特許第6104085号(P6104085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6104085-低圧引込用電線 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104085
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】低圧引込用電線
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/36 20060101AFI20170316BHJP
   H01B 7/28 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   H01B7/36 Z
   H01B7/28 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-154213(P2013-154213)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-26465(P2015-26465A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】板倉 正明
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−099401(JP,A)
【文献】 特開2011−018501(JP,A)
【文献】 特開2013−065519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/36
H01B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の延在方向に沿って識別用の色帯が絶縁被覆の外周面に設けられた被覆電線を複数本撚り合わせて構成された低圧引込用電線において、
前記絶縁被覆が内層及び外層の二層で構成され、
前記被覆電線の外周面に露出する前記外層が、カーボンブラックを配合して黒色に着色して構成され、
記色帯が、マンセル表色系における明度6以上の白色無機顔料を含有する樹脂材料で前記外層の外周面に形成され、
前記外層の内側に位置する前記内層が、白色無機顔料を配合した樹脂材料で構成されている、
ことを特徴とする低圧引込用電線。
【請求項2】
前記色帯は、前記外周面の周方向に180度位相をずらして二本設けられており、各色帯は、前記外周面の全周の15%以上22.5%以下の幅を有していることを特徴とする請求項1記載の低圧引込用電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧引込線として用いられる低圧引込用電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電柱等の低圧架空配線と建物の屋内配線とを接続する低圧引込線には、複数の絶縁被覆電線を撚り合わせた低圧引込用電線が用いられている。そして、各電線の絶縁被覆には、それぞれの線心を識別するために、着色樹脂が用いられている。着色樹脂を用いた絶縁被覆の例としては、下地色(黒色)の絶縁被覆の外周面に電線の延在方向に沿った着色樹脂の色帯を設けたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
着色樹脂はカーボンを含有していないのが普通であり、カーボンを含有する下地色(黒色)の絶縁被覆に比べて紫外線遮断効果が低く酸化劣化しやすい。このため、太陽光の照射による亀裂の発生で絶縁特性が劣化するのを避けるために、色帯によって絶縁被覆に識別用の着色を施すことは、従来から好んで行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−194023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、各電線を撚り合わせて低圧引込用電線を構成すると、各電線の色帯が他の電線に覆われて見えづらくなる場合がある。また、紫外線遮断効果の低下を避けるために色帯の層厚を極力薄くすると、色帯の背後の下地色(黒色)が透けて色帯が全体的に暗色系として視認されやすくなる。このため、特に暗所で配線作業を行う場合には、他の電線に覆われて見えづらい色帯によって電線の線心を識別するのが、一層困難になる可能性がある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、暗所でも色帯により各電線の線心を識別しやすい低圧引込用電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電線の延在方向に沿って識別用の色帯が絶縁被覆の外周面に設けられた被覆電線を複数本撚り合わせて構成された低圧引込用電線において、
前記絶縁被覆が内層及び外層の二層で構成され、
前記被覆電線の外周面に露出する前記外層が、カーボンブラックを配合して黒色に着色して構成され、
記色帯が、マンセル表色系における明度6以上の白色無機顔料を含有する樹脂材料で前記外層の外周面に形成され、
前記外層の内側に位置する前記内層が、白色無機顔料を配合した樹脂材料で構成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載した本発明の低圧引込用電線によれば、白色無機顔料を含有する樹脂材料で形成した色帯は、マンセル表色系における明度6以上の白色で視認される。このような白色無機顔料としては、例えば、酸化チタン(二酸化チタン)、硫化亜鉛、酸化亜鉛等を用いることができる。また、活性剤を添加して蓄光機能を有する発光体としてもよい。
【0009】
そして、このような白色無機顔料を含有する樹脂材料で色帯を形成することで、色帯が他の被覆電線に覆われても色帯が隙間から一部でも露出していれば見つけられるようにし、暗所での作業においても線心を識別しやすくすることができる。
【0010】
また、請求項2に記載した本発明の低圧引込用電線は、請求項1に記載した本発明の低圧引込用電線において、前記色帯は、前記外周面の周方向に180度位相をずらして二本設けられており、各色帯は、前記外周面の全周の15%以上22.5%以下の幅を有していることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載した本発明の低圧引込用電線によれば、請求項1に記載した本発明の低圧引込用電線において、他の被覆電線と撚り合わせても色帯が露出する部分を低圧引込用電線に確実に持たせ、線心の識別性をより高めることができる。
【0012】
また、絶縁被覆の半周につき一本ずつ180度位相をずらして設ける色帯の、絶縁被覆の周方向における幅を、絶縁被覆の外周面の全周の15%以上とすることで、他の被覆電線と撚り合わせた際の色帯の露出を確実にすることができる。
【0013】
さらに、同じく色帯の幅を、絶縁被覆の外周面の全周の22.5%以下とすることで、白色無機顔料を含有しカーボンを含まない樹脂材料で色帯を形成しても、絶縁被覆が必要とする紫外線遮断効果を確保することができる。
【0014】
なお、前記複数の被覆電線のうち少なくとも一本は、内層及び外層による二重の前記絶縁被覆を有しており、カーボンを含有する樹脂材料で形成された前記外層の外周面に前記色帯が設けられていると共に、前記内層が前記色帯と同一色に着色されている構成としてもよい。
【0015】
このように構成することで、絶縁被覆から色帯が脱落等して色帯による線心の識別が困難になっても、絶縁被覆の端面(切断面)にて内層の色を確認することで、電線の線心を容易に識別することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低圧引込用電線全体での配線作業を簡略化することができ、また、照明側の小型化や薄型化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の参考例に係る低圧引込用電線の断面図である。
図2図1の低圧引込用電線の絶縁被覆の全周に対する色帯の幅の関係を絶縁被覆の半部を参照して模式的に示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る低圧引込用電線の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1の断面図を参照して、本発明の参考例に係る低圧引込用電線について説明する。
【0019】
図1において引用符号1は、本発明の参考例に係るDV電線等の低圧引込用電線であり、第1乃至第3の3本の被覆電線11〜13を撚り合わせて構成されている。
【0020】
第1の被覆電線11は、例えば軟銅線等の導体11aを絶縁被覆11bで覆って構成されている。絶縁被覆11bは、耐紫外線特性を向上させるカーボンブラックを配合して黒色に着色したポリエチレン(PE)で構成されている。
【0021】
第2及び第3の被覆電線12,13は、例えば軟銅線等の導体12a,13aを絶縁被覆12b,13bで覆って構成されている。各絶縁被覆12b,13bは、第1の被覆電線11と同様に、耐紫外線特性を向上させるカーボンブラックを配合して黒色に着色したポリエチレン(PE)で構成されている。
【0022】
そして、第2及び第3の被覆電線12,13の絶縁被覆12b,13bの表面には、各被覆電線12,13の延在方向(導体12a,13aの中心軸方向)に沿って、色帯12c,13cが形成されている。各色帯12c,13cは、導体12a,13aの仕様を識別するための色に着色したポリエチレン(PE)で構成されている。
【0023】
参考例では、第2及び第3の被覆電線12,13は同じ仕様であり、このため、色帯12c,13cは同じ色に着色されている。具体的には、色帯12c,13cは、白色無機顔料を配合したポリエチレン(PE)で構成されている。白色無機顔料としては、例えば、酸化チタン(二酸化チタン)、硫化亜鉛、酸化亜鉛等を用いることができる。また、活性剤を添加して蓄光機能を有する発光体としてもよい。
【0024】
上述した色帯12c,13cは、マンセル表色系における明度6以上の白色で視認される色味を有している。なお、色帯12c,13cは、導体12a,13aを絶縁被覆12b,13bで被覆する押出成形の際に同時に押出成形して形成してもよく、押出成形後の絶縁被覆12b,13bの外周面に二色成形によって形成してもよい。
【0025】
また、上述した色帯12c,13cは、絶縁被覆12b,13bの外周面の周方向に180度位相をずらして二本設けられている。図2は、絶縁被覆12b,13bの外周面の半部を参照して色帯12c,13cの幅を模式的に示す説明図である。図2に示すように、各色帯12c,13cは、絶縁被覆12b,13bの外周面の全周の15%以上22.5%以下の幅を有している。
【0026】
各色帯12c,13cの幅を絶縁被覆12b,13bの外周面の全周の15%以上としたのは、15%未満であると、他の被覆電線11,13(11,12)と撚り合わせた際に色帯12c(13c)を全く露出させることができなくなる可能性があるからである。
【0027】
また、各色帯12c,13cの幅を絶縁被覆12b,13bの外周面の全周の22.5%以下としたのは、22.5%超であると、カーボンブラックを配合していない色帯12c,13cが絶縁被覆12b,13bの外周面上に占める割合が大きくなり過ぎ、紫外線の照射による絶縁被覆12b,13bの劣化やそれに伴う亀裂の発生等に対する必要な耐性を確保できなくなる可能性があるからである。
【0028】
即ち、絶縁被覆12b,13bの外周面の半周毎に一本の色帯12c,13cを上述した幅で設けることにより、被覆電線11〜13と撚り合わせても色帯12c,13cが露出する部分を低圧引込用電線1に確実に持たせ、第2及び第3の被覆電線12,13の線心(仕様)の識別性を高めることができる。
【0029】
また、白色無機顔料を含有するポリエチレンにより、マンセル表色系における明度6以上の白色で視認される色帯12c,13cを形成することで、色帯12c(13c)が他の被覆電線11,13(11,12)に覆われても色帯12c(13c)が隙間から一部でも露出していれば見つけられるようにし、暗所での作業においても線心を識別しやすくすることができる。
【0030】
なお、第2及び第3の被覆電線12,13が異なる仕様(線心)のものである場合に、それに合わせて、どちらか一方の被覆電線12,13の色帯12c(13c)を、白色以外の色に着色したポリエチレンにより形成してもよい。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態に係る低圧引込用電線の断面図である。本実施形態の低圧引込用電線1Aでは、図1に示す参考例の低圧引込用電線1の第3の被覆電線13に代えて、図3に示すように、第4の被覆電線14を第1及び第2の被覆電線11,12と撚り合わせて構成されている。
【0032】
そして、第4の被覆電線14は、導体14aを覆う絶縁被覆14bが、内層14b1及び外層14b2の二層で構成されている。このうち、第4の被覆電線14の外周面に露出する外層14b2は、第2の被覆電線12の絶縁被覆12bと同じく、カーボンブラックを配合して黒色に着色したポリエチレン(PE)で構成されている。
【0033】
外層14b2の外周面には、第2及び第3の被覆電線12,13と同様に、第4の被覆電線14の延在方向に沿って二本の色帯14c,14cが形成されている。各色帯14cは、第2及び第3の被覆電線12,13の色帯12c,13cと同様の理由から、絶縁被覆14b(外層14b2)の外周面の全周の15%以上22.5%以下の幅を有している。
【0034】
一方、外層14b2の内側に位置する内層14b1は、二本の色帯14c,14cと共に、白色無機顔料を配合したポリエチレン(PE)で構成されている。白色無機顔料としては、例えば、酸化チタン(二酸化チタン)、硫化亜鉛、酸化亜鉛等を用いることができる。また、活性剤を添加して蓄光機能を有する発光体としてもよい。
【0035】
上述した色帯14cも、第2及び第3の被覆電線12,13の色帯12c,13cと同様に、マンセル表色系における明度6以上の白色で視認される色味を有している。なお、色帯14cは、外層14b2の押出成形の際に同時に押出成形して形成してもよく、押出成形後の外層14b2の外周面に二色成形によって形成してもよい。
【0036】
なお、本実施形態の低圧引込用電線1Aでも、第2及び第4の被覆電線12,14が異なる仕様(線心)のものである場合に、それに合わせて、どちらか一方の被覆電線12,14の色帯12c(14c)を、白色以外の色に着色したポリエチレンにより形成してもよい。
【0037】
このように構成した本発明の一実施形態に係る低圧引込用電線1Aでも、参考例の低圧引込用電線1と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態に係る低圧引込用電線1Aでは、第4の被覆電線14の絶縁被覆14bを内層14b1と外層14b2の二層とし、内層14b1を色帯14cと同じ、白色無機顔料を配合したポリエチレン(PE)で構成した。このため、外層14b2から色帯14cが脱落等して色帯14cによる仕様(線心)の識別が困難になっても、絶縁被覆14bの端面(切断面)にて内層14b1の色を確認することで、第4の被覆電線14の仕様(線心)を容易に識別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、電柱等の低圧架空配線と建物の屋内配線とを接続する低圧引込線として使用する低圧引込用電線に用いて、極めて有用である。
【符号の説明】
【0039】
1,1A 低圧引込用電線
11 第1の被覆電線
11a,12a,13a,14a 導体
11b,12b,13b,14b 絶縁被覆
12 第2の被覆電線
12c,13c,14c 色帯
13 第3の被覆電線
14 第4の被覆電線
14b1 内層
14b2 外層
図1
図2
図3