特許第6104226号(P6104226)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6104226ナトリウム耐性の接合ガラス及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104226
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ナトリウム耐性の接合ガラス及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20170316BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20170316BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 2/08 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 10/39 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   C03C3/091
   C04B37/00 A
   C04B37/02 A
   H01M2/08 Z
   H01M2/08 C
   H01M10/39 Z
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-238442(P2014-238442)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-110512(P2015-110512A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】10 2013 224 111.9
(32)【優先日】2013年11月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ズフナー
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00459674(EP,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0120602(US,A1)
【文献】 特開2013−203602(JP,A)
【文献】 特開平01−226719(JP,A)
【文献】 特開平02−097435(JP,A)
【文献】 特開平03−055768(JP,A)
【文献】 特開平04−026565(JP,A)
【文献】 特開平04−187571(JP,A)
【文献】 特開平09−326261(JP,A)
【文献】 特開平11−246235(JP,A)
【文献】 特開昭49−096783(JP,A)
【文献】 特表昭58−501767(JP,A)
【文献】 A.V.Loshagin et al.,NMR Studies of Sodium Borosilicate Glasses Containing Aluminum Oxide,GLASS PHYSICS AND CHEMISTRY,米国,PLENUM/CONSULTANTS BUREAL,1994年 2月,Vol. 20, No. 1,pp. 14 - 22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/076 − 3/093
C04B 37/00 − 37/04
H01M 2/08
H01M 10/39
INTERGLAD
GAZ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックと、特殊鋼との接合による結合を製造するための接合ガラス(1)において、前記接合ガラス(1)は不可避的な不純物を除いてZrO2不含であり、(酸化物を基準として質量%で示して)
SiO2 40〜50
23 >25〜30
Na2O 5〜15
Al23 17〜25
Σ MO 0〜<2
を含有し、MOは、単独で又は各々組み合わせた形の、CaO、SrO又はBaOを表す、接合ガラス(1)。
【請求項2】
ZnO 0〜5
TiO2 0〜5
SnO2 0〜5
MgO 0〜15
を、単独で又は各々組み合わせた形で含有する、請求項1に記載の接合ガラス(1)。
【請求項3】
20〜300℃の温度範囲の線熱膨張係数α20-300℃が、5.5・10-6-1〜10.5・10-6-1を示す、請求項1又は2に記載の接合ガラス(1)。
【請求項4】
更に、30体積%まで酸化物系充填材を、熱膨張挙動、耐食性又は流動挙動の調節のために含み、前記充填材は粒子又は繊維の形で存在する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の接合ガラス(1)。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の接合ガラス(1)を用いた、第1の接合部材(2)と第2の接合部材(3,4,41)との間の接合による結合部において、前記接合ガラス(1)は第1の接合部材(2)の接合箇所と、第2の接合部材(3,4,41)の接合箇所とを結合しており、前記第1の接合部材(2)は少なくともその接合箇所がセラミックを有し、且つ前記第2の接合部材(3,4,41)は少なくともその接合箇所が特殊鋼を有する、接合による結合部。
【請求項6】
請求項に記載の接合による結合部において、第1の接合部材(2)の接合箇所のセラミックは、酸化アルミニウム及びNASICONの群から選択されている、接合による結合部。
【請求項7】
請求項またはに記載の接合による結合部において、第2の接合部材(41)の特殊鋼は、同じ温度範囲で前記セラミックの線熱膨張係数α20-300℃より大きいか又は同じ線熱膨張係数α20-300℃を示す、接合による結合部。
【請求項8】
請求項5からまでのいずれか1項に記載の、少なくとも1つの接合による結合部を有する、電気化学的エネルギー貯蔵ユニット又はエネルギー製造ユニット。
【請求項9】
請求項5からまでのいずれか1項に記載の、少なくとも1つの接合による結合部を有する、ナトリウム硫黄バッテリー又はナトリウム金属塩化物バッテリー。
【請求項10】
請求項5からまでのいずれか1項に記載の、少なくとも1つの接合による結合部を有する、ブシュ部材(20)。
【請求項11】
ナトリウム硫黄バッテリー又はナトリウム金属塩化物バッテリーの製造のための、請求項1から4までのいずれか1項に記載の接合ガラス(1)の使用。
【請求項12】
危険物質の廃棄処理のための装置中での又は核原子炉中での又は増殖炉中での、封じ込め容器用の電気的ブシュとしての又は冷却回路用の電気的ブシュとしての、請求項10に記載のブシュ部材(20)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック、例えば酸化アルミニウム(Al23、酸化アルミニウムセラミック又はAl23セラミックともいう)及び/又は金属及び/又はこれらの組み合わせとの接合による結合を製造することができるナトリウム耐性の接合ガラス並びにその適用に関する。ナトリウム耐性の接合ガラスとは、特に液体ナトリウム又は蒸気状ナトリウムに耐えることができかつこのために、例えば液体ナトリウム及び/又はナトリウム蒸気及び/又は他の攻撃性ナトリウム化合物及び/又はナトリウム含有媒体に曝される接合による結合の製造のために適している接合材料である。
【背景技術】
【0002】
このようなナトリウム耐性の接合ガラスは、例えば、液体ナトリウム及び/又はナトリウム化合物を電解質又は冷媒として使用するエネルギー貯蔵ユニット及び/又はエネルギー製造ユニットの製造のために重要である。このようなエネルギー製造ユニットの例は、バッテリー、更に同様に核原子炉、特に増殖炉であり、ここではナトリウムと接触することがある工業的構成部材中で接合ガラスが使用される。このような工業的構成部材は、特に例えばセンサ及び/又はアクチュエータ及び/又は電気モータに電流を供給する電気的ブシュ装置である。他の使用分野は、特に処理の際にナトリウム化合物及び/又は液体ナトリウム及び/又は蒸気状なトリムが生じる毒性材料の廃棄処理のための装置である。
【0003】
電気化学的エネルギー貯蔵ユニット及びエネルギー製造ユニットも、近年になって明らかに関心が持たれている。これらのユニットは、この場合に電気自動車の分野において、分散型電力供給のため、非常電源システムとして、主に再生可能エネルギーの増大する割合に基づいて、ネットワークシステムの安定化のために使用することができる。
【0004】
多様なバッテリー技術がここでは議論されていて、この場合にリチウムイオンバッテリー(LIB)が最も集中的に議論されている。他の種類のバッテリーは、高温ナトリウムバッテリー(英語ではSodium Beta Battery, SBB)である。LIBと比べたこの利点は、より高いエネルギー密度及び高いエネルギー効率である。このSBBは、負極として液体ナトリウムを高めた温度、通常では250℃より高い温度で使用する。これは、一般に2つのバリエーションに分けられる:一方はナトリウムイオンバッテリー(Na/S)であり、硫黄を正極として使用する。他方は、ナトリウム金属塩化物バッテリーであり、ゼブラバッテリー(ZEBRA-Batterie)ともいわれ、金属塩化物、例えば塩化ニッケル又は塩化鉄を正極として使用し、テトラクロロアルミン酸ナトリウム(NaAlCl4)を液体電解質として使用する。両方のタイプは、β−Al23又はβ″−Al23からなるナトリウムイオン伝導性膜及びα−Al23からなるハウジング部材を使用し、かつこれらは場合により付加的に金属製の蓋と結合されていてもよいことが共通している。本願明細書中で使用された上位概念の酸化アルミニウム(英語ではAlumina)又は同義の酸化アルミニウムセラミック又は同義のAl23又はこれも同義のAl23セラミックは、特に実施形態のα−酸化アルミニウム及び/又はβ−酸化アルミニウム及び/又はβ″−酸化アルミニウムを含む。酸化アルミニウムの概念の使用は、純度についての、及びAl23セラミック中での及び/又は該当する部材中でのAl23の含有率についての制限を意味しない。
【0005】
電気化学的セルの場合に、セラミック、特に酸化アルミニウム、又は他の金属構成成分からなる部材の間での接合による結合部は、重要な構成部材である、それというのもこの接合による結合部は寿命を決定するためである。この領域で漏洩が生じた場合、液体ナトリウムは大気と接触し、燃焼し始めてしまう。接合材料としての接合ガラスの課題は、この場合に、バッテリーの完全な寿命に関して十分に気密で緻密な接合を達成することである。これは、特に関与する全ての材料の熱膨張係数の良好な適合により達成でき、これらの材料は、運転状態に対する許容性の接合を行い、かつその機能を損なうことなしに全ての活性成分に対してガラスの極めて良好な化学的耐性を示す。
【0006】
バッテリーにとって、接合ガラスの2つの基本型:ケイ酸塩を基礎とするガラス及びホウ酸塩を基礎とするガラスに分けられる。ホウ酸塩を基礎とするガラスは、通常では、溶融ナトリウムに対して極めて良好な耐性を示すという利点を有するが、金属塩化物に対するその化学的耐性は比較的悪い特性を示す。更に、頻繁に使用されるアルミノホウ酸塩は、しばしば結晶化に対して低い安定性を有するだけで、これはプロセス管理の観点から制限される。特別な態様が、例えば特許文献1には記載されていて、SBBのアノード及びカソードに関する耐食性に応じて別個のガラスが記載されている。金属塩側には、40質量%を越えるSiO2及び25質量%未満のB23を有する高ケイ素含有率のガラスを使用し、ナトリウム側には、20質量%未満のSiO2及び35質量%を越えるB23の極めて低いケイ素含有率を有するホウ酸塩ガラスを使用している。
【0007】
特許文献2には、Na/Sバッテリーの接合ガラスとしてSchott AG社のホウケイ酸ガラス8245の使用が記載されている。このガラスは、Na/Sバッテリーの媒体に対して極めて良好な化学的安定性を示すが、その5.2・10-6-1の低い線熱膨張係数α20-300℃に基づいて、酸化アルミニウムに限って持続的な気密な接合が生じるだけである。
【0008】
特許文献3には、Na/Sバッテリーで使用するためのホウケイ酸ガラスが記載されている。このガラスは、しかしながら合計で、少なくとも6質量%のアルカリ土類金属酸化物であるCaO、SrO及びBaOを有する。これらの構成成分は、ガラス形成のために有益であり、流動性を改善することができるが、特にSBBの電解質によるイオン移動(Ionentransfer)によって活性成分の性能を低下させかねない。
【0009】
エネルギー貯蔵体のための接合ガラスは、特許文献4に記載されていて、これは最大25質量%のB23を含有する。B23の含有率を上述の上限値に制限することは、そうでないとこの接合ガラスが吸着水によって著しく攻撃されることにより説明されている。
【0010】
特許文献5は、少なくとも0.1〜10質量%のZrO2を有する、SBBの接合ガラスを内容としている。酸化ジルコニウムは、この文献では、化学的耐性の改善のために使用されている。ただしこれは比較的強く相分離及び結晶化する傾向もあり、並びに高い原料コストのために、ガラス製造プロセスの効率の低下を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US 8,334,053 B2
【特許文献2】GB 2207545 A
【特許文献3】US 4,268,313 A
【特許文献4】US 8,034,457 B2
【特許文献5】US 8,043,986 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この背景から、本発明の課題は、ナトリウムに対して極めて良好な耐性を示し、かつ金属及び/又はセラミック、特に酸化アルミニウム及び/又はNASICONの接合に適していて、かつ特に溶融金属塩に対してもナトリウム融液に対しても極めて良好な耐性を示す接合による結合を製造するために適した接合ガラスを提供することである。同様に、本発明の課題は、好ましい用途を提供することである。同様に本発明の課題は、接合ガラスを用いたセラミック、特に酸化アルミニウム及び/又はNASICONの接合による結合部を提供すること、この接合ガラスを有する電気化学的エネルギー貯蔵ユニット及び/又はエネルギー製造ユニットを提供すること、並びに電気的絶縁性の封止材料として接合ガラスを有する電気的ブシュを提供することであり、これらの全ては、接合ガラスの特性により達成されかつ従って改善された特性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された、接合ガラス、接合による結合部及び電気化学的エネルギー貯蔵ユニット及び/又はエネルギー製造ユニット並びにブシュ及びその使用により解決される。好ましい実施態様は、独立請求項を引用する請求項から明らかである。
【0014】
以後、他に明確に記載がなされていない限り、構成成分及び/又は内容物の全ての数値は、酸化物を基準とした質量%で表される。
【0015】
本発明による接合ガラスは、SiO2を40%〜50%及びB23を25%超〜30%含有する。この組合せにより、特に、熱膨張係数が調節され、同時に流動特性も制御される。この接合ガラスは、更に本発明の場合に、Na2Oを5%〜15%及びAl23を17%〜25%含有する。これらの構成成分によって、特に接合ガラスの良好な化学的耐性を調節することができる。
【0016】
本発明による接合ガラスは、任意に、合計で2%未満のアルカリ土類金属酸化物MOを有する。MOは、CaO、SrO及び/又はBaOを表し、これらは単独で又は各々の可能な組み合わせの形で総含有率の記載の上限まで接合ガラス中に含まれていることができる。アルカリ土類金属酸化物は、ガラスの流動特性に好ましい影響を与えることができる。これらは拡散又は電解質のナトリウムイオンによるイオン移動によって活性成分の1つの効率を低減することがあるため、これらの含有率は本発明の場合には最低値にまで低減される。
【0017】
更に、本発明による接合ガラスは、不可避的な不純物を除いて、ZrO2不含である。不純物は、ガラス製造のために使用される原料の不純物混入及び/又は使用された溶融装置の不純物混入及び/又は腐食によってガラス中へ導入されることがある。このような不純物は、一般に0.2質量%、特に0.1質量%の割合を超えない。これはもちろんZrO2の完全な不含をも含む。上述の先行技術の教示とは反対に、本発明による接合ガラスは、化学的耐性の改善のためのZrO2が省かれるにもかかわらず極めて良好な化学的耐性を示す。更に、ZrO2は結晶核として作用でき、これがプロセスラインの間の結晶化を促すことが確認された。本発明による接合ガラスの結晶化(部分結晶化を含む)は望ましくない、それというのも、この結晶性の領域は接合による結合の製造の際に難点を生じ、かつ/又はそれどころかこの接合による結合を緻密でなくしてしまいかねないためである。従って、本発明による接合ガラスは、特に好ましくは、非晶質ガラス、特に結晶領域がない非晶質ガラスである。
【0018】
接合ガラスの試験において、上述の先行技術に対して、加水分解による老化は、25%を越えるB23の高められた含有率では確認できなかったことが判明した。その代わりに、発明者は、25%超〜30%の比較的高いホウ素含有率は、意外にもナトリウム融液に対する耐性を高めることが確認された。上述の構成成分のおかげで、本発明による接合ガラスは、好ましくは結晶化及び偏析なしで溶融できる。
【0019】
好ましい実施態様の場合には、本発明による接合ガラスは、5%までZnOを、及び/又は5%までTiO2を、及び/又は5%までSnO2を及び/又は15%までMgOを含む。これらの任意付加的な構成成分は、単独で又は各々任意な組合せで、接合ガラス中に含まれていてもよい。ZnO、TiO2及び/又はSnO2は、特にアルカリ性領域での化学的耐性を改善する。MgOは、任意に含まれていてもよく、この含有率は、接合ガラスの熱膨張率が接合相手に適合できるように選択される。意外にも、比較的高いMgO含有率は、接合ガラスの熱膨張係数を高める。好ましくは、0〜<2%のMgOの含有率も考慮することができる。
【0020】
特に好ましくは、接合ガラスの構成成分は、上述の限界値の範囲内で、接合ガラスの線熱膨張係数α20-300℃が5.5・10-6-1〜10.5・10-6-1、好ましくは5.5・10-6-1〜8.5・10-6-1、特に好ましくは6.0・10-6-1〜8.0・10-6-1の間の値を示すように選択される。このように、特に、接合ガラスの酸化アルミニウムの熱膨張挙動への適合が達成される。
【0021】
好ましくは、同様に、この接合ガラスは、付加的に酸化物系の充填材、特に無機酸化物を30体積%まで含有することができる。これらの充填材は、特に熱膨張挙動及び/又は耐食性及び/又は流動挙動の調節のために使用することができ、その際、この充填材は好ましくは粒子及び/又は繊維の形で存在する。このような充填材はMgO、Al23及び/又は安定化されたZrO2である。これらは、特に、熱膨張挙動を、接合相手としての金属に合わせるために使用することができる。これらの充填材は、通常ではガラスマトリックス中に包まれてはおらず、いわば孤立してこのマトリックス中に存在する。
【0022】
本発明は、同様に、上述の接合ガラスを用いた第1の接合部材と第2の接合部材との間の接合による結合部を含む。接合部材として、接合ガラスで結合される要素であると解釈される。この接合ガラスは、この場合、特にその都度の接合部材と素材による拘束での結合を行う。素材による拘束での結合は、結合相手が、ここではその都度の接合部材が、接合ガラスを用いて、原子の力又は分子の力により結びついていることにより特徴付けられる。これは引き剥がすことができない結合を生じ、この結合は、結合材料、ここでは接合ガラスの破壊によってのみ分離することができる。この接合ガラスは、特に好ましくは、接合相手としての接合部材間に気密で緻密な接合による結合を提供することができる。
【0023】
この接合部材の接合による結合は、接合ガラスにより製造され、かつそれによって接合ガラスで結合されているその都度の接合部材の接合箇所に存在する。この接合箇所は、従って、接合ガラスと接触しているその都度の接合部材の表面である。この接合部材は、全面的に、又は任意な領域で、接合ガラスと結合していて、この接合ガラスを介して他の接合部材と結合している。記載されているように、本発明による接合ガラスは、セラミック及び/又は金属の接合を予定している。従って、本発明による接合による結合は、第1の接合部材が、少なくとも接合箇所にセラミック又は金属を有していることが考慮される。第2の接合部材も、同様に、少なくとも接合箇所にセラミック又は金属を有する。金属とセラミックとの組み合わせも、もちろん同様に可能であり、本発明に含まれる。組合せの場合に、これは同様に、第2の接合部材がハイブリッド部材であることもでき、このハイブリッド部材が接合による結合の領域で金属とセラミックとから構成されていることを意味する。従って、他の言葉でかつ簡単に表現すると、この接合ガラスを用いて、特に金属と金属との、又はセラミックと金属との、又はセラミックとセラミックとの、又は金属又はセラミックと、セラミックと金属とからなるハイブリッド材料との接合による結合を製造することができる。
【0024】
記載されたように、本発明による接合ガラスは、特に酸化アルミニウムの接合のために適しているため、本発明の場合の接合による結合は、第1の接合部材が少なくとも接合箇所に酸化アルミニウムを有するか、特に酸化アルミニウムからなることが考慮される。この第2の接合部材は、少なくとも接合箇所に金属を有するか、又は酸化アルミニウムと組み合わせた形で有する。組合せの場合に、特に接合部材はハイブリッド部材の形態で生じ、このハイブリッド部材は、接合による結合の領域内で、金属及び酸化アルミニウムから構成されている。
【0025】
第1の接合部材の酸化アルミニウムは、α−酸化アルミニウム又はβ−酸化アルミニウム又はβ″−酸化アルミニウムを有する場合が好ましく、これらからなる場合が特に好ましい。第2の接合部材の酸化アルミニウムは、少なくとも接合箇所が酸化アルミニウムからなるか又はこれを有する場合が特に好ましく、同様にα−酸化アルミニウム又はβ−酸化アルミニウム又はβ″−酸化アルミニウムからなるか又はこれを有する場合が特に好ましい。しかしながら、これは、第1の接合部材の酸化アルミニウムの実施態様が、第2の接合部材の酸化アルミニウムの実施態様と一致しなければならないことを意味しない、むしろ第1の接合部材と第2の接合部材において酸化アルミニウムの実施態様が異なる場合が、例えば第1の接合部材がα−酸化アルミニウムを有し、第2の接合部材がβ−酸化アルミニウム又はβ″−酸化アルミニウムを有する場合が好ましい。この構成は、特にSBBにおいて使用され、かつこのために重要である。
【0026】
同様に、セラミックは、酸化アルミニウムの代わりに、典型的にはAxy(PO43のタイプ(式中、アルカリ金属イオンA(例えばNa)及び多価金属イオンB(例えばFe、Cr、Ti))のNASICONセラミック(ナトリウム超イオン伝導体、英語でNa super ion conducting)の種類から選択される場合が可能でありかつ好ましい。挙げられた全ての実施態様は、このセラミックタイプを有することも可能である。
【0027】
同様に、センサ及び/又はアクチュエータのハウジング中の接合部材が、攻撃性の媒体、特に液体ナトリウム又はナトリウム塩に曝されることも可能である。これについての可能な使用分野は、例えば、塩溶融液の電気分解による液体ナトリウムの合成、並びに液体ナトリウムを用いた増殖炉の冷却の領域である。
【0028】
記載されたように、第2の接合部材は、少なくとも接合箇所に同様に好ましくは金属を有する。特に好ましくは、この金属は、(同じ温度範囲で)セラミック、特に酸化アルミニウムの線熱膨張係数α20-300℃より大きいか又は同じ線熱膨張係数α20-300℃を示す。
【0029】
特に好ましくは、この金属の線熱膨張係数α20-300℃の値は8・10-6-1より高い。このような好ましい金属の例は、特殊鋼、低炭素鋼及び/又はニッケル合金である。
【0030】
本発明による接合による結合は、高められた寿命及び/又は高められた効率を有する電気化学的エネルギー貯蔵ユニット及び/又はエネルギー製造ユニットの製造を可能にする。従ってこれらも同様に本発明に含まれている。電気化学的エネルギー貯蔵ユニットの例は、充電駆動時の蓄電池であり、電気化学的エネルギー製造ユニットの例は、放電駆動時のバッテリー又は蓄電池である。同様に、化学反応及び/又は生化学反応のための反応器も可能であり、この場合、エネルギー状態は出発材料及び生成物のその都度の酸化状態及び還元状態により表される。特に好ましくは、本発明によるエネルギー貯蔵ユニット及び/又はエネルギー製造ユニットは、本発明による接合による結合部を備えたナトリウム硫黄バッテリー又はナトリウム金属塩化物バッテリーである。
【0031】
本発明による接合による結合部は、同様にブシュ部材、特に電気的ブシュ部材の製造を可能にする。
【0032】
好ましい電気的ブシュ部材は、貫通孔を有する金属製の支持部材及び金属製の機能部材を有する。この機能部材は、記載された本発明による接合ガラスにより貫通孔内で支持部材から電気的に絶縁されて保持されている。この場合、この貫通孔は同時に接合ガラスにより密閉、特に気密で緻密に密閉されている。
【0033】
本発明による接合ガラスは、更に特に好ましくは、ナトリウム硫黄バッテリー又はナトリウム金属塩化物バッテリーの製造のために、特にこれらのバッテリーのハウジングの気密なシールのため及び/又はこれらのバッテリーの電解セル内での膜部材の密閉及び/又は結合のために使用される。この結合は、適切な支持部材などと行うこともできる。
【0034】
本発明によるブシュ部材は、特に好ましくは危険物質の廃棄処理のための装置中で、及び/又は核原子炉中で使用され、特に増殖炉中で、そこで特に封じ込め容器用の電気的ブシュとして及び/又は冷却回路用の電気的ブシュとして使用される。この冷却回路は、一次回路及び/又は二次回路を有することができ、これらは、特に増殖炉の場合に冷媒として液体ナトリウムを用いて駆動される。このブシュ部材は、この場合に、液体ナトリウムと接触できかつこの液体ナトリウムに持続的に耐えられなければならない。このブシュ部材を用いて、例えば冷却回路中のポンプ及び/又はセンサに電流を供給でき、及び/又はセンサの信号を導き出すことができる。同様に、原子炉の封じ込め容器(格納容器)中でこのブシュ部材の使用も可能である。この場合、特に故障時に液体ナトリウム及び/又はナトリウム蒸気と接触することができ、なおもこの封じ込め容器を確実に閉鎖することができる。同様に、本発明には、例えば燃焼又は化学的に反応させる際に攻撃性のナトリウム化合物及び/又は液体ナトリウム及び/又はナトリウム蒸気を生じさせることができる危険物質を廃棄処理するための装置中での記載されたブシュ部材の使用も含む。
【0035】
本発明を、図面を用いて更に説明する。全ての図面は、単に図式的であり、実際の対象の寸法は、図の寸法及び/又は比率から逸脱していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】aは、部分的に接合ガラスを備えている第1の接合部材の断面図を示し、bは、部分的に接合ガラスを備えている他の第1の接合部材の断面図を示す。
図2】aは、接合による結合部を有する部材群の断面図を示し、bは、接合による結合部を有する他の部材群の断面図を示す。
図3】ゼブラバッテリーの断面図を示す。
図4】他のゼブラバッテリーの断面図を示す。
図5】aは、ブシュ部材の断面図を示し、bは、aのブシュ部材の上から見た図を示す。
図6】他のブシュ部材の断面図を示す。
図7】原子炉建屋の封じ込め容器の断面図を示す。
図8】原子炉及び原子炉建屋の封じ込め容器の断面図を示す。
【実施例】
【0037】
図1aは、第1の接合部材の図式的な断面図を表す。接合部材(2)は、言うなれば接合ガラス(1)用の基材であり、この接合ガラス(1)は接合部材(2)の表面上に部分的に存在し、この領域内で接合部材(2)と素材による拘束での結合が行われている。接合ガラス(1)が存在している箇所は、接合箇所であることができ、以後、他の接合部材との接合による結合が製造される接合箇所と定義される。接合ガラス(1)を備えたこの示された接合部材(2)は、特に、他の接合部材との組合せによって接合による結合を製造するために用いることができる。本願の実施例の場合には、この接合部材(2)はβ−酸化アルミニウム又はβ″−酸化アルミニウム又はNASICONからなる。上記のように、この接合部材の酸化アルミニウム(2)は、接合ガラス(1)との結合が製造される接合箇所にだけ存在しかつこの接合部材の他の領域は他の材料からなることも可能である。
【0038】
図1bは、主に図1aと同様の、接合ガラスを備えた接合部材を示すが、この実施例の場合には、接合部材(3)は、α−酸化アルミニウムからなるか、又は少なくとも接合ガラス(1)が存在する接合箇所にα−酸化アルミニウムを有している。図1aに関してなされた他の全ての説明は、図1bにも適用可能である。
【0039】
図2aは、接合ガラス(1)により結合された、第1の接合部材(2)及び第2の接合部材(3)からなる部材群により形成された接合による結合部の断面図を示す。この図2aから認識できるように、この図示された対象は原則的に図1a及び1bの組合せである。第1の接合部材(2)の材料は、この図の場合にもβ−酸化アルミニウム又はβ″−酸化アルミニウムであり、第2の接合部材(3)の材料は、α−酸化アルミニウムである。この接合ガラス(1)は、接合箇所で接合部材(2,3)の表面と素材による拘束によって結合され、かつ接合部材(2,3)の間の気密でかつ持続的な結合を製造できる。
【0040】
図2bは、図2aと類似した実施態様の断面図を示すが、第1の接合部材がβ−酸化アルミニウム又はβ″−酸化アルミニウム(2)とα−酸化アルミニウム(3)とから構成されている。この第2の接合部材(4)は、この実施例の場合に金属からなる。当業者には、図示された接合による結合から相応する組合せによって、要求に応じてその使用に適合させることができる多種多様な総合部材を製造できることが容易にわかる。
【0041】
図3には、図式的なゼブラバッテリーの断面図を示す。このバッテリーは、ポット状のハウジング(4)及び蓋(3)により密閉されている。ハウジング(4)及び蓋(3)は接合ガラス(1)によって相互に結合されている。このカバー(3)は、言うなれば上述の接合による結合の第1の接合部材を、ハウジング(4)は、言うなれば第2の接合部材を表す。このハウジング(4)は、ゼブラバッテリーの場合には、通常では金属、例えば特殊鋼、ニッケル合金又は低炭素鋼からなり、蓋(3)は酸化アルミニウム、特にα−酸化アルミニウムからなる。本発明による接合ガラス(1)は、確実かつ持続的に、両方の接合部材である蓋(3)及びハウジング(4)との間で緻密な結合を製造できるため、ゼブラバッテリーの内容物をハウジング内部に確実に密閉することができる。
【0042】
このハウジングの内部には、通常ではβ−酸化アルミニウム又はβ″−酸化アルミニウムから製造された中空円筒型の半透膜(2)がある。ハウジング(4)の内壁と膜(2)の外壁との間の空間は、液体ナトリウム(11)が充填されていて、これがアノードを形成する。導電性ハウジング(4)との接触により、このハウジング(4)も同様にアノードとして作用する。中空円筒形の膜(2)の内部空間は、例えば電解質(10)としてテトラクロロアルミン酸ナトリウムが満たされていて、カソードとして作用する。このβ−酸化アルミニウム又はβ″−酸化アルミニウムからなる半透膜(2)は、Naイオンに対してだけ透過性である。この膜は接合ガラス(1)によって蓋(3)と結合されている。この膜(2)は、ここでは、上述の接合による結合の一般原理では、いわば第1の接合部材であり、蓋(3)は第2の接合部材である。ゼブラバッテリーのこの箇所での接合による結合の場合には、接合ガラス(1)が電解質(10)に対して及び液体ナトリウム(11)に対して不透過性であることが重要である、そうでないと電解質(10)及び/又は液体ナトリウム(11)は、それぞれ他の物質によって被毒されかねず、それによりこのバッテリーは破壊されるか又は少なくともその容量が低減されかねないためである。
【0043】
蓋(3)自体は、この実施例の場合には電気的絶縁体であり、アノードとカソードとを備えたバッテリーを回路に接続するために、電極(52)を必要とする。図3による実施例の場合には、金属ロッド(52)がスリーブ(51)を通じて蓋(3)を貫通している。この箇所でも同様に、金属ロッド(52)又は一般に電極が、本発明による接合ガラスを備えたガラス金属ブシュ中で蓋(2)を通過するように案内されることが考えられる。
【0044】
図4は、図3によるゼブラバッテリーの別の実施態様を示す。ハウジング(4)と蓋(41)との結合部の接合ガラス(1)が、両方の接合部材との間で電気絶縁性の接合による結合部を形成するため、蓋(41)は、図4中に示されているように金属又は少なくとも導電性材料から製造されていて、かつ形状的に電解質(10)とは接触せず、そのため案内される電極(52)は省略でき、かつこの蓋自体がカソードとして作用するように構成することも可能である。この接合ガラスは、特に3つの接合部材であるハウジング(4)、蓋(3)及び膜(2)を1つの箇所で、ここでは環状の形に結合する。
【0045】
図5aは、ブシュ部材(20)の図式的な断面図を示す。このブシュ部材は、ここでは金属製のシリンダの形の支持部材(30)を有している。この支持部材は、通常では外部導体を表す。この記載された適用の場合には、この外部導体は通常では鋼からなる。好ましくは、特に炭素鋼、オーステナイト特殊鋼及び/又はフェライト特殊鋼であることができる。相応する適用のために、コバール(Kovar)の使用も可能である。同様に、この支持部材(30)はセラミックから製造することも可能である。この支持部材(30)中には貫通孔があり、この貫通孔が支持部材(30)の上側と、その下側とを連結している。
【0046】
この貫通孔中に、ここでは、通常では内部導体を表すロッド状の電気的導体の形の機能部材(31)が配置されている。この導体は多様な材料からなることができ、通常では、コバール及び/又は鋼及び/又は銅及び/又は合金、例えばNiFe合金及び/又はCrNi合金からなることができる。この接合ガラス(1)は、この機能部材(31)を、貫通孔中で支持部材(30)から電気的に絶縁して固定しかつこの貫通孔を密閉している。この本発明による接合ガラス(1)は、気密で緻密な密閉を達成することができるという利点を有する。ブシュ部材(20)は、通常では支持部材(30)と機能部材(31)と一緒に接合ガラス(1)を融合することにより製造される。
【0047】
図5bは、図5aのブシュ部材(20)を上から見た図を示す。図示された場合には、機能部材(31)は、円形の貫通孔内で同心円状に配置されている。この形状は、特にいわゆる加圧ガラス化のために適していて、この場合、支持部材(30)の熱膨張係数が、接合ガラス(1)の熱膨張係数よりも大きい。融合後の冷却の際に、この支持部材(30)は、いわば接合ガラス(1)に対して収縮し、この接合ガラス(1)に圧縮応力を及ぼし、それにより、この貫通孔から接合ガラス(1)を抜き出すために必要な機械的な引き抜き力が高められる。
【0048】
図5a及び5bのブシュ部材(20)は、大型ブシュの種類に属するブシュ部材を表す。
【0049】
図6は、支持部材(30)中に多数の貫通孔を備えた他のブシュ部材(20)の断面図を示す。このいわゆる平坦な部材は、むしろ高さよりも広い寸法を有する。これらの貫通孔は、マトリックス中に配置されていてもよい。このマトリックス自体は可変であり、このことは、貫通孔の位置が所望の適用に応じて選択できることを意味している。この実施態様は、例えば、複合的に複数の電気部材及び/又は電子部材に電流を供給するために、例えばこれらの部材を稼働させるため及び/又はこれらの部材によって作成された信号を、支持部材(30)を通して案内するために使用することができる。支持部材(30)は、該当する装置のハウジングをシールすることができるか又はシールすることはできない。この支持部材(30)は、特に金属及び/又は合金又はセラミック材料から製造されていてもよい。
【0050】
図7中には、エネルギー製造装置、例えば原子炉、特に核原子炉、又は危険な材料を取り除くための装置の封じ込め容器(格納容器)(80)が示されている。これらは、非常時及び故障時でも、カプセル内に確実に封じ込められていなければならない。この開示によるブシュ部材(20)は、好ましくは、原子炉及び/又は封じ込め容器内の装置と接触を提供するために使用される。このような装置は、例えば原子炉の運転条件の監視装置及び/又は原子炉又はその他の装置の制御装置である。
【0051】
図8中には、発電装置(81)、例えば原子炉が示されている。この原子炉(81)の図式的な図は、この原子炉(81)の冷却回路、増殖炉の場合には、冷媒として液体ナトリウムを用いて運転される一次回路及び/又は二次回路を有する。このブシュ部材(20)を介して、制御装置及び/又はセンサ装置及び/又は操作装置、例えば特にポンプ内の電気モータに電流を供給することができる。同様に、この封じ込め容器は、図8との関連で記載されているように、ブシュ部材(10)を備えていてもよい。
【0052】
本発明による接合ガラス(1)は、慣用のガラス溶融法で製造された。このガラス溶融の詳細は当業者に公知であり、この箇所では繰り返さない。
【0053】
次の表1は、4つの例示された本発明による接合ガラス(1)番号1〜番号4の組成及び物理特性をまとめている。
【表1】
表1:本発明による接合ガラスの実施例、酸化物を基準とした質量%で表示。
【0054】
表2は、本発明のガラス組成の範囲外にある接合ガラスの組成及び物理特性を挙げ、かつこれらを比較例として以後VG1及びVG2という。
【0055】
比較例のガラスは、本発明による接合ガラスよりもSiO2の含有率がより高く、かつB23及びAl23の含有率がより低い。
【表2】
表2:接合ガラスの比較例、酸化物を基準とした質量%で表示。
【0056】
表1からの本発明による接合ガラスの耐性を、表2中の比較例のVG1及びVG2のガラスと比べて決定した。このために、該当するガラスからなる一辺の長さを有するガラス立方体を300℃の溶融したナトリウムからなる浴中に100hの定義された時間置き、この試料の外観及び質量損失を決定する。表1からの全ての本発明による接合ガラスは、表2からの比較例と比べてより耐性が高いか、又はより大きな熱膨張率を示し、このことは、金属との接合による結合を製造するためにより適している。
【0057】
先行技術に対する本発明による接合ガラスの利点は、セラミック及び/又は金属との接合による結合部の製造のための適用性並びにその改善された化学的耐性の点にある。
【0058】
[本発明の実施形態]
1. 少なくとも1のセラミック又は金属との接合による結合を製造するための接合ガラス(1)において、不可避的な不純物を除いてZrO2不含であり、(酸化物を基準として質量%で示して)
SiO2 40〜50
23 >25〜30
Na2O 5〜15
Al23 17〜25
Σ MO 0〜<2
を含有し、MOは、単独で又は各々組み合わせた形の、CaO及び/又はSrO及び/又はBaOを表す、接合ガラス(1)。
2. ZnO 0〜5
TiO2 0〜5
SnO2 0〜5
MgO 0〜15
を、単独で又は各々組み合わせた形で含有する、前記1に記載の接合ガラス(1)。
3. 20〜300℃の温度範囲の線熱膨張係数α20-300℃が、5.5・10-6-1〜10.5・10-6-1、好ましくは5.5・10-6-1〜8.5・10-6-1、特に好ましくは6.0・10-6-1〜8.0・10-6-1を示す、前記1又は2に記載の接合ガラス(1)。
4. 更に、30体積%まで酸化物系充填材を、特に熱膨張挙動及び/又は耐食性及び/又は流動挙動の調節のために含み、前記充填材は好ましくは粒子及び/又は繊維の形で存在する、前記1から3までのいずれか1に記載の接合ガラス(1)。
5. 前記1から4までのいずれか1に記載の接合ガラス(1)を用いた、第1の接合部材(2)と第2の接合部材(3,4,41)との間の接合による結合部において、前記接合ガラス(1)は第1の接合部材(2)の接合箇所を、第2の接合部材(3,4,41)の接合箇所とを結合している、接合による結合部。
6. 前記5に記載の接合による結合部において、第1の接合部材(2)は少なくともその接合箇所がセラミックを有し、第2の接合部材(3,4,41)は少なくともその接合箇所が金属及び/又はセラミックを有する、接合による結合部。
7. 前記5又は6に記載の接合による結合部において、第1の接合部材(2)及び/又は第2の接合部材(3,4,41)の接合箇所のセラミックは、酸化アルミニウム及び/又はα−酸化アルミニウム及び/又はβ−酸化アルミニウム及び/又はβ″−酸化アルミニウム及び/又はNASICONの群から選択されている、接合による結合部。
8. 前記5から7までのいずれか1に記載の接合による結合部において、第2の接合部材(41)の金属は、同じ温度範囲でセラミックの線熱膨張係数α20-300℃より大きいか又は同じ線熱膨張係数α20-300℃を示す、接合による結合部。
9. 前記5に記載の接合による結合部において、第1の接合部材(2)は少なくともその接合箇所が金属を有し、第2の接合部材(3)は少なくともその接合箇所が金属を有する、接合による結合部。
10. 前記5から9までのいずれか1に記載の接合による結合部において、第2の接合部材の金属(41)は、α20-300℃ > 8・10-6-1である、接合による結合部。
11. 前記5から10までのいずれか1に記載の、少なくとも1つの接合による結合部を有する、電気化学的エネルギー貯蔵ユニット及び/又はエネルギー製造ユニット、好ましくはナトリウム硫黄バッテリー又はナトリウム金属塩化物バッテリー。
12. 前記5から10までのいずれか1に記載の、少なくとも1つの接合による結合部を有する、ブシュ部材(20)、好ましくは電気的ブシュ部材。
13. 貫通孔を有する金属製の支持部材(30)、及び金属製の機能部材(31)を備えた電気的ブシュ部材(20)において、前記金属製の機能部材(31)は、前記貫通孔内で、前記1から4までのいずれか1に記載の接合ガラス(1)により、前記支持部材(30)とは電気的に絶縁されて、かつ前記貫通孔を密閉して保持されている、電気的ブシュ部材(20)。
14. ナトリウム硫黄バッテリー又はナトリウム金属塩化物バッテリーの製造のための、特に前記バッテリーのハウジング(4)の気密なシールのための及び/又は膜部材(2)の密閉のための、前記1から4までのいずれか1に記載の接合ガラス(1)の使用。
15. 危険物質の廃棄処理のための装置中での及び/又は核原子炉中での、特に増殖炉中での、特に封じ込め容器用の電気的ブシュとしての及び/又は冷却回路用の電気的ブシュとしての、前記12又は13に記載のブシュ部材(20)の使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8