特許第6104088号(P6104088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104088
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】レジンコーテッドサンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/22 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   B22C1/22 L
   B22C1/22 M
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-159069(P2013-159069)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-29996(P2015-29996A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】永井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一郎
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−014289(JP,B1)
【文献】 特開昭53−079989(JP,A)
【文献】 特開昭60−024244(JP,A)
【文献】 特開昭62−050042(JP,A)
【文献】 特開2004−154804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/22
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
110〜180℃に加温した耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂とを混合して混合物を調製した後に、該混合物に固形レゾール型フェノール樹脂を加える、レジンコーテッドサンドの製造方法。
【請求項2】
ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の質量比(ノボラック型フェノール樹脂:固形レゾール型フェノール樹脂)が20:80〜80:20である、請求項1に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
【請求項3】
ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対して、ヘキサメチレンテトラミンの使用量が1〜7.5質量部である、請求項1または2に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルモールド鋳型の材料として好適なレジンコーテッドサンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳物を製造するには鋳型が必要である。鋳型には普通鋳型と特殊鋳型とがあり、普通鋳型には生型と乾燥型がある。一方、特殊鋳型には熱硬化鋳型、自硬性鋳型、ガス硬化鋳型がある。例えば、鋳物を大量生産する場合にはベントナイト系の生型が、中空部又は内部構造を有する鋳物を製造する際に用いられる中子用等には熱硬化鋳型のシェルモールド鋳型が一般的に採用されている。また、多品種少量生産用には自硬性鋳型やガス硬化鋳型が主に適用されている。
また、鋳型には鋳物の形状に対応した大小様々な形状のものが求められる。シェルモールド鋳型は、中子を用いた複雑な形状の鋳物を高い寸法精度で製造できる。
【0003】
鋳型の材料には珪砂などの耐火性粒状材料が用いられるが、耐火性粒状材料だけでは乾燥すると崩れやすいため粘結剤を加えて崩れ難くしている。
普通鋳型にはベントナイトなどの粘土が粘結剤として用いられる。一方、特殊鋳型にはフェノール樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂などの有機系粘結剤や、水ガラスなどの無機系粘結剤が用いられる。中でも、シェルモールド鋳型の材料としては、耐火性粒状材料と粘結剤としてノボラック型フェノール樹脂(粘結剤)とを混合したレジンコーテッドサンド(以下、「RCS」ともいう。)が用いられている。RCSは流動性に優れており、複雑な形状の鋳型も容易に製造できる。
【0004】
RCSは、加温した耐火性粒状材料とノボラック型フェノール樹脂とを混合した後、水とヘキサメチレンテトラミンとを添加することで製造される。このように、RCSには、ノボラック型フェノール樹脂を硬化させるための硬化剤として、通常、ヘキサメチレンテトラミンが配合される。
シェルモールド鋳型は、RCSを250〜350℃程度に加熱した金型内に充填して製造される。RCSを加熱した金型内に充填すると、ヘキサメチレンテトラミンを硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂が熱硬化することでシェルモールド鋳型が得られる。しかし、このとき、ヘキサメチレンテトラミンがアンモニア、トリメチルアミンなどのアミン化合物、ホルムアルデヒドなどに熱分解して、刺激性のある不快な臭気を放って作業環境を悪化させる。そのため、排気ダクト等の設備対応が必要となる。
【0005】
また、不快臭を低減するRCSが検討されている。例えば、特許文献1には、臭気を中和して臭気を軽減できる脱臭剤として、オレンジオイル、テレビンオイル、シダーウッドオイルを主成分とする脱臭剤を配合したRCSが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−38748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のRCSでは、ある程度の消臭効果は認められるものの、さらなる臭気の低減が求められる。
ところで、臭気を低減する観点からは、ヘキサメチレンテトラミンを用いなくても、あるいは少量のヘキサメチレンテトラミンでも硬化する粘結剤をノボラック型フェノール樹脂の代わりに用いればよい。このような粘結剤としては、例えばレゾール型フェノール樹脂が挙げられる。
しかし、レゾール型フェノール樹脂を粘結剤として用いたRCSから得られる鋳型は、温間強度や冷間強度が不充分であった。
【0008】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、鋳型の製造時における臭気の発生を低減でき、かつ温間強度および冷間強度に優れた鋳型を製造できるレジンコーテッドサンドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を有する。
[1]110〜180℃に加温した耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂とを混合して混合物を調製した後に、該混合物に固形レゾール型フェノール樹脂を加える、レジンコーテッドサンドの製造方法。
[2]ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の質量比(ノボラック型フェノール樹脂:固形レゾール型フェノール樹脂)が20:80〜80:20である、[1]に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
[3]ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対して、ヘキサメチレンテトラミンの使用量が1〜7.5質量部である、[1]または[2]に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレジンコーテッドサンドの製造方法によれば、鋳型の製造時における臭気の発生を低減でき、かつ温間強度および冷間強度に優れた鋳型を製造できるレジンコーテッドサンドを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のレジンコーテッドサンド(以下、「RCS」ともいう。)の製造方法は、110〜180℃に加温した耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂とを混合して混合物を調製した(調製工程)後に、該混合物に固形レゾール型フェノール樹脂を加えて(添加工程)、RCSを製造する方法である。
【0012】
なお、以下の明細書において、「鋳型」とは、本発明のRCSの製造方法により製造されたRCSを用いて造型してなるものである。
また、「温間強度」とは、加熱した金型にRCSを充填し、所定の時間放置した後、抜型した直後の鋳型の強度のことである。温間強度は、JACT(日本鋳造技術協会)試験法SM−5に従って測定できる。
また、「冷間強度」とは、加熱した金型にRCSを充填し、所定の時間放置した後、抜型し、室温(20℃)まで冷却した後の鋳型の強度のことである。冷間強度は、JIS K 6910またはJACT試験法SM−1に従って測定できる。
【0013】
<調製工程>
調製工程では、110〜180℃に加温した耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂とを混合して混合物を調製する。
【0014】
耐火性粒状材料としては、珪砂、オリビン砂、ジルコン砂、クロマイト砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂等の従来公知のものを使用できる。また、耐火性粒状材料として、使用済みの耐火性粒状材料を回収したものや再生処理をしたものなども使用できる。
耐火性粒状材料は、110〜180℃に加温される。加温温度が110℃以上であれば、固形状のノボラック型フェノール樹脂が耐火性粒状材料の熱で溶融し、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとで耐火性粒状材料の表面がコーティングされる。また、ヘキサメチレンテトラミンの一部が分解し、ノボラック型フェノール樹脂の初期硬化反応が進行する。ただし、加温温度が180℃を超えてもノボラック型フェノール樹脂の溶融は頭打ちとなるため、コストを高めるだけである。また、加温温度が180℃を超えると、ノボラック型フェノール樹脂の硬化がさらに進行し、鋳型の冷間強度が低下する。
【0015】
ヘキサメチレンテトラミンは、ノボラック型フェノール樹脂および固形レゾール型フェノール樹脂の硬化剤の役割を果たす。
ヘキサメチレンテトラミンの使用量は、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対して、1〜7.5質量部であることが好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの使用量が1質量部以上であれば、鋳型の製造時にノボラック型フェノール樹脂および固形レゾール型フェノール樹脂が充分に硬化し、温間強度および冷間強度に優れた鋳型が得られやすくなる。一方、ヘキサメチレンテトラミンの使用量が7.5質量部以下であれば、鋳型の製造時に臭気の発生を充分に低減できる。
ヘキサメチレンテトラミンの使用量が少ないほど、鋳型の製造時に臭気の発生を低減できるが、その一方で、鋳型の温間強度や冷間強度は低くなる傾向にある。ヘキサメチレンテトラミンの使用量が上記範囲内であれば、臭気低減と強度のバランスが良好となる。
【0016】
ノボラック型フェノール樹脂は、耐火性粒状材料の粘結剤の役割を果たす。ノボラック型フェノール樹脂は、ヘキサメチレンテトラミンを硬化剤として熱硬化する。
ノボラック型フェノール樹脂は、酸性触媒の存在下でフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られたものであり、通常、固体である。
【0017】
フェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、3,5−キシレノール、m−エチルフェノール、m−プロピルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−ブチルフェノール、レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、メチルハイドロキノン、2−メチルレゾルシノール、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,5−ジメチルレゾルシノール、2−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、4−エチルレゾルシノール、3−エトキシ−4−メトキシフェノール、2−プロペニルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−ピロポキシフェノール、2−アリルフェノール、3,4,5−トリメトキシフェノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、ピロガロール、フロログリシノール、1,2,4−ベンゼントリオール、5−イソプロピル−3−メチルフェノール、4−ブトキシフェノール、4−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、4−t−ペンチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3−フェノキシフェノール、4−フェノキシフェノール、4−へキシルオキシフェノール、4−ヘキサノイルレゾルシノール、3,5−ジイソプロピルカテコール、4−ヘキシルレゾルシノール、4−ヘプチルオキシフェノール、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、ジ−sec−ブチルフェノール、4−クミルフェノール、ノニルフェノール、2−シクロペンチルフェノール、4−シクロペンチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどが挙げられる。これらフェノール類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、フルフラール、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルヘミホルマール、エチルへミホルマール、プロピルへミホルマール、サリチルアルデヒド、ブチルヘミホルマール、フェニルへミホルマール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o―メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらアルデヒド類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、酪酸、乳酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、硼酸、又は塩化亜鉛もしくは酢酸亜鉛などの金属との塩などが挙げられる。これら酸性触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ノボラック型フェノール樹脂の質量平均分子量は、800〜10000であることが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の質量平均分子量が800以上であれば、温間強度および冷間強度により優れた鋳型が得られやすくなる。一方、ノボラック型フェノール樹脂の質量平均分子量が10000以下であれば、硬化性が良好で、中空性に優れた鋳型が得られやすくなる。
ノボラック型フェノール樹脂の質量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
【0020】
ノボラック型フェノール樹脂の軟化点は、75〜125℃であることが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の軟化点が75℃以上であれば、室温で固形状態が保たれやすい。一方、ノボラック型フェノール樹脂の軟化点が125℃以下であれば、ノボラック型フェノール樹脂が加温された耐火性粒状材料の熱で溶融しやすくなり、耐火性粒状材料の表面をコーティングしやすくなる。
ノボラック型フェノール樹脂の軟化点は、軟化点測定装置を使用し、5℃/分の昇温速度、30〜150℃の温度範囲で測定される値である。
【0021】
なお、ノボラック型フェノール樹脂には、鋳型強度改善を目的として、ノボラック型フェノール樹脂の製造過程でシランカップリング剤が配合される場合が多い。製造過程でシランカップリング剤が配合されない場合には、ノボラック型フェノール樹脂とシランカップリング剤とを併用してもよい。
シランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0022】
<添加工程>
添加工程では、調製工程で得られた混合物に、固形レゾール型フェノール樹脂を加える。
【0023】
固形レゾール型フェノール樹脂は、耐火性粒状材料の粘結剤の役割を果たす。固形レゾール型フェノール樹脂は、ヘキサメチレンテトラミンを用いなくても、あるいは少量のヘキサメチレンテトラミンでも熱硬化する。また、固形レゾール型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂とも反応する。
【0024】
レゾール型フェノール樹脂は、塩基性触媒の存在下でフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られたものである。
フェノール類およびアルデヒド類としては、ノボラック型フェノール樹脂の説明において先に例示したフェノール類およびアルデヒド類などが挙げられる。
塩基性触媒としては、例えば水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
【0025】
レゾール型フェノール樹脂は、通常、水等の溶媒に分散された状態で得られる(以下、この状態のレゾール型フェノール樹脂を「液状レゾール型フェノール樹脂」という。)。液状レゾール型フェノール樹脂は、RCSの製造時に溶媒が加温された耐火性粒状材料の熱により揮発する傾向にある。溶媒の揮発により耐火性粒状材料の温度が大きく低下し、最適なコーティングが困難となる。よって、得られる鋳型の温間強度および冷間強度が低下しやすくなる。
本発明では、液状レゾール型フェノール樹脂を脱水処理などして溶媒を除去し、常温で乾燥させて固形状にしたものを用いる。レゾール型フェノール樹脂として固形状のものを用いることで、温間強度および冷間強度に優れた鋳型が得られる。
なお、固形レゾール型フェノール樹脂にも、鋳型強度改善を目的として、固形レゾール型フェノール樹脂の製造過程でシランカップリング剤が配合される場合が多い。製造過程でシランカップリング剤が配合されない場合には、固形レゾール型フェノール樹脂とシランカップリング剤とを併用してもよい。
【0026】
固形レゾール型フェノール樹脂の質量平均分子量は、800〜1600であることが好ましい。固形レゾール型フェノール樹脂の質量平均分子量が800以上であれば、温間強度および冷間強度により優れた鋳型が得られやすくなる。一方、固形レゾール型フェノール樹脂の質量平均分子量が1600以下であれば、固形レゾール型フェノール樹脂が加温された耐火性粒状材料の熱で溶融しやすくなり、耐火性粒状材料の表面をコーティングしやすくなる。
固形レゾール型フェノール樹脂の質量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
【0027】
固形レゾール型フェノール樹脂の軟化点は、70〜100℃であることが好ましい。固形レゾール型フェノール樹脂の軟化点が70℃以上であれば、室温で固形状態が保たれやすい。一方、固形レゾール型フェノール樹脂の軟化点が100℃以下であれば、固形レゾール型フェノール樹脂が加温された耐火性粒状材料の熱で溶融しやすくなり、耐火性粒状材料の表面をコーティングしやすくなる。
固形レゾール型フェノール樹脂の軟化点は、軟化点測定装置を使用し、5℃/分の昇温速度、30〜150℃の温度範囲で測定される値である。
【0028】
ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の質量比(ノボラック型フェノール樹脂:固形レゾール型フェノール樹脂)は20:80〜80:20であることが好ましく、40:60〜60:40であることがより好ましい。質量比が上記下限値以上であれば(ノボラック型フェノール樹脂の割合が下限値以上であれば)、温間強度および冷間強度により優れた鋳型が得られやすくなる。一方、質量比が上記上限値以下であれば(ノボラック型フェノール樹脂の割合が上記上限値以下であれば)、ヘキサメチレンテトラミンの使用量を充分に減らすことができるため、鋳型の製造時に臭気の発生を充分に低減できる。また、温間強度により優れた鋳型が得られやすくなる。
【0029】
また、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の使用量は合計で、耐火性粒状材料100質量部に対して、1〜4質量部であることが好ましい。各フェノール樹脂の使用量の合計が1質量部以上であれば、粘結剤としての効果が充分に得られる。ただし、各フェノール樹脂の使用量の合計が4質量部を超えても粘結剤の効果は頭打ちとなるため、コストを高めるだけである。
【0030】
添加工程では、混合物に固形レゾール型フェノール樹脂を加えた後、均一になるまで混練する。固形レゾール型フェノール樹脂を添加した後、長時間高温状態におくと各フェノール樹脂の硬化が進行するので、適当な段階、例えば固形レゾール型フェノール樹脂を添加し、混練した後に冷却を開始する。
この冷却は適量の水を添加することで、水の蒸発潜熱を利用することで行うことができる。
水を添加してさらに混練すると、この混練物は水が残っている間は塊状になっているが、水が蒸発すると塊が崩壊して、砂状のRCSが得られる。
RCSには、流動性向上を目的としてステアリン酸カルシウム等の滑材を配合してもよい。滑材を配合する場合は、塊の崩壊後に添加混合することが好ましい。
【0031】
<作用効果>
本発明のRCSの製造方法は、特定の温度に加温した耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂とを混合した後、得られた混合物に固形レゾール型フェノール樹脂を添加してRCSを製造する。
このようにして得られたRCSを用いれば、鋳型の製造時における臭気、例えばヘキサメチレンテトラミンの分解物であるアンモニアの発生を低減でき、かつ温間強度および冷間強度に優れた鋳型を製造できる。かかる理由は、以下のように考えられる。
【0032】
加温した耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂とを予め混合すると、耐火性粒状材料の熱により固形状のノボラック型フェノール樹脂が溶融し、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとで耐火性粒状材料の表面がコーティングされる。また、ヘキサメチレンテトラミンの一部が熱分解し、ノボラック型フェノール樹脂の初期硬化反応が進行する。その後、耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂との混合物に固形レゾール型フェノール樹脂を添加することで、混合物の表面が固形レゾール型フェノール樹脂でコーティングされる。
このように、本発明では耐火性粒状材料の粘結剤としてノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂とを併用する。固形レゾール型フェノール樹脂は、ヘキサメチレンテトラミンを用いなくても、あるいは少量のヘキサメチレンテトラミンでも硬化する粘結剤である。よって、本発明のRCSの製造方法であれば、粘結剤としてノボラック型フェノール樹脂のみを用いた従来のRCSの製造方法と比べて、固形レゾール型フェノール樹脂を使用する分、ヘキサメチレンテトラミンの使用量を削減できる。具体的な削減量は以下の通りである。
【0033】
ヘキサメチレンテトラミンの使用量は硬化性樹脂の配合量に依存するが、粘結剤としてノボラック型フェノール樹脂のみを用いた場合は、通常、樹脂100質量部に対して15質量部程度である。
しかし、本発明であれば、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対して、ヘキサメチレンテトラミンの使用量を7.5質量部以下に削減できる。
よって、本発明により得られるRCSを用いて鋳型を製造する際に、ヘキサメチレンテトラミンが熱分解して発生するアンモニア等の量を大幅に低減できる。
【0034】
しかも、加温した耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂とを予め混合する際に、ヘキサメチレンテトラミンの一部が熱分解するので、このときにもアンモニア等が発生する。調製工程や添加工程にてヘキサメチレンテトラミンが熱分解した分、鋳型製造時にヘキサメチレンテトラミンが熱分解する量が減るため、アンモニア等の発生量をさらに減らすことができる。
なお、RCSの製造は密閉系で作業できるので、調製工程や添加工程にてヘキサメチレンテトラミンが熱分解してアンモニア等が発生しても、臭気を回収して処理しやすい。そのため、作業環境を良好に維持しやすい。一方、鋳型の製造は、通常、開放系で作業するため、アンモニア等が発生すると作業環境が悪化しやすい。そのため、排気ダクトを設置するなどの大型の設備対応が必要となるが、臭気の低減も求められる。
しかし、本発明により得られるRCSを用いれば、アンモニア等の発生を低減できるので、作業環境を良好に維持しやすい。
【0035】
また、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂との反応は、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの反応よりも優先される傾向にある。そのため、加温した耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂と、固形レゾール型フェノール樹脂とを同時に混合する場合は、ヘキサメチレンテトラミンの使用量を削減できる。ヘキサメチレンテトラミンの使用量を削減できれば、鋳型の製造時における臭気の発生をある程度は低減できる。しかし、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂との反応が優先されるため、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとが反応しにくくなり(すなわち、ノボラック型フェノール樹脂の初期硬化反応が進行しにくくなり)、鋳型の温間強度が低下する。また、ノボラック型フェノール樹脂の初期硬化反応が進行しにくいということは、調製工程や添加工程にてヘキサメチレンテトラミンが熱分解して臭気が発生しにくいことを意味する。よって、鋳型の製造時における臭気発生の低減効果が充分に得られない。
さらに、加温した耐火性粒状材料と、ノボラック型フェノール樹脂と、固形レゾール型フェノール樹脂とを予め混合した後で、ヘキサメチレンテトラミンを添加した場合も、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとが反応しにくくなる。そのため、鋳型の温間強度が低下する。また、鋳型の製造時における臭気発生の低減効果が充分に得られない。
【0036】
しかし、本発明では、単にノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂とを併用してヘキサメチレンテトラミンの使用量を削減しているだけではなく、その混合順を規定している。すなわち、加温した耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂とを混合した後に、固形レゾール型フェノール樹脂を加える。よって、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンの初期硬化反応が充分に進行するため、鋳型の温間強度が低下しにくい。
よって、本発明により得られるRCSを用いれば、鋳型の製造時における臭気を低減できるので、鋳型製造時の作業環境の悪化を防止、または改善することができる。加えて、温間強度および冷間強度に優れた鋳型を製造できる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例で得られたテストピース(鋳型)の物性の測定、およびアンモニア発生量の測定は以下の方法で行った。
【0038】
<テストピースの物性>
(温間強度の測定)
テストピース作製用金型を250℃に加熱し、該金型に各実施例および比較例で得られたRCSをブロー充填し、20秒、40秒、60秒経過した後、それぞれ金型からテストピース(鋳型)を取り出し、直ちにテストピースの曲げ強度をJACT試験法SM−5に従って測定した。この曲げ強度をテストピースの温間強度とする。
【0039】
(冷間強度の測定)
テストピース作製用金型を250℃に加熱し、該金型に各実施例および比較例で得られたRCSをブロー充填し、60秒経過した後、金型からテストピース(鋳型)を取り出し、(20℃)まで冷却した。冷却後のテストピースの曲げ強度をJIS K 6910に従って測定した。この曲げ強度をテストピースの冷間強度とする。
【0040】
<アンモニア発生量の測定>
テストピース作製用金型を250℃に加熱し、該金型に各実施例および比較例で得られたRCSをブロー充填し、30秒経過した後、金型からテストピース(鋳型)を取り出し、直ちに5Lのポリ瓶中にテストピース(質量15g)を入れた。1分経過後のポリ瓶中のアンモニア量を北川式検知管により測定した。
【0041】
「実施例1」
スピードミキサーに、耐火性粒状材料として150℃に加温したフラタリーサンドを10000gと、ヘキサメチレンテトラミンを22.5gと、ノボラック型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、「PSM−5203」、軟化点88℃、質量平均分子量1300)を150gとを投入し、60秒間混練した。引き続き、固形レゾール型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、「PS−2176」、軟化点82℃、質量平均分子量1000」)を150g添加し、60秒間混練した。さらに、冷却水として150gの水を添加し、塊状物が粒状崩壊するまで送風冷却した。その後、ステアリン酸カルシウムを10g添加し、15秒間混合してレジンコーテッドサンド(RCS)を得た。このRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを7.5質量部含んでいる。
得られたRCSを用いてテストピース(鋳型)を製造し、温間強度および冷間強度と、アンモニア発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
「実施例2」
ヘキサメチレンテトラミンの量を15gに変更した以外は、実施例1と同様にしてRCSを製造し、各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、得られたRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを5.0質量部含んでいる。
【0043】
「実施例3」
ヘキサメチレンテトラミンの量を7.5gに変更した以外は、実施例1と同様にしてRCSを製造し、各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、得られたRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを2.5質量部含んでいる。
【0044】
「実施例4」
ノボラック型フェノール樹脂の量を60gに変更し、固形レゾール型フェノール樹脂の量を240gに変更した以外は、実施例1と同様にしてRCSを製造し、各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、得られたRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを7.5質量部含んでいる。
【0045】
「実施例5」
ノボラック型フェノール樹脂の量を240gに変更し、固形レゾール型フェノール樹脂の量を60gに変更した以外は、実施例1と同様にしてRCSを製造し、各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、得られたRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを7.5質量部含んでいる。
【0046】
「実施例6」
ノボラック型フェノール樹脂の量を45gに変更し、固形レゾール型フェノール樹脂の量を255gに変更した以外は、実施例1と同様にしてRCSを製造し、各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、得られたRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを7.5質量部含んでいる。
【0047】
「実施例7」
ノボラック型フェノール樹脂の量を255gに変更し、固形レゾール型フェノール樹脂の量を45gに変更した以外は、実施例1と同様にしてRCSを製造し、各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、得られたRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを7.5質量部含んでいる。
【0048】
「比較例1」
スピードミキサーに、耐火性粒状材料として150℃に加温したフラタリーサンドを10000gと、ノボラック型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、「PSM−5203」、軟化点88℃、質量平均分子量1300)を300gとを投入し、60秒間混練した。さらに、ヘキサメチレンテトラミン45gを水150gに溶解した硬化剤水溶液195gを添加し、塊状物が粒状崩壊するまで送風冷却した。その後、ステアリン酸カルシウムを10g添加し、15秒間混合してレジンコーテッドサンド(RCS)を得た。このRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂を3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを15質量部含み、固形レゾール型フェノール樹脂を含んでいない。
得られたRCSを用いてテストピース(鋳型)を製造し、温間強度および冷間強度と、アンモニア発生量を測定した。結果を表2に示す。
【0049】
「比較例2」
ノボラック型フェノール樹脂に代えて固形レゾール型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、「PS−2176」、軟化点82℃、質量平均分子量1000」)300gを用い、硬化剤水溶液に代えて水150gを添加した以外は、比較例1と同様にしてRCSを製造し、各種測定を行った。結果を表2に示す。なお、得られたRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、固形レゾール型フェノール樹脂を3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂およびヘキサメチレンテトラミンを含んでいない。
【0050】
「比較例3」
ヘキサメチレンテトラミンを用いなかった以外は、実施例1と同様にしてRCSを製造し、各種測定を行った。結果を表2に示す。なお、得られたRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部含み、ヘキサメチレンテトラミンを含んでいない。
【0051】
「比較例4」
スピードミキサーに、耐火性粒状材料として150℃に加温したフラタリーサンドを10000gと、ノボラック型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、「PSM−5203」、軟化点88℃、質量平均分子量1300)を150gとを投入し、60秒間混練した。引き続き、固形レゾール型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、「PS−2176」、軟化点82℃、質量平均分子量1000」)を150g添加し、60秒間混練した。さらに、ヘキサメチレンテトラミン22.5gを水150gに溶解した硬化剤水溶液172.5gを添加し、塊状物が粒状崩壊するまで送風冷却した。その後、ステアリン酸カルシウムを10g添加し、15秒間混合してレジンコーテッドサンド(RCS)を得た。このRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを7.5質量部含んでいる。
得られたRCSを用いてテストピース(鋳型)を製造し、温間強度および冷間強度と、アンモニア発生量を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
「比較例5」
固形レゾール型フェノール樹脂に代えて、液状レゾール型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、「PL−6847」、質量平均分子量400、固形分50質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてRCSを製造し、各種測定を行った。結果を表2に示す。なお、得られたRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と液状レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部(固形分換算)含み、ノボラック型フェノール樹脂と液状レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部(固形分換算)に対し、ヘキサメチレンテトラミンを7.5質量部含んでいる。
【0053】
「比較例6」
ヘキサメチレンテトラミンの量を22.5gに変更した以外は、比較例1と同様にしてRCSを製造し、各種測定を行った。結果を表2に示す。なお、得られたRCSは耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂を3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを7.5質量部含み、固形レゾール型フェノール樹脂を含んでいない。
【0054】
「比較例7」
スピードミキサーに、耐火性粒状材料として150℃に加温したフラタリーサンドを10000gと、ヘキサメチレンテトラミンを22.5gと、ノボラック型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、「PSM−5203」、軟化点88℃、質量平均分子量1300)を150gと、固形レゾール型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、「PS−2176」、軟化点82℃、質量平均分子量1000」)を150gとを投入し、60秒間混練した。さらに、冷却水として150gの水を添加し、塊状物が粒状崩壊するまで送風冷却した。その後、ステアリン酸カルシウムを10g添加し、15秒間混合してレジンコーテッドサンド(RCS)を得た。このRCSは、耐火性粒状材料100質量部に対し、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂を合計で3質量部含み、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の合計100質量部に対し、ヘキサメチレンテトラミンを7.5質量部含んでいる。
得られたRCSを用いてテストピース(鋳型)を製造し、温間強度および冷間強度と、アンモニア発生量を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1、2中の配合比(樹脂/耐火性粒状材料)は、耐火性粒状材料100質量部に対する、ノボラック型フェノール樹脂と、固形レゾール型フェノール樹脂または固形分換算した液状レゾール型フェノール樹脂との使用量の合計(質量部)である。また、配合比(ヘキサメチレンテトラミン/樹脂)は、ノボラック型フェノール樹脂と、固形レゾール型フェノール樹脂または固形分換算した液状レゾール型フェノール樹脂との合計100質量部に対する、ヘキサメチレンテトラミンの使用量(質量部)である。また、配合比(ノボラック:レゾール)は、ノボラック型フェノール樹脂と、固形レゾール型フェノール樹脂または固形分換算した液状レゾール型フェノール樹脂の質量比(ノボラック型フェノール樹脂:固形または液状レゾール型フェノール樹脂)である。
【0058】
表1から明らかなように、各実施例で得られたRCSは、従来の方法で製造した比較例1、6のRCSに比べて、鋳型の製造時におけるアンモニアの発生量を大幅に低減できた。
また、各実施例のRCSを用いて得られたテストピース(鋳型)は、温間強度および冷間強度にも優れていた。特に、ノボラック型フェノール樹脂と固形レゾール型フェノール樹脂の質量比(ノボラック型フェノール樹脂:固形レゾール型フェノール樹脂)が20:80〜80:20の範囲内である実施例1〜5のRCSを用いて得られたテストピース(鋳型)は、温間強度により優れていた。
【0059】
一方、比較例1、6で得られたRCSは、鋳型の製造時におけるアンモニアの発生量が多かった。
ヘキサメチレンテトラミンを用いなかった比較例2、3の場合、アンモニア発生量は少ないものの、テストピース(鋳型)の温間強度および冷間強度が低かった。特に、ノボラック型フェノール樹脂を用いなかった比較例2の場合は、テストピース(鋳型)の温間強度および冷間強度が著しく低かった。
加温した耐火性粒状材料と、ノボラック型フェノール樹脂と、固形レゾール型フェノール樹脂とを予め混合した後で、ヘキサメチレンテトラミンを添加した比較例4の場合、実施例に比べてアンモニア発生量が多く、鋳型の製造時における臭気発生の低減効果が充分に得られなかった。また、比較例4で得られたテストピース(鋳型)は、実施例1に比べて温間強度および冷間強度が低かった。
固形レゾール型フェノール樹脂の代わりに液状レゾール型フェノール樹脂を用いた比較例5の場合、テストピース(鋳型)の温間強度および冷間強度が実施例1に比べて低かった。
加温した耐火性粒状材料と、ヘキサメチレンテトラミンと、ノボラック型フェノール樹脂と、固形レゾール型フェノール樹脂とを同時に添加した比較例7の場合、実施例に比べてアンモニア発生量が多く、鋳型の製造時における臭気発生の低減効果が充分に得られなかった。また、比較例7で得られたテストピース(鋳型)は、実施例1に比べて温間強度および冷間強度が低かった。