(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バグフィルタに導入する排ガス温度は160℃前後であり、硫酸のアンモニウム塩の熱分解温度は300℃前後であるため、160℃から300℃に加熱する熱エネルギが大きいこと、また触媒に析出、堆積した硫酸のアンモニウム塩の熱分解に十分な時間を要すること、触媒反応塔が複数の反応部に分割されるために、構造や配管が複雑になり、設備コストがかかること、などの問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決して、エネルギコストも少なく、設備コストも低減できる
排ガス処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、炉から排出される排ガスの排ガス処理ラインの上流側から、塩類、吸着物および煤塵を捕集するバグフィルタと、
熱交換器と、排ガスから窒素酸化物を除去する触媒反応塔とを具備した排ガス処理設備であって、
前記熱交換器は、前記バグフィルタから前記触媒反応塔に導入される排ガスが加熱される被加熱側と、前記触媒反応塔から排出された排ガスにより、前記触媒反応塔に導入される排ガスを加熱する加熱側と、を有し、
前記バグフィルタから排出された排ガスを大気側に排出するバイパス排気ラインを設け、
循環加熱ガスの循環方向に、循環送風機と、循環ガス加熱器と、前記触媒反応塔
と、前記熱交換器
の加熱側と、を具備
するとともに、前記循環ガス加熱器から前記触媒反応塔をバイパスして前記熱交換器の加熱側に接続される第1バイパス流路部を有するガス循環ラインを設け、
前記ガス循環ラインにおいて、
前記第1バイパス流路部を閉じ、前記循環ガス加熱器により加熱した循環加熱ガスにより、
前記触媒反応塔と前記熱交換器の加熱側にそれぞれ堆積した硫酸のアンモニウム塩を分解することと、
前記第1バイパス流路部を開けるとともに前記第1バイパス流路部の分岐部から前記触媒反応塔に至る前記ガス循環ラインを閉じ、前記循環ガス加熱器により加熱した循環加熱ガスにより、前記熱交換器の加熱側に堆積した硫酸のアンモニウム塩を分解すること、とを選択的に行うことを特徴とする。
【0010】
また請求項1記載の構成において、
第1バイパス流路部を開閉する第16切換弁と、
ガス循環ラインで前記第1バイパス流路部の分岐部から前記触媒反応塔の間に介在された第12切替弁と、を設けたものである。
【0011】
さらに請求項1または2記載の構成において、前記ガス循環ラインの循環加熱ガスの一部を、前記バグフィルタの入口に導出する循環ガス排気流路部を設け、
循環加熱ガスの一部を排出する時に、前記ガス循環ラインに外気を導入する補充用外気導入流路部を設け、
前記循環ガス排気流路部から排出された循環加熱ガスの熱分解成分を、前記バグフィルタにより捕集し、前記バイパス排気ラインから排出するものである。
【0012】
さらにまた請求項3記載の構成において、循環ガス排気流路部に、循環加熱ガスに外気を混合して冷却する冷却用外気導入流路部を設け、
炉の停止中に循環ガス排気流路部から排出される循環加熱ガスに、冷却用外気導入流路部から外気を混合して冷却し、バグフィルタに導入するものである。
【0013】
また請求項3記載の構成において、ガス循環ラインで循環加熱ガスの温度を検出する循環ガス温度検出器と、
バグフィルタ出口の排ガス温度を検出する排ガス温度検出器と、
バイパス排気ラインから外部に排出される排ガス中のアンモニアガスおよび/または硫黄酸化物の濃度を検出する排ガス成分検出器と、
循環ガス排気流路部に設けられた循環ガス排出弁と、
前記補充用外気導入流路部に設けられた補充用外気導入弁と、
前記循環ガス排出弁および前記
補充用外気導入弁の開度を制御する熱分解用コントローラと、を具備し、
前記熱分解用コントローラは、炉の運転中に、前記循環ガス温度検出器の検出値に基づいて、循環加熱ガスの温度を制御するとともに、前記排ガス温度検出器および前記排ガス成分検出器の検出値に基づいて、前記循環ガス排出弁と前記補充用外気導入弁の開度を制御するものである。
【0014】
さらに請求項5記載の構成において、冷却用外気導入流路部に設けられた冷却用外気導入弁を具備し、
熱分解用コントローラは、
炉の停止中に、循環加熱ガスの温度を、硫酸のアンモニウム塩を分解温度可能な適正温度範囲として所定時間保持し、前記触媒反応塔および/または前記熱交換器内に堆積した硫酸のアンモニウム塩を分解した後、前記循環ガス排出弁を開けて循環加熱ガスの一部を循環ガス排気流路部に導出するとともに、前記冷却用外気導入弁を開け、外気を前記循環ガス排気流路部に導入して循環加熱ガスを冷却し、循環加熱ガスと外気との混合ガスの温度をバグフィルタに適した範囲に制御するものである。
【0015】
さらにまた請求項1記載の構成において、バグフィルタの予熱用に設置されたバグフィルタ予熱器およびバグフィルタ予熱送風機を、循環送風機および循環ガス加熱器としても使用できるように、ガス循環ラインに設置したものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、バグフィルタから排出される排ガスを排出するバイパス排気ラインと、循環加熱ガスを硫酸のアンモニウム塩を熱分解可能な温度に加熱して触媒反応塔や熱交換器に循環させるガス循環ラインと、
循環加熱ガスを、触媒反応塔をバイパスして熱交換器の加熱側にのみ送る第1バイパス流路部とを設けたので、炉の運転中に触媒反応塔と熱交換器
の加熱側や、熱交換器の加熱側に、堆積した硫酸のアンモニウム塩を
選択的に分解することができる。したがって、ガス循環ラインに沿って循環加熱ガスを加熱、循環させて繰り返し使用できるので、熱エネルギコストを削減することができるとともに、触媒反応塔、熱交換器内に堆積した硫酸のアンモニウム塩を良好に熱分解することができ、配管構造や触媒反応塔の構造を簡略化できて、設備コストを低減することができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、炉が停止中であっても、ガス循環ラインに循環加熱ガスを循環させ、触媒反応塔や熱交換器に堆積した硫酸のアンモニウム塩を熱分解することができる。そしてガス循環ラインから冷却用外気導入流路部を介してバグフィルタに導出する循環加熱ガスに、外気を混合して冷却することができるので、バグフィルタに適正温度の混合ガスを導入することができ、バグフィルタの焼損を防止することができる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、熱分解用コントローラにより、循環加熱ガスの温度と、ガス循環ラインから導出される循環加熱ガスと排ガスの混合ガスの温度を制御することにより、硫酸のアンモニウム塩を効果的に熱分解できるとともに、排ガスの成分を良好に保つことができ、バグフィルタの熱損傷を防止することができる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、炉の停止中であっても、熱分解用コントローラにより、循環加熱ガスの温度を制御することにより、硫酸のアンモニウム塩を効果的に熱分解できる。またガス循環ラインから導出される循環加熱ガスに外気を混合して、その混合ガスを冷却することにより、循環加熱ガスに含まれる熱分解成分を固体化し、さらにバグフィルタに残る中和用や吸着用の薬剤により、中和や吸着させてバグフィルタで捕集することができるとともに、バグフィルタの焼損を防止することができる。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、予め設置された循環ガス送風機および循環ガス加熱器を利用することにより、既存の排ガス処理設備に容易に適用することができ、設備コストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1を
図1〜
図3に基づいて説明する。
(基本構造)
この排ガス処理設備は、
図1に示すように、たとえば廃棄物用の焼却炉(炉)11からの下流側に、排ガスを熱回収するボイラ12と、排ガスを冷却する冷却塔13が設置されている。この冷却塔13から下流側の排ガス処理ライン10に、バグフィルタ16、熱交換器(被加熱側)17、ガス再加熱器18、触媒反応塔20、熱交換器(加熱側)17、誘引通風機21および煙突22が順に設置されており、排ガスが順次導入されて処理される。
【0027】
バグフィルタ16は、排ガスに含まれる塩化水素やSO
X、重金属、煤塵、ダイオキシンなどを捕集するもので、バグフィルタ16の上流側に、重金属類やダイオキシンなどの有害物質を吸着するための活性炭を排ガス中に吹き込む活性炭供給装置14と、排ガス中の塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SO
X)などに反応させるために、消石灰など中和用のアルカリ性薬剤を排ガス中に吹き込む薬剤供給装置15が設けられる。
【0028】
再加熱用の熱交換器17とガス再加熱器18は、下流側に設置された触媒反応塔20に供給される排ガスを、最適な温度に加熱するためのものである。触媒反応塔20では、アンモニア供給装置23からアンモニアガスなどの還元用薬剤が排ガス中に噴射され、排ガスを脱硝触媒に接触させることで、NO
X(窒素酸化物)などを除去する。
【0029】
上記構成において、触媒反応塔20や熱交換器17で、硫酸のアンモニウム塩である硫酸アンモニウム[硫安、(NH
4)
2SO
4]や硫酸水素アンモニウム[酸性硫安、NH
4HSO
4]が析出して堆積すると、脱硝効率や伝熱効率が低下するため、前記硫酸のアンモニウム塩を加熱分解して除去する作業を行うための機器および配管が設けられている。
【0030】
(バイパス排気ライン)
バグフィルタ16と熱交換器17の間の排ガス処理ライン10からバイパス排気ライン30が分岐され、このバイパス排気ライン30の出口が誘引送風機21の入口側に接続されている。そして、このバイパス排気ライン30により、排ガスを、熱交換器17、ガス再加熱器18および触媒反応塔20を通さずに、誘引送風機21から煙突22を介して大気中に排出することができる。
【0031】
(ガス循環ライン)
図2に明瞭に示すように、ガス循環ライン31には、上流側から順に、触媒反応塔20、熱交換器(加熱側)17、循環送風機32、循環ガス加熱器33が設置されている。このガス循環ライン31は、排ガス処理ライン10の一部を使用した共用流路部31aと、別途設けられる加熱流路部31bとを具備している。共用流路部31aは、触媒反応塔20から熱交換器(加熱側)17の出口側までの排ガス処理ライン10と共用した配管である。
【0032】
加熱流路部31bは、共用流路部31aの出口側から、循環送風機32および循環ガス加熱器33を介して触媒反応塔20の入口側に接続される配管をいう。またこの加熱流路部31bに、バグフィルタ16の入口に接続されてガス循環ライン31の循環加熱ガスの一部を導出する循環ガス排気流路部31cと、循環送風機32の入口側に接続されて、ガス循環ライン31に補充用の外気を導入する補充用外気導入流路部31dと、循環ガス排気流路部31cの出口側に接続されて循環加熱ガスに冷却用の外気を導入する冷却用外気導入流路部31gが設けられている。
【0033】
前記循環送風機32は、ガス循環ライン31に沿って循環加熱ガスを循環させるものである。また循環ガス加熱器33は、循環加熱ガスを硫酸のアンモニウム塩の分解温度以上で、適正範囲である320℃〜450℃に加熱するものである。
【0034】
加熱流路部31bに、循環ガス加熱器33と触媒反応塔20の間のガス循環ライン31から第1バイパス流路部31eが分岐され、第1バイパス流路部31eの出口が触媒反応塔20と熱交換器(加熱側)17の間の共用流路部31aに接続されている。この第1バイパス流路部31eにより、循環ガス加熱器33で加熱された循環加熱ガスを、触媒反応塔20を通さずに、直接熱交換器17に導入することができる。
【0035】
また、第1バイパス流路部31eから第2バイパス流路部31fが分岐され、第2バイパス流路部31fの出口が循環ガス排気流路部31cの上流側の加熱流路部31bに接続されている。この第2バイパス流路部31fにより、触媒反応塔20から排出された循環加熱ガスを、熱交換器(加熱側)17を通さずに、加熱流路部31bに循環させることができる。
【0036】
循環ガス加熱器33の出口に、循環加熱ガスの温度を検出する循環ガス温度検出器T1が設置されている。またバグフィルタ16の出口に、排ガスの温度を検出する排ガス温度検出器T2が設けられている。さらに誘引送風機21の出口に、排ガスに含まれるアンモニアガス(NH
3)および/または硫黄酸化物(SO
X)の濃度を検出する排ガス成分検出器Mが設けられている。
【0037】
さらに、これら複数のライン10,30,31と流路部31a〜31fを通過する排ガス、循環加熱ガスの流路を切替えるために、開閉および流量調整可能な複数の開閉器であるダンパ(以下、切換弁という)が設けられている。
【0038】
まず、排ガス処理ライン10(共用流路部31aを含む)に第1〜第7切換弁V1〜V7が設けられている。すなわち、排ガス処理ライン10において、循環ガス排気流路部31cの接続部で上流側に設けられた第1切替弁V1、バグフィルタ16とバイパス排気ライン30の分岐部の間に設けられた第2切換弁V2、バイパス排気ライン30の分岐部と熱交換器(被加熱側)17の間に設けられた第3切換弁V3、ガス再加熱器18と加熱流路部31bとの接続部の間に設けられた第4切換弁V4、触媒反応塔20と第1バイパス流路部31eの接続部の間に設けられた第5切換弁V5、第1バイパス流路部31eの接続部と熱交換器(加熱側)17の間に設けられた第6切換弁V6、および排ガス処理ライン10における加熱流路部31bとの分岐部とバイパス排気ライン30の接続部の間に設けられた第7切換弁V7である。
【0039】
また、バイパス排気ライン30には、排ガス処理ライン10との分岐部近傍に第8切換弁V8が設けられ、この第8切換弁V8の下流側で排ガス処理ライン10との接続部近傍に第9切換弁V9が設けられる。
【0040】
共用流路部31aを除くガス循環ライン31に、第11切換弁V11および第12切換弁V12が設けられる。すなわち、加熱流路部31bにおいて、排ガス処理ライン10からの分岐部と第2バイパス流路部31fの接続部の間に設けられた第11切換弁V11と、第1バイパス流路部31eの分岐部と触媒反応塔20に接続される排ガス処理ライン10の接続部の間に設けられた第12切換弁V12とが設けられる。
【0041】
また循環ガス排気流路部31cに、加熱流路部31bの分岐部と冷却用外気導入部31gの接続部の間に第13切換弁(循環ガス排出弁)V13が設けられている。さらに、冷却用外気導入部31gに第14切換弁(冷却用外気導入弁)V14が介設けられている。さらにまた、補充用外気導入部31dに第15切換弁(補充用外気導入弁)V15が設けられている。また第1バイパス流路部31eには、加熱流路部31bの分岐部と第2バイパス流路部31fの分岐部の間に第16切換弁V16が設けられている。さらに第2バイパス流路部31fには、第1バイパス流路部31eの分岐部近傍に第17切換弁V17が設けられている。
【0042】
41は、循環ガス温度検出器T1と排ガス温度検出器T2と排ガス成分検出器Mに基づいて、第1〜第9切替弁V1〜V9および第11〜第17切替弁V11〜V17とを操作する熱分解用コントローラである。
【0043】
(炉運転状態)
図1を参照して、焼却炉11の通常の運転状態を説明する。
通常の運転状態では、第1〜第7切替弁V1〜V7を開、残りの第8,第9切替弁V8,V9および第11〜第17切替弁V11〜V17を閉とする。
【0044】
1)冷却塔13から排出された排ガス中に、活性炭供給装置14から活性炭を吹き込み、活性炭に排ガス中の重金属類やダイオキシンなどの有害物質を吸着させる。さらに薬剤供給装置15から排ガス中に消石灰など、中和用のアルカリ性薬剤を吹き込み、このアルカリ性薬剤と、排ガス中の塩化水素や硫黄酸化物などを反応させる。そして、排ガスをバグフィルタ16に導入して、これらの反応生成物と活性炭吸着物を煤塵と共に捕集する。
【0045】
2)排ガスを再加熱用の熱交換器(被加熱側)17とガス再加熱器18に順次導入して、触媒脱硝方式に適した温度に加熱した後、触媒反応塔20に送られる。触媒反応塔20では、アンモニア供給装置23からアンモニアガスなどの還元用薬剤を排ガス中に噴射し、排ガスを触媒に接触させることで、窒素酸化物が還元されて除去される。
【0046】
3)排ガスを熱交換器(加熱側)17に導入し、バグフィルタ16から触媒反応塔20に導入される排ガスを加熱することにより熱回収した後、誘引通風機21により煙突22を介して大気中に排出する。
【0047】
(炉運転−熱分解作業)
図2を参照して、焼却炉11の運転中に触媒反応塔20や熱交換器(加熱側)17に堆積した硫酸のアンモニウム塩を熱分解する方法について説明する。
【0048】
11)焼却炉11内にアンモニア水や尿素水、水を噴霧するなどにより、排ガス中のNO
Xを低減した低NO
X運転を行う。
12)通常の運転状態から第3切替弁V3、第4切替弁V4、第7切替弁V7を閉じ、第8切替弁V8および第9切替弁V9を開けて、バグフィルタ16から排出された排ガスを、バイパス排気ライン30に導入し、誘引送風機21から煙突22を介して排出する。同時に、第11切替弁V11および第12切替弁V12を開け(第5,第6切替弁V5,V6は開、第13〜第17切替弁V13〜V17は閉)、循環送風機32を起動して系内に残留している排ガスを循環加熱ガスとして循環させるとともに、循環ガス加熱器33を起動して循環加熱ガスを加熱する。
【0049】
13)熱分解用コントローラ41では、循環ガス温度検出器T1により循環加熱ガスの温度を監視しており、硫酸のアンモニウム塩の分解温度(硫酸アンモニウムは280℃)以上で、たとえば320℃前後となると、循環ガス加熱器33による加熱を制御して、循環加熱ガスを所定範囲内の温度(たとえば320℃以上、450℃以下)で所定時間保持することにより、触媒反応塔20内と熱交換器(加熱側)17内に堆積した硫酸のアンモニウム塩を熱分解する。熱分解されたアンモニアガスや硫黄酸化物は、循環加熱ガスに同伴される。
【0050】
ここで、分解加熱ガスの温度を320℃以上としたのは、320℃未満では、硫酸のアンモニウム塩の熱分解が十分に行われない恐れがあるからであり、また450℃以上では、触媒反応塔20の触媒や熱交換器17の伝熱管などの構成部材に悪影響を与える恐れがあるからである。
【0051】
14)予め実験されたデータに基づいて、触媒反応塔20や熱交換器(被加熱側)17の硫酸のアンモニウム塩が十分に熱分解される所定時間が経過すると、熱分解用コントローラ41の操作指令により、第13切替弁V13をゆっくりと開け、循環加熱ガスの一部を排ガス処理ライン10の排ガスに合流させて、バグフィルタ16に導入する。この時、熱分解用コントローラ41は、排ガス温度検出器T2により排ガスの温度を監視し、循環加熱ガスにより排ガスの温度が上がり過ぎてバグフィルタ16に悪影響を及ぼさないように、第13切替弁V13を操作して循環加熱ガスの排出量を制御する。また排ガス成分検出器Mにより煙突22から排出されるアンモニアガス(NH
3)および/または硫黄酸化物(SO
X)の濃度を監視し、大気中に放出する排ガスの中のアンモニアガスと硫黄酸化物の濃度が上がりすぎないように、第13切替弁V13を操作して循環加熱ガスの排出量を制御する。
【0052】
さらにガス循環ライン31の循環加熱ガスが減少するため、第15切替弁V15をあけて補充用外気導入流路部31dからガス循環ライン31に外気を導入し、循環ガス加熱器33により循環加熱ガスを加熱する。
【0053】
15)排出される循環加熱ガスに同伴されたアンモニアガスと硫黄酸化物は、合流する排ガスにより冷却されて、固体状の硫酸アンモニウム(硫安)や硫酸水素アンモニウム(酸性硫安)となってバグフィルタ16で捕集され、さらに排ガス中の消石灰などのアルカリ性薬剤と反応したり、活性炭に吸着されて、反応生成物や活性炭吸着物がバグフィルタ16により捕集される。
【0054】
16)なお、上記方法では、触媒反応塔20と熱交換器17に堆積した硫酸のアンモニウム塩を同時に熱分解させる場合を説明したが、触媒反応塔20と熱交換器17をそれぞれ単独で熱分解させることもできる。
【0055】
たとえば触媒反応塔20に堆積した硫酸のアンモニウム塩のみを熱分解する場合、第6切替弁V6、第11切替弁V11を閉じて第17切替弁V17を開ける(第16切替弁V16は閉)ことにより、触媒反応塔20から排出された循環加熱ガスを、第1バイパス流路部31eおよび第2バイパス流路部31fを介して加熱流路部31bに循環させればよい。
【0056】
また熱交換器17に堆積した硫酸のアンモニウム塩のみを熱分解する場合、第12切替弁V12、第5切替弁V5、第17切替弁V17を閉じ、第6切替弁V6、第16切替弁V16を開けることにより、循環ガス加熱器33から排出された循環加熱ガスを、第1バイパス流路部31e、共用流路部31aから熱交換器(加熱側)17に導入すればよい。
【0057】
(炉停止−熱分解作業)
図3を参照して、焼却炉11の停止中に、触媒反応塔20や熱交換器(加熱側)17に堆積した硫酸のアンモニウム塩を熱分解する方法を説明する。
【0058】
21)焼却炉11を停止する前に、活性炭供給装置14および薬剤供給装置15からバグフィルタ16に、活性炭やアルカリ性薬剤を数十分から数時間程度吹き込んでおく。
22)第1切替弁V1、第3切替弁V3、第4切替弁V4を閉じ、第11切替弁V11、第12切替弁V12、第5切替弁V5,第6切替弁V6を開ける(第7〜第9切替弁V7〜V9、第13〜第17切替弁V13〜V17は閉)。そして、循環送風機32を起動して、ガス循環ライン31の系内に残留している排ガスを循環加熱ガスとして循環させるとともに、循環ガス加熱器33を起動して循環加熱ガスを加熱する。
【0059】
23)熱分解用コントローラ41では、先の工程13)と同様に、循環ガス温度検出器T1により循環加熱ガスの温度を監視しており、硫酸のアンモニウム塩の分解温度(硫酸アンモニウムは280℃)以上で、たとえば320℃前後となると、循環ガス加熱器33の加熱を制御して、循環加熱ガスを所定範囲内の温度(たとえば320℃以上、450℃以下)を所定時間保持する。そして、循環加熱ガスにより触媒反応塔20内と熱交換器(加熱側)17内に堆積した硫酸のアンモニウム塩を熱分解する。熱分解されたアンモニアガスや硫黄酸化物は、循環加熱ガスに同伴される。
【0060】
24)先の工程14)と同様に、予め実験されたデータに基づいて、触媒反応塔20や熱交換器(加熱側)17の硫酸のアンモニウム塩が熱分解される所定時間が経過すると、熱分解用コントローラ41の操作指令により、第13切替弁V13、第14切替弁V14、第8切替弁V8および第9切替弁V9を開けると同時に誘引送風機21を起動する。すなわち、第13切替弁V13を開けて循環加熱ガスの一部を循環ガス排出経路部31cに送ると同時に、第14切替弁V14を開け、冷却用外気導入流路部31gから循環ガス排出経路部31cに外気を導入し、外気により排出される循環加熱ガスを冷却する。そしてこの循環加熱ガスと外気の混合ガスを、排ガス処理ライン10を介してバグフィルタ16に導入する。この時、循環加熱ガスに同伴されたアンモニアガスと硫黄酸化物は、合流された外気と混合により冷却され、固体状の硫酸アンモニウム(硫安)や硫酸水素アンモニウム(酸性硫安)となってバグフィルタ16で捕集されたり、さらにバグフィルタ16に残留している消石灰などのアルカリ性薬剤と反応したり、活性炭に吸着されてバグフィルタ16により捕集される。そして、混合ガスは、バイパス排気ライン30から誘引送風機21および煙突22を介して排出される。
【0061】
25)熱分解用コントローラ41では、排ガス温度検出器T2によりバグフィルタ16出口の排ガスの温度を監視するとともに、排ガス成分検出器により煙突22から排出されるアンモニアガス(NH
4)および/または硫黄酸化物(SO
X)の濃度を監視しており、排ガスの温度が上がり過ぎてバグフィルタ16に悪影響を及ぼさないように、また大気中に放出する排ガスの中のアンモニアガスと硫黄酸化物の濃度が上がりすぎないように、第13切替弁V13と第14切替弁V14の開度を調整して循環加熱ガスの排出量を制御する。さらにガス循環ライン31の循環加熱ガスが減少するため、第15切替弁V15をあけて補充用外気導入流路部31dからガス循環ライン31に外気を導入し、循環ガス加熱器33により循環加熱ガスを加熱する。
【0062】
26)なお、上記方法では、触媒反応塔20と熱交換器17に堆積した硫酸のアンモニウム塩を同時に熱分解する場合を説明したが、工程16)と同様に、触媒反応塔20または熱交換器17の硫酸のアンモニウム塩をそれぞれ単独で熱分解させることもできる。
【0063】
(実施例1の効果)
実施例1によれば、
A)バグフィルタ16から排出される排ガスを、誘引送風機21から煙突22を介して排出するバイパス排気ライン30と、循環送風機32により循環ガス加熱器33を介して循環加熱ガスを、硫酸のアンモニウム塩を熱分解可能な温度に加熱して、触媒反応塔20や熱交換器17に循環させるガス循環ライン31を設けたので、焼却炉11の運転中に触媒反応塔20や熱交換器17に堆積した硫酸アンモニウム[硫安、(NH
4)
2SO
4]や硫酸水素アンモニウム[酸性硫安、NH
4HSO
4]などの硫酸のアンモニウム塩を、効果的に熱分解することができる。このように、ガス循環ライン31に沿って循環加熱ガスを加熱、循環させて繰り返し使用できるので、熱エネルギコストを削減することができる。そして、配管構造や触媒脱硝器の構造を簡略化できて、設備コストを低減することができる。
【0064】
B)循環分解ガスに同伴された熱分解ガス(アンモニアガスと硫黄酸化物)は、バグフィルタ16の入口で合流される排ガスにより冷却され、固体状の硫酸アンモニウム(硫安)や硫酸水素アンモニウム(酸性硫安)となったり、排ガス中の消石灰などのアルカリ性薬剤と反応したり、活性炭に吸着されてバグフィルタ16により捕集される。したがって、大気中に排出される排ガスに熱分解ガスの成分が含まれるのを効果的に防止することができる。
【0065】
C)焼却炉11が停止中であっても、ガス循環ライン31に循環加熱ガスを循環させ、触媒反応塔20や熱交換器17に堆積した硫酸のアンモニウム塩を熱分解することができる。また一部を導出する循環加熱ガスに、冷却用外気導入流路部31gから外気を混合して冷却することができるので、バグフィルタ16に適正温度の混合ガスを導入することができ、バグフィルタ16の焼損を防止できる。
【0066】
D)熱分解用コントローラ41により、循環加熱ガスの温度を、硫酸のアンモニウム塩の熱分解温度以上に制御することにより、硫酸のアンモニウム塩を効果的に熱分解できる。また循環加熱ガスを排出する時に、ガス循環ライン31から導出される循環加熱ガスと排ガスとを混合して、排ガスの温度を制御することにより、バグフィルタ16の焼損を防止することができる。
E)焼却炉11の停止中であっても、熱分解用コントローラ41により、循環加熱ガスの温度を、硫酸のアンモニウム塩の熱分解温度以上に制御することにより、触媒反応塔20や熱交換器17の硫酸のアンモニウム塩を効果的に熱分解できる。またガス循環ライン31から導出される循環加熱ガスを、冷却用外気を混合して冷却することにより、循環加熱ガスに含まれる熱分解成分を、固体化するとともに、さらに残存する中和用や吸着用の薬剤と反応、吸着させてバグフィルタ16で捕集することができる。そしてバグフィルタ16の焼損を防止することもできる。
【0067】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2を
図4〜
図6に基づいて説明する。
(基本構造)
この排ガス処理設備は、バグフィルタの結露による露点腐食や消石灰の潮解防止のために、起動時に温風をバグフィルタに送り予熱するための予熱ガス加熱ラインが設けられており、予熱ガス加熱ラインに予熱用加熱器と予熱用送風機が具備されている。この実施例2は、
図5に示すように、この予熱ガス加熱ライン50を具備した排ガス処理設備において、実施例1と同様にガス循環ライン31を設け、予熱用加熱器を循環ガス加熱器33Aとし、予熱用送風機を循環送風機32Aとして使用する。以下、実施例1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0068】
(予熱ガス加熱ライン)
予熱ガス加熱ライン50は、バグフィルタ16の出口側の排ガス処理ライン10から分岐されて、循環送風機32Aの入口に接続された吸引流路部50aと、循環ガス加熱器33Aの出口からバグフィルタ16の
入口側の排ガス処理ライン10に接続された吐出流路部50bを具備し、循環送風機32Aの出口と循環ガス加熱器33Aの入口が接続されている。
【0069】
そして、吐出流路部50bが循環ガス排気流路部31cとして使用される。加熱流路部31bが、共用流路部31aの
熱交換機17の出口側に接続されて循環ガス加熱器33Aの入口に至る上流側加熱流路部31b1と、循環ガス加熱器33Aの出口から触媒反応塔20の入口の排ガス処理ライン10に接続された下流側加熱流路部31b2とで構成される。
【0070】
また、排ガス処理ライン10の分岐口と上流側加熱流路部31b1の接続部の間の吸引流路部50aに排出バイパス流路部31hが分岐され、排出バイパス流路部31hの出口が循環ガス排気流路部31c(吐出流路部50b)に接続されている。そして循環ガス排気流路部31c(吐出流路部50b)に冷却用外気導入流路部31gが接続されている。
【0071】
さらに、上流側加熱流路部31b1の接続部と循環送風機32Aの入口の間の吸引流路部50aに、補充用外気導入流路部31dが接続されている。
予熱ガスライン50には、吸引流路部50aの入口から排出バイパス流路部31hの分岐部の間に第22切替弁V22が設けられ、また吐出流路部50bで、循環ガス加熱器33Aの出口から排出バイパス流路部31hの接続部の間に第23切替弁V23が設けられ、この第23切替弁V23は分解処理中に開放されることはない。また吐出流路部50bで冷却用外気導入流路部31gの接続部と出口の間に、第21切替弁V21が設けられる。さらに、排出バイパス流路部31hに第13切替弁V13が設けられる。
【0072】
さらにまた、循環ガス加熱器33Aの出口近傍に循環ガス温度検出器T1が設置されている。
(炉運転状態)
焼却炉11の運転状態は、
図4に示すように、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
(炉運転−熱分解作業)
図5を参照して、焼却炉11の運転中に触媒反応塔20や熱交換器(加熱側)17に堆積した硫酸のアンモニウム塩を熱分解する方法について説明する。この熱分解方法は、実施例1と同様であるため、概略のみを説明する。
【0074】
31)焼却炉11を低NO
X運転する。
32)バグフィルタ16から排出された排ガスの排出経路を、排ガス処理ライン10からバイパス排気ライン30に切り替える。循環送風機32Aを起動してガス循環ライン31の系内に残留している排ガスを循環加熱ガスとして循環させ、循環ガス加熱器33Aにより循環加熱ガスを加熱する。
【0075】
33)熱分解用コントローラ41により循環加熱ガスの温度が、硫酸のアンモニウム塩の分解温度以上の320℃前後となると、循環ガス加熱器33Aを制御して、循環加熱ガスを320℃以上、450℃以下で所定時間保持する。これにより、触媒反応塔20内と熱交換器(加熱側)17内に堆積した硫酸のアンモニウム塩を熱分解する。
【0076】
34)硫酸のアンモニウム塩の熱分解に要する時間が経過すると、第21切替弁V21を開放した後、第13切替弁V13をゆっくりと開けて、循環加熱ガスの一部を排ガス処理ライン10の排ガスに合流させて、バグフィルタ16に導入する。この時、熱分解用コントローラ40により、バグフィルタ16に悪影響を及ぼさないように循環加熱ガスの排出量を制御する。また排ガス成分検出器Mにより煙突22から排出されるアンモニアガス(NH
3)と硫黄酸化物(SO
X)の濃度が上がりすぎないように、第13切替弁V13を制御して循環加熱ガスの排出量を制御する。
【0077】
さらに補充用外気導入流路部31dからガス循環ライン31に外気を導入して、ガス循環ライン31の循環加熱ガスに混合する。
35)排出される循環加熱ガスに同伴されたアンモニアガスと硫黄酸化物は、合流した排ガスにより冷却され、固体状の硫酸アンモニウム(硫安)や硫酸水素アンモニウム(酸性硫安)となったり、排ガス中の消石灰などのアルカリ性薬剤と反応したり、活性炭に吸着されて、反応生成物や活性炭吸着物がバグフィルタ16により捕集される。
【0078】
なお、上記方法では、触媒反応塔20と熱交換器17に堆積した硫酸のアンモニウム塩を同時に熱分解させる場合を説明したが、触媒反応塔20と熱交換器17をそれぞれ単独で熱分解させることもできる。
【0079】
(炉停止−熱分解作業)
図6を参照して、焼却炉11の停止中に、触媒反応塔20や熱交換器(加熱側)17に堆積した硫酸のアンモニウム塩を熱分解する方法を説明する。この熱分解方法は、実施例1と同様であるため、概略のみを説明する。
【0080】
41)焼却炉11の運転を停止する前に、活性炭供給装置14および薬剤供給装置15からバグフィルタ16に、活性炭やアルカリ性薬剤を数十分から数時間程度吹き込んでおく。
【0081】
42)バグフィルタ16から排出される排ガスの排出経路を、排ガス処理ライン10からバイパス排気ライン30に切り替える。ガス循環ライン31を閉ループとした後、循環送風機32Aを起動して、ガス循環ライン31の系内に残留している排ガスを循環加熱ガスとして循環させるとともに、循環ガス加熱器33Aを起動して循環加熱ガスを加熱する。
【0082】
43)熱分解用コントローラ41により循環加熱ガスの温度が、硫酸のアンモニウム塩の分解温度以上の320℃前後となると、循環ガス加熱器33Aを制御して、循環加熱ガスを320℃以上、450℃以下で所定時間保持する。これにより、触媒反応塔20内と熱交換器(加熱側)17内に堆積した硫酸のアンモニウム塩を熱分解する。
【0083】
44)硫酸のアンモニウム塩の熱分解に要する時間が経過すると、第21切替弁V21を開放した後、第13切替弁V13をゆっくりと開けて、循環加熱ガスの一部を吐出流路部50bに排出すると同時に、第14切替弁V14を開け、冷却用外気導入流路部31gから吐出流路部50bに外気を導入し、外気により、循環加熱ガスをバグフィルタ16に適した温度まで冷却する。そして、循環加熱ガスと外気の混合ガスをバグフィルタ16に導入する。循環加熱ガスに同伴された熱分解成分であるアンモニアガスと硫黄酸化物は、合流された外気と混合により冷却されて、固体状の硫酸アンモニウム(硫安)や硫酸水素アンモニウム(酸性硫安)となっており、バグフィルタ16で捕集される。さらに循環加熱ガスに同伴された熱分解成分は、バグフィルタ16に残留している消石灰などのアルカリ性薬剤と反応したり、活性炭に吸着されて、バグフィルタ16により捕集される。そして、混合ガスがバイパス排気ライン30から誘引送風機21および煙突22を介して排出される。
【0084】
45)この時、熱分解用コントローラ41により、バグフィルタ16に悪影響を及ぼさないように循環加熱ガスの排出量と外気の導入量が制御される。また排ガス成分検出器Mにより煙突22から排出されるアンモニアガス(NH
3)と硫黄酸化物(SO
X)の濃度が上がりすぎないように、第13切替弁V13を操作して循環加熱ガスの排出量が制御される。さらに循環加熱ガスの減少に対応して、補充用外気導入流路部31dからガス循環ライン31に外気が導入される。
【0085】
46)上記方法は、触媒反応塔20と熱交換器17に堆積した硫酸のアンモニウム塩を同時に熱分解させる場合であるが、触媒反応塔20または熱交換器17の硫酸のアンモニウム塩をそれぞれ単独で熱分解させることもできる。
【0086】
上記実施例2によれば、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。また既存の予熱ガス加熱ライン50の予熱用加熱器と予熱用送風機を利用して、循環ガス加熱器33Aおよび循環送風機32Aとして使用することができ、既存の設備を有効に利用して、設備コストを削減することができる。