特許第6104038号(P6104038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104038
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】結晶セルロースの複合組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20170316BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170316BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20170316BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20170316BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   A61K47/38
   A61K47/10
   A61K47/36
   A61K47/04
   A61K9/20
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-97014(P2013-97014)
(22)【出願日】2013年5月2日
(65)【公開番号】特開2014-218447(P2014-218447A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】大生 和博
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−213695(JP,A)
【文献】 特開2011−251937(JP,A)
【文献】 特表2010−507676(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/001977(WO,A1)
【文献】 国際公開第99/055311(WO,A1)
【文献】 特開平10−182436(JP,A)
【文献】 特開平11−199517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A23G 1/00− 9/52
A23L 33/00−33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース類と糖類とを含有し、セルロース類と糖類との質量比が100:(0.1〜30.0)である複合組成物であって、
前記糖類がエリスリトールであり、
前記複合組成物が、前記セルロース類と前記糖類以外の賦形剤成分をさらに含み、該賦形剤成分がデンプン類及び無機化合物のうちの少なくとも1つであり、ここで、
前記複合組成物がデンプン類を含む場合、セルロース類とデンプン類との質量比が100:(0.1〜10)であり、
前記複合組成物が無機化合物を含む場合、セルロース類と無機化合物との質量比が100:(0.01〜5)である、複合組成物
【請求項2】
前記セルロース類が結晶セルロースを含んでなる請求項1記載の複合組成物。
【請求項3】
前記デンプン類がアルファー化デンプンである請求項1または2記載の複合組成物。
【請求項4】
前記無機化合物が軽質無水ケイ酸である請求項1〜3のいずれかに記載の複合組成物。
【請求項5】
前記複合組成物が口腔内崩壊錠用賦形剤である請求項1〜のいずれかに記載の複合組成物。
【請求項6】
前記セルロース類と前記糖類からなる懸濁液を噴霧乾燥して得られる請求項1〜のいずれかに記載の複合組成物。
【請求項7】
求項1〜6のいずれかに記載の複合組成物に薬物及び有効成分、賦形剤、結合剤、崩壊剤または滑沢剤のうち少なくとも1種以上を混合し、圧縮成形することを特徴とする口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水なしでも服用できる口腔内崩壊錠(固形製剤)、好ましくは口腔内でも速崩壊性を有する口腔内速崩壊性用の賦形剤に関するものである。また、該速崩壊性固形製剤用の組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の口腔内崩壊錠は、医薬製剤分野において大いに発展した剤形であり、普通錠と同様の製法で製造されている。また、錠剤として実用的な錠剤硬度と口腔内崩壊錠としての満足いく崩壊性や服用感を得るのに、多種多様の添加剤や賦形剤の配合比率を駆使して作り上げた技術である。こうした技術の製剤は、高付加価値製剤として、患者へのQOL(Quality Of Life)向上の他、製品のPLCM(Product Life Cycle Management)の上でも重要になりつつある。更には、高齢化社会が急速に進む中、高齢者や小児などの嚥下力の弱い患者でも服用しやすい剤形として、唾液や少量の水で速やかに崩壊する口腔内崩壊錠は、医療現場での利便性や患者への服用性など、コンプライアンスの向上に大いに寄与している。
【0003】
一方、医薬品以外の健康食品やサプリメントなどの錠剤には、口腔内崩壊錠がほとんど普及していない。しかし、口腔内崩壊錠のように、唾液のみで口腔内で速やかに崩壊するものではないが、それに近い剤型として、健康食品やサプリメントには、チュアブル錠や溶解錠などと呼ばれている製品がある。これらの錠剤は、口腔内で飴のように舐めたり、歯で噛み砕きながら服用するもので、口腔内崩壊錠のように唾液のみで30秒程度で錠剤が崩壊するものではない。そのため、医薬品の口腔内崩壊錠同様の機能を持った健康食品やサプリメントなどの製造技術の開発が期待されている。
【0004】
特許文献1には、賦形剤とエリスリトールを用いた口腔内崩壊錠の製法が記載されている。賦形剤は、デンプン類、セルロース類及び糖アルコール類で、これらとエリスリトールをそのまま混合して直接打錠(直打法)している。また、必要に応じ薬物などと一緒に流動層で造粒した顆粒を打錠(湿錠)するか、スラッグ法などで乾式造粒した顆粒を打錠し、口腔内崩壊錠を製造する方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、糖アルコールと結晶セルロース又は粉末セルロースに液を噴霧させ転動させながら造粒し、球形粒を製造する方法が記載されている。その球形粒の粒子径は、75〜250μm、真球度が0.8以上、嵩密度が0.6g/mlで、主に球形粒の表面に薬物を被覆させる核粒子としての用途が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第1998/002185号
【特許文献2】特開2009−126783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、賦形剤とエリスリトールを含有させた速崩壊性圧縮成型物を製造しているが、当該文献の請求項12に記載されている賦形剤とエリスリトールの配合比率を換算すると、その比率は、100:(100〜2000)となり、エリスリトールが半数以上占める配合となる。また、造粒顆粒の特性値である嵩密度についての記載もなく、製剤化するための一般的な造粒操作で顆粒を製造し、結晶セルロースとエリスリトールからなる懸濁液を噴霧乾燥して複合組成物を製造する方法は、記載されていない。
【0008】
特許文献2では、結晶セルロースと糖アルコール(マンニトール、エリスリトールなど)を用いて球形粒を製造しているが、その配合比は、100:(100〜900)であり、糖アルコールの配合比が多く、また、幅が広くなっている。この配合比率で、球形粒を製造すると硬度が硬く、嵩密度も0.6g/ml以上と重質となり、摩損性の低いものを製造している。また、球形粒の表面に薬物を被覆させやすい特徴があると記載されているが、口腔内崩壊錠としての成形性や崩壊性などについての記載はない。
【0009】
従来、結晶セルロースは、粉体自体の流動性や成形性の良さから錠剤の賦形剤として活用されている。また、糖質のエリスリトールもその甘味と口に含んだときの清涼感から口腔内崩壊錠の賦形剤として活用されている。しかし、結晶セルロースは、吸水性が良い為、口腔内崩壊錠の成分として用いた場合、その配合量が錠剤の30%以上占める割合になると、口腔内の唾液が結晶セルロースに吸収され、口腔内でモサツキなどを感じ、服用感が悪化してしまう。一方、エリスリトールは、服用感は良いが、錠剤を作製するときに、その成形性の悪さから、高い打錠圧力が必要になり、時には打錠障害が発生する。
【0010】
そこで、本発明の目的は、成形性の良好な結晶セルロースと糖質であるエリスリトールの複合組成物を作製し、口腔内崩壊錠用の賦形剤を提供する。すなわち適度な硬度及び口腔内での速やかな崩壊性を発揮し、しかも服用感に優れ、煩雑な製造工程を経ることなく簡便に得ることができる口腔内速崩壊性の製剤を提供することを目的とする。また、該口腔内崩壊錠製剤の組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、口腔内崩壊錠用の賦形剤として、成形性に優れた結晶セルロースに、成形性の悪いエリスリトールを少量含有させた複合組成物と成すことで上記課題が解決できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)セルロース類と糖類とを含有し、セルロース類と糖類との質量比が100:(0.1〜30.0)である複合組成物。
(2)前記セルロース類が結晶セルロースを含んでなる前記(1)記載の複合組成物。
(3)前記糖類がエリスリトールである前記(1)または(2)記載の複合組成物。
(4)前記セルロースと前記糖類以外の賦形剤成分も含まれる前記(1)〜(3)のいずれかに記載の複合組成物。
(5)前記賦形剤成分がデンプン類または無機化合物のうちの少なくとも1つ以上である前記(4)記載の複合組成物。
(6)前記デンプン類がアルファー化デンプンである前記(5)記載の複合組成物。
(7)前記無機化合物が軽質無水ケイ酸である前記(4)または(5)記載の複合組成物。
(8)前記複合組成物が口腔内崩壊錠用賦形剤である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の複合組成物。
(9)前記セルロース類と前記糖類からなる懸濁液を噴霧乾燥して得られる(1)〜(8)のいずれかに記載の複合組成物。
(10)上記(1)〜(9)のうちいずれかに記載の複合組成物に薬物及び有効成分、賦形剤、結合剤、崩壊剤または滑沢剤のうち少なくとも1種以上を混合し、圧縮成形することを特徴とする口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、適度な硬度及び口腔内での速やかな崩壊性を発揮する速崩壊性固形製剤、好ましくは口腔内速崩壊性の固形製剤(錠剤)であって、混合粉体をそのまま打錠する直接打錠(直打)もしくは、水や有機溶媒などで混合粉体を湿式造粒した顆粒を打錠(湿打)したもので、高齢者、小児及び嚥下困難な患者にとって服用しやすくした速崩壊性の口腔内崩壊錠を提供する。速崩壊性の錠剤の組成としては、糖質と結晶セルロースを組み合わせる場合が多々あるが、結晶セルロースの配合比率が糖質の配合比率を上回ると、口腔内で、もさつきを感じ、服用感が悪化する。そこで、従来は、結晶セルロースの配合比率は糖質の配合比率より少なくしている。しかし、成形性の悪いエリスリトールを少量、成形性の良い結晶セルロースに含有させた複合組成物は、結晶セルロース以上の成形性と崩壊性であることが判明した。OD錠に使用される糖質の中で、エリスリトールは成形性が低い糖として知られる。しかし、セルロース類に少量添加した後噴霧乾燥すると驚くべきことに成形性が1.5以上改善されることがわかった。理由は良くわかっていないが、おそらく、エリスリトールがセルロースの水素結合による成形性発現効果を阻害することなく、一種のバインダー的作用によって補強していると考えられる。他の糖質でも同様の効果が見られるが、エリスリトールの増強効果は特異的に高い。さらには、結晶セルロースの服用感も改善できることが確認でき、打錠時の圧力を低く抑えながら、適度な硬度と良好な速崩壊性とを有する口腔内崩壊錠を提供することができる。又、本発明は、該口腔内崩壊錠用の複合組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について、以下具体的に説明する。
【0015】
本発明の複合組成物を用いた口腔内崩壊錠は、水なしでも服用できる医薬品及び健康食品製剤である。第16改正日本薬局方、一般試験法「崩壊試験法」に準じて実施した錠剤の崩壊時間は60秒未満が好ましく、30秒以内がより好ましい。
【0016】
また、錠剤を実際に、人の口の中に入れて唾液のみで崩壊させる口腔内崩壊試験では、60秒未満で崩壊することが好ましく、30秒以内がより好ましい。
【0017】
本発明の複合組成物は、結晶セルロースとエリスリトールとを含有し、その質量比は、100:(0.1〜30.0)である複合組成物である。
【0018】
本発明で使用される結晶セルロースは、いずれも白色の結晶性粉末であり、繊維性植物からパルプとして得たα−セルロースを鉱酸で部分的に解重合し、精製したものである。
【0019】
製造方法は、公知の方法によって製造することができ、例えば、特開昭53−127553号公報、国際公報WO02/02643A1号パンフレット、国際公報WO2004/106416A1号パンフレットなどの開示の方法によって製造できる。
【0020】
市販品としてはセオラスUF−702、セオラスUF−711、セオラスPH−301、セオラスPH−302、セオラスPH−101、セオラスPH−102(商品名)(旭化成ケミカルズ)などが使用できる。
【0021】
本発明のエリスリトールとは、メロン、ブドウや梨などの果実や醤油・味噌・清酒などの発酵食品に含まれている天然の糖アルコールであり、ブドウ糖を発酵させることにより作られる。白色の結晶又は結晶性の粉末でにおいはなく、味は甘く冷涼感あり、カロリーがほとんど無いことが特徴である。市販品としては、エリスリトール(三菱化学フーズ、物産フードサイエンス)などが使用できる。
【0022】
本発明で使用される結晶セルロースとエリスリトールとを含有する複合組成物は、結晶セルロースとエリスリトールとを水に懸濁(スラリー)・溶解させ、その液を噴霧乾燥して得られたものである。必要に応じて、結晶セルロースやエリスリトールの懸濁液に、アルファー化デンプンや軽質無水ケイ酸などの追加的な賦形剤成分を含有させ噴霧乾燥して得られた複合組成物でも構わない。つまり、本発明の複合組成物には、口腔内崩壊錠などの製剤のための追加的賦形剤成分としてのデンプン類及び/又は無機化合物が含まれてよい。当該デンプン類は、本発明の複合組成物中の結晶セルロースの重量を100とした場合、約0.1〜約10、好ましくは約1〜約10の重量比で、本発明の複合体組成物に含まれてよい。また、当該無機化合物は、本発明の複合組成物中の結晶セルロースの重量を100とした場合、約0.01〜約5、好ましくは約0.2〜約5の重量比で、本発明の複合体組成物に含まれてよい。
【0023】
噴霧乾燥には、一般的にスプレードライまたはスプレードライングとも呼ばれる機器を用いる。これは、安定した粒度分布となるので、医薬品や健康食品などのような製品の乾燥に用いられる。一般に空気を加熱して乾燥媒体として用いるが、制御された液滴の霧として液体を分散させるために、噴霧乾燥器は数種類の噴霧器(アトマイザー)またはスプレーノズルを使う。これらで一般的なものは、回転円盤ノズルである。加熱乾燥気体によって乾燥された粉体は、粉体分離器(一般的にサイクロン装置)を通過し、回収されるが、粉体の粒子径や嵩密度などの物性は、スラリーの固形分濃度やアトマイザーの回転数によってある程度、制御できる。
【0024】
本発明で用いる結晶セルロースとエリスリトールとの質量比は、錠剤の硬度、崩壊性や口腔内での甘味の呈味性及び食感から、100:(0.1〜30.0)が好ましく、100:(0.1〜20)がより好ましく、100:(0.1〜10)がさらに好ましい。
【0025】
エリスリトールの質量比が、結晶セルロース100質量部に対して30質量部以下であれば、成形性は、結晶セルロース以上を維持し、口腔内でのモサツキ感が低減し、十分な崩壊性を示す口腔内崩壊錠が得られる。また、結晶セルロース100質量部に対して0.1質量部以下であると、結晶セルロースそのものの服用感である口腔内でのモサツキなどを感じ、服用感が悪化する。また、エリスリトールの質量比が、結晶セルロース100質量部に対して0.1〜30.0質量部であれば、成形性が良好となり、錠剤打錠時に高い圧力で打錠することなくとも、適度な錠剤硬度と崩壊時間が60秒未満という良好な崩壊性とを有する口腔内崩壊錠が得られるため、好ましい。また、打錠機の臼や杵に粉末が付着する打錠障害などが発生しにくくなるという利点もある。
【0026】
結晶セルロースとエリスリトールとを含有する複合組成物の粒子径は、適度な流動性や成形性の観点から75μm以上の割合が、5〜45質量%が好ましく、5〜35質量%がより好まく、5〜30質量%がさらに好しい。複合組成物の配合量は、錠剤重量に対して、5〜85質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。
【0027】
結晶セルロースとエリスリトールとを含有する複合組成物の嵩密度は、0.1〜0.60g/mlが好ましく、0.1〜0.50g/mlがより好ましく、0.1〜0.40g/mlがさらに好ましい。
【0028】
本発明の複合組成物に使用される得る他の追加的な賦形剤成分は、アルファー化デンプンや軽質無水ケイ酸が好ましいが、それ以外のものも使用できる。アルファー化デンプンの例としては、SWELSTAR(登録商標)(旭化成ケミカルズ(株))等を挙げることができる。軽質無水ケイ酸の例としては、カープレックス(EVONIK)等を挙げることができる。
【0029】
その他の賦形剤成分としては、例えば、アラビアゴム末、部分アルファー化デンプン、エチルセルロース、塩化ナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、寒天末、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルムニウム、小麦粉、コムギデンプン、米粉、コメデンプン、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化アルミナマグネシウム、精製ゼラチン、デキストリン、ゼラチン、ソルビトール、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、トウモロコシデンプン、トレハロース、マンニトール、白糖、乳糖、ヒプロメロース、ブドウ糖、還元麦芽糖水飴、ポビドン、クエン酸、リンゴ酸、マルチトール、マルトース、ヒドロキシプロピルスターチ、二酸化ケイ素、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0030】
本発明でいう口腔内崩壊錠は、結晶セルロース、エリスリトール、及び上記のような追加的賦形剤成分以外の成分を含んでも良い。そのような成分としては、活性成分、活性成分を含有したフィルムコーティング顆粒、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0031】
本発明で使用される活性成分とは、人及び動物の疾病の治療、予防、診断に使用されるものであって、器具・機械ではなく、第十六改正日本薬局方に収載されている繁用な医薬品である。例えば、抗癲癇剤(フェニトイン、アセチルフェネトライド、トリメタジオン、フェノバルビタール、プリミドン、ニトラゼパム、バルプロ酸ナトリウム、スルチアム、等)、解熱鎮痛消炎剤(アセトアミノフェン、フェニルアセチルグリシンメチルアミド、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フロクタフェニン、アスピリン、アスピリンアルミニウム、エテンザミド、オキシフェンブタゾン、スルピリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、アルクロフェナク、ナロキセン、ケトプロフェン、塩酸チノリジン、塩酸ベンジダミン、塩酸チアラミド、インドメタシン、ピロキシカム、サリチルアミド、等)、鎮暈剤(ジメンヒドリナート、塩酸メクリジン、塩酸ジフェニドール、等)、麻薬(塩酸アヘンアルカロイド、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、オキシメテバノール等)、精神神経用剤(塩酸クロルプロマジン、マレイン酸レボメプロマジン、マレイン酸ペラジン、プロペリシアジン、ペルフェナジン、クロルプロチキセン、ハロペリドール、ジアゼパム、オキサゼパム、オキサゾラム、メキサゾラム、アルプラゾラム、ゾテピン、等)、骨格筋弛緩剤(クロルゾキサゾン、カルバミン酸クロルフェネシン、クロルメザノン、メシル酸プリジノール、塩酸エペリゾン、等)、自律神経用剤(塩化ベタネコール、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン、等)、鎮痙剤(硫酸アトロピン、臭化ブトロピウム、臭化ブチルスポコラミン、臭化プロパンテリン、塩酸パパベリン、等)、抗パーキンソン剤(塩酸ビペリデン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン、レボドパ、等)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、メキタジン、フマル酸クレマスチン、等)、強心剤(アミノフィリン、カフェイン、dl−塩酸イソプロテレノール、塩酸エチレフリン、塩酸ノルフェネリン、ユビデカレノン、等)、不整脈用剤(塩酸プロカインアミド、ピンドロール、酒石酸メトプロロール、ジソビラミド、等)、利尿剤(塩化カリウム、シクロペンチアジド、ヒドロクロロチアジド、トリアムテレン、アセタゾラミド、フロセミド、等)、血圧降下剤(臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、シロシンゴピン、レセルピン、塩酸プロプラノール、カプトプリル、メチルドパ、等)、血管収縮剤(メシル酸ジヒドロエルゴタミン、等)、血管拡張剤(塩酸エタフェノン、塩酸ジルチアゼム、塩酸カルボクロメン、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、クエン酸ニカメタート、シクランデレート、シンナリジン、等)、動脈硬化用剤(リノール酸エチル、レシチン、クロフィブラート、等)、循環器官用剤(塩酸ニカルジピン、塩酸メクロフェノキサート、チトクロームC、ピリジノールカルバメート、ピンボセチン、ホパンテン酸カルシウム、ペントキシフィリン、イデベノン、等)、呼吸促進剤(塩酸ジメフリン、等)、鎮咳去痰剤(リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、塩酸L−メチルシステイン、塩酸ブロムヘキシン、テオフィリン、塩酸エフェドリン、アンレキサノクス、等)、利胆剤(オサルミド、フェニルプロパノール、ヒメクロモン、等)、整腸剤(塩化ベルベリン、塩酸ロペラミド、等)、消化器官用剤(メトクロプラミド、フェニペントール、ドンペリドン、等)、ビタミン剤(酢酸レチノール、ジヒドロタキステロール、エトレチナート、塩酸チアミン、硝酸チアミン、フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、ニコチン酸、パンテチン、シアノコバラミン、ビオチン、アスコルビン酸、フィトナジオン、メナテトレノン、等)、抗生物質(ベンジルペニシリンベンザチン、アモキシシリン、アンピシリン、シクラシリン、セファクロル、セファレキシン、セフロキシムアキセチル、エリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、グリセオフルビン、セフゾナムナトリウム、等)、化学療法剤(スルファメトキサゾール、イソニアジド、エチオナミド、チアゾスルホン、ニトロフラントイン、エノキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、等)が挙げられる。特に苦味のある薬物としては、カフェイン、ランソプラゾール、ファモチジン、オメプラゾール、クエン酸モサプリド、ボグリボース、酒石酸ゾルピデム、ロラタジン、イミダプリル塩酸塩、ミゾリビン、塩酸セフカペンピボキシル、レボフロキサシン、リスペリドン、コハク酸スマトリプタン、フマル酸クエチアピン、コハク酸ソリフェナシン等が挙げられる。
【0032】
活性成分を含有したフィルムコーティング顆粒としては、活性成分の表面又は、活性成分を含有する顆粒表面にフィルムコーティングを施した顆粒であり、その顆粒の直径は、満足良く服用感を得るために、10〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。
【0033】
なお、本発明で使用される有効成分としては、グルコサミン、グルコサミン塩酸塩、N−アセチルグルコサミン、コエンザイムQ10、ギムネマ、アガリクス、コラーゲン、サイリウムハスク末、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸塩、ウコン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、アルギン酸亜鉛、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム、防風痛聖散、明日葉、アスタキサンチン、アルファーリポ酸、イチョウ葉、エラスチン、L−カルニチン、キトサン、クロレラ、スピルリナ、セラミド、コノギリヤシ、ヒアルロン酸、ビルベリー、β―グルカン、マカ、松樹皮抽出物、ルテイン、アフリカマンゴノキ、柑橘系フルーツ抽出エキス、キノコキトサン、葛の花エキス、グリーンコーヒー豆エキス、グリーンルイボス、黒酢、オルニチン、アミノ酸、オリーブ、クルクミン、アガリクス、霊芝等菌類、リン脂質、オリゴ乳酸、フェルラ酸、青大豆パウダー、ラクトビオン酸、キャッツクロー、ポリフェノール等の健康食品に使用される成分も挙げられる。
【0034】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、クロスポビドン、崩壊性寒天等が挙げられる。崩壊剤は錠剤の崩壊性を補助する目的で配合される。薬物との反応性や崩壊剤自体の成形性の悪さを考慮すると、崩壊剤の配合量は錠剤重量に対して0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。市販品としてはキッコレートND−200、キッコレートND−2HS、SWELSTAR (商品名)、Ac−Di−Sol(旭化成ケミカルズ)、アクジゾル(大日本住友製薬)などが使用できる。
【0035】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、酒石酸カリウムナトリウム、軽質無水ケイ酸、カルナウバロウ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、硬化油、硬化ナタネ油等が挙げられる。滑沢剤は錠剤を打錠する際に、臼や杵への粉の付着を防止する目的で配合される。滑沢効果が強すぎると成形性が弱くなり、実用的な錠剤硬度50〜70Nを得るために、必要以上の圧縮圧力を要することがある。高い圧力で打錠された錠剤は、錠剤の崩壊速度が遅延する傾向にあることから、口腔内崩壊錠には適さない。したがって、本発明においても、できるだけ低い圧力で打錠する必要がある。その点から、本発明の滑沢剤としては、少量で滑沢効果の高いステアリン酸マグネシウムが好ましい。滑沢剤の配合量は錠剤重量に対して0.05〜3質量%が好ましく、0.1〜1.5質量%がより好ましい。
【0036】
結合剤としては、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類等が挙げられる。
【0037】
流動化剤としては含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0038】
矯味剤としてはグルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、メントールなどが挙げられる。
香料としてはオレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール等が挙げられる。
【0039】
着色剤としては食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、リボフラビンなどが挙げられる。
【0040】
甘味剤としてはアスパルテーム、サッカリン、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア等が挙げられる。
【0041】
界面活性剤としては、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0042】
本願発明において、平均粒子径とは、篩分法によって測定される粒子径の篩下積算分布の積算50質量%の値を意味する。
【0043】
口腔内での崩壊性の観点から、本発明の口腔内崩壊錠の組成としては、活性成分又は有効成分、結晶セルロースとエリスリトールの複合組成物、崩壊剤、滑沢剤などが挙げられる。
【0044】
本発明の結晶セルロースの複合組成物を使用した口腔内崩壊錠の製造方法について説明する。
【0045】
活性成分もしくは有効成分及び本発明の複合組成物、並びに流動化剤、香料及び甘味剤などの任意成分と崩壊剤を均一に混合する。混合された粉体に滑沢剤を添加し、さらに混合する。滑沢剤の混合時間が長くなると過度な滑沢作用により成形性に好ましくない影響を与えることがある。そのため、混合時間は、混合均一性も考慮した上で、できるだけ短いほうが好ましい。例えば、混合粉体が100kgスケールの場合、混合時間は10分以下が好ましい。混合装置としては、例えば、一般的に医薬品の製造に使用される装置である、V型混合機、ダブル型混合機、タンブラー型混合機(ダルトン)などが挙げられる。次に、混合粉体を打錠機の臼に充填し、圧縮成形して錠剤を作製する。打錠装置としては、一般的に使用されるロータリー打錠機、例えば、「リブラ2(商品名)」(菊水製作所)を挙げることができる。混合粉体を臼に供給するフィーダー部は、粉末の流動性や顆粒の大きさ等を考慮して、攪拌フィーダーやオープンフィーダーなど、適切なフィーダーの種類を選択することができる。
【0046】
錠剤の硬さは錠剤の硬度で表される。輸送や保管時に錠剤が欠けたり割れたりすることを防止するため、錠剤の硬度は50〜120Nが好ましい。ただし、ほとんどの場合、硬度と崩壊時間は比例する関係にあり、口腔内崩壊錠の崩壊時間をより短縮するためには、錠剤硬度は50〜100Nがより好ましく、50〜80Nがさらに好ましい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0048】
本発明で用いられる物性の測定方法及び条件は以下のとおりである。
<造粒顆粒の平均粒子径[μm]>
ロータップ式篩振盪機(平工製作所製、シーブシェーカーA型)によりJIS標準篩を用いて試料20gを10分間篩分することにより粒度分布を測定し、篩下積算分布における積算50質量%粒子径を平均粒子径とした。
【0049】
<錠剤の崩壊試験>
第16改正日本薬局方、一般試験法「崩壊試験法」に従って実施した。試験液は水を用いた。
【0050】
<錠剤の口腔内崩壊試験>
健康な成人男子3人を被験者として、口腔内の唾液で錠剤が完全に崩壊する時間を測定した。各人2回測定し、3人の平均値を算出した。
【0051】
<錠剤の硬度>
一般的に使用される錠剤硬度測定器(Tablet Tester 8M/DR.SCHLEUNIGER製)にて、錠剤の硬度を測定した。1錠ずつ錠剤硬度を測定し、20錠分の錠剤硬度の平均値を算出した。
【0052】
<服用感>
健康な成人男子3人を被験者として、口腔内の錠剤の服用感を官能的に評価した。錠剤の味や食感に問題がない場合を「良好」とし、粉っぽさを感じる場合は、「もさつき感あり」、顆粒などのザラツキを感じた場合は、「違和感あり」として判定した。各人2回測定し、2回とも「良好」である場合のみ、その被験者の服用感の評価を「良好」と判定した。そして、例えば、もさつき感について、被験者が1回目に何も感じず、2回目にもさつき感を感じた場合は、その被験者の評価は「もさつき感あり」とし、同様に、1回でも顆粒などのザラツキを感じた場合は、「違和感あり」として判定した。
【0053】
参考例1]
市販のパルプ(重合度約1350)を細断したもの1500kgと、0.08Nの塩酸水溶液約9000Lを低速撹拌機に入れ、撹拌速度80rpmで撹拌しながら、約120℃で、約2時間加水分解し、平均重合度が約230の酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、ヌッチェを使用し、固形分約40%になるようにろ過し、ろ過残渣を更に純水で洗浄し、アンモニア水で中和後、純水を加えて固形分濃度約20%のセルロース分散液とした。これを噴霧乾燥して、セルロース粉末Aを得た。セルロース粉末Aの粉体物性を表1に示す。
【0054】
参考例2]
市販のパルプ(重合度約880)を細断したもの1500kgと、0.11Nの塩酸水溶液約9000Lを低速撹拌機に入れ、撹拌速度80rpmで撹拌しながら、約120℃で、約2時間加水分解し、平均重合度が約150の酸不溶解性残渣を得た。得られた酸不溶解性残渣は、ヌッチェを使用し、固形分約40%になるようにろ過し、ろ過残渣を更に純水で洗浄し、アンモニア水で中和後、純水を加えて固形分濃度約20%のセルロース分散液とした。これを噴霧乾燥して、セルロース粉末Bを得た。セルロース粉末Bの粉体物性を表1に示す。
【0055】
参考例3]
参考例1と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール22kgを溶解させた液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールの複合組成物Aを得た(固形分として、セルロース類:糖類は、約90:10)。複合組成物Aの粉体物性を表1に示す。
【0056】
参考例4]
参考例2と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール22kgを溶解させた液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールの複合組成物Bを得た(固形分として、セルロース類:糖類は、約90:10)。複合組成物Bの粉体物性を表1に示す。
【0057】
参考例5]
参考例1と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール77.8kgを溶解させた液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールの複合組成物Cを得た(固形分として、セルロース類:糖類は、約72:28)。複合組成物Cの粉体物性を表1に示す。
【0058】
参考例6]
参考例1と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール1.0kgを溶解させた液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールの複合組成物Dを得た(固形分として、セルロース類:糖類は、約99.5:0.5)。複合組成物D粉体物性を表1に示す。
【0059】
[実施例7]
参考例1と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール20kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)2.2kgを溶解させた液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンの複合組成物Eを得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類は、約90:9:1)。複合組成物Eの粉体物性を表1に示す。
【0060】
[実施例8]
参考例2と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール20kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)2.2kgを溶解させた液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンの複合組成物Fを得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類は、約90:9:1)。複合組成物Fの粉体物性を表1に示す。
【0061】
参考例9]
参考例1と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール39.0kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)23.7kgを溶解させた液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンの複合組成物Gを得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類は、約76:15:9)。複合組成物Gの粉体物性を表1に示す。
【0062】
[実施例10]
参考例1と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール19.6kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)2.2kgと軽質無水ケイ酸0.4kgを懸濁溶解させたセルロース分散液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンと軽質無水ケイ酸の複合組成物Hを得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類:無機化合物は、約90:8.8:1:0.2)。複合組成物Hの粉体物性を表1に示す。
【0063】
[実施例11]
参考例2と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール19.6kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)2.2kgと軽質無水ケイ酸0.4kgを懸濁溶解させたセルロース分散液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンと軽質無水ケイ酸の複合組成物Iを得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類:無機化合物は、約90:8.8:1:0.2)。複合組成物Iの粉体物性を表1に示す。
【0064】
参考例12]
参考例1と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール11.7kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)11.7kgと軽質無水ケイ酸10.5kgを懸濁溶解させたセルロース分散液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンと軽質無水ケイ酸の複合組成物Jを得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類:無機化合物は、約85.5:5:5:4.5)。複合組成物Jの粉体物性を表1に示す。
【0065】
参考例13]
市販の結晶セルロース(商品名:セオラスUF−702/旭化成ケミカルズ製)を用いて固形分濃度約20%のセルロース分散液を1000kg作製後、その分散液に市販のエリスリトール(カーギルジャパン製)22kgを溶解させたセルロース分散液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールの複合組成物Kを得た(固形分として、セルロース類:糖類は、約90:10)。複合組成物Kの粉体物性を表1に示す。
【0066】
[実施例14]
市販の結晶セルロース(商品名:セオラスPH−301/旭化成ケミカルズ製)を用いて固形分濃度約20%のセルロース分散液を1000kg作製後、その分散液に市販のエリスリトール(カーギルジャパン製)20kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)2.2kgを溶解させたセルロース分散液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンの複合組成物Lを得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類は、約90:9:1)。複合組成物Lの粉体物性を表1に示す。
【0067】
[実施例15]
市販の結晶セルロース(商品名:セオラスUF−702/旭化成ケミカルズ製)を用いて固形分濃度約20%のセルロース分散液を1000kg作製後、その分散液に市販のエリスリトール(カーギルジャパン製)19.6kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)2.2kgと軽質無水ケイ酸0.4kgを懸濁溶解させたセルロース分散液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンと軽質無水ケイ酸の複合組成物M得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類:無機化合物は、約90:8.8:1:0.2)。複合組成物Mの粉体物性を表1に示す。
【0068】
実施例の粉体物性について、以下の表1にまとめる。
【0069】
【表1】
【0070】
[実施例16]
参考例1から実施例15で得た粉体(単成分のセルロース粉末)及び複合組成物をそれぞれ、ロータリー打錠機(リブラ2(商品名);菊水製作所製)を用いて打錠(打圧1kN、錠剤重量350mg、10.5mmφ、平錠)した。その錠剤物性を表2に示す。参考例1及び参考例2は速い崩壊性を示したが、錠剤硬度は実用硬度(50N)以下であった。参考例3から実施例15は実用硬度以上でありながら口腔内の崩壊時間は30秒以下と良好な結果であった。
【0071】
実施例の実験結果について、以下の表2にまとめる。
【0072】
【表2】
【0073】
[実施例17]
参考例1から実施例15で得たそれぞれの複合組成物を134g、N−アセチルグルコサミンを500g、エリスリトールを337g、アルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)24gを混合均一後、ステアリン酸カルシウムを5.5g加え、再度混合後、ロータリー打錠機(リブラ2(商品名);菊水製作所製)を用いて打錠(打圧12kN、12mmφ、14.5R、550mg)した。参考例1及び参考例2は、速い崩壊性を示したが、錠剤硬度は実用硬度(50N)以下であった。参考例3から実施例15は、いずれも口腔内崩壊錠として、満足良く崩壊性と、口当りも良い服用感が得られた。その錠剤処方と錠剤物性を表3に示す。
【0074】
実施例の実験結果について、以下の表3にまとめる。
【0075】
【表3】
【0076】
[比較例1]
参考例1と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール107.7kgを溶解させた液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールの複合組成物aを得た(固形分として、セルロース類:糖類は、約65:35)。複合組成物aの粉体物性を表4に示す。
【0077】
[比較例2]
参考例2と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール25.6kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)30.8kgを溶解させた液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンの複合組成物bを得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類は、約78:10:12)。複合組成物bの粉体物性を表4に示す。
【0078】
[比較例3]
参考例1と同じ方法で作製した固形分濃度約20%のセルロース分散液1000kgに市販のエリスリトール23.9kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)2.4kgと軽質無水ケイ酸13.2kgを懸濁溶解させたセルロース分散液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンと軽質無水ケイ酸の複合組成物cを得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類:無機化合物は、約83.5:10:1:5.5)。複合組成物cの粉体物性を表4に示す。
【0079】
[比較例4]
市販の結晶セルロース(商品名:セオラスUF−702/旭化成ケミカルズ製)を用いて固形分濃度約20%のセルロース分散液を1000kg作製後、その分散液に市販のエリスリトール(カーギルジャパン製)107.7kgを溶解させたセルロース分散液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールの複合組成物dを得た(固形分として、セルロース類:糖類は、約65:35)。複合組成物dの粉体物性を表4に示す。
【0080】
[比較例5]
市販の結晶セルロース(商品名:セオラスPH−301/旭化成ケミカルズ製)を用いて固形分濃度約20%のセルロース分散液を1000kg作製後、その分散液に市販のエリスリトール(カーギルジャパン製)39.0kgと市販のアルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)23.7kgを溶解させたセルロース分散液を噴霧乾燥して、セルロースとエリスリトールとアルファー化デンプンの複合組成物eを得た(固形分として、セルロース類:糖類:デンプン類は、約78:10:12)。複合組成物eの粉体物性を表4に示す。
【0081】
比較例の実験結果について、以下の表4にまとめる。
【0082】
【表4】
【0083】
[比較例6]
比較例1から比較例5で得た粉体及び複合組成物をそれぞれ、ロータリー打錠機(リブラ2(商品名);菊水製作所製)を用いて打錠(打圧1kN、錠剤重量350mg、10.5mmφ、平錠)した。その錠剤物性を表5に示す。全てにおいて錠剤硬度が不足する結果であった。
【0084】
比較例6の実験結果について、以下の表5にまとめる。
【0085】
【表5】
【0086】
[比較例7]
比較例1から比較例5で得たそれぞれの複合組成物を134g、N−アセチルグルコサミンを500g、エリスリトールを337g、アルファー化デンプン(SWELSTAR FD−1:旭化成ケミカルズ製)24gを混合均一後、ステアリン酸カルシウムを5.5g加え、再度混合後、ロータリー打錠機(リブラ2(商品名);菊水製作所製)を用いて打錠(打圧12kN、12mmφ、14.5R、550mg)した。その錠剤物性を表6に示す。全てにおいて錠剤の崩壊試験時間が30秒以上で、満足良く崩壊性が得られなかった。
【0087】
比較例6の実験結果について、以下の表6にまとめる。
【0088】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、医薬品薬物を含有する医薬品製剤の分野で好適に利用できる。特に優れた崩壊性を有しているため、水なしで服用できる崩壊性固形製剤、好ましくは口腔内速崩壊性の固形製剤(錠剤)として利用できる。