特許第6104024号(P6104024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104024
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】混練装置および混練装置用のパドル
(51)【国際特許分類】
   B01F 7/04 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   B01F7/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-81713(P2013-81713)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-200777(P2014-200777A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】594148520
【氏名又は名称】株式会社新日南
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100075292
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】竹本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭一
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 孝宏
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−025437(JP,A)
【文献】 実開昭56−102628(JP,U)
【文献】 特開2009−061431(JP,A)
【文献】 米国特許第06293694(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/
B01F 7/
B28C 5/
B29B 7/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練装置の回転軸に取り付けられ被混練物を混練する混練装置用パドルにおいて、
搬送面と背面の一方または両方に厚さ方向に突出し格子状に配置された格子状凸部を備
側面にパドルの幅方向に突出し、パドルの母材よりも硬質の材料により形成された肉盛り部を備えることを特徴とする混練装置用パドル。
【請求項2】
格子状凸部により囲まれる凹部の形状が菱形であり、この菱形の対角線の一方がパドルの幅方向と平行で、対角線の他方がパドルの高さ方向と平行であることを特徴とする請求項1に記載の混練装置用パドル。
【請求項3】
凹部の形状が正方形であることを特徴とする請求項2に記載の混練装置用パドル。
【請求項4】
格子状凸部はパドルの母材よりも硬質の材料により形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の混練装置用パドル。
【請求項5】
上面にパドルの高さ方向に突出し、パドルの母材よりも硬質の材料により形成された肉盛り部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の混練装置用パドル。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の混練装置用パドルを備えた混練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練装置、更に詳細には、回転する2軸に設けた混練部材を回転させることにより被混練物を混練しながら搬送する混練装置およびこのような混練装置に用いる混練部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のロッド型の混練部材が互いに逆螺旋状に並ぶように立設された2つの回転軸を不等速回転させることにより、原料を混練しながら一方向に搬送する混練装置が記載されている。
【0003】
特許文献2(特に図4図5等)には、端面や搬送面に硬質材料で肉盛りを施して耐摩耗性を高めた混練部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−239554号公報
【特許文献2】特開2009−061431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
混練部材として平板状の部材(パドル)を用いる場合は、棒状のもの(ロッド)を用いる場合に比べ被混練物との接触により摩耗しやすい部分の面積が大きく、このような部分の全体に硬化肉盛りを行うとパドルの製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、低コストで高い耐摩耗性を持つ混練装置用のパドル、およびそのようなパドルを備えた混練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の混練装置用パドルは、搬送面と背面の一方または両方に厚さ方向に突出し格子状に配置された格子状凸部を備え、側面にパドルの幅方向に突出し、パドルの母材よりも硬質の材料により形成された肉盛り部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い耐摩耗性を持つ混練装置用のパドル、およびそのようなパドルを備えた混練装置を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】筐体の上側の大部分を取り払った状態で回転軸に配置されたパドルを示す混練装置の上面図である。
図2図1のA−A線に沿った断面図である。
図3】(a)はパドルの平面図、(b)はパドルの(a)のB−B線方向から見た背面図、(c)はパドルの(a)のC−C線方向から見た正面図、(d)は取付板の(a)のD−D線から見た側面図、(e)はパドルの部分断面図である。
図4】(a)、(b)、(c)は格子状凸部の断面形状を示す図である。
図5】(a)、(b)は格子状凸部の配置例を示す図である。
図6】(a)はパドルの平面図、(b)はパドルの(a)のE−E線方向から見た背面図、(c)はパドルの(a)のF−F線方向から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明の混練装置および混練装置用パドルを詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1図2は、本発明の実施例による混練装置の構造を説明するもので、図1は、筐体の上側の大部分を取り払った状態で2つの回転軸に配置されたパドルを示す混練装置の上面図、図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。なお、図1では後述する格子状凸部と取付板は図示を省略している。
【0012】
図1図2において、符号2で示すものは混練装置1の筐体であり、フレーム14上に水平に設けられる。筐体2は、鋼鉄などの金属製であり、ここでは細長い直方体形状に形成されていて、その下方部は、図2に示すように、回転軸3、4のパドル20の先端が描く円形に対応した円弧となっている。
【0013】
筐体2の右端部の上側には、被混練物を筐体1内に投入するための投入口(不図示)が設けられる。また左端部の下側には、被混練物を筐体1から排出するための排出口(不図示)が設けられる。
【0014】
筐体2内には、その長手方向に沿って同じ径の2本の回転軸3、4が互いに平行に架設されている。回転軸3、4は鋼鉄などの金属製であり、断面が円形となっている。
【0015】
回転軸3の右端部3aと左端部3bはそれぞれ回転軸3の他の部分より小径となっており、筐体2から外部に突出して軸受部5、6に回転可能に軸受されている。また、回転軸4の右端部4aと左端部4bはそれぞれ回転軸4の他の部分より小径となっており、筐体2から外部に突出して、軸受部5、6に回転可能に軸受されている。
【0016】
回転軸3、4の右端部3a、4aはギアボックス7に挿通されており、ギアボックス7内の回転軸3、4の右端部3a、4aには、互いに噛合するギア8、9が固定されている。
【0017】
回転軸3の軸受部5の外側に突出した部分には、スプロケット10が固定されている。また、フレーム14上にはモータ13が取り付けられており、その出力軸にはスプロケット11が固定されている。スプロケット10とスプロケット11との間には、チェーン12が張り渡されている。
【0018】
モータ13の一方向への回転駆動力がスプロケット11、チェーン12及びスプロケット10を介して回転軸3に伝達されて回転軸3が一方向に回転し、さらに回転駆動力がギア7、8を介して回転軸4に伝達されて回転軸4が回転軸3とは逆方向に回転する。回転軸3、4は、ギア8、9を介して、Nを2以上の整数としてN:N−1の回転数比で不等速で回転される。例えば、Nは2〜6に設定され、本実施例では、Nは5に設定されて、回転軸3、4は5:4の回転数比で回転される。なお、回転軸3、4の回転方向は、図2に示すように、上方から見て互いの内側へ向かって回転する方向となっている。
【0019】
回転軸3、4の外周には混練部材としてのパドル20がそれぞれ2条の螺旋に沿って立設されている。回転軸3と回転軸4とで螺旋の回転方向は逆になっている。パドル20は回転軸3、4の軸方向には、一定の間隔Lで配置されている。また、パドル20は回転軸3の周方向には90度間隔、回転軸4の周方向には72度間隔で配置されている。すなわち、回転軸3と回転軸4との間での周方向の配置間隔の比は回転数の比と同じ5:4と、パドル20がそれに沿って配置される螺旋が360度回転するのに要する軸方向の長さ(螺旋ピッチ)は逆比の4:5となっている。パドル20の回転軸3、4の中心線に対する取り付け角度は45度となっている。
【0020】
回転軸3、4が回転すると被混練物はパドル20により混練されながら図1の右側から左側に搬送される。以下、パドル20の被混練物を押し出す面(図2に表れている面)を搬送面、これと対向する面を背面という。
【0021】
パドル20はそれぞれ同一形状、同一材質であり、例えば鋼鉄などの金属製である。図3(a)はパドル20の平面図、図3(b)は図3(a)のB−B線方向から見た背面の形状を示す図、図3(c)は図3(a)のC−C線方向から見た搬送面の形状を示す図である。また、図4(d)は取り付け板30を図3(a)のD−D線方向から見た図、図4(e)はパドル20の部分断面図である。
【0022】
パドル20の全体的な形状は、上面23に比べて下面24が狭くなっている6角形状で厚さがtの薄板となっている。上面23は回転軸3、4に取り付けた状態で外側に凸な円弧となっている。下面24は、取付板30の上面に例えば溶接により固定されている。
【0023】
取付板30は、その下面32が円弧状となっている長方形の板状部材で、二つのボルト穴31を介して回転軸3、4に、その長辺が回転軸3、4の中心線と平行になる向きにボルト止めされる。
【0024】
パドル20の上面23の全体には高さH方向に一定の厚さで突出した肉盛り部26aが、二つの側面25の下部を除く大部分には幅Bの方向に一定の厚さで突出した肉盛り部26bが施されている。肉盛り部26a、26bの材質はパドル20の母材よりも硬質で耐摩耗性に優れた材料、例えばタングステンカーバイトを多く含有する溶接材とする。この肉盛り部26a、26bを設けることにより、摩耗しやすい上面23と側面25の耐摩耗性を高めることができる。
【0025】
パドル20の搬送面21の下端付近を除く大部分には、格子状凸部27が設けられている。格子状凸部27は、図4(a)に示すように半円形の断面形状で、搬送面21からパドル20の厚さ方向に突出した棒状の部材であり、底面24に対する角度αが45度で、間隔がpの格子状に配置されている。格子状凸部27の材質は、硬質の材料でなくても被混練物のパドル20への付着を促進することができるが、肉盛り部26a、26bと同様に母材よりも硬質の材料として、格子状凸部27自体の耐摩耗性を高めるのが望ましい。
【0026】
このような格子状凸部27を設けることにより、格子状凸部27により囲まれた4角形の凹部28に被混練物を付着させ、この付着した被混練物により搬送面21を保護することにより搬送面21の耐摩耗性を高めることができる。
【0027】
格子状凸部27の間隔pを小さくすると被混練物がパドル20へ強固に付着するようになり、パドル20の表面から剥離したり、いったん付着した被混練物がパドル20の動きに伴ってパドル20の表面を滑るように動いてパドル20の摩耗が進展したりすることを防ぐことができる。したがって、付着性の低い被混練物、例えば水分が少ない被混練物、粒子の粗い被混練物、水硬性が低い被混練物などの場合には間隔pを小さくし、付着性の高い被混練物の場合は間隔pを大きくするとよい。
【0028】
角度αを45度とし、間隔pを一定とすることによって、凹部28は正方形となり、その一方の対角線はパドル20の高さ方向(回転軸3、4の直径方向)と平行になりこの対角線上の二つの隅角部29a、29bがパドル20の高さ方向に並び、他方の対角線はパドル20の幅方向(被混練物の進行方向)と平行になりこの対角線上の二つの隅角部29c、29dがパドル20の幅方向に並ぶようになる。そのため、回転軸3、4の回転に伴って被混練物がパドル20の高さ方向および幅方向に動いた場合に、付着した被混練物がパドル20から剥離しにくくなる。
【0029】
図3(c)、図4(a)に示したものは格子状凸部27の態様の一例であり、その断面形状、配置形状、配置範囲は、被混練物の性質やパドル20の回転軸3、4に対する取付角度等に応じて調整する。
【0030】
格子状凸部27の断面形状は、半円形のほか、図4(b)に示す3角形や、図4(c)に示す4角形等としてもよい。
【0031】
図5(a)は、格子状凸部27の配置形状の例を示すもので、角度αを45度より小さくして凹部28を菱形形状としている。図5(b)は、格子状凸部27の配置形状の別の例を示すもので凹部28の形状を底面24と平行な正方形としている。図5(a)の配置形状とした場合は、図3(c)の場合と同様に凹部28の対角線がパドル20の高さ方向および幅方向と平行になり、パドル20に付着した被混練物が剥離しにくくなる効果が得られる。また、底面24に対する角度αを左右で異なる値とし、凹部28の対角線がパドル20の幅方向および高さ方向と平行にならないようにしたり、間隔pを場所によって変化させて凹部28の形状、大きさを一定でなくしたりしてもよい。
【0032】
格子状凸部27を配置する範囲も図3(b)、(c)に示したものには限定されない。例えば、背面22にも配置したり、搬送面21の全体ではなく摩耗しやすい部分にのみ配置したりしてもよい。また、被混練物の搬送速度を調整するためにパドル20の一部について、回転軸3、4に対する取付角度を図1に示したものに対して180度回転させる場合があるが、このような場合には、パドル20の被混練物を投入口方向(図1の右方向)に押し戻す面(図2に表れない方の面)に格子状凸部27を配置する。
【0033】
パドルが板状の形であればその外形に関わらず本発明を適用することができる。図6に、図3に示したものとは形状が異なるパドル40に格子状凸部47を設けた例を示す。図6(a)はパドル40の平面図、図6(b)は図3(a)のE−E線方向から見た背面の形状を示す図、図6(c)は図6(a)のF−F線方向から見た搬送面の形状を示す図である。
【0034】
パドル40もパドル20と同様の6角形形状であるが、上面の幅と下面の幅がほぼ等しく、長方形に近い形状となっている。パドル20の場合と同様に、上面全体と側面の大部分に肉盛り部46を設け、搬送面に格子状凸部47を設け、底面に対して45度傾斜した正方形の凹部48を形成している。
【0035】
パドル20においては、格子状凸部27を表面のうち摩耗しやすい部分、具体的には搬送面21の大部分に設け、凹部28に被混練物が付着するように構成している。そのため、摩耗しやすい部分の全体に硬化肉盛りを施す場合に比べ、低コストでパドル20の耐摩耗性を高めることができる。また、混練装置においてパドルは比較的頻繁に交換の必要な消耗部品であるから、このようなパドル20を備える混練装置1は、ランニングコストを低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 混練装置
2 筐体
3、4 回転軸
3a、4a 右端部
3b、4b 左端部
5、6 軸受部
7 ギアボックス
8、9 ギア
10、11 スプロケット
12 チェーン
13 モータ
14 フレーム
20 パドル
21 搬送面
22 背面
23 上面
24 底面
25 側面
26a、26b 肉盛り部
27 格子状凸部
28 凹部
29a、29b、29c、29d 隅角部
30 取付板
31 ボルト穴
32 底面
40 パドル
46 外周肉盛り
47 格子状肉盛り
図1
図2
図3
図4
図5
図6