(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
架橋剤を含有せず、カルボキシル基を有さず、かつ水酸基或いはピロリドン基を有するアクリル系粘着剤を粘着剤基剤とし、そこにフリー体のロピニロールを配合した経皮吸収貼付剤において、該アクリル系粘着剤の配合量が50〜95重量%、該ロピニロールの配合量が3〜20重量%であり、且つ結晶化防止剤を含有しないことを特徴とする経皮吸収貼付剤。
架橋剤を含有せず、カルボキシル基を有さず、かつ水酸基或いはピロリドン基を有するアクリル系粘着剤からなる粘着剤基剤とし、そこにフリー体のロピニロールを配合した経皮吸収貼付剤において、該アクリル系粘着剤の配合量が50〜95重量%、該ロピニロールの配合量が3〜20重量%であり、さらに経皮吸収促進剤を0.1〜10重量%配合し、且つ結晶化防止剤を含有しないことを特徴とする経皮吸収貼付剤。
経皮吸収促進剤が、クエン酸トリエチル、グリセリン、モノラウリン酸ソルビタン、オレイルアルコール、およびミリスチン酸イソプロピルから選択される1種又は2種以上である、請求項2〜4のいずれかに記載の経皮吸収貼付剤。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の基本的態様は、特定のアクリル系粘着剤基剤にロピニロールのフリー体を配合した経皮吸収貼付剤である。
本発明が提供する経皮吸収貼付剤中のロピニロールのフリー体の配合量は、製剤化が可能な限り特に限定はないが、好ましくは、粘着剤層の組成全体の重量を基準として、3〜30重量%、より好ましくは7〜20重量%、さらに好ましくは8〜15重量%の範囲で配合するのがよい。
ロピニロールのフリー体の配合量が3重量%未満であると、経皮吸収性が不十分であり、また、30重量%以上であると貼付剤の物性を損なうばかりか、経済的にも不利で好ましくない。
【0019】
本発明が提供する経皮吸収貼付剤の主基剤であるアクリル系粘着剤は、水酸基若しくはピロリドン基を有しており、かつカルボキシル基を有していないアクリル系粘着剤が好ましい。
また、本発明においては、これらのアクリル系粘着剤には架橋剤を配合していないものが好ましい。架橋剤の配合は、主薬成分であるロピニロールの分解反応を促進し、主薬含量の低下を招き、分解生成物の生成を促進する傾向にある。しかしながら、架橋剤を配合しなければ粘着剤層の物性を保つことができない場合には、該薬物と架橋剤との反応を抑制する手段を講じる必要性がある。
かかる点からみれば、本発明にあっては、使用するアクリル系粘着剤として、架橋剤を含有しないもの、あるいは架橋剤を配合しなくても凝集力が高められたアクリル系粘着剤を使用するのが好ましい。
【0020】
カルボキシル基を有さず、水酸基を有するアクリル系粘着剤は、例えば、炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び水酸基を含有するモノマーからなるものが使用される。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては特に限定されず、例えば(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。水酸基を有するモノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
そのようなカルボキシル基を有さず、水酸基を有するアクリル系粘着剤として、例えば、アクリル酸2―エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2−ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2−ヒドロキシエチルコポリマーが挙げられ、具体的には、例えばナショナルスターチ&ケミカル社のDuro-takアクリル系粘着剤の中で水酸基を含有しているグレード(Duro-tak 87-2510、Duro-tak 87-2516、Duro-tak 87-4287、Duro-tak 87-2287等)が好ましく使用できる。その中でも、架橋剤を配合しなくても十分に高い凝集力を示す粘着剤であるDuro-tak 87-4287が、より好ましい。
【0022】
また、本発明で使用するカルボキシル基を有さず、ピロリドン基を有するアクリル系粘着剤としては、例えば炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びピロリドン基を持つ単量体からなるものが使用される。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては特に限定されず、例えば(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合するピロリドン基を持つ単量体としては、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン等が挙げられる。好ましい粘着剤としては、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体が挙げられる。
【0023】
アクリル系粘着剤として水酸基若しくはピロリドン基を有していないアクリル系粘着剤を使用した場合には、薬効成分としてのロピニロールのフリー体の高い溶解性を得ることができない。
また、カルボキシル基を有しているアクリル系粘着剤を使用した場合は、粘着剤から薬効成分であるロピニロールが放出せず、高い経皮吸収性を得ることができない。
【0024】
本発明が提供する経皮吸収貼付剤において、使用するアクリル系粘着剤としては、その平均分子量(MW)が300,000以上のものが好ましく、より好ましくは400,000以上である。
また、使用するアクリル系粘着剤の含有量としては、粘着剤層の組成全体の質量を基準として、30〜98重量%が好ましく、より好ましくは、50〜95重量%である。
【0025】
さらに本発明の経皮吸収貼付剤においては、経皮吸収促進剤を配合することができる。経皮吸収促進剤としては、例えばラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル(以下、IPMと略する)、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、トリアセチン、乳酸セチル、乳酸ラウリル、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、サリチル酸エチレングリコール、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セタノール、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ラウロマクロゴール、HCO−60、ラウリン酸ジエタノールアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、グリセリン、モノラウリン酸ソルビタンおよびクロタミトンを挙げることができる。
その中でも、クエン酸トリエチル、グリセリン、オレイルアルコール、モノラウリン酸ソルビタン、およびミリスチン酸イソプロピルから選択される1種あるいは2種以上を使用するのが好ましく、オレイルアルコール及びミリスチン酸イソプロピルから選択される1種あるいは2種以上がさらに好ましい。
【0026】
経皮吸収促進剤の配合量としては、粘着剤層の組成全体を基準として0.1〜20重量%であり、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは2〜10重量%である。吸収促進剤の配合量が0.1重量未満の場合は、経皮吸収性が向上せず、反対に経皮吸収促進剤の配合量が20重量を越えて多く配合される場合には、製剤の物性が低下する。
【0027】
本発明が提供する経皮吸収貼付剤においては、抗酸化剤が好ましく配合される。そのような好ましい抗酸化剤としては、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、濃縮混合トコフェロール、トコフェロール、酢酸トコフェロール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス、アスコルビン酸などが挙げられるが、特にBHTやトコフェロールが好ましい。
その配合量としては、粘着剤層の組成全体の質量を基準として、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%である。
【0028】
また、本発明が提供する経皮吸収貼付剤にあっては、必要に応じて、軟化剤、溶解剤等の液状成分を配合することも可能である。
軟化剤としては、例えばポリイソブチレン、ポリブテン、ラノリン、ヒマシ油、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ラッカセイ油、プロセスオイル、エキステンダーオイル、および流動パラフィン等が挙げられる。
溶解剤としては、例えばミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、およびグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。
【0029】
その他、本発明の経皮吸収貼付剤には、他に影響を与えなければ通常の外用製剤に用いられる各種の基剤成分が使用できる。
かかる基剤成分としては特に限定されないが、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の水溶性高分子;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物;酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、シリカ類、酸化マグネシウム、酸化鉄、ステアリン酸等の無機充填剤等が挙げられる。
さらに必要に応じて防腐剤、清涼剤、殺菌剤、着香剤、着色剤等を添加することができる。
【0030】
本発明が提供する経皮吸収貼付剤の支持体としては、特に限定されるものではなく、伸縮性または非伸縮性のものが用いられる。
具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の合成樹脂で形成されたフィルムもしくはシートまたはこれらの積層体、多孔質膜、発泡体、織布および、不織布、あるいは紙材を用いることができる。
【0031】
また、剥離ライナーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、紙等を用いることができ、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
剥離ライナーは、剥離力を至適にするため、必要に応じてシリコン処理をしてもよい。
【0032】
さらに、本発明の経皮吸収貼付剤においては、脱酸素剤を共存させてもよい。脱酸素剤としては鉄を原料としているものや、非鉄金属を原料として用いているものが好ましく用いられる。脱酸素剤の共存方法としては、包装袋に脱酸素剤を直接封入する方法、あるいは包装袋に脱酸素フィルムを積層した形態のものを使用する方法が挙げられる。
【0033】
また本発明の経皮吸収貼付剤に関しては、薬物の簡易的な安定性試験法であるCrystal seeding法(CS法)を使用し、比較的簡単に粘着基剤中でのロピニロールの安定性を確認することができる。CS法とは、粘着基剤に薬物の結晶を散布し、その薬物の結晶の成長度合いを観察することにより、薬物の粘着基剤中での安定性を短期的に判定する試験方法である。
【0034】
さらに本発明の貼付剤に関しては、CS法の結果から、薬物の製剤中での長期的な安定性を予測することができる。すなわちCS法を行った結果、散布薬物の粘着基剤中への溶解が見られるか、あるいは散布薬物の結晶の成長が見られない場合は、長期保存条件においても薬物の結晶化の可能性は低いと判断でき、CS法により薬物の結晶の成長が見られる場合には、長期保存条件において製剤中の結晶析出の可能性が懸念される。
【0035】
CS法は具体的には、以下の方法により行われ、下記に示す評価基準により製剤中の薬物結晶の安定性が評価される。
【0036】
<CS法の試験方法>
貼付剤の剥離フィルムを剥がし、支持体側をスライドガラスに固定して供試試料とするか、あるいは貼付剤の粘着剤部分を採取し、それをスライドガラスに貼付し、供試試料とする。
次に、供試試料の粘着剤部分にロピニロール原薬を直接散布する。散布する薬物の粒子径は特に制限されないが、薬物散布結晶の生成を明確にするために0.1〜5,000μmのものを使用することが好ましい。
散布直後の薬物結晶を、電子顕微鏡(例えば、KEYENCE社製、デジタルマイクロスコープVHX-600等)で観察し、画像データ処理装置により電子顕微鏡から入力される画像データを出力する。
出力された画像データを基に、粘着剤単位面積(S)当たりの、各薬物散布結晶の占める総面積(上部からの投影面積:DSB)の比であるDSB/Sを求める。
【0037】
供試試料を、室温で3〜10日間放置後、散布直後と同様に、電子顕微鏡で観察し、同様に粘着剤単位面積(S)当たりの、各薬物散布結晶の占める総面積(上部からの投影面積:DSA)の比であるDSA/Sを求める。
【0038】
得られたDSB/S及びDSA/Sの値から、以下に示すように、それぞれの供試試料における薬物散布結晶の成長度合いを示す係数(C)を求める。
(C)=(b)/(a)
【0039】
[上記式において、
(a):試験開始直後(薬物結晶散布直後)における、
粘着剤の一定面積(S)の表面に散在する薬物散布結晶の総面積(上部からの投影面積:DSB)の比;すなわち、DSB/S
【0040】
(b):試験終了後(薬物結晶散布後、10日間経過後)における、
粘着剤の一定面積(S)の表面に散在する薬物散布結晶の総面積(上部からの投影面積:DSA)の比:すなわち、DSA/S
を示す。]
【0042】
評価基準は、上記で得られた(C)の値により評価する。
(i)(C)≦1の場合:
粘着剤上に散布した薬物結晶の成長が見られないか、または結晶が小さくなっていることを示す。
(ii)(C)≧1の場合:
粘着剤上に散布した薬結晶の成長が進行していることを示す。
【0043】
以下に、本発明が提供する経皮吸収貼付剤の製造方法の一例について説明する。
具体的には、混合機を用いて、アクリル系粘着剤、ロピニロールのフリー体、及びその他抗酸化剤等の各成分を、適当な溶媒に溶解させ、粘着剤溶液を得る。用いる溶媒としては、酢酸エチル、エタノール、メタノールなどが使用でき、成分に応じて適宜選択し、1種単独、あるいは2種以上を混合して組み合わせて使用することができる。
【0044】
次いで、かくして得られた粘着剤溶液を剥離フィルム又は支持体上に伸展して溶剤を乾燥除去後、支持体又は剥離フィルムと貼り合わせ経皮吸収貼付剤を得ることができる。
なお、粘着剤層の厚みとしては、30〜200μm程度が好ましく、更には50〜100μm程度が好ましい。
30μm未満であると、薬物放出の持続性が乏しくなり、200μmより厚くなると、粘着剤層中に含有される薬物の量が増え、製造コストが高くなる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例及び比較例に基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
実施例1:
溶媒として酢酸エチルを用いて、ロピニロールフリー体及びアクリル系粘着剤(アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2−ヒドロキシエチルコポリマー;製品名:Duro-tak 87-4287)とを混合機を用いて混合して、粘着剤溶液を得た。
この粘着剤溶液を離型処理されたフィルム上に展延し、溶剤を乾燥除去させて、厚さ60〜70μmの粘着剤層を形成し、その上に支持体をのせて、粘着剤層を圧着転写させることにより、貼付剤を得た。
なお、各成分の配合量(単位:重量%)、配合比は、表1に示すとおりである。
【0047】
実施例2〜5:
表1に示す組成(単位:重量%)により、実施例1の製法に従い、実施例2〜5の各貼付剤を得た。
【0048】
参考例1〜2:
表1に示す組成(単位:重量%)により、実施例1の製法に従い、参考例1及び2の貼付剤を得た。
【0049】
【表1】
【0050】
注1)Duro-tak 87-4287:アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2−ヒドロキシエチルコポリマー(架橋剤を含まず、水酸基を有し、かつカルボキシル基を有さないアクリル系粘着剤)
注2)アクリル酸エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体:架橋剤を含まず、ピロリドン基を有し、かつカルボキシル基を有さないアクリル系粘着剤
注3)Duro-tak 87-2516:架橋剤を含み、水酸基を有し、かつカルボキシル基を有さないアクリル系粘着剤
【0051】
実施例6〜13:
表2に示す組成(単位:重量%)により、実施例1の製法に従い、実施例6〜13の貼付剤を得た。
【0052】
【表2】
【0053】
注1)Duro-tak 87-4287:アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2−ヒドロキシエチルコポリマー(架橋剤を含まず、水酸基を有し、かつカルボキシル基を有さないアクリル系粘着剤)
【0054】
比較例1、2:
各成分を表3に示す配合(単位:重量%)とした以外は、実施例1と同様にして各比較例の貼付剤を作製した。
【0055】
比較例3:
国際公開WO2009/107478号公報の実施例3の処方構成及び製法を参考に、比較例3の貼付剤を作製した。その処方構成(単位:重量%)を表3に示した。
【0056】
【表3】
【0057】
注4)官能基を全く含まないアクリル系粘着剤
注5)Duro-tak 87-2194:カルボキシル基を有するアクリル系粘着剤
注6)Duro-tak 87-900A:水酸基およびカルボキシル基ともに有さないアクリル系粘着剤
【0058】
試験例1:Crystal seeding法(CS法)による製剤中における薬物の安定性の検討
実施例1〜13、参考例1〜2、および比較例1〜2の製剤中における薬物の安定性を、上記したCS法により検討した。試験方法および試験結果の評価基準を以下に示し、試験結果を表4および表5に示した。
【0059】
CS法による試験方法は、上記したCS法に従った。
試験試料は、各実施例、及び各比較例の粘着剤部分をそれぞれ採取し、それぞれ各スライドガラスに貼付し、供試試料とした。
顕微鏡による観察は、デジタルマイクロスコープ(型式:KEYENCE VHX-600、倍率:400倍)で、それぞれ観察し、粘着剤上に散布するロピニロール原薬は、粒子径:5〜3,000μmのものを使用し、薬物散布後10日後を試験終了日とした。
各表においては、評価基準に基づき結晶の成長度合いを示す係数(C)について、以下の○、×で示した。
○:(C)≦1である場合
×:(C)≧1である場合
【0060】
上記試験結果より、本発明の経皮吸収貼付剤である実施例1〜13の粘着剤にあっては、結晶の成長は確認されず、粘着基剤中でロピニロールが安定的に溶解していることが確認できた。一方、比較例1および参考例2の製剤は、試験終了後に結晶の成長が確認でき、粘着基剤中でロピニロールが不安定な状態で存在していることが示唆された。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
試験例2:長期保存製剤中における薬物の結晶析出の確認
上記の実施例並びに比較例で得た各貼付剤について、2.5×2.5cmに裁断し、最内層がポリアクリロニトリルである包装袋に個別包装し、室温にて6ヵ月間保存した。その後保存試料について、包装袋を開封し、ロピニロールフリー体の結晶が膏体中に析出しているか否かについて、目視により確認した。
その結果を、表6に示した。
【0064】
【表6】
【0065】
本発明の経皮吸収貼付剤である実施例1〜5の粘着剤にあっては、結晶の析出は確認されず、粘着剤中でロピニロールを十分に溶解しており、かかる粘着剤を用いた貼付剤は、完全溶解型の製剤であることが確認できた。
本試験結果は、試験例1のCS法における貼付剤中の短期的な安定性を検討した試験結果と一致するものであった。
【0066】
試験例3:主薬の安定性試験
40℃の保存条件下で1ヶ月間保存した実施例4及び参考例1の各貼付剤を、6.25cm
2に打ち抜き、50mL容の遠心沈殿管に入れ、これにテトラヒドロフラン(以下、THFと記す)を加えて超音波抽出、及び振とう機による抽出を行なった。得られた抽出液を100mL容のメスフラスコに採取して、THFにて100mLとした。
この抽出液を6mL取り、15%アセトニトリル水溶液を用いて50mLとした後、メンブランフィルター(0.45μm)を用いてろ過を行い、HPLC法により、ロピニロールの含量を測定した。
【0067】
HPLCの測定条件は、以下のとおりである。
カラム:waters spherisorb 3CN(3×150mm)
移動相:アセトニトリル:水:リン酸=150:850:0.85
流速:0.4mL/分
波長:249nm
注入量:10μL
【0068】
その結果を表7に示した。
なお、結果は、初期のロピニロール含量に対する対初期値(%)で示した。
【0069】
【表7】
【0070】
表7の結果から、本発明の経皮吸収貼付剤は、主薬であるロピニロールフリー体の安定性に優れた製剤であることが判明した。
【0071】
試験例4:ヘアレスマウス皮膚透過性試験
実施例1、実施例4〜実施例13、比較例2、および比較例3の貼付剤について、ヘアレスマウス(HR-1系、7週齢)の摘出皮膚を使用したin vitro皮膚透過性試験を行った。
ヘアレスマウスの背部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター層側とし、その内側にはリン酸緩衝生理食塩水を満たし、ウォータージャケットには37℃の温水を還流した。
各試験貼付剤を円形(1.54cm
2)に打ち抜き、摘出皮膚に貼付して、経時的にレセプター液をサンプリングし、高速液体クロマトグラフ法により、薬物の皮膚透過量を測定し、その結果から定常状態における経皮吸収速度(Flux:μg/cm
2/hr)を算出した。
なお、試験は表8〜12に示す供試試料の組み合わせ[試験例4−(1)〜(5)]で、5回に分けて実施した。
【0072】
それらの結果を表8〜表12に示した。表8〜表10においては、その結果を、経皮吸収速度、及び経皮吸収速度比で示し、表11及び表12に関しては、経皮吸収速度比のみで示した。
なお、試験例4−(1)、試験例4−(2)、および試験例4−(3)に関しては、その結果を
図5〜
図7に併せて示した。
但し、
図5〜
図7では、結果を累積透過量で示している。
【0073】
【表8】
【0074】
【表9】
【0075】
【表10】
【0076】
【表11】
【0077】
【表12】
【0078】
図中に示した結果から判明するように、本発明の経皮吸収貼付剤(実施例1、実施例4〜13)は、比較例2及び比較例3の経皮吸収貼付剤に比較して、格段に優れた経皮吸収性を示す製剤であることが判明した。
また試験例4−(3)、および試験例4−(4)の試験結果より、経皮吸収促進剤を配合した実施例6〜実施例13の製剤は、経皮吸収促進剤を配合していない実施例1あるいは実施例3よりも高い経皮吸収性を示していた。