
前記複数の箱形筐体は、前記リングの前記中心軸を中心とする円に外接するように並んで配置される
高速原子ビーム源。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の高速原子ビーム源において、
前記複数の照射孔部の各々は、前記リングの円周に沿った横長の形状を有する
高速原子ビーム源。
【請求項8】
第1基板の第1表面に照射される複数の第1活性化ビームをそれぞれ出射する第1高速原子ビーム源と、
第2基板の第2表面に照射される複数の第2活性化ビームをそれぞれ出射する第2高速原子ビーム源と、
前記第1活性化ビームと前記第2活性化ビームとがそれぞれ照射された前記第1表面と前記第2表面とを接触させることにより、前記第1基板と前記第2基板とを接合する圧接機構と
を具備し、
前記第1高速原子ビーム源は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の高速原子ビーム源を含み、
前記複数の第1活性化ビームは、前記複数の照射孔部から照射され、
前記リングの前記中心軸は、前記第1基板の中心と重なり、
前記第2高速原子ビーム源は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の高速原子ビーム源を含み、
前記複数の第2活性化ビームは、前記複数の照射孔部から照射され、
前記リングの前記中心軸は、前記第2基板の中心と重なる
常温接合装置。
【請求項9】
請求項8の常温接合装置において、
前記第1高速原子ビーム源と前記第2高速原子ビーム源とに対応する複数の位置調整機構を更に具備し、
前記複数の位置調整機構のうちの前記第1高速原子ビーム源に対応する位置調整機構は、前記第1高速原子ビーム源を、前記複数の照射孔部の複数の法線が前記第1表面と所定の第1角度で交わるように、前記第1基板へ向け、
前記複数の位置調整機構のうちの前記第2高速原子ビーム源に対応する位置調整機構は、前記第2高速原子ビーム源を、前記複数の照射孔部の前記複数の法線が前記第2表面と所定の第2角度で交わるように、前記第2基板へ向ける
常温接合装置。
【請求項10】
請求項9の常温接合装置において、
前記第1高速原子ビーム源の前記複数の照射孔部の前記複数の法線と前記第1表面とは、前記第1基板の中心近傍で交わり、
前記第2高速原子ビーム源の前記複数の照射孔部の前記複数の法線と前記第2表面とは、前記第2基板の中心近傍で交わる
常温接合装置。
【請求項11】
第1基板の第1表面に照射される複数の第1活性化ビームをそれぞれ出射する第1高速原子ビーム源と、
第2基板の第2表面に照射される複数の第2活性化ビームをそれぞれ出射する第2高速原子ビーム源と、
前記第1活性化ビームと前記第2活性化ビームとがそれぞれ照射された前記第1表面と前記第2表面とを接触させることにより、前記第1基板と前記第2基板とを接合する圧接機構と
を具備し、
前記第1高速原子ビーム源は、請求項3に記載の高速原子ビーム源を含み、
前記複数の第1活性化ビームは、前記複数の照射孔部から照射され、
前記リングの前記中心軸は、前記第1基板の中心と重なり、
前記第2高速原子ビーム源は、請求項3に記載の高速原子ビーム源を含み、
前記複数の第2活性化ビームは、前記複数の照射孔部から照射され、
前記リングの前記中心軸は、前記第2基板の中心と重なる
前記第1高速原子ビーム源と前記第2高速原子ビーム源とは一体であり、
当該一体の高速原子ビーム源としての単一高速原子ビーム源は、
当該一体の高速原子ビーム源としての単一高速原子ビーム源に対応する複数の位置調整機構を更に具備し、
前記複数の位置調整機構は、
前記単一高速原子ビーム源を、前記複数の照射孔部の前記複数の法線が前記第1表面と所定の第1角度で交わるように、前記第1基板へ向け、
前記単一高速原子ビーム源を、前記複数の照射孔部の前記複数の法線が前記第2表面と所定の第2角度で交わるように、前記第2基板へ向ける
常温接合装置。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか一項に記載の常温接合装置において、
前記第1高速原子ビーム源および前記第2高速原子ビーム源は、前記複数の照射孔部が前記第1高速原子ビーム源又は前記第2高速原子ビーム源の前記中心軸に対して線対称となるように配置される
常温接合装置。
【請求項13】
請求項12に記載の常温接合装置において、
前記第1高速原子ビーム源および前記第2高速原子ビーム源の各々は、前記複数の照射孔部が前記リングの内周に概ね20個以上等分配置される、あるいは照射孔が連続して形成された形状を有する
常温接合装置。
【請求項14】
請求項3に記載の高速原子ビーム源における前記複数の部分筐体のうちの一つとしての円弧の形状を有する単一の部分筺体を含む
高速原子ビーム源。
【請求項15】
請求項8乃至13のいずれか一項に記載の常温接合装置を用いた常温接合方法であって、
第1高速原子ビーム源で、複数の第1活性化ビームを、それぞれ第1基板の第1表面に照射する工程と、
第2高速原子ビーム源で、複数の第2活性化ビームを、それぞれ第2基板の第2表面に照射する工程と、
圧接機構で、前記複数の第1活性化ビームと前記複数の第2活性化ビームとがそれぞれ照射された前記第1表面と前記第2表面とを接触させることにより、前記第1基板と前記第2基板とを接合する工程と
を具備する
常温接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法に関し、特に、基板の表面を活性化する高速原子ビーム源と、活性化された表面を接触させて複数の基板を接合する常温接合装置および常温接合方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
微細な電気部品や機械部品を集積化したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が知られている。そのMEMSとしては、マイクロマシン、圧力センサ、超小型モーターなどが例示される。半導体ウェハ上に形成されたLSI(Large Scale Integration)が積層されることにより作製される半導体デバイスが知られている。このような半導体デバイスは、リーク電流の増大や配線における信号遅延などを低減することができる。
【0003】
真空雰囲気で活性化されたウェハ表面同士を接触させ、そのウェハを接合する常温接合が知られている。このような常温接合は、そのMEMSを作製することに好適であり、半導体デバイスを作製することに好適である。そのMEMSおよびその半導体デバイスは、生産性の増大、低価格化が望まれている。それゆえ、そのMEMSおよびその半導体デバイスは、大口径(例示:12インチ)の半導体ウェハから作製されることが望まれている。そのため、大口径の半導体ウェハをより適切に常温接合することができる常温接合装置が望まれている。
【0004】
関連する技術として特許第2791429号公報にシリコンウェハの接合方法が開示されている。そのシリコンウェハの接合方法は、大きな接合強度を持ち、かつ荷重による押し付けや加熱処理を必要としない。そのシリコンウェハの常温接合方法は、シリコンウェハとシリコンウェハとを接合する方法であって、両方のシリコンウェハの接合面を接合に先立って室温の真空中で不活性ガスイオンビーム又は不活性ガス高速原子ビームで照射してスパッタエッチングすることを特徴としている。この方法では、接合前のウェハ表面の活性化として、1つのウェハに対して、1つの方向から活性化する。
【0005】
また、特許第4992604号公報に接合装置、接合方法が開示されている。この接合装置は、2体のウェハを接合する。この接合装置は、平坦化装置と、活性化装置と、搬送装置とを備える。平坦化装置は、前記2体のウェハの接合面をそれぞれ平坦化する。活性化装置は、前記平坦化された前記接合面を活性化する。搬送装置は、前記平坦化装置から前記活性化装置に前記接合面の酸化を抑制する雰囲気中で前記ウェハを搬送する。この装置では、接合前のウェハ表面の活性化として、1つのウェハに対して、1つの方向から活性化する。
【0006】
また、特許第3970304号公報に常温接合装置が開示されている。この常温接合装置は、接合チャンバーと、上側ステージと、キャリッジと、弾性案内と、位置決めステージと、第1機構と、第2機構と、キャリッジ支持台とを具備する。接合チャンバーは、上側基板と下側基板とを常温接合するための真空雰囲気を生成する。上側ステージは、前記接合チャンバーの内部に設置され、前記上側基板を前記真空雰囲気に支持する。キャリッジは、前記接合チャンバーの内部に設置され、前記下側基板を前記真空雰囲気に支持する。弾性案内は、前記キャリッジに同体に接合される。位置決めステージは、前記接合チャンバーの内部に設置され、水平方向に移動可能に前記弾性案内を支持する。第1機構は、前記弾性案内を駆動して前記水平方向に前記キャリッジを移動する。第2機構は、前記水平方向に垂直である上下方向に前記上側ステージを移動する。キャリッジ支持台は、前記接合チャンバーの内部に設置され、前記下側基板と前記上側基板とが圧接されるときに、前記上側ステージが移動する方向に前記キャリッジを支持する。前記弾性案内は、前記下側基板と前記上側基板とが接触しないときに前記キャリッジが前記キャリッジ支持台に接触しないように前記キャリッジを支持する。前記弾性案内は、前記下側基板と前記上側基板とが圧接されるときに前記キャリッジが前記キャリッジ支持台に接触するように弾性変形する。この装置では、接合前の基板(ウェハ)表面の活性化として、2つの基板に対して、1つの方向から活性化する。
【0007】
また、特許第4172806号公報(US2010000663(A1))に常温接合方法及び常温接合装置が開示されている。この常温接合方法は、複数の基板を、中間材を介して常温で接合する。この常温接合方法は、複数のターゲットを物理スパッタリングすることによって、前記基板の被接合面上に前記中間材を形成する工程と、前記基板の被接合面を物理スパッタリングにより活性化する工程と、を含むことを特徴としている。この装置では、接合前の基板(ウェハ)表面の活性化として、2つの基板に対して、1つの方向から活性化する。
【0008】
常温接合装置を大口径のウェハで使用可能にするために必要な技術の一つとして、ウェハ全面を均一に活性化する技術が挙げられる。上記の常温接合装置や常温接合方法では、接合前のウェハ(基板)表面の活性化として、表面活性化源1台で1方向からのビーム照射により1枚もしくは2枚のウェハをエッチングしているか、又は、表面活性化源2台でそれぞれ1方向からのビーム照射により2枚の基板をエッチングしている。しかし、ウェハが大口径化するに従い、上記の装置や方法では均一かつ十分にウェハ表面をエッチングすることが困難になってきている。装置を大型化する方法も考えられるが、均一かつ十分にウェハ表面をエッチングするためには装置を非常に大きくする必要があり、非常にコストがかかる等の問題がある。大口径のウェハを常温接合することができ、かつ、よりコンパクトである常温接合装置が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2791429号公報
【特許文献2】特許第4992604号公報
【特許文献3】特許第3970304号公報
【特許文献4】特許第4172806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、複数の大口径の基板をより適切に接合するための高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法を提供することにある。本発明の他の目的は、複数の大口径の基板を接合するための、よりコンパクトな高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法を提供することにある。本発明の更に他の目的は、大口径の基板の表面をより均一かつ十分に活性化する高速原子ビーム源と、複数の大口径の基板をより均一かつ十分に接合する常温接合装置および常温接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、発明を実施するための形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0012】
本発明による高速原子ビーム源は、筐体(20)と、電極体(21)とを具備している。筐体(20)は、リング形状を有し、リングの内側の面(20p)に等間隔又は連続的に並んだ複数の照射孔部(22)を備える。電極体(21)は、筐体(20)の内部に設けられ、リングの円周に沿って伸びる。筐体(20)および電極体(21)は、それぞれ筐体(20)の内部にサドルフィールド型の電界を発生させる陰極および陽極として構成されている。複数の照射孔部(22)の各々におけるリングの内側の面は、リングの中心軸(D)に向く。
このような高速原子ビーム源では、複数の照射孔部(22)から、サドルフィールド型の電界で加速された活性化ビームが、リングの中心軸へ向かって出射される。したがって、このような高速原子ビーム源は、その筐体(20)(リング)の中心軸上にウェハの中心が来るように大口径ウェハが設置されたとき、その大口径ウェハの表面に活性化ビームを、複数の照射孔部(22)から均一かつ十分に照射することができる。それにより、大口径ウェハの表面をより均一かつ十分に活性化することができる。ただし、その筐体(20)(リング)の内径は、大口径ウェハの直径よりも大きいものとする。このような高速原子ビーム源は、活性化ビームを出射する筐体(20)が大口径ウェハを囲むようなリングの形状を有しているので、その大きさを、大口径ウェハを一回り大きくした程度に収めることができる。それにより、高速原子ビーム源の大きさをコンパクトにすることができる。
【0013】
上記の高速原子ビーム源において、複数の照射孔部(22)におけるリングの内側の面の法線としての複数の照射軸(B)は、リングの中心軸(D)上の一点で交わることが好ましい。
このような高速原子ビーム源では、その筐体(20)(リング)の中心にウェハの中心が来るように大口径ウェハが設置されたとき、複数の照射孔部(22)は、ウェハの中心に対して、同心となる円周上に位置する。そして、複数の照射孔部(22)の照射軸(B)は活性化対象であるウェハの表面に対し、一定の角度(α)をもって入射する。したがって、このような高速原子ビーム源は、その大口径ウェハの表面に活性化ビームを、複数の照射孔部(22)からより均一かつ十分に照射することができる。それにより、大口径ウェハの表面を更により均一かつ十分に活性化することができる。
【0014】
上記の高速原子ビーム源において、筐体(20)は、リングを分割した円弧の形状を有する複数の部分筐体(20−1〜20−4)を備えていることが好ましい。その場合、電極体(21)は、複数の部分筐体(20−1〜20−4)の内部に設けられ、円弧に沿って伸びる複数の電極体(21−1〜21−4)を備えていることが好ましい。
このような高速原子ビーム源は、部分筐体(20−i)の複数の照射孔部(22)の向き(X、Y、Z、θ)の変更が容易で、その変更幅を大きくすることができる。すなわち、活性化ビームの向きの変更が容易で、その変更幅を大きくすることができる。このことは、ビーム照射軸(B)のウェハに対する入射角(α)およびビームとウェハとが交差する点の位置座標の調整を調整可能であり、それゆえ、これら2つを合わせると、ビーム照射孔部(22)の中心点(24)からビームとウェハとが交差する点までの距離を調整可能であることを意味している。そのため、大口径のウェハ(基板)の表面をより容易に均一かつ十分に活性化することができる。また、このような高速原子ビーム源は、部分筐体(20−i)が円弧状なので、リング状の筐体よりも製造が容易であり、量産にも向いている。なお、照射孔部(22)の中心点(24)とは、照射孔部(22)にビームを放出するための開孔が複数集合している場合、それら全体を1つの開孔群と捉え、その見かけ上の幾何的な中心点を指すものとする。
【0015】
上記の高速原子ビーム源において、アノード電極体(21)は、リングの円周に沿って伸び、上下に平行に並んだ二本の電極棒(21)であることが好ましい。
このような高速原子ビーム源は、サドルフィールド型の電界を安定的に発生できる。その結果、大口径のウェハ(基板)の表面をより均一かつ十分に活性化することができる。
【0016】
上記の高速原子ビーム源において、複数の部分筐体(20−1〜20−4)の各々は、リングの内側の面が、リングの中心軸(D)を中心とする円(L)に外接する複数の平面(20ps)で形成されていても良い。
このような高速原子ビーム源は、リングの内側の面が平面を連続的に接合して形成できるので、曲面よりも製造が容易である。この場合、リングの外側の面は、同様に平面を連続的に接合して形成しても良いし、曲面を用いて形成しても良い。
【0017】
上記の高速原子ビーム源において、複数の部分筐体(20−1〜20−4)の各々は、複数の箱形筐体(20−ij)を含んでも良い。その場合、複数の箱形筐体(20−1j〜20−4j)は、中心軸(D)を中心とする円(L)に外接するように並んで配置されることが好ましい。
このような高速原子ビーム源は、部分筐体(20−i)が平面を組み合わせて形成できるので、そうでない場合よりも製造が容易である。
【0018】
上記の高速原子ビーム源において、複数の照射孔部の各々は、リングの円周に沿った横長の形状を有していてもよい。
このような高速原子ビーム源は、周囲から活性化ビームをウェハへ照射するので、大口径ウェハの表面を、より均一かつ十分に活性化することができる。
【0019】
本発明の常温接合装置は、第1高速原子ビーム源(18)と、第2高速原子ビーム源(17)と、圧接機構(15)とを具備している。第1高速原子ビーム源(18)は、第1基板の第1表面に照射される複数の第1活性化ビームをそれぞれ出射する。第2高速原子ビーム源(17)は、第2基板の第2表面に照射される複数の第2活性化ビームをそれぞれ出射する。圧接機構(15)は、第1表面と第2表面とが照射された後に、第1活性化表面と第2活性化表面とを接触させることにより、第1基板と第2基板とを接合する。第1高速原子ビーム源(18)は、上記各段落のいずれかに記載の高速原子ビーム源を含む。複数の第1活性化ビームは、複数の照射孔部(22)から照射される。リングの中心軸(D)は、第1基板の中心と重なる。第2高速原子ビーム源(17)は、上記段落のいずれかに記載の高速原子ビーム源を含む。複数の第2活性化ビームは、複数の照射孔部(22)から照射される。リングの中心軸(D)は、第2基板の中心と重なる。
このような常温接合装置では、上記各段落のいずれかに記載の高速原子ビーム源の複数の照射孔部(22)から、サドルフィールド型の電界で加速された第1、第2活性化ビームが、上側および下側の大口径ウェハへ出射される。したがって、このような常温接合装置は、上側および下側の大口径ウェハの表面を、それぞれより均一かつ十分に活性化することができる。その結果、上側および下側の大口径ウェハをより適切に接合することが可能となる。また、このような常温接合装置は、上記各段落のいずれかに記載の高速原子ビーム源を用いているので、その高速原子ビーム源を含む装置全体の大きさをコンパクトにすることができる。
【0020】
上記の常温接合装置は、第1高速原子ビーム源(18)と第2高速原子ビーム源(17)とに対応する複数の位置調整機構(31)を更に具備していることが好ましい。この場合、複数の位置調整機構のうちの第1高速原子ビーム源(18)に対応する位置調整機構(31)は、第1高速原子ビーム源(18)を、複数の照射孔部(22)の複数の法線(B)が第1活性化表面と所定の第1角度で交わるように、第1基板へ向ける。また、複数の位置調整機構のうちの第2高速原子ビーム源(17)に対応する位置調整機構(31)は、第2高速原子ビーム源(17)を、複数の照射孔部(22)の複数の法線(B)が第2活性化表面と所定の第2角度で交わるように、第2基板へ向ける。
このような常温接合装置は、第1高速原子ビーム源(18)および第2高速原子ビーム源(17)の向きを所望の向きに調整することができる。それにより、上側および下側の大口径ウェハの表面を、それぞれ更により均一かつ十分に活性化することができる。その結果、上側および下側の大口径ウェハを更により適切に接合することが可能となる。
また、上記の常温接合装置は、上記の高速原子ビーム源(17)(18)において、筐体(20)が、リングを分割した円弧の形状を有する複数の部分筐体(20−1〜20−4)を備えていることが好ましい。複数の部分筐体が個々に位置調整機構(31)を具備することにより、ビーム照射軸(B)のウェハに対する入射角(α)およびビームとウェハとが交差する点の位置座標の調整、またこの2つを合わせて、ビーム照射孔部(22)の中心(24)から、ビームとウェハとが交差する点までの距離を調整可能となる。
このような常温接合装置は、第1高速原子ビーム源(18)および第2高速原子ビーム源(17)を、より簡便に所望の向き、位置に調整することができる。それにより、上側および下側の大口径ウェハの表面を、それぞれ更により容易に均一かつ十分に活性化することができる。その結果、上側および下側の大口径ウェハを更により適切に接合することが可能となる。
【0021】
上記の常温接合装置において、第1高速原子ビーム源(18)の複数の照射孔部(22)の複数の法線(B)と第1活性化表面とは、第1基板の中心近傍で交わっても良い。第2高速原子ビーム源(17)の複数の照射孔部(22)の複数の法線(B)と第2活性化表面とは、第2基板の中心近傍で交わっても良い。
このような常温接合装置は、ウェハ外周辺に位置する金属部材にまでビームスパッタ効果が及ぶことが抑制され、上側および下側の大口径ウェハの表面を、それぞれ、より確実に、更により均一かつ十分に活性化することができる。その結果、上側および下側の大口径ウェハを更により適切に接合することが可能となる。
【0022】
上記の常温接合装置において、第1高速原子ビーム源(18)と第2高速原子ビーム源(17)とが、筐体(20)として、リングを分割した円弧の形状を有する複数の部分筐体(20−1〜20−4)を備えているとき、第1高速原子ビーム源(18)と第2高速原子ビーム源(17)とは一体であっても良い。その場合、当該一体の高速原子ビーム源としての単一高速原子ビーム源(19)に対応する複数の位置調整機構(31)を更に具備する。複数の位置調整機構(31)は、単一高速原子ビーム源(19)を、複数の照射孔部(22)の複数の法線(B)が第1活性化表面と所定の第1角度で交わるように、第1基板へ向ける。単一高速原子ビーム源(19)を、複数の照射孔部(22)の複数の法線(B)が第2活性化表面と所定の第2角度で交わるように、第2基板へ向ける。
このような常温接合装置は、高速原子ビーム源および位置調整機構の数を相対的に減らすことができる。それにより、常温接合装置の大きさを更にコンパクトにすることができる。
【0023】
上記の常温接合装置において、第1高速原子ビーム源(18)および第2高速原子ビーム源(17)は、複数の照射孔部(22)が第1高速原子ビーム源(18)又は第2高速原子ビーム源(17)の中心軸に対して線対称となるように配置されることが好ましい。
このような常温接合装置は、複数の照射孔部(22)の各々から各基板へ概ね均等に活性化ビームが照射される。それにより、上側および下側の大口径ウェハの表面を、それぞれより均一かつ十分に活性化することができる。その結果、上側および下側の大口径ウェハをより適切に接合することが可能となる。
【0024】
上記の常温接合装置において、前記第1高速原子ビーム源(18)および前記第2高速原子ビーム源(17)の各々は、前記複数の照射孔部(22)が前記リングの内周に概ね20個以上等分配置される、あるいは照射孔が連続して形成された形状を有することが好ましい。
このような常温接合装置は、概ね20個以上の方向から活性化ビームをウェハへ照射するので、上側および下側の大口径ウェハの表面を、それぞれ、より確実に、より均一かつ十分に活性化することができる。その結果、上側および下側の大口径ウェハをより適切に接合することが可能となる。
【0025】
本発明の高速原子ビーム源は、上述の高速原子ビーム源における複数の部分筐体(20−1〜20−4)のうちの一つとしての円弧の形状を有する部分筺体(20−i)を含むことが好ましい。
このような高速原子ビーム源は、部分筐体(20−i)の複数の照射孔部(22)の向き(X、Y、Z、θ)の変更が容易で、その変更幅を大きくすることができる。すなわち、活性化ビームの向きの変更が容易で、その変更幅を大きくすることができる。そして、複数個組み合わせて常温接合装置に組み込むことで、大口径のウェハ(基板)の表面をより容易に均一かつ十分に活性化することができる。
【0026】
本発明による常温接合方法は、上記各段落のいずれか一項に記載の常温接合装置を用いた常温接合方法である。その常温接合方法は、少なくとも3つの工程を具備している。第1の工程は、第1高速原子ビーム源(18)で、複数の第1活性化ビームを、それぞれ第1基板の第1活性化表面に照射する工程である。第2の工程は、第2高速原子ビーム源(17)で、複数の第2活性化ビームを、それぞれ第2基板の第2活性化表面に照射する工程である。第3の工程は、圧接機構(15)で、第1活性化表面と第2活性化表面とが照射された後に、記第1活性化表面と第2活性化表面とを接触させることにより、第1基板と前記第2基板とを接合する工程である。
このような常温接合方法は、上記各段落のいずれかに記載の常温接合装置を用いているので、上側および下側の大口径ウェハの表面を、それぞれより均一かつ十分に活性化することができる。その結果、上側および下側の大口径ウェハをより適切に接合することが可能となる。このような常温接合方法は、上記各段落のいずれかに記載の常温接合装置を用いているので、コンパクトに実施することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、複数の大口径の基板をより適切に接合するための高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法を提供することができる。複数の大口径の基板を接合するための、よりコンパクトな高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法を提供することができる。大口径の基板の表面をより均一かつ十分に活性化する高速原子ビーム源と、複数の大口径の基板をより均一かつ十分に接合する常温接合装置および常温接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施の形態に係る常温接合装置の構成を模式的に示すXY断面図である。
図2図2は、実施の形態に係る常温接合装置の構成を模式的に示すYZ断面図である。
図3図3は、第1の実施の形態に係るガス種切替機構の構成を模式的に示すブロック図である。
図4A図4Aは、第1の実施の形態に係る高速原子ビーム源を模式的に示す斜視図である。
図4B図4Bは、第1の実施の形態に係る高速原子ビーム源の照射孔部の形状を模式的に示す斜視図である。
図4C図4Cは、第1の実施の形態に係る高速原子ビーム源の照射孔部の形状を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、第1の実施の形態に係る高速原子ビーム源を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、実施の形態に係る常温接合装置の常温接合装置制御装置を示すブロック図である。
図7図7は、実施の形態に係る常温接合方法を示すフローチャートである。
図8A図8Aは、第1の実施の形態に係る常温接合装置で活性化されたウェハのエッチングレートの分布を示す分布図およびグラフである。
図8B図8Bは、第1の実施の形態に係る常温接合装置で活性化されたウェハのエッチングレートの分布を示す分布図およびグラフである。
図9図9は、第1の実施の形態に係る常温接合装置で活性化されたウェハのエッチングレートの分布を示す分布図およびグラフである。
図10図10は、比較例に係る常温接合装置で活性化されたウェハのエッチングレートの分布を示す分布図およびグラフである。
図11A図11Aは、第2の実施の形態に係る高速原子ビーム源を模式的に示す斜視図である。
図11B図11Bは、第2の実施の形態に係る高速原子ビーム源の照射孔部の形状を模式的に示す斜視図である。
図11C図11Cは、第2の実施の形態に係る高速原子ビーム源の照射孔部の形状を模式的に示す斜視図である。
図12図12は、第3の実施の形態に係る高速原子ビーム源を模式的に示す斜視図である。
図13A図13Aは、第2、第3の実施の形態に係る高速原子ビーム源の構成を模式的に示す平面図である。
図13B図13Bは、第4の実施の形態に係る高速原子ビーム源の構成を模式的に示す平面図である。
図13C図13Cは、第4の実施の形態に係る高速原子ビーム源の他の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態に係る高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法について説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法について説明する。図1および図2は、それぞれ本実施の形態に係る常温接合装置の構成を模式的に示すXY断面図およびYZ断面図である。その常温接合装置1は、ロードロックチャンバー2と接合チャンバー3とを備えている。ロードロックチャンバー2および接合チャンバー3は、いずれも環境から内部を密閉する容器に形成されている。常温接合装置1は、更に、ゲート5とゲートバルブ6とを備えている。ゲート5は、ロードロックチャンバー2と接合チャンバー3との間に介設され、接合チャンバー3の内部とロードロックチャンバー2の内部とを接続している。ゲートバルブ6は、その常温接合装置1の常温接合装置制御装置(後述)に制御されることにより、ゲート5を閉鎖又は開放する。
【0031】
ロードロックチャンバー2は、蓋および真空排気装置(図示されず)を備えている。その蓋は、ユーザに操作されることにより、環境とロードロックチャンバー2の内部とを接続する開口部を閉鎖又は開放する。その真空排気装置は、その開口部とゲート5とが閉鎖されているとき、常温接合装置制御装置に制御されることにより、ロードロックチャンバー2の内部から気体を排気する。その真空排気装置としては、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、油拡散ポンプが例示される。
【0032】
ロードロックチャンバー2は、更に、複数の棚7と搬送ロボット8とを内部に備えている。複数の棚7には、複数のカートリッジが載せられる。カートリッジは、概ね円盤状に形成されている。カートリッジが形成される材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、窒化アルミニウム、シリコン、石英、グラッシーカーボンが例示される。カートリッジは、その上にウェハが載せられて利用される。搬送ロボット8は、ゲート5が開放されているとき、常温接合装置制御装置に制御されることにより、複数の棚7に配置されたカートリッジを接合チャンバー3の内部に搬送し、又は、接合チャンバー3の内部に配置されたカートリッジを複数の棚7に搬送する。
【0033】
接合チャンバー3は、蓋9および真空排気装置10を備えている。蓋9は、ユーザに操作されることにより、環境と接合チャンバー3の内部とを接続する開口部を閉鎖又は開放する。真空排気装置10は、ゲート5が閉鎖されているときに、常温接合装置制御装置に制御されることにより、接合チャンバー3の内部から気体を排気する。真空排気装置10としては、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、油拡散ポンプが例示される。
【0034】
接合チャンバー3は、更に、位置決めステージキャリッジ11と位置合わせ機構12とを備えている。位置決めステージキャリッジ11は、板状に形成されている。位置決めステージキャリッジ11は、接合チャンバー3の内部に配置され、水平方向に平行移動可能に、かつ、鉛直方向の回転軸を中心に回転移動可能に支持されている。位置決めステージキャリッジ11は、ウェハwが載せられたカートリッジを保持することにより、そのウェハwを保持する。位置合わせ機構12は、常温接合装置制御装置に制御されることにより、位置決めステージキャリッジ11が水平方向に平行移動するように、又は、位置決めステージキャリッジ11が鉛直方向の回転軸を中心に回転移動するように、位置決めステージキャリッジ11を移動させる。
【0035】
接合チャンバー3は、更に、静電チャック14と圧接機構15とを備えている。
静電チャック14は、接合チャンバー3の内部に配置され、位置決めステージキャリッジ11の鉛直上方に配置されている。静電チャック14は、鉛直方向に平行移動可能に接合チャンバー3に支持されている。静電チャック14は、アルミナ系セラミックに例示される絶縁体である誘電層から形成されている。静電チャック14は、鉛直方向に概ね垂直で平坦な面が下端に形成されている。静電チャック14は、更に、その誘電層の内部に配置される内部電極(図示されず)を備えている。静電チャック14では、常温接合装置制御装置に制御されることにより、その内部電極に所定の印加電圧が印加される。静電チャック14は、その内部電極に所定の印加電圧が印加されることにより、その誘電層の平坦な面の近傍に配置されるウェハw又は基板を静電力によって保持する。
【0036】
圧接機構15は、その常温接合装置制御装置に制御されることにより、接合チャンバー3に対して鉛直方向に静電チャック14を平行移動させる。例えば、圧接機構15は、その常温接合装置制御装置に制御されることにより、複数の位置のうちの1つの位置に静電チャック14を配置する。その複数の位置は、アライメント位置とホーム位置と活性化位置とを含んでいる。そのアライメント位置は、下側のウェハwが位置決めステージキャリッジ11に保持されている場合で、上側のウェハwが静電チャック14に保持されているときに、その下側ウェハwと上側ウェハwとが所定の距離(例示:1mm)だけ離れるように設計される。そのホーム位置は、そのアライメント位置より更に鉛直上方である。その活性化位置は、そのホーム位置より更に鉛直上方である。圧接機構15は、更に、常温接合装置制御装置に制御されることにより、上側ウェハwが下側ウェハwに圧接されるように、接合チャンバー3に対して鉛直方向に静電チャック14を平行移動させる。圧接機構15は、更に、常温接合装置制御装置に制御されることにより、静電チャック14が配置される位置を測定し、その位置を常温接合装置制御装置に出力する。圧接機構15は、更に、常温接合装置制御装置に制御されることにより、静電チャック14により保持されたウェハに印加される荷重を測定し、その荷重を常温接合装置制御装置に出力する。
【0037】
接合チャンバー3は、更に、活性化装置16を備えている。活性化装置16は、下側原子ビーム源17と上側原子ビーム源18と位置調整機構31とを備えている。下側原子ビーム源17は、リングの形状を有し、接合チャンバー3の内部であって上側原子ビーム源18よりも下側に配置されている。下側原子ビーム源17は、FAB(Fast Atom Beam)源に例示される高速原子ビーム源であり、下側ウェハwへ活性化ビームとして高速原子ビームを照射する。上側原子ビーム源18は、リングの形状を有し、接合チャンバー3の内部であって下側原子ビーム源17よりも上側に配置されている。上側原子ビーム源18は、FAB源に例示される高速原子ビーム源であり、上側ウェハwへ活性化ビームとして高速原子ビームを照射する。ただし、下側原子ビーム源17および上側原子ビーム源18は、イオンビーム源であっても良い。その場合には、下側原子ビーム源17および上側原子ビーム源18は、ウェハwへ活性化ビームとしてイオンビームを照射する。以下では、高速原子ビーム源として説明する。
【0038】
位置調整機構31は、接合チャンバー3の内部に設けられ、下側原子ビーム源17および上側原子ビーム源18を接合チャンバー3に移動可能に保持する。この図の例では、位置調整機構31のうちの位置調整機構31aは、下側原子ビーム源17のリングの直径方向の両端を支持するように2箇所に設けられている。その2箇所の位置調整機構31aは互いに連動して、下側原子ビーム源17をX方向、Y方向およびZ方向に移動可能に保持している。位置調整機構31のうちの位置調整機構31bは、上側原子ビーム源18のリングの直径方向の両端を支持するように2箇所に設けられている。その2箇所の位置調整機構31bは互いに連動して、上側原子ビーム源18をX方向、Y方向およびZ方向に移動可能に保持している。
【0039】
常温接合装置1は、更に下側原子ビーム源17および上側原子ビーム源18に対応する複数のガス種切替機構を備えている。図3は、本実施の形態に係る常温接合装置におけるガス種切替機構の構成を模式的に示すブロック図である。下側原子ビーム源17および上側原子ビーム源18に対応するガス種切替機構61は、いずれも同じ構造を有しているので、この図では、下側原子ビーム源17に対応するガス種切替機構61について示している。
【0040】
下側原子ビーム源17および上側原子ビーム源18に対応するガス種切替機構61は、常温接合装置制御装置に制御されることにより、それぞれ所定のガスをそれぞれ下側原子ビーム源17および上側原子ビーム源18に供給する。詳細には、ガス種切替機構61は、複数のガス供給装置62−1〜62−4と複数のバルブ63−1〜63−4と管路64とを備えている。複数のガス供給装置62−1〜62−4は、接合チャンバー3の外部に配置されている。複数のガス供給装置62−1〜62−4は、例えば、複数のボンベから形成され、互いに異なる複数種の気体をそれぞれ放出する。例えば、ガス供給装置62−1、62−2、62−3、62−4は、それぞれアルゴンガスAr、ネオンガスNe、クリプトンガスKr、キセノンガスXeを放出する。複数のバルブ63−1〜63−4は、接合チャンバー3の外部に配置されている。複数のバルブ63−1〜63−4のうちの任意のバルブ63−i(i=1,2,3,4)は、その常温接合装置制御装置に制御されることにより、複数のガス供給装置62−iから放出される気体を管路64に供給し、又は、その気体が管路64に供給されることを停止する。管路64は、複数のバルブ63−1〜63−4と下側原子ビーム源17又は上側原子ビーム源18とを接続している。このとき、下側原子ビーム源17又は上側原子ビーム源18は、常温接合装置制御装置に制御されることにより、ガス種切替機構61から供給されるガスを用いて高速原子ビームを生成し、出射する。
【0041】
次に、本実施の形態に係る高速原子ビーム源について更に説明する。
高速原子ビーム源としての下側原子ビーム源17および上側原子ビーム源18は、上下の向きが逆であることを除いては同じ構造を有している。そのため、以下では、高速原子ビーム源として、下側原子ビーム源17について説明する。
【0042】
図4Aは、本実施の形態に係る高速原子ビーム源としての下側原子ビーム源17を模式的に示す斜視図である(なお、上下の向きを逆にすれば、上側原子ビーム源18と見ることができる)。
【0043】
筐体20は、リングの形状を有し、そのリングの内側の面20pに等間隔又は連続的に並んだ複数の照射孔部22を備えている。電極体21は、筐体20の内部に設けられ、筐体20のリングの円周に沿って伸びている。この筐体20および電極体21は、それぞれ筐体20の内部にサドルフィールド型の電界を発生させる陰極および陽極として機能する。複数の照射孔部22の各々におけるリングの内側の面は、リングの中心軸Dに向いている。この電極体21は、リングの円周に沿って伸び、上下に平行に並んだ二本の電極棒であることが好ましい。各照射孔部22の面の中心24におけるリングの内側方向へ向かう法線を照射軸Bとすると、その照射軸Bは各照射孔部22から照射される高速原子ビームの照射方向と同じである。複数の照射孔部22の照射軸Bは、リングの中心軸Dの一点で交わる。言い換えると、複数の照射孔部22は、リングの中心軸Dに対して線対称に配置されている。又は、複数の照射孔部22は、リングの中心軸Dに対して回転対称に配置されている。
【0044】
ここで、常温接合装置1では、筐体20のリングの中心軸Dとウェハwの中心C1とが交わるように、ウェハwが配置される。そして、この図の例では、複数の照射孔部22の照射軸Bは、リングの中心軸Dの一点で交わると同時に、下側のウェハwの中心C1で交わっている。ただし、複数の照射孔部22の照射軸Bは、リングの中心軸Dを中心とするウェハw内の円C2の位置で、下側のウェハwと交わってもよい。言い換えると、少なくとも照射軸Bとウェハwとの交点は、全てウェハw上にある。
【0045】
図4Bおよび図4Cは、本実施の形態に係る高速原子ビーム源の照射孔部の形状を模式的に示す斜視図である。各照射孔部22の形状は特に制限はないが、後述されるように、筐体20のリングの円周に沿って伸びる横長の形を有することが好ましい。図4Bでは、一例として、横長の矩形の照射孔部22を示している。図示されないが、照射孔部22の形状は、角に丸みのある矩形や横長の楕円であっても良い。図4Cでは、他の例として、その横長の矩形が更に伸びて帯の形の照射孔部22を示している。この場合、端部が無くても良い。
【0046】
図5は、図4Aに示される下側原子ビーム源17の一部分を模式的に示す斜視図である。筐体20は、陰極20aと被覆部20bとを備えている。陰極20aは、リングの形状を有し、そのリングの内側の面に等間隔又は連続的に並んだ複数の照射孔部22を備えている。照射孔部22は、陰極20aの一部であり、等間隔又は連続的に配置された複数の照射孔23を有する導体である。照射孔部22は、格子状又は網状の導体(グリッド)や、複数の孔が開口した導体板に例示される。照射孔部22としては、陰極20aの側面を直接加工して形成しても良いし、陰極20aに開口部を設けて、別に作成した照射孔部用部材を取り付けても良い。照射孔部22の面は、その格子や網や板により形成される面である。照射孔23の形状は円形や楕円形や正方形や矩形など特に制限はない。ただし、照射孔部22と同様に、筐体20のリングの円周に沿って伸びる横長の形を有してもよい。
【0047】
照射孔部22の複数の照射孔23をひとまとまりの照射孔群と考えたとき、その照射孔群の領域の概ね中心点(=照射孔部22の中心点)24を通り、照射孔部22の面に概ね垂直な方向の軸が、既述の照射軸Bとなる。この照射軸Bの方向は、高速原子ビームが照射される方向と見ることもできる。全ての照射孔群の中心点(全ての照射孔部22の中心点)24は、照射対象(エッチング対象)であるウェハwの中心C1と同心となる円Lの円周上に配置されている。言い換えると、照射孔部22の複数の照射孔23は、ウェハwの中心C1と同心を成す円Lの円周上又はその近傍に配置されている。
【0048】
また、電極体21としての二本の電極棒は、照射孔部22や照射孔23と同様に、照射対象(エッチング対象)であるウェハwの中心C1と同心となる円の円周に沿って、リング状又は円弧状に、互いに平行に形成されている。その電極体21としての二本の電極棒は、照射孔部22の面と平行に略Z方向の上下に並んでいる。
【0049】
筐体20において、照射孔部22の面は、照射孔部22の面の方向(法線方向)が、筐体20の下側に配置されたウェハwに向くように、鉛直方向に対して予め規定された角度αだけ傾いている。言い換えると、照射軸Bの方向は、下側のウェハwに向くように、鉛直方向に対して予め規定された角度αだけ傾いている。それは、例えば、筐体20を、平面上に矩形とそれに交わらず、矩形の一辺に対して角度αだけ傾いた直線があるとき、この直線を軸にしてその矩形を回転したときできる回転体の形状とすることで実現される。あるいは、例えば、筐体20を、平面上に矩形とそれに交わらず、矩形の一辺に平行な直線があるとき、この直線を軸にしてその矩形を回転したときできる回転体について、矩形断面の形状を維持しながらその内側を下側へひねるような形状とすることで実現される。この筐体20は、矩形断面の内側の面を予め下側へ傾けたような形状である。
【0050】
その筐体20の形状に伴い、電極体21としての二本の電極棒は、上側の電極棒の中心と下側の電極棒の中心とを結ぶ線分の傾きが、所定の角度αだけ傾いている。言い換えると、上側の電極棒が形成するリングの直径は、下側の電極棒が形成するリングの直径よりも小さい。それゆえ、全ての照射軸Bは活性化対象(エッチング対象)であるウェハwの表面に対し、予め規定された角度αをもって入射する。
【0051】
筐体20は、更に、ガス導入口20cを有している。ガス導入口20cは、筐体20のリングの外側の面20qに設けられ、陰極20aと被覆部20bとを貫通する孔である。ガス導入口20cは、ガス種切替機構61から供給されるガスを陰極20a内に導入する。被覆部20bは、複数の照射孔部22を除く陰極20aの外表面を覆う陰極20aと同電位のケーシングである。
【0052】
下側原子ビーム源17は、常温接合装置制御装置に制御されることにより、陰極20aおよび電極体21にそれぞれ接地電圧および直流電圧Eを印加され、ガス種切替機構61からガス(例示:アルゴン(Ar))を供給される。それにより、筐体20の内部にサドルフィールド型の電界が発生し、筐体20内に導入したガスがプラズマ化されそのイオンがその電界により外側へ向かって加速される。加速されたイオンの一部は、筐体20の内壁や照射孔部22とのイオン衝突により発生した電子と結合して、中性原子ビーム(高速原子ビームFAB)を生成する。その中性原子ビーム(高速原子ビーム)は、複数の照射孔部22の複数の照射孔23から照射軸Bに沿ってウェハw方向へ活性化ビームとして放出される。
【0053】
次に、本実施の形態に係る常温接合装置1の常温接合装置制御装置71について説明する。図6は、本実施の形態に係る常温接合装置1の常温接合装置制御装置を示すブロック図である。常温接合装置制御装置71は、コンピュータに例示される情報処理装置であり、図示されていないCPUと記憶装置とインターフェースとを備えている。そのCPUは、常温接合装置制御装置71にインストールされているコンピュータプログラムを実行することにより、その記憶装置とそのインターフェースとを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUにより作成される情報を一時的に記録する。
【0054】
そのインターフェースは、常温接合装置制御装置71に接続されている複数の外部機器により作成される情報をそのCPUに出力したり、そのCPUにより作成された情報をその複数の外部機器に出力したりする。その複数の外部機器としては、入力装置、出力装置、通信装置、リムーバルメモリドライブが例示される。その通信装置は、常温接合装置制御装置71にインストールされるコンピュータプログラムを他のコンピュータからダウンロードすることに利用される。そのリムーバルメモリドライブは、記録媒体が挿入されたときに、その記録媒体に記録されているデータやコンピュータプログラムを記憶装置へ読み出すことやインストールすることに利用される。その記録媒体としては、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク)、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク、フラッシュメモリが例示される。
【0055】
そのインターフェースは、更に、常温接合装置1の各構成を常温接合装置制御装置71に接続している。具体的には、そのインターフェースは、ゲートバルブ6と搬送ロボット8とロードロックチャンバー2から排気する真空排気装置とを常温接合装置制御装置71に接続している。更に、そのインターフェースは、真空排気装置10と位置合わせ機構12と静電チャック14と圧接機構15と下側原子ビーム源17と上側原子ビーム源18と複数のバルブ63−1〜63−4とを常温接合装置制御装置71に接続している。
【0056】
常温接合装置制御装置71にインストールされるコンピュータプログラムは、常温接合装置制御装置71に複数の機能をそれぞれ実現させるための複数のコンピュータプログラムから形成されている。その複数の機能は、搬送部72と活性化部73と接合部74とを含んでいる。搬送部72は、ウェハの搬送、設置および取り出しに関して常温接合装置1を制御する。具体的には、ロードロックチャンバー2の真空排気装置の制御、ゲートバルブ6の開閉の制御、搬送ロボット8によるカートリッジの搬送の制御、圧接機構15の制御、および静電チャック14の制御を主に行う。活性化部73は、ウェハの活性化に関して常温接合装置1を制御する。具体的には、接合チャンバー3の真空排気装置10の制御、ガス種切替機構61の制御、圧接機構15の制御、上側原子ビーム源18および下側原子ビーム源17の制御を主に行う。接合部74は、ウェハの接合に関して常温接合装置1を制御する。具体的には、圧接機構15の制御、静電チャック14の制御、および位置合わせ機構12を主に行う。
【0057】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る常温接合方法(常温接合装置の動作)について説明する。図7は、本実施の形態に係る常温接合方法を示すフローチャートである。この常温接合方法は、上述された常温接合装置1を用いて実行される。
【0058】
常温接合装置制御装置71の搬送部72は、まず、ゲートバルブ6を制御することにより、ゲート5を閉鎖する。搬送部72は、ゲート5が閉鎖されているときに、ロードロックチャンバー2の真空排気装置を制御することにより、ロードロックチャンバー2の内部を大気圧雰囲気にし、真空排気装置10を制御することにより、接合チャンバー3の内部に接合雰囲気を生成する。
【0059】
ユーザは、複数の下側ウェハおよび複数の上側ウェハと、それらに対応した複数の下側カートリッジおよび複数の上側カートリッジとを準備する。その複数の下側ウェハは下側ウェハwを含み、その複数の上側ウェハは上側ウェハwを含む。ユーザは、ロードロックチャンバー2の蓋を開けて、複数の棚7にその複数の下側カートリッジとその複数の上側カートリッジとを配置する。下側ウェハwに対応する下側カートリッジには、活性化表面の裏がその下側カートリッジに対向するように、下側ウェハwが載せられている。上側ウェハwに対応する上側カートリッジには、活性化表面がその上側カートリッジに対向するように、上側ウェハwが載せられている。ユーザは、その後、ロードロックチャンバー2の蓋を閉鎖する。搬送部72は、その真空排気装置を制御することにより、ロードロックチャンバー2の内部を予備雰囲気にする(ステップS1)。
【0060】
搬送部72は、ゲートバルブ6を制御することにより、ゲート5を開放する。搬送部72は、搬送ロボット8を制御することにより、上側ウェハwが接合チャンバー3の位置決めステージキャリッジ11に保持されるように、その上側カートリッジを複数の棚7から位置決めステージキャリッジ11に搬送する。搬送部72は、圧接機構15を制御することにより、静電チャック14を下降させる。搬送部72は、圧接機構15を制御することにより、静電チャック14に印加される荷重を測定する。搬送部72は、その荷重が所定の接触荷重に到達するタイミングをその荷重の変化に基づいて算出し、すなわち、その上側カートリッジに載っている上側ウェハwが静電チャック14に接触するタイミングをその荷重の変化に基づいて算出する。搬送部72は、圧接機構15を制御することにより、そのタイミングで静電チャック14の下降を停止させる。
【0061】
搬送部72は、静電チャック14を制御することにより、静電チャック14に上側ウェハwを保持させる。搬送部72は、圧接機構15を制御することにより、静電チャック14がそのホーム位置に配置されるまで静電チャック14を上昇させる。搬送部72は、その後、搬送ロボット8を制御することにより、その上側カートリッジを位置決めステージキャリッジ11から複数の棚7に搬送する。
【0062】
搬送部72は、その後、搬送ロボット8を制御することにより、下側ウェハwが接合チャンバー3の位置決めステージキャリッジ11に保持されるように、その下側カートリッジを複数の棚7から位置決めステージキャリッジ11に搬送する。搬送部72は、その後、ゲートバルブ6を制御することにより、ゲート5を閉鎖する(ステップS2)。
【0063】
常温接合装置制御装置71の活性化部73は、圧接機構15を制御することにより、静電チャック14がその活性化位置に配置されるまで静電チャック14を上昇させ、真空排気装置10を制御することにより、接合チャンバー3の内部にその活性化雰囲気を生成する(ステップS3)。活性化部73は、更に、活性化装置16を制御することにより、上側ウェハwの活性化表面全部と下側ウェハwの活性化表面の全部とを活性化させる(ステップS4)。すなわち、下側ウェハwの活性化表面は、下側原子ビーム源17から照射される高速原子ビームにより活性化される。上側ウェハwの活性化表面は、上側原子ビーム源18から照射される高速原子ビームにより活性化される。
【0064】
常温接合装置制御装置71の接合部74は、その後、圧接機構15を制御することにより、静電チャック14を下降させ、静電チャック14をそのアライメント位置に配置する。接合部74は、位置合わせ機構12を制御することにより、下側ウェハwを上側ウェハwに対して所定の位置合わせ位置に配置する(ステップS5)。
【0065】
接合部74は、その後、圧接機構15を制御することにより、静電チャック14を下降させる。接合部74は、圧接機構15を制御することにより、静電チャック14に印加される荷重を測定する。接合部74は、その荷重が所定の接合荷重に到達するタイミングを算出する。接合部74は、圧接機構15を制御することにより、そのタイミングで静電チャック14の下降を停止させ、すなわち、上側ウェハwと下側ウェハwとにその接合荷重を印加する(ステップS6)。下側ウェハwと上側ウェハwとは、その接合荷重が印加されることにより、接合され、1枚の接合ウェハに形成される。
【0066】
接合部74は、その後、静電チャック14を制御することにより、その接合ウェハを静電チャック14から離脱させる。接合部74は、その後、圧接機構15を制御することにより、静電チャック14を上昇させる。搬送部72は、その後、ゲートバルブ6を制御することにより、ゲート5を開放する。搬送部72は、搬送ロボット8を制御することにより、その接合ウェハがロードロックチャンバー2に搬送されるように、その下側カートリッジを位置決めステージキャリッジ11から複数の棚7に搬送する(ステップS7)。
【0067】
搬送部72は、下側ウェハが載せられている他の下側カートリッジと上側ウェハが載せられている他の上側カートリッジとが複数の棚7に配置されているときに(ステップS8、YES)、ステップS2〜ステップS7の動作を再度繰り返して実行する。
【0068】
搬送部72は、接合することが予定されている下側ウェハと上側ウェハとが複数の棚7に配置されていないときに(ステップS8、NO)、ゲートバルブ6を制御することにより、ゲート5を閉鎖する。搬送部72は、その後、ロードロックチャンバー2の真空排気装置を制御することにより、ロードロックチャンバー2の内部を大気圧雰囲気にする(ステップS9)。ユーザは、その後、ロードロックチャンバー2の蓋を開けて、その複数の下側カートリッジとその複数の上側カートリッジとを複数の棚7から取り出すことにより、その接合ウェハを含む複数の接合ウェハをロードロックチャンバー2から取り出す。
【0069】
ユーザは、更に他の複数の下側ウェハと他の複数の上側ウェハとを更に常温接合したいときに、その複数の下側ウェハに対応する複数の下側カートリッジとその複数の上側ウェハに対応する複数の上側カートリッジとを準備し、このような常温接合方法を再度実行する。
【0070】
以上のようにして、本実施の形態に係る常温接合装置の動作が実施される。
【0071】
図8Aおよび図8Bは、本実施の形態に係る常温接合装置で活性化されたウェハのエッチングレートの分布を示す分布図およびウェハ中心を通る断面方向のプロファイルを示すグラフである。この図では、下側原子ビーム源17で下側ウェハwをエッチングした場合(ウェハ半径方向に外周から複数の高速原子ビームを照射した場合)での、ウェハ面内エッチングレートの分布を示している。また、下側原子ビーム源17は、筐体20のリングの内側の面20pを36等分し、その36等分されて形成された36面の各々に一つの照射孔部22を設けている。すなわち、36方向から同じ高速原子ビームを照射している。
【0072】
この場合、エッチングレートは同心円状に変化しているが、その変化は小さく、グラフも全体的に平坦になっている。そのエッチングレートの最大値は、ウェハ中心付近の2.3nm/min.である。そのエッチングレートの最小値は、ウェハ端部付近の0.8nm/min.である。エッチングレート比(最大値/最小値)は、2.9である。すなわち、最大値と最小値の差が小さく、概ね均一なエッチングレートの分布である。すなわち、このエッチングレートの分布は、十分に許容できる範囲ということができる。
【0073】
このように、36個の照射孔部22からウェハ全面にわたって偏りなく高速原子ビームが照射されることで、活性化の均一性の指標であるエッチングレート比を小さくすることができる。その結果、ウェハの円周方向から均等に照射される高速原子ビームにより、大面積(大口径)ウェハに均質なエッチング面を形成することができる。
【0074】
このとき、各照射孔部22から照射される高速原子ビームの広がる範囲は、ウェハ表面において、概ねウェハの形状と重なる程度と考えられる。したがって、エッチング対象とするウェハのみを集中的にエッチング(スパッタ)し、ウェハ以外の部品をエッチングすることが少なくなる。その結果、不純物のウェハへのデポジションが防止される。そして、パーティクルがウェハ上に飛散することを防止でき、接合品質が向上する。
【0075】
図9は、本実施の形態に係る常温接合装置で活性化されたウェハのエッチングレートの分布を示す分布図およびグラフである。この図では、下側原子ビーム源17は、筐体20のリングの内側の面20pを24等分し、その24等分されて形成された24面の各々に一つの照射孔部22を設けている。すなわち、24方向から同じ高速原子ビームを照射している。ただし、照射孔部22の大きさは、図8Aの場合と同様である。また、ウェハへのビーム入射角α、ウェハw上のビーム照射点を結んだ仮想円C2の径、および照射孔部中心24から照射軸Bがウェハwと交差する点までの距離といった幾何的な配置を除く、その他の印加電圧等のビーム源照射条件については図8Aの場合と同じである。
【0076】
エッチングレートは概ね同心円状に変化しているが、その変化は小さい。ただし、その変化は図8Aと比較してやや大きく、特にウェハ端部で波打ったような不均一部分が発生している。そのエッチングレートの最大値は、ウェハ中心付近の3.1nm/min.である。そのエッチングレートの最小値は、ウェハ端部付近の1.7nm/min.である。エッチングレート比(最大値/最小値)は、1.8である。すなわち、最大値と最小値の差が小さく、概ね均一なエッチングレートの分布である。ウェハ端部で波打ったような不均一部分が発生しているが、その不均一部分が小さいことにから、このエッチングレートの分布は、許容できる範囲ということができる。
【0077】
図10は、比較例に係る常温接合装置で活性化されたウェハのエッチングレートの分布を示す分布図およびグラフである。ここの図では、下側原子ビーム源17は、筐体20のリングの内側の面20pを12等分し、その12等分されて形成された12面の各々に一つの照射孔部22を設けている。すなわち、12方向から同じ高速原子ビームを照射している。ただし、照射孔部22の大きさは、図8Aの場合と同様である。また、ウェハへのビーム入射角α、ウェハw上のビーム照射点を結んだ仮想円C2の径、および照射孔部中心24から照射軸Bがウェハwと交差する点までの距離といった幾何的な配置を除く、その他の印加電圧等のビーム源照射条件については図8Aの場合と同じである。
【0078】
エッチングレートは、中心付近では概ね同心円状に変化しているが、その外側の領域ではで波打ったような著しい不均一部分が発生している。そのエッチングレートの最大値は、ウェハ中心付近の5.4nm/min.である。そのエッチングレートの最小値は、ウェハ端部付近の0.1nm/min.である。エッチングレート比(最大値/最小値)は、54である。すなわち、最大値と最小値の差が、図8A図9と比較した場合一桁大きく、不均一なエッチングレートの分布である。すなわち、エッチングレートは、ウェハ中心付近で同心円状に大きく変化し、その外側の領域で波打ったような不均一部分が発生しており、全体的に不均一になっている。したがって、予め設定する許容範囲にもよるが、このエッチングレートの分布は、許容できない範囲ということができる。なお、エッチングレートのウェハ面内均一性の許容範囲は、接合後のウェハの接合強度の均一性から、接合体の用途に応じて定める。
【0079】
以上のことから、ウェハ表面を均一に活性化するには、下側原子ビーム源17および上側原子ビーム源18は、複数の照射孔部22から同じ高速原子ビームを照射するとき、複数の照射孔部22を概ね20個又はそれ以上に多く(連続的な照射孔群と)することが好ましいと考えられる。言い換えると、ウェハ表面を安定的に均一に活性化するには、同じ高速原子ビームを用いて複数の方向から照射するとき、概ね20方向又はそれ以上に多くの方向から照射することが好ましいと考えられる。このような常温接合装置は、上側および下側の大口径ウェハ(基板)の表面を、それぞれ、より確実に、より均一かつ十分に活性化することができる。その結果、上側および下側の大口径ウェハ(基板)をより適切に接合することが可能となる。
【0080】
以上述べたように、本実施の形態では、高速原子ビームのような活性化ビームによる偏りのないエッチングが可能となる。それにより、大口径ウェハ表面をより均一な活性化状態とすることができる。その結果、ウェハ表面の粗さの均一化や清浄度の均質化を図ることができる。そして、ウェハ全面にわたって接合強度のバラツキが抑えられ、接合品質が向上する。
【0081】
また、本実施の形態では、活性化対象であるウェハ以外の部品をエッチング(スパッタ)することが少なくなる。すなわち、ウェハ以外の部品がスパッタされ、その粒子がウェハ表面へ付着し、接合面のボイドとなることがなくなる。そのため、不純物のデポジションが防止され、パーティクル飛散が防止でき、接合品質が向上する。
【0082】
以上の作用効果によりウェハに形成されるデバイスの歩留りを向上させることができる。
【0083】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法について説明する。第1の実施の形態では一つのリング形状の高速原子ビーム源を用いているが、本実施の形態ではリングを分割した円弧の形状の複数の高速原子ビーム源を用いている。以下では、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0084】
本実施の形態に係る高速原子ビーム源について説明する。高速原子ビーム源としての下側原子ビーム源17および上側原子ビーム源18は、上下の向きが逆の他は同じ構造を有している。そのため、以下では、高速原子ビーム源として、下側原子ビーム源17について説明する。
【0085】
図11Aは、本実施の形態に係る高速原子ビーム源としての下側原子ビーム源17を模式的に示す斜視図である(なお、上下の向きを逆にすれば、上側原子ビーム源18と見ることができる)。
【0086】
本実施の形態に係る下側原子ビーム源(高速原子ビーム源)17は、第1の実施の形態のリング形状の高速原子ビーム源を分割した円弧の形状(分割型リング形状)および構成を有している。ただし、分割数は任意である。以下では、一例として、この図に示すように、第1の実施の形態のリング形状の高速原子ビーム源を4つに分割した円弧の形状を有する下側原子ビーム源17について説明する。
【0087】
下側原子ビーム源17は、下側原子ビーム源17−1、17−2、17−3、17−4を備えている。各下側原子ビーム源17−k(k=1〜4:整数)は、部分筐体20−kと、電極体21−kとを備えている。部分筐体20−kは、リングを分割した円弧の形状を有し、その円弧の内側の面20pに等間隔又は連続的に並んだ複数の照射孔部22を備えている。電極体21−kは、部分筐体20−kの内部に設けられ、その部分筐体20−kのリングの円弧に沿って伸びている。この筐体20−kおよび電極体21−kは、それぞれ部分筐体20−kの内部にサドルフィールド型の電界を発生させる陰極および陽極として機能する。この電極体21は、その円弧に沿って伸び、上下に平行に並んだ二本の電極棒であることが好ましい。各照射孔部22の面の中心24におけるリングの円弧の内側方向へ向かう法線を照射軸Bとすると、複数の照射孔部22の照射軸Bは、リングの中心軸D上の一点で交わる。
【0088】
位置調整機構31のうちの位置調整機構31bは、下側原子ビーム源17−kの円弧の形状の外側を支持するように1箇所設けられ、下側原子ビーム源17−kをX方向、Y方向およびZ方向に移動可能に、かつ所望の角度θの傾きとなるよう回転移動可能に設けられている。この図の例では、下側原子ビーム源17−2に取り付けられた位置調整機構31bのみを示しているが、他の下側原子ビーム源17−1、17−3、17−4についても同様に位置調整機構31bが取り付けられている。位置調整機構31のうちの上側原子ビーム源18−kの位置調整機構31aについても同様である。下側原子ビーム源17−kを、X方向、Y方向およびZ方向に移動可能で、かつ所望の角度θの傾きとなるよう回転移動可能であるため、高速原子ビームの照射条件の変更が容易となる。そのため、より容易に均一かつ十分に高速原子ビームをウェハwに照射することができる。
【0089】
なお、第1の実施の形態では、筐体20を、例えば、平面上に矩形とそれに交わらず、矩形の一辺に対して角度αだけ傾いた直線があるとき、この直線を軸にしてその矩形を回転したときできる回転体の形状としている。これは、照射軸Bの方向を、下側のウェハwに向くように、鉛直方向に対して予め規定された角度αだけ傾けるためである。しかし、本実施の形態では、位置調整機構31で筐体20−kの角度θを所望の傾きに設定できるため、照射軸Bの方向を所望の角度αとすることができる。したがって、矩形断面の円弧の内側の面を必ずしも予め下側へ傾けたような形状にする必要はない。すなわち、筐体20−kとして、矩形断面のリングをそのまま分割した形状を用いることができる。
【0090】
図11Bおよび図11Cは、本実施の形態に係る高速原子ビーム源の照射孔部の形状を模式的に示す斜視図である。各照射孔部22の形状は特に制限はないが、第1の実施の形態で記載されているように、筐体20−kのリングの円周に沿って伸びる横長の形を有することが好ましい。図9Bでは、一例として、横長の矩形の照射孔部22を示している。図示されないが、照射孔部22の形状は、角に丸みのある矩形や横長の楕円であっても良い。図9Cでは、他の例として、その横長の矩形が更に伸びて帯の形の照射孔部22を示している。
【0091】
ここで、第1の実施の形態のリング形状の高速原子ビーム源を分割する分割数は、位置調整機構31で筐体20−kの角度θを所望の傾きに設定し易い点や、位置調整機構31を含めた接合チャンバー3内への設置のし易さの点から、4〜8であることが好ましい。分割数が大き過ぎると設置が困難となり、常温接合装置全体の大きさを大きくせざるを得ず、高コストとなってしまう。分割数が小さすぎると、筐体20−kの角度θを所望の傾きに設定し難くなり、エッチングレートの均一性が保てなくなる。
【0092】
その他の構成や常温接合方法(常温接合装置の動作)については、第1の実施の形態と同様である。
【0093】
本実施の形態についても、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、第1の実施の形態の効果に加えて、高速原子ビーム源の角度と距離を調節可能とすることで、エッチングの分布を微調整することが可能となり、より容易に均一な活性化面が得られるよう調整することができる。ウェハw面上でのエッチングレートおよびその分布は、高速原子ビーム源(表面活性化源)とウェハとの距離と照射軸の入射角とに相関があるためである。
【0094】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法について説明する。第2の実施の形態ではリングを複数に分割した形状の複数の上側原子ビーム源および複数の下側原子ビーム源を用いているが、本実施の形態では上側と下側とで高速原子ビーム源を分けず、上側と下側とに共通の高速原子ビーム源を用いている。以下では、第2の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0095】
図12は、本実施の形態に係る高速原子ビーム源19を模式的に示す斜視図である。
【0096】
本実施の形態では、第2の実施の形態において、例えば上側原子ビーム源18を取り除き、下側原子ビーム源17を、上側原子ビーム源18と下側原子ビーム源17とを合わせた機能を実行する単一の高速原子ビーム源19としている。すなわち、上側原子ビーム源18−1〜18−4を取り除き、上下ウェハの間隔を調整してビーム源と上ウェハとの距離Bbが、下側ウェハとの距離Baと一致し、それぞれの入射角がαとなるように設定することで、高速原子ビーム源19−1〜19−4と設定できる。
【0097】
この場合、下側ウェハwへ高速原子ビームを照射する場合、高速原子ビーム源19−kは、下側を向くように位置調整機構31により傾いて、高速原子ビーム源19−kaの状態になる。その結果、高速原子ビーム源19−kaの照射軸Baは、所望の角度αで下側ウェハwと交わることができる。同様に、上側ウェハwへ高速原子ビームを照射する場合、高速原子ビーム源19−kは、上側を向くように位置調整機構31により傾いて、高速原子ビーム源19−kbの状態になる。その結果、高速原子ビーム源19−kbの照射軸Bbは、所望の角度αで上側ウェハwと交わることができる。
【0098】
その他の構成や常温接合方法(常温接合装置の動作)については、第2の実施の形態と同様である。
【0099】
本実施の形態についても、第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、分割型リング形状の高速原子ビーム源を上側および下側のウェハの活性化源として共用することで、ウェハ毎に高速原子ビーム源一式を備える第2の実施の形態の構成に比して、コストを削減可能であり、常温接合装置を小型化可能である。
【0100】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る高速原子ビーム源、常温接合装置および常温接合方法について説明する。第2、第3の実施の形態ではリングを複数に分割した形状の高速原子ビーム源を用いているが、本実施の形態ではその高速原子ビーム源の形状を製造が容易になるように変更している。以下では、第2、3の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0101】
図13Aは、第2、第3の実施の形態に係る高速原子ビーム源の構成を模式的に示す平面図である。第2、第3の実施の形態において記載されたように、部分筐体20−kの照射孔部22が形成されている、円弧の形状の内側の面20pは、ウェハwの中心に対して同心となる円Lの外周に沿った曲面である。
【0102】
図13Bは、本実施の形態に係る高速原子ビーム源の構成を模式的に示す平面図である。本実施の形態の部分筐体20−kの照射孔部22が形成されている、円弧の形状の内側の面20psは、ウェハwの中心に対して同心となる円Lの円周に外接する複数の平面である。その複数の平面は円周に沿って並び、両隣と互いに結合されている。その複数の平面は、円Lの円周に外接する多面体の一部分の形状と見ることもできる。各平面には、一つの照射孔部22が含まれる。そのとき、各平面の法線は、照射孔部22の照射軸Bと平行である。この場合にも、照射孔部22内の照射孔(23)は、等間隔もしくは連続的に配置されることが望ましい。なお、部分筐体20−kの照射孔部22が形成されていない、円弧の形状の外側の面20qは、ウェハwの中心に対して同心となる他の円の円周に沿った曲面であっても良いし、その円周に外接する複数の平面であってもよい。
【0103】
図13Cは、本実施の形態に係る高速原子ビーム源の他の構成を模式的に示す平面図である。この場合での部分筐体20−kは、図13Bの部分筐体20−kを更に分割した複数の部分筐体を含んでいる。この図の例では、部分筐体20−kは、部分筐体20−k1、20−k2、20−k3、20−k4、20−k5を含んでいる。部分筐体20−kj(j=1〜5)は、箱型形状を有し、一つの照射孔部22を有している。照射孔部22を有する面20psは、ウェハwの中心に対して同心となる円Lの円周に外接する平面である。その複数の部分筐体20−k1〜20−k5は、面20pが円周に沿って並び、両隣と互いに接するように配置されている。
【0104】
その他の構成や常温接合方法(常温接合装置の動作)については、第2、第3の実施の形態と同様である。
【0105】
本実施の形態についても、第2、第3の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、高速原子ビームやイオンビームの照射孔23を備える照射孔部22をカーボン材料のような曲面加工が難しい材料で製造する場合、面20pを平面にすることにより、照射孔部22を容易に製造することができる。それにより、高速原子ビーム源の製造コストを低減することができる。
【0106】
以上のように、上記各実施の形態の高速原子ビーム源およびそれを用いた常温接合装置では、大口径のウェハ表面を均一な活性状態とすることが可能となる。それにより、接合ウェハ(基板)の表面粗さの均一化、清浄度の均質化を図ることができる。その結果、ウェハ(基板)全面に渡って接合強度のばらつきが抑えられ、接合品質が向上する。
【0107】
また、上記各実施の形態の高速原子ビーム源およびそれを用いた常温接合装置では、活性化対象であるウェハ(基板)に高速原子ビームを集中させることができる。そのため、ウェハ(基板)以外の部品をエッチングすることが少なくなる。したがって、接合ウェハ(基板)への不純物のデポジションが防止される。その結果、接合ウェハ(基板)へのパーティクル飛散が防止でき、接合品質が向上する。
【0108】
そして、上記各実施の形態の高速原子ビーム源およびそれを用いた常温接合装置では、上記の各作用効果により、ウェハ(基板)に形成されるデバイスの歩留りが向上する。
【0109】
なお、本発明による常温接合装置は、その複数のガス種切替機構を省略することもできる。この場合も、その常温接合装置は、既述の実施の形態と同様にして、下側ウェハと上側ウェハとをより均一に活性化させることができ、その下側ウェハと上側ウェハとをより適切に常温接合することができる。
【0110】
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施の形態に記載された技術は、矛盾の発生しない限り、他の実施の形態に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 :常温接合装置
2 :ロードロックチャンバー
3 :接合チャンバー
5 :ゲート
6 :ゲートバルブ
7 :棚
8 :搬送ロボット
9 :蓋
10:真空排気装置
11:位置決めステージキャリッジ
12:位置合わせ機構
14:静電チャック
15:圧接機構
16:活性化装置
17、17−k、17−1〜17−4:下側原子ビーム源
18、18−k、18−1〜18−4:上側原子ビーム源
19、19−k、19−ka、19−kb、19−1〜19−4:高速原子ビーム源
20:筐体
20−k、20−kj、20−k1〜20−k5:部分筐体
20a:陰極
20b:被覆部
20c:ガス導入口
20p、20ps:面
20q、20qs:面
21、21−k:電極体
22:照射孔部
23:照射孔
24:中心点
31、31a、31b:位置調整機構
61:ガス種切替機構
62−i、62−1〜62−4:ガス供給装置
63−i、63−1〜63−4:バルブ
64:管路
71:常温接合装置制御装置
72:搬送部
73:活性化部
74:接合部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図13C