(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
設備の運転状態を通常運転からエネルギー削減運転に切り替えた際に得られるエネルギーの予測削減量を算出するエネルギー削減量予測装置で用いられるエネルギー削減量予測方法であって、
シミュレーション演算部が、入力された運転条件に基づいて前記設備の動作をシミュレーションすることにより当該運転条件における当該設備でのエネルギー需要量を導出するシミュレーションモデルを用いて、前記通常運転時に必要となるエネルギーを示す第1の需要量と、前記エネルギー削減運転時に必要となるエネルギーを示す第2の需要量とを算出するシミュレーション演算ステップと、
データモデル演算部が、前記設備における過去の運転から得られた履歴データに基づいて入力された運転条件における当該設備でのエネルギー需要量を導出するデータモデルを用いて、前記通常運転時に必要となるエネルギーを示す第3の需要量を算出するデータモデル演算ステップと、
暫定削減量算出部が、前記第1の需要量から前記第2の需要量を減算することにより、前記シミュレーションモデルに基づく暫定削減量を算出する暫定削減量算出ステップと、
調整係数算出部が、前記第1の需要量と前記第3の需要量と比較することにより、当該第1の需要量を当該第3の需要量に調整するための調整係数を算出する調整係数算出ステップと、
予測削減量算出部が、前記調整係数により前記暫定削減量を調整することにより前記通常運転から前記エネルギー削減運転に切り替えた際に得られる前記予測削減量を算出する予測削減量算出ステップと
を備えることを特徴とするエネルギー削減量予測方法。
【背景技術】
【0002】
日本国内で全国的に電力不足が懸念される中、エネルギーの供給サイドの取り組みだけでなく、需要家サイドでのエネルギー削減の取り組みの重要度が増している。特に、これまで精力的に進められてきた省エネルギーの取り組みに加え、需給が逼迫する必要時のみエネルギー削減を実施するデマンドレスポンス(DR:Demand Response)の仕組みが注目されている。
【0003】
電気、ガス、熱量などのエネルギーを消費する需要家サイドでは、自己の設備において、DRのようなエネルギー削減運転を実施するにあたり、エネルギー削減運転による削減効果を適切に評価して、削減運転実施の是非を判断する必要がある。このとき一般的には、削減運転を提案するのは削減運転サービス提供者であり、削減運転の実施を決定するのはビル管理者であり、異なる企業間でのビジネスの受発注関係になる。したがって、削減運転の実施をビル管理者と削減運転サービス提供者が合意する際、削減効果の予測値の提示により、特にビル管理者側の納得性を高める必要がある。このため、エネルギー削減運転により削減されるエネルギー削減量を予測するエネルギー削減量予測技術が求められている。
【0004】
従来、エネルギー需要量を予測する技術として、予測対象に影響を与える要因が急変した場合でも予測できるように、エネルギー需要データと入力因子データの実績値から、複数の異なる予測処理手順の算出結果のうち、少なくともいずれか1つを用いてエネルギー需要の予測値を算出するための予測モデルを構築し、複数の予測処理手順に基づいてそれぞれの予測処理を実行し、予測モデルを用いて複数の予測処理手順によって算出されたそれぞれの予測値のうちの1つを選択して出力する技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【0005】
また、エネルギー需要量を予測する他の技術として、画像センサによって取得された画像データに基づき、予測対象エリアの人間情報と環境情報のうち少なくとも一方を含む解析データを生成し、この解析データと過去データを用いて生成されたエネルギー需要予測モデルとに基づいて、エネルギー需要予測を実行する技術が提案されている(例えば、特許文献2など参照)。
したがって、このようなエネルギー需要量予測技術を用いて、エネルギー削減運転の実施前後におけるエネルギー需要量を予測して、その差分を求めることにより、エネルギー削減量を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来技術では、過去に得られた履歴データから作成したデータモデルを用いて、エネルギー需要を予測している。しかしながら、この手法により新たなエネルギー削減運転から得られるエネルギー削減量を予測する場合、当該エネルギー削減運転を過去に実施した経験がないため、当該エネルギー削減運転実施の初回の予測値を提示できない。またエネルギー削減運転は、人間の意志により実行する運転状況である。このため、過去に得られた履歴データから作成したデータモデルからは、エネルギー削減運転実施の初回の予測値を提示できず、ビル管理者と削減運転サービス提供者との合意が得られ難い削減運転未実施状態が続いてしまう、すなわち原理的には削減運転が実現できないという問題点があった。
【0008】
また、データモデルによりエネルギー削減量を予測するために、少なくとも1日は仮にエネルギー削減運転を実施し、データモデルに蓄積する履歴データを取得することも考えられる。しかしながら、エネルギー削減運転を実施するためには、設備の設定変更だけではなく設備を用いた通常業務において多くの作業負担が発生する。また、多くの場合、複数種のエネルギー削減運転を比較検討するため、これらエネルギー削減運転をそれぞれ実施することになる。したがって、仮にエネルギー削減運転を実施して履歴データを得る方法は現実的でない。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、前もってエネルギー削減運転を実施することなく、より高い予測精度でエネルギー削減量を予測する技術を提供することで、エネルギー削減運転の初回実施をビル管理者と削減運転サービス提供者が合意する際に、ビル管理者側の納得性を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかるエネルギー削減量予測方法は、設備の運転状態を通常運転からエネルギー削減運転に切り替えた際に得られるエネルギーの予測削減量を算出するエネルギー削減量予測装置で用いられるエネルギー削減量予測方法であって、シミュレーション演算部が、入力された運転条件に基づいて前記設備の動作をシミュレーションすることにより当該運転条件における当該設備でのエネルギー需要量を導出するシミュレーションモデルを用いて、前記通常運転時に必要となるエネルギーを示す第1の需要量と、前記エネルギー削減運転時に必要となるエネルギーを示す第2の需要量とを算出するシミュレーション演算ステップと、データモデル演算部が、前記設備における過去の運転から得られた履歴データに基づいて入力された運転条件における当該設備でのエネルギー需要量を導出するデータモデルを用いて、前記通常運転時に必要となるエネルギーを示す第3の需要量を算出するデータモデル演算ステップと、暫定削減量算出部が、前記第1の需要量から前記第2の需要量を減算することにより、前記シミュレーションモデルに基づく暫定削減量を算出する暫定削減量算出ステップと、調整係数算出部が、前記第1の需要量と前記第3の需要量と比較することにより、当該第1の需要量を当該第3の需要量に調整するための調整係数を算出する調整係数算出ステップと、予測削減量算出部が、前記調整係数により前記暫定削減量を調整することにより前記通常運転から前記エネルギー削減運転に切り替えた際に得られる前記予測削減量を算出する予測削減量算出ステップとを備えている。
【0011】
また、本発明にかかる上記エネルギー削減量予測方法の一構成例は、前記調整係数が、前記第3の需要量を前記第1の需要量で除算した値からなるものである。
【0012】
また、本発明にかかるエネルギー削減量予測装置は、設備の運転状態を通常運転からエネルギー削減運転に切り替えた際に得られるエネルギーの予測削減量を算出するエネルギー削減量予測装置であって、入力された運転条件に基づいて前記設備の動作をシミュレーションすることにより当該運転条件における当該設備でのエネルギー需要量を導出するシミュレーションモデルを用いて、前記通常運転時に必要となるエネルギーを示す第1の需要量と、前記エネルギー削減運転時に必要となるエネルギーを示す第2の需要量とを算出するシミュレーション演算部と、前記設備における過去の運転から得られた履歴データに基づいて入力された運転条件における当該設備でのエネルギー需要量を導出するデータモデルを用いて、前記通常運転時に必要となるエネルギーを示す第3の需要量を算出するデータモデル演算部と、前記第1の需要量から前記第2の需要量を減算することにより、前記シミュレーションモデルに基づく暫定削減量を算出する暫定削減量算出部と、前記第1の需要量と前記第3の需要量と比較することにより、当該第1の需要量を当該第3の需要量に調整するための調整係数を算出する調整係数算出部と、前記調整係数により前記暫定削減量を調整することにより前記通常運転から前記エネルギー削減運転に切り替えた際に得られる前記予測削減量を算出する予測削減量算出部とを備えている。
【0013】
また、本発明にかかる上記エネルギー削減量予測装置の一構成例は、前記調整係数が、前記第3の需要量を前記第1の需要量で除算した値からなるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電気、ガス、熱量などのエネルギーを消費する需要家サイドの設備において、過去に実施した経験がなく、データモデルにおいて特異日に相当するエネルギー削減運転であっても、シミュレーションモデルで予測した暫定削減量から、データモデルで予測した場合とほぼ同等の予測削減量を得ることができる。
したがって、前もってエネルギー削減運転を実施することなく、シミュレーションモデルだけで予測した際のエネルギー削減量と比較して、より高い予測精度でエネルギー削減量を予測する技術を提供することで、エネルギー削減運転の初回実施をビル管理者と削減運転サービス提供者が合意する際に、ビル管理者側の納得性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[エネルギー削減量予測装置]
まず、
図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかるエネルギー削減量予測装置10について説明する。
図1は、エネルギー削減量予測装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
このエネルギー削減量予測装置10は、全体として、サーバ装置やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置からなり、電気、ガス、熱量などのエネルギーを消費する需要家サイドにおいて、設備の運転状態を通常運転からエネルギー削減運転に切り替えた際に得られるエネルギーの予測削減量を算出する機能を有している。
【0018】
エネルギー削減量予測装置10には、主な機能部として、通信I/F部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、データ取得部15、需要量予測部16、および削減量予測部17が設けられている。
【0019】
通信I/F部11は、通信回線を介して接続された外部装置(図示せず)とデータ通信を行うことにより、エネルギー削減量の予測に用いる運転条件や環境データ、算出したエネルギー予測削減量などの各種データをやり取りする機能を有している。
操作入力部12は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出する機能を有している。
画面表示部13は、LCDなどの画面表示装置からなり、操作メニューや、運転条件、環境データ、エネルギー予測削減量などの各種データを、画面表示する機能を有している。
【0020】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、エネルギー予測削減量の算出処理に用いる運転条件、環境データ、エネルギー予測削減量などの各種データや、プログラム14Pを記憶する機能を有している。
プログラム14Pは、CPU(図示せず)で実行されることにより、データ取得部15、需要量予測部16、および削減量予測部17を実現するためのプログラムであり、通信I/F部11を介して外部装置や記録媒体から記憶部14へ予め格納されている。
【0021】
データ取得部15は、通信I/F部11や操作入力部12を介してエネルギー予測削減量の算出処理に用いる運転条件や環境データなどの予測条件データを取得する機能を有している。
このデータ取得部15には、主な処理部として、通常運転条件取得部15A、削減運転条件取得部15B、および環境データ取得部15Cから設けられている。
【0022】
通常運転条件取得部15Aは、設備を通常運転するための運転条件を示す通常運転条件データを取得する機能を有している。
削減運転条件取得部15Bは、設備をエネルギー削減運転するための運転条件を示す削減運転条件データを取得する機能を有している。
環境データ取得部15Cは、設備の動作に影響を与える環境の状態を示す環境データを取得する機能を有している。
【0023】
通常運転条件データおよび削減運転条件データとしては、熱源設備、空調設備、および照明設備等の、エネルギーを消費するビル設備の起動/停止や設定値の時刻毎の変化を示す設備稼働スケジュールがある。また、環境データとしては、外部の温度、湿度、大気圧、風向・風速、日射量、照度、雲量等の時刻毎の変化を示すデータ、ビル全体、フロア毎、またはゾーン毎の在席人数やIT機器等の内部負荷の時刻毎の変化を示すデータ、および各種イベント実行の有無を示すデータ等がある。ここで、環境データには、気象予報等による予測データを使用する場合もある。
【0024】
需要量予測部16は、データ取得部15で取得された運転条件および環境データに基づいて、それぞれの運転条件で運転した場合に、設備で必要となるエネルギー需要量を算出する機能を有している。
この需要量予測部16には、主な処理部として、シミュレーション演算部16Aおよびデータモデル演算部16Bが設けられている。
【0025】
シミュレーション演算部16Aは、入力された運転条件に基づいて設備の動作をシミュレーションすることにより当該運転条件における当該設備でのエネルギー需要量を導出するシミュレーションモデルを用いて、当該運転条件で設備を運転した際に必要となるエネルギーを示す需要量を算出する機能を有している。
【0026】
より具体的には、シミュレーション演算部16Aは、通常運転条件取得部15Aで取得した通常運転条件と環境データ取得部15Cで取得した環境データとに基づいて、シミュレーションモデルを用いることにより、設備を通常運転した際に必要となるエネルギーを示す通常運転需要量EBS(第1の需要量)を算出する機能と、削減運転条件取得部15Bで取得した削減運転条件と環境データ取得部15Cで取得した環境データとに基づいて、シミュレーションモデルを用いることにより、設備を削減運転した際に必要となるエネルギーを示す削減運転需要量ERS(第2の需要量)を算出する機能とを有している。
【0027】
データモデル演算部16Bは、設備における過去の運転から得られた履歴データに基づいて入力された運転条件における当該設備でのエネルギー需要量を導出するデータモデルを用いて、当該運転条件で設備を運転した際に必要となるエネルギーを示す需要量を算出する機能を有している。
より具体的には、データモデル演算部16Bは、通常運転条件取得部15Aで取得した通常運転条件と環境データ取得部15Cで取得した環境データとに基づいて、データモデルを用いることにより、設備を通常運転した際に必要となるエネルギーを示す通常運転需要量EBD(第3の需要量)を算出する機能を有している。
【0028】
シュミレーションモデルの具体例としては、例えば、米国エネルギー省が公開しているEnergyPlus(http://apps1.eere.energy.gov/buildings/energyplus/)のような公知のエネルギーシミュレータを使用すればよい。シミュレーション結果を定量的に合わせ混むには、多大な調整労力を必要とするが、ここでは、簡易な設定により定性的な挙動のみ表現できればよい。
データモデルの具体例としては、例えばTCBM(Topological Case-Based Modeling:http://www.azbil.com/jp/product/ias/sp/sp_forest.html)などの公知の事例ベース推論モデルを用いればよい。
【0029】
削減量予測部17は、需要量予測部16で算出した通常運転需要量EBS、削減運転需要量ERS、および通常運転需要量EBDに基づいて、設備の運転状態を通常運転からエネルギー削減運転に切り替えた際に得られるエネルギーの予測削減量Eを算出する機能を有している。
この削減量予測部17には、主な処理部として、暫定削減量算出部17A、調整係数算出部17B、および予測削減量算出部17Cが設けられている。
【0030】
暫定削減量算出部17Aは、シミュレーション演算部16Aで算出した通常運転需要量EBSからシミュレーション演算部16Aで算出した削減運転需要量ERSを減算することにより、シミュレーションモデルに基づく暫定削減量EPを算出する機能を有している。
調整係数算出部17Bは、シミュレーション演算部16Aで算出した通常運転需要量EBSとデータモデル演算部16Bで算出した通常運転需要量EBDと比較することにより、通常運転需要量EBSを通常運転需要量EBDに調整するための調整係数αを算出する機能を有している。
【0031】
調整係数αの具体例としては、通常運転需要量EBSと通常運転需要量EBDとの比が考えられる。これは、通常運転需要量EBSと通常運転需要量EBDとの相関性が高いからである。比の求め方については、例えば、通常運転1日分における通常運転需要量EBSの最大値と通常運転需要量EBDの最大値の比を求める手法があるが、最大値のほか、平均値や中央値など他の統計手法を用いて求めた、通常運転需要量EBSと通常運転需要量EBDの代表値の比であればよい。また、午前、午後、夜間等の時間帯毎にそれぞれ代表値の比を決めてもよい。
【0032】
予測削減量算出部17Cは、調整係数算出部17Bで算出した調整係数αにより、暫定削減量算出部17Aで算出した暫定削減量EPを調整することにより、設備の運転状態を通常運転からエネルギー削減運転に切り替えた際に得られるエネルギーの予測削減量Eを算出する機能を有している。
【0033】
[本実施の形態の動作]
次に、
図2および
図3を参照して、本実施の形態にかかるエネルギー削減量予測装置10の動作について説明する。
図2は、エネルギー削減量予測処理を示すフローチャートである。
図3は、エネルギー削減量予測処理を示すフロー図である。
【0034】
まず、データ取得部15は、通信I/F部11や操作入力部12を介してエネルギー予測削減量の算出処理に用いる運転条件や環境データなどの予測条件データを取得する(ステップ100)。これにより、通常運転条件取得部15A、削減運転条件取得部15B、および環境データ取得部15Cにより、通常運転条件21A、削減運転条件21B、環境データ21Cが取得され、記憶部14に保存される。
【0035】
次に、需要量予測部16は、記憶部14の通常運転条件21A、削減運転条件21B、環境データ21Cに基づいて、通常運転条件および削減運転条件で運転した場合に、設備で必要となるエネルギー需要量を算出する(ステップ101−103)。
【0036】
具体的には、まず、シミュレーション演算部16Aが、通常運転条件21Aと環境データ21Cとに基づいて、シミュレーションモデルを用いることにより、設備を通常運転した際に必要となるエネルギーを示す通常運転需要量EBS(22A)を算出する(ステップ101)。
【0037】
この後、シミュレーション演算部16Aが、削減運転条件21Bと環境データ21Cとに基づいて、シミュレーションモデルを用いることにより、設備を削減運転した際に必要となるエネルギーを示す削減運転需要量ERS(22B)を算出する(ステップ102)。
一方、データモデル演算部16Bは、通常運転条件21Aと環境データ21Cとに基づいて、データモデルを用いることにより、設備を通常運転した際に必要となるエネルギーを示す通常運転需要量EBD(22C)を算出する(ステップ103)。
【0038】
続いて、削減量予測部17は、需要量予測部16で算出した通常運転需要量EBS(22A)、削減運転需要量ERS(22B)、および通常運転需要量EBD(22C)に基づいて、設備の運転状態を通常運転からエネルギー削減運転に切り替えた際に得られるエネルギーの予測削減量E(24)を算出する(ステップ104−106)。
【0039】
具体的には、まず、暫定削減量算出部17Aが、通常運転需要量EBS(22A)から削減運転需要量ERS(22B)を減算することにより、シミュレーションモデルに基づく暫定削減量EP(23A)を算出する(ステップ104)。
一方、調整係数算出部17Bは、通常運転需要量EBS(22A)と通常運転需要量EBD(22C)と比較することにより、通常運転需要量EBS(22A)を通常運転需要量EBD(22C)に調整するための調整係数α(23B)を算出する(ステップ105)。
【0040】
この後、予測削減量算出部17Cが、調整係数α(23B)を暫定削減量EP(23A)に乗算して暫定削減量EP(23A)を調整することにより、設備の運転状態を通常運転からエネルギー削減運転に切り替えた際に得られるエネルギーの予測削減量E(24)を算出する(ステップ106)。
【0041】
図4は、通常運転需要量EBSと削減運転需要量ERSとを示すグラフである。ここでは、通常運転を実施した1日分の通常運転需要量EBSの時刻変化が実線グラフで示されており、エネルギー削減運転を実施した1日分の削減運転需要量ERSの時刻変化が破線グラフで示されている。
図5は、暫定削減量EPを示すグラフである。ここでは、暫定削減量EPの時刻変化が実線グラフで示されており、
図4の通常運転需要量EBSと削減運転需要量ERSとの差分に相当していることが分かる。
【0042】
図6は、通常運転需要量EBSと通常運転需要量EBDとを示すグラフである。ここでは、通常運転を実施した1日分について、シミュレーションモデルから予測した通常運転需要量EBSの時刻変化が実線グラフで示されており、データモデルから予測した通常運転需要量EBDの時刻変化が破線グラフで示されている。
図6から分かるように、通常運転需要量EBSと通常運転需要量EBDとは、高い相関性を有しており、両者間の比を求めることにより、シミュレーションモデルで予測したエネルギー削減量、すなわち暫定削減量EPを、データモデルで予測したエネルギー削減量、すなわち所望の予測削減量Eに調整(補正)することができる。
【0043】
図7は、暫定削減量EPと予測削減量Eとを示すグラフである。ここでは、シミュレーションモデルから予測した暫定削減量EPが破線グラフで示されており、これを調整係数αで調整して得られた予測削減量Eが実線グラフで示されている。これにより、シミュレーションモデルで予測したエネルギー削減量である暫定削減量EPから、エネルギー削減運転というデータモデルの履歴データにはない運転状態におけるエネルギー削減量である予測削減量Eを、データモデルで予測した場合とほぼ同様に、高い精度で予測することができる。
【0044】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、暫定削減量算出部17Aが、シミュレーションモデルに基づいて、通常運転時からエネルギー削減運転時へ切り替えた際に得られる暫定削減量EPを算出し、調整係数算出部17Bが、通常運転時におけるシミュレーションモデルとデータモデルとから求めたエネルギー需要量を比較して調整係数αを算出し、予測削減量算出部17Cが、調整係数αにより暫定削減量EPを調整することにより通常運転からエネルギー削減運転に切り替えた際に得られる予測削減量Eを算出するようにしたものである。
【0045】
これにより、電気、ガス、熱量などのエネルギーを消費する需要家サイドの設備において、過去に実施した経験がなく、データモデルにおいて特異日に相当するエネルギー削減運転であっても、シミュレーションモデルで予測した暫定削減量EPから、データモデルで予測した場合とほぼ同等の予測削減量Eを得ることができる。
したがって、前もってエネルギー削減運転を実施することなく、シミュレーションモデルだけで予測した際のエネルギー削減量と比較して、より高い予測精度でエネルギー削減量を予測する技術を提供することで、エネルギー削減運転の初回実施をビル管理者と削減運転サービス提供者が合意する際に、ビル管理者側の納得性を高めることが可能となる。
【0046】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。