【文献】
HELD, P.,An Absorbance-based Cytotoxicity Assay using High Absorptivity, Water soluble Tetrazolium Salts,BioTek Application Note,2009年 3月20日,URL,http://www.biotek.jp/ja/resources/articles/cytotoxicity-assay.html
【文献】
眞木吉信ほか,唾液によるう蝕活動性迅速判定法としてのResazurin Discの変色特異性,口腔衛生学会雑誌,1983年 7月,第33巻 第2号,第61−74頁,URL,http://www.jstage.jst.go.jp/article/jdh1952/33/2/33_2_169/_pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の方法は、酸化還元指示薬、酸化還元反応促進剤、およびハロゲンの塩を利用することを特徴とする、酸化還元指示薬の呈色を測定する方法である。
【0015】
すなわち、本発明の方法は、酸化還元指示薬の色調変化を測定する方法であって、検査試薬と被検試料とを反応させて色調の変化を測定することを含み、前記検査試薬が、酸化還元指示薬、酸化還元反応促進剤、およびハロゲンの塩を含む、方法である。
【0016】
本発明の方法において、酸化還元指示薬は、NAD(P)Hを電子供与体とする酸化還元反応により呈色する指示薬である。よって、前記検査試薬は、NAD(P)Hの測定試薬として利用できる。
【0017】
同様に、本発明の方法は、被検試料に含まれるNAD(P)Hおよび/または反応系において生成するNAD(P)Hの検出に利用できる。よって、本発明の方法により、例えば、被検試料に含まれる細菌の代謝により生じるNAD(P)Hを検出することができ、それにより、被検試料に含まれる細菌を検出できる。そのような細菌として、具体的には、例えば、う蝕原性菌が挙げられる。
【0018】
すなわち、本発明の方法の一態様は、被検試料中のう蝕原性菌数を測定する方法であって、検査試薬と被検試料とを反応させて色調の変化を測定することを含み、前記検査試薬が、酸化還元指示薬、酸化還元反応促進剤、およびハロゲンの塩を含む、方法である。以下、う蝕原性菌数を測定する方法を例示して、本発明の方法を説明する。なお、以下、酸化還元指示薬、酸化還元反応促進剤、およびハロゲンの塩を総称して「有効成分」という場合がある。
【0019】
本発明において、う蝕原性菌とは、う蝕を引き起こす原因となりうる菌をいう。う蝕原性菌としては、具体的には、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)及びストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)等が挙げられる。う蝕原性菌数が多い程、う蝕リスク、すなわち虫歯に罹患するリスクが高まると考えられる。
【0020】
本発明において、う蝕原性菌数の測定を行う被検試料は特に限定されない。例えば、う蝕原性菌数の測定を行う被検試料としては、口腔から得られる被検試料が挙げられる。口腔から得られる被検試料としては、例えば、安静時唾液(非刺激唾液)、刺激唾液、洗口吐出液が挙げられる。刺激唾液としては、ガムで刺激して採取した唾液が挙げられる。これらの中では、洗口吐出液が好ましい。洗口吐出液は、例えば、精製水を口に含み、吐き出すことにより得られる。具体的には、例えば、3mLの精製水を10秒間口に含み、容器に吐き出せばよい。精製水の容量や、口に含む時間は、必要により適宜変更することができる。得られた被検試料は特段の前処理なく以降の操作に利用できるが、必要に応じて、適宜希釈等の追加操作を行ってもよい。また、う蝕原性菌数の測定を行う被検試料としては、う蝕原性菌の培養液等のう蝕原性菌を含む試料が挙げられる。う蝕原性菌の培養液は、例えば、ATCC等の生物資源バンクから入手できる単離されたう蝕原性菌株の培養液であってよい。
【0021】
本発明において、検査試薬は、酸化還元指示薬を含む。本発明において、酸化還元指示薬とは、NAD(P)Hを電子供与体とする酸化還元反応により呈色する指示薬であれば特に限定されない。NAD(P)Hは、細菌の代謝により生じる。すなわち、被検試料中の細菌、主に、う蝕原性菌を含むグラム陽性菌の生菌数に応じて酸化還元指示薬の還元が進行する。よって、酸化還元指示薬の還元による色調の変化は、う蝕原性菌数を反映する。なお、「NAD(P)Hを電子供与体とする」とは、直接NAD(P)Hにより還元されてもよく、NAD(P)Hにより還元される他の物質(mediator)を介して間接的に還元されてもよい。酸化還元指示薬としては、具体的には、例えば、レサズリン、テトラゾリウム塩、メチレンブルー、およびキシレンブルーが挙げられる。これらの中では、レサズリンが好ましい。これらは単独で含まれていてもよく、任意の組み合わせで含まれていてもよい。
【0022】
レサズリンは、通常は酸化型の青色色素であるレサズリン(極大吸収波長605nm)として存在するが、NAD(P)Hにより還元され、赤紫色色素(極大吸収波長573nm)であるレゾルフィンへと変換される。また、レゾルフィンは、NAD(P)Hによりさらに還元され、無色のハイドロレサズリンへと変換される。
【0023】
テトラゾリウム塩は、NAD(P)Hにより還元され、ホルマザン色素へと変換される。テトラゾリウム塩として、具体的には、例えば、MTT(3−(4,5−dimethyl−2−thiazolyl)−2,5−diphenyl−2H−tetrazolium bromide)、XTT(2,3−bis−(2−methoxy−4−nitro−5−sulfophenyl)−2H−tetrazolium−5−carboxanilide)、MTS(3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−5−(3−carboxymethoxyphenyl)−2−(4−sulfophenyl)−2H−tetrazolium)、WST−1(2−(4−iodophenyl)−3−(4−nitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H−tetrazolium)、およびWST−8(2−(2−methoxy−4−nitrophenyl)−3−(4−nitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H−tetrazolium)が挙げられる。これらの中では、WST−1またはWST−8が好ましい。
【0024】
なお、酸化還元指示薬の吸収スペクトルは指示薬ごとに異なるため、呈色反応の検出条件は用いる酸化還元指示薬に応じて適宜設定すればよい。
【0025】
本発明の方法において、酸化還元指示薬の濃度は、被検試料中のう蝕原性菌数に応じて呈色反応が進行する限り特に限定されず、用いる酸化還元指示薬の種類やその他の成分等の諸条件に応じて適宜設定できる。例えば、試験片を用いてう蝕原性菌数の測定を行う場合には、試験片の作製に用いる試薬含浸液中の酸化還元指示薬の濃度は、好ましくは0.01〜1mM、より好ましくは0.05〜0.3mM、さらに好ましくは0.1〜0.16mMである。
【0026】
本発明において、検査試薬は、酸化還元反応促進剤を含む。本発明において、酸化還元反応促進剤とは、酸化還元反応による酸化還元指示薬の呈色反応を促進する化合物であれば特に限定されない。酸化還元反応促進剤としては、例えば、NAD(P)Hにより還元されて還元型となり、他の物質を還元する機能を有する化合物が挙げられる。還元型の酸化還元反応促進剤により還元される他の物質としては、酸化還元指示薬が挙げられる。酸化還元反応促進剤として、具体的には、例えば、1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルサルフェート(1−メトキシPMS)、フェナジニウムメチルサルフェート(PMS)、フェナジンエトサルフェート(PES)が挙げられる。これらの中では、1−メトキシPMSが好ましい。これらは単独で含まれていてもよく、任意の組み合わせで含まれていてもよい。
【0027】
本発明の方法において、酸化還元反応促進剤の濃度は、被検試料中のう蝕原性菌数に応じて呈色反応が進行する限り特に限定されず、用いる酸化還元反応促進剤の種類やその他の成分等の諸条件に応じて適宜設定できる。例えば、試薬含浸液中の酸化還元反応促進剤の濃度は、好ましくは0.01〜5mMであり、より好ましくは0.05〜1mMであり、さらに好ましくは0.1〜0.6mMである。
【0028】
本発明において、検査試薬は、ハロゲンの塩を含む。本発明において、ハロゲンの塩とは、ハロゲンイオンと任意の陽イオンとがイオン結合した塩をいう。ハロゲンの塩としては、例えば、フッ化物塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩が挙げられる。ハロゲンの塩としては、塩化物塩または臭化物塩が好ましく、塩化物塩がより好ましい。また、ハロゲンの塩としては、ハロゲンとアルカリ金属との塩が好ましい。アルカリ金属としては、ナトリウムまたはカリウムが好ましい。ハロゲンの塩として、具体的には、塩化ナトリウム塩化カリウム、臭化ナトリウム、または臭化カリウムが好ましく用いられる。これらは単独で含まれていてもよく、任意の組み合わせで含まれていてもよい。
【0029】
本発明の方法において、ハロゲンの塩の濃度は、被検試料中のう蝕原性菌数に応じて呈色反応が進行する限り特に限定されず、用いるハロゲンの塩の種類やその他の成分等の諸条件に応じて適宜設定できる。例えば、試薬含浸液中のハロゲンの塩の濃度は、好ましくは1〜1000mM、より好ましくは5〜500mM、特に好ましくは50〜200mMである。
【0030】
ハロゲンの塩が含まれることにより、例えば、呈色反応のバックグラウンドの低下が期待できる。具体的には、例えば、酸化還元指示薬がレサズリンであり、酸化還元反応促進剤が1−メトキシPMSである場合、レサズリンを単独で用いる場合と比較して、レサズリンと1−メトキシPMSとを混合して用いる場合には、レサズリンの青色が赤色側にシフトするが、さらにハロゲンの塩を加えることで、レサズリンの色調を青色側に戻すことができる。上述の通り、レサズリン(青色)はNAD(P)Hによりレゾルフィン(赤紫色)へと還元されるため、レサズリンの青色が赤色側にシフトすることは、呈色反応のバックグラウンドの増大を意味し、また、色調の変化可能な範囲が当該シフトの分だけ制限されることを意味する。よって、ハロゲンの塩によりレサズリンの色調が青色側に戻ることは、呈色反応のバックグラウンドの低下を意味し、また、色調の変化可能な範囲を拡張できることを意味する。したがって、本発明の方法においては、ハロゲンの塩が含まれることにより、ハロゲンの塩が含まれない場合と比較して、色調変化を明瞭に測定できる。よって、ハロゲンの塩は、色調変化に基づくう蝕原性菌数の測定に効果的である。
【0031】
また、被検試料中のう蝕原性菌数に応じて呈色反応が進行する限り、検査試薬はその他の成分を含んでいてもよい。
【0032】
検査試薬は、例えば、炭素源を含んでいるのが好ましい。炭素源は、う蝕原性菌の代謝を活性化できるよう、う蝕原性菌が資化可能なものが好ましい。炭素源としては、糖類や有機酸が挙げられ、糖類が好ましい。糖類として、具体的には、スクロースやグルコースが挙げられ、特にスクロースが好ましい。炭素源が含まれる場合、試薬含浸液における炭素源の濃度は、1〜1000mM、より好ましくは5〜500mM、特に好ましくは20〜250mMである。
【0033】
また、検査試薬は、例えば、pH緩衝剤を含んでいてもよい。pH緩衝剤として、具体的には、例えば、リン酸バッファー、HEPESバッファー、PIPESバッファー、MESバッファー、Trisバッファー、GTA広域バッファーが挙げられる。pH緩衝剤が含まれる場合、試薬含浸液におけるpH緩衝剤の濃度は、好ましくは10〜1000mM、より好ましくは20〜500mM、特に好ましくは50〜150mMである。反応液のpHは、例えば、通常pH4.0〜9.0であり、好ましくは5.5〜8.0である。
【0034】
また、検査試薬は、例えば、バインダーを含んでいてもよい。バインダーとして、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。バインダーが含まれる場合、試薬含浸液におけるバインダーの濃度は、好ましくは0.01〜5%、より好ましくは0.05〜3%、さらに好ましくは0.1〜1%である。なお、本発明において、バインダーの濃度の「%」は、特記しない限りw/v%を意味する。
【0035】
また、検査試薬は、例えば、う蝕原性菌以外の代謝を阻害する薬剤を含んでいてもよい。そのような薬剤として、具体的には、例えば、バシトラシン等のう蝕原性菌以外の細菌の増殖抑制に利用される薬剤や、亜テルル酸カリウム等のグラム陰性菌の増殖を抑制する薬剤が挙げられる。
【0036】
これらの成分はいずれも、それぞれ単独で含まれていてもよく、任意の組み合わせで含まれていてもよい。
【0037】
本発明の方法は、試験片を用いて実施できる。本発明の方法に用いられる試験片(以下、本発明の試験片ともいう)は、酸化還元指示薬、酸化還元反応促進剤、およびハロゲンの塩を含む検査試薬を保持する試験片である。本発明の試験片は、NAD(P)Hの測定に用いるための試験片であってよく、その一態様は、う蝕原性菌数の測定に用いるための試験片である。以下、う蝕原性菌数の測定に用いるための試験片を例示して、本発明の試験片を説明する。
【0038】
本発明の試験片は、好ましくは、支持担体と、当該支持担体に担持される吸収性担体を備え、当該吸収性担体が検査試薬を保持する。検査試薬を保持する吸収性担体部分に被検試料を点着することで、被検試料中のう蝕原性菌数に応じて呈色反応が進行する。
図1には、支持担体10と、支持担体10に担持される吸収性担体11とを備える、本発明の試験片の一実施形態である試験片1を例示する。
図1(A)は、試験片1の平面図であり、
図1(B)は、試験片1の正面図である。
【0039】
吸収性担体としては、検査試薬を保持でき、且つ酸化還元指示薬の還元に基づく色調の変化の測定が可能である限りにおいて、いかなる担体でも使用できる。すなわち、吸収性担体としては、例えば、紙、セルロース、多孔質セラミック、化学繊維、合成樹脂製織布、及び不織布が挙げられ、濾紙またはガラス繊維濾紙であるのが好ましい。濾紙またはガラス繊維濾紙としては、例えば、市販のものを好適に用いることができる。
【0040】
支持担体としては、フィルム、シート、またはプレート等の平面状担体を好ましく用いることができる。支持担体は、プラスチック製や紙製であってよい。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及びポリ塩化ビニルなど種々のプラスチックを用いることができる。支持担体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製担体が好ましい。また、支持担体は複合材であってもよく、ポリエステルとポリエチレンの複合材やポリエチレンとアルミを積層した複合材、その他種々の複合材が利用できる。支持担体の厚さは、10〜500μmであるのが好ましく、50〜300μmであるのがより好ましい。
【0041】
本発明の試験片において、う蝕原性菌数測定用の検査試薬を保持する吸収性担体は、少なくとも1つ備えられていればよく、2またはそれ以上備えられていてもよい。
【0042】
また、本発明の試験片は、う蝕原性菌数測定用の検査試薬を保持する吸収性担体に加えて、う蝕原性菌数以外のパラメータ測定用の吸収性担体を備えていてもよい。さらに、本発明の試験片は、う蝕原性菌数等のパラメータ測定用の吸収性担体に加えて、任意の試験紙、例えばパラメータの測定には用いられないダミーの吸収性担体を備えていてもよい。本発明の試験片が複数の吸収性担体を備える場合、各吸収性担体は、用いられる検出機器の種類等に応じて適宜配列すればよい。検出機器としては種々の反射率測定機器を好適に使用することができるが、例えば、検出機器としてポケットケムUA PU−4010(アークレイ株式会社製)を使用する場合には、各吸収性担体は支持担体上に直線状に整列しているのが好ましい。
【0043】
本発明の試験片を製造する方法は、特に限定されず、本発明の試験片は、例えば、検査試薬を予め保持させた吸収性担体を支持担体に担持させることにより製造することができる。試薬を吸収性担体に保持させる手法は特に限定されず、例えば、吸収性担体を試薬溶液に浸漬してもよく、吸収性担体に試薬溶液を点着または塗布してもよい。上記のうち、吸収性担体を試薬溶液に浸漬するのが好ましい。なお、試薬溶液とは、検査試薬を含有する溶液である。試薬を吸収性担体に保持させる工程は、複数回の浸漬ないし点着または塗布等の工程を含んでいてもよい。試薬を保持させた吸収性担体は、乾燥させて以降の工程に用いることができる。試薬を保持させた吸収性担体を、必要に応じて切断し、支持担体に担持させることにより、本発明の試験片を製造できる。また、本発明の試験片は、例えば、支持担体に予め担持させた吸収性担体に検査試薬を保持させることにより製造されてもよい。この場合には、吸収性担体に試薬溶液を点着または塗布することにより、試薬を吸収性担体に保持させ、その後乾燥させるのが好ましい。本発明の試験片において、吸収性担体を支持担体に担持させる方法は、特に制限されず、例えば、通常用いられる接着手法を好適に用いることができる。例えば、粘着テープにより貼付してもよく、接着剤により貼付してもよい。
【0044】
本発明の方法によれば、温調を行うことなくう蝕原性菌数の測定が可能である。すなわち、反応温度は室温であってよい。具体的には、例えば、反応温度は、通常15℃〜37℃であり、15℃〜30℃であってもよい。なお、本発明の方法においては、適宜、温調を行ってもよい。
【0045】
本発明の方法において、反応時間は、反応温度や試薬成分等の諸条件に応じて適宜設定することができる。反応時間は、例えば、通常1〜10分である。例えば、反応時間は5分であってもよい。
【0046】
本発明の方法においては、測定された色調の変化に基づき、う蝕原性菌数を測定できる。なお、「う蝕原性菌数を測定する」とは、被検試料中のう蝕原性菌数の値自体を算出することに限られず、被検試料中のう蝕原性菌数の程度を、少なくとも2段階、好ましくは3またはそれ以上の段階に区分して判定することであってもよい。具体的には、例えば、被検試料中のう蝕原性菌数が、「少ない」、「中程度」、または「多い」の3段階のいずれに該当するかを判定すればよい。複数段階に区分する場合の具体的な菌数は、臨床データや、用いる被検試料の態様に応じて適宜設定すればよい。一例を挙げると、3mLの精製水で10秒間洗口することで得られる洗口吐出液中のう蝕原性菌数として、10
6CFU/mL未満の場合に「少ない」、10
6CFU/mL以上で10
7CFU/mL未満の場合に「中程度」、10
7CFU/mL以上の場合に「多い」と判定してもよい。
【0047】
本発明の方法により測定された色調の変化、う蝕原性菌数の値、またはう蝕原性菌数の程度は、被検試料を採取した被検者のう蝕リスクの判定に利用してもよい。例えば、色調の変化、う蝕原性菌数の値、またはう蝕原性菌数の程度に基づいて、被検試料を採取した被検者のう蝕リスクを、少なくとも2段階、好ましくは3またはそれ以上の段階に区分して判定してもよい。具体的には、例えば、被検試料を採取した被検者のう蝕リスクが「低い」、「中程度」、または「高い」の3段階のいずれに該当するかを判定すればよい。本発明の方法においては、そのようにう蝕リスクを判定することも、「う蝕原性菌数を測定する」ことの一態様であるものとする。なお、本発明の方法により測定された色調の変化、う蝕原性菌数の値、またはう蝕原性菌数の程度は、単独でう蝕リスクの判定に利用されてもよく、その他のパラメータと組み合わせて利用されてもよい。
【0048】
色調の変化に基づくう蝕原性菌数の測定は、菌数が既知のう蝕原性菌標準試料を用いてう蝕原性菌数と色調の変化との相関データを取得し、当該相関データを利用して行えばよい。相関データとは、例えば検量線である。また、う蝕リスクの判定を行う場合には、さらに、う蝕リスクを含めた相関データを設定し利用すればよい。
【0049】
本発明の方法において、色調の変化とは、酸化還元指示薬の還元に基づく特定の波長における吸光度の増減および/または極大吸収波長のシフトをいう。すなわち、本発明の方法においては、酸化還元指示薬の一部または全部が還元されることにより、還元された酸化還元指示薬の量および/または比率に応じて、特定の波長における吸光度の増減および/または極大吸収波長のシフトが生じる。
【0050】
本発明の方法において、色調の変化は、光学的な検出機器により測定できる。色調の変化は、特定の波長における吸光度の増減として測定されるのが好ましい。
【0051】
特定の波長における吸光度の増減は、通常、当該特定の波長の光を、呈色部位、すなわち被検試料を点着した吸収性担体部分に照射し、当該特定の波長における一定時間の経過による反射率の変化値を取得することにより測定できる。特定の波長における吸光度の増加は、当該特定の波長における反射率の減少として測定できる。特定の波長における吸光度の減少は、当該特定の波長における反射率の増加として測定できる。一定時間とは、被検試料の点着直後から任意の時間が経過するまでであってもよく、被検試料の点着後のある時点からさらに任意の時間が経過するまでであってもよい。一定時間の長さは、反応時間等の諸条件に応じて適宜設定することができるが、例えば、通常1〜10分であり、2〜8分であってもよい。被検試料の点着後のある時点とは、反応時間等の諸条件に応じて適宜設定することができるが、例えば、被検試料の点着の5秒後〜3分後であるのが好ましく、10秒後〜2分後であるのがより好ましい。具体的には、例えば、反応時間を5分として、反応開始後1分〜5分までの4分間における反射率変化を測定してもよい。反射率の変化値は、反射率を少なくとも2回測定し、測定値の差として算出できる。反射率は、3またはそれ以上の回数測定されてもよい。一定時間の経過による反射率の変化値は、複数回測定された反射率に基づき、反射率の変化速度として算出されてもよい。
【0052】
また、被検試料の点着直後または被検試料の点着後のある時点での反射率を測定する必要がない場合には、反射率の測定回数を減らすことができる。例えば、被検試料の点着直後または被検試料の点着後のある時点での反射率を被検試料中のう蝕原性菌数によらず一定の値であると仮定した場合には、それから任意の時間が経過した時点で1回のみ反射率の測定を行い、測定値と当該一定の値との差として反射率の変化値を算出することも可能である。当該一定の値は、反射率の変化値を算出する際に決定されていればよい。なお、被検試料の点着直後または被検試料の点着後のある時点での反射率を被検試料中のう蝕原性菌数によらず一定の値であると仮定した場合には、それから任意の時間が経過した時点での反射率とう蝕原性菌数との相関データを利用することで、反射率の変化値自体を算出せずにう蝕原性菌数を測定することも可能である。このように反射率の変化値自体は算出されずにう蝕原性菌数が測定される場合には、反射率を測定すること自体を、「吸光度の増減を測定する」こととみなしてよく、また、本発明の方法における「色調の変化を測定する」こととみなしてよい。すなわち、このように反射率の変化値自体は算出されずにう蝕原性菌数が測定される場合も、色調の変化に基づいてう蝕原性菌数を測定することに含まれる。
【0053】
吸光度の増減は、少なくとも1つの測定用の波長に基づき測定されればよいが、少なくとも1つの測定用の波長を含む2またはそれ以上の波長に基づいて測定されてもよい。例えば、2またはそれ以上の測定用の波長を利用してもよく、測定用の波長と、バックグラウンドの影響を除くための参照用の波長とを個別に設定し利用してもよい。吸光度の増減を測定するために用いる光源の波長は、用いる酸化還元指示薬や検出機器に応じて適宜設定できる。測定用の波長は、用いる酸化還元指示薬の酸化型での極大吸収波長であってもよく、還元型での極大吸収波長であってもよく、それ以外の波長であってもよい。例えば、酸化還元指示薬としてレサズリンを用いる場合には、測定波長を630〜635nm、参照波長を750〜760nmとすることができる。
【0054】
極大吸収波長のシフトは、一定時間の経過前後における極大吸収波長を比較することにより測定できる。極大吸収波長は、複数の波長の光を、呈色部位、すなわち被検試料を点着した吸収性担体部分に照射し、各波長における反射率を測定することにより特定できる。極大吸収波長のシフトを測定するための条件は、複数の波長の光を用いて極大吸収波長を特定すること以外は、特定の波長における吸光度の増減を測定する場合と同様であってよい。
【0055】
なお、色調の変化を測定するために取得される上記のようなデータ、すなわち、特定の波長における反射率や、それから算出される反射率の変化値、極大吸収波長等を総称して、以下、「反射率データ」という場合がある。
【0056】
光学的な検出機器としては、特に限定されないが、例えば、尿試験紙用あるいは血液試験紙用の反射率測定機器を使用することができる。尿試験紙用の反射率測定機器としては、例えば、ポケットケムUA PU−4010(アークレイ株式会社製)を使用することができる。ポケットケムUA PU−4010を用いる場合には、二波長反射測光法による測定を行うことができる。ポケットケムUA PU−4010において、測光部では、マルチLEDより波長の異なる2種類の光、すなわち測定波長の光、及び参照波長の光を呈色部位に照射し、その反射率に基づき色調の変化を測定することができる。
【0057】
具体的には、例えば、酸化還元指示薬としてレサズリンを用いた試験片を用い、検出機器としてポケットケムUA PU−4010(アークレイ株式会社製)を使用する場合には、室温、5分の反応時間で、測定波長を635nm、参照波長を760nmとして測定を行うことができる。この条件では、レサズリンの還元反応の進行は、635nmの吸光度の減少として、すなわち635nmの光を照射した際の反射率の増加として検出される。反応時間を5分とした場合には、例えば、反応開始後1分〜5分までの4分間における反射率変化を測定すればよい。
【0058】
本発明の方法は、さらに、例えば、測定された色調の変化、算出されたう蝕原性菌数の値、判定されたう蝕原性菌数の程度、および/または判定されたう蝕リスクの程度を出力する工程を含んでいてもよく、また、これらの測定・判定結果に基づきコメントを出力する工程を含んでいてもよい。コメントとは、例えば、測定・判定結果を説明するものである。コメントの例としては「唾液中のムシ歯菌は少なく、良好な状態です。」が挙げられる。出力は、例えば、反射率測定機器に設けられた表示部に表示することで行うことができる。表示部は、文字や画像等の情報を表示できるものである限り、特に限定されず、例えばLEDバックライトを備えた液晶ディスプレイが好適に用いられる。表示は、文字、図形、記号、色彩又はこれらの結合等の任意の形式により行われる。なお、出力の態様は、医師、歯科衛生士、又は被検者等が出力された情報を認識できる限り特に制限されず、例えば、印刷して出力してもよく、音声によって出力してもよい。また、表示部における視覚的な表示、印刷による出力、及び音声による出力等を任意に組み合わせて情報の出力を行ってもよい。
【0059】
本発明の方法において、反射率データの取得、う蝕原性菌数の算出等の演算、および測定・判定結果やコメントの出力等の各工程は、単一のコンピュータにより実行されてもよく、物理的に独立した複数のコンピュータにより実行されてもよい。例えば、取得した反射率データを電気通信回線等を利用して他の装置に送信し、当該他の装置でう蝕原性菌数の算出等の演算を行ってもよい。また、測定・判定結果を電気通信回線等を利用して他の装置に送信し、当該他の装置で当該測定・判定結果やそれに基づくコメント等の情報を表示してもよい。そのような様態としては、例えば、WEB上で反射率データを入力して、演算用のサーバーに反射率データを送信し、当該演算用サーバーでう蝕原性菌数の算出等の演算を行い、さらに測定・判定結果をWEB上で表示する様態が例示できる。また、電気通信回線等を利用したデータの送受信に基づく課金システムを採用してもよい。そのような課金システムとしては、例えば、利用者がWEBブラウザ上で測定・判定結果を表示させた時点で、あるいは、測定・判定結果を含むファイルのダウンロードを完了した時点で課金するシステムが挙げられる。課金は、表示・ダウンロード従量制、及び日、週、または月など期間に応じて課金する定額制等の任意の方式で実施することができる。
【0060】
以上、う蝕原性菌数を測定する方法を例示して本発明の方法を説明したが、本発明の方法は、う蝕原性菌数の測定に限られず、被検試料に含まれるNAD(P)Hおよび/または反応系において生成するNAD(P)Hの検出を利用する任意の方法に利用できる。例えば、本発明の方法は、NAD(P)Hを直接的あるいは間接的に生成する酵素反応の検出に利用することができる。なお、本発明の方法は、NAD(P)Hの測定自体を目的としてもよく、そうでなくともよい。う蝕原性菌数を測定する方法およびそれに関連する検査試薬や試験片等に関する上述の説明は、本発明の方法の他の態様にも準用できる。例えば、本発明の方法は、その態様に応じて、測定された色調変化に基づいてNAD(P)Hの量または程度を算出する工程を含んでいてもよく、測定された色調変化に基づいてNAD(P)H量と関連する検出対象の量または程度を算出する工程を含んでいてもよい。
【0061】
また、本発明の方法においては、測定の目的等の諸条件によっては、上記のような試験片を用いる態様に限られず、その他の任意の態様で呈色反応を進行させてもよい。例えば、本発明の方法においては、上記検査試薬を含む容器内で呈色反応を進行させてもよい。具体的には、例えば、被検試料と上記検査試薬とを任意の容器内に入れることで、被検試料に含まれるNAD(P)Hおよび/または容器内において生成するNAD(P)Hの量に応じて呈色反応を進行させることができる。容器としては、特に制限されないが、例えば、チューブや試験管が挙げられる。
【0062】
また、本発明の方法においては、測定の目的等の諸条件によっては、上記のような検出機器を用いる態様に限られず、その他の任意の態様で呈色反応を検出してもよい。例えば、本発明の方法においては、肉眼で色調の変化を測定してもよい。しかしながら、通常、ハロゲンの塩による呈色反応のバックグラウンドの低下効果を有効に利用するためには、光学的な検出機器を用いて定量的に色調変化を測定するのが好ましく、また、色調変化の定量的な測定結果に基づき、定量的にう蝕原性菌数の測定等を行うのが好ましい。
【0063】
また、本発明の方法においては、測定の目的等の諸条件によっては、最終的に酸化還元指示薬、酸化還元反応促進剤、およびハロゲンの塩が有効成分として利用される限り、反応開始時から被検試料およびそれら全ての有効成分が反応系に含まれていてもよく、そうでなくともよい。例えば、被検試料においてNAD(P)Hの生成が十分に進行した後、検査試薬を反応系に添加してもよい。また、例えば、各有効成分を異なるタイミングで反応系に添加してもよい。なお、ハロゲンの塩による呈色反応のバックグラウンドの低下効果を得るため、通常、ハロゲンの塩は、被検試料、酸化還元指示薬、および酸化還元反応促進剤が反応系にそろうまでに反応系に添加されるのが好ましく、あらかじめ酸化還元指示薬や、酸化還元指示薬と酸化還元反応促進剤との混合物に添加しておくのがより好ましい。
【0064】
また、本発明において、検査試薬は、各有効成分を含む限り任意の態様で提供されてよい。例えば、検査試薬は、上記のように試験片に保持されて提供されてもよく、任意の容器に入れて提供されてもよい。また、検査試薬は、固体状、液体状、ゲル状等の任意の形態で製剤化されて提供されてもよい。製剤化にあたっては、製剤担体として通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、又は溶剤等の添加剤を使用することができる。検査試薬は、そのまま、あるいは水、生理食塩水、緩衝液等を用いて希釈、分散、又は溶解し、本発明の方法に利用できる。このように希釈、分散、又は溶解等した場合にも、本発明の検査試薬の範囲に含まれることは言うまでもない。なお、各有効成分は、混合されて検査試薬に含まれていてもよいし、混合されず別個に検査試薬に含まれていてもよい。本発明の検査試薬における各有効成分の濃度は、測定の目的等の諸条件によって適宜設定すればよいが、例えば、反応系において被検試料と混合された液体状態で、上述の試薬含浸液における好ましい濃度となるような濃度であってよい。
【0065】
また、本発明の検査試薬は、NAD(P)H測定用、またはう蝕原性菌数測定用等のキットとして提供されてよい。キットは、本発明の検査試薬を含む限り特に制限されない。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
[実験例1]増感剤の決定
本実験例では、レサズリンを酸化還元指示薬として用いる際に、増感剤として利用できる化合物のスクリーニングを行った。
【0068】
<試薬含浸液処方>
レサズリンナトリウム(東京化成製)42mg、1M リン酸緩衝液(pH6.0)120mL、スクロース(ナカライテスク製)12gを蒸留水1100mLで溶解した基本組成に対し、表1に示す濃度となるように各検討成分を添加し、試薬含浸液を調製した。
【0069】
【表1】
【0070】
<試験片作製>
上記試薬含浸液に濾紙を含浸したのち、50℃で15分間乾燥させ、試験紙を得た。作製した各試験紙を5mm×300mm幅にカットし、これを100mm×280mmの粘着剤を貼付したPETフィルムに貼付した。この試験紙貼付PETフィルムを5mm幅にカットし、100mm×5mmの試験片を得た。なお、以下、試薬を保持する試験紙部分を「試薬部分」という場合がある。
【0071】
<測定方法>
上記試験片の試薬部分に、濃度が10
9CFU/mLとなるように蒸留水で懸濁したストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans、ATCC25175)の菌液を10μL滴下して、室温に置いた。各試験紙の測定波長635nm/参照波長760nmにおける1分後から5分後の反射率変化(Δ4分反射率ともいう)を、反射率測定機器を用いて測定した。
【0072】
<結果>
結果を
図2に示す。検討の結果、基本組成に1−メトキシPMSを加えることによってΔ4分反射率が顕著に上昇することが明らかとなった。
【0073】
[実験例2]ベース反射率低下剤の決定
本実験例では、レサズリンを酸化還元指示薬として、1−メトキシPMSを増感剤として用いる際に、ベース反射率(すなわち反射率のバックグラウンド値)を低下させることができる化合物のスクリーニングを行った。
【0074】
<処方>
レサズリンナトリウム(東京化成製)42mg、1M リン酸緩衝液(pH6.0)120mL、スクロース(ナカライテスク製)12g、1−メトキシPMS(同仁化学製)242mgを蒸留水1100mLで溶解した基本組成に対し、表2に示す濃度となるように各検討成分を添加し、試薬含浸液を調製した。
【0075】
【表2】
【0076】
<試験片作製>
上記試薬含浸液に濾紙を含浸したのち、50℃で15分間乾燥させ、試験紙を得た。作製した各試験紙を5mm×300mm幅にカットし、これを100mm×280mmの粘着剤を貼付したPETフィルムに貼付した。この試験紙貼付PETフィルムを5mm幅にカットし、100mm×5mmの試験片を得た。
【0077】
<測定方法>
まず、各試験片のベース反射率の測定を行った。上記試験片の試薬部分に蒸留水を10μL滴下して、室温に置いた。各試験紙の測定波長635nm/参照波長760nmにおける1分後の反射率を、反射率測定機器を用いて測定し、ベース反射率とした。
【0078】
さらに、別途、各試験片のう蝕原性菌に対する反応性の評価を行った。上記試験片の試薬部分に、濃度が10
9CFU/mLとなるように蒸留水で懸濁したストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans、ATCC25175)の菌液を10μL滴下して、室温に置いた。各試験紙の測定波長635nm/参照波長760nmにおける1分後から5分後の反射率変化(Δ4分反射率)を、反射率測定機器を用いて測定した。
【0079】
<結果>
ベース反射率の測定結果を
図3に示す。検討の結果、基本組成にKClあるいはNaClを添加することによって、著しくベース反射率が低下することが明らかとなった。
【0080】
さらに、反応性の評価を行なった結果を
図4に示す。増感剤である1−メトキシPMSのみを加えた場合と比較して、KClあるいはNaClを併用することによりΔ4分反射率がさらに上昇し、反応性が格段に向上することが明らかとなった。
【0081】
[実験例3]吐出液を用いた検討
本実験例では、洗口吐出液を被検試料として用いて、KClまたはNaClの添加効果を検討した。
【0082】
<処方>
レサズリンナトリウム(東京化成製)42mg、1M リン酸緩衝液(pH6.0)120mL、スクロース(ナカライテスク製)12gを蒸留水1100mLで溶解した基本組成に対し、表3に示す濃度となるように1−メトキシPMSとKClあるいはNaClを添加し、試薬含浸液を調製した。
【0083】
【表3】
【0084】
<試験片作製>
上記試薬含浸液に濾紙を含浸したのち、50℃で15分間乾燥させ、試験紙を得た。作製した各試験紙を5mm×300mm幅にカットし、これを100mm×280mmの粘着剤を貼付したPETフィルムに貼付した。この試験紙貼付PETフィルムを5mm幅にカットし、100mm×5mmの試験片を得た。
【0085】
<測定方法>
12名のボランティアの協力を得て、3mLの精製水で10秒間洗口し、容器に吐き出すことで得られた吐出液を被検試料とした。上記試験片の試薬部分に、各被検試料を10μL滴下して、各試験紙の測定波長635nm/参照波長760nmにおける1分後から5分後の反射率変化(Δ4分反射率)を、反射率測定機器を用いて測定した。また、被検試料中のう蝕原性菌数の測定をプレート培養法(MSB培地)にて行なった。
【0086】
結果を
図5、
図6、
図7に示す。基本組成に1−メトキシPMSのみを添加した対照群と比較して、さらにKClまたはNaClを添加することにより、Δ4分反射率の向上が認められた。よって、ストレプトコッカス・ミュータンスの菌液を用いた検討と同様に、吐出液を用いた検討においてもKClまたはNaClの有効性が示された。また、KClまたはNaClの添加群では、1−メトキシPMSの濃度が0.4mM〜0.6mMのいずれの場合においても同程度の高いΔ4分反射率を示すことが明らかとなった。このような高いΔ4分反射率により、例えば、吐出液中のう蝕原性菌数の大小を3段階に区分して判定することができる。
【0087】
[実験例4]各種塩類の添加効果の検討
本実験例では、洗口吐出液を被検試料として用いて、各種塩類の添加効果を検討した。
【0088】
<処方>
レサズリンナトリウム(東京化成製)42mg、1M リン酸緩衝液(pH6.0)120mL、スクロース(ナカライテスク製)12gを蒸留水1100mLで溶解した基本組成に対し、表4に示す濃度となるように1−メトキシPMSと各種塩類を添加し、試薬含浸液を調製した。
【0089】
【表4】
【0090】
<試験片作製>
上記試薬含浸液に濾紙を含浸したのち、50℃で15分間乾燥させ、試験紙を得た。作製した各試験紙を5mm×300mm幅にカットし、これを100mm×280mmの粘着剤を貼付したPETフィルムに貼付した。この試験紙貼付PETフィルムを5mm幅にカットし、100mm×5mmの試験片を得た。
【0091】
<測定方法>
12名のボランティアの協力を得て、3mLの精製水で10秒間洗口し、容器に吐き出すことで得られた吐出液を被検試料とした。上記試験片の試薬部分に、各被検試料を10μL滴下して、各試験紙の測定波長635nm/参照波長760nmにおける1分後から5分後の反射率変化(Δ4分反射率)を、反射率測定機器を用いて測定した。
【0092】
結果を表5および
図8に示す。基本組成に1−メトキシPMSのみを添加した対照群と比較して、さらにKBrまたはNaBrを添加することにより、Δ4分反射率の向上が認められた。
【0093】
【表5】