特許第6104233号(P6104233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104233
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】白血球分析システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20170316BHJP
   G01N 15/14 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   G01N33/49 A
   G01N33/49 K
   G01N15/14 C
   G01N15/14 D
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-509318(P2014-509318)
(86)(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公表番号】特表2014-520251(P2014-520251A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】US2012035158
(87)【国際公開番号】WO2012151102
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】61/482,541
(32)【優先日】2011年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジオン
(72)【発明者】
【氏名】バツカ,ジヤコモ
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−525589(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0273168(US,A1)
【文献】 特表2000−501838(JP,A)
【文献】 特表2003−510557(JP,A)
【文献】 特表2010−513929(JP,A)
【文献】 特表2013−502594(JP,A)
【文献】 特開2011−069707(JP,A)
【文献】 特表平09−508705(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/001868(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/49
G01N 15/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の白血球(WBC)を含む血液試料においてWBC識別分析を行うための血液分析器であって、
前記血液試料内の粒子を励起するように配置された励起源と;
(1)前記励起血液試料からの軸方向光損失を測定するように配置された軸方向光損失検出器、(2)前記励起血液試料からの中間角散乱を測定するように配置された中間角散乱検出器、(3)前記励起血液試料からの90°偏光側方散乱を測定するように配置された偏光側方散乱検出器、(4)前記励起血液試料からの90°偏光解消側方散乱を測定するように配置された偏光解消側方散乱検出器、および(5)前記励起血液試料からの蛍光発光を測定するように配置された蛍光検出器、を含む複数の検出器と;ならびに
(a)血液試料を、赤血球(RBC)溶解薬剤および細胞膜透過性の核酸結合性蛍光染料を含むWBC試薬で希釈する;
(b)ステップ(a)の希釈血液試料を、インキュベーション時間の間、インキュベートする;
(c)ステップ(b)でインキュベートした試料を血液分析器中のフローセルに送り届ける;
(d)前記インキュベートした試料が前記フローセルを通過する間に、ステップ(c)でインキュベートした試料を、励起源で励起する;
(e)前記励起試料からの複数の光散乱シグナルおよび蛍光発光シグナルを収集する;
(f)WBC識別分析を行うに先立って、蛍光発光シグナルに限定され、およびRBC断片を含むRBCに由来する蛍光発光シグナルより大きく、かつWBCに由来する蛍光発光シグナルより小さな蛍光度に設定されている蛍光トリガーのみを使用して核不在イベントを除去し、および核含有イベントを保持する;および
(g)ステップ(f)で収集した核含有イベントにおいてWBC識別分析を行うように構成されたプロセッサ;
とを含む血液分析器。
【請求項2】
前記軸方向光損失検出器が、0°散乱での軸方向光損失を測定する、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項3】
前記中間角散乱検出器が、約3°〜約15°で光角度散乱を測定する、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項4】
前記複数の検出器が、1つまたは複数の光電子増倍管を含む、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項5】
前記励起源が、レーザーである、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項6】
前記レーザーが、前記蛍光染料に対応する波長の光を発光するように構成される、請求項5に記載の血液分析器。
【請求項7】
前記蛍光染料が、前記励起源に対応するように選択される、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項8】
前記血液試料をWBC試薬で希釈するためのインキュベーションサブシステムをさらに含む、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項9】
前記WBC試薬が、蛍光染料および溶解薬剤を含む、請求項8に記載の血液分析器。
【請求項10】
前記WBC試薬が、(a)少なくとも1つの界面活性剤、(b)少なくとも1つの緩衝液または少なくとも1つの塩、(c)少なくとも1つの抗菌剤、および(d)蛍光染料を含む、請求項8に記載の血液分析器。
【請求項11】
前記インキュベーションサブシステムが、前記血液試料を前記WBC試薬と共に、約25秒未満の時間、インキュベートするように構成される、請求項8に記載の血液分析器。
【請求項12】
前記インキュベーションサブシステムが、前記血液試料を前記WBC試薬と共に、約17秒未満の時間、インキュベートするように構成される、請求項8に記載の血液分析器。
【請求項13】
前記インキュベーションサブシステムが、前記血液試料を前記WBC試薬と共に、約9秒未満の時間、インキュベートするように構成される、請求項8に記載の血液分析器。
【請求項14】
前記インキュベーションサブシステムが、前記血液試料を前記WBC試薬と共に、約30℃〜約50℃の温度範囲でインキュベートするように構成される、請求項8に記載の血液分析器。
【請求項15】
前記インキュベーションサブシステムが、前記血液試料を前記WBC試薬と共に、約40℃の温度でインキュベートするように構成される、請求項8に記載の血液分析器。
【請求項16】
自動化血液分析器を使って白血球(WBC)分析を行う方法であって、
(a)全血試料を、赤血球(RBC)溶解薬剤および細胞膜透過性の核酸結合性蛍光染料を含むWBC試薬で希釈すること;
(b)ステップ(a)の希釈血液試料を、インキュベーション時間の間、インキュベートすること;
(c)ステップ(b)でインキュベートした試料を血液分析器中のフローセルに送り届けること;
(d)前記インキュベートした試料が前記フローセルを通過する間に、ステップ(c)でインキュベートした試料を、励起源で励起すること;
(e)前記励起試料からの複数の光散乱シグナルおよび蛍光発光シグナルを収集すること;
(f)WBC識別分析を行うに先立って、蛍光発光シグナルに限定され、およびRBC断片を含むRBCに由来する蛍光発光シグナルより大きく、かつWBCに由来する蛍光発光シグナルより小さな蛍光度に設定されている蛍光トリガーのみを使用して核不在イベントを除去し、および核含有イベントを保持すること;ならびに
(g)ステップ(e)で収集した全シグナルに基づいて、ステップ(f)で収集した核含有イベントにおいてWBC識別分析を行うこと
を含む方法。
【請求項17】
前記WBC試薬が、(a)少なくとも1つの界面活性剤、(b)少なくとも1つの緩衝液または少なくとも1つの塩、(c)少なくとも1つの抗菌剤、および(d)少なくとも1つの蛍光染料、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記励起源が、約350nm〜約700nmの波長を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
蛍光発光が、帯域フィルターまたはロングパスフィルターを使って、約360nmから約750nmの波長で収集される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、35合衆国法典.§119(e)に基づき、2011年5月4日出願の「白血球の分析方法(Method For Analyzing White Blood Cells)」と題する米国特許仮出願第61/482,541号の利益を主張する。この特許の全開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
また、本出願は、2012年4月26日に出願の「有核赤血球分析システムおよび方法(NUCLEATED RED (BLOOD CELL ANALYSIS SYSTEM AND METHOD)」と題する出願番号第xx/xxx、xxx号(Atty Dkt No:ADDV−017(11041USO1));および2012年4月26日出願の「好塩基球分析システムおよび方法(BASOPHIL ANALYSIS SYSTEM AND METHOD)」と題する出願番号第xx/xxx、xxx号(Atty Dkt No:ADDV−018(11042USO1))にも関連する。これらの特許の全開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、血液学検査システムおよび方法に関する。さらに具体的には、本発明は、血液試料を分析し、血液試料中の白血球(WBC)およびWBC亜集団を同定、分類、および/または定量するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
計数および分類を含む、正確で効率的なWBC分析のための血液アッセイの開発は、これまで難題であった。正確で効率的なアッセイの開発が困難な1つの理由は、試料の全血液細胞中のWBCの比較的低い濃度(約0.1%〜0.2%)にある。WBC分析のためのおよび堅固なWBC試薬を形成するための先進方法を設計する試みは、自動化血液分析器の領域の最優先課題の1つとして残されている。
【0005】
典型的な例では、赤血球(RBC)の溶解では、WBCおよびWBC亜集団の計数および分類の前に、RBCからの干渉を除き、WBCを濃縮することが必要である。さらに具体的には、正確で効率的なWBC分析では、(1)30秒未満でRBCの完全な溶解;(2)溶解後、RBCの大きな断片をより小さい小片へ破壊;および(3)WBCの残存、が正確な計数および適切な分類のために必要である。血液試料が、「不十分溶解」の場合、非溶解RBCは、たとえ非常に小さい濃度であっても、WBC計数および識別分析を妨げる。同様に、溶解RBCのより大きな断片も、WBC計数および識別分析を妨害する。実際、非溶解RBCおよび/または溶解RBCのより大きな断片をリンパ球(最小WBC)から分離するのは困難である。血液試料が「過剰溶解」した場合は、WBCの細胞膜が過剰損傷し、WBCの分類に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
一部の例では、WBC分析の困難さは、2つの特殊タイプの試料;すなわち、溶解抵抗性赤血球(rstRBC)含有試料、および脆いリンパ球含有試料、の存在により悪化する場合がある。rstRBCを含む試料の場合は、WBC数およびリンパ球の割合は、真のリンパ球以外の粒子の存在によって、誤って「高」く報告され、結果的に、患者に対する不正確な診断および治療のリスクを引き起こす。脆いリンパ球を含む試料の場合には、傷害性リンパ球は、WBC識別分析でそれらの特性を示すことができない。さらに、WBCの露出核は、有核赤血球(nRBC)として計数される可能性があり、アッセイによっては擬陽性のnRBC数となり得る。
【発明の概要】
【0007】
本明細書で提供されるのは、血液試料を分析するシステムおよび方法であり、さらに具体的には、白血球(WBC)識別分析を行うシステムおよび方法である。一般的に、開示システムおよび方法は、蛍光染色および蛍光トリガー戦略を使ってWBCを選別する。従って、非溶解RBC(例えば、rstRBC)およびRBC断片からの干渉は、実質的あるいは完全に除かれ、それにより、WBCとWBC亜集団の正確な計数および識別を確実にする。システムおよび方法は、また、古い試料を含む脆いリンパ球(または他の脆いWBC)を含む試料のアッセイに適する比較的穏やかなWBC試薬の開発を可能とする。
【0008】
一実施形態では、例えば、本明細書で開示のシステムおよび方法は、(a)発光スペクトルが血液測定装置の励起源に対応する専用の細胞膜透過性蛍光染料で血液試料を染色すること;(b)蛍光トリガーを使って、血液試料からWBCを選別すること;および(c)(1)軸方向光損失、(2)中間角散乱、(3)90°偏光側方散乱、(4)90°偏光解消側方散乱、および(5)蛍光発光、の測定値の組み合わせを使って、識別分析を行うこと、を含む。
【0009】
本明細書に組み込まれる添付図は、明細書の一部を構成する。図は更に、本説明と一緒に、提示システムおよび方法の原理を説明しているため、当業者はこのシステムと方法を作成し、使用できる。図中、類似の参照番号は、同一か、または機能的に類似の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】溶解後のWBC、およびRBCの残渣を示す全血試料のヒストグラムであり、軸方向光損失シグナルの測定を示すヒストグラムである。
図1B】溶解後のWBC、およびRBCの残渣を示す全血試料のヒストグラムであり、中間角散乱の測定を示すヒストグラムである。
図1C】溶解後のWBC、およびRBCの残渣を示す全血試料のヒストグラムであり、90°偏光側方散乱の測定を示すヒストグラムである。
図1D】溶解後のWBC、およびRBCの残渣を示す全血試料のヒストグラムであり、90°偏光解消側方散乱の測定を示すヒストグラムである。
図1E】溶解後のWBC、およびRBCの残渣を示す全血試料のヒストグラムであり、蛍光の測定を示すヒストグラムである。
図2】検討対象からRBCの断片を除外するための蛍光トリガーの使用を示すサイトグラムである。
図3】検討対象からRBCの断片を除外するための蛍光トリガーの使用を示す別のサイトグラムである。
図4】血液測定器を示す模式図である。
図5A】5分類WBC識別分析のサイトグラムを示し、軸方向光損失対中間角散乱を示すサイトグラムである。
図5B】5分類WBC識別分析のサイトグラムを示し、90°偏光側方散乱対軸方向光損失を示すサイトグラムである。
図5C】5分類WBC識別分析のサイトグラムを示し、90°偏光側方散乱対中間角散乱を示すサイトグラムである。
図5D】5分類WBC識別分析のサイトグラムを示し、90°偏光解消側方散乱対軸方向光損失を示すサイトグラムである。
図5E】5分類WBC識別分析のサイトグラムを示し、90°偏光解消側方散乱対中間角散乱を示すサイトグラムである。
図5F】5分類WBC識別分析のサイトグラムを示し、90°偏光解消側方散乱対90°偏光側方散乱.
図5G】5分類WBC識別分析のサイトグラムを示し、蛍光対軸方向光損失を示すサイトグラムである。
図5H】5分類WBC識別分析のサイトグラムを示し、蛍光対中間角散乱を示すサイトグラムである。
図5I】5分類WBC識別分析のサイトグラムを示し、蛍光対90°偏光側方散乱を示すサイトグラムである。
図5J】5分類WBC識別分析のサイトグラムを示し、蛍光対90°偏光解消側方散乱を示すサイトグラムである。
図6A】従来法を使用した、溶解抵抗性RBC含有全血試料の分析を示すサイトグラムである。
図6B】提示された実施形態に従って、蛍光トリガー血液分析器による軸方向光損失対中間角散乱を示すサイトグラムである。
図7A】従来法を使用した、古い全血試料の分析を示すサイトグラムである。
図7B】提示された実施形態に従って、蛍光トリガー血液分析器による軸方向光損失対中間角散乱を示すサイトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本明細書では、血液試料を分析するシステムおよび方法を提供し、さらに具体的には、白血球(WBC)識別分析を行い、WBCおよびWBC亜集団の同定、分類、および計数を行うシステムおよび方法を提供する。一般的に、開示システムおよび方法は、蛍光染色および蛍光トリガー戦略を使ってWBCを選別する。従って、不溶解の赤血球(RBC)、例えば、溶解抵抗性赤血球(rstRBC)、およびRBC断片からの干渉は、実質的に除去される。開示システムおよび方法は、それにより、WBCおよびWBC亜集団の正確な計数および識別を確実にする。また、システムおよび方法は、古い試料を含む脆いリンパ球(または他の脆いWBC)を含む試料のアッセイに適する比較的穏やかなWBC試薬の開発を可能とする。
【0012】
一実施形態では、例えば、本明細書で開示のシステムおよび方法は、(a)発光スペクトルが血液測定装置の励起源に対応する専用の細胞膜透過性蛍光染料で血液試料を染色すること;(b)蛍光トリガーを使って、血液試料からWBCを選別すること;および(c)(1)軸方向光損失、(2)中間角散乱、(3)90°偏光側方散乱、(4)90°偏光解消側方散乱、および(5)蛍光発光、の測定値の組み合わせを使って、識別分析を行うこと、を含む。
【0013】
本明細書で使われる表現の「蛍光情報」は、血液分析器の蛍光チャネルから集められたデータを意味する。本明細書で使われる表現の「蛍光チャネル」は、試料から発光された蛍光の量の測定のために適切な波長バンド用に設定された検出装置、例えば、光電子増倍管を意味する。
【0014】
(1)蛍光染料の使用
WBCは、その核中に比較的高い濃度のDNAを含む。しかし、成熟RBCはDNAを含まない。従って、蛍光染料は、2つのクラスの血液細胞;すなわち、核酸を含む血液細胞と核酸を含まない血液細胞を識別するように選択される。染料の目的は、生細胞中に容易に侵入し、高親和性でDNAと結合し、染料が適切な光源により励起されること、適切なストークスシフトを有する強力な蛍光を発光することである。可視バンド中の染料のピーク吸収は、染料を正確に励起し、最適な結果を得るために、実質的に光源の波長に一致する(光源の波長の50nm以内、より好ましくは、光源の波長の25nm以内で)。
【0015】
選択蛍光染料は、好ましくは、1)核酸に結合できる、2)WBCの細胞膜に侵入できる、3)光源にさらした場合、選択波長で励起可能である、4)光源による励起時、蛍光を発光する、および、5)生体安定性で、体液に可溶である。染料は、アクリジンオレンジ、SYBR11、SYBR Greenシリーズ染料、ヨウ化ヘキシジウム、SYTO11、SYTO12、SYTO13、SYTO14、SYTO16、SYTO21、SYTO RNA Select、SYTO24、SYTO25およびこれらのいずれかの等価物、からなる群から選択できる。染料を使って、WBCを「活性化(activate)」し、血液分析器中で形成された蛍光トリガーに基づいて、非溶解RBCおよびRBCの断片を「選別除去する(screen out)」。染料は、典型的な例では、約0.1ng/mL〜約0.1mg/mLの濃度で存在する。種々の染料が利用可能であるが、選択染料は、通常、血液分析器の励起源と対になり、ただ1つの専用の染料を使って、同定、定量、および/または分析する対象の全WBC亜集団の染色および蛍光発光の励起を行う。従って、ただ1つの(すなわち、専用の)染料を使って、すべてのWBC亜集団を一気に同定、定量、および分析できる。
【0016】
一実施形態では、蛍光染料は、1、000x10WBC/μlまで染色および活性化を実行できるのに十分な量の、1)少なくとも1つの界面活性剤、2)少なくとも1つの緩衝液、3)少なくとも1つの塩、および/または4)少なくとも1つの抗菌剤と組み合わせたWBC試薬で提供される。少なくとも1つの界面活性剤、例えば、「トリトン」X−100またはサポニンを使って、RBCの膜を破壊し、RBCの断片の寸法を小さくする。少なくとも1つの界面活性剤は、典型的な例では、約0.001%〜約5%の濃度で存在する。少なくとも1つの抗菌剤、例えば、「TRIADINE」または「PROCLIN」ファミリー由来のもの、を使って、試薬の微生物による汚染を防ぐ。少なくとも1つの抗菌剤の濃度は、必要な保存可能期間の間、試薬を保存するのに充分な濃度である。少なくとも1つの緩衝液、例えば、燐酸塩緩衝食塩水(PBS)または4−(2−ヒドロキシエチル)−l−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)を使って、RBCおよび貯蔵WBCの溶解を制御するために、反応混合物のpHを調節する。少なくとも1つの緩衝液は、典型的な例では、約0.01%〜約3%の濃度で存在する。pHは、典型的な例では、約3〜約12の範囲である。少なくとも1つの塩、例えば、NaClまたはNaSOを使って、浸透圧を調節し、溶解の効果を高める、および/またはWBC残存を最適化する。少なくとも1つの塩は、約0.01%〜約3%の濃度で存在してもよい。特定の場合では、少なくとも1つの緩衝液は、少なくとも1つの塩としての役割を果たすことができ、または少なくとも1つの塩は、少なくとも1つの緩衝液としての役割を果たすことができる。一般的に、低い浸透圧、または低張性を使って、RBCの溶解を加速する。浸透圧は、典型的な例では、約20〜約250mOsmの範囲である。
【0017】
RBCの溶解は、血液試料およびWBC試薬を約35容量部の試薬に対し、血液試料およびWBC試薬を約1容量部の試料の比率で混合後、室温を超える温度(例えば、約30℃〜約50℃の間、例えば、約40℃)で、比較的短い時間で(例えば、約25秒未満で、約17秒未満で、または約9秒未満ででも)起こさせることができる。分析用データを複数の光学的チャネルおよび少なくとも1つの蛍光チャネルで集める。
【0018】
図1A〜Eは、収集した光学的情報のヒストグラムおよび蛍光情報のヒストグラムによる、非溶解RBCおよびRBC断片からの真のWBCの分離を示す。図1Aは、軸方向光損失(ALL)の測定を示す。図IBのヒストグラムは、中間角散乱(IAS)の測定を示す。図1Cのヒストグラムは、90°偏光側方散乱(PSS)の測定を示す。図IDのヒストグラムは、90°偏光解消側方散乱(DSS)の測定を示す。図IEのヒストグラムは、蛍光(FL1)の測定を示す。これらのヒストグラムで、水平軸は、検出チャネルの値(またはチャンネルの名前、すなわち、ALL、IAS、PSS、DSSまたはFL1)を示す。垂直軸は、血液試料の成分のカウント数を示す。これらのヒストグラムで、線100はRBCの残渣、および線200はWBCを示している。本明細書で使われる「RBCの残渣」は、「RBCの断片」と同義である。図IE図1A〜1Dと比べるとわかるように、いずれの光学的チャネルの場合より2つのグループの粒子(すなわち、WBCおよびRBCの残渣)の間で、蛍光情報の極めて良好な分離を示し、それにより、下記の分析を促進する。
【0019】
(2)蛍光トリガーの使用
血液細胞は、光源による蛍光染料の励起時に異なる大きさの蛍光シグナルを発光する。蛍光シグナルの大きさの差異は、細胞内の核酸、すなわち、DNAの量から生じる。DNAの量が大きくなればなるほど、高い蛍光シグナルの可能性が大きくなる。また、細胞膜の浸透、染料の寸法、染料およびDNAの間の結合動力学、染料およびDNAの間の親和性、ならびに他の因子の効力は、蛍光シグナルに影響する。成熟RBCは、最小の蛍光シグナルを発光する。理由は、成熟RBC内にはDNAがないからである。有核赤血球(nRBC)は、非常に強力な蛍光シグナルを放出する。理由は、nRBCの核内にDNAがあるからのみでなく、nRBCの膜が溶解工程の間に破壊されているために染色がより容易であるからである。非溶解RBCまたはRBC断片は、蛍光を発光しないが、非常に弱い自己蛍光を発光できる。図IEに関して示すように、非常に強い蛍光シグナルを発する細胞は、核を有する細胞、すなわち、WBC(および、存在する場合はnRBC)である。
【0020】
従って、本明細書で提示のシステムおよび方法は、WBCを集め、分析するための蛍光トリガーを使用する。例えば、通常、RBC由来シグナルおよびWBC由来のシグナルの間に設定される蛍光トリガーを使って、WBC由来シグナルをその後の分析のために別に集めることができる。FL1トリガーを使用する2つの例を図2図3に示す。図2は、いずれのRBC断片(核不含粒子)も除き、核含有イベント(例えば、WBCおよび/またはnRBC)を収集するための蛍光トリガーの使用を示すサイトグラムである。蛍光染料は、アクリジンオレンジで、蛍光染料の濃度は、3μg/mLであった。蛍光の光電子増倍管の電圧は350ボルトに設定された。図3は、いずれのRBC断片(核不含粒子)も除き、核含有イベント(例えば、WBCおよび/またはnRBC)を収集するための蛍光トリガーの使用を示すサイトグラムである。蛍光染料は、アクリジンオレンジで、蛍光染料の濃度は、0.03μg/mLであった。蛍光の光電子増倍管の電圧は500ボルトに設定された。アクリジンオレンジ染色(大きく異なる染料濃度、すなわち、図2の3μg/mLinおよび図3の0.03μg/mLを使う場合であっても)および適切に設定されたFL1トリガーを使うWBCアッセイでは、FL1トリガーを越えるイベントのみが、核含有イベント(例えば、WBCおよび/または存在する場合、nRBC)であり、従って、その後の分析のために、捕捉される。
【0021】
(3)分析用の複数の光学的チャネルおよび少なくとも1つの蛍光チャネルの使用
一実施形態では、WBC識別分析は、蛍光情報を強化した多角偏光散乱分離技術(MAPSS)を使って行われる。フローセルを通過する各血液細胞による光散乱を検出するには、少なくとも1つのフォトダイオード、または少なくとも1つの光電子増倍管、または少なくとも1つのフォトダイオードおよび少なくとも1つの光電子増倍管の両方が、必要である。2つ以上のフォトダイオードを使って、約0°散乱を測定するALLシグナル、および、低角(例えば、約3°〜約15°)散乱を測定するIASシグナルを測定する。2つ以上の光電子増倍管を使って、90°PSSシグナルおよび90°DSSシグナルを検出する。適切な波長範囲内のFL1測定のためには、光源の波長の選択に応じて、追加の光電子増倍管が必要である。システムで捕捉された各イベントは、このように、複数の特性情報、例えば、ALL、IAS(1つまたは複数のチャネル)、PSS、DSS、および蛍光(1つまたは複数のチャネル)を示す。これらの検出チャネル由来の情報を使って、さらなる血液細胞の分析を行う。
【0022】
図4は、血液分析に適する装置(フローサイトメトリーを含む)の照射および検出光学系を模式図で示す。図4を参照して、装置10は、光源12、ビームを曲げるための前面ミラー14および背面ミラー16、第1の円柱状レンズ20および第2の円柱状レンズ22を含むビーム拡大器モジュール18、焦点レンズ24、ビーム微調整器26、フローセル28、前方散乱レンズ30、ブルズアイ検出器32、第1の光電子増倍管34、第2の光電子増倍管36、および第3の光電子増倍管38、を含む。ブルズアイ検出器32は、0°光散乱用内側検出器32aおよび7°光散乱用外側検出器32bを持つ。
【0023】
以下の考察では、光源は、好ましくは、レーザーである。しかし、他の光源、例えば、ランプ(例えば、水銀、キセノン)も使用可能である。光源12は、Coherent、Inc.、Santa Clara、CAから市販されている垂直偏光空冷Coherent Cube laser、であってもよい。350nm〜700nmの範囲の波長のレーザーを使用できる。レーザー用操作条件は、「CELL−DYN」自動化血液分析器で現在使っているものと実質的に類似である。
【0024】
フローセル、レンズ、焦点レンズ、ビーム微調整機構およびレーザー焦点レンズに関する追加の詳細は、米国特許第5,631,165号で見つけることができる。この特許は参照により、特に、カラム41、行32からカラム43、行11までが、本明細書に組み込まれる。図2の前方光路システムは、球形平凸レンズ30およびレンズの後焦点面に位置する2素子フォトダイオード検出器32を含む。この構成では、2素子フォトダイオード検出器32内の各点は、フローセル28を通過する細胞由来の特定の光収集角度に位置づけられる。検出器32は、軸方向光損失(ALL)および中間角前方散乱(IAS)を検出できるブルズアイ検出器であってもよい。米国特許第5,631,165号は、カラム43、行12〜52に、この検出器の種々の代替装置について記載している。
【0025】
第1の光電子増倍管34(PMT1)は、偏光解消側方散乱(DSS)を測定する。第2の光電子増倍管36(PMT2)は、偏光側方散乱(PSS)を測定し、第3の光電子増倍管38(PMT3)は、選択蛍光染料および採用光源に応じて、440nm〜680nmの蛍光発光を測定する。光電子増倍管は、波長の広い範囲で蛍光シグナルを集め、シグナル強度を強くする。側方散乱および蛍光発光は、効率的に必要な波長で伝達および反射し効率的な検出を可能とする二色性ビームスプリッター40および42により、これらの光電子増倍管の方に向けられる。米国特許第5,631,165号は、カラム43、行53からカラム44、行4に、光電子増倍管に関して種々の追加の詳細について記載している。
【0026】
液浸集光(immersion collection)システムを使って蛍光を測定する場合、感度は、光電子増倍管34、36、および38で高められる。液浸集光システムは、第1のレンズ30を、屈折率整合層を使ってフローセル28に光学的に結合させ、広い角度にわたって光の収集を可能とするものである。米国特許第5,631,165号は、カラム44、行5〜31で、この光学系の種々の追加の詳細について記載している。
【0027】
集光レンズ44は、高解像度顕微鏡で使われる回折限界画像処理に対し充分な収差補正を有する光学的レンズシステムである。米国特許第5,631,165号は、カラム44、行32〜60で、この光学系の種々の追加の詳細について記載している。
【0028】
図4の他の部品、すなわち、スリット46、視野レンズ48、および第2のスリット50の機能は、米国特許第5,631,165号のカラム44、行63〜カラム45、行26に記載されている。光電子増倍管の光路中に挿入され、検出光の波長もしくは偏光または波長と偏光の両方を変える光学フィルター52または56および偏光子52または56についても、米国特許第5,631,165号のカラム44、行63〜カラム45、行26に記載されている。本明細書での使用に適する光学的フィルターには、帯域フィルターおよびロングパスフィルターが含まれる。
【0029】
光電子増倍管34、36、および38は、側方散乱(軸が入射レーザービームにおよそ直角である円錐体中で散乱された光)または蛍光(入射レーザービームの波長とは違う波長での細胞からの光発光)を検出する。
【0030】
米国特許第5,631,165号の選択された部分は、上記で参照しているが、米国特許第5,631,165号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0031】
図5A〜Jは、強化された5分類WBC識別分析の例を示す。好中球(NE)、リンパ球(LY)、単球(MO)、好酸球(EO)および好塩基球(BA)を、MAPSS技術およびFL1チャネルを使って分離した。図5Aのサイトグラムは、ALL対IASを示す。図5Bのサイトグラムは、90°PSS対ALLを示す。図5Cのサイトグラムは、90°PSS対IASを示す。図5Dのサイトグラムは、90°DSS対ALLを示す。図5Eのサイトグラムは、90°DSS対IASを示す。図5Fのサイトグラムは、90°DSS対90°PSSを示す。図5Gのサイトグラムは、FL1対ALLを示す。図5Hのサイトグラムは、FL1対IASを示す。図5Iのサイトグラムは、FL1対90°PSSを示す。図5Jのサイトグラムは、FL1対90°DSSを示す。
【0032】
4つの従来のMAPSSチャネル(ALL、IAS、PSS、DSS)から収集された情報に加えて、FL1チャネルが細胞亜集団をさらに識別する(図5G〜5J)。アクリジンオレンジがWBC選別用染料として使われる場合では、好塩基球は、他のWBC亜集団、すなわち、好中球、好酸球、およびリンパ球、に比べて、比較的低いFL1シグナルを示し、単球は、比較的高いFL1シグナルを示す。サイトグラムでは、ドット510は、好中球を表し、ドット520は好酸球を表し、ドット530はリンパ球を表し、ドット540は好塩基球を表し、さらに、ドット550は単球を表す。全ての光学的特性および蛍光特性からの組み合わされた定量情報は、WBC含有血液試料に対する強化された、より信頼性の高い識別分析を提供する。
【0033】
図6Aは、従来の方法を使ったrstRBCを含む全血試料の分析を示すサイトグラムである。図6Aは、市販の「CELL−DYN」Sapphire(登録商標)血液分析器を使ったALL対IASのサイトグラムを示す。図6Bは、FL1トリガー強化血液分析器を使ったALL対IASを示すサイトグラムである。全血試料は、図6Aで分析したものと同じとした。蛍光染料、アクリジンオレンジの濃度は、3μg/mLであった。結果は、本明細書記載の方法は、以前述べた2つの最も難易度の高いケースに対し、正確で効率的であることを示す。従来の方法では、非溶解RBC、すなわち、サイトグラムの左側下方に現れるイベントは、リンパ球であると認識され、それにより、より多い数のWBC、およびより高い割合のリンパ球という結果になっていた。図6Bは、rstRBCを含む試料の本明細書記載の方法によるWBC分析結果を示す。本明細書記載の方法では、RBCまたはRBCの残渣が認識されなかったので、WBCの分析は、正確であった。
【0034】
図7Aは、より多くの脆いWBCを含む古い(28時間過ぎたもの)全血試料の従来の方法を使った分析を示すサイトグラムである。図7Aは、「CELL−DYN」Sapphire(登録商標)血液分析器を使ったALL対IASを示すサイトグラムである。図7Bは、FL1トリガー強化血液分析器を使ったALL対IASを示すサイトグラムである。全血試料は、図7Aで分析したものと同じとした。蛍光染料、アクリジンオレンジの濃度は、3μg/mLであった。
【0035】
本明細書記載の方法は、血液分析器に対するWBC分析を強化する。本明細書記載の方法は、より正確なWBC計数およびより正確なWBC亜集団の分類を提供する。理由は、非溶解RBCおよびRBC断片化の干渉が、実質的に除去されるためである。蛍光の使用は、WBCの識別分析を改善するためのさらなる情報を与える。本明細書記載の方法は、rstRBCを有する試料および脆いWBCを有する試料を分析する場合に、従来の方法に対し利点を示す。
【0036】
追加の実施形態
一実施形態では、蛍光染料で染色した血液試料のWBC識別分析を行う血液分析器を提供する。分析器は、血液試料内の粒子を励起するように配置された励起源を含む。分析器は、(1)励起血液試料から軸方向光損失を測定するように配置された軸方向光損失検出器、(2)励起血液試料から中間角散乱を測定するように配置された中間角散乱検出器、(3)励起血液試料から90°偏光側方散乱を測定するように配置された偏光側方散乱検出器(4)励起血液試料から90°偏光解消側方散乱を測定するように配置された偏光解消側方散乱検出器、および(5)励起血液試料から発光された蛍光を測定するように配置された蛍光検出器を含む複数の検出器をさらに含む。分析器は、複数の検出器から(1)軸方向光損失、(2)中間角散乱、(3)90°偏光側方散乱、(4)90°偏光解消側方散乱、および(5)蛍光、の測定値を受けるように構成されたプロセッサをさらに含む。プロセッサは、また、蛍光閾値を超える蛍光を発光する粒子に対し、5つの測定値に基づいて、血液試料のWBC識別分析を行うように構成されている。プロセッサは、受け取った測定値を予備選別し、蛍光閾値に満たない粒子を検討対象から外すようにさらに構成されてもよい。軸方向光損失検出器は、0°散乱での軸方向光損失を測定してもよい。中間角散乱検出器は、約3°〜約15°で光角度散乱を測定してもよい。複数の検出器は、1つまたは複数の光電子増倍管を含んでもよい。励起源は、蛍光染料に対応する波長で発光するように構成されたレーザーであってもよい。あるいは、蛍光染料が、励起源に対応するように選択されてもよい。蛍光染料は、細胞膜透過性で、核酸結合性であってもよい。
【0037】
血液分析器は、血液試料をWBC試薬で希釈するためのインキュベーションサブシステムをさらに含んでもよい。WBC試薬には、蛍光染料および1つまたは複数の溶解薬剤を含むことができる。あるいは、WBC試薬は、(a)少なくとも1つの界面活性剤、(b)少なくとも1つの緩衝液または少なくとも1つの塩、(c)少なくとも1つの抗菌剤、および(d)蛍光染料を含んでもよい。インキュベーションサブシステムは、約25秒未満、約17秒未満、または約9秒未満の時間、WBC試薬と共に血液試料をインキュベートするように構成してもよい。また、インキュベーションサブシステムは、約30℃〜約50℃の範囲の温度、例えば、約40℃の温度で、血液試料をWBC試薬と共に、インキュベートするように構成してもよい。
【0038】
別の実施形態では、蛍光染料で染色した血液試料のWBC識別分析を行う方法が提供される。方法は、血液試料内の粒子を励起するように励起源を配置することを含む。方法は、励起血液試料から(1)軸方向光損失、(2)中間角散乱、(3)90°偏光側方散乱、(4)90°偏光解消側方散乱、および(5)蛍光を測定するように複数の検出器を配置することをさらに含む。方法は、(1)軸方向光損失、(2)中間角散乱、(3)90°偏光側方散乱、(4)90°偏光解消側方散乱、および(5)蛍光の測定値を複数の検出器から受けるようにプロセッサを構成することをさらに含む。方法は、また、蛍光閾値を超える蛍光を発光する粒子に対し、5つ全ての測定値に基づいて、血液試料のWBC識別分析を行うようにプロセッサを構成することを含む。方法は、受け取った測定値を予備選別して、蛍光閾値に満たない粒子を検討対象から外すようにプロセッサを構成することをさらに含んでもよい。軸方向光損失検出器は、0°散乱で軸方向光損失を測定してもよい。中間角散乱検出器は、約3°〜約15°で光角度散乱を測定してもよい。複数の検出器が、1つまたは複数の光電子増倍管を含んでもよい。方法は、また、励起源を蛍光染料に対応する波長で発光するように構成することを含んでもよい。あるいは、蛍光染料は、励起源に対応するように選択されてもよい。蛍光染料は、細胞膜透過性で、核酸結合性であってもよい。
【0039】
方法は、血液試料をWBC試薬で希釈するためのインキュベーションサブシステムをさらに含んでもよい。WBC試薬には、蛍光染料および溶解薬剤を含むことができる。あるいは、WBC試薬は、(a)少なくとも1つの界面活性剤、(b)少なくとも1つの緩衝液または少なくとも1つの塩、(c)少なくとも1つの抗菌剤、および(d)蛍光染料を含んでもよい。インキュベーションサブシステムは、約25秒未満、約17秒未満、および/または約9秒未満の時間、WBC試薬と共に血液試料をインキュベートするように構成してもよい。また、インキュベーションサブシステムは、約30℃〜約50℃の範囲の温度、例えば、約40℃の温度で、血液試料をWBC試薬と共に、インキュベートするように構成してもよい。
【0040】
別の実施形態では、WBC識別分析を行うための血液分析器が提供され、この方法は、(1)血液分析器のフローセルを通過する間に血液試料を励起するレーザー光源を配置することを含む血液試料内の粒子を励起する手段、またはその等価物;(2)複数の検出器(上記で考察したような)を含む血液試料内の励起粒子からの複数の光散乱シグナルを測定する手段、またはその等価物;(3)蛍光検出器(上記で考察したような)を含む血液試料内の励起粒子からの蛍光シグナルを測定する手段、またはその等価物;(4)蛍光トリガーを使って構成されるプロセッサ(上記で考察したような)を含む、蛍光閾値に満たない粒子を検討対象から外すための励起粒子を選別する手段、またはその等価物;および(5)WBC識別を行うように構成されたプロセッサ(上記で考察したような)を含む、選別手段を通過した粒子に対し、複数の光散乱シグナルおよび蛍光シグナルに基づいて、WBC識別分析を行うための手段、またはその等価物、を含む。血液分析器は、インキュベーションサブシステム(上記で考察したような)を含む、血液試料をWBC試薬と共に、約25秒未満のインキュベーション時間、インキュベートする手段、またはその等価物をさらに含んでもよい。血液分析器は、インキュベーションサブシステム(上記で考察したような)を含む、血液試料をWBC試薬と共に、約30℃〜約50℃の範囲の温度でインキュベートする手段、またはその等価物をさらに含んでもよい。
【0041】
別の実施形態では、自動化血液分析器を使ったWBC分析を行う方法が提供される。方法は、(a)有核赤血球を含む全血液試料を少なくとも1つの白血球試薬で希釈すること;(b)ステップ(a)の希釈試料を、選択温度範囲内で赤血球を溶解するのに充分な時間インキュベートし、有核赤血球の核を少なくとも1つの白血球試薬に露出させ、少なくとも1つの蛍光染料に有核赤血球の核を染色させることを可能とし、白血球を残存させること;(c)インキュベートしたステップ(b)の試料をフローセルに連続的に送り出すこと、;(d)インキュベートした試料がフローセルを通過する間に、インキュベートした試料を光源で励起すること;(e)複数の光学的散乱シグナルおよび少なくとも1つの蛍光発光シグナルを同時に収集すること;および(f)ステップ(e)で集めた光学的情報および蛍光情報を使って、有核赤血球を識別し、定量化すること、のための手段およびこれらのステップを含む。別の実施形態では、自動化血液分析器を使ったWBC分析を行う方法が提供される。方法は、(a)RBC溶解試薬およびWBC膜を透過し、WBC核酸に結合する蛍光染料を含むWBC試薬で全血試料を希釈すること;(b)ステップ(a)で希釈した血液試料を約25秒未満のインキュベーション時間、約30℃〜約50℃の温度範囲でインキュベートすること;(c)ステップ(b)からのインキュベートした試料を血液分析器のフローセルに送り届けること;(d)インキュベートした試料がフローセルを通過する間に、ステップ(c)からのインキュベートした試料を励起源で励起すること;(e)励起試料からの複数の光散乱シグナルおよび蛍光発光シグナルを収集すること;および(f)ステップ(e)で収集した全シグナルに基づいてWBC識別を行い、蛍光発光シグナルに基づき蛍光閾値に満たない希釈血液試料内の粒子を検討対象から外すこと、を含む。WBC試薬は、(a)少なくとも1つの界面活性剤、(b)少なくとも1つの緩衝液または少なくとも1つの塩、(c)少なくとも1つの抗菌剤、および(d)少なくとも1つの蛍光染料を含んでもよい。励起源は、約350nm〜約700nmの波長であってもよい。蛍光発光は、帯域フィルターまたはロングパスフィルターを使って、約360nm〜約750nmの波長で収集されてもよい。
【0042】
さらに別の実施形態では、自動化血液分析器を使ったWBCの計数および分類方法が提供される。この方法は、(a)全血試料を少なくとも1つのWBC試薬で希釈する;(b)ステップ(a)の希釈試料を、充分な時間、選択された温度範囲内で、インキュベートしてRBCを溶解し、WBCを残存させ、少なくとも1つの蛍光染料のWBC細胞膜の透過およびWBCの核内の核酸への結合を可能とする;(c)ステップ(b)からのインキュベートした試料を、フローセルに連続的に送り出す;(d)インキュベートした試料がフローセルを通過する間に、ステップ(c)からのインキュベートした試料を光源を使って励起する;(e)複数の光学散乱シグナルおよび少なくとも1つの蛍光発光シグナルを同時に収集する;および(f)ステップ(e)で集めたシグナルを使って、WBCを識別および定量する、ステップを含む。実施形態の特徴は、限定されないが、(1)RBCを溶解する工程の間に、所与の血液試料中のWBCおよび他の核含有細胞中の核酸に結合し、これを染色し、さらに、所与の光源、例えば、適切な波長のレーザービームからのフォトンによる励起時に、蛍光発光を誘導するための少なくとも1つの蛍光染料の使用;(2)強力な蛍光(例えば、WBCおよび他の核含有細胞を含むイベント)を発光するイベントを分離し、集める蛍光トリガーの使用;(3)各細胞集団を特定し、追加の情報を明らかにするために、データを集め、集められたデータを分析するための複数の光学チャネルおよび少なくとも1つの蛍光用チャネルの使用、を含む。
【0043】
さらに別の実施形態では、本明細書で開示のシステムおよび方法は、(a)発光スペクトルが血液測定装置の励起源に対応する、専用の細胞膜透過性蛍光染料で血液試料を染色すること;(b)血液試料中のWBCを選別するために蛍光トリガーを使用すること;および(c)識別分析を行うために測定の組み合わせを使用すること、を含む。測定の組み合わせは、軸方向光損失、中間角散乱、90°偏光側方散乱、90°偏光解消側方散乱、1つまたは複数の蛍光発光測定値、多重リング中間角散乱(multiple ring intermediate angle scatter)、およびこれらの内のいずれかの組み合わせまたは等価物、からなる群より選択される1つまたは複数の測定を含んでもよい。
【0044】
一実施形態では、本発明は、本明細書記載の機能性を実行できる1つまたは複数のコンピュータシステムに関する。例えば、本明細書で考察の方法/分析ステップのいずれかは、1つまたは複数のプロセッサ、データ通信インフラ(例えば、コミュニケーションバス、クロスオーバ・バー(cross−overbar)、またはネットワーク)、ディスプレイインターフェイス、および/または保存またはメモリユニットを有するコンピュータシステムに実装可能である。保存またはメモリユニットは、実行時、プロセッサに1つまたは複数の本明細書記載の機能を実行させる命令(例えば、制御ロジックまたはソフトウェア)を含むコンピュータ可読保存メディアを含んでもよい。用語の「コンピュータ可読保存メディア」、「コンピュータプログラムメディア」、および「コンピュータ使用可能メディア」は、通常、メディア、例えば、リムーバブル保存ドライブ、リムーバブル保存ユニット、コミュニケーションインターフェイスを介して送信されたデータ、および/またはハードディスクドライブに組み込まれたハードディスクの意味に使われる。このようなコンピュータプログラム製品は、コンピュータソフトウェア、インストラクション、および/またはデータをコンピュータシステムに提供し、これが、さらに、コンピュータシステムを、一般目的コンピュータから本明細書記載の特定の機能を実行するようにプログラムされた特殊目的コンピュータに変換する役割をする。必要に応じ、プロセッサ、関連部品、ならびに等価システムおよびサブシステムは、選択操作および機能を実行する「ための手段(means for)」の例としての機能を果たす。このような選択操作および機能を実行する「ための手段」もまた、一般目的コンピュータを、前記選択操作および機能を実行するようにプログラムされた特殊目的コンピュータに変換する機能を果たす。
【0045】
結び
本発明の前述説明は、例示および説明のために提示するものである。全てを網羅するものではなく、また本発明を開示形態に厳密に限定する意図もない。上記教示を考慮すると、他の修正および変更が可能であろう。実施形態は、本発明の原理および実際の適用を最良に説明するために、また、それにより他の当業者が種々の実施形態で、および意図した特定の用途に適合するように種々の修正した形態で、本発明を最良に利用できるようにするために、選択、説明するものである。添付の請求項は、等価構造、成分、方法、および手段を含む他の代替の本発明の実施形態を含むように解釈されるべきであることが意図されている。
【0046】
上記詳細説明は、1つまたは複数の代表的実施形態を説明する付随する図を参照する。
他の実施形態が可能である。本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、記載された実施形態に対し修正を行うことができる。従って、詳細説明は、制限を意味しない。さらに、発明の概要および要約セクションは、発明者に意図された1つまたは複数の本発明の、全てではない、代表的実施形態を説明するものであり、従って、本発明および添付請求項を何ら制限する意図はない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図6A
図6B
図7A
図7B