(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104033
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】患者情報表示システム
(51)【国際特許分類】
A61G 12/00 20060101AFI20170316BHJP
H04M 9/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
A61G12/00 E
A61G12/00 Z
H04M9/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-94905(P2013-94905)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-213109(P2014-213109A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(72)【発明者】
【氏名】清水 紀明
【審査官】
城臺 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−117458(JP,A)
【文献】
特開2008−029619(JP,A)
【文献】
特開2009−028443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
H04M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病室の出入口近傍の廊下側の壁面に設置されており、前記病室に入院している患者の氏名を含む患者情報を記憶する密着型のICタグと、通電時に前記患者情報を電気的に表示する廊下端末用ディスプレイとを有する廊下端末、および、前記ICタグに密着することで前記ICタグから前記患者情報を読み取る読取り部を有するICタグリーダーを備えた患者情報表示システムであって、
前記廊下端末は、前記ICタグリーダーを前記ICタグに密着させた際に操作されるボタンと、前記ボタンが操作された場合に機構的に表示形態を異ならせることで前記患者情報が読み取られたことを表示する表示部とを有し、
前記ICタグリーダーは、読み取った前記患者情報を電気的に表示するディスプレイを有することを特徴とする患者情報表示システム。
【請求項2】
病室の出入口近傍の廊下側の壁面に設置されており、前記病室に入院している患者の氏名を含む患者情報を記憶する密着型のICタグと、通電時に前記患者情報を電気的に表示する廊下端末用ディスプレイとを有する廊下端末、および、前記ICタグに密着することで前記ICタグから前記患者情報を読み取る読取り部を有するICタグリーダーを備えた患者情報表示システムであって、
前記ICタグリーダーは、マグネットと、読み取った前記患者情報を電気的に表示するディスプレイとを有し、
前記廊下端末は、前記ICタグの近傍に設置されており、前記ICタグリーダーを前記ICタグに密着させた際に前記マグネットによって表示形態を異ならせることで前記患者情報が読み取られたことを表示する磁気ボードを有することを特徴とする患者情報表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病室に入院している患者の患者情報を表示する患者情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院などの施設では、患者が看護師を呼び出すために、ナースコールシステムが使用されている。ナースコールシステムは、患者の居るベッドの近傍(例えば、ベッドサイドなど)に設置されたナースコール子機と看護師などの医療従事者(以下、単に医療従事者と記載する)が居るナースステーションなどに設置されたナースコール親機とを有線や無線などにより接続して構成されている。また、ナースコール子機とナースコール親機との間には廊下灯や制御機などが接続されている。
【0003】
ここで、ナースコール子機は、ボタン状の呼出操作部を備えており、この呼出操作部を操作することで、呼出信号を出力する。また、ナースコール親機は、ナースコール子機から呼出信号を入力すると報知を行う。また、ナースコール子機に通話機能が搭載されている場合には、ナースコール親機により報知が行われている状態で、ナースコール親機に設けられたハンドセットをオフフックすることで、ナースコール親機とナースコール子機との間で通話が可能となる。このとき、ナースコール親機により行われていた報知が停止する。この状態でハンドセットをオンフックすると、ナースコール親機とナースコール子機との間の通話が終了する。
【0004】
また、廊下灯は、病室などの部屋の出入口近傍の廊下側の壁面に取り付けられている。また、廊下灯は、取り付けられている病室の番号やその病室に入院している患者の氏名などの患者情報を表示している。また、廊下灯は、ナースコール親機と連動しており、患者がナースコール子機の呼出操作部を操作して生成された呼出信号は、廊下灯にも入力される。呼出信号を入力した廊下灯は内蔵したランプを点滅(または点灯)させる。これにより、医療従事者は、呼び出しを行った患者が居る病室を廊下に居ながらにして特定することができる。
【0005】
ところで、廊下灯に患者情報を表示する場合、手書きや印刷により患者情報を記載したプレートを廊下灯に取り付けるケースや、廊下灯に設けたディスプレイに患者情報を表示するケースなどがある。しかしながら、患者情報を記載したプレートを廊下灯に取り付けるケースでは、そのプレートを何らかの方法で覆わない限り、患者情報が常に表示されている状態となるため、患者のプライバシーを保護することができなくなってしまうという問題があった。また、ディスプレイに患者情報を表示するケースでは、停電などによりディスプレイに電源が供給されなくなると患者情報が表示されなくなってしまうという問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するための方法として、携帯通信端末の患者情報読取部を廊下灯に接近または接触させることで、患者情報を示すコードやICタグなどを読み取って、携帯通信端末のディスプレイに表示させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−117458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1では、災害などによる停電により患者情報を読み取る必要がある場合に、その病室について患者情報を読み取ったのか読み取っていないのかを区別することができず、何度も同じ病室について患者情報を読み取ってしまい、患者情報を読み取る効率が悪くなってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、停電時であっても病室の出入口近傍にて患者情報を読み取ることができ、かつ、患者情報を読み取ったか否かを容易に区別できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明では、病室の出入口近傍の廊下側に設置されており、患者情報を記憶した密着型のICタグと、通電時に患者情報を表示可能なディスプレイと、ICタグから患者情報を読み取って表示するICタグリーダーをICタグに密着させた際に操作されるボタンと、ボタンが操作された場合に機構的に表示形態を異ならせることで患者情報が確認済であることを表示する表示部とを備えるようにしている。
【0011】
また、本発明に他の態様によれば、病室の出入口近傍の廊下側の壁面に設置されており、患者情報を記憶した密着型のICタグと、ICタグの近傍に設置される磁気ボードと、通電時に患者情報を表示可能なディスプレイと、ICタグから患者情報を読み取って表示するとともにマグネットを備えたICタグリーダーをICタグに密着させることにより磁気ボードの表示形態を異ならせることで患者情報が確認済であることを表示するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、ICタグリーダーで患者情報を表示させるためにICタグリーダーを廊下端末のICタグに密着させることで、廊下端末のICタグの近傍に設けたボタンが操作され、その操作に連動して表示部の表示形態が変化するので、停電時であってもICタグリーダーによって患者情報を読み取ることができ、かつ、廊下端末の表示部の表示形態を確認するだけで、患者情報を確認済か否かを容易に区別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態による患者情報表示システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態による患者情報表示システムの動作例を示す図である。
【
図3】本実施形態による患者情報表示システムの患者情報確認動作の例を示す図である。
【
図4】本実施形態による患者情報表示システムの変形例を示すブロック図である。
【
図5】変形例による患者情報表示システムの動作例を示す図である。
【
図6】変形例による患者情報表示システムの患者情報確認動作の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による患者情報表示システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態による患者情報表示システムは、廊下端末1およびICタグリーダー10を備えて構成されている。ここで、廊下端末1は、患者が入院する、または患者が入院している病室の出入口近傍の廊下側の壁面に取り付けられており、ナースコールシステムなどと連動して、その病室に入院している患者の患者情報(例えば、患者氏名など)を表示するために用いられる。また、廊下端末1は、制御部2、ICタグ3、廊下端末用ディスプレイ4、ボタン5、表示部6を備えて構成されている。
【0015】
ICタグリーダー10は、災害などによる停電時に病室に入院している患者の患者情報を確認するために用いられる。ここで、ICタグリーダー10は、医療従事者などの停電時に患者情報を確認する者によって携行される。また、ICタグリーダー10は、表示制御部11、読取り部12、ディスプレイ13を備えて構成されている。
【0016】
まず、廊下端末1の構成要素を説明する。制御部2は、廊下端末1の各構成要素(ただし、ボタン5および表示部6を除く)を後述するように制御するためのものであり、CPU(Central Processing Unit)などにより構成されている。ICタグ3は、廊下端末1の筐体の表面部分に埋め込まれており、廊下端末1が設置されている病室に入院している患者の患者情報を読取り可能に記憶している。ここで、病室内の患者が退院したり、新しい患者が病室に入院したりした場合は、制御部2がICタグ3に記憶されている患者情報を書き換える。また、廊下端末1の筐体の表面には、
図2に示すように、ICタグ3の読取り位置を示す表示を施している。
【0017】
廊下端末用ディスプレイ4は、廊下端末1の筐体の前面に取り付けられており、患者情報を表示するために用いられる。廊下端末1に通電すると、制御部2は患者情報を廊下端末用ディスプレイに表示させる。ここで、廊下端末用ディスプレイ4に表示される患者情報は、廊下端末1の外部から入力されるようにしても良いし、廊下端末1の内部に設けた記憶部(図示せず)から取得するようにしても良いし、ICタグ3から読取るようにしても良い。
【0018】
具体的には、
図2(a)に示すように、廊下端末1に通電している状態では、廊下端末用ディスプレイ4に4名の患者の患者情報(ベッド番号および患者氏名)が表示される。
【0019】
また、停電時や患者のプライバシーを保護する場合などには、制御部2は、患者情報を老化端末用ディスプレイ4に表示させない。具体的には、
図2(b)に示すように、停電時には、廊下端末用ディスプレイ4には患者情報が表示されない。
【0020】
ボタン5は、廊下端末1の筐体の前面の開口から突出して設けられており、比較的軽い力で押下することが可能である。ここで、
図3(a)の要部拡大図に示すように、ボタン5の端部には、ストッパー5aが設けられている。このストッパー5aは、後述する表示部6の移動を規制する。
【0021】
表示部6は、廊下端末1の前面の開口に設けられており、開口内の状態の変化により表示を異ならせることができる。ここで、
図3(a)の要部拡大図に示すように、ボタン5が押下されていない状態では、別の開口から突出しているレバー部6aと連動して、第一の色(例えば白色など)で構成されるプレートが開口から見える状態となる。このプレートは、バネにより
図3(a)中上方に引っ張られているが、ボタン5のストッパー5aにより当該位置に規制されている。そのため、表示部6の状態は白色となる。
【0022】
一方、
図3(b)の要部拡大図に示すように、ボタン5が押下された状態では、ボタン5のストッパー5aが第一の色で構成されるプレートの規制を解除するため、プレートがバネにより上方に引っ張られ、プレートの後方に配置されている第二の色(例えば青色など)で構成される別のプレートが開口から見える状態となる。そのため、表示部6の状態は青色となる。なお、
図3(b)の状態を
図3(a)の状態に戻す際には、レバー6aを下方に移動させれば良い。
【0023】
次に、ICタグリーダー10の構成要素を説明する。表示制御部11は、後述するディスプレイ13への表示の制御を行う。読取り部12は、読取り部12に密着したICタグ3に電源を供給し、電源が供給されたICタグ3から患者情報を読取る。ここで、読取り部12は、ICタグリーダー10の筐体の裏面に埋め込まれており、
図3(a)に示すように、ICタグリーダー10の筐体の裏面で廊下端末1のICタグ3を読み取ろうとすると、廊下端末1の筐体の表面に突出しているボタン5がICタグリーダー10の筐体の裏面で押下されることになる。
【0024】
ディスプレイ13は、読取り部12が読み取った患者情報を表示するためのものであり、読取り部12が患者情報を読み取ると、表示制御部11は、読み取った患者情報をディスプレイ13に表示させる(
図3(b)を参照)。
【0025】
このとき、ボタン5が押下される前には、表示部6には第一の色である白色が表示されているが、ボタン5が押下されると、表示部6には第二の色である青色が表示されることになる。医療従事者や救急隊に対して、第一の色が患者情報を確認する前の状態であり、第二の色が患者情報を確認した後の状態であることを医療従事者などに周知しておけば、表示部6を確認するだけで、その廊下端末1が設置されている病室内の患者の患者情報が確認されたか否かを明確に区別することができる。
【0026】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、病室の出入口近傍の廊下側の壁面に設置されており、患者情報を記憶した密着型のICタグ3と、通電時に患者情報を表示可能な廊下端末用ディスプレイ4と、ICタグ3の近傍に筐体の表面から突出するように設けられたボタン5と、ボタン5が押下された場合に表示形態を異ならせることで患者情報が確認済であることを表示する表示部6とを有する廊下端末1を備え、ICタグ3から患者情報を読み取ってディスプレイ13に表示するICタグリーダー10をICタグ3に密着させた際にボタン5が押下されるようにしている。
【0027】
これにより、ICタグリーダー10のディスプレイ13で患者情報を表示させるために、ICタグリーダー10の筐体を廊下端末1のICタグ3に密着させることで、廊下端末1のボタン5が操作され、その操作に連動して表示部6の表示形態が変化するので、停電時であってもICタグリーダー10によって患者情報を読み取ることができ、かつ、廊下端末1の表示部6の表示形態を確認するだけで、患者情報を確認済か否かを容易に区別することができる。
【0028】
なお、前述した実施形態では、ボタン5および表示部6により患者情報を確認済か否かを表示するようにしているが、これに限定されない。例えば、ICタグリーダー10の筐体の裏面にマグネット14を設け、廊下端末1の筐体の表面に磁気ボード7を設けるようにして患者情報を確認済か否かを表示するようにしても良い。
【0029】
具体的には、
図4、
図5に示すように、廊下端末1の筐体の表面に磁気ボード7を取り付け、ICタグリーダー10の筐体の裏面にマグネット14を取り付けている。ここで、磁気ボード7は、廊下端末1の筐体の表面にマグネット14を近付けていない状態では、磁気ボード7の内部の黒色の磁性粉が表面に引き寄せられていないため、白色の状態である(
図6(a)を参照)。一方、磁気ボード7は、廊下端末1の筐体の表面にマグネット14を近付けた状態では、磁気ボード7の内部の黒色の磁性粉が表面に引き寄せられるため、灰色の状態となる(
図6(b)を参照)。
【0030】
すなわち、ICタグリーダー10がICタグ3から患者情報を読取る前は、磁気ボード7は白色の状態であり、ICタグリーダー10がICタグ3から患者情報を読み取った後は、磁気ボード7は灰色の状態となる。なお、灰色の状態である磁気ボード7を元の白色の状態に戻すためには、表面に引き寄せられた磁性粉を排除するようにすれば良い。
【0031】
また、前述した実施形態では、廊下端末用ディスプレイ4やディスプレイ13に表示される患者情報をベッド番号および患者氏名としているが、これに限定されない。例えば、これらに加えて救護区分(独歩、護送、担送)を患者情報として表示するようにしても良い。このとき、担送とは、独りで歩くことが可能な人であり、護送とは、歩くことはできるものの、独りで歩いてはいけない人であり、担送とは、独りで歩くことが不可能なためストレッチャーなどの介助が必要な人を指す。
【0032】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 廊下端末
2 制御部
3 ICタグ
4 廊下端末用ディスプレイ
5 ボタン
5a ストッパー
6 表示部
6a レバー
7 磁気ボード
10 ICタグリーダー
11 表示制御部
12 読取り部
13 ディスプレイ
14 マグネット