【実施例】
【0035】
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
実施例1 液剤
DADA25g、果糖ブドウ糖液糖100g、pH調整剤適量を混合し、精製水で全量1000gの液剤をpH5〜7になるように調製する。
実施例2 錠剤
DADA25g、乳糖350g、結晶セルロース125gを投入・混合し、結合剤として5%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を噴霧し造粒顆粒を調製する。得られた造粒顆粒49.5gにステアリン酸マグネシウム0.5gを混合・打錠して裸錠を調製する。
実施例3 散剤
DADA25g、乳糖350g、結晶セルロース125gを投入・混合し、結合剤として5%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を噴霧し散剤を調製する。
【0036】
試験例1 肥満モデルラットの病態発症の治療効果
(1)被験薬
DADAは目黒化工製のものを使用した。
(2)動物および予備飼育
コレシストキニン受容体変異により過食し肥満するII型糖尿病モデルであり、かつメタボリックシンドロームモデルでもある4週齢のOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty(OLETF)ラット及びその対照としての雄Long-Evans Tokushima Otsuka(LETO)ラットを、日本SLC(浜松)から購入した。OLETFラット及びLETOラットについてはKawano, K., Hirashima, T., Mori, S., et al Spontaneous long-term hyperglycemic rat with diabetic complications Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF) strain. Diabetes 41:1422-1428, 1992.参照。これらのラットは、12時間明暗サイクル(7-19時明期、19時-翌7時暗期)で室温23℃±2℃のもと、AIN-76組成に準じて調製した食餌(カゼイン20w/w%、コーンスターチ15w/w%、セルロース5w/w%、ミネラル混合物3.5w/w%、ビタミン混合物1w/w%、DL-メチオニン0.3w/w%、重酒石酸コリン0.2w/w%、コーン油7w/w%およびスクロース48w/w%)による予備飼育を1週間行った。
(3)本飼育
予備飼育終了後、LETOラットで構成されDADA非添加食を給餌される群(Norm群、n=6)、OLETFラットで構成されDADA非添加食を給餌される群(Cont群、n=6)、OLETFラットで構成されDADA添加食を給餌される群(Dada群、n=6)の3群を設定した。各群に給餌された実験試料の組成を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
4週間pair feeding(ただし、毎日午前9時から午後7時の間は絶食)により飼育を行い、飲料水として脱イオン水を自由摂取させた。pair feedingの結果、一匹の一日の摂餌量がLETOラット(Norm群)で約15.2g、OLETFラット(Cont及びDada群)で約18.7gとなった。 4週間のpair feedingの飼育初日と飼育最終日に動物の体重を測定した。また、4週間の飼育期間の餌の総摂食量を測定し、体重増加を総摂食量で除することにより摂食効率を算出した。
(4)試験試料の準備
本飼育終了後約9時間絶食させ、エーテル麻酔下で腹部大動脈全採血を行い、さらに、内臓脂肪組織(精巣上体周囲、腎臓周囲、腸管膜周囲)を摘出し、重量を測定し、分析に供した。血液は静置後、3000rmpで15分間(4℃)遠心分離して血清を得た。
(5)試験方法
血中レプチン濃度は、ラットレプチンELISA キット(Rat Leptin ELISA、YK050、(株)矢内原研究所)を用いて測定した。脂肪組織中の遺伝子発現量は、ABI Prism7000(Applied Biosystems)を用いて測定した。血清グルコース濃度は、グルコースCIIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。各値は平均値±標準誤差を表し、2群間の比較にはStudent’s t検定を用い、0.05未満のP値を統計的に有意とした。
【0039】
(試験結果)1.体重変化、摂食量、及び摂食効率
実験試料を4週間摂食させたラットの体重変化、摂食量、及び摂食効率を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
2.脂肪組織重量
実験試料を4週間摂食させたラットの内臓脂肪における白色脂肪組織重量を表3に示す。表3より、DADA摂食により、Dada群ではCont群に対し、精巣上体周囲、腎臓周囲、腸管膜周囲のいずれの白色脂肪組織重量も有意に低下することが認められ、3つの部位の合計では17%の有意な減少が認められた。すなわち、本来、白色脂肪が増加するはずの哺乳動物(例えば、Cont群)にDADAを投与することによりその白色脂肪の増加が明らかに抑制されている(例えば、Dada群)ことから、DADAは肥満又はメタボリックシンドロームの予防又は/及び治療に有用であることが示された。
【0042】
【表3】
【0043】
3.血清中レプチン濃度測定
上記(4)で準備した血清を用いて血中レプチン濃度をラットレプチンELISA キット(Rat Leptin ELISA、YK050、(株)矢内原研究所)を用いて測定したところ、単回帰分析により内臓脂肪組織重量と有意な正の相関が認められた(Y: レプチン= -0.23006 + 0.09760 X: 内臓脂肪組織重量, r=0.82726, p<0.05)。レプチンは、脂肪細胞のみから分泌されるアディポサイトカインであり、全身の脂肪組織重量と高い相関を示すことが知られていることから(Wolden-Hanson T, Marck BT, Smith L, Matsumoto AM. Cross-sectional and longitudinal analysis of age-associated changes in body composition of male Brown Norway rats: association of serum leptin levels with peripheral adiposity. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 1999 Mar;54(3):B99-107. 6)、DADA 摂取は、今回採取した内臓脂肪だけではなく、皮下脂肪も含めた全身の脂肪量に対して蓄積抑制作用を発揮することが示唆された。
【0044】
4.脂肪組織中遺伝子発現解析
脂肪組織中の遺伝子発現量の解析結果を表4に示す。なお、表においてはNorm群での遺伝子発現量を100とした場合の相対値を示している。
【0045】
表4より、Cont群とDada群を比較すると、DADA摂食により、脂肪の分解や熱産生に関わるUCP2の有意な発現増加及び脂肪細胞の分化・成熟を促すPPARγの有意な発現抑制が認められた。以上のことからDADA 摂取は白色脂肪組織において、熱産生や脂肪分解を亢進し、かつ脂肪細胞の分化・成熟の抑制を介して 抗肥満作用を発揮している事が示唆された。
【0046】
【表4】
【0047】
5.血清中グルコース濃度
実験試料を4週間摂食させた各ラット群の血清中のグルコース濃度(単位mg/dl)を
図1に示す。Norm群は129±7mg/dl、Cont群は175±7 mg/dl、Dada群は112±5mg/dlであった。
【0048】
図1より、Cont群では野生型のNorm群と比較して血糖値が有意に増加しているが、DADAの投与により血中グルコース濃度の有意な低下が認められ、Cont群はDada群と比較して36%血糖値が低下した。このことから、DADAの長期間投与は高血糖改善作用を持つことが示された。
【0049】
試験例2 肥満モデルラットの病態発症の治療効果
(1)被検薬
試験例1と同一とした。
(2)動物および予備飼育
食餌による予備飼育を4日間とした以外は、試験例1と同一の条件とした。
(3)本飼育
給餌期間を4週間pair feedingの代わりに6週間のpair feedingとした以外は、試験例1と同一の条件とした。
(4)試験試料の準備
本飼育終了後約9時間絶食させ、エーテル麻酔下で腹部大動脈全採血を行った。さらに、肝臓、内臓脂肪組織(精巣上体周囲、腎臓周囲、腸管膜周囲)および大腿部の骨格筋を摘出した後、重量を測定し、分析に供した。
(5)試験方法
無麻酔条件下・尾静脈血中のヘモグロビンA1c(HbA1c)値は、グルコヘモグロビン分析装置(A1CNowプラスモニター、Byer HealthCare)を用いて測定した。血中のグルコース濃度は、グルコカードG+メーター(ARKRAY)を用いて測定した。血清グルコース濃度は、グルコースCIIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。血清インスリン濃度は、レビスインスリン-ラットT(シバヤギ)を用いて測定した。血清レプチン濃度は、ラットレプチンELISA キット(Rat Leptin ELISA、YK050、(株)矢内原研究所)を用いて測定した。肝臓グリコーゲン濃度は、Loらの方法(J.Appl.Physiol., 28,234-236,1970.)により測定した。各値は平均値±標準誤差を表し、2群間の比較にはStudent’s t検定を用い、0.05未満のP値を統計的に有意とした。
【0050】
(試験結果)
1.体重変化、摂食量、及び摂食効率
実験試料を6週間摂食させたラットの体重変化、摂食量、及び摂食効率を表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
2.脂肪組織重量
実験試料を6週間摂食させたラットの内臓脂肪における白色脂肪組織重量を表6に示す。表6より、DADA摂食により、Cont群ではNorm群に対し、精巣上体周囲、腎臓周囲、腸管膜周囲のいずれの白色脂肪組織重量も有意に増加することが認められた。一方、Dada群ではCont群に対し、精巣上体周囲、腎臓周囲、腸管膜周囲のいずれの白色脂肪組織重量も有意に低下することが認められ、3つの部位の合計では約29%の有意な減少が認められた。すなわち、本来、白色脂肪が増加するはずの哺乳動物(例えば、Cont群)にDADAを投与することによりその白色脂肪の増加が明らかに抑制されている(例えば、Dada群)ことから、DADAは肥満又はメタボリックシンドロームの予防又は/及び治療に有用であることが示された。
【0053】
【表6】
【0054】
3.血中のヘモグロビンA1cおよびグルコース濃度
本飼育39日目に、無麻酔条件下でラット尾静脈から血液を採取し、その血液をそのままヘモグロビンA1c(HbA1c)値の測定に供した。一方、血中のグルコース濃度の測定には、本飼育終了後に腹部大動脈から得た血液をそのまま使用した。HbA1cおよびグルコース濃度ともCont群ではNorm群に対し有意に増大しているが、Dada群ではCont群に対しHbA1c値が有意に低下し、グルコース濃度も低下傾向にあった(表7)。このことから、DADAの投与によりOLETFラットにおける血糖の状態が改善していることが示された。
【0055】
【表7】
【0056】
4.血清中のグルコース、インスリン及びレプチン濃度
腹部大動脈から得た血液を静置後、3000rmpで15分間(4℃)遠心分離して血清を得た。血清中のグルコース、インスリン、レプチンの値を測定したところ、いずれの指標でもNorm群に対するCont群での有意な増加と、Cont群に対するDada群での有意な低下が認められた(表8)。グルコース及びインスリンの低下はDADAの抗血糖作用を示すと共に、レプチンの低下はDADAの脂質代謝の改善作用、特に抗肥満作用を示している。
【0057】
【表8】
【0058】
5.肝臓グリコーゲン量
DADA投与によるラット肝グリコーゲン量への影響を調べたところ、Dada群ではCont群に対し肝臓グリコーゲン量が有意に増加していることが分かった(表9)。このことから、DADAの投与により、肝臓におけるグリコーゲン合成が亢進され、抗血糖作用が増大していることが示された。
【0059】
【表9】