(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
偏光解消素子は、レーザプリンタなどで問題となる偏光を解消させるための光学部品として用いられたり、光学露光装置や光学測定機などの光学機器の光学系のスペックルの発生を低減させるスペックル低減素子として用いられたりしている。
【0003】
レーザからの光をマイクロレンズアレイやフライアイレンズを通すことによってひとつの光束を複数の光束に分割する際、分割された光は偏光方向が同一方向に揃っており、光学系の中で特定の条件が整うと、分割された光がそれぞれ迷光の原因となって光学系の途中で光が強めあう点(スペックル)が生じる場合がある。スペックルは、いろいろな光学系で発生することが知られており、これを解消する方法が種々提案されているが、有効な解決策は確立されていない。
【0004】
スペックルを解消する方法のひとつとしては、偏光状態が様々になったいわゆるランダム偏光状態になっていることが望ましい。偏光が不揃いであると、光の干渉が起こりにくいからである。
【0005】
偏光解消素子として、サブ波長構造(Sub-Wavelength Structures;SWS)を備えたものが知られている(例えば特許文献1を参照。)。サブ波長構造は、使用する光の波長よりも短い周期で繰り返して配列された溝の周期構造である。
【0006】
光の波長より短いピッチをもつ溝の周期構造は、周期をもつ方向ともたない方向で互いに異なる有効屈折率nTE,nTMをもち、あたかも複屈折材料であるかのように振舞う。この有効屈折率の差によって各偏波方向の光の伝播速度に差ができるため、サブ波長構造を通過する光の偏光状態が変化する。
【0007】
サブ波長構造は、構造の設計によって複屈折やそれらの分散を自由に制御できる。サブ波長構造のこの特性を利用して、偏光板、波長板、波長分離素子など、様々な製品が展開されている。
【0008】
サブ波長構造を備えた偏光解消素子において、サブ波長構造の溝の配列方向である光学軸方向を任意に変化させるために、光学機能を発生する部分は複数のサブ波長構造領域に細かく分割されている。このような偏光解消素子において、隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向が互いに異なるように、各サブ波長構造領域に溝の繰返し構造が形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、偏光解消素子の一実施例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。
図2は、同実施例において隣接するサブ波長構造領域間の位相差の一例を説明するための図である。
図3は、偏光解消素子におけるサブ波長構造体を説明するための概略的な断面図である。
【0024】
図3に示されるように、偏光解消素子1は、基板3の表層部に、使用する光の波長よりも短い周期で繰り返して配列された溝5を備えている。繰り返して配列された溝5によって、凹凸周期(ピッチ)Pを有するサブ波長構造が形成されている。基板3は例えば高透過率の二酸化ケイ素で形成されている。
【0025】
サブ波長構造体の複屈折作用について、
図3を参照して説明する。サブ波長凹凸構造の媒質として空気と屈折率nの媒質を想定する。屈折率nの凸条のランドの幅がL、空気層からなる凹条の溝の幅がSであり、P=L+Sである。また、L/Pはフィリングファクタ(F)と呼ばれる。dは溝の深さである。
【0026】
周期Pの目安としては、使用する最も短い入射光の波長より短い周期で、より望ましくは使用波長の半分以下の周期とする。周期Pが入射光の波長よりも短い周期構造は入射光を回折することはないため入射光はそのまま透過し、入射光に対して複屈折特性を示す。すなわち、入射光の偏光方向に応じて異なる屈折率を示す。その結果、構造に関するパラメータを調整することにより位相差を任意に設定することができるため各種波長板を実現できる。
【0027】
構造性複屈折とは、屈折率の異なる2種類の媒質を光の波長よりも短い周期でストライプ状に配置したとき、ストライプに平行な偏光成分(TE波)とストライプに垂直な偏光成分(TM波)とで屈折率(有効屈折率と呼ぶ)が異なり、複屈折作用が生じることをいう。
【0028】
サブ波長構造体の周期よりも2倍以上の波長をもつ光が垂直入射したと仮定する。このときの入射光の偏光方向がサブ波長構造体の溝に平行(TE方向)であるか垂直(TM方向)であるかによって、サブ波長構造体の有効屈折率は次の式で与えられる。
n(TE)=(F×n
2+(1−F))
1/2
n(TM)=(F/n
2+(1−F))
1/2
【0029】
入射光の偏光方向がサブ波長構造体の溝に平行である場合の有効屈折率をn(TE)、垂直である場合の有効屈折率をn(TM)と表す。式中の符号Fは前述のフィリングファクタである。
【0030】
このようなサブ波長構造体を透過した光のTE波とTM波の間の位相差(リタデーション)Δは、
Δ=Δn・d
である。ここで、Δnはn(TE)とn(TM)の差、dは前述の溝の深さである。
【0031】
サブ波長構造領域に直線偏光の光が入射すると、この位相差によってその透過光は楕円偏光に変わる。光学軸の異なるサブ波長構造領域が隣接する本発明の偏光解消素子を直線偏光の光が透過すると、隣接するサブ波長構造領域間で楕円率が異なるとともに、サブ波長構造体を構成する溝の深さの異なる部分を透過した直線偏光間でも位相差の相違によって楕円率が異なる。
【0032】
この偏光解消素子で発生する位相差Δは使用する波長λに対して、λ/4≦Δ≦λとなるようにサブ波長構造体が設計されていることが好ましい。これにより、この偏光解消素子の異なる場所を通過した光束同士であってもその干渉を低減することができる。
【0033】
図1を参照して偏光解消素子1におけるサブ波長構造領域の配置について説明する。
偏光解消素子1において、複数のサブ波長構造領域1a〜1hが配置されている。これらのサブ波長構造領域は互いに隙間のない状態で配置されている。ここでは8×15=120個のサブ波長構造領域1a〜1hが配置されたものを示している。ただし、これは概略図であり、サブ波長構造領域1a〜1hの個数は限定されるものではなく、サブ波長構造領域1a〜1hの数は多いほどよい。例えば、偏光解消素子1が3mm×3mm(ミリメートル)の正方形で、1つのサブ波長構造領域が10μm×10μm(マイクロメートル)であるとすると、300×300=90000個のサブ波長構造領域1a〜1hが配置された偏光解消素子1となる。
【0034】
サブ波長構造領域1a〜1hは使用する光の波長よりも短い周期で繰り返して配列された溝5(
図3を参照。)により構成されるストライプ状の凹凸構造をもっている。そのストライプ状の凹凸の配列方向が光学軸方向である。
図1において、この光学軸方向は双方向矢印で図示されている。
【0035】
各サブ波長構造領域1a〜1hは1つずつの光学軸方向をもっている。サブ波長構造領域1a〜1hの光学軸方向は隣接するサブ波長構造領域間で互いに異なっている。サブ波長構造領域3cの光学軸方向は180度を8分割した方向のいずれかの方向をもつように形成されている。サブ波長構造領域1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hの光学軸方向は、順に、0度、22.5度、45度、67.5度、90度、112.5度、135度、157.5度である。ここで、光学軸方向は、紙面上下方向を0度とし、反時計回りに角度が大きくなっている。
【0036】
この実施例では、縦横方向で隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向がなす角度は22.5度に設定されている(
図2も参照。)。また、1つのサブ波長構造領域の光学軸方向と、そのサブ波長構造領域を取り囲む8つのサブ波長構造領域の光学軸方向とがなす角度は45度以下(0度を含む)に設定されている。このように、サブ波長構造領域1a〜1hの配列領域において、光学軸方向が徐々に変化されることによって屈折率が徐々に変化されている。つまり、サブ波長構造領域の光学軸方向がランダムに配置される場合に比べて、隣接するサブ波長構造領域間の位相差が小さくされている。
【0037】
図4は、サブ波長構造領域の光学軸方向がランダムに配置されている偏光解消素子の比較例のサブ波長構造領域を概略的に示した平面図である。
図5は、同比較例において隣接するサブ波長構造領域間の位相差の一例を説明するための図である。
【0038】
比較例の偏光解消素子101において、複数のサブ波長構造領域1a〜1hが配置されている。サブ波長構造領域1a〜1hの光学軸方向は
図1を参照して説明した実施例と同じである。
【0039】
偏光解消素子101では、横方向に8つのサブ波長構造領域1a〜1hをランダムに並べた配列が基準配列Sとされている。基準配列Sが横方向に並べられている。横方向に並べられた複数の基準配列Sが下方向に1マス、横方向に2マスだけずらされて、サブ波長構造領域1a〜1hが規則的に配列されている。なお、サブ波長構造領域1a〜1hの配置は完全にランダムであってもよい。
【0040】
偏光解消素子101において、隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向がなす角度は67.5度又は112.5度である(
図5も参照。)。また、1つのサブ波長構造領域の光学軸方向と、そのサブ波長構造領域を取り囲む8つのサブ波長構造領域の光学軸方向とがなす角度は22.5度〜157.5度である。
【0041】
偏光解消素子101のサブ波長構造領域1a〜1hの配列領域において、光学軸方向の変化は、
図1に示された偏光解消素子1における光学軸方向の変化と比較して急激である。つまり、隣接するサブ波長構造領域間の位相差が大きい。
【0042】
実施例の偏光解消素子1は、比較例の偏光解消素子101と比較して、隣接するサブ波長構造領域間の位相差が小さい。隣接するサブ波長構造領域間の位相差が小さくなると、偏光解消素子1を透過する光はサブ波長構造領域が拡大したように感じるために、サブ波長構造領域1a〜1hの実際のサイズよりも回折角が小さくなる。
【0043】
したがって、偏光解消素子1は、比較例の偏光解消素子101に比べて、透過する光の回折光を低減でき、光の透過率を向上させることができる。もちろん、偏光解消素子1は透過光におけるスペックルを減少させる効果を有している。
【0044】
光パワーメーターを用いて本発明の効果を検証した。測定対象として、ナノインプリント技術を用いて作製した偏光解消素子を用いた。ナノインプリント技術を用いて偏光解消素子を作製する方法は、例えば特許文献2に開示されている。
【0045】
測定条件は以下のとおりである。
光パワーメーター:レーザーパワーメータ―LP1(三和電気計器株式会社の製品)
偏光解消素子:石英製
光パワーメーターの測定範囲:9mm×9mm
照射したレーザ光の波長:650nm(ナノメートル)
偏光解消素子(金型)と光パワーメーターの間の距離:200mm
サブ波長構造領域の大きさ:10μm×10μm
【0046】
図1の偏光解消素子1(実施例)と、
図4の偏光解消素子101(比較例)について、透過光の0次光を測定した。比較例に対する測定値は30μW(マイクロワット)であった。実施例に対する測定値は45μWであった。実施例の偏光解消素子は比較例の偏光解消素子と比較して光量が1.5倍の透過光を得られたことになる。
【0047】
このように、本発明の偏光解消素子は、複数のサブ波長領域における光学軸方向がランダム配置されている場合に比べて、透過する光の回折光を低減でき、光の透過率を向上させることができることが実証された。
【0048】
次に偏光解消装置の実施例について説明する。
図6は、偏光解消装置の一実施例を説明するための概略的な構成図である。
偏光解消装置7は、偏光解消素子1、外枠部9、台座部11、振動部13、共振用ばね構造部15及び制御部17を備えている。
【0049】
偏光解消素子1は本発明の偏光解消素子であり、例えば
図1を参照して説明した偏光解消素子1である。
【0050】
外枠部9、台座部11、振動部13及び共振用ばね構造部15は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって形成されたものであり、ここではシリコン基板が加工されて形成されたものである。外枠部9、台座部11、振動部13及び共振用ばね構造部15を構成するシリコン材料の厚みは例えば200μmである。
【0051】
外枠部9は、例えば、外形寸法が7mm×7mm、幅寸法が1mmの枠形状である。
【0052】
台座部11は外枠部9の枠内に配置されている。台座部11は、例えば、外形寸法が4mm×4mm、幅寸法が0.5mmの枠形状である。台座部11は、振動部13及び共振用ばね構造部15を介して外枠部9の枠内に梁状に保持されている。
【0053】
台座部11に偏光解消素子1が接合されている。偏光解消素子1と台座部11の接合方法は特に限定されないが、例えば分子接合や接着剤による接合などを挙げることができる。
【0054】
振動部13は、例えば3つのムーニー型アクチュエータによって構成されている。ムーニー型アクチュエータは、枠状部材と、下部電極層と、圧電体層と、上部電極層によって形成されている。枠状部材はシリコン材料で形成されている。下部電極層は、その両端が枠状部材の上に配置され、枠状部材の枠内の空間の上をまたぐように配置されている。圧電体層は下部電極層の上に積層されている。上部電極層は圧電体層の上に積層されている。圧電体層及び上部電極層は枠状部材の枠内の空間の上をまたぐように配置されている。下部電極層、圧電体層及び上部電極層の積層体は、その長手方向が枠状部材の長手方向に沿うように配置されている。
【0055】
下部電極層及び上部電極層は例えばプラチナ(Pt)で形成されている。圧電体層は例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成されている。ただし、下部電極層、圧電体層及び上部電極層の材料はこれらの材料に限定されない。
【0056】
下部電極層、圧電体層及び上部電極層の積層体は、例えば、厚み寸法が50μm〜150μm、長さ寸法が150μm〜200μmである。下部電極層の幅寸法は例えば40μmである。圧電体層及び上部電極層の幅寸法は例えばそれぞれ20μm〜30μmである。
【0057】
振動部13において、3つのムーニー型アクチュエータは、長手方向と直交する方向に一列に配列されている。隣り合うムーニー型アクチュエータはシリコン材料からなる連結部材によって連結されている。また、配列の両端に位置する2つのムーニー型アクチュエータのうち一方のムーニー型アクチュエータは、シリコン材料からなる連結部材によって台座部11に連結されている。
【0058】
シリコン材料からなる共振用ばね構造部15の一端は、振動部13を構成する3つのムーニー型アクチュエータのうちの1つに連結されている。共振用ばね構造部15と接続されているムーニー型アクチュエータは、配列の両端に位置する2つのムーニー型アクチュエータのうち台座部11に連結されていない方のムーニー型アクチュエータである。共振用ばね構造部15の他端は外枠部9に連結されている。
【0059】
偏光解消装置7には2組の振動部13及び共振用ばね構造部15が設けられている。台座部11と2組の振動部13及び共振用ばね構造部15は、共振用ばね構造部15、振動部13、台座部11、振動部13、共振用ばね構造部15の順に一列に連結されている。台座部11と2組の振動部13及び共振用ばね構造部15は、偏光解消素子1を並進振動させるための振動機構を構成している。
【0060】
振動部13から共振用ばね構造部15を介して外枠部9にまたがって配線19a,19bが形成されている。配線19aは振動部13のムーニー型アクチュエータの下部電極層と電気的に接続されている。配線19bは振動部13のムーニー型アクチュエータの上部電極層と電気的に接続されている。配線19a,19bは2つの振動部13ごとに設けられている。
【0061】
外枠部9に2組の電極パッド21a,21bが形成されている。電極パッド21a,21bは対応する配線19a,19bと電気的に接続されている。配線19a,19b及び電極パッド21a,21bは、例えば下部電極層及び上部電極層と同じ材料、ここではプラチナによって形成されている。
【0062】
制御部17は電極パッド21a,21b及び配線19a,19bを介して振動部13のムーニー型アクチュエータの動作を制御して、偏光解消素子1を並進振動させる。
【0063】
図7は、偏光解消素子を並進振動させる動作を説明するための概略的な原理図である。
台座部11を挟んで配置された一対の振動部13のムーニー型アクチュエータを互いに逆方向に変位させると、一方の振動部13の枠状部材は長手方向に伸び、他方の振動部13の枠状部材は長手方向に縮む。枠状部材が長手方向に伸びた振動部13は長手方向と直交する方向の寸法が小さくなる。枠状部材が長手方向に縮んだ振動部13は長手方向と直交する方向の寸法が大きくなる。これにより、台座部11に配置された偏光解消素子1の位置は、枠状部材が長手方向に伸びた振動部13の方へ変位する。
【0064】
偏光解消装置7は、一対の振動部13を動作させるタイミングを制御することにより、偏光解消素子1を所望の周波数で並進振動させることができる。これにより、偏光解消素子1が振動されない場合に比べて、偏光解消素子1を透過した光におけるスペックルがより低減される。
【0065】
図8は、偏光解消装置の他の実施例を説明するための概略的な構成図である。
図8において
図6と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0066】
この実施例の偏光解消装置23は、
図6に示された実施例の偏光解消装置7と比較して2組の振動部13、共振用ばね構造部15、配線19a,19b及び電極パッド21a,21bをさらに備えている。したがって、偏光解消装置23は、4組の振動部13及び共振用ばね構造部15を備えている。また、偏光解消装置23の外枠部9の外形は例えば7mm×7mmである。
【0067】
振動部13及び共振用ばね構造部15は、矩形の台座部11の各片に1組ずつ連結されている。これにより、4組の振動部13及び共振用ばね構造部15で構成される振動機構は、偏光解消素子1を互いに直交する2方向で並進振動させることが可能になっている。
【0068】
制御部17は、4組の振動部13及び共振用ばね構造部15で構成される振動機構の動作を制御して、偏光解消素子1を円又は楕円運動させる。したがって、偏光解消装置23は、偏光解消素子1の位置を変位させ続けることができる。これにより、偏光解消素子1が並進振動される場合に比べて、偏光解消素子1を透過した光におけるスペックルがより低減される。
【0069】
ところで、本発明の偏光解消素子において、サブ波長構造領域の配列されている素子領域内で、サブ波長構造領域の光学軸方向の配列が周期性を持たないように配列されていることが好ましい。素子領域内における光学軸方向の配列が均一化やパターン化されないようにすることができるからである。なお、素子領域内における光学軸方向の配列が均一化されたりパターン化されたりすると、その配列によって新たな回折光が発生するという不具合が発生する。
【0070】
サブ波長構造領域の光学軸方向の配列が周期性を持たないように配列した一実施例について説明する。
図9は、サブ波長構造領域の光学軸方向の配列の一例を説明するための図である。
図10は、
図9の光学軸方向の配列を双方向矢印で示した図である。
図9(A)及び
図10(A)はサブ波長構造領域の光学軸方向の配列が周期性を持っている配置例を示す。
図9(B)及び
図10(B)はサブ波長構造領域の光学軸方向の配列が周期性を持っていない配置例を示す。
図9及び
図10において
図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0071】
偏光解消素子1のサブ波長構造領域が配列されている素子領域にサブ波長構造領域1a,1c,1e,1gが配置されている。この配置例では4方向の光学軸方向(180度(0度)、45度、90度、135度)が設定されている。サブ波長構造領域1a,1c,1e,1gの光学軸方向は、順に、180度、45度、90度、135度である。
図9において、各サブ波長構造領域1a,1c,1e,1gの光学軸方向は角度の数値で図示されている。
【0072】
図9では、8×8=64個のサブ波長構造領域1a,1c,1e,1gが配置されたものを示している。ただし、これは概略図であり、サブ波長構造領域1a,1c,1e,1gの個数は限定されるものではない。
【0073】
図9(A)では、サブ波長構造領域1a,1c,1e,1gの光学軸方向は、縦横方向で隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向がなす角度が45度(60度以下)になるように、周期性を持って配列されている。
【0074】
図9(B)では、
図9(A)の光学軸方向の配列に対して、1つのサブ波長構造領域1cが欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1に変更されている。欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1は、隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向がなす角度が60度よりも大きくなるように光学軸方向が設定されている。例えば、欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1の光学軸方向は180度(0度)である。
【0075】
欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1に対して左方向又は下方向で隣接するサブ波長構造領域1aの光学軸方向は180度であり、欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1の光学軸方向と同じである。隣接するサブ波長構造領域1a−1と1a間で光学軸方向がなす角度は0度である。
【0076】
欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1に対して上方向又は右方向で隣接するサブ波長構造領域1eの光学軸方向は90度である。したがって、隣接するサブ波長構造領域1a−1と1e間で光学軸方向がなす角度は90度であり、60度よりも大きくなっている。
【0077】
このように、周期性を持っている光学軸方向の配列(
図9(A))に対して、欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1を導入することにより、サブ波長構造領域の光学軸方向の配列の周期性を崩し、周期性を持たないようにすることができる。これにより、サブ波長構造領域の光学軸方向の配列の周期性に起因する回折光の発生をなくす又は低減することができる。
【0078】
ここで、欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1の数を増やしすぎると、隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向がなす角度が大きいことに起因する回折光の発生が大きくなる。そこで、偏光解消素子1のサブ波長構造領域が配列されている素子領域の面積に対して欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1が占める面積は1%以下であることが好ましい。
【0079】
素子領域の面積に対して欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1が占める面積は1%以下であれば、欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1が透過率に与える影響を実用上問題のない程度にすることができる(例えば特許文献2の段落[0027]−[0029]及び
図14を参照。)。
【0080】
なお、
図9(B)では、欠陥発生用のサブ波長構造領域1a−1は光学軸方向が180度のものであるが、欠陥発生用のサブ波長構造領域は、光学軸方向が45度、90度、135度のいずれのものであってもよい。また、複数の欠陥発生用のサブ波長構造領域が配置される場合には、複数の欠陥発生用のサブ波長構造領域で光学軸方向が互いに異なっていてもよい。
【0081】
また、
図9では光学軸方向が4方向に設定されているが、光学軸方向は3方向以上であれば、多くの領域で、隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向がなす角度が60度以下としつつ、一部に欠陥発生用のサブ波長構造領域を配置することによって、隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向がなす角度が60度よりも大きくなっている領域を存在させることができる。
【0082】
以上、本発明の実施例が説明されたが、材料、形状、配置、寸法等は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、本発明の偏光解消素子において、複数のサブ波長構造領域は互いに大きさが異なっていてもよい。
【0084】
また、サブ波長構造領域の平面形状は、矩形に限定されず、例えば三角形や六角形など、どのような形状であってもよい。
【0085】
また、本発明の偏光解消素子に設定されるサブ波長構造領域の光学軸方向は、8方向に限定されず、3方向以上、好ましくは4方向以上であればよい。サブ波長構造領域の光学軸方向が3方向であれば、隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向がなす角度は60度以下にすることができる。サブ波長構造領域の光学軸方向が4方向であれば、隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向がなす角度は45度以下にすることができる。
【0086】
また、サブ波長構造領域の光学軸方向の配置は、
図1に示されたものに限定されず、隣接するサブ波長構造領域間で光学軸方向がなす角度が60度以下、好ましくは45度以下になる配置であれば、どのような配置であってもよい。