(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
海岸沿の海中に設置され、底面部、上面部、両側面部、陸側背面部及び海側前面部で囲われ、波受け口が前記海側前面部の下部に設けられ、寄せ波を受けて前記波受け口が閉ざされた際に密閉空間が形成される波受けタンクと、
該波受けタンクの前記波受け口に寄せ波を集める波受け板と、
前記波受け口から入り前記密閉空間で盛り上がる海水に押されて圧縮される前記波受けタンク内の空気の圧力を受けて発電する発電機と、
を備え、
前記波受け板は、前記波受けタンクの下部から上部又は中間部にかけての陸側背面部の両側辺縁から両側方に張出し部を突出させて該張出し部の先端部から海側に向けて平行又は末広がりに突出されると共に海底から立ち上げられたことを特徴とする寄せ波発電装置。
パイプ接続孔に上部から接続させたパイプと、該パイプに接続されて該パイプに流れる空気の圧力を受けて回転する回転装置と、該回転装置に接続されて該回転装置の回転を受けて発電する発電機とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の寄せ波発電装置。
波受け口を常時開放された下側部分と開閉可能な上側部分とに分割し、該上側部分には該上側部分の開口面積を拡大又は縮小可能とした開閉板を備えたことを特徴とする請求項1から6のうちいずれかに記載の寄せ波発電装置。
上側部分の両側部にガイドレールを設けると共に該ガイドレールに前記下側部分の上部から下部に向かって遮断可能にスライドする上下開閉板を装着し、海側前面部の波受け口の上端部よりも上部に前記上下開閉板を上下に昇降させる開閉駆動部を設けたことを特徴とする請求項7に記載の寄せ波発電装置。
上側部分の両側部に上下間隔を置いて対向させた枢支部を設けると共に該枢支部に上下連続して複数の横長羽板を平行に吊り下げ、各横長羽板の下部辺縁がその下の横長羽板の上部辺縁枠に内側から夫々気密状態に重なり合うように当たって停止するルーバー状の擺動開閉板を設けたことを特徴とする請求項7に記載の寄せ波発電装置。
【背景技術】
【0002】
海岸の高い防波堤を乗り越える程の大きなエネルギーを持っている寄せ波を見て、本発明者は寄せ波から圧縮空気を得ればその圧縮空気によって発電機を稼動させることが可能となるはずであるとの着想を得た。
【0003】
従来、岸辺の波から圧縮空気を得て発電機を稼動させる各種の装置が提案されている。
例えば、下記特許文献1には、ケーシング外側に発生する波によりケーシング内側の水位を上下変動させ、この水位変動によりケーシング内の気圧を変化させ、その変化する空気圧により発電機を稼動させようとする「固定式波力発電システム」が提案されている。
しかし、この装置では、ケーシング内の空気が漏れないようにケーシング下端部が海面下に没入し、寄せ波の谷部となる高さよりもさらに低い位置に海水を受け入れる開口部が下に向けて設けられている。このため、岸辺に打ち寄せる波の岸に向う運動エネルギーがケーシングの側面に当たって打ち消されてしまい、寄せ波の持つ運動エネルギーを効率良く利用することができない。
更に、この装置ではケーシング内部に水平面的な広がりを有しているので、波が引いてケーシング外に出ていくのに時間を要し、寄せた波が引き終わらないうちに次の波が打ち寄せてしまい、寄せ波と引き波が干渉しあって寄せ波の運動エネルギーを消耗しケーシング内部に大きな高低さが得られない。この点でも波のエネルギーを効率良く利用することができない。
【0004】
又、下記特許文献2には、海岸の護岸壁に打ち寄せる波を集波ラッパ管で受けてその管内に圧縮空気を得、その圧縮空気によりエアータービンを回転させて発電しようとする「波動風洞発電システム内蔵の沿岸広域防潮防波護岸帯システム」が提案されている。
しかし、該システムでは、波を受ける部分が護岸壁に設けたラッパ管であり、該ラッパ管は径がテーパー状に減少して細くなる管であり、波を受け入れる空間的容量が寄せ波の大きさに比して極めて小さい。このため岸辺に打ち寄せて盛り上がる波の運動エネルギーを有効に利用することができず、効率良く電力を得ることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献等の従来の装置では、海岸に打ち寄せる寄せ波を受け入れて高く盛り上げる構造がないため、寄せ波の運動エネルギーの大きさに較べて得られる電気エネルギーは極めて小さく、寄せ波から効率良く大容量で高圧の圧縮空気を得ることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、海岸に向かって打ち寄せる波の運動エネルギーを受け入れてタンク内に海水を高く盛り上げることでタンク内に大容量で高圧となる圧縮空気を繰り返し得、その圧縮空気から大きな電気エネルギーを得ることが可能となる寄せ波発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の寄せ波発電装置は、請求項1の発明にあっては、海岸沿の海中に設置され、
底面部、上面部、両側面部、陸側背面部及び海側前面部で囲われ、波受け口が前記海側前面部の下部に設けられ、寄せ波を受けて
前記波受け口が閉ざされた際に密閉空間が形成される波受けタンクと、該波受けタンクの前記波受け口に寄せ波を集める波受け板と、前記波受け口から入り前記密閉空間で盛り上がる海水に押されて圧縮される前記波受けタンク内の空気の圧力を受けて発電する発電機と、を備え
、前記波受け板は、前記波受けタンクの下部から上部又は中間部にかけての陸側背面部の両側辺縁から両側方に張出し部を突出させて該張出し部の先端部から海側に向けて平行又は末広がりに突出されると共に海底から立ち上げられたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明にあっては、上記発明において、前記波受けタンクの上面部又は上面部近傍面にパイプ接続孔
が設けられ、該波受けタンクの上部側には該パイプ接続孔と下部側とを除いた全周囲が密閉されたタンク上部空間が形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項
3の発明にあっては、上記発明において、前記パイプ接続孔に上部から接続させたパイプと、該パイプに接続されて該パイプに流れる空気の圧力を受けて回転する回転装置と、該回転装置に接続されて該回転装置の回転を受けて発電する発電機とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明にあっては、上記発明において、前記パイプ接続孔と回転装置との間のパイプに圧縮空気を一時貯える圧縮気体供給タンクを設けると共に前記パイプに圧縮気体供給タンク方向
のみに開く逆止弁を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項
5の発明にあっては、上記発明において、前記波受けタンク下部の両側面部に側面開口部を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項
6の発明にあっては、上記発明において、前記波受けタンク下部の
両側面開口部に電気的に制御可能な電磁開閉蓋を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項
7の発明にあっては、上記発明において、前記波受け口を常時開放された下側部分と開閉可能な上側部分とに分割し、該上側部分には該上側部分の開口面積を拡大又は縮小可能とした開閉板を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項
8の発明にあっては、上記発明において、前記上側部分の両側部にガイドレールを設けると共に該ガイドレールに前記下側部分の上部から下部に向かって遮断可能にスライドする上下開閉板を装着し、海側前面部の波受け口
の上端部よりも上部に前記上下開閉板を上下に昇降させる開閉駆動部を設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項
9の発明にあっては、上記発明において、前記上側部分の両側部に上下間隔を置いて対向させた枢支部を設けると共に該枢支部に上下連続して複数の横長羽板を平行に吊り下げ、各横長羽板の下部辺縁がその下の横長羽板の上部辺縁枠に内側から夫々気密状態に重なり合うように当たって停止するルーバー状の擺動開閉板を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項
10の発明にあっては、上記発明において、前記波受けタンクの上部に開口部を設け、該開口部にタンク上部空間内の空気の加圧で閉じ且つ減圧で開く逆止蓋を装着したことを特徴とする。
【0021】
請求項
11の発明にあっては、上記発明において、前記波受けタンクの底面部に、陸側が競り上がる内弧状の湾曲面とするか又は平面状の傾斜面とした寄せ波誘導面を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記の如き構成であり、沖から海岸に向かって打ち寄せる波は波受け板に当たって更に進み、その波が波受け口の上端部に遮られることなく波受け口から波受けタンク内に勢い良く飛び込む。
その際、波受け板は海側に向けて突出されているので、岸に打ち寄せる波をより多く捕らえ、その波は波受け口に集められ、直接波受け口に入った波と一緒になって、陸側背面部に当たりタンク上部空間内の海水を繰り返し高く盛り上げる。
【0023】
その高く盛り上げられた海水により波受け口が閉ざされ、その際に波受けタンク内に密閉空間が形成され、さらに海水が高く盛り上げられると波受けタンク上部の密閉空間内の空気が圧縮される。
その圧縮空気の圧力を受けて発電機が稼動し発電される。
即ち、寄せ波の運動エネルギーは空気の圧縮エネルギーに転換され、その圧縮エネルギーのエネルギーが電気エネルギーに転換される。
【0024】
寄せ波は間欠的に海岸に押し寄せ、その都度タンク上部空間内を上昇し、繰り返し海水を高く盛り上げ、タンク上部空間内の空気を繰り返し圧縮する。
そして、波が引くときにはタンク上部空間内の海水が波受け口から排出され、内部の水位が低くなるが、このとき海水は重力で垂直に下降するので引き足が早く、次に波が寄せるまでに水位は最低にまで低下する。
このためタンク上部空間内には海水の水位の大きな高低差が生まれる。
この繰り返しで、その都度タンク上部空間内の空気が大きく圧縮され効率良く発電が行われる。
海が凪状態では寄せ波が発生しないので発電できないが、海が荒れて大きな寄せ波が発生するとタンク上部空間内には海水面の大きな高低差が得られるので空気の圧縮量が大きくなり、より大きな電力が得られる。
【0025】
そして、前記波受けタンクが、底面部、上面部、両側面部、陸側背面部及び海側前面部で囲われるので、前記海側前面部の下部に対して前記波受け口が広く確実に設けられ、又寄せ波は前記陸側背面部に突き当たって、タンク上部の密閉空間内を上昇し、繰り返し海水を高く盛り上げ、空気の圧縮量が大きくなり、より大きな電力が得られる。
そして更に、沖から海岸に向かって打ち寄せる波は直接波受け口に入るが、その際、張出し部に当たって側面開口部から入った海水と一緒になってタンク上部空間内の海水をより高く盛り上げる。このため、タンク上部空間内の空気が大きく圧縮され、より大きな発電を行うことが可能となる。
【0026】
請求項
2の発明においては、海水が高く盛り上げられた海水で圧縮されたタンク上部空間内の空気が他に漏れることなく前記波受けタンクの上部側に設けたパイプ接続孔に集中させることができる。
【0027】
請求項
3の発明においては、海水で圧縮されたパイプ接続孔に集中したタンク上部空間内の空気が該パイプ接続孔に接続させたパイプを通過し、該パイプに接続された回転装置に圧送される。そして、その空気の圧力を受けて回転装置が回転し、その回転で発電機が稼動される。
即ち、寄せ波の運動エネルギーから転換された空気の圧縮エネルギーが回転エネルギーへと転換され、最終的にその回転エネルギーが電気エネルギーに転換される。
【0028】
請求項
4の発明においては、タンク上部空間内に発生した圧縮空気が圧縮気体供給タンクに一旦貯えられ、圧縮空気が安定的に送り出されることで発電機の稼動を安定させることが可能となる。
寄せ波で圧縮されたタンク上部空間内の圧縮空気を前記回転装置に送る前に一旦圧縮気体供給タンク内に貯蔵可能となる。そして、該圧縮気体供給タンク内が高圧状態である間は安定して前記回転装置に圧縮空気を送り続けることが可能となり、安定した電力を得ることが可能となる。
【0031】
請求項
5の発明においては、張出し部を有する形態において、前記波受けタンク下部の両側面部に側面開口部を設けられているので、前記波受け口の常時開放された下側部分からは海水が自由に流入し海水が高く盛り上がるのを助ける。
又、波は引くときには、高く盛り上がった波受けタンク内の海水が、波受け口から排出されるのに加えて前記側面開口部からも同時に排出されるので足早な排出が可能となり、引く波と寄せる波とが波受けタンク内で衝突し合うことが避けられる。
【0032】
請求項
6の発明においては、前記波受けタンク下部の両側面部に側面開口部を設け、該側面開口部に電気的に制御可能な電磁開閉蓋を設けることによって、波は引くときに蓋を強制的に開き、高く盛り上がった波受けタンク内の海水が、波受け口から排出されるのに加えて前記側面開口部からも同時に排出されるので足早な排出が可能となり、引く波と寄せる波とが波受けタンク内で衝突し合うことが避けられる。
【0033】
寄せ波が細かいピッチで押し寄せる波の場合には、引き波と寄せ波とが波受けタンク内で衝突し合い、海水を盛り上げるための運動エネルギーが減殺され、波受けタンク内で盛り上がる波の大きな高低差を得られなくなるおそれがある。
その際、波は引くときに、高く盛り上がった波受けタンク内の海水が、波受け口から排出されるのに加えて前記側面開口部からも同時に排出されるので足早な排出が可能となり、引く波と寄せる波とが波受けタンク内で衝突し合うことが避けられる
この結果、細かいピッチの寄せ波であっても、波受けタンク内に海水が繰り返し大きく盛り上げられ、大きな発電の維持が可能となる。
【0034】
請求項
7の発明においては、前記波受け口を常時開放された下側部分と開閉可能な上側部分とに分割し、該上側部分には該上側部分の開口面積を拡大又は縮小可能とした開閉板を備えたことを特徴とする。
そして、上側部分は開閉板により該上側部分の開口面積が拡大又は縮小される。そして寄せ波の流入する量を調節することで、タンク上部空間内の空気の圧縮量を増加させ、効率良く発電させることが可能となる。
前記波受け口の常時開放された下側部分からは海水が自由に流入し、且つ上側部分は開閉板により該上側部分の開口面積が拡大又は縮小され。流入する海水の量を調節することで、タンク上部空間内の空気の圧縮量を増加させ、効率良く発電させることが可能となる。
【0035】
請求項
8の発明においては、開閉駆動部で上下開閉板を上下に操作し、発生する寄せ波の山部の高さに応じて、波受け口の開口部の上端位置を調節することが可能となる。
そして、流入する海水の量を調節することで、所望の発電量を得ることが可能となる。
【0036】
請求項
9の発明においては、海面の昇降変化と、波受け口の上端部を寄せ波の山部の高さに応じて、海岸に向かう運動エネルギーを持って外部から寄せ波が横長羽板に当たってその部分の横長羽板を内側に開き、その開いた横長羽板の下から波受けタンク内に流入する。
それより上の横長羽板は内側からの空気の圧力を受けて閉じられ、更に海水が大きく盛り上げられるとその部分の横長羽板は内側からの海水の圧力を受けて閉じられた状態を維持する。
このため、海水の盛り上がりで得られた圧縮空気が横長羽板部分から波受けタンクの外部に漏れてタンク上部空間内の空気が減圧されてしまうことが防止できる。
この形態では、波の山部の水位が上下に大きく変化しても寄せ波の運動エネルギーが横長羽板に妨げられることなく、またタンク上部空間内の空気が漏れることがないので、常に自動的に山部の高低変化に対応してタンク上部空間内の海水が高く盛り上げられ、効率良く発電量を増大させることが可能となる。
【0037】
請求項
10の発明においては、タンク上部空間内に盛り上がった海水が引き波で下降する際、タンク上部空間内が減圧されて逆止蓋が開き、開口部から空気がタンク上部空間内に入る。このためタンク上部空間内の減圧状態が解消され、タンク上部空間内に盛り上がっていた海水が波受け口から速やかに排出される。
そして、次の寄せ波が最低水位の位置から高く盛り上がることで、タンク上部空間内の海水の大きな高低差が得られる。この結果、タンク上部空間内の空気は大きく圧縮されて大きなエネルギーが発生し、より大きな電力を得ることが可能となる。
【0038】
請求項
11の発明においては、前記波受け口から入る寄せ波が底面部の傾斜した寄せ波誘導面に当たって上方へ進路が変えられ、タンク上部空間内により高い海水の盛り上がり
が得られる。この結果、タンク上部空間内の空気がより強く圧縮され、その圧縮空気により大きな電力が得られるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、風で海が荒れるなどして発生する寄せ波の大きな運動エネルギーにより、海岸に当たり大きく盛り上がる海水を利用して空気を圧縮させ、その圧縮空気で発電機を稼動させようとするものであり、以下本発明の寄せ波発電装置の実施形態を図を参照して説明する。
【0041】
本発明は、
図1〜4に示すように、海Uと岸Kとの境である海岸線Lの近くの海底Gに波受けタンク1の下部の底面部1dを固定し、
図5〜
図9に示すように、両側面部1a、1bと陸側背面部1eと海側前面部1fを前記底面部1dの周辺から海上に立ち上げてその上部を上面部1cで覆い、該波受けタンク1の上部は、盛り上がる寄せ波Wの高さhよりも高い位置となる高になるように海上に突出させる。
【0042】
前記波受けタンク1の陸側背面部1eは、直立させるか又は上部側を岸K側へ傾斜させることができる(図省略)。これは、海Uから岸Kへと進行する寄せ波Wが陸側背面部1eを駆け上がって海面よりも上方に高くなるように導いて海水の盛り上がる高さを大きくするためである。しかしこの逆に上部側を海U側へ傾斜させると、波は上方へは駆け上がらず陸側背面部に当たって斜め下向きに打ち返され、前記波受け口2から出て行ってしまうので好ましくない。
【0043】
該波受けタンク1の下部の底面部1dは、自然の海底(図省略)とするか又は各図に示すように、人工の平面とすることができる。
自然の海底とする場合には、波受けタンク1内に突出する岩などは、海水流入の障害となるので除去しておく。
【0044】
そして、前記波受けタンク1の海側前面部1fの下部に波受け口2を設ける。
該波受け口2は、
図5〜
図9に示すように、縦幅を底面部1dから想定される寄せ波Wの山部の高さまでの間とし、横幅は
図1〜
図4に示すように、両側面部1a、1b間をできるだけ広く開口させる。
寄せ波Wの山部までの広い開口としたのは、岸方向に向かう運動エネルギーを持った波をできるだけ多量に取り込むためである。
【0045】
例えば、前記波受け口2の上端部2cを寄せ波Wの谷部に合わせると、波の本体部分の殆どが前記波受けタンク1の海側前面部1fに当たって弾き返され、岸方向の運動エネルギーが波受けタンク1内に入ることなく消滅してしまうので好ましくない。
【0046】
寄せ波の大きさは気象により時事刻々変化するが、毎日2回の潮の干満による海面高さの変化は一定である。
このため波受け口2を固定する場合は、例えば、波の大きさを考慮せず、潮の干満の間の海面の平均的位置となるように波受け口2の上端部2cの位置を設定すれば1日のうちで4回は最適位置となる。この場合は、満潮では寄せ波Wの谷部が波受け口2の上端部2cを越えてしまい、又、干潮の状態では寄せ波Wの山部が波受け口2の上端部2cから下方へ離れてしまうので寄せ波があっても充分に効率を上げることはできない。
【0047】
そして、
図5に示すように、前記波受けタンク1の上面部1cにパイプ接続孔1hを設ける。
該パイプ接続孔1hの位置は、各図では前記波受けタンク1の上面部1cに設けた態様を示したが、盛り上がった海水が届かない位置であれば上面部1cよりも下となる壁面部分に設けても良い。
そして、前記波受けタンク1の上部には、前記パイプ接続孔1h及び下部側を除いた全周囲を密閉してタンク上部空間1gを形成する。
【0048】
前記パイプ接続孔1hには、
図5に示すように、その上部からパイプ5を設け、該パイプ5が前記波受けタンク1の上部のタンク上部空間1gと連通可能に接続する。
更に、該パイプ5の上部には、該パイプ5に接続されて該パイプ5に流れる圧縮空気の圧力を受けて回転する回転装置6を設ける。該回転装置6は例えばエアータービンなどが使用できる。
又、該回転装置6には回転に使用した圧縮空気を外部に排出するための排気口19を接続する。そして、前記回転装置6を回転させた空気は該排気口19から排出されるようにする。
そして更に、該回転装置6には該回転装置6の回転を受けて発電する発電機7を接続する。
前記発電機7は前記波受けタンク1の上に直接載せて設置しても良く、又前記波受けタンク1から離して設置しても良い。
又前記発電機7は前記回転装置6と一体のタービン式発電機を用いても良い。
【0049】
又、
図1〜
図4に示すように、前記波受けタンク1の両側面部1a、1bの外側には波受け板3、4を設ける。
該波受け板3、4は、
図1に示すように、波受けタンク1の下部から上部又は中間部にかけての両側面部1a、1bの波受け口2近傍から直接海側に向けて平行又は末広がりに突出させると共に海底から立ち上げる形態と、
図2に示すように、該波受けタンク1の下部から上部又は中間部にかけての陸側背面部1eの両側辺縁から両側方に張出し部3aを突出させて両側面部1a、1bから海側の板面を離し、該張出し部3aの先端部から海側に向けて平行又は末広がりに突出させると共に海底から立ち上げる形態とが可能である。
【0050】
後者の該張出し部3aのある形態では、
図2に示すように、前記波受けタンク1の側面部1a、1bの下部に側面開口部9、10を設けることができる。
この形態では、寄せ波は波受けタンク1の両側面部1a、1bの側方と前記波受け板3、4との間に打ち寄せて高く盛り上がるが、その際、盛り上がり下部の海水の高い水圧で海水が側面開口部9、10に進入し、波受けタンク1内の海水の盛り上がりを助勢しより高く盛り上げる。その結果、タンク上部空間1gの空気がより強く圧縮されることとなる。
又、一旦波が引くときにはタンク上部空間1g内の海水が波受け口2から排出されると共に、側面開口部9、10からも排出されるので、一気に内部の水位が低くなる。
即ち、波の引き足が早いので、ピッチの短い寄せ波でも、次に波が寄せるまでに水位は最低にまで低下する。このため、波は引くときに、高く盛り上がった波受けタンク1内の海水が、波受け口2から排出するのに加えて前記側面開口部9、10からも排出されるので足早な排出が可能となり、引く波と寄せ波とが波受けタンク1内で衝突し合うことによる寄せ波の運動エネルギーの減衰が避けられて、高い発電の維持が可能となる。
【0051】
なお、タンク上部空間1g内の海水の引き足を早めるに、波受け板3、4を波受けタンク1の両側面部1a、1bの海側の波受け口2近傍から直接海側に向けた
図1に示す態様に対して、側面に引き水排出口22を設ける場合には、
図3に示すように、該引き水排出口22に電磁開閉装置24により開閉制御を行う開閉板23を設けることができる。
該電磁開閉装置24にはタンク上部空間1g内に海水の圧力を感知する感圧センサーを設け、設定した水圧を感知したら自動的に開くようにすることで、開閉板23の開閉の自動化が可能となる。
【0052】
海岸に押し寄せる波の力は大きく、軽量で強度が小さいものでは破壊されてしまうおそれがある。このため前記波受けタンク1及び前記波受け板3、4は金属やコンクリートなど強度と耐久性の優れた素材で形成すると良い。
【0053】
又、
図1〜
図7に示すように、前記波受けタンク1の上部に開口部11を設け、該開口部11にタンク上部空間1g内の空気の加圧で閉じ且つ減圧で開く逆止蓋12を装着する。
例えば、該逆止蓋12は開口部11の下に枢支部20で枢支し、上向きに逆止蓋12が閉じる程度の弱いバネ21を装着することでタンク上部空間1g内の空気の加圧で閉じ且つ減圧で開く逆止蓋12が可能である。
該逆止蓋12付きの開口部11の設置場所は、最上部の空間に臨ませ、盛り上がった海水が当たらない位置、即ち、波受けタンク1の上部の側面部1a、1b又は上面部1cに設けることができる。
なお、
図8で示した形態はこのような逆止蓋12のない形態である。
【0054】
又、
図1、
図3、
図4、
図6及び
図9に示すように、海岸近くの海底Gに下部を固定した波受けタンク1の下部に、底面部1dの陸側が競り上がる寄せ波誘導面8を形成することもできる。
該寄せ波誘導面8は海から岸へと進行する寄せ波を上方に導くためのものであり、底面部1dの陸側が競り上がる内弧状に湾曲するか又は平面状に傾斜させて設けることができる。
図3、
図4及び
図6では内弧状に湾曲させて形成したものを示し、
図1〜
図9は平面状の傾斜面を形成したものを示す。
【0055】
前記寄せ波誘導面8のある形態では前記寄せ波が前記波受けタンク1の底面部1dの寄せ波誘導面8に当たって進路を上方に変え、海水をより高く上昇させる。
このためタンク上部空間1g内により大きな海水の盛り上がりが得られる。この結果、タンク上部空間1g内の上部空間の空気は大きな圧縮量となってより大きなエネルギーが発生し、発電量を大きくすることができる。
【0056】
本発明では、
図7に示すように、波受け口2に何も設けずに全面的に開放した形態と、この他に、波受け口2を開放された下側部分と、開閉可能とした上側部分とに分割させて該上側部分には該上側部分の開口面積を拡大又は縮小可能とした開閉板を設けた形態が可能である。
その内、上側部分に開閉板を設けた形態を次に説明する。
【0057】
この形態ででは、
図1に示すように、前記波受け口2の上側部分を、設置場所での寄せ波Wの山部の高さの計測データから、波受け口2の上端部2cを長期的計測データの最高値付近の高さに設定し、下部を長期的計測データの最低値付近の高さに設定する。
この設定は、発電効率を上げるため、前記波受け口2で受け入れる可能性の最大限度と最小限度を決めるためである。
【0058】
前記上側部分に開閉板を備えた形態として、
図1の上下開閉板14を設けた形態と、
図4の擺動開閉板13を設けた形態とが実施可能である。
【0059】
そのうち先ず前記上下開閉板14を設けた形態を説明する。
この形態では、
図1〜
図3に示すように、前記波受け口2の上側部分の両側部にガイドレール25を設けると共に該ガイドレール25に前記下側部分の上部から下部に向かって遮断可能にスライドする上下開閉板14を装着し、海側前面部1fの波受け口2の上端部2cよりも上部に前記上下開閉板14を上下に昇降させる開閉駆動部15を設ける。
又この形態では、前記計測データから、
図5に示すように、前記波受け口2の上端部2cを寄せ波の山部の想定される最高の高さに合わせて設定し、前記開閉駆動部15で前記上下開閉板14を該山部の最高の高さから想定される最低の高さまでの間の開口部に、波受け口2の開口高さを調節できるようにする。
【0060】
前記開閉駆動部15は、昇降ロッド18の下端部を開閉板14に固定し、該昇降ロッド18の上部を内蔵したモータで引上げて開閉板14を引上げ可能とし、内部のモータの稼動は遠隔操作可能に設ける。なお遠隔操作用の回路や配線は一般的な操作回路が使用できる(該回路配や線図は省略)。
その操作により、海側前面部1fの波受け口2の上端部2cよりも上部に上側部分の開口部分を上部から下部に向かって前記上下開閉板14で遮断できるようになる。
【0061】
次に、波受け口の上側部分に擺動開閉板13を設けた形態について説明する。
この形態は、
図4及び
図6に示すように、擺動開閉板13は複数の横長羽板13a、13b、13c、13dを備える。
その枚数は、波受け口の上側部分の縦幅の大小に応じて、横長羽根の強度を勘案して各個の幅の選択と共に最適な数を選択することができる。
該横長羽板13a、13b、13c、13dは上側部分の両側部に上下間隔を置いて対向させた枢支部を設けると共に該枢支部に上下連続して複数の横長羽板13a、13bを平行に吊り下げ、各横長羽板13aの下部辺縁がその下の横長羽板13bの上部辺縁枠17に内側から夫々気密状態に重なり合うように当たって停止するルーバー状とすることが可能である。
なお、各横長羽板13aの下部辺縁とその下の横長羽板13bの上部辺縁枠17との簡には空気が漏れないようにゴム板等を挟着させて気密性を高めることも可能である。
【0062】
この形態では、前記波受け口2は上端部2cを寄せ波Wの谷部に合わせると、波本体の運動エネルギーが有効には取り込めなくなるおそれがある。
波の大きさは時事刻々変化するが、この形態は、
図4及び
図6に示すように、前記波受け口2の上端部2cを寄せ波の山部の想定される最高の高さに合わせて設定する。そして、該山部の最高の高さから想定される最低の高さまでの間の開口部に、下開きに上下連続して平行に吊った複数の横長羽板13a、13b、13c、13dを、タンク内側に向かっては外側から進入する波で、下側の横長羽板13dから上方へ順に枢支部16を中心に自由に開閉する。しかし、どの横長羽板13a、13b、13c、13dも前記上部辺縁枠17でタンク外側に向かっては開かないように停止され、内側の圧力で垂れ下がった横長羽板13で開口部の一部が上部から順に塞がれる。
このため、大きな圧縮量となってより大きなエネルギーが発生し、発電量も大きくなる。
【0063】
この形態では、寄せ波が当たって横長羽板13が開くが、引き波のときは横長羽板13が自動的に閉じられるので、海水の排出量が入るときより少なくなる。このため、盛り上がった海水の全量が排出されるのに時間がかかるおそれがある。このいため、
図3に示す形態と同様に波受けタンク1の両側面部1a、1bの下部の引き水排出口22を設け、該引き水排出口22に電磁開閉装置24により開閉制御を行う開閉板23を設けることで対応することが可能となる。この場合には該電磁開閉装置24にはタンク上部空間1g内に海水の圧力を感知する感圧センサーを設け、設定した水圧を感知したら自動的に開くようにする。
又、前記横長羽板13a、13b、13c、13dの枢支部に一旦開いた開閉板を一定時間は間閉じないように制御する開閉装置を設けることでもピッチの短い寄せ波の海水の排出を速やかに行えるようにすることが可能となる。
【0064】
又、前記パイプ接続孔1hと回転装置6との間のパイプ5には、
図9に示すように、圧縮空気を貯える圧縮気体供給タンク26を設けると共に該パイプ5には圧縮気体供給タンク26方向
のみに開く逆止弁28を設けることが可能である。
この圧縮気体供給タンク26内に寄せ波で圧縮されたタンク上部空間1g内の圧縮空気が一旦前記圧縮気体供給タンク26内に貯蔵されてから前記回転装置6に送り出されるため安定して前記回転装置6に圧縮空気が送られることで安定した電力が得られる。
【0065】
次に、本装置の各部の作用について説明する。
風等で海水に運動エネルギーを得て沖から岸に向かい上下に振れて進行する寄せ波は、特に荒れた海での運動エネルギーは極めて大きく、前記波受け板3、4内に至った波は波受け口2に向かって集められ、該波受け口2から前記波受けタンク1内に進んで行く。
前記波受け板3、4を側方へ広げ下部に側面開口部9、10を設けた形態では、寄せ波は波受けタンク1の両側面部1a、1bの側方と前記波受け板3、4との間に打ち寄せて高く盛り上がり、その際、盛り上がり下部の海水の高い水圧で海水が側面開口部9、10に進入し、波受けタンク1内の海水の盛り上がりを助勢してより高く盛り上げる。
【0066】
その寄せ波が波受け口2に入ると陸側背面部1eに突き当たり、運動エネルギーはそこから方向を変えて上方に向かい、タンク上部空間1gの水面を大きく上に盛り上げる。
この結果、前記タンク上部空間1g内の空間は縮小して空気が圧縮される。
その圧縮された空気は、タンク上部のパイプ5に導かれて回転装置6へと送られ、該回転装置6が回転しその回転で前記発電機7による発電が行われる。
【0067】
その後、タンク上部空間1g内に盛り上がっていた海水は盛り上がるエネルギーを失い海水の重力により下降し、波受け口2や側面開口部9、10から排出される。
又、一旦波が引くときにはタンク上部空間1g内の海水が波受け口から排出されると共に、側面開口部9、10からも排出されるので、一気に内部の水位が低くなる。波の引き足が早いので、ピッチの短い寄せ波でも、次に波が寄せるまでに水位は最低にまで低下する。
なお、
図3に示す引き水排出口22を備えた態様では、一旦波が引くときにはタンク上部空間1g内の海水が波受け口から排出されると共に、電磁開閉装置24で引き水排出口22の開閉板23が開き、ここからも海水が排出されるので、一気に内部の水位が低くなる。波の引き足が早いので、ピッチの短い寄せ波でも、次に波が寄せるまでに水位は最低にまで低下する。
【0068】
海水の下降の際、波受けタンク1の上部にタンク上部空間1g内の空気の加圧で閉じ且つ減圧で開く逆止蓋12付きの開口部11を設けた形態では、前記タンク上部空間1g内の海水の下降で内部の空気が減圧され、逆止蓋12が開いて前記開口部11から空気が入り込み、減圧状態が解除され前記タンク上部空間1g内の海水が円滑に下降可能となる。
なお、前記タンク上部空間1gが高圧となったときには逆止蓋12が閉じて、高圧空気が逆止蓋12からは外部に漏れず、高圧のまま送られるので効率良く回転装置6の回転が行われる。
【0069】
本発明は、上記の如く寄せ波でタンク上部空間1g内に海水面の大きな高低さが得られ、寄せ波は大きいほど大きな圧縮量となってより大きなエネルギーが発生し、そのエネルギーによって効率良く発電できるようになる。
波受けタンク1は、陸側背面部と海側前面部との間の距離が発生する寄せ波の山部の間隔より小さいと、前記タンク上部空間1gで得られる圧縮空気の容積も小さくなる。又、発生する寄せ波の山部の間隔より大きいと、先の波が引き終わらないうちにその後の波が寄せてきてしまうので、寄せ波と引き波はぶつかり合って干渉し、前記タンク上部空間1g内に盛り上がる海水の高さが低くなる。
寄せ波は均一なピッチで発生するものではないので、全の波の大きさに適合させることはできないが、一定時間を見れば似たような波が切り替えし発生し、その間に大小が極端に異なる寄せ波も殆どできない。
したがって、設置場所での平均的な波の大きさに対応させて設計することが好ましい。
なお、海の寄せ波は繰り返し押し寄せ、その度に寄せ波で間欠的に発電されることとなるので一定の発電を継続的に得ることができない。このため、前記回転装置6にフライホイール等を組み込むことで回転を一定の速度に保たせ、安定した電力を得ることが可能となる