(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104235
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】建物のエネルギー消費の予測方法
(51)【国際特許分類】
G01W 1/12 20060101AFI20170316BHJP
G06F 19/00 20110101ALI20170316BHJP
【FI】
G01W1/12 K
G06F19/00 100
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-509766(P2014-509766)
(86)(22)【出願日】2012年5月11日
(65)【公表番号】特表2014-514585(P2014-514585A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2012058837
(87)【国際公開番号】WO2012152939
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年4月15日
(31)【優先権主張番号】1154057
(32)【優先日】2011年5月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510094104
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ エナジーズ アルタナティブス
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100153903
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明
(72)【発明者】
【氏名】レ ピヴェール,グザヴィエ
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−021650(JP,A)
【文献】
特開2006−029607(JP,A)
【文献】
特開2006−078009(JP,A)
【文献】
特開平08−210689(JP,A)
【文献】
特開平11−159827(JP,A)
【文献】
特開2005−037109(JP,A)
【文献】
特開2003−097846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00−1/18
F24F 11/00
G06F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機によって実施され、暖房装置および/または冷房装置による前記建物の暖房および冷却(Pc)、受動的太陽熱寄与分(Pasp)、人や家庭器具による加温のような屋内利得(Pi)による寄与分、並びに建物と外部環境の間の対流型および/または熱伝導型の熱損失(heat_losses)を考慮に入れる物理モデルを利用した建物のエネルギー消費の予測方法であって、
前記建物レベルで過去に行われた測定結果から前記物理モデルのパラメータの値を導き出すための学習ステップを含み、前記学習ステップが、
−日照に乏しい期間の過去の測定結果から前記屋内利得および/または前記熱損失に関する前記物理モデルの少なくとも一つのパラメータを決定すること、および
−日照に恵まれた期間の過去の測定結果から受動的太陽熱寄与分に関する前記物理モデルの少なくとも一つのパラメータを決定すること
を含むことを特徴とする建物のエネルギー消費の予測方法。
【請求項2】
前記学習ステップが、
−日照に乏しく、建物の占有者数の少ない期間の過去の測定結果から前記熱損失に関する前記物理モデルの少なくとも一つのパラメータを決定するステップ、および/または
−日照に乏しく、建物が占有状態の期間の過去の測定結果から前記屋内利得に関する前記物理モデルの少なくとも一つのパラメータを決定するステップ
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【請求項3】
設定温度Tint(t)に応じた建物の暖房または冷却を目的として将来のエネルギー消費を計算するために前記学習ステップ後に前記物理モデルを利用するステップを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【請求項4】
前記受動的太陽熱寄与分によって前記建物が所与の期間に受け取るエネルギーが次式:
【数1】
(式中、P
aspは前記受動的太陽熱寄与分の出力を表わし、A
req,iは前記建物のn個の面のうちの面iの等価受照面積を表わし、G
i(t)は、気象データまたは測定結果と、天空における太陽の位置を考慮に入れた幾何学計算とに基づいて算出される、瞬間tに面iが受ける放射照度(単位W.m
-2)である)
によって計算され、
前記学習ステップが、過去に日照に恵まれた期間に前記建物レベルで行われた測定結果を考慮に入れた前記値A
req,iの計算を含む
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【請求項5】
前記物理モデルが、前記受動的太陽熱寄与分によって受けるエネルギーの計算において1から10までの間のnについて考えることを特徴とする、請求項4に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【請求項6】
前記物理モデルが次の方程式によって前記建物のエネルギー収支を所与の期間にわたって計算することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【数2】
ここで、
P
cは、前記建物の暖房または冷却に必要な出力であり、
PTは、屋外への伝達現象によって失われる出力を表わし、
PVは、換気によって失われる出力を表わし、
P
aspは、前記受動的太陽熱寄与分によってもたらされる出力を表わし、
P
iは、人や家庭器具による暖房のような前記屋内利得によってもたらされる出力を表わす。
【請求項7】
選択した期間について、熱慣性にかかわる前記建物の熱エネルギーがゼロである、すなわち∫S=0であるものとみなすことからなるステップを含むことを特徴とする、請求項6に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【請求項8】
所与の期間における前記建物の前記熱損失が次の方程式によって計算されることを特徴とする、請求項6または7に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【数3】
ここで、GVは熱損失係数(単位W/℃)、T
intは建物内部の温度、T
extは建物外部の温度を表わす。
【請求項9】
前記建物の占有状態および/または前記建物における活動を考慮に入れながら、所与の期間について、前記屋内利得が前記所与の期間における平均値である定数に等しいとみなすことを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【請求項10】
前記学習ステップが、日照に乏しく、受動的太陽熱寄与分を無視することができる期間に過去に前記建物レベルで行われた測定結果を考慮しながら、前記パラメータGVおよび
【数4】
を決定する第一のサブステップを含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【請求項11】
建物内部における温度変化が次の方程式によって考慮に入れられることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【数5】
ここで、Cは、前記学習ステップの際に推定することができる前記建物の熱容量を表わす。
【請求項12】
前記学習ステップが、所与の瞬間における
【数6】
の値を日照に乏しい期間に過去に前記建物レベルで行われた測定結果をもとに次式
【数7】
によって計算するサブステップを含むこと、
および、前記所与の期間にわたる値
【数8】
の平均によって最終的にCが計算される、すなわち
【数9】
であることを特徴とする、請求項11に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【請求項13】
建物の暖房または冷却のための将来のエネルギー消費を設定温度T
int(t)に応じて次の方程式によって計算することを特徴とする、請求項12に記載の建物のエネルギー消費の予測方法。
【数10】
ここで、Text(t)は気象予測に基づいて、または測定結果に基づいて計算される外気温であり、G
i(t)は、気象予測に基づいてまたは測定結果に基づいて、および天空における太陽の位置を含めた幾何学計算に基づいて計算される、瞬間tに表面iが受ける放射照度(単位W.m
-2)を表わす。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の建物のエネルギー消費の予測方法のステップを実施するコンピュータプログラムを含む情報通信媒体。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の前記建物のエネルギー消費の予測方法を実施する制御ユニットを備えることを特徴とする建物のエネルギー消費の予測システム。
【請求項16】
暖房および/または冷房装置を備えること、並びに、前記制御ユニットが所望の設定温度に応じて暖房および/または冷房装置を操作することによって前記建物内部の温度の調節を行うことを特徴とする、請求項15に記載の建物のエネルギー消費の予測システム。
【請求項17】
請求項1から13のいずれか一項に記載の建物のエネルギー消費の予測方法を実施する建物のエネルギー消費の予測システムを備えることを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の熱管理の方法およびその方法を実施する熱システムに関する。本発明はまた、その方法を実施するソフトウェアを含む媒体にも関する。本発明は最後に、その熱システムを備える建物にも関する。
【背景技術】
【0002】
建物の暖房または冷房を先回りして行って、占有者が期待する快適さを常に実現できるようにするため、建物のエネルギー消費を予測できることは有益である。一方、建物を特徴づける様々な熱現象は複雑であり、把握することは難しい。
【0003】
そのため、最新技術における第一の解決策は、例えば1年というような長期間にわたって測定した値と記憶させたデータの解析を基本とする。とりわけ、建物のエネルギー消費や室温の値のほか、外気温や日照など、対応する気象データを時間軸に沿って記憶させる。ニューラルネットワーク型の方法によるデジタル処理を通して相互参照を行うことにより、過去のそれらデータを代表する数学モデルを決定することができ、それを使って将来の予測を行う。人工知能に基づくこの方法では、満足できるだけの結果を得るためには膨大なデータが必要であり、それには長い開発期間がかかり、また複雑な計算を要する。また、この方法は現象に対する物理的なアプローチに基づくものではないため、限界があり、あらゆる状況で十分な精度を得られるわけではない。
【0004】
最新技術における第二の解決法は、極端に多くの計算手段が必要となることがないように、大胆な単純化に基づく物理現象のモデル化を基本とする。このモデル化では、放射や対流などによる外部との熱交換は無視される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いずれの場合も、結果は不十分なものにとどまっており、建物のエネルギー消費を予測するためのよりよい解決策に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、太陽放射、および/または建物と外部環境の間の対流および/または熱伝導による熱交換を、計算機によって実施される物理モデルから考慮に入れるステップを含むこと、並びに、当該建物レベルで過去に行われた測定結果から物理モデルのパラメータの値を導き出すための学習ステップを含むことを特徴とする建物のエネルギー消費の予測方法に基づく。
【0007】
より具体的には、本発明は、暖房装置および/または冷房装置による建物の暖房および冷却、受動的太陽熱寄与分、人や家庭器具による加温のような屋内利得による寄与分、建物と外部環境の間の対流および/または熱伝導などによる熱損失を考慮に入れるステップを含むこと、並びに、当該建物レベルで過去に行われた測定結果から物理モデルのパラメータの値を導き出すための学習ステップであって、
−日照に乏しい期間の過去の測定結果から屋内利得および/または熱損失に関する物理モデルの少なくとも一つのパラメータを決定すること、および
−日照に恵まれた期間の過去の測定結果から受動的太陽熱寄与分に関する物理モデルの少なくとも一つのパラメータを決定すること
を含む学習ステップを含むことを特徴とする建物のエネルギー消費の予測方法に関する。
【0008】
本発明はまた、前述のような建物のエネルギー消費の予測方法のステップを実施するコンピュータプログラムを含んだ情報通信媒体にも関する。
【0009】
本発明はまた、前述のような建物のエネルギー消費の予測方法を実施する制御ユニットを備えることを特徴とする、建物のエネルギー消費の予測システムにも関する。
【0010】
建物のエネルギー消費の予測システムは暖房および/または冷房装置を含むことができ、制御ユニットは、所望の設定温度に応じて暖房および/または冷房装置を操作することによって建物内部の温度調節を行うことができる。
【0011】
本発明はまた、前述のような建物のエネルギー消費の予測方法を実施する建物のエネルギー消費の予測システムを備えることを特徴とする建物にも関する。
【0012】
本発明については、特許請求の範囲でさらに詳しく規定する。
【0013】
本発明の対象、特徴および利点について、建物、および本発明の方法で考慮される各種エネルギー現象を模式的に描いた添付の単一の図面と関連づけて非限定的なものとして用意した具体的な実施形態に関する以下の記述の中で詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、放射および/または対流および/または伝導のような建物外部の熱現象を最良の形で考慮に入れることを基本とする。本発明はとりわけ、風、受動的太陽熱寄与分など、一部の気象現象が建物に及ぼす影響をよりよく考慮に入れることが可能である。本発明は、計算機による比較的簡単な処理にも対応できる単純さを維持しながら物理現象を考慮に入れることができる折衷を基本としている。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、建物における熱収支は次のように記すことができる:
P
c=PT+PV-(P
asp+P
i)+S
ここで、
P
cは、建物の暖房または冷却に必要な出力であり、
PTは、屋外への熱の伝達またはその逆をもたらす断熱されていない壁のような建物の欠陥によって失われる出力を表わし、
PVは、換気によって失われる出力を表わし、
P
aspは、受動的太陽熱寄与分によってもたらされる出力を表わし、
P
iは、その場に居合わせる人の身体、家庭器具等による加温等、屋内利得によってもたらされる出力を表わし、
Sは、建物内に蓄積する熱流束を表わす。
【0017】
受動的太陽熱寄与分によってもたらされる出力は、主として建物に侵入する太陽放射に由来するが、建物の断熱が向上するにつれて次第に無視できないものとなる。
図1から明らかなように、この寄与分は太陽の位置に、従って時刻や季節に依存する。これは、角度が違えば、太陽放射が到達する建物の面も変わってくるためである。例として、位置P1にある太陽の放射R1は冬のある時刻における状況を表わす。夏には、太陽の放射R2は、同じ時刻でも、その位置P2ははるかに高くなるという点で大きく異なったものとなる。そのため、建物1が受ける太陽放射も相当に違ったものになると考えられる。
【0018】
一日のエネルギー収支を取ることで、前述の方程式から建物のエネルギー消費の予測方法を得ることができ、この方法では次の方程式(1)を考える:
【数1】
【0019】
対象とする期間については、建物の平均温度は期間の最初と最後で同じであるものと考えて、熱慣性にかかわる建物の熱エネルギーはゼロ、すなわち∫S=0であるものと仮定する。そうでない場合には、変形形態として、建物による熱の蓄積または放出(熱慣性)を考慮に入れることもできる。
【0020】
受動的太陽熱寄与分を計算するときは、建物は複数の受照面の集まりであるものと考え、それらの受照面について、対象の受照面と同じ受動的太陽熱寄与分に当たる黒体の面積を表わす「等価受照面積」と呼ばれる係数A
reqを定義する。その定義により、5つの受照面を有する建物について次式を得る:
【数2】
【0021】
ここで、Gi(t)は、瞬間tに表面iが受ける放射照度(単位W.m
-2)である。Gi(t)は、気象データと、天空における太陽の位置を考慮に入れた幾何学計算とに基づいて算出される。
【0022】
この実施形態では、建物の物理モデルは、建物を5つの受照面に分けるように考えている。変形形態として、計算の複雑さとモデルの精度のほどよい折衷が得られるように、建物の建築設計に応じてあらゆる数、有利には1から10の間、好ましくは3から6の間の数の面を考えることもできる。
【0023】
建物のエネルギー消費の予測方法には、この先で詳述するように、A
reqの様々なパラメータを推定できるようにする学習ステップが含まれる。
【0024】
一日のうちの建物の熱損失は次の方程式によって推定される:
【数3】
【0025】
ここで、GVは熱損失係数(単位W/℃)を表わし、これにより、熱損失は建物内部の温度T
intと外部の温度T
extの差に依存することになる。
【0026】
屋内寄与分は、建物内部の装置および人による熱寄与を表わすものである。こうした屋内寄与分は不規則であり、当該建物における活動に左右される。簡単のため、それらは反復的であり、さらに建物内における活動のリズムが異なる平日と週末という2つのはっきり異なる期間について、一定の平均値を取るものとされる。変形形態として、それらの熱寄与は季節にも依存するものであってよい。採用される平均値は、結局、そのそれぞれの期間について測定した平均値である。
【0027】
変形形態として、そうした屋内寄与分について、建物の占有状態(人がそこに居るだけで熱寄与がもたらされるという事実)、および/または建物における活動(オーブン、より一般的には熱をもたらす可能性のあるあらゆる装置の使用の有無など)に依存する複数の異なるプロファイルをあらかじめ定めることができる。
【0028】
暖房および冷房の出力は、建物の様々な暖房装置および冷房装置に関する知見に基づいて計算される。
【0029】
学習方法は、前述の各方程式で使用される様々なパラメータの計算を可能とする。方程式(1)は、前述の方程式(2)と(3)とをまとめて次のように書くことができる:
【数4】
【0030】
学習は、日照に乏しい期間と日照に恵まれた期間とを分けて、建物レベルにおける既知の過去の値からパラメータを計算することを可能にする。それぞれの期間は、実測による日照と晴天時の理論的日照とを比較することなどによって定義する。
【0031】
まず、日照に乏しい期間については、受動的太陽熱寄与分は無視して、方程式(4)を次のように簡易化することができる:
【数5】
【0032】
一日の屋内寄与分は、一つは平日の値であり、もう一つは週末の値である2つの異なる一定値を取りうるものと仮定する。従って、方程式(5)の未知数はGV、
【数6】
または
【数7】
である。
【0033】
日照がなく、方程式(5)のその他の値であるP
c、T
int、T
extが測定されて既知である数日間を選べば、上記の3つの未知数を計算することができ、いずれにせよ推定することは可能である。
【0034】
変形形態として、別のモデル、例えば、屋内寄与分についてあらかじめ定義するプロファイルにあらゆる別タイプのものを用いることもできる。その場合、学習ステップには、受動的太陽熱寄与分を無視することができる日照に乏しい期間で、かつ、屋内利得(または寄与分)を無視することが可能な占有者数の少ない期間における熱損失に関するパラメータの第一の学習を含めることができることがわかる。さらに、受動的太陽熱寄与分を無視することができる日照に乏しい期間で、かつ屋内利得(または屋内寄与分)をもはや無視し得ない建物の占有状態の期間について、屋内寄与分に関するパラメータを学習の対象とすることができる。
【0035】
この先で詳述するように、例えば何らかの温度設定値を実現するために必要な暖房を計算する目的で、または何らかの暖房に関して建物内における将来の温度を計算する目的で、これから物理モデルを使用しようというときには、あらかじめ定義されたプロファイルの中から建物の占有状態および/または建物内における活動に応じて屋内寄与分を考慮に入れるためのプロファイルを選択する。この選択は、存在検知センサや、オーブンの使用を検出するためなどの活動度の検出装置に基づくなどして、完全自動または部分自動とすることができる。
【0036】
続いて、方程式(4)が当てはまる日照に恵まれた数日間を考える。その場合、この方程式の未知数はパラメータA
req,iである。値Gi(t)は、測定された気象データと、天空における太陽の位置を含めた幾何学計算とに基づいて算出される。
【0037】
日照に恵まれた日が数日あれば、未知数A
req,iの集合を引き出すのに十分な数(少なくともn個)の方程式(4)を得ることができる。ちなみに、こうして学習によって定義されるこれらのパラメータは、時間とともにさらに測定が積み重ねられることによってその洗練度を高めることができる。
【0038】
方程式(4)のこれらのパラメータが学習によって既知となると、建物内部の温度変化を特徴づける次の方程式(6)を考えることができる:
【数8】
【0040】
この方程式を利用するには、パラメータCの値を推定するための新たな学習ステップを行う。
【0041】
曇りの日であれば、受動的太陽熱寄与分は無視することができ、各瞬間について次式のように書くことができる:
【数9】
【0042】
そして
【数10】
の近似を行って、すなわち、その日について屋内寄与分の変化を無視して、その平均値で上の方程式(7)を解くことを考える。変形形態として、一日よりも短い期間の屋内寄与分Pi(t)の平均プロファイルを決定し、その大きさを定期的に更新して季節的な変動またはその他の変動を考慮に入れるようにすることも可能である。
【0043】
方程式(7)のその他のすべての量は、測定されるか、またはそれまでの学習によって知られるところとなる。
【0044】
最終的にCは、上で方程式(7)によって計算した
【数11】
の一日の平均値によって得られる。すなわち、
【数12】
【0045】
ちなみに、日照に恵まれた日についても、受動的太陽熱寄与分を考慮に入れながら、同様の計算を行うことができる。
【0046】
従って、上に示した計算は学習ステップの一部をなすものであり、建物に対して選ばれた熱モデル化のパラメータをそれによって決めることができる。それに続いて、建物の将来のエネルギー消費の推定方法を実施することにより、将来におけるその占有者の熱的快適性が確保されるようにすることができる。それに加えて、こうした計算は、所与の管轄地域におけるあるエネルギー生産体に対するエネルギー生産需要を、その地域内にあるすべての建物を考慮に入れながら予測することもまた可能にする。
【0047】
建物の占有者は、自分たちが期待する快適さを定義するため、将来に期待される屋内温度のプロファイルを定義する。建物内部の温度調節システムは、各瞬間のエネルギー需要を計算することにより、より具体的には、屋内暖房または冷房のための各種装置の動作を決定することにより、常に設定温度を実現できるようにする。
【0048】
そこで、今やすべてのパラメータが既知となった前述の方程式(6)を改めて用いて、次式により、そこから各瞬間の屋内エネルギー消費を導き出す:
【数13】
【0049】
ここで、T
int(t)は所望の屋内温度設定値であり、T
ext(t)は気象予測に基づいて計算される外気温であり、G
i(t)は気象予測と天空における太陽の位置を含めた幾何学計算とに基づいて計算される放射照度である。ちなみに、この計算が準リアルタイムで行われるか、またはごく短期の予測として行われるものであり、中長期的なものではない場合には、気象データの利用は必須でなく、単なる測定データをもってそれに代えることができる。
【0050】
本発明はまた、前述の方法を実施することができる計算機を含む、建物のエネルギー需要の予測システムにも関する。望ましくは、このシステムは、占有者が期待する快適性を実現するために計算されたエネルギー消費プロファイルに基づいて建物の熱調節を行うように、建物の暖房装置および冷房装置に接続される。このシステムは例えば、前述の方法を実施する計算機を含む制御ユニットを備える。この方法は、情報通信媒体に保存されたソフトウェア手段によって実施することができる。
【0051】
最後に、建物は、その暖房および/または冷房装置の調節を、またはより一般的にそれらの管理を行うために前述の方法を実施する建物のエネルギー消費の予測システムを備えることができる。
【0052】
以上のように、ここで採った解決法は本発明の対象によく対応するものであり、以下の利点を有する:
−最も重要な熱現象を押さえつつも、十分に単純な計算によって、建物のエネルギー消費をコントロールし、よりよい熱調節を実現することができる;
−学習段階でそれぞれの建物に固有の熱パラメータを定義することによって高い精度を実現することができる。
【0053】
結局のところ、説明した解決法は、建物の巧みな物理モデル化と過去の測定結果に関する知見とを組み合わせたものであり、前述の最新技術における2つの解決法の有利な折衷をなすものである。
【0054】
実施形態は、受動的太陽熱寄与分を考慮に入れた形で説明した。変形形態では、受動的太陽熱寄与分は説明したものとは別のアプローチによってモデル化することができる。さらに、別の変形形態によれば、例えば、建物が風の強い地方にある場合は特に、風の効果を考慮するために、対流および/または熱伝導を考慮に入れることもできよう。その場合も、その物理現象を表わすモデルのパラメータを同じ学習原理によって定義することができる。