(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、直前に受信した前記応答信号により前記携帯機が前記第1の判定領域又は前記第2の判定領域にあったと判定した場合で、且つ現在受信した前記応答信号により、前記携帯機が前記第2の判定領域に位置していると判定したときは施錠を行うことを特徴とする請求項1に記載の車載用通信システム。
前記第1の判定領域は、少なくとも前記車から一定の距離内の近傍領域と前記近傍領域の外側の遠方領域からなり、前記制御手段は、直前に受信した前記応答信号により、前記携帯機が前記近傍領域にあったと判定した場合で、且つ現在の受信タイミングで前記応答信号を受信しなかったときに、施錠を行わないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載用通信システム。
前記制御手段は、直前及び現在の受信タイミングで前記応答信号を受信しなかった場合は、施錠を行わず、さらに、その後の所定回数の前記リクエスト信号に対して前記応答信号を受信しなかった場合は、前記第2送信手段からの前記リクエスト信号の送信を停止することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載用通信システム。
前記制御手段は、直前及び現在の受信タイミングで受信した前記応答信号により、前記携帯機が前記遠方領域に留まっていると判定した場合に、施錠を行わず、さらに、その後の所定回数の前記リクエスト信号により、前記携帯機が前記遠方領域に留まり続けていると判定した場合は、施錠を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載用通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年は、携帯電話その他の通信機器の普及により、日常のあらゆる場所において電波が存在する。このため、車載用通信システムを使用する場面においても、このような電波が存在するため、車載器と携帯機との間の通信を妨げるノイズとなってしまう場合がある。
【0005】
特許文献1に記載の車載用通信システムでは、電子錠からの応答信号が受信できない場合、電子錠を持ったユーザが通信範囲外に出たのか、それとも通信範囲内にいるのに拘わらずノイズによって通信ができない状態になっているのかが判別できないおそれがあった。このため、例えば、ユーザが車から遠ざかったのに施錠が行われない、あるいは、ユーザが車の近くに居続けて遠ざかってはいないのに施錠が行われてしまうなど、ドアの施錠処理が適切に行われないおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、ノイズによって車載器と携帯機との間の通信を妨げる事態があっても、ドアの施錠処理を適切に行うことのできる車載用通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車載用通信システムは、車載器と携帯機とを有し、携帯機は、無線信号を受信する第1受信手段と、無線信号に基づいた応答信号を送信する第1送信手段と、を備え、車載器は、携帯機に無線信号であるリクエスト信号を所定時間間隔で送信する第2送信手段と、所定時間間隔に対応する受信タイミングで応答信号を受信する第2受信手段と、応答信号に基づいてドアの施錠を行う制御手段と、を備え、制御手段は、第2受信手段が受信した応答信号に基づいて、携帯機が、(1)車内の領域と、(2)車外における車両から一定の距離内にあって1つ領域または複数の領域から成る第1の判定領域と、(3)第1の判定領域の外側の一定の距離内にある第2の判定領域とのいずれの領域に位置するのかを判定し、
直前に受信した前記応答信号により前記携帯機が前記車内にあったと判定した場合は、現在受信した前記応答信号に拘わらずに施錠を行わないものであり、第2の判定領域からさらに外側の領域が、第1送信手段と第2受信手段の間の通信の範囲外であることを特徴としている。
【0008】
車内の領域と通信範囲外の領域の間に、第1の判定領域及び第2の判定領域を設定したことにより、精密な判定が可能となるため、例えば、応答信号が受信できない場合、ユーザが通信範囲外に出たのか、それとも通信範囲内にいるのに拘わらずノイズによって通信ができない状態になっているのかが判別可能となり、これにより適切な施錠処理を行うことができる。
【0010】
また、ユーザが通常のドア開閉・歩行動作により徐々に車両から遠ざかる動作を判定することが可能となり、このような動作をしているときに施錠することができる。また、携帯機を持たずにユーザが車から離れた場合に施錠されてしまうことを防ぐことができる。
【0011】
本発明の車載用通信システムにおいて、制御手段は、直前に受信した応答信号により携帯機が第1の判定領域又は第2の判定領域にあったと判定した場合で、且つ現在受信した応答信号により、携帯機が第2の判定領域に位置していると判定したときは施錠を行うことが好ましい。
【0012】
これにより、ユーザが車外で徐々に遠ざかって行くことを判定して施錠することができる。
【0013】
本発明の車載用通信システムにおいて、第1の判定領域は、少なくとも車から一定の距離内の近傍領域と近傍領域の外側の遠方領域からなり、制御手段は、直前に受信した応答信号により、携帯機が近傍領域にあったと判定した場合で、且つ現在の受信タイミングで応答信号を受信しなかったときに、施錠を行わないことが好ましい。
【0014】
これにより、ユーザが車から徐々に遠ざかった場合とノイズ等の障害が発生した場合とを適切に区別することが可能となり、ドアの施錠処理を適切に行うことができる。
【0015】
本発明の車載用通信システムにおいて、制御手段は、直前及び現在の受信タイミングで応答信号を受信しなかった場合は、施錠を行わず、さらに、その後の所定回数のリクエスト信号に対して応答信号を受信しなかった場合は、第2送信手段からのリクエスト信号の送信を停止することが好ましい。
【0016】
これにより、ノイズによる通信の障害等が継続して発生している等の原因により、ユーザの位置を正しく判断ができない場合の誤った施錠や、不要な車のバッテリー消費を抑えることができる。
【0017】
本発明の車載用通信システムにおいて、制御手段は、直前及び現在の受信タイミングで受信した応答信号により、携帯機が遠方領域に留まっていると判定した場合に、施錠を行わず、さらに、その後の所定回数のリクエスト信号により、携帯機が遠方領域に留まり続けていると判定した場合は、施錠を行うことが好ましい。
【0018】
これにより、携帯機が遠方領域に留まっている場合、短時間であればユーザが車内にもどる可能性を考慮して施錠しないが、所定の時間以上の長い時間に渡って留まっている場合は、ユーザが直ちに車内にもどる可能性は低いと判定して施錠を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、ノイズや携帯機の故障、電池切れ等といった予期せぬトラブルによって車載器と携帯機との間の通信を妨げる事態があっても、ドアの施錠処理を適切に行うことができる。また、ユーザ(携帯機)が速い速度で車から遠ざかった場合にもドアの施錠処理を適切に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る車載用通信システムについて図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0022】
図1は実施形態に係る車載用通信システム100の構成を示すブロック図である。
図2は、携帯機101と車両C内の送信アンテナ15a、15b、15c、15dの配置例を示した上面図である。
図1に示すように、車載用通信システム100は、携帯機101と車載器102とを備える。
【0023】
携帯機101は、車載器102から送信されたリクエスト信号を受信する第1受信手段としての携帯機受信部20と、車載器102に対してリクエスト信号に基づいた応答信号を送信する第1送信手段としての携帯機送信部21と、を備える。携帯機101は、さらに、リクエスト信号を受信した際に各種制御を行う携帯機制御部22と、自機に設定されているID及びV−ID等を記憶したメモリ24とを有している。また、携帯機受信部20にはリクエスト信号の受信を行う互いに直行する方向の指向特性を有する三軸アンテナ23aが接続され、携帯機送信部21には、応答信号の送信を行うアンテナ23bが接続される。携帯機101は電池25によって駆動され、この電池25の残量を検出して携帯機制御部22に通知する測定手段26をさらに備えている。また、ユーザが携帯機101を操作することにより、車両側制御部12の判定に関わらずに施錠・解錠することもできる。ここで、上述の三軸アンテナ23aに代えて、一軸アンテナを互いに直交する位置にレイアウトにしてもよい。これにより、実質的に三軸アンテナと同等の効果を得ることができる。
【0024】
車載器102は、車両Cに配置され、携帯機101からの応答信号を受信する第2受信手段としての車両側受信部10と、携帯機101に対して無線信号であるリクエスト信号を送信する第2送信手段としての車両側送信部11と、携帯機101からの応答信号に基づいて車両のドアの施錠を行う制御手段としての車両側制御部12とを備える。車両側制御部12は、リクエスト信号の送信制御を行うと共に、応答信号を受信した際に各種制御を行う。
【0025】
車両側送信部11は、車両側制御部12の制御により、所定時間間隔でリクエスト信号を送信する。車両側送信部11がリクエスト信号を送信する時間間隔(所定時間間隔)は、例えば、0.5秒である。10は、車両側制御部12の制御により、車両側送信部11がリクエスト信号を送信する時間間隔に対応する受信タイミングで応答信号を受信する。
【0026】
車両側制御部12には、車固有の識別符号であるV−ID(Vehicle−ID)や1台の車両を操作可能な複数の携帯機のIDなど制御に必要な情報を記憶するメモリ13が接続されている。また、車両側受信部10には応答信号を受信するための受信アンテナ14が接続され、車両側送信部11にはリクエスト信号を送信するための複数の送信アンテナ15a、15b、15c、15d(
図1、
図2)が接続される。複数の送信アンテナ15a、15b、15c、15dは、それぞれ車両Cの内外各所に設けられる。
【0027】
携帯機制御部22は、携帯機受信部20で受信する車載器102からのリクエスト信号に含まれるウェークアップ信号によって、消費電力が略ゼロの状態であるスリープ状態と受信可能状態が切り替わる間欠受信状態から受信可能状態が継続する通常状態に切り替わる。また、携帯機制御部22は、リクエスト信号に含まれるコマンドに基づいて各種動作を行う。さらに、携帯機制御部22は、三軸アンテナ23によって受信した信号の強度を検出することができる。
【0028】
車両側制御部12は、携帯機101からの応答信号に基づいて携帯機101の位置を判定し、この判定に基づいて車両のドアの施錠処理を行う。この判定のために、以下の判定領域(1)〜(3)が設定されている。車両側制御部12は、携帯機101からの応答信号の信号強度によって、携帯機101と車載器102との距離、より具体的には、送信アンテナ15a、15b、15c、15dと携帯機101との距離を算出し、この距離と、あらかじめ設定した各判定領域の境界位置とを比較することによって、携帯機101が位置する領域を判定する。この判定は、応答信号を受信するごとに実行され、その結果はメモリ13に保存される。なお、送信アンテナ15a、15b、15c、15dと携帯機101との距離の算出は、携帯機側制御部22で行っても良い。
(1)車内の領域
(2)車外であって車の外囲から一定の距離内にあり、1つ領域または複数の領域から成る第1の判定領域
(3)第1の判定領域の外側の一定の距離内にある第2の判定領域
ここで、第2の判定領域からさらに外側の領域は、携帯機送信部21と10の間の通信の範囲外である。
【0029】
第1の判定領域及び第2の判定領域の範囲は、人の歩行速度、ドアの開閉範囲、ほかの車載用通信システムとの混信の可能性、コスト等を考慮して定める。第1の判定領域の外側の境界線(第2の判定領域との境界線)としては、例えば、車の外囲から1.2〜2mの範囲で設定でき、第2の判定領域の外側の境界線としては車の外囲から2〜3mの範囲で設定することができる。
【0030】
第1の判定領域として、車から一定の距離内の近傍領域と近傍領域の外側の遠方領域を設定するとより細かい判断を行うことができる。この場合、車両側制御部12は、現在の受信タイミングで行った判定結果を、直前に行った判定結果と比較し、その比較結果に応じてドアを施錠するか否かを判断する。より具体的には、次の(a)〜(g)のように判断する。
(a)直前に受信した応答信号により携帯機101が車内にあったと判定した場合は、現在受信した応答信号に拘わらずに施錠を行わない。
(b)直前に受信した応答信号により携帯機101が第1の判定領域又は第2の判定領域にあったと判定した場合に、現在受信した応答信号により、携帯機101が第2の判定領域に位置していると判定したときは施錠を行う。
(c)第1の判定領域として、少なくとも車から一定の距離内の近傍領域と近傍領域の外側の遠方領域を設定し、直前に受信した応答信号により、携帯機101が近傍領域にあったと判定した場合に、現在の受信タイミングで応答信号を受信しなかったときは施錠を行わない。
(d)制御手段は、直前及び現在の受信タイミングで応答信号を受信しなかった場合は、施錠を行わない。
(e)(d)の後の所定回数のリクエスト信号に対して応答信号を受信しなかった場合は、車両側送信部11からのリクエスト信号の送信を停止する。
(f)第1の判定領域として、少なくとも車から一定の距離内の近傍領域と近傍領域の外側の遠方領域を設定し、直前及び現在の受信タイミングで受信した応答信号により、携帯機101が遠方領域に留まっていると判定した場合には施錠を行わない。
(g)(f)の後の所定回数のリクエスト信号により、携帯機が遠方領域に留まり続けていると判定した場合は、施錠を行う。
【0031】
ここで、近傍領域と遠方領域の範囲は、上述の第1の判定領域及び第2の判定領域の範囲と同様の観点から設定することが好ましく、近傍領域と遠方領域の境界線は第1の判定領域の範囲内で任意に設定することができる。
【0032】
以下、
図3と
図4を参照して、より具体的な例について説明する。
図3は、車載用通信システム100における判定領域を示す平面図である。
図4は、車載用通信システム100における判定例を示す表である。
【0033】
図3において、領域A1は車両Cの車内の領域、領域A2は第1の判定領域のうちの近傍領域、領域A3は第1の判定領域のうちの遠方領域、領域A4は第2の判定領域、A5は通信の範囲外の領域である。各領域の範囲としては、車両の外囲からの距離として、例えば、領域A2を1.5mまでの範囲、領域A3を1.8mまでの範囲、領域A4を2.5mまでの範囲とする。
【0034】
図4の状況C1〜25のそれぞれにおいて、「一回目」は直前に受信した応答信号によって判定した携帯機101が位置する判定領域、「二回目」は現在受信した応答信号によって判定した携帯機101が位置する判定領域である。「判定」は車両側制御部12が行う施錠を行うか否かの判定結果である。「Lock」の判定では施錠を行い、「サーチ継続」の判定では、施錠は行わずに応答信号の受信を継続する。応答信号の受信と応答信号に基づく判定は継続して行われ、「二回目」の判定結果は、最新の応答信号による判定結果に置き換えられ、その直前の判定結果が「一回目」の結果に置き換えられる。
【0035】
図4の状況C1〜C5に示すように、一回目の判定結果において携帯機101が領域A1に位置すると判定した場合は、二回目の判定結果に関わらずに施錠は行わず、応答信号の受信(サーチ)を継続する。この判定とその後の判定により、ユーザが通常のドア開閉・歩行動作により徐々に車両から遠ざかる動作を判定することが可能となり、このような動作をしているときに施錠することができる。また、携帯機101を持たずにユーザが車から離れた場合に施錠されてしまうことを防ぐことができる。
【0036】
また、一回目の判定結果において携帯機101が領域A2、A3、A4のいずれかの領域に位置すると判定した場合のうち、二回目の判定結果において携帯機101が領域A4に位置していると判定したとき(
図4の状況C9、C14、C19)は、ユーザが車外で徐々に遠ざかって行くことを判定して施錠を実行する。同様に、一回目の判定結果において携帯機101が領域A3又は領域A4の領域に位置すると判定した場合のうち、二回目の判定結果において携帯機101が領域A5に位置していると判定したとき(
図4の状況C15、C20)も、施錠を実行する。
【0037】
さらにまた、一回目の判定結果において携帯機101が領域A2に位置すると判定し、二回目の判定結果において携帯機101が領域A5に位置していると判定した場合(
図4の状況C10)、施錠は行わず、応答信号の受信を継続する。判定間隔に対してユーザ(携帯機)の移動速度が速い場合や、ノイズによる通信の障害等が発生した可能性がある場合であり、施錠の判断は以降の判定結果を見て決定する。これにより、ユーザ(携帯機)が速い速度で車から遠ざかった場合と障害が発生した場合とを適切に区別することが可能となり、ドアの施錠処理を適切に行うことができる。
【0038】
また、一回目及び二回目の判定結果において携帯機101が領域A5に位置していると判定した場合(
図4の状況C25)、施錠は行わず、応答信号の受信を継続する。さらに、この後の所定回数(例えば、合計10秒間)のリクエスト信号に対して応答信号を受信しなかった場合は、車両側送信部11からのリクエスト信号の送信を停止する。ノイズによる通信の障害等が継続して発生している可能性があるため、ユーザの位置を正しく判断ができない状態での施錠は行わない。
【0039】
また、一回目及び二回目の判定結果において携帯機101が領域A3に留まっていると判定した場合(
図4の状況C13)は、施錠は行わず、応答信号の受信を継続する。さらに、この後の所定回数(例えば、合計10秒間)のリクエスト信号により、携帯機が領域A3に留まり続けていると判定した場合は、施錠を行う。携帯機101が同じ領域A3に留まっている場合、短時間であればユーザが車内にもどる可能性を考慮して施錠しないが、所定の時間以上の長い時間に渡って留まっている場合は、ユーザが直ちに車内にもどる可能性は低いと判定して施錠を行う。
【0040】
一回目の判定結果の位置よりも二回目の判定結果の位置の方が車に近い場合(
図4の状況C6、C7、C11、C12、C16〜C18、C21〜C24)は、応答信号の受信を継続する。また、一回目の判定結果において領域A2に位置すると判定し、二回目の判定結果において領域A3に位置すると判定した場合(
図4の状況C8)も応答信号の受信を継続する。
【0041】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。