【文献】
E. James Chern,Eddy Current Characterization of Magnetic Treatment of Nickel 200,Materials Evaluation,1993年,Volume 51, Number 2,282
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予め設定された表面特性信号と被検査対象の表面特性との関係を示す値は、表面特性信号と被検査対象との対応関係を示す検量線である請求項1又は2に記載の表面特性評価装置。
前記予め設定された表面特性信号と被検査対象の表面特性との関係を示す値は、所定の表面特性を有する基準試料における表面特性信号を示す基準値である請求項1又は2に記載の表面特性評価装置。
前記磁気センサのコアは、このコアと被検査対象の表面との距離が3.0mm以下になるように配置可能である請求項1乃至4の何れか1項に記載の表面検査特性評価装置。
前記磁気センサのコアは、このコアと被検査対象の表面との距離が0.3mm以下になるように配置可能である請求項1乃至4の何れか1項に記載の表面検査特性評価装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の技術のように、開磁路構造のコイルをショットピーニング処理面の上方に配置する検査装置では、被検査対象とセンサとの間での磁気の減衰、漏洩が大きいため、検出感度及び測定値の再現性が低下するという問題があった。また、周波数を変化させながら交流信号を入力してインピーダンスの周波数応答特性を求める方法を用いるため、被検査対象への磁気の浸透深さが変化し、深さ方向に分布を有する表面特性を正確に把握することができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、熱処理、窒化処理、ショットピーニング処理などの表面処理を行った被検査対象の表面特性を、非破壊で精度よく評価することができる表面特性評価装置及び表面特性評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、ショットピーニング処理を行った鋼材である被検査対象の表面特性を評価する表面特性評価装置であって、磁性体からなるコアと、このコアに巻回されたコイルとを備え、被検査対象の表面の磁気特性を検出する磁気センサと、この磁気センサのコイルに
、単一の周波数の交流電力を供給する電力供給手段と、
交流電力が供給されているコイルから磁気検出信号を入力し、この磁気検出信号をコイルに供給された交流電力と同じ周波数の搬送波により同期検波することにより、磁気センサにより検出された被検査対象の表面の磁気特性に応じた表面特性信号を
検出する信号検出手段と、予め設定された表面特性信号と被検査対象の表面特性との関係を示す値を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された値と、
単一の周波数の交流電力を供給することにより信号検出手段に
よって検出された
単一の表面特性信号とに基づいて、被検査対象の表面特性を算出する表面特性算出手段と、を有し、電力供給手段は磁気センサのコイルに一定の周波数の交流電力を供給し、これにより、磁気センサのコアが励磁されると共に被検査対象の表面と閉磁路を形成するようになっており、磁気センサのコアは、中央の脚部にコイルが巻回されるE字型コアであることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、電力供給手段により交流電力を供給された磁気センサにより被検査対象の表面の磁気特性を検出し、信号検出手段において磁気センサにより検出された被検査対象の表面の磁気特性に応じた表面特性信号を検出し、表面特性算出手段により、記憶手段に記憶されている予め設定された表面特性信号と被検査対象の表面特性との関係を示す値と表面特性信号とに基づいて、被検査対象の表面特性を算出することができる。
磁気センサは、コアが被検査対象の表面と閉磁路を形成するので、被検査対象と磁気センサとの間での磁気の減衰、漏洩を防ぐことができる。これにより、表面特性信号の強度を増大させることができ、磁気センサによる磁気特性の検出感度を向上させることができるので、被検査対象の表面特性を非破壊で精度良く評価することができる。
また、一定の周波数の交流電力をコイルに供給することにより、被検査対象の表面特性を評価するため、被検査対象への磁気の浸透深さが一定とすることができるので、深さ方向に分布を有する表面特性も正確に把握することができる。
さらに、磁気センサのコアは、中央の脚部にコイルが巻回されるE字型コアに形成されており、コイルがコアに挟まれているので、磁気の漏れを効果的に抑制することができ、閉磁路を形成しやすい。
ここで、「表面特性を算出する」とは、残留応力や硬度などの絶対値を算出するのみならず、表面特性信号が基準値に対して所定の範囲にあるか否かを算出することにより表面特性を評価する場合を含む概念である。
【0009】
本発明において、好ましくは、予め設定された表面特性信号と被検査対象の表面特性との関係を示す値は、表面特性信号と被検査対象との対応関係を示す検量線である。
このように構成された本発明によれば、被検査物の表面特性(例えば、窒化処理を施した際の窒化層の厚みや、ショットピーニング処理を施した際の圧縮残留応力の深さ等)を算出することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、予め設定された表面特性信号と被検査対象の表面特性との関係を示す値は、所定の表面特性を有する基準試料における表面特性信号を示す基準値である。
このように構成された本発明によれば、測定した表面特性信号とこの基準値との差分を算出することにより、被検査物の良否判定(例えば、窒化処理を施した際の窒化層の厚みや、ショットピーニング処理を施した際の圧縮残留応力の深さ等が十分であるか否か)を行なうことができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、磁気センサのコアは、被検査対象の表面形状に沿って接触可能である。
このように構成された本発明によれば、磁気センサのコアは、被検査対象の表面形状に沿って接触可能であるため、コアを被検査対象の表面に接触させることにより被検査対象と磁気センサとの間での磁気の減衰、漏洩を防ぐことができる。これにより、表面特性信号の強度を増大させることができ、磁気センサによる磁気特性の検出感度を向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、磁気センサのコアは、このコアと被検査対象の表面との距離が3.0mm以下となるように配置可能である。
このように構成された本発明によれば、被検査対象が強磁性体である場合のように、磁気センサにより検出される磁気特性の検出信号が強い場合には、コアと被検査対象の表面との距離が3.0mm以下になるように配置可能であるので、磁気センサと被検査対象の表面とにより閉磁路を形成し、十分な強度の磁気検出信号を得ることができるので、被検査対象の表面特性を非破壊で精度良く評価することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、磁気センサのコアは、このコアと被検査対象の表面との距離が0.3mm以下となるように配置可能である。
このように構成された本発明によれば、コアと被検査対象の表面との距離が0.3mm以下になるように配置することができるので、磁気特性の検出信号が弱い被検査対象を測定する場合でも、被検査対象の表面特性を非破壊で精度良く評価することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、磁気センサのコアは強磁性体により形成されている。
このように構成された本発明によれば、磁気センサのコアは強磁性体により形成されているので、コア内部の磁束密度を高くすることができ、S/N比(S:被検査対象へ浸透する磁気、N:漏れ磁気)を高くすることができるので、磁気センサによる磁気特性の検出感度を向上させることができる。
【0016】
また、上述した目的を達成するために、本発明は、ショットピーニング処理を行った鋼材である被検査対象の表面特性を評価する表面特性評価装置であって、磁性体からなるコアと、このコアに巻回されたコイルとを備え、被検査対象の表面の磁気特性を検出する磁気センサと、この磁気センサのコイルに
、単一の周波数の交流電力を供給する電力供給手段と、
交流電力が供給されているコイルから磁気検出信号を入力し、この磁気検出信号をコイルに供給された交流電力と同じ周波数の搬送波により同期検波することにより、磁気センサにより検出された被検査対象の表面の磁気特性に応じた表面特性信号を
検出する信号検出手段と、予め設定された表面特性信号と被検査対象の表面特性との関係を示す値を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された値と、
単一の周波数の交流電力を供給することにより信号検出手段に
よって検出された
単一の表面特性信号とに基づいて、被検査対象の表面特性を算出する表面特性算出手段と、を有し、電力供給手段は磁気センサのコイルに一定の周波数の交流電力を供給し、これにより、磁気センサのコアが励磁されると共に被検査対象の表面と閉磁路を形成するようになっており、磁気センサのコアは、コイルが巻回された円柱部と、この円柱部を囲んで配置され且つその一端が基部により閉止された円管部とを備え、円柱部が円管部の軸心に配置され且つ円柱部の一端が円管部の基部に接続されていることを特徴としている。
このように構成された本発明によれば、コイルがコアに囲まれているので、磁気の漏れを効果的に抑制することができ、閉磁路を形成しやすい。また、コアは、製造が容易であり低コストである。
【0017】
上述した目的を達成するため、本発明は、
ショットピーニング処理を行った鋼材である被検査対象の表面特性を評価する表面特性評価方法であって、磁性体からなるコアと、このコアに巻回されたコイルとを備え、被検査対象の表面の磁気特性を検出する磁気センサを準備する工程と、この磁気センサのコイルに
単一の周波数の交流電力を供給し、これにより磁気センサのコアを励磁すると共に被検査対象の表面と閉磁路を形成する工程と、
交流電力が供給されているコイルから磁気検出信号を入力し、この磁気検出信号をコイルに供給された交流電力と同じ周波数の搬送波により同期検波することにより、磁気センサにより検出された被検査対象の表面の磁気特性に応じた表面特性信号を
検出する工程と、予め設定された表面特性信号と被検査対象の表面特性との関係を示す値を記憶する工程と、この記憶された関係と、
単一の周波数の交流電力を供給することにより表面特性信号を検出する工程において検出された
単一の表面特性信号とに基づいて、被検査対象の表面特性を算出する工程と、を有
し、磁気センサのコアは、中央の脚部にコイルが巻回されるE字型コアであることを特徴としている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による表面特性評価装置について説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態による表面特性評価装置1は、被検査対象の表面の透磁率変化や逆磁歪効果などの磁気特性を検出して磁気検出信号を出力する磁気センサ10と、この磁気センサ10に交流電力を供給する電力供給手段20と、磁気センサ10により検出された磁気検出信号から被検査対象の表面の磁気特性に応じた表面特性信号を抽出及び検出する信号検出手段21と、この信号検出手段21により得られた表面特性信号に基づいて、残留応力や硬度などの被検査対象の表面特性を算出する表面特性算出手段22と、予め設定された表面特性信号と信号検出手段により検出された表面特性との関係を示す値、具体的に言えば、表面特性信号と表面特性との関係を示す検量線や硬度や残留応力などの表面特性が既知である基準試料を用いてあらかじめ取得した表面特性信号(基準値)を記憶する記憶手段23と、を備えている。また、表面特性算出手段22により算出された表面特性を表示する表示画面、音声出力装置などの表示手段24を備えている。
なお、表面特性評価装置1は、例えば、増幅器などの他の構成要素を備えることができる。
【0021】
ここで、「表面特性」とは、被検査対象の表面近傍であって、表面処理の影響が及ぶ所定の深さまでの特性、「表面の磁気特性」とは、磁気センサ10により励起された磁気が浸透して検出される被検査対象の所定の深さまでの領域の磁気特性、を示す。
【0022】
信号検出手段21は、磁気センサ10から出力された磁気検出信号を同期検波する同期検波器21aと、同期検波器21aの検波出力から被検査対象の表面の磁気特性に応じた表面特性信号を抽出するローパスフィルタ21bとを備えている。
【0023】
磁気センサ10は、磁気センサ10と被検査対象の表面とにより閉磁路を形成することができる形状となってる。ここでは、このような磁気センサの一例として、E字型のコアを備えた磁気センサについて説明する。E字型のコアは製造が容易であり低コストである。
【0024】
図2に示すように、磁気センサ10は磁性体からなるE字型のコア11と、コイル12とから構成される。コア11は、中央の脚部11aと、脚部11aの両脇に配置された脚部11b及び11cと、被検査対象30の表面30aに対向して配置される基部11dと、で構成されている。脚部11a、11b、11cの一端はそれぞれ基部11dに連結されている。コア11は、基部11dから表面30aに向かってE字型になるように立設されている。コイル12は、脚部11aに巻かれている。
【0025】
ここで、コア11は、好ましくは、強磁性体により形成されており、この場合には、コア11内部の磁束密度を高くすることができ、S/N比(S:鋼材へ浸透する磁気、N:漏れ磁気)を高くすることができるので、磁気センサ10による磁気特性の検出感度を向上させることができる。強磁性体としては、例えば鉄、スーパーマロイ、パーマロイ、珪素鋼、フェライト(Mn−Zn系、Ni−Zn系)、カーボニル鉄ダスト、モリブデン・パーマロイ、センダスト等が挙げられる。
【0026】
磁気センサ10は、脚部11a、11b、11cのそれぞれの先端部が被検査対象30の表面30aに接触可能に形成されている。例えば、被検査対象30が平板の場合には、脚部11a、11b、11cの先端部が同一平面上になるように形成されている。
【0027】
次に、表面特性評価装置1による被検査対象の表面特性評価方法について説明する。ここでは、窒化処理により表面30a近傍に化合物層30bが形成された鋼材を被検査対象30の例として説明する。
【0028】
まず、脚部11a、11b、11cが被検査対象30の表面30aに接触するように磁気センサ10を配置する。なお、本実施形態における「接触」とは、脚部11a、11b、11cの少なくとも1部が被検査対象30の表面30aに接触している場合も含まれる(例えば、該表面30aの形状や磁気センサ10の製造上の誤差等により該脚部11a、11b、11cの全体が該表面30aに密着していない場合、等)。
【0029】
磁気センサ10を被検査対象30の表面30aに接触するように配置することにより、被検査対象30と磁気センサ10との間での磁気の減衰、漏洩を防ぐことができる。これにより、表面特性信号の強度を増大させることができ、磁気センサ10による磁気特性の検出感度を向上させることができる。
【0030】
磁気センサ10と被検査対象30の表面(化合物層30b)とにより閉磁路を形成し、十分な強度の磁気検出信号を得ることができれば、磁気センサ10を被検査対象30の表面30aに接触させなくてもよい。ここで、磁気センサ10と被検査対象30の表面との距離は、3.0mm以下が望ましく、さらに望ましくは0.3mm以下である。磁気検出信号が弱い材質の場合、十分な磁気検出信号の強度を得るために当該距離を0.3mm以下とすることが望ましい。被検査対象30が例えば強磁性体のように磁気検出信号が強い材質の場合は、磁気センサ10により十分な磁気検出信号の強度を得ることができるので、当該距離を3.0mm以下とすることができる。
【0031】
なお、被検査対象物30の形状に合わせて、磁気センサ10の被検査対象物30に対する配置方向を変更するようにしても良い。具体的には、被検査対象物30が曲面、例えば、後述する
図3(D)に示すように、被検査対象物30が円柱形状の場合には、磁気センサ10を円柱形状の長手方向に沿って配置するのがよい。
【0032】
磁気センサ10と被検査対象30の表面との距離は、検量線や基準値を取得した時の距離と同一にしておくことにより、リフトオフによる表面特性信号の変動誤差を排除することができる。
非接触で評価することにより、例えば、被検査対象30を搬送しながら停止させずに測定することができるので、検査に要する時間を短縮することができる。
【0033】
次に、電力供給手段20によりコイル12に所定の周波数の交流電力を供給すると、コア11に交流磁界Hが発生し、周波数に応じて被検査対象30の化合物層30bの所定の深さまで磁気が浸透し、脚部11a、11c及び被検査対象30の化合物層30bの所定の深さまでの領域により閉磁路が形成される。
【0034】
コイル12に鎖交する交流磁界Hは、磁気が浸透した化合物層30bの磁気特性に応じて変化するため、コイル12により化合物層30bの特性(表面特性)に応じた磁気特性を検出することができる。そして、コイル12から、表面特性に応じて変化する透磁率、逆磁歪効果に基づいて生じる磁気量変化を磁気検出信号として信号検出手段21へ出力する。
【0035】
表面特性と磁気特性との関係では、例えば、表面が硬化したり、化合物層が形成されたりすると透磁率は低下する。ショットピーニング処理などにより圧縮の残留応力を付与した場合には、逆磁歪効果により透磁率が低下する。透磁率が低下すると磁気回路における磁気量が低減するため、磁気検出信号の強度が低下する。
【0036】
交流電力の周波数は、被検査対象30の材質、評価する特性、評価する深さなどに応じて適宜設定する。例えば、鋼材の最表層面から100〜200μmまでの深さに対して集中的に磁気を浸透させるように設定することができる。
【0037】
信号検出手段21では、磁気センサ10から入力された磁気検出信号より、被検査対象30の表面30aの磁気特性(化合物層30bの磁気特性特性)に応じた表面特性信号を電圧信号として検出する。
磁気センサ10から入力された磁気検出信号は同期検波器21aに入力され、同期検波器21aにおいて、電力供給手段20によりコイル12に供給された交流電力と同じ周波数の搬送波により検波される。同期検波器21aの検波出力は、ローパスフィルタ21bに出力され、ローパスフィルタ21bでは検波出力から被検査対象30の表面30aの磁気特性に応じた表面特性信号を電圧信号として抽出し、表面特性算出手段22に出力する。
【0038】
表面特性算出手段22は、信号検出手段21により得られた信号に基づいて、残留応力や硬度などの被検査対象30の表面特性を算出する。表面特性算出手段22は、電圧と表面特性との関係として記憶手段23に記憶された検量線に基づいて、硬度、残留応力値などを算出することができる。ここで、被検査対象30の表面特性を管理する値として表面特性信号の電圧値のみで十分な場合には、検量線による表面特性の算出を行わなくてもよい。
【0039】
表面特性算出手段22は、算出された表面特性が所定の範囲内であるか否かにより良否判定を行うことができるようにしてもよい。
【0040】
また、所定の表面特性を示す基準試料の表面特性信号(基準値)と測定した表面特性信号との差分値に基づいて良否判定を行うようにしても良い。この場合、まず、所定の表面特性を示す基準試料を用意してあらかじめ表面特性信号を測定しておき、記憶手段23に基準値として記憶させておく。表面特性算出手段22は、この基準値と測定した表面特性信号との差分値を算出して、表面特性信号が所定の範囲にあるか否かにより良否判定を行う。
【0041】
例えば、被検査対象30の表面の硬度をH±αに管理したいときに、基準試料として硬度Hの試料を用いて基準値を設定し、αに対応する表面特性信号の差分値を閾値として設定し、算出された差分値が閾値を超えた場合に不良と判定することができる。
【0042】
表面特性算出手段22により算出された表面特性、判定結果は、表示手段24に出力され、表示手段24は、画面、音声出力などにより表面特性、判定結果を表示する。例えば、硬度、残留応力などの表面特性の値を表示することができる。また、表面特性信号の電圧値のみを表示することもできる。
【0043】
表面特性算出手段22において、被検査対象の良否判定を行う場合には、警告音や警告灯により不良を警告表示することもできる。
【0044】
表面特性評価装置1によれば、磁気センサ10と被検査対象30の表面30aから所定の深さまでの領域とにより閉磁路を形成するので、被検査対象30と磁気センサ10との間での磁気の減衰、漏洩を防ぐことができる。これにより、表面特性信号の強度を増大させることができ、磁気センサ10による磁気特性の検出感度を向上させることができるので、被検査対象30の表面特性を非破壊で精度良く評価することができる。
【0045】
また、検査中は、一定の周波数の交流電力をコイル12に供給することにより、被検査対象30の表面特性を評価するようにしているので、被検査対象30への磁気の浸透深さが一定とすることができるので、深さ方向に分布を有する表面特性も正確に把握することができる。これにより、窒化層の厚さの評価などを行うことができる。
【0046】
本実施形態では、被検査対象30として窒化処理により化合物層30bが形成された鋼材の表面特性評価について説明したが、硬度、残留応力など表面の磁気特性変化を伴う表面特性も正確に評価することができる。
【0047】
電力供給手段20によりコイル12に供給する交流電力の周波数を変えることにより、磁気の浸透深さを変えることができる。周波数が高いほど磁気の浸透深さが浅くなるため、表面から浅い領域の表面特性を評価することができる。このように交流電力の周波数を変えることにより、残留応力の深さ方向の分布や化合物層の厚さなどを評価することができる。
【0048】
次に、
図3により、磁気センサの変形例を説明する。上述した実施形態では、E字型のコア11を備えた磁気センサを用いたが、これに限定されるものではなく、磁気センサと被検査対象の表面から所定の深さまでの領域とにより閉磁路を形成するならば、各種形状のコアを備えた磁気センサを用いることができる。
【0049】
図3(A)に示すように、コイル42が巻回された円柱部41aと、この円柱部41aを囲んで配置され且つその一端が基部41cにより閉止された円管部41bとを備え、円柱部41aが円管部41bの軸心に配置され且つ円柱部41aの一端が円管部41bの基部に接続されている磁気センサ40を用いることができる。この磁気センサ40によれば、コイル42全周が円管部41bにより囲まれているため、磁気の漏れを効果的に抑制することができ、閉磁路を形成しやすい。
【0050】
また、
図3(B)に示すようなU型コア51にコイル52を巻回した磁気センサ50や
図3(C)に示すようなL型コア61にコイル62を巻回した磁気センサ60などを用いることもできる。
【0051】
更に、
図3(D)に示すように、脚部11a、11b、11cの形状を、被検査対象30の形状に沿って接触可能に構成したコア11を用いた磁気センサ10を用いることもできる。
【0052】
次に、上述した本発明の実施形態による表面特性評価装置の効果を説明する。
(1)本実施形態による表面特性評価装置1によれば、磁気センサ10と被検査対象30の表面30aから所定の深さまでの領域とにより閉磁路を形成するので、被検査対象30と磁気センサ10との間での磁気の減衰、漏洩を防ぐことができる。これにより、表面特性信号の強度を増大させることができ、磁気センサ10による磁気特性の検出感度を向上させることができるので、被検査対象30の表面特性を非破壊で精度良く評価することができる。
また、コイル12に一定の周波数の交流電力を供給することにより、被検査対象30の表面特性を評価するため、被検査対象30への磁気の浸透深さが一定とすることができるので、深さ方向に分布を有する表面特性も正確に把握することができる。
【0053】
(2)磁気センサ10のコア11を被検査対象30の表面30aに接触するように配置することにより、被検査対象30と磁気センサ10との間での磁気の減衰、漏洩を防ぐことができる。これにより、表面特性信号の強度を増大させることができ、磁気センサ10による磁気特性の検出感度を向上させることができる。また、リフトオフによる表面特性信号の変動誤差を排除することができる。
【0054】
(3)被検査対象が強磁性体である場合には、磁気センサ10のコア11を、被検査対象30と非接触、かつ、コア11と被検査対象30の表面30aとの距離が3.0mm以下になるように配置する場合、磁気センサ10と被検査対象30の表面とにより閉磁路を形成し、十分な強度の磁気検出信号を得ることができるので、被検査対象30の表面特性を非破壊で精度良く評価することができる。得られる磁気検出信号が弱い被検査対象を測定する場合でも、コアと被検査対象の表面との距離が0.3mm以下になるように配置することで、被検査対象の表面特性を非破壊で精度良く評価することができる。
また、非接触で評価することにより、例えば、被検査対象30を搬送しながら停止させずに測定することができるので、検査に要する時間を短縮することができる。
【0055】
(4)コア11はフェライトなどの強磁性体により形成した場合、コア11内部の磁束密度を高くすることができ、S/N比(S:鋼材へ浸透する磁気、N:漏れ磁気)を高くすることができ、磁気センサ10による磁気特性の検出感度を向上させることができる。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明の表面特性評価装置による表面特性測定の実施例を示す。
【0057】
(実施例1)
本実施例では、ショットピーニング処理を行った鋼材の表面の残留応力の評価を行った。
【0058】
評価試料として、SCH420Hガス浸炭材の表面にショットピーニング処理を行った表面処理材を用いた。比較材として表面処理を行っていない未処理材を用いた。ショットピーニング処理は、粒子径100μm、硬さHv900〜950の噴射材を用い、噴射圧0.2MPaで行った。
【0059】
残留応力の評価は、E字型コアの磁気センサを表面に接触させて行った。コアは強磁性体のMn−Zn系フェライトからなり、4mm×4mm×3mmの角柱状の脚部が3mm間隔で配置されて形成されている。コイルに供給する交流電流は、20kHz、3.5mAとした。
【0060】
表面特性評価装置により検出された表面特性信号の電圧は、未処理材の0.79Vに対して表面処理材では0.71Vと低下していた。
【0061】
図4に表面処理材における残留応力の深さ方向の分布を示す。残留応力は、表面処理材を電解研磨によって数μmずつ研磨しながらX線応力測定法により測定した。
図5に示すように表面処理材では未処理材に比べ大きな圧縮残留応力が深さ15μmをピークに付与されていることがわかる。
【0062】
SCH420Hガス浸炭材には残留オーステナイトが存在し、ショットピーニング処理によってマルテンサイト変態するため残留オーステナイト量は減少する。
図5に残留オーステナイト量の深さ方向の分布を示す。
図5に示すように表面処理材では未処理材に比べ残留オーステナイト量が大きく減少していることがわかる。
【0063】
圧縮の残留応力が付与された場合、残留オーステナイト量の低減による透磁率変化に比べ、逆磁歪効果による磁気特性変化の方が支配的であり、表面処理材全体の透磁率変化としては減少している。
表面特性信号の電圧変化は透磁率変化と対応しており、本発明の表面特性評価装置により、残留応力の精度良い評価が可能であることが確認された。
【0064】
(実施例2)
本実施例では、熱処理により硬度を変化させた鋼材(SKS3)を用いて、鋼材の硬度に対する表面特性信号の評価を行った。
【0065】
硬度の評価は、E字型コアの磁気センサを表面に接触させて行った。コイルに供給する交流電流は、20kHz、3.5mAとした。
【0066】
図6にビッカース硬度と表面特性信号の電圧(装置出力)との関係を示す。ビッカース硬度が高くなる程、対応して表面特性信号の電圧が低下する傾向が認められ、本発明の表面特性評価装置により、硬度の精度良い評価が可能であることが確認された。
【0067】
(実施例3)
本実施例では、磁気センサを被検査対象に接触させる効果について評価した。
【0068】
評価試料及び条件は実施例1と同じである。コアを接触させず、評価試料表面からの距離が1mmとなるように配置した場合、表面特性信号は0.2Vと十分な信号強度であったが、コアを接触させた場合の表面特性信号は0.8Vと大幅に増大した。これにより、磁気センサのコアを被検出対象に接触させることにより表面特性信号の強度が増大し、検出感度を向上させることができることが確認された。
【0069】
(実施例4)
本実施例では、窒化処置により窒化層を設けた鋼材を用いて、窒化層の厚みに対する表面特性信号の評価を行った。鋼材(SKD61)をNH3雰囲気中で500〜600℃にて加熱することにより、厚みが1.5μm〜10.0μmの窒化層を設けた。
【0070】
評価は、E字型コアの磁気センサを表面に接触させて行った。コイルに供給する交流電流は、20kHz、3.5mAとした。
【0071】
表面特性評価装置により検出された表面特性信号の電圧は、
図7に示すように窒化層の厚みが増加するに従って増加していた。これにより、窒化層の厚みの精度良い評価が可能であることが確認された。