(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の
一の実施の形態に係るファインバブル液生成装置1を示す断面図である。ファインバブル液生成装置1は、気体と液体とを混合して、当該気体のファインバブルを含む液体を生成する装置である。以下の説明では、「ファインバブル」とは直径が100μm未満の気泡を意味し、「ウルトラファインバブル」とは、ファインバブルのうち直径が1μm未満の気泡を意味する。また、ファインバブルの「密度」とは、単位体積当たりに液体が含有するファインバブルの個数を指す。
【0017】
ファインバブル液生成装置1は、生成部11と、循環路12と、取出部13と、補給部14と、ポンプ15と、排液部16とを備える。生成部11は、混合ノズル31と、加圧液生成容器32と、ファインバブル生成ノズル2とを備える。混合ノズル31は、ポンプ15により圧送された液体と、気体流入口から流入した気体とを混合し、加圧液生成容器32内に向けて混合流体72を噴出する。混合ノズル31にて混合される液体および気体は、例えば、純水および窒素ガスである。
【0018】
図2は、混合ノズル31を拡大して示す断面図である。混合ノズル31は、上述のポンプ15により圧送された液体が流入する液体流入口311と、気体が流入する気体流入口319と、混合流体72を噴出する混合流体噴出口312とを備える。混合流体72は、液体流入口311から流入した液体および気体流入口319から流入した気体が混合されることにより生成される。液体流入口311、気体流入口319および混合流体噴出口312はそれぞれ略円形である。液体流入口311から混合流体噴出口312に向かうノズル流路310の流路断面、および、気体流入口319からノズル流路310に向かう気体流路3191の流路断面も略円形である。流路断面とは、ノズル流路310や気体流路3191等の流路の中心軸に垂直な断面、すなわち、流路を流れる流体の流れに垂直な断面を意味する。また、以下の説明では、流路断面の面積を「流路面積」という。ノズル流路310は、流路面積が流路の中間部で小さくなるベンチュリ管状である。
【0019】
混合ノズル31は、液体流入口311から混合流体噴出口312に向かって順に連続して配置される導入部313と、第1テーパ部314と、喉部315と、気体混合部316と、第2テーパ部317と、導出部318とを備える。混合ノズル31は、また、内部に気体流路3191が設けられた気体供給部3192を備える。
【0020】
導入部313では、流路面積は、ノズル流路310の中心軸J1方向の各位置においてほぼ一定である。第1テーパ部314では、液体の流れる方向に向かって(すなわち、下流側に向かって)流路面積が漸次減少する。喉部315では、流路面積はほぼ一定である。喉部315の流路面積は、ノズル流路310において最も小さい。なお、ノズル流路310では、喉部315において流路面積が僅かに変化する場合であっても、流路面積がおよそ最も小さい部分全体が喉部315と捉えられる。気体混合部316では、流路面積はほぼ一定であり、喉部315の流路面積よりも少し大きい。第2テーパ部317では、下流側に向かって流路面積が漸次増大する。導出部318では、流路面積はほぼ一定である。気体流路3191の流路面積もほぼ一定であり、気体流路3191は、ノズル流路310の気体混合部316に接続される。
【0021】
混合ノズル31では、液体流入口311からノズル流路310に流入した液体が、喉部315で加速されて静圧が低下し、喉部315および気体混合部316において、ノズル流路310内の圧力が大気圧よりも低くなる。これにより、気体流入口319から気体が吸引され、気体流路3191を通過して気体混合部316に流入し、液体と混合されて混合流体72が生成される。混合流体72は、第2テーパ部317および導出部318において減速されて静圧が増大し、混合流体噴出口312を介して上述のように加圧液生成容器32内に噴出される。
【0022】
図1に示す加圧液生成容器32内は加圧されて大気圧よりも圧力が高い状態(以下、「加圧環境」という。)となっている。加圧液生成容器32では、混合ノズル31から噴出された液体と気体とが混合された流体(以下、「混合流体72」という。)が加圧環境下にて流れる間に、気体が液体に加圧溶解して加圧液が生成される。
【0023】
加圧液生成容器32は、上下方向に積層される第1流路321と、第2流路322と、第3流路323と、第4流路324と、第5流路325とを備える。以下の説明では、第1流路321、第2流路322、第3流路323、第4流路324および第5流路325をまとめて指す場合、「流路321〜325」と呼ぶ。流路321〜325は、水平方向に延びる管路であり、流路321〜325の長手方向に垂直な断面は略矩形である。
【0024】
第1流路321の上流側の端部(すなわち、
図1中の左側の端部)には、上述の混合ノズル31が取り付けられており、混合ノズル31から噴出された後の混合流体72は、加圧環境下にて
図1中の右側に向かって流れる。本実施の形態では、第1流路321内の混合流体72の液面より上方にて混合ノズル31から混合流体72が噴出され、噴出された直後の混合流体72は、第1流路321の下流側の壁面(すなわち、
図1中の右側の壁面)に衝突する前に上記液面に直接衝突する。混合ノズル31から噴出された混合流体72を液面に直接衝突させるためには、第1流路321の長さを、混合ノズル31の混合流体噴出口312(
図2参照)の中心と第1流路321の下面との間の上下方向の距離の7.5倍よりも大きくすることが好ましい。
【0025】
加圧液生成容器32では、混合ノズル31の混合流体噴出口312の一部または全体が、第1流路321内の混合流体72の液面よりも下側に位置してもよい。これにより、上述と同様に、第1流路321内において、混合ノズル31から噴出された直後の混合流体72が、第1流路321内を流れる混合流体72に直接衝突する。
【0026】
第1流路321の下流側の端部の下面には、略円形の開口321aが設けられており、第1流路321を流れる混合流体72は、第1流路321の下方に位置する第2流路322へと開口321aを介して落下する。第2流路322では、第1流路321から落下した混合流体72が加圧環境下にて
図1中の右側から左側へと流れ、第2流路322の下流側の端部の下面に設けられた略円形の開口322aを介して、第2流路322の下方に位置する第3流路323へと落下する。第3流路323では、第2流路322から落下した混合流体72が加圧環境下にて
図1中の左側から右側へと流れ、第3流路323の下流側の端部の下面に設けられた略円形の開口323aを介して、第3流路323の下方に位置する第4流路324へと落下する。
図1に示すように、第1流路321〜第4流路324では、混合流体72は、気泡を含む液体の層と、その上方に位置する気体の層に分かれている。
【0027】
第4流路324では、第3流路323から落下した混合流体72が加圧環境下にて
図1中の右側から左側へと流れ、第4流路324の下流側の端部の下面に設けられた略円形の開口324aを介して、第4流路324の下方に位置する第5流路325へと流入(すなわち、落下)する。第5流路325では、第1流路321〜第4流路324とは異なり、気体の層は存在しておらず、第5流路325内に充満する液体内において、第5流路325の上面近傍に気泡が僅かに存在する状態となっている。第5流路325では、第4流路324から流入した混合流体72が加圧環境下にて
図1中の左側から右側へと流れる。
【0028】
加圧液生成容器32では、流路321〜325を、段階的に緩急を繰り返しつつ上から下に流れ落ちる(すなわち、水平方向への流れと下方向への流れとを交互に繰り返しつつ流れる)混合流体72において、気体が液体に徐々に加圧溶解する。第5流路325においては、液体中に溶解している気体の濃度は、加圧環境下における当該気体の(飽和)溶解度の60%〜90%にほぼ等しい。そして、液体に溶解しなかった余剰の気体が、第5流路325内において、視認可能な大きさの気泡として存在している。上下に隣接する水平流路321〜325における混合流体72の流れの方向が逆向きであることにより、加圧液生成容器32の小型化が実現される。
【0029】
加圧液生成容器32は、第5流路325の下流側の上面から上方へと延びる余剰気体分離部326をさらに備える。余剰気体分離部326には混合流体72が充満している。余剰気体分離部326の上下方向に垂直な断面は略矩形であり、余剰気体分離部326の上端部は、取出部13に接続される。第5流路325を流れる混合流体72の気泡は、余剰気体分離部326内を上昇して取出部13へと移動する。取出部13の詳細については後述する。
【0030】
このようにして、混合流体72の余剰な気体が混合流体72の一部と共に分離されることにより、少なくとも容易に視認できる大きさの気泡を実質的に含まない加圧液が生成され、第5流路325の下流側の端部に直接的に接続されたファインバブル生成ノズル2へと供給される。本実施の形態では、加圧液には、大気圧下における気体の(飽和)溶解度の約2倍以上の気体が溶解している。加圧液生成容器32において流路321〜325を流れる混合流体72の液体は、生成途上の加圧液と捉えることもできる。
【0031】
第1流路321の上方には、排気弁61も設けられる。排気弁61は、ポンプ15の停止時に開放され、混合流体72が混合ノズル31へと逆流することを防止する。
【0032】
図3は、ファインバブル生成ノズル2を拡大して示す断面図である。ファインバブル生成ノズル2は、加圧液生成容器32の第5流路325から加圧液が流入する加圧液流入口21と、循環路12に向かって開口する加圧液噴出口22とを備える。加圧液流入口21および加圧液噴出口22はそれぞれ略円形であり、加圧液流入口21から加圧液噴出口22に向かうノズル流路20の流路断面も略円形である。
【0033】
ファインバブル生成ノズル2は、加圧液流入口21から加圧液噴出口22に向かって順に連続して配置される導入部23と、テーパ部24と、喉部25とを備える。導入部23では、流路面積は、ノズル流路20の中心軸J2方向の各位置においてほぼ一定である。テーパ部24では、加圧液の流れる方向に向かって(すなわち、下流側に向かって)流路面積が漸次減少する。テーパ部24の内面は、ノズル流路20の中心軸J2を中心とする略円錐面の一部である。当該中心軸J2を含む断面において、テーパ部24の内面の成す角度αは、10°以上90°以下であることが好ましい。
【0034】
喉部25は、テーパ部24と加圧液噴出口22とを連絡する。喉部25の内面は略円筒面であり、喉部25では、流路面積はほぼ一定である。喉部25における流路断面の直径は、ノズル流路20において最も小さく、喉部25の流路面積は、ノズル流路20において最も小さい。喉部25の長さは、好ましくは、喉部25の直径の1.1倍以上10倍以下であり、より好ましくは、1.5倍以上2倍以下である。なお、ノズル流路20では、喉部25において流路面積が僅かに変化する場合であっても、流路面積がおよそ最も小さい部分全体が喉部25と捉えられる。
【0035】
ファインバブル生成ノズル2は、また、喉部25に連続して設けられ、加圧液噴出口22の周囲を加圧液噴出口22から離間して囲む拡大部27と、拡大部27の端部に設けられた拡大部開口28とを備える。加圧液噴出口22と拡大部開口28との間の流路29は、加圧液噴出口22の外部に設けられた流路であり、以下、「外部流路29」という。外部流路29の流路断面および拡大部開口28は略円形であり、外部流路29の流路面積はほぼ一定である。外部流路29の直径は、喉部25の直径(すなわち、加圧液噴出口22の直径)よりも大きい。
【0036】
以下の説明では、拡大部27の内周面の加圧液噴出口22側のエッジと加圧液噴出口22のエッジとの間の円環状の面を、「噴出口端面221」という。本実施の形態では、ノズル流路20および外部流路29の中心軸J2と噴出口端面221との成す角度は約90°である。また、外部流路29の直径は10mm〜20mmであり、外部流路29の長さは、外部流路29の直径におよそ等しい。ファインバブル生成ノズル2では、加圧液流入口21とは反対側の端部に、凹部である外部流路29が形成され、当該凹部の底部に、当該底部よりも小さい開口である加圧液噴出口22が形成されている、と捉えられる。拡大部27では、加圧液噴出口22と循環路12との間における加圧液の流路面積が拡大される。
【0037】
ファインバブル生成ノズル2では、加圧液流入口21からノズル流路20に流入した加圧液が、テーパ部24において徐々に加速されつつ喉部25へと流れ、喉部25を通過して加圧液噴出口22から噴流として噴出される。喉部25における加圧液の流速は、好ましくは秒速10m〜30mである。喉部25では、加圧液の静圧が低下するため、加圧液中の気体が過飽和となってファインバブルとして液中に析出する。ファインバブルは、加圧液と共に拡大部27の外部流路29を通過する。ファインバブル生成ノズル2では、加圧液が外部流路29を通過する間にも、ファインバブルの析出が生じる。これにより、ファインバブルを含む液体が生成され、循環路12へと供給される。ファインバブル生成ノズル2にて生成されるファインバブルは、ウルトラファインバブルを主として含む。
【0038】
図1に示す生成部11では、混合ノズル31は、気体およびポンプ15により加圧された液体を、加圧液生成容器32へと導入する導入部である。また、ファインバブル生成ノズル2は、混合ノズル31から導入された気体のファインバブルを含む液体を、循環路12へと排出する排出部である。
【0039】
循環路12の一方の端部はファインバブル生成ノズル2の拡大部開口28(
図3参照)に接続され、他方の端部は混合ノズル31の液体流入口311(
図2参照)に接続される。循環路12上には、上述のポンプ15が設けられる。ファインバブル生成ノズル2から排出されたファインバブルを含む液体は、ポンプ15により循環路12内を圧送され、混合ノズル31へと戻される。循環路12は密閉された管路であり、ファインバブル生成ノズル2から排出された液体は、外気から隔離された状態で混合ノズル31へと戻される。混合ノズル31へと戻された液体は、加圧液生成容器32、ファインバブル生成ノズル2および循環路12を介して、再び混合ノズル31へと戻される。ファインバブル液生成装置1では、ファインバブルを含む液体が外気から隔離された状態で生成部11および循環路12を循環する。そして、液体中のファインバブルの密度は、当該循環が繰り返されることにより高くなる。
【0040】
ファインバブル液生成装置1では、生成部11および循環路12を循環する液体の一部が取出部13によりファインバブル液として取り出される。取出部13は、取出路131と、気泡除去部132とを備える。取出路131は、余剰気体分離部326の上端部に接続される。気泡除去部132は、取出路131上に設けられ、余剰気体分離部326から取出路131に流入する液体から、ファインバブル以外の気泡(すなわち、容易に視認できる程度の大きさの気泡)を除去する。気泡除去部132としては、例えば、ガス抜き弁が利用される。気泡除去部132を通過した液体は、容易に視認できる程度の大きさの気泡を実質的に含まず、かつ、ファインバブルを高密度にて含むファインバブル液である。ファインバブル液は、取出路131の先端の取出口133から取り出される。
【0041】
ファインバブル液生成装置1は、取出制御部134と、気泡密度測定部135と、記憶部136とをさらに備える。取出制御部134は、取出路131上において気泡除去部132と取出口133との間に設けられる。取出制御部134は、例えば、取出路131を流れるファインバブル液の流量を調節する流量調節弁、および、当該流量調節弁の開度を制御する弁制御部である。気泡密度測定部135は、気泡除去部132と取出口133との間にて取出路131に接続される。気泡密度測定部135は、取出部13から取り出されるファインバブル液中のファインバブルの密度を測定する。気泡密度測定部135としては、例えば、ナノサイト社(NanoSight Limited)のNS500等の技術を用いて実現可能である。
【0042】
取出制御部134には、記憶部136が接続される。記憶部136には、流量−密度情報が予め記憶されている。流量−密度情報は、取出部13からのファインバブル液の取り出し流量と、取出部13から取り出されるファインバブル液中のファインバブルの密度との関係を示す情報である。
【0043】
図4は、流量−密度情報を示す図である。
図4の横軸はファインバブル液の取り出し流量を示し、縦軸はファインバブル液中のファインバブルの密度を示す。
図4中の複数の丸印は、ファインバブル液の各取り出し流量にて取り出した際のファインバブル液中のファインバブルの密度を測定した結果を示す。当該測定は、取り出し流量以外の条件をほぼ同様として行われた。
図4中の実線81は、複数の丸印から求められた流量−密度情報である。
図4に示すように、ファインバブル液の取り出し流量が大きくなると、ファインバブル液中のファインバブルの密度は減少する。
【0044】
気泡密度測定部135における測定結果(すなわち、測定されたファインバブルの密度)は、取出制御部134へと送られる。取出制御部134では、予め入力された目標密度、気泡密度測定部135における測定結果、および、記憶部136に記憶される流量−密度情報に基づいて、取出部13からのファインバブル液の取り出し流量が制御される。これにより、取出部13から取り出されるファインバブル液中のファインバブルの密度が目標密度におよそ等しくなる。
【0045】
図5は、ファインバブル液生成装置1においてファインバブル液を連続的に取り出す場合における取り出し開始からの経過時間と、取り出されるファインバブル液中のファインバブルの密度との関係を示す図である。
図5の横軸は、ファインバブル液の取り出し開始からの経過時間を示し、縦軸はファインバブル液中のファインバブルの密度を示す。ファインバブル液生成装置1では、取出制御部134による制御が行われることにより、
図5に示すように、およそ所望の密度にてファインバブルを含むファインバブル液を、長時間に亘って連続的に取り出すことができる。
【0046】
補給部14は、循環路12に接続され、生成部11および循環路12を循環する液体と同じ種類の液体(本実施の形態では、純水)を循環路12に補給する。補給部14は、取出部13から取り出されるファインバブル液とおよそ同量の液体を循環路12に補給することにより、生成部11および循環路12を循環する液体の量を維持する。
【0047】
補給部14は、液体供給路141と、圧力調節部142と、補給制御部143とを備える。液体供給路141の一方の端部は、切換機構162とポンプ15との間にて循環路12に接続され、他方の端部はファインバブル液生成装置1の外部の液体供給源91に接続される。液体供給源91は、例えば、工場等に設けられて様々な装置に純水を圧送する純水供給ラインである。液体供給路141は、液体供給源91から圧送された液体を循環路12へと導く。液体供給路141は、密閉された管路であり、液体供給源91からの液体は、液体供給路141内において外気から隔離された状態で循環路12へと導かれる。圧力調節部142は、液体供給路141上に設けられ、液体供給源91から圧送されて液体供給路141を流れる液体の圧力を調節する。圧力調節部142として、例えば、圧力調節弁が利用される。
【0048】
補給制御部143は、圧力調節部142に接続される。圧力調節部142が圧力調節弁である場合、補給制御部143は、例えば、当該圧力調節弁の開度を制御する弁制御部である。補給制御部143は、取出部13からのファインバブル液の取り出し流量に基づいて圧力調節部142を制御する。具体的には、補給部14の液体供給路141から循環路12に供給される液体の流量(以下、「補給流量」という。)が、取出部13からのファインバブル液の取り出し流量におよそ等しくなるように、補給部14から循環路12に供給される液体の圧力または流量が制御される。これにより、生成部11および循環路12を循環する液体の量(以下、「循環量」という。)をおよそ一定に維持することができる。
【0049】
ファインバブル液生成装置1では、例えば、循環量を維持する場合の取出部13からの取り出し流量と補給部14から供給される液体の圧力との関係が予め記憶されており、当該関係と取り出し流量とに基づいて、補給部14から供給される液体の圧力が制御されてもよい。あるいは、補給部14に補給流量を測定する流量計が設けられ、当該流量計の測定結果が取出部13からのファインバブル液の取り出し流量に等しくなるように、補給制御部143により圧力調節部142がフィードバック制御されてもよい。
【0050】
排液部16は、排液路161と、切換機構162(例えば、三方弁等の切り換え弁)とを備える。排液路161の一方の端部は、ファインバブル生成ノズル2とポンプ15との間にて循環路12に接続され、他方の端部はファインバブル液生成装置1の外部の排液ポート92に接続される。換言すれば、排液路161は循環路12から分岐して排液ポート92に接続される。切換機構162は、循環路12と排液路161との接続部(すなわち、分岐部)に設けられ、ファインバブル生成ノズル2からの液体の送出先を、排液ポート92と混合ノズル31との間で切り換える。
【0051】
ファインバブル液生成装置1の起動直後、すなわち、生成部11を液体が流れ始めた直後は、生成部11内の圧力が変動する。そこで、ファインバブル液生成装置1の起動直後から所定の時間(例えば、数十秒)、補給部14から循環路12を介して生成部11へと液体を供給し、生成部11を通過した液体を切換機構162により排液ポート92へと導くことが行われる。このとき、取出部13からのファインバブル液の取り出しは行われない。換言すれば、取出部13からのファインバブル液の取り出し開始前の状態において、補給部14から循環路12を介して生成部11の混合ノズル31に導入された液体は、生成部11および循環路12を循環することなく、ファインバブル生成ノズル2から切換機構162により排液ポート92へと導かれる。これにより、生成部11内の圧力をおよそ一定とすることができ、ファインバブル液生成装置1の起動を安定して行うことができる。
【0052】
ファインバブル液生成装置1では、生成部11内の圧力がおよそ一定になると、ファインバブル生成ノズル2から排出されたファインバブルを含む液体の送出先が、切換機構162により切り換えられ、当該液体は循環路12を介して混合ノズル31へと戻される。そして、ファインバブルを含む液体が生成部11および循環路12を循環することにより、液体中のファインバブルの密度が増大して所望の密度となる。液体中のファインバブルの密度が所望の密度となるまで、取出部13からのファインバブル液の取り出しは行われず、補給部14からの液体の補給も停止される。生成部11および循環路12を循環する液体中のファインバブルの密度が所望の密度になると、取出部13からのファインバブル液の取り出しが開始され、補給部14からの液体の補給も開始される。
【0053】
以上に説明したように、ファインバブル液生成装置1は、混合ノズル31とファインバブル生成ノズル2とを備える生成部11と、ファインバブル生成ノズル2から排出された液体を外気から隔離した状態で混合ノズル31へと戻す循環路12と、生成部11および循環路12を循環する液体の一部をファインバブル液として取り出す取出部13と、循環路12に液体を補給して生成部11および循環路12を循環する液体の量を維持する補給部14とを備える。これにより、ファインバブルを高密度にて含むファインバブル液を連続的に生成することができる。その結果、様々な用途においてファインバブル液を連続的に供給することができる。
【0054】
ところで、半導体の製造装置等では、半導体基板の処理に使用される処理液が、半導体基板に供給される前に装置の途中で滞留することを避けることが求められる。ファインバブル液生成装置1では、上述のように、ファインバブルを含む液体が、途中で滞留することなく生成部11および循環路12を循環するため、半導体の製造装置等へのファインバブル液の供給に特に適している。また、ファインバブル液生成装置1では、装置の起動時に生成部11を流れる液体は、生成部11および循環路12を循環することなく、排液ポート92へと排出される。これにより、ファインバブル液生成装置1の起動時においても、液体が装置内において滞留することを防止することができる。したがって、ファインバブル液生成装置1は、半導体の製造装置等へのファインバブル液の供給により一層適している。
【0055】
ファインバブル液生成装置1は、取出部13から取り出されるファインバブル液中のファインバブルの密度を測定する気泡密度測定部135と、流量−密度情報を記憶する記憶部136と、気泡密度測定部135における測定結果および流量−密度情報に基づいて取出部13からのファインバブル液の取り出し流量を制御する取出制御部134とを備える。これにより、所望の気泡密度にてファインバブルを含むファインバブル液を容易に生成することができる。
【0056】
上述のように、補給部14は、液体供給源91から圧送された液体を循環路12へと導く液体供給路141と、液体供給路141を流れる液体の圧力を調節する圧力調節部142とを備える。これにより、生成部11および循環路12を循環する液体の量を容易に維持することができる。また、補給制御部143により、取出部13からのファインバブル液の取り出し流量に基づいて、補給部14から循環路12に補給される液体の圧力または流量が制御される。これにより、補給部14からの液体の補給による循環量の維持を自動的に行うことができる。
【0057】
ファインバブル液生成装置1では、補給部14の構造は上述のものには限定されず、様々に変更されてよい。例えば、
図1に示す補給部14に代えて、
図6に示す補給部14aがファインバブル液生成装置1に設けられてもよい。補給部14aは、液体供給路141と、補給制御部143と、ポンプ144とを備える。液体供給路141の一方の端部は、切換機構162とポンプ15との間にて循環路12に接続され、他方の端部はファインバブル液生成装置1の外部の液体供給源91aに接続される。液体供給源91aは、例えば、純水を貯溜する貯溜槽である。液体供給路141は、液体供給源91aから循環路12へと液体を導く。液体供給路141は、密閉された管路であり、液体供給源91aからの液体は、液体供給路141内において外気から隔離された状態で循環路12へと導かれる。ポンプ144は、液体供給路141上に設けられ、液体供給路141内の液体を循環路12に向けて圧送する。これにより、
図1に示す補給部14が設けられる場合と同様に、生成部11および循環路12を循環する液体の量(すなわち、循環量)を容易に維持することができる。
【0058】
また、補給制御部143は、ポンプ144に接続され、ポンプ144の駆動を制御する。補給制御部143によりポンプ144が制御されることにより、補給部14aからの補給流量が取出部13からのファインバブル液の取り出し流量におよそ等しくなるように、補給部14aから循環路12に供給される液体の圧力または流量が制御される。これにより、上記と同様に、補給部14aからの液体の補給による循環量の維持を自動的に行うことができる。補給部14aでは、液体供給路141上に絞り弁等の流量調整部が設けられてもよい。この場合、ポンプ144は一定の出力にて駆動され、補給制御部143により当該絞り弁が制御されることにより、補給部14aからの補給流量が取出部13からのファインバブル液の取り出し流量におよそ等しくなるように、補給部14aから循環路12に供給される液体の流量が制御される。
【0059】
図7は、本発明
に関連する技術に係るファインバブル液生成装置1aを示す断面図である。ファインバブル液生成装置1aは、
図1に示す排液部16に代えて、初期循環部17を備える。その他の構成は、
図1に示すファインバブル液生成装置1と同様であり、以下の説明では同様の構成に同符号を付す。
【0060】
初期循環部17は、パイパス路171と、例えばバルブである切換機構172a,172b,172cと、初期貯溜部173とを備える。パイパス路171の一方の端部は、ファインバブル生成ノズル2と切換機構172cとの間にて循環路12に接続される。パイパス路171の他方の端部は、上記一方の端部よりも下流側(すなわち、循環路12内を流れる液体の流れ方向前側)にて、切換機構172cとポンプ15との間にて循環路12に接続される。換言すれば、パイパス路171は、循環路12上の分岐位置にて循環路12から分岐し、当該分岐位置よりも循環路12の下流側で循環路12に接続される。
【0061】
初期貯溜部173は、パイパス路171上の切換機構172a,172bの間に設けられ、パイパス路171を流れる液体を貯溜する。初期貯溜部173は、例えば、ある程度の量の液体を貯溜可能な予備タンクである。切換機構172a,172bのそれぞれは、循環路12とパイパス路171との間に設けられる。切換機構172a,172b,172cは、ファインバブル生成ノズル2からの液体の送出先を、循環路12とパイパス路171との間で切り換える。
【0062】
ファインバブル液生成装置1aの起動直後、すなわち、生成部11を液体が流れ始めた直後は、生成部11内の圧力が変動する。そこで、ファインバブル液生成装置1aの起動直後から所定の時間(例えば、数十秒)、初期貯溜部173に貯溜されている液体(例えば、純水)がパイパス路171および循環路12を介して生成部11へと供給される。生成部11を通過した液体は、切換機構172a,172b,172cにより、切換機構172cを経由して生成部11へと導かれることなく、パイパス路171へと導かれ、パイパス路171を介して初期貯溜部173へと導かれる。当該液体は、初期貯溜部173に一時的に貯溜された後、パイパス路171を介して生成部11へと供給される。このとき、取出部13からのファインバブル液の取り出しは行われない。
【0063】
換言すれば、取出部13からのファインバブル液の取り出し開始前の状態において、ファインバブル生成ノズル2から排出された液体は、パイパス路171を介して初期貯溜部173へと導かれ、初期貯溜部173に一時的に貯溜された後、パイパス路171を介して混合ノズル31へと戻される。これにより、生成部11内の圧力をおよそ一定とすることができ、ファインバブル液生成装置1aの起動を安定して行うことができる。また、ファインバブル液生成装置1aの起動時に液体を装置外に排出することがないため、装置起動時における液体の消費量を低減することができる。
【0064】
ファインバブル液生成装置1aでは、生成部11内の圧力がおよそ一定になると、ファインバブル生成ノズル2から排出されたファインバブルを含む液体の送出先が、切換機構172a,172b,172cにより切り換えられ、当該液体はパイパス路171および初期貯溜部173を経由することなく、循環路12上の切換機構172cを経由して混合ノズル31へと戻される。そして、ファインバブルを含む液体が生成部11および循環路12を循環することにより、液体中のファインバブルの密度が増大して所望の密度となる。液体中のファインバブルの密度が所望の密度となるまで、取出部13からのファインバブル液の取り出しは行われず、補給部14からの液体の補給も停止される。
【0065】
生成部11および循環路12を循環する液体中のファインバブルの密度が所望の密度になると、取出部13からのファインバブル液の取り出しが開始され、補給部14からの液体の補給も開始される。このように、ファインバブル液生成装置1aでは、取出部13からのファインバブル液の取り出し中は、ファインバブル生成ノズル2から排出された液体が、循環路12を介して混合ノズル31へと戻される。これにより、
図1に示すファインバブル液生成装置1と同様に、ファインバブルを高密度にて含むファインバブル液を連続的に生成することができる。
【0066】
また、ファインバブル液生成装置1aは、
図8に示すように、他の初期循環部18をさらに備えてもよい。初期循環部18は、パイパス路181と、例えばバルブである切換機構182とを備える。パイパス路181の一方の端部は、取出部13の気泡除去部132と取出制御部134との間に接続される。パイパス路181の他方の端部は、初期循環部17の切換機構172a,172b間のバイパス路171および初期貯溜部173のうち所定の個所(
図8では、初期貯溜部173)に接続される。切換機構182は、バイパス路181上に設けられ、切換機構172a,172b,172cと連動して動作する。すなわち、切換機構172a,172b,172cが、液体を切換機構172cを経由して生成部11へ供給せず、初期貯溜部173の液体をパイパス路171および循環路12を介して生成部11へと供給している場合、切換機構182はファインバブル以外の気泡が除去された液体を気泡除去部132から初期循環部17へと導く。切換機構172a,172b,172cが、ファインバブル生成ノズル2からの液体をパイパス路171および初期貯溜部173を経由することなく循環路12上の切換機構172cを経由して混合ノズル31へと戻している場合、切換機構182は、液体を気泡除去部132から初期循環部17へと導かない。以上のように、初期循環部18をさらに備えることにより、より効率良く生成部11に液体を循環させることができる。
【0067】
上記ファインバブル液生成装置1,1aは、様々な変更が可能である。
【0068】
例えば、混合ノズル31にて気体と混合される液体は、完全な水には限定されず、水を主成分をする液体であってもよい。例えば、添加物や不揮発性の液体が添加された水であってもよい。また、液体は、例えば、エチルアルコールなども利用可能と考えられる。ファインバブルを形成する気体は、窒素には限定されず、空気や他の気体であってもよい。もちろん、液体に対して不溶性または難溶性の気体であることは必要である。
【0069】
ファインバブル液生成装置1,1aでは、取出部13は、生成部11および循環路12を循環する液体の一部をファインバブル液として取り出せるのであれば、必ずしも、加圧液生成容器32の余剰気体分離部326に接続される必要はない。取出部13は、例えば、生成部11の余剰気体分離部326以外の部位に接続されてもよく、循環路12においてファインバブル生成ノズル2とポンプ15との間に接続されてもよい。
【0070】
生成部11の構造は様々に変更されてよく、さらには、異なる構造のものが使用されてもよい。例えば、ファインバブル生成ノズル2は、複数の加圧液噴出口22を備えてもよい。ファインバブル生成ノズル2は、加圧液生成容器32の第5流路325に直接的に接続される必要はなく、第5流路325の下流側の端部とファインバブル生成ノズル2とが密閉された接続路により接続されてもよい。また、加圧液生成容器32の流路の断面形状は、円形でもよい。気体と液体との混合には、機械的攪拌等の他の手段が利用されてもよい。
【0071】
ファインバブル液生成装置1,1aにより生成されるファインバブル液は、従来のファインバブル液に対してこれまでに提案されている様々な用途に利用されてよい。新規な分野に利用されてもよく、想定される利用分野は多岐に亘る。例えば、食品、飲料、化粧品、薬品、医療、植物栽培、半導体装置、フラットパネルディスプレイ、電子機器、太陽電池、二次電池、新機能材料、放射性物質除去等である。
【0072】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。