(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104012
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】センサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法およびブラシレス電気モータ
(51)【国際特許分類】
H02P 6/182 20160101AFI20170316BHJP
H02P 6/08 20160101ALI20170316BHJP
【FI】
H02P6/182
H02P6/08
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-69443(P2013-69443)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-215089(P2013-215089A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】10 2012 102 868.0
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴィンカー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス モースマン
【審査官】
田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−287483(JP,A)
【文献】
特開平05−219784(JP,A)
【文献】
特開2005−061709(JP,A)
【文献】
特開2011−120421(JP,A)
【文献】
特開2008−220035(JP,A)
【文献】
特開2005−333689(JP,A)
【文献】
特開2008−301588(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0132071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00−6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法であって、
該動作方法は、
モータが静止状態からコンスタントな加速トルクで回転数を直線状に増加させる電流で駆動されて所定の転流時間によって始動される始動段階と、
前記モータの回転が加速され、且つ、転流時点が、通電されていないステータ相巻線の逆起電力電圧のゼロクロス点に基づいて決定される加速段階と、
前記モータの回転数を略一定に維持する定常的動作段階の、三つの段階を有し、
前記始動段階から前記加速段階への移行が、予め与えられた数の連続する逆起電力のゼロクロス点が予期された順序にて予期されたモータ相に認識された時に行われ、
前記加速段階から前記定常的段階への移行が、前記モータの回転数が所望の回転数に達した後に行われることを特徴とするセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法。
【請求項2】
前記加速段階において、モータ電流を予め定めた最大値に制限した状態で、回転数の調整を行うことを特徴とする請求項1に記載のセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法において、
前記モータのブロック状態を認識するために、更に前記モータ電流を監視して、前記モータのブロック状態を認識することを特徴とするセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかに記載のセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法において、
前記ブロック状態を認識するために前記モータの回転を更に検知して得た検知信号と転流ステップ数とを比較して、前記モータのブロック状態を認識することを特徴とするセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法。
【請求項5】
前記定常的動作段階において、前記モータ電流の調整及び前記モータの回転数の調整を行うことを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかに記載のセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法において、
更に予め前記転流時間を計算して記憶手段にメモリしておき、前記記憶手段にメモリされた転流時間に基づいて前記モータを動作させることを特徴とするセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法。
【請求項7】
前記モータを、少なくとも前記加速段階の始めに、電気角20°から電気角30°の予転流で動作させることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載のセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法。
【請求項8】
前記モータを、前記定常的動作段階において、電気角0°から電気角15°の予転流で動作させることを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載のセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法。
【請求項9】
センサーレス転流ブラシレス電気モータであって、請求項1ないし8の何れかに記載のセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法によって動作することを特徴とするブラシレス電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法およびブラシレス電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレス電気モータ(ブラシレス直流モータ、BLDCモータ)は、通常、複数個の位置センサーを備え、それらの位置センサーの助けで、個々のモータ相の転流時点を、あらゆる時に決定することが可能である。それらのセンサーの位置情報は、既に、静止状態の段階、すなわち、第1の回転の開始前に既に入手可能である。従って、位置センサーを装備するブラシレス直流モータは、いつでも、センサーの位置情報に応じて正確に始動及び転流できる。
【0003】
ところが、ブラシレス直流モータは、位置センサーがなくても動作させることができる。その際は、いわゆるBEMF電圧(Back Electro Motive Forceの略であって、逆起電力とも呼ばれる)を使って位置を認識する。そのBEMF電圧は、永久磁石ロータによって誘起された電圧であって、ロータの回転時(すなわち、静止時ではない)にステータ相に印加されていて、その都度通電されていない相に於いて測定できる。その際、転流はBEMFのゼロクロス点と依存的に実行される。モータを始動する時、そして、回転数がまだ低い時は、そのようなゼロクロス点を確実に決定することはまだ不可能である。ゆえに、そのモータを始動させるには、とりあえず、位置情報がないままで転流しなければならない。そのため、そのブラシレス直流モータは、好適には、ステップモータのように、決められた転流時点で始動される。しかしながら、その際、効率は低い。
【0004】
それに加えて、ロータが転流の歩調の一歩(ステップ)を飛ばすことがないことを確認し、あるいは確実にすることには、特別な困難さがある。そのことは、BLDCモータが道程に依存した位置あるいは場所の動機で動かされ、内部の道程カウンターが転流の一歩を数えるような、実際の適用において特に重要である。モータがブロックされたことが認識されないと、内部の道程カウンターがアクチュエータの現実の道程位置に対して違いを示すが、それは動作の上でクリティカルであって、従って何れにせよ避けなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、モータが始動時から十分なトルクを達成し、速やか且つ制御された状態で定格回転数(所望の回転数)に達成し得るブラシレス直流モータおよびブラシレス直流モータの動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明では、請求項1から請求項
8に記載された方法、および請求項
9に記載されたブラシレス直流モータによって解決される。本発明の更なる有効的な態様については従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明では、始動プロセスは三つの動作段階に分割されているが、それらの動作段階ではモータの動作が基本的に異なっているとともに、三つの動作段階が続けて実行されるようになっている。
【0008】
第1の始作段階では、モータは、ステップモータのように、予め与えられた転流時間(所定の転流時間)で動作される。それらの転流時間は、例えば、モータ制御部のテーブルに保存されている。その際、モータ電流を、予め確定された値にコンスタントに調整するとよい。そうすることで、ロータが印加された回転磁界に確実にきれいに追随し、アクチュエータの最大可能トルクが超えられることも確実に阻止される。そのようにして、モータは、理想的には、加速トルクがコンスタントであって回転数は直線状に増加する。
【0009】
各々の転流点は、モータがコンスタントに加速するように計算乃至は決定されている。
【0010】
始動段階では、それに加えて、モータ相がゼロクロス点に関して監視される。決められた数の有効なBEMFゼロクロス点が記録されたところで、モータ制御部は第2の動作段階である加速段階に移行する。その際、BEMF電圧のゼロクロス点の数をカウントするだけでなく、BEMF電圧のゼロクロス点が正しい順番で想定のモータ相に現れるかを調べることが有効である。
【0011】
先に通電されたモータ相をOFFすることで、蓄積された電流によってモータの相インダクタンスに短時間の極性反転電圧パルス、いわゆるフライバックパルスが発生する。そのようなフライバックパルスをBEMF電圧のゼロクロス点認識と間違えるのを避けるため、モータ制御部は、BEMF電圧のゼロクロス点を確実に認識するために、好適には、動的なフライバックパルスサプレッサーを備える。これは、通常、ゼロクロス点を認識する回路では、転流後のフライバックパルスを、後に続く有効なゼロクロス点と区別できないことから必要である。
【0012】
それらのフライバックパルスは、何れにせよ、消すことが必要である。フライバックパルスの長さがインダクタンス、回転数及び電流によって変化する可能性があるため、モータ制御部は、本来のゼロクロス点の最大検出時間が確保されるよう、動的なフライバックパルスフェードアウトを活用している。それによって、通常は、例えば、フライバックパルスが長すぎるためにゼロクロス点が見過ごされるといったことが阻止される。それでもまだゼロクロス点が見過ごされるといったことが起こるのであれば、転流が自動的に継続されることで、モータがステップアウトするのを効果的に阻止できる。それによって、BEMF電圧のゼロクロス点認識が更に改善されるので、始動段階からより速やかに離れることができる。
【0013】
この段階では、モータのブロック状態を、モータ電流が急激に上昇すること、及び/または、ホールセンサー若しくはその他のロータリーエンコーダのインパルス数(モータの回転を検知して得た検知信号)を転流ステップ数と比較することで、検出できる。これによって、モータがブロックした場合、その状態を、わずかな転流ステップの後で確実に認識できる。
【0014】
加速段階では、BEMFゼロクロス点、すなわち、通電されていない相巻線のBEMF電圧のゼロクロス点は、位置フィードバックとして転流のために利用可能になっているので、ここでは、ブラシレス直流モータをセンサーレスモードで動作させることができる。すなわち、転流時点は、通電されていないステータ相に励起されたBEMF電圧のゼロクロス点によって決定される。
【0015】
その際、理想的な転流時点は隣接する二つのBEMF電圧のゼロクロス点の中心に位置する。本電気モータが強制転流された始動段階から、BEMF電圧のゼロクロス点が転流のために利用される加速段階への移行した直後にモータを、好適には、一つのBEMF電圧のゼロクロス点が認識された直後に転流する。
【0016】
これは、3相モータに於ける電気角30°の予転流に相応する。次いで、定常的段階の最中に、モータの効率及び動作信頼性を最適化する目的で、転流時点を、理想的な転流時点の方向にスライドする。すなわち、予転流は、電気角30°よりも小さくなるが電気角0°よりは大きい。
【0017】
この場合、「動的な予転流(dynamic pre-commutation )」といった言い方をするが、それは、例えば、一つのモータ相の中の最終的な電流の上昇速度を補償するために、時間的により早めに転流が行われるからである。
【0018】
その際、回転数が調整されるが、その場合、モータ電流は予め与えられた最大値に制限されている。好適には、回転数をできるだけ速やかに定格回転数(所望の回転数)にもっていくが、その場合、電流が制限されていることで加速も制限される。回転数は防御的に調節されていて、回転数がオーバースイングしないようになっている。電流制限によって加速が制限されていることで、更に、回転数調整手段の構成も簡略化される。ロータのブロック状態は、特定の電流値がオーバーすることで検出されるか、若しくは、位置指示器の回転インパルス数を転流数と比較することで検出される。
【0019】
定格回転数に達すると、モータ制御部は、回転数がコンスタントに保たれる定常的動作段階に移行する。電流を制限することは、定常的動作ではもはや必ずしも必要ではないが、それでも電流を制限することは差し支えない。ブロック状態を認識するには、またも、ブロック電流値がクリティカルな値になっているかを確認したり、位置指示器のインパルス数と転流数と比較したりすること、並びに一定の時間が経過したところでBEMF電圧のゼロクロス点が抜けていないかを確認するといった手法がとられる。
【発明の効果】
【0020】
上記特徴を有する本発明によれば、モータが始動時から十分なトルクを達成し、速やか且つ制御された状態で定格回転数(所望の回転数)に達成し得るブラシレス直流モータおよびブラシレス直流モータの動作方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明にかかるセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法およびブラシレス電気モータの一実施態様(自動車のエアダンパーの起動の例)を説明するための図である。
【
図2】
図1に示すブラシレスモータの駆動回路の概略構成を示す図である。
【
図3】本発明にかかるセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法およびブラシレス電気モータの動作段階について、回転数と時間の関係を示す図である。
【
図4】本発明にかかるセンサーレス転流ブラシレス電気モータの動作方法およびブラシレス電気モータの始動段階に於ける、モータの転流時点と回転数の関係をあらわす図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を、一つの実施態様を基に、添付された図面を参照しながら詳しく説明する。
【0023】
本発明は、自動車のエアダンパー2を起動させる働きをするアクチュエータモータ1を例に説明する(
図1)。当然のことながら、本発明は決してその用途に限定されているのではなく、更に変更を加えることなくその他の多くの用途に利用可能である。
【0024】
アクチュエータモータ1は、完全な集積的解決手段であって、駆動モータ3と、ドライブ4と、駆動電子機構5がマイクロコントローラ6とともに防水及び防埃仕様のハウジング7に配設されたものになっている。自動車に使用されることで、アクチュエータモータ1は、このような集積型構造によってのみ満足できる数々の要求下に置かれている。
【0025】
駆動モータ3は、ブリッジ回路9を持つモータドライバ8を介して起動されるブラシレス直流モータである。モータドライバ8はブリッジ回路9の制御部の一部であって、そのブリッジ回路9は、他方また、マイクロコントローラ6によって調整若しくは制御される。そのモータは、例えば、6個又は12個のロータマグネット極を持つ永久磁石ロータと、例えば9個のステータ極を持つ、多相(ここでは3相)の巻線が装着されたステータを備える。
【0026】
マイクロコントローラ6(
図2)は、動作プログラムの一部として、モータ3を駆動するために必要なモータ制御部又はモータ調整部を含む。それに加えて、自動車内で動作させるにあたっては、マイクロコントローラ6がエラー状態を認識して記録するようになっていることが義務付けられている。動作プログラム及びエラーデータはマイクロコントローラ6のデータメモリ10でメモリされる。
【0027】
その際、マイクロコントローラ6は、直流19V(短時間であれば45V)までの任意の電圧で直接動作可能で、それにより、追加的な電圧変換器が必要とされないように構成されている。更に、動作のために必要とされるすべての素子が駆動回路5に集積されていて、なかんずく、LINインターフェース11と、例えば外部の(位置、温度、電流)センサー12の、更に別のインターフェースと、モータドライバ8と、データメモリ(例えば、ROM、フラッシュメモリ、EEPROM)と、PWMインターフェース13及びデジタルIOインターフェースが集積されている。
【0028】
アクチュエータモータ1は、特に、自動車工学で用いられるようなLINバス・インターフェース11並びに相応のバスドライバ11aを備える。そのバスを介して駆動回路を形成して、偶発的なエラーを読みだすことができる。
【0029】
電気モータは、センサーレス駆動され、そのため、実質的には位置センサーは省略できる。駆動回路5は、好適には、ホールセンサー14を1個だけ備えるに過ぎず、そのホールセンサーによって、モータ3が回転しているかが確認でき、それにも増して、そのホールセンサーを使ってステップ・ロスを認識することができる。例えば、ホールセンサーを1個しか備えずロータマグネット極を6個備えるモータの場合、機械角60°毎ホール信号の切り替えが行われる。
【0030】
駆動電子機構のすべての部材が、好適にはプリント基板の一方の側にある。特に、そのプリント基板は駆動モータ3の近く、しかも、ホールセンサー14もが駆動電子機構5のプリント基板に配設されて差し支えないほどの近さに配設されている。それによって、そのプリント基板の裏側の、少なくとも一部、それどころか全部がグラウンド面として形成されていると良く、冷却面及び電気的遮蔽手段の働きをすることができる。
【0031】
駆動電子機構5は包括的な制御機能及び診断機能を備える。その駆動電子機構は、電気的エラー及び、例えば、過電圧又は低電圧、温度、過電流並びにアクチュエータ挙動のずれといった動作パラメータの逸脱を独自に認識及び分析でき、必要があれば自己保護することができるとともにバス・マスターから要求があった場合、エラー状態を伝達できる。そのために、その駆動電子機構が更なるセンサー群を含むか、若しくは、更なるセンサー群がインターフェース12を介して駆動されるようになっていてもよい。
【0032】
自動車のエアダンパーは永続的に動かされるのではない。すなわち、駆動モータは殆どの時間静止している。エアダンパーを動かす必要が生じると同時に駆動モータがONされる。その際、エアダンパーの動きが均一であって、しかも、同じ形に動くようになっていることが重要である。そのため、モータが始動時からフルトルクを達成し、速やか且つ制御された状態で定格回転数(所望の回転数)に達成することが必要である。
【0033】
その理由から、モータの始動プロセスは、本発明では、二つの動作段階に分割されていて、それらの動作段階では、可能な限り同じ形の加速が得られるように、モータの駆動は夫々異なる。
【0034】
図3に明確に示されているとおり、二つの動作段階は、モータ始動後、続けて実行される。
【0035】
モータが始動されると、モータは、まさに第1の動作段階、動作段階15となる。その始動段階では、駆動モータは、決められた転流(モータの転流が「強制」されることから強制転流とも称される)によって動作させられ、これはステップモータの動作に相応する。そのために、駆動回路は、例えば、決められた転流時点が保存されたテーブルを備える。同時に、モータ電流が、コンスタントな加速トルクが得られるように、定義された値に調整される。その際、モータの回転数は、
図4に示されているとおり、直線状に増加する。
【0036】
転流時間が保存されているテーブルは、起用されたモータにぴったり合わせられる。モータ相とマイクロコントローラの、定義された接続及び確定されている転流順番の故に、モータの回転方向も定義されている。静止状態に於いて二つの相巻線を通電することによって、定義された保持トルクを負荷することで、モータの始動位置も定義される。モータを始動するには、始動位置及び転流テーブルに保存された転流順序を起点に、モータ相が切り替えられる。転流テーブルは、マイクロコントローラ6のデータメモリ10に保存される。
【0037】
転流時間が計算される時は、それに加えて、加速が一定に保たれることを前提とするので、速度は直線状に上昇する。すなわち、次の転流時点を計算する際、現状の加速からして、その直線状にあらわされる回転数推移を得るべく、その時点ではモータがどのくらいの速さになっているかが考慮されることを意味する。
【0038】
それにより、転流時間、すなわち、二つの転流ステップの間の時間の長さtk(t)は次の式によって得られる。
ここで、tは事前のすべての転流時間tkの和であって、aは所望の角加速をrpm/sであらわしたものであって、pはロータマグネット極対の数をあらわす(rpm = round per minute乃至はU/min=回転数/分)。このルート関数は、簡素なマイクロコントローラでは、大掛かりに、数値的近似法によってしか計算できず、それゆえ、転流時点は、好適には、予め計算の上、マイクロコントローラ6のデータメモリ10のテーブルにメモリされるようになっている。
【0039】
図4は、転流時間tkの推移とそこから生じるモータの回転数18をあらわす線図であって、モータの回転数18は所望通り直線状に上昇する一方で転流時間tkはルート関数に従って減少していく。例では、p=3のロータマグネット極対を持ち、角加速がa=1000rpm/sであるモータが想定されている。なお
図4の時間軸(時間t)は、0.0000秒から1.2000秒である。
【0040】
その始動段階の最中では、BEMF電圧の認識は既に活発である。積極的な転流のために、モータ制御部は現時点で通電されていない相を認知している。その相に於いてモータ制御部はBEMF電圧の次のゼロクロス点を待つ。その相だけが監視され、フライバックパルスが動的なフライバックパルスサプレッサーによって消されることから、より堅牢な認識が行われ、その認識は信頼性もより高く、しかも、BEMF電圧のゼロクロス点の正しい順序に係る妥当性確認が自動的に実行される。
【0041】
モータ制御部が、好適には、連続する三つの正しい妥当なBEMF電圧のゼロクロス点を認識及びカウントした時点で、モータが十分な回転数に達したものとみなされ、それからは、BEMF電圧の更なるゼロクロス点を確実に認識することが可能になる。その際、例えば、三つのゼロクロス点が連続して、予期された順番に従って、予期されたモータ相に生じるようになっていることが大切である。但し、三つではない別な数のゼロクロス点を条件として定めても差し支えない。
【0042】
それにも増して、本発明によるアクチュエータモータはホールセンサー14を備える。先述したモータ制御部は、ホールインパルス数及び転流ステップ数により、ロータが転流に追随しているか或いはブロックされているかを容易に判断できる。そのようにして、ブロック状態は、僅かな転流ステップに於ける予期されない転流ステップとホールインパルスの差によって確実に認識され、モータも引き続き通電されない。
【0043】
始動段階15は、通常、10から15の転流ステップを含み、これはおよそ1から2のモータ回転に相当する。したがって、データメモリ10に保存すべき転流時間tkの数はさほど大きくない。
【0044】
例えば、三つである、妥当なBEMF電圧のゼロクロス点に係る条件が満たされると同時に、モータ制御部は第2の動作段階である加速段階16に移行する。第2の動作段階では、転流は既にセンサーレスにて、もっぱらBEMF電圧のゼロクロス点から得られる位置情報に基づいて実行される。その際、回転数18を可能な限り速やかに定格回転数VNに加速することが目的である。
【0045】
このことを達成するために、モータ制御部は、加速段階16では、回転数制御にて働くが、モータ電流はそれでも制限されている。始動段階15から加速段階16に移行した直後に、モータの、例えば、2の機械的回転について、転流は、先ずは測定されたBEMF電圧のゼロクロス点の直後に実行される。次いで、予転流が、理想的な転流時点(BEMF電圧の二つのゼロクロス点の時間的中心)との関連に於いてコンスタントな時間実施される。例では、その予転流時間は100μsである。但し、この段階では、それとは異なる予転流時間でもよい。好適には、転流は、小さなステップで、電気角30°の予転流から、所望される電気角0°から15°の予転流に変更される。
【0046】
回転数を調整して電流を制限することで、回転数を速やかに、但しオーバースイングさせることなく定格回転数VNに引き上げることができる。定格回転数VNに達するとモータ制御部は、最終的には、そのモータ制御部が電流調整及び回転数調整によって働く定常的動作段階17に移行する。それによって、ブラシレス直流モータの回転数を、負荷が変化してもコンスタントに保つことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 アクチュエータモータ
2 エアダンパー
3 駆動モータ(モータ)
4 ドライブ
5 駆動電子機構
6 マイクロコントローラ
7 ハウジング
8 モータドライバ
9 ブリッジ回路
10 データメモリ
11 LINバス・インターフェース
12 センサーインターフェース
13 PWMインターフェース
14 ホールセンサー
15 始動段階
16 加速段階
17 定常的動作段階
18 回転数
VN 定格回転数(所望の回転数)
t 時間軸
tk 転流時間