特許第6104138号(P6104138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104138
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】河川内構造物の改修方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/26 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   E02B7/26 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-249007(P2013-249007)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2015-105548(P2015-105548A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591073337
【氏名又は名称】株式会社丸島アクアシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】井上 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】水野 正彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】支倉 満
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 良介
(72)【発明者】
【氏名】中野 陽一
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3054349(JP,U)
【文献】 特開昭48−036947(JP,A)
【文献】 特開昭48−036946(JP,A)
【文献】 特開2000−257051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/26
E02D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に設置された少なくとも2本の堰柱と、2本の前記堰柱の間を架け渡すように設置された既設ゲートと、を含む河川内構造物に対して行われる河川内構造物の改修方法において、
上流側から下流側への河川水の流入を防止する第1の止水構造物を前記既設ゲートよりも上流側で前記堰柱のそれぞれに設置すると共に、下流側から上流側への河川水の流入を防止する第2の止水構造物を前記既設ゲートよりも下流側で前記堰柱のそれぞれに設置する止水構造物設置工程と、
前記第1の止水構造物と前記第2の止水構造物との間に位置する河川水を除去する河川水除去工程と、
前記河川水を除去することによって得られた空間から前記既設ゲートを撤去する既設ゲート撤去工程と、
2本の前記堰柱の間を架け渡すように新設ゲートを前記堰柱のそれぞれに設置する新設ゲート設置工程と、
を備えることを特徴とする河川内構造物の改修方法。
【請求項2】
前記河川水除去工程の後に、前記堰柱に補強用鉄筋を挿入して前記堰柱を補強する堰柱補強工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の河川内構造物の改修方法。
【請求項3】
前記止水構造物設置工程の前に、前記第1の止水構造物及び前記第2の止水構造物が前記堰柱に密着するように前記堰柱の形状を変更する堰柱形状変更工程を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の河川内構造物の改修方法。
【請求項4】
前記止水構造物設置工程の前に、前記第1の止水構造物及び前記第2の止水構造物は、中空とされた状態で船舶によって曳航されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の河川内構造物の改修方法。
【請求項5】
前記第1の止水構造物及び前記第2の止水構造物は、内部空間が第1の空間と第2の空間と有するように仕切られており、
前記第1の止水構造物及び前記第2の止水構造物は、前記船舶によって曳航された後に前記第1の空間に注水されることによって傾けられ、前記船舶によって前記堰柱に押し付けられた後に前記第2の空間に注水されることによって前記河川に沈められることを特徴とする請求項4に記載の河川内構造物の改修方法。
【請求項6】
前記堰柱補強工程では、水流で前記堰柱の表面を斫ることによって前記堰柱に予め埋め込まれている用心鉄筋を露出させ、前記用心鉄筋を避けた位置に穴を開けて前記穴に前記補強用鉄筋を挿入し、前記穴と前記補強用鉄筋との間にグラウトを充填することを特徴とする請求項2に記載の河川内構造物の改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川に設置される河川内構造物の改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2006−124929号公報には、ダムを構成する4台の可動堰を備えたゲートに対して1台ずつ修繕工事を行う方法が記載されている。この公報に記載された方法では、ゲートの修繕に関する各種作業を行う作業スペースとして利用する仮設桟橋をダムの下流側に設置すると共に修繕対象のゲートの上流側に仮締切ゲートを設置した状態でゲートの修繕工事が行われる。このように仮締切ゲートを設置することによって止水が行われ、修繕工事における河川の水の分断が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−124929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、河川における海岸から比較的近い場所において、可動堰又は水門等のゲートを備えた河川内構造物は、河川水における海水の遡上を防止すると共に洪水時に水を下流側に開放させるために設けられる。すなわち、海岸から近い場所に位置する河川内構造物では、通常時はゲートを閉鎖することによって、河川内構造物より上流側の河川水と、河川内構造物より下流側の塩分が混入した河川水とを分断している。そして、洪水発生時にはゲートを開放して、河川内構造物より上流側の水を下流側に開放させる。ここで、下流側の塩分が混入した海水が河川内構造物よりも遡上すると、塩分を多く含んだ河川水が河川内構造物よりも上流側に移動することとなるので、河川から取得される飲料用水や工業用水に影響を与えるおそれがある。よって、海岸から近い場所に位置する河川内構造物では、上流側の河川水と下流側の河川水とを分断させて河川内構造物としての機能を維持させながら、河川内構造物の改修工事を行うことが求められる。
【0005】
本発明は、河川内構造物の改修工事中であっても、下流側の河川水が河川内構造物よりも上流側に移動することを防止可能な河川内構造物の改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、河川に設置された少なくとも2本の堰柱と、2本の堰柱の間を架け渡すように設置された既設ゲートと、を含む河川内構造物に対して行われる河川内構造物の改修方法において、上流側から下流側への河川水の流入を防止する第1の止水構造物を既設ゲートよりも上流側で堰柱のそれぞれに設置すると共に、下流側から上流側への河川水の流入を防止する第2の止水構造物を既設ゲートよりも下流側で堰柱のそれぞれに設置する止水構造物設置工程と、第1の止水構造物と第2の止水構造物との間に位置する河川水を除去する河川水除去工程と、河川水を除去することによって得られた空間から既設ゲートを撤去する既設ゲート撤去工程と、2本の堰柱の間を架け渡すように新設ゲートを堰柱のそれぞれに設置する新設ゲート設置工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この河川内構造物の改修方法では、第1の止水構造物と第2の止水構造物とが堰柱のそれぞれに設置されることによって、上流側から下流側への河川水の流入と下流側から上流側への河川水の流入とが防止されるので、河川内構造物の上流側と河川内構造物の下流側とを分断することができる。よって、河川内構造物の改修時においても、塩分を多く含む下流側の河川水が河川内構造物よりも上流側に移動することが防止されるので、河川内構造物としての機能を維持させながら、河川内構造物の改修工事を行うことができる。また、第1の止水構造物が既設ゲートよりも上流側に設置され、第2の止水構造物が既設ゲートよりも下流側に設置された後には、第1の止水構造物と第2の止水構造物との間の河川水が除去されることにより、第1の止水構造物と第2の止水構造物との間に河川水を有しない作業空間が形成される。そして、この作業空間内に既設ゲートが位置しているので、上述した作業空間を既設ゲートの撤去及び新設ゲートの設置等の作業スペースとして有効利用することができる。
【0008】
また、河川水除去工程の後に、堰柱に補強用鉄筋を挿入して堰柱を補強する堰柱補強工程を備えていてもよい。このように堰柱に補強用鉄筋を挿入すると、補強用鉄筋によって、堰柱が引っ張られる力に対する抵抗力を大きくすることができ、堰柱に対する耐震補強を行うことも可能となる。
【0009】
また、止水構造物設置工程の前に、第1の止水構造物及び第2の止水構造物が堰柱に密着するように堰柱の形状を変更する堰柱形状変更工程を備えていてもよい。このように堰柱形状変更工程を備えることによって第1の止水構造物及び第2の止水構造物を堰柱に密着させ、上述した作業空間内への河川水の漏れをより確実に防止することが可能となる。すなわち、第1の止水構造物と第2の止水構造物との間に位置する河川水を除去することによって、第1の止水構造物と第2の止水構造物に対して外側から河川水の圧力がかかり、この河川水の圧力によって第1の止水構造物及び第2の止水構造物が堰柱に密着した状態で押し付けられる。従って、河川水の圧力によって第1の止水構造物及び第2の止水構造物による止水を簡単に行うことができる。
【0010】
また、止水構造物設置工程の前に、第1の止水構造物及び第2の止水構造物は、中空とされた状態で船舶によって曳航されてもよい。このように、第1の止水構造物及び第2の止水構造物を中空の浮体構造物として船舶で曳航させることによって、第1の止水構造物及び第2の止水構造物を現場に運搬する作業を簡単に行うことができる。例えば、現場とは別の場所で第1の止水構造物及び第2の止水構造物を予め製造しておき、河川内構造物の施工が始まって第1の止水構造物及び第2の止水構造物が必要となったときに、船舶の曳航によって第1の止水構造物及び第2の止水構造物を運搬するといったことが可能となる。
【0011】
また、第1の止水構造物及び第2の止水構造物は、作業空間が第1の空間と第2の空間と有するように仕切られており、第1の止水構造物及び第2の止水構造物は、船舶によって曳航された後に第1の空間に注水されることによって傾けられ、船舶によって堰柱に押し付けられた後に第2の空間に注水されることによって河川に沈められるようにしてもよい。このように、第1の止水構造物及び第2の止水構造物は、第1の空間への注水によって傾けられ、船舶によって堰柱に押し付けられた後に、第2の空間への注水によって河川に沈められる。従って、第1の止水構造物及び第2の止水構造物の堰柱に対する設置作業を簡単に行うことができると共に、第1の止水構造物及び第2の止水構造物を河川に沈めることによって、第1の止水構造物及び第2の止水構造物が移動してしまう事態を確実に防止することができる。
【0012】
また、堰柱補強工程では、水流で堰柱の表面を斫ることによって堰柱に予め埋め込まれている用心鉄筋を露出させ、用心鉄筋を避けた位置に穴を開けて穴に補強用鉄筋を挿入し、穴と補強用鉄筋との間にグラウトを充填してもよい。このように予め用心鉄筋を露出させ、用心鉄筋を避けた位置に穴を開けて補強用鉄筋を挿入させることにより、補強用鉄筋が用心鉄筋に干渉する事態を回避することができる。また、穴と補強用鉄筋との間にグラウトを充填させることによって、補強用鉄筋の防錆効果を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、河川内構造物の改修工事中であっても、下流側の河川水が河川内構造物よりも上流側に移動することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る改修方法の適用対象である可動堰を示す斜視図である。
図2図1の可動堰における補強対象部分を示す斜視図である。
図3図1の可動堰にライナープレートを設置した状態を示す斜視図である。
図4図3の可動堰の堰柱に止水構造物を設置した状態を示す斜視図である。
図5図4の止水構造物の間から河川水を除いた状態を示す斜視図である。
図6図5に示す可動堰における補強対象部分を示す斜視図である。
図7】止水構造物を傾ける作業について説明する図である。
図8】船舶で止水構造物を堰柱に押し付ける作業を説明する図である。
図9】止水構造物を堰柱に密着させる作業を説明する図である。
図10】止水構造物を注水によって沈める作業を説明する図である。
図11】堰柱を補強する作業を説明するための堰柱の側面図である。
図12】堰柱の端部に形成された堰柱改良体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る河川内構造物の改修方法について詳細に説明する。
【0016】
図1に示されるように、河川内構造物である可動堰1は、河川Rにおける可動堰1より上流側の河川水と可動堰1より下流側の河川水とを仕切っている。可動堰1は、河川Rを掛け渡すように配置されており、河川Rにおける比較的海岸に近い場所に設けられている。可動堰1は、河川Rにおける流量や水位を調整するために使用される。また、この可動堰1は、塩分を多く含んだ河川水が上流側に移動することを防止するために設けられている。
【0017】
可動堰1は、通常時は既存ゲート2を閉鎖した状態となっており、既存ゲート2が河川Rを閉鎖することによって、河川Rの可動堰1を超えようとする流れが遮断される。また、可動堰1は、洪水等の異常発生時には、既存ゲート2を堰柱3に対して上昇させて開放させることによって、上流側の河川水を下流側に流し込む。なお、開放時における既存ゲート2の高さは、例えば約5mとなっている。このように、可動堰1では、河川Rにおける河川水の流れを制御可能となっている。また、可動堰1の下部には、平板状の床板Bが複数枚配置されている(図8図10参照)。
【0018】
既存ゲート2は、中空となっており、河川Rの流れを遮るように直線状に配置されている。既存ゲート2の長手方向における両端側には、河川Rに立設されたコンクリート構造体である2本の堰柱3が設けられており、既存ゲート2は、2本の堰柱3を架け渡すように各堰柱3に設置されている。各堰柱3における既存ゲート2が設置される側面には、堰柱3に対して既存ゲート2を昇降させるためのレール部3aが配置されており、既存ゲート2は、レール部3aにスライド移動可能に支持されている。
【0019】
なお、図1では、2本の堰柱3と2本の堰柱3を架け渡す1本の既存ゲート2とを図示しているが、実際には、4本の堰柱3と、それぞれの堰柱3を架け渡す3本の既存ゲート2と、が設けられている。また、堰柱3及び既存ゲート2の本数は特に限定されない。
【0020】
また、既存ゲート2の両端は、複数本のチェーン(不図示)で支持されており、チェーンで引っ張り上げられることにより一方の方向に回転しながらレール部3aに沿って上昇し、チェーンが降ろされることにより他方の方向に回転しながらレール部3aに沿って下降する。このように、既存ゲート2は、回転しながら堰柱3のレール部3aに沿って昇降するいわゆるローリングゲートである。堰柱3は、河川Rにおいて、河川Rの流れ方向に延びる細長い形状となっている。また、堰柱3のレール部3aは、鉛直方向に対して若干斜めに傾いているので、既存ゲート2の昇降で必要とされる負荷が軽減されている。
【0021】
図11に示されるように、堰柱3の内部には、堰柱3のひび割れを防止するための用心鉄筋5が格子状に埋め込まれている。用心鉄筋5は、河川Rの幅方向から見て、約20cm四方の格子状に埋め込まれている。また、堰柱3の上部には、作業者が待機する詰所C及び橋Dが設けられている。ここで、橋Dは複数の堰柱3上で架け渡されているので、自動車等は、可動堰1の改修作業が行われているか否かに拘らず、橋Dの上を通って河川Rを渡ることが可能となっている。
【0022】
以上のように構成される可動堰1の改修作業では、既存ゲート2を新設ゲートに交換する作業と堰柱3の耐震補強に関する作業とが行われる。図2に示される堰柱3の側面3bが補強対象の箇所である。新設ゲートは、例えば、堰柱3のレール部3aに沿って回転せずに昇降し且つ中空の殻(シェル)構造を有するいわゆるシェル構造ローラゲートである。また、堰柱3の耐震補強では、改修対象の既存ゲート2の両側に位置する2本の堰柱3に対して補強を行う。
【0023】
以下では、可動堰1の改修方法について図面を参照しながら説明する。可動堰1の改修は、3本の既存ゲート2のうち2本の既存ゲート2に対して行われるので、2本の既存ゲート2を改修している間に、残りの1本の既存ゲート2は通常通り使用可能となっている。
【0024】
堰柱3の補強作業、既存ゲート2の撤去作業及び新設ゲートの設置作業は、いずれも2本の堰柱3の間に形成される作業空間S(図5参照)で行われる。作業空間Sは、2本の堰柱3と、堰柱3の上流側に設置される角柱状の第1の止水構造物7と、堰柱3の下流側に設置される角柱状の第2の止水構造物8と、によって形成される空間である。作業空間Sでは、第1及び第2の止水構造物7,8によって、堰柱3の上流側と堰柱3の下流側との両方からの河川水の流入を防止している。第1及び第2の止水構造物7,8の河川Rにおける幅方向の長さは、例えば35mである。また、作業空間Sは、例えば、河川Rの流れ方向の長さが約30m、河川Rの幅方向の長さが約30m、高さが約5mとなっている。
【0025】
まず、作業空間Sを形成する前の事前作業について説明する。作業空間Sを形成する前の事前作業としては、図3に示されるように、第2の止水構造物8が堰柱3に密着するように堰柱3の端部改修を行う。まず、堰柱3の下流側の端部3dを囲むように略円筒状のライナープレート9を堰柱3の端部3dに設置して端部3dを塞ぐ。そして、ライナープレート9内部の河川水をポンプによって除去し、堰柱3の端部3dを大気中に露出させて、堰柱3の端部3dに対する作業スペースAを得る。
【0026】
ここで、堰柱3の端部3dとライナープレート9との接触部分にはゴム(不図示)が介在し、このゴムを介してライナープレート9が堰柱3に密着しているので、ライナープレート9内部への河川水の流入は防止されている。また、ライナープレート9は円筒状となっているので、外側からライナープレート9にかかる河川水の水圧はライナープレート9に対して略全方向から付与されることになる。よって、水圧によってライナープレート9が河川R内で移動する事態は発生しにくくなっている。
【0027】
作業スペースAを得た後には、図12に示されるように、堰柱3の端部3dにコンクリートを打設して略直方体状の堰柱改良体3eを形成する(堰柱形状変更工程)。堰柱改良体3eは、第2の止水構造物8を堰柱3に密着させるために設けられる。すなわち、堰柱改良体3eの下流側の側面3fに第2の止水構造物8の平面を密着させることができるので、第2の止水構造物8を堰柱改良体3eの側面3fに押し付けるだけで、作業空間S内への河川水の流入を防止することが可能である。また、上記同様、堰柱3の上流側に対しても、第1の止水構造物7が堰柱3に密着するように堰柱3の端部改修を行う。
【0028】
上記のように堰柱3の端部改修を行った後には、図4に示されるように、第1及び第2の止水構造物7,8の堰柱3に対する設置が行われる(止水構造物設置工程)。堰柱3に設置する前において、第1及び第2の止水構造物7,8は、略直方体状の中空箱状体となっている。また、第1及び第2の止水構造物7,8は、中空とされた状態で船舶F(図8参照)によって曳航され、堰柱3の堰柱改良体3eに押し込まれ密着される。そして、止水構造物7,8の内部空間への注水を行って、止水構造物7,8を堰柱3に密着させた状態で沈める。このように、止水構造物7,8内部に注水が行われることによって止水構造物7,8は河川R内に沈むので、止水構造物7,8が浮いてしまうような事態は回避される。
【0029】
次に、図5に示されるように、堰柱3と第1の止水構造物7と第2の止水構造物8とで囲まれた領域の河川水を除去することによって作業空間Sを形成する(河川水除去工程)。このように堰柱3と第1の止水構造物7と第2の止水構造物8との間に位置する河川水を除去して作業空間Sを形成することによって、作業空間S内では、陸上と同じように作業を行うことができるようになっている。この河川水を除去する作業は、例えば複数台のポンプで河川水を汲み上げることによって行われる。
【0030】
作業空間Sが形成された後には、既存ゲート2の撤去作業を行う(既設ゲート撤去工程)。既存ゲート2は、輪切りによって分解された状態で作業空間Sから外に出され撤去される。既存ゲート2は、例えばランサー切断棒の先端を既存ゲート2に当てて溶融させることによって分解される。分解された既存ゲート2は、クレーン台船のクレーンで吊り上げられることによって作業空間Sから撤去される。
【0031】
そして、図6及び図11に示されるように、堰柱3の側面3bに対する補強作業が行われる(堰柱補強工程)。また、堰柱3に埋め込まれた用心鉄筋5の場所や大きさ等の配置状況は、鉄筋探査によって予め把握可能となっており、用心鉄筋5の配置状況を把握した後には、堰柱3の表面を斫って用心鉄筋5を露出させる。堰柱3の表面を斫る方法としては、ウォータージェットを用いることができ、ウォータージェットの高圧水流によって、堰柱3の表面を簡単に斫ることができる。なお、上述した鉄筋探査では、堰柱3を斫る量も予め把握しておく。
【0032】
堰柱3の表面を斫って用心鉄筋5を露出させた後には、格子状となっている用心鉄筋5を避けるようにして棒状の補強用鉄筋6を堰柱3の側面3bに挿入させる。このように用心鉄筋5に干渉しないように補強用鉄筋6を挿入することにより、補強用鉄筋6の挿入によって用心鉄筋5が切断される等の問題を回避することができる。補強用鉄筋6は、地震の揺れによってコンクリートがずれて切断される等、剪断による破壊を防止するための剪断補強筋である。補強用鉄筋6を挿入する作業としては、まず堰柱3の側面3bにコアボーリング工法で行われる水平ボーリング等によって補強用鉄筋6を挿入するための貫通孔を開ける。
【0033】
上記の貫通孔に補強用鉄筋6を挿入し、上記の貫通孔と補強用鉄筋6との間に防錆用のグラウトを充填する。そして、補強用鉄筋6の両端を堰柱3から露出させると共に座金に通し、この状態で補強用鉄筋6の両端を堰柱3の側面3bに固定する。このように堰柱3に補強用鉄筋6を挿入し固定させることによって、堰柱3の補強を行うことが可能であり、コンクリート構造物である堰柱3が引っ張られる力に対する抵抗力を高めることができる。また、堰柱3の補強作業において、補強用鉄筋6の両端に支圧板21を固定させたり堰柱3を増厚させたりすることによって、堰柱3の強度を一層高めることができる。
【0034】
このように堰柱3の補強作業を完了させた後には、堰柱3のレール部3aの改修等の作業を行って新設ゲートの設置を行う(新設ゲート設置工程)。新設ゲートの設置が完了した後には、作業空間Sへの水の注入、並びに、堰柱3に対する第1及び第2の止水構造物7,8の取り外しを行う。取り外された止水構造物7,8は、船舶Fで曳航されることによって運び出され、その後一連の作業が完了する。このように運び出された止水構造物7,8は、別の現場で使うことも可能であり、適宜再利用することができる。
【0035】
次に、図7図10を参照しながら、第1及び第2の止水構造物7,8を堰柱3に設置する方法について詳細に説明する。図7に示されるように、第1及び第2の止水構造物7,8の内部は、3箇所に第1〜第3の空間P1〜P3を有するように区画されている。なお、第1の止水構造物7と第2の止水構造物8の構成は同一であるため、以下では第1の止水構造物7を堰柱3に設置する方法について重点的に説明する。
【0036】
図7(a)〜図7(c)に示されるように、止水構造物7の長手方向に直交する面で止水構造物7を切断したときの断面は長方形状となっており、この断面における長辺の中点同士を結ぶ第1の中央壁K1の一方側に第3の空間P3が形成されている。また、第1の中央壁K1の他方側には、第1の空間P1と第2の空間P2とが、第1の中央壁K1に直交する方向に延在する第2の中央壁K2によって区画形成されている。
【0037】
また、第1〜第3の空間P1〜P3には、外部から水を注入可能となっており、更に第1〜第3の空間P1〜P3からはエア抜きを行うことが可能となっている。なお、第1の空間P1と第2の空間P2の容積は略同一であり、第1の空間P1と第2の空間P2の容積の和は第3の空間P3の容積と略同一である。
【0038】
図7(a)に示されるように、止水構造物7は、堰柱3に設置される前は中空となった状態で船舶F(図8参照)によって曳航される。このとき、止水構造物7は、横に倒れており第1の空間P1の真上に第2の空間P2が位置している。次に、図7(b)に示されるように、第3の空間P3の外側から注水パイプM1を第1の空間P1まで挿入して第1の空間P1への注水を開始すると共に排気弁H1で第1の空間P1のエア抜きを行う。第1の空間P1への注水及び第1の空間P1からのエア抜きが進むにつれて、止水構造物7における第1の空間P1側が重力で下方に傾き始める。
【0039】
第1の空間P1への注水が完了した後は、図7(c)に示されるように、注水ホースM2による第2の空間P2への注水を開始すると共に、第3の空間P3の外側から第2の空間P2まで挿入されたエア抜きパイプH2によって第2の空間P2のエア抜きを行う。第2の空間P2への注水及び第2の空間P2からのエア抜きが進むにつれて、止水構造物7における第2の空間P2側が下方に傾き始め止水構造物7が立ち上がる。
【0040】
図8に示されるように、止水構造物7を立ち上げた後には、止水構造物7と堰柱3とをチェーンブロックNで接続すると共に、給水弁M3による第3の空間P3への注水と排気弁H3による第3の空間P3からのエア抜きが開始される。なお、チェーンブロックNは、例えば上下に1本ずつ合計2本設けられる。そして、第3の空間P3への注水と第3の空間P3からのエア抜きが進んで、例えば止水構造物7の喫水Qが3.22mとなったときに、船舶Fで止水構造物7を堰柱3に寄せていく。
【0041】
船舶Fで止水構造物7を堰柱3に寄せていきながら、第3の空間P3への注水と第3の空間P3からのエア抜きとを継続させると、図9に示されるように、止水構造物7が沈んで床板Bに接触する。このとき、ダイバーTがチェーンブロックNで止水構造物7を引っ張ることによって、止水構造物7が堰柱3の堰柱改良体3eの側面3fに密着する。
【0042】
そして、図10に示されるように、注水ホースM4及び水中ポンプM5による第3の空間P3への注水を更に行って止水構造物7内部を水で満杯とすることにより、止水構造物7が堰柱3の堰柱改良体3eの側面3fに密着した状態で安定する。なお、第2の止水構造物8についても、止水構造物7と同様の方法で堰柱3に設置される。
【0043】
以上、本実施形態に係る可動堰1の改修方法によれば、第1の止水構造物7と第2の止水構造物8とが2本の堰柱3のそれぞれに設置されることによって、上流側から下流側への河川水の流入と下流側から上流側への河川水の流入とが防止されるので、可動堰1の上流側と下流側とを分断することができる。よって、可動堰1の改修時においても、塩分を多く含む下流側の河川水が可動堰1よりも上流側に移動することが防止されるので、可動堰1としての機能を維持させながら、可動堰1の改修工事を行うことができる。
【0044】
また、第1の止水構造物7が既存ゲート2よりも上流側に設置され、第2の止水構造物8が既存ゲート2よりも下流側に設置された後には、第1の止水構造物7と第2の止水構造物8との間の河川水が除去されることにより、第1の止水構造物7と第2の止水構造物8との間に河川水を有しない作業空間Sが形成される。この作業空間S内に既存ゲート2が位置しているので、作業空間Sを既存ゲート2の撤去及び新設ゲートの設置等の作業スペースとして有効利用することができる。
【0045】
また、堰柱3に補強用鉄筋6を挿入して堰柱3を補強しているので、この補強用鉄筋6によって、堰柱3が引っ張られる力に対する抵抗力を大きくすることができ、堰柱3に対する耐震補強を行うことが可能となる。
【0046】
また、堰柱改良体3eを堰柱3の端部3dに形成して堰柱3の形状を変更することによって、第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8を堰柱3に密着させ、作業空間Sへの河川水の漏れを防止することが可能となる。すなわち、第1の止水構造物7と第2の止水構造物8との間に位置する河川水を除去することによって、第1の止水構造物7と第2の止水構造物8に対して外側から河川水の圧力がかかり、この河川水の圧力によって第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8が堰柱3に密着した状態で押し付けられる。従って、第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8による止水を簡単に行うことができる。
【0047】
また、第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8を中空の浮体構造物として船舶Fで曳航させることによって、第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8を現場に運搬する作業を簡単に行うことができる。例えば、現場とは別の場所で第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8を予め製造しておき、可動堰1の施工が始まって第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8が必要となったときに、船舶Fの曳航によって第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8を運搬するといったことが可能となる。
【0048】
また、第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8は、第1及び第2の空間P1,P2への注水によって傾けられ、船舶Fによって堰柱3に押し付けられた後に、第3の空間P3への注水によって河川Rに沈められる。従って、第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8の堰柱3に対する設置作業を簡単に行うことができると共に、第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8を河川Rに沈めることによって、第1の止水構造物7及び第2の止水構造物8が移動してしまう事態を確実に防止することができる。
【0049】
また、堰柱3の補強では、予め用心鉄筋5を露出させ、用心鉄筋5を避けた位置に穴を開けて補強用鉄筋6を挿入させることにより、補強用鉄筋6が用心鉄筋5に干渉する事態を回避することができる。更に、補強用鉄筋6を挿入するための貫通孔と補強用鉄筋6との間にグラウトを充填させることによって、補強用鉄筋6の防錆効果を発揮させることができる。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、河川内構造物が可動堰1であった。しかし、河川内構造物は、可動堰1に限定されず、例えば、固定堰、水門、又はゲートを有する頭首工であってもよい。ここで、水門は、河川Rにおいて、水量調節、取水、排水又は船の運航等のため、必要に応じて開閉可能となっている門又は構造物である。また、頭首工は、例えば河川Rから農業用水を用水路に引き入れる構造物である。
【0052】
また、上記実施形態では、止水構造物7,8が内部に第1〜第3の空間P1〜P3を有していたが、止水構造物の内部構造は上記実施形態に限定されない。例えば、第1の空間P1と第2の空間P2とを統合させてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、船舶Fの曳航によって止水構造物7,8を現場に運搬したが、船舶Fの曳航以外の方法で止水構造物7,8を運搬してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、止水構造物7,8を堰柱3に密着させるため、堰柱3の端部改修を行って堰柱改良体3eを形成したが、別の構成で止水構造物7,8を堰柱3に密着させてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、堰柱3の側面3bに補強用鉄筋6を挿入して堰柱3の補強を行ったが、堰柱3の補強の方法についても適宜変更可能であり、場合によっては堰柱3の補強を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…可動堰(河川内構造物)、2…既存ゲート、3…堰柱、3a…レール部、3b…側面、3d…端部、3e…堰柱改良体、3f…側面、5…用心鉄筋、6…補強用鉄筋、7…第1の止水構造物、8…第2の止水構造物、9…ライナープレート、F…船舶、P1…第1の空間、P2…第2の空間、P3…第3の空間、R…河川。
図1
図3
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