(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104172
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】自動車の組立て方法
(51)【国際特許分類】
B62D 65/02 20060101AFI20170316BHJP
B23P 21/00 20060101ALN20170316BHJP
【FI】
B62D65/02
!B23P21/00 303A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-545072(P2013-545072)
(86)(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公表番号】特表2014-501660(P2014-501660A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2011005455
(87)【国際公開番号】WO2012084087
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年9月5日
【審判番号】不服2015-11308(P2015-11308/J1)
【審判請求日】2015年6月16日
(31)【優先権主張番号】102010055959.8
(32)【優先日】2010年12月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・グレーヴェナー
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ハービスライティンガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・クレヴェット
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・シュタルク
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド・ヴィルト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ツェルン
【合議体】
【審判長】
和田 雄二
【審判官】
森林 宏和
【審判官】
氏原 康宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−257452(JP,A)
【文献】
特開2009−298515(JP,A)
【文献】
特開平02−182584(JP,A)
【文献】
特開昭63−265786(JP,A)
【文献】
特開平09−24870(JP,A)
【文献】
特開昭62−214061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D65/00-65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシ(16)が少なくとも主組立てライン(46)に到達する前にホイール(72)が取付けられる、自立するシェル(42)を有する自動車の組立て方法であって、
前記主組立てライン(46)は、前記自動車の内装品および前記自動車の外殻を形成する要素(52)を装備する工程であり、
前記シャーシ(16)に4つの前記ホイール(72)を取付けた後に、前記主組立てライン(46)の全体に沿って前記自動車は自身の駆動機構によって、自身の前記ホイール(72)で移動可能であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記シャーシ(16)を自動車の前記シェル(42)に配置した後に、前記シャーシ(16)に前記ホイール(72)が取付けられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホイール(72)の上での自動車の移動を、前記主組立てライン(46)の制御装置を介して行うことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の自動車の組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車の一連の製造では、シェルの製造後、及びそれに続くそれぞれのシェル−車体の塗装後に、シェル−車体には最終組立ての主組立てラインでそれぞれの内装品が装備されることは一般に知られている。その際、車体は適宜の搬送及び移送技術によって主組立てラインを通って案内される。その際に、大型モジュールとして、インストルメントパネル、座席システム、センターコンソール、ペダル、ハンドル、及び内装トリムが組立てられる。通常は主組立てラインでの内装の最終組立てと並行して、シャーシと駆動系との事前組立てが行われ、これらの構成部品は通常は別個の搬送技術によって組立てられ、移送される。主組立てライン又は最終組立てラインで乗用車の内装品が装備された後、現在では通常は、自動車のシェルが、別個の搬送装置上に配置され、関連するシャーシ及び駆動系に連結される、いわゆる合体が行われる。次いで、主組立てラインを通過した後で初めて、それぞれの自動車にホイールが取付けられる。
【0003】
特許文献1から、前部、中央部、及び後部モジュールからなるモジュール式に構成される乗用車が公知である。これらの自動車は、別個の組立てラインに沿って組立てられる。その際、後部モジュールは、ホイールが事前組立てされた後部フレームを有している。このモジュールは、事前製造され、その後、別のモジュールと連結されて乗用車として形成される。
【0004】
特許文献2は、モジュール式に構成されたトラックのフレームを示している。その前部モジュールには、種々の取付け部品が既に事前組立てされている。前部モジュールは、完全に事前組立てされ、次いでホイールを支持するメインフレームに連結できるように形成されている。特許文献3は、ホイールが事前組立てされたフレーム状前部モジュールを有する同類のコンセプトを示している。
【0005】
更に、特許文献4には、バスを組立てる組立てラインが示されている。この場合、ホイールが事前組立てされたフレーム構造の自立するアンダーフロアモジュールが事前組立て後にバスの非担持構造に連結される。
【0006】
特許文献5は、乗用車用の自立するアンダーフロアモジュールと、これに取付けられたホイールを有する同類のコンセプトを示している。特許文献6は、全く同類のアンダーフロアモジュールを示している。
【0007】
特許文献7は、エンジンと、前輪用のホイールハブをも含む車両のサスペンションとを担持し、車体と共通にこれらの部品に連結される補助フレームを有する車両を示している。
【0008】
更に、特許文献8には、それ自身の組立てラインで事前組立てされ、次いで車両に固定される自動車用のホイールモジュールを開示している。
【0009】
特許文献9も、非担持車体上部構造が、既に駆動部品及びホイールを含む自立する下部構造に載置される自動車の組立てコンセプトを示している。
【0010】
内装品を装備するために、シェルが対応する搬送及び移送技術によって主組立てラインを通って案内されなければならないだけではなく、シャーシ及び駆動系もそれぞれの事前組立てラインを通らなければならないため、自動車の組立てには搬送及び移送技術に全体として著しい経費がかかる。これは投資コストだけではなく、更に組立て工場のための広いスペースを要する。更に、既存の搬送及び移送技術による組立てには比較的柔軟性がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 278 479 A2号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2004 038 487 A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0230665 A1号明細書
【特許文献4】米国特許出願第4,527,158 A号明細書
【特許文献5】国際公開第02/055364 A1号パンフレット
【特許文献6】欧州特許出願公開第0240 470 A1号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1 454 817 A1号明細書
【特許文献8】国際公開第03/054500 A2号パンフレット
【特許文献9】米国特許第5 090 105 A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、搬送及び移送技術の経費を大幅に低減できる、冒頭に記載の種類の自動車の組立て方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により上記の課題は、請求項1の特徴を有する自動車の組立て方法によって解決される。本発明の有用で重要な改良を含む有利な実施形態は、その他の請求項に記載されている。
【0014】
特に搬送及び移送技術の経費を大幅に低減できる冒頭に記載の方法を提供するため、本発明により、少なくとも主組立てラインの終端に到達する前に、車両ホイールが取付けられるようにされる。その際、自動車は、シャーシにホイールを取付けた後、外部動力により、又は自動車自体の駆動機構により移動される。
【0015】
言い換えると、それによって本発明により、自動車の重量を受け、場合によっては自動車を前方に移動する必要がある搬送及び移送技術の少なくとも一部を節減するために、従来は一般的であったよりも大幅に早い時点(主組立てラインの後)で、自動車にホイールを取付けるようにされる。それによって、自動車はホイールの取付け後にそれ自身の重量を担持し、少なくとも走行できるので、主組立てラインでの別の手順で少なくとも自動車の重量を受ける必要はもはやない。それによって、それに伴う連鎖効果と共に搬送及び移送技術の大幅な節減が可能になるだけではなく、その結果、組立ての柔軟性が大幅に高まる。したがって、例えば、自動車のオフテークを極めて柔軟に早期に実施することが可能になり、場合によっては次の組立てが行われる前に一時保管することもできる。そのためには適宜の保管室が必要なだけである。
【0016】
その際、自動車はホイールが組立てられた後、代替の外部動力によって、又は独自の駆動機構によって移動される。この場合、外部動力とは、外部の動力を用いて自動車−例えば無人搬送システム(FTS)−を使用して前方に移動されるが、自身のホイールで進行する。それによって少なくとも、車両の重量の大部分を受けなければならない搬送及び移送技術をなくすることが可能になる。
【0017】
その代替として、自動車を独自の駆動機構で移動させることも考えられる。勿論そのためには、自動車の駆動機構が既に動作可能である必要がある。電子駆動の場合は、車両のバッテリ、及びステアリング又はそれぞれの制御機器への配線がなされなければならない。内燃機関の場合は、主組立てラインを通って搬送するためにFTSを使用することができる。接続された搬送技術がなくても可能であるため、完全自動の車両移動が得られる。
【0018】
その場合、好ましい実施形態は、少なくとも主組立てラインの前にシャーシが車両ホイールを備えており、好ましくは、通常はいわゆる合体の目的で通過するシェルに車両を連結した直後、又はすぐにシェルにシャーシを取付けるようにする。これは好ましくは、シェルに内装品を取付ける前に行われるので、自動車は、好ましくは内装が行われる主組立てライン全体を通過している間にそれ自身のホイールで走ることができる。
【0019】
最後に、自動車の移動が組立てライン、特に主組立てラインの制御装置を介してホイールで行われることが有利であることが判明している。それによって、自動車を外部の制御信号を介して組立てラインの流れに適応させることができる。
【0020】
本発明のその他の利点、特徴及び詳細は、好ましい実施形態の以下の記載から、及び図面を参照して明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】いわゆる合体の目的で対応する自動車のそれぞれの対応するシェルと連結される前に、いわゆる合体準備の目的で互いに連結され、事前組立てされ、自動車の合体に続いてホイールが嵌め込まれ、対応する自動車のそれぞれのシャーシ、それぞれの駆動系及びフロアモジュールを事前組立てする組立てラインの概略斜視図である。
【
図2】
図1に示す組立てライン内での駆動系及びシャーシの事前組立ての概略斜視図である。
【
図3】
図1に示す組立てライン内でのフロアモジュールの事前組立ての概略斜視図である。
【
図4】
図1に示す組立てライン内での、シャーシ及び駆動系のそれぞれの対応するフロアモジュールとの合体準備の概略斜視図である。
【
図5】
図1に示す組立てライン内での、自動車のそれぞれのシャーシと対応するシェル及び駆動系、又は対応するフロアモジュールとの合体の概略斜視図である。
【
図6】自動車にホイールがそこで取付けられる、合体後の
図1の組立てラインの組立てステーションの概略斜視図である。
【
図7】自動車のそれぞれのシェルに内装品がそこで装備される、
図1の組立てラインの後続の組立てラインの組立てステーションの概略斜視図である。
【
図8】組立用に内装品のそれぞれのユニット及び構成部品が準備されている、主組立てラインのそれぞれの組立てステーションの更なる部分斜視図である。
【
図9】内装品に続いて外殻を形成する要素が備えられる、シャーシ、駆動系、及び内装品が備えられた自動車のそれぞれのシェルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、自動車を組立てるための、以下により詳細に説明する主組立てラインの前に位置する組立てラインの概略斜視図である。この組立てライン10を、
図2から6を参照して更に説明する。
【0023】
先ず
図2を参照すると、対応する自動車のそれぞれの駆動系14及びそれぞれのシャーシ16の事前組立てを示す組立てライン10の第1の領域12が見て取れる。ここで
図2は、領域12を概略部分斜視図で示している。
【0024】
図2から分かるように、組立てライン10の領域12は、自動車のそれぞれの駆動コンセプトに応じて備えられるそれぞれ異なる駆動機構又は駆動系14を供給する装置18を含んでいる。それぞれの駆動機構又は駆動系14の供給装置18の後方には、それぞれのシャーシ16の前軸又は後軸用のそれぞれの供給装置19、20が見て取れる。前軸及び後軸の他に、更にシャーシ要素又は構成部品を供給することができる。
【0025】
図2から分かるように、駆動系14及びシャーシ16の個々の構成部品は、組立てライン10上で移送されるそれぞれの補助キャリヤ22上に配置されている。これは対応するロボット24を用いて行われる。
【0026】
駆動系14及びシャーシ16のそれぞれの構成部品は、供給装置18〜20上に順次供給され、製造される自動車に対応して割り当てられるそれぞれの補助キャリヤ22上に位置している。その際、駆動系14及びシャーシ16の個々の構成部品の順次の配置及び選択は、自動車のそれぞれの駆動コンセプトに応じて行われる。
【0027】
図3を参照すると、特に組立てライン10の第2の領域26を示す更なる概略部分斜視図から分かるように、フロアモジュール28の事前組立てが明らかになる。このフロアモジュール28は、装備品として複数のユニット32を配置可能なボトムシェル30を含んでいる。これらのユニット32は、対応する自動車のそれぞれの駆動コンセプトに応じて変形形態に特有のものであり、又は変形形態によって左右される。その際、ユニット32は、個々の部品又は要素としても理解でき、アセンブリ又はサブアセンブリとしても理解できる。例えば、ボトムシェル30が、空気管などと同様に、熱シールド、油圧管、又は燃料管をも具備することが考えられる。同様に、ボトムシェル30が、対応する駆動コンセプトに応じたエネルギ貯蔵装置、例えばタンク、バッテリなどを具備することが考えられる。自動車の対応する駆動コンセプトに応じて使用される対応する制御機器をボトムシェル30に取付けることができる。フロアモジュール28を完成するため、例えばケーブルハーネス、特にメインケーブルハーネスなどの電気ユニット32もボトムシェル30に固定することができる。
【0028】
その際、個々のユニット32は、例えばロボット33を使用してボトムシェル30に取付けられる。この場合は、ユニット32が例えば順次供給される棚34が示されている。
【0029】
図4を参照すると、組立てライン10の第3の領域36の概略部分斜視図が示されている。この第3の領域では、第1の領域12で事前組立てされた駆動系14並びにシャーシ16と、第2の領域26で事前組立てされたフロアモジュール28とのいわゆる合体準備が行われる。その際、駆動系14とシャーシ16とを担持する補助キャリヤ22が下方から案内され、上側では対応する移送装置37を介してフロアモジュール28が上から載置されることが分かる。このようにして、合体準備により、駆動系14、シャーシ16、及びフロアモジュール28の事前組立て配置がなされ、これは自動車のそれぞれの変形形態、又は自動車のそれぞれの駆動コンセプトに適応される。
【0030】
図4には更に、例えば駆動系14、シャーシ16、及びフロアモジュール28の対応する構成部品及びユニット32の連結をそこで行うことができる更に別の組立てステーション38が示されている。個々の構成部品とユニット32との連結の他に、例えば配管又はタンクなどのエネルギ貯蔵装置の充填も可能である。更に、例えば電気制御機器を起動させることができる。それによって合体準備後に、個々の構成部品又はユニット32が好適に供給される。
【0031】
図5には組立てライン10の第4の領域40が示されており、ここではそれぞれのシェル42がいわゆる合体の目的で、事前に第3の領域36で合体準備の目的で互いに組み合わされたそれぞれ関連する駆動系14、シャーシ16、及びフロアモジュール28に連結される。そのためにシェル42は、対応してセットされたフロアモジュール28用の対応する凹部を有している。駆動系14及びシャーシ16、並びにフロアモジュール28も同様に自動車のシェル42に連結される。シェル42と連結後に、駆動系14、シャーシ16、及びフロアモジュール28を担持する役割を果たした補助キャリヤ22は、再び第1の領域12に戻される。ここで、このシェル42は一般に乗用車の自立車体、又は自動車の自立構造であることに留意されたい。
【0032】
前述のように、駆動コンセプトのそれぞれの変形形態は、駆動系14、シャーシ16、及びフロアモジュール28の対応する構成によって実施されるので、シェル42は基本的に変形なしに形成される。このことは、駆動コンセプトにより必要な変形形態は、駆動系14、シャーシ16、及びフロアモジュール28の事前組立てに少なくとも実質的に前送りされることを意味する。
【0033】
図6には、自動車のシャーシ16にホイール72が取付けられる合体の直後の組立てライン10の別の組立てステーション44が示されている。それによって、駆動系14及びシャーシ16とシェル42との合体の直後、又はやや後に、車両の重量がもはや搬送及び移送装置によって受けられなくてもよい状態に達する。それどころか、いまや自動車は独自のホイール72で進行する。
【0034】
図7及び8は、組立てライン10に接続された主組立てライン46の斜視図をそれぞれ示す。それぞれの自動車が独自のホイール72上にあることが分かる。この場合は、従来の組立て方法とは異なり、合体に続いて先ずシェル42への内装品48の据付けが行われる。この内装品48には特に、インストルメントパネル、座席システム、内装トリム、センターコンソール並びに例えばペダル、ハンドル、又はその他の別の装備などの複数の別の装置の据付けが含まれる。更に
図8は、例えば対応する座席システム又はインストルメントパネルが組立てられるそれぞれの組立てステーション50を示している。
図7は更に、主組立てライン46で例えばシェル42のガラスの取付け(グレージング)を行うことができることを示している。
【0035】
最後に
図9は、内装品48が既に実装された自動車のシェル42の概略斜視図を示す。内装品48の他に、フロントウインドウ及びリアウインドウも嵌め込まれていることが分かる。
【0036】
主組立てラインでの別の方法プロセスで、自動車のシェル42には内装品48を装備した後、自動車の外殻を形成する複数の要素52が取付けられる。これらの要素は、可動ドア又はフード又はフラップだけではなく、フェンダ、ルーフモジュール、前端及び後端モジュールなどの別の外板部品、又は別の外部部品であってよい。その際、自動車は好ましくは、シェル42の全体が対応する外板要素52によって外張りされるように形成される。すなわち、それによってシェル42が合体のために送られる前に、シェル42には防食を施すだけでよく、塗装は行わなくてもよいという利点が得られる。すなわち、領域全体が可視部分ではなく、外板要素52によって覆われるため、これは節約になる。
【0037】
自動車の機能要素の調整は、主組立てライン46内で既に好適に行うことができるため、特に、主組立てライン46の終端領域の範囲が縮小される。したがって、例えばシャーシの調整、ヘッドライトの調整又は較正、又は運転支援システム、特にシャーシ支援システムは、主組立てライン46から事前組立てに移すことができる。それによって、例えば合体準備と関係して、又は合体の前後に機能要素の対応する調整を、事前組立ての領域で主組立てライン46の前で検査することができる。同様に、自動車の自主的な移動が可能であることにより、対応するシャーシダイナモメータの上や、あるいは降雨試験の領域に移動することが可能である。
【0038】
したがって、全体として、ホイール72を取付けた後、個々の自動車は、少なくとも車両の重量がもはや搬送及び移送装置によって受けられなくてもよいため、自発的に移動可能である。それぞれの自動車は、シャーシ16とシェル42との合体の直後にホイール72を取付けているので、自動車は主組立てライン46の全体に沿って、又は少なくともほぼ完成した内装品48の組立て中に、自身のホイール72で移動することができる。
【0039】
その際、原則として、自動車の自発的な加速、減速又はステアリングが可能であるため、既に自動車固有のシステムが起動されると考えられる。しかし、その代替として、少なくとも搬送及び移送システムを使用する限り、このシステムはそれぞれの自動車を移動するための外部の駆動力として役立つことも考えられよう。したがって、例えば、FTSを援用して自動車を自身のホイール72で移動させることも考えられよう。
【0040】
その際、ホイール72の上での自動車の移動は、例えば制御装置を介して行われ、制御信号の他に、場合によっては電力を供給することもできる。
【0041】
その際、それぞれの自身のホイール72に車両重量が受容されることで、搬送及び移送技術を使用しなくて済むだけではなく、更には組立て全体を柔軟に設計できる。例えば、個々の自動車をオフテークし、それによって柔軟な組立てを可能にすることが考えられる。そのためには適宜のスペースが必要なだけである。
【0042】
自動車を自身のホイールで移動させることによって更に、車両を組立て現場から搬出することも極めて簡単に可能である。これは例えばリモコン機器を使用して遠隔操作で行うことができる。
【0043】
更に、自動車をホイール72の上で移動させることによって、車両をより高い位置に容易に運ぶことができるので、車両の下部領域の組立て作業を例えば床下で行うことができる。そのために必要なのは、車体を持ち上げるための搬送技術の一部として、高価なリフトを備えなくても、自動車を自発的に持ちあげる組立てラインに傾斜又はその類似物を備えるだけでよい。あるいは、ピットを介して個々の車両を移動させることで、組立て作業を床下で行うことも可能である。これらの簡単に実現できる手段によって、労働者の人間工学的環境が改善される。