【実施例1】
【0011】
図1と
図2は、本発明の実施例による混練装置の構造を説明するもので、
図1は、筐体の上側の大部分を取り払った状態で2つの回転軸に配置されたパドルを示す混練装置の上面図、
図2は、
図1のA−A線に沿った断面図である。なお、
図1では後述する格子状凸部と取付板は図示を省略している。
【0012】
図1、
図2において、符号2で示すものは混練装置1の筐体であり、フレーム14上に水平に設けられる。筐体2は、鋼鉄などの金属製であり、ここでは細長い直方体形状に形成されていて、その下方部は、
図2に示すように、回転軸3、4のパドル20の先端が描く円形に対応した円弧となっている。
【0013】
筐体2の右端部の上側には、被混練物を筐体1内に投入するための投入口(不図示)が設けられる。また左端部の下側には、被混練物を筐体1から排出するための排出口(不図示)が設けられる。
【0014】
筐体2内には、その長手方向に沿って同じ径の2本の回転軸3、4が互いに平行に架設されている。回転軸3、4は鋼鉄などの金属製であり、断面が円形となっている。
【0015】
回転軸3の右端部3aと左端部3bはそれぞれ回転軸3の他の部分より小径となっており、筐体2から外部に突出して軸受部5、6に回転可能に軸受されている。また、回転軸4の右端部4aと左端部4bはそれぞれ回転軸4の他の部分より小径となっており、筐体2から外部に突出して、軸受部5、6に回転可能に軸受されている。
【0016】
回転軸3、4の右端部3a、4aはギアボックス7に挿通されており、ギアボックス7内の回転軸3、4の右端部3a、4aには、互いに噛合するギア8、9が固定されている。
【0017】
回転軸3の軸受部5の外側に突出した部分には、スプロケット10が固定されている。また、フレーム14上にはモータ13が取り付けられており、その出力軸にはスプロケット11が固定されている。スプロケット10とスプロケット11との間には、チェーン12が張り渡されている。
【0018】
モータ13の一方向への回転駆動力がスプロケット11、チェーン12及びスプロケット10を介して回転軸3に伝達されて回転軸3が一方向に回転し、さらに回転駆動力がギア7、8を介して回転軸4に伝達されて回転軸4が回転軸3とは逆方向に回転する。回転軸3、4は、ギア8、9を介して、Nを2以上の整数としてN:N−1の回転数比で不等速で回転される。例えば、Nは2〜6に設定され、本実施例では、Nは5に設定されて、回転軸3、4は5:4の回転数比で回転される。なお、回転軸3、4の回転方向は、
図2に示すように、上方から見て互いの内側へ向かって回転する方向となっている。
【0019】
回転軸3、4の外周には混練部材としてのパドル20がそれぞれ2条の螺旋に沿って立設されている。回転軸3と回転軸4とで螺旋の回転方向は逆になっている。パドル20は回転軸3、4の軸方向には、一定の間隔Lで配置されている。また、パドル20は回転軸3の周方向には90度間隔、回転軸4の周方向には72度間隔で配置されている。すなわち、回転軸3と回転軸4との間での周方向の配置間隔の比は回転数の比と同じ5:4と、パドル20がそれに沿って配置される螺旋が360度回転するのに要する軸方向の長さ(螺旋ピッチ)は逆比の4:5となっている。パドル20の回転軸3、4の中心線に対する取り付け角度は45度となっている。
【0020】
回転軸3、4が回転すると被混練物はパドル20により混練されながら
図1の右側から左側に搬送される。以下、パドル20の被混練物を押し出す面(
図2に表れている面)を搬送面、これと対向する面を背面という。
【0021】
パドル20はそれぞれ同一形状、同一材質であり、例えば鋼鉄などの金属製である。
図3(a)はパドル20の平面図、
図3(b)は
図3(a)のB−B線方向から見た背面の形状を示す図、
図3(c)は
図3(a)のC−C線方向から見た搬送面の形状を示す図である。また、
図4(d)は取り付け板30を
図3(a)のD−D線方向から見た図、
図4(e)はパドル20の部分断面図である。
【0022】
パドル20の全体的な形状は、上面23に比べて下面24が狭くなっている6角形状で厚さがtの薄板となっている。上面23は回転軸3、4に取り付けた状態で外側に凸な円弧となっている。下面24は、取付板30の上面に例えば溶接により固定されている。
【0023】
取付板30は、その下面32が円弧状となっている長方形の板状部材で、二つのボルト穴31を介して回転軸3、4に、その長辺が回転軸3、4の中心線と平行になる向きにボルト止めされる。
【0024】
パドル20の上面23の全体には高さH方向に一定の厚さで突出した肉盛り部26aが、二つの側面25の下部を除く大部分には幅Bの方向に一定の厚さで突出した肉盛り部26bが施されている。肉盛り部26a、26bの材質はパドル20の母材よりも硬質で耐摩耗性に優れた材料、例えばタングステンカーバイトを多く含有する溶接材とする。この肉盛り部26a、26bを設けることにより、摩耗しやすい上面23と側面25の耐摩耗性を高めることができる。
【0025】
パドル20の搬送面21の下端付近を除く大部分には、格子状凸部27が設けられている。格子状凸部27は、
図4(a)に示すように半円形の断面形状で、搬送面21からパドル20の厚さ方向に突出した棒状の部材であり、底面24に対する角度αが45度で、間隔がpの格子状に配置されている。格子状凸部27の材質は、硬質の材料でなくても被混練物のパドル20への付着を促進することができるが、肉盛り部26a、26bと同様に母材よりも硬質の材料として、格子状凸部27自体の耐摩耗性を高めるのが望ましい。
【0026】
このような格子状凸部27を設けることにより、格子状凸部27により囲まれた4角形の凹部28に被混練物を付着させ、この付着した被混練物により搬送面21を保護することにより搬送面21の耐摩耗性を高めることができる。
【0027】
格子状凸部27の間隔pを小さくすると被混練物がパドル20へ強固に付着するようになり、パドル20の表面から剥離したり、いったん付着した被混練物がパドル20の動きに伴ってパドル20の表面を滑るように動いてパドル20の摩耗が進展したりすることを防ぐことができる。したがって、付着性の低い被混練物、例えば水分が少ない被混練物、粒子の粗い被混練物、水硬性が低い被混練物などの場合には間隔pを小さくし、付着性の高い被混練物の場合は間隔pを大きくするとよい。
【0028】
角度αを45度とし、間隔pを一定とすることによって、凹部28は正方形となり、その一方の対角線はパドル20の高さ方向(回転軸3、4の直径方向)と平行になりこの対角線上の二つの隅角部29a、29bがパドル20の高さ方向に並び、他方の対角線はパドル20の幅方向(被混練物の進行方向)と平行になりこの対角線上の二つの隅角部29c、29dがパドル20の幅方向に並ぶようになる。そのため、回転軸3、4の回転に伴って被混練物がパドル20の高さ方向および幅方向に動いた場合に、付着した被混練物がパドル20から剥離しにくくなる。
【0029】
図3(c)、
図4(a)に示したものは格子状凸部27の態様の一例であり、その断面形状、配置形状、配置範囲は、被混練物の性質やパドル20の回転軸3、4に対する取付角度等に応じて調整する。
【0030】
格子状凸部27の断面形状は、半円形のほか、
図4(b)に示す3角形や、
図4(c)に示す4角形等としてもよい。
【0031】
図5(a)は、格子状凸部27の配置形状の例を示すもので、角度αを45度より小さくして凹部28を菱形形状としている。
図5(b)は、格子状凸部27の配置形状の別の例を示すもので凹部28の形状を底面24と平行な正方形としている。
図5(a)の配置形状とした場合は、
図3(c)の場合と同様に凹部28の対角線がパドル20の高さ方向および幅方向と平行になり、パドル20に付着した被混練物が剥離しにくくなる効果が得られる。また、底面24に対する角度αを左右で異なる値とし、凹部28の対角線がパドル20の幅方向および高さ方向と平行にならないようにしたり、間隔pを場所によって変化させて凹部28の形状、大きさを一定でなくしたりしてもよい。
【0032】
格子状凸部27を配置する範囲も
図3(b)、(c)に示したものには限定されない。例えば、背面22にも配置したり、搬送面21の全体ではなく摩耗しやすい部分にのみ配置したりしてもよい。また、被混練物の搬送速度を調整するためにパドル20の一部について、回転軸3、4に対する取付角度を
図1に示したものに対して180度回転させる場合があるが、このような場合には、パドル20の被混練物を投入口方向(
図1の右方向)に押し戻す面(
図2に表れない方の面)に格子状凸部27を配置する。
【0033】
パドルが板状の形であればその外形に関わらず本発明を適用することができる。
図6に、
図3に示したものとは形状が異なるパドル40に格子状凸部47を設けた例を示す。
図6(a)はパドル40の平面図、
図6(b)は
図3(a)のE−E線方向から見た背面の形状を示す図、
図6(c)は
図6(a)のF−F線方向から見た搬送面の形状を示す図である。
【0034】
パドル40もパドル20と同様の6角形形状であるが、上面の幅と下面の幅がほぼ等しく、長方形に近い形状となっている。パドル20の場合と同様に、上面全体と側面の大部分に肉盛り部46を設け、搬送面に格子状凸部47を設け、底面に対して45度傾斜した正方形の凹部48を形成している。
【0035】
パドル20においては、格子状凸部27を表面のうち摩耗しやすい部分、具体的には搬送面21の大部分に設け、凹部28に被混練物が付着するように構成している。そのため、摩耗しやすい部分の全体に硬化肉盛りを施す場合に比べ、低コストでパドル20の耐摩耗性を高めることができる。また、混練装置においてパドルは比較的頻繁に交換の必要な消耗部品であるから、このようなパドル20を備える混練装置1は、ランニングコストを低く抑えることができる。