特許第6104237号(P6104237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6104237内燃機関用のピストンおよび該ピストンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104237
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】内燃機関用のピストンおよび該ピストンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/00 20060101AFI20170316BHJP
   F16J 1/16 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   F02F3/00 G
   F02F3/00 Z
   F16J1/16
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-511737(P2014-511737)
(86)(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公表番号】特表2014-516132(P2014-516132A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】DE2012000547
(87)【国際公開番号】WO2012159610
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】102011103105.0
(32)【優先日】2011年5月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ロホマン
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭35−001554(JP,B1)
【文献】 米国特許第04297975(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第00914099(GB,A)
【文献】 特表2006−508293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00
F16J 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン頂面(2)と、
該ピストン頂面の近傍に、ピストン(1’)の半径方向の外側面に配置されたリング部分(4)と、
前記ピストン頂面とは反対の方向で前記リング部分(4)に続く、互いに反対の側に位置した、スカートエレメント(14)を介して結合された2つのピンボス(10’,11’)と、
前記ピンボス(10’,11’)に加工されたそれぞれ1つのピン孔(12’,13’)と
を備え、
該ピン孔(12’,13’)の天底領域にそれぞれ少なくとも1つの潤滑溝(20,21)が加工成形されている、内燃機関用のピストン(1’)であって、
前記少なくとも1つの潤滑溝(20,21)が、前記各ピン孔(12’,13’)におけるピン孔軸線(18)方向内側に配置されており、かつ前記潤滑溝(20,21)が、ピストン軸線(17)に対して傾斜して位置しており、さらに、前記潤滑溝(20,21)は、前記ピストン頂面とは反対の方向で互いに接近する方向に延びているので、前記潤滑溝(20,21)は、前記ピン孔(12’,13’)の天底の近傍で、前記各ピン孔(12’,13’)におけるピン孔軸線(18)方向内側に開口しており、
前記潤滑溝(20,21)は、前記ピン孔(12’,13’)の180°〜300°の角度領域にわたって延びており、各ピン孔(12’,13’)の天頂領域に設けられていないことを特徴とする、内燃機関用のピストン。
【請求項2】
前記潤滑溝(20,21)は、前記ピン孔(12’,13’)の180°〜240°の角度領域にわたって延びている、請求項1記載のピストン。
【請求項3】
前記潤滑溝(20,21)は、1μm〜500μmの深さを有している、請求項1又は2記載のピストン。
【請求項4】
前記潤滑溝(20,21)は、100μm〜200μmの深さを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のピストン。
【請求項5】
ピストン頂面(2)と、
該ピストン頂面の近傍に、ピストン(1’)の半径方向の外側面に配置されたリング部分(4)と、
前記ピストン頂面とは反対の方向で前記リング部分(4)に続く、互いに反対の側に位置した、スカートエレメント(14)を介して互いに結合された2つのピンボス(10’,11’)と、
前記ピンボス(10’,11’)に加工されたそれぞれ1つのピン孔(12’,13’)と
を備えた内燃機関用のピストン(1’)の製造方法であって、
旋盤の、半径方向外側に配置された切削面を備える回転可能に支持された旋削バイトを、前記ピン孔(12’,13’)内に導入するステップと、
前記ピン孔(12’,13’)の、1つの潤滑溝(20,21)が加工されるべき箇所に前記旋削バイトを位置決めするステップと、
前記ピストン頂面(2)から離れる方向で、前記潤滑溝(20,21)が所望の深さを有するまで、回転している前記旋削バイトを移動させるステップと
を有し、
前記少なくとも1つの潤滑溝(20,21)が、前記各ピン孔(12’,13’)におけるピン孔軸線(18)方向内側に配置され、かつ前記潤滑溝(20,21)が、ピストン軸線(17)に対して傾斜して位置し、さらに、前記潤滑溝(20,21)は、前記ピストン頂面とは反対の方向で互いに接近する方向に延びており、前記潤滑溝(20,21)は、前記ピン孔(12’,13’)の天底の近傍で、前記各ピン孔(12’,13’)におけるピン孔軸線(18)方向内側に開口するように回転している前記旋削バイトを移動させ、
前記潤滑溝(20,21)が、前記ピン孔(12’,13’)の180°〜300°の角度領域にわたって延びるように、かつ、各ピン孔(12’,13’)の天頂領域に設けられないように、回転している前記旋削バイトを移動させることを特徴とする、内燃機関用のピストンの製造方法。
【請求項6】
回転している前記旋削バイトの回転軸線(19’)を、前記旋削バイトが移動されるステップの前に、ピン孔軸線(18)に対して5°〜30°の所定の角度αだけ傾斜させる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ピストン頂面(2)と、
該ピストン頂面の近傍に、ピストン(1’)の半径方向の外側面に配置されたリング部分(4)と、
ピストン頂面から離れる方向で前記リング部分(4)に続く、互いに反対の側に位置した、スカートエレメント(14)を介して互いに結合された2つのピンボス(10’,11’)と、
前記ピンボス(10’,11’)に加工されたそれぞれ1つのピン孔(12’,13’)と
を備えた内燃機関用のピストン(1’)の製造方法であって、
旋盤の、半径方向外側に配置された切削面を備える回転可能に支持された旋削バイトを、前記ピン孔(12’,13’)内に導入するステップと、
前記ピン孔(12’,13’)の、1つの潤滑溝(20,21)が加工されるべき箇所に前記旋削バイトを位置決めするステップと、
前記潤滑溝(20,21)が所望の深さを有するまで、前記旋削バイトと前記ピストン頂面(2)との間の間隔が増大する方向で、前記ピストン(1’)を回転している前記旋削バイトに対して移動させるステップと
を有し、
前記少なくとも1つの潤滑溝(20,21)が、前記各ピン孔(12’,13’)におけるピン孔軸線(18)方向内側に配置され、かつ前記潤滑溝(20,21)が、ピストン軸線(17)に対して傾斜して位置し、さらに、前記潤滑溝(20,21)は、前記ピストン頂面とは反対の方向で互いに接近する方向に延びており、前記潤滑溝(20,21)は、前記ピン孔(12’,13’)の天底の近傍で、前記各ピン孔(12’,13’)におけるピン孔軸線(18)方向内側に開口するように、前記ピストン(1’)を回転している前記旋削バイトに対して移動させ、
前記潤滑溝(20,21)が、前記ピン孔(12’,13’)の180°〜300°の角度領域にわたって延びるように、かつ、各ピン孔(12’,13’)の天頂領域に設けられないように、前記ピストン(1’)を回転している前記旋削バイトに対して移動させることを特徴とする、内燃機関用のピストンの製造方法。
【請求項8】
当該ピストン(1’)を移動させるステップの前に、前記ピストン(1’)を、回転している前記旋削バイトに対して5°〜30°の所定の角度αだけ傾斜させる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
エンジン運転時に点火圧最大値がコンロッドに作用する位置にコンロッドが位置している場合、前記ピストン(1’)に結合されたコンロッドの長手方向軸線の方向に一致する方向で、前記ピストン(1’)を回転している前記旋削バイトに対して移動させる、請求項7又は8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン頂面と、当該ピストン頂面の近傍に、ピストンの半径方向の外側面に配置されたリング部分と、ピストン頂面とは反対の方向でリング部分に続く、互いに反対の側に位置する、スカートエレメントを介して互いに結合された2つのピンボスと、該ピンボスに加工されたそれぞれ1つのピン孔とを備え、該ピン孔の天底領域および赤道領域にはそれぞれ少なくとも1つの潤滑溝が形成されている、内燃機関用のピストンに関する。
【0002】
冒頭で述べた形態のピストンは、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10255731号明細書から公知である。このピストンにおいて不都合なのは、潤滑溝がピン孔の真ん中の領域に配置されているので、エンジン運転時にこれらの潤滑溝に緩慢にしか潤滑油が充填されないことである。先行技術から公知の潤滑溝の別の欠点は、該潤滑溝を製造するために、回転させられた旋削バイトが使用され、該旋削バイトはそれぞれ個々の回転時に潤滑溝の領域において、潤滑溝の要求された深さが達成されるまで、変位されなければならないことにある。
【0003】
したがって、本発明の課題は、先行技術の欠点を回避し、一方ではピストンに、容易に潤滑材で充填可能である潤滑溝を備えることである。他方では、本発明の課題は、潤滑溝の製造を簡単にすることである。
【0004】
上記課題は一方では以下の構成により解決される。すなわち、少なくとも1つの潤滑溝が、各ピン孔の半径方向内側の縁領域および/または半径方向外側の縁領域に配置されていて、潤滑溝平面が、ピストン軸線に対して傾斜して位置しているので、前記少なくとも1つの潤滑溝が、各ピンボスの半径方向の内側面および/または半径方向の外側面に開口している。ピンがピン孔内に位置している場合、ピンボスの内側面および/または外側面に複数の開口が生じ、これらの開口を通じて潤滑油がピン孔内に流入することができ、ひいてはピンの潤滑が改善される。
【0005】
他方では、上記課題は以下のように解決される。すなわち、潤滑溝を製造するために、回転可能に支持された従来の旋削バイトがピン孔内に導入されるだけでよく、その後に旋削バイトが、ピン孔の、1つの潤滑溝が加工されるべき箇所に位置決めされる。引き続き、潤滑溝が所望の深さを有するまで、回転している旋削バイトを、ピストン頂面から離れる方向に移動させるか、またはピストンを旋削バイトに向かって移動させることしか要しない。場合によっては、旋削バイトの回転軸線がピン孔軸線に対して所定の小さな角度だけ傾けられるか、ピストンが旋削バイトの回転軸線に対して所定の小さな角度だけ傾けられてよく、これにより、ピンボスの半径方向の内側面または半径方向の外側面に開口する潤滑溝を形成することができる。
【0006】
本発明の有利な実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明の幾つかの実施の形態を以下に図面に付き詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】それぞれ1つの潤滑溝を有する2つのピン孔を備えるピストンの断面図である。
図2図1に示したピン孔の拡大図である。
図3】ピストンの断面図であり、該ピストンのピン孔は、内側に位置するそれぞれ1つの開口を備えたそれぞれ1つの潤滑溝を有している。
図4図3に示したピン孔の拡大図である。
図5】平行に配置された複数の潤滑溝と、ピストン軸線に対して傾斜して位置する潤滑溝とをそれぞれ有するピン孔を備えたピストンの断面図である。
図6図5に示したピン孔の拡大図である。
【0009】
図1図3および図5は、燃焼凹部3が加工成形されたピストン頂面2を有するそれぞれ1つのピストン1,1’,1''を断面で示している。ピストン1,1’,1''は、ピストン頂面2の近傍で半径方向外側に、3つのリング溝5,6,7を備えたリング部分4を有している。これらのリング溝5,6,7のうち、ピストン頂面2に最も近いリング溝5は、コンプレッションリングのために設けられていて、リング支持部8を有している。このリング支持部8には、半径方向内側に、環状に延びるクーリングチャンネル9が一体成形されている。
【0010】
ピストン頂面2とは反対の方向で、リング部分4には、それぞれ1つのピン孔12,12’,12'',13,13’,13''を備えた2つのピンボス10,10’,10'',11,11’,11''が続いている。この場合、両ピン孔12,12’,12''および13,13’,13''は同軸的に配置されている。半径方向外側では、ピンボス10,10’,10'',11,11’,11''は、環状に延びるスカートエレメント14により結合される。これらのスカートエレメントのうち、図1図3および図5には、断面の位置に基づいて一方のスカートエレメント14の内面しか見えていない。
【0011】
図1に示したピン孔12,13の内面の中央に、それぞれ1つの潤滑溝15,16が加工成形されている。これらの潤滑溝15,16は、各ピン孔12,13の天底および赤道にわたって延びている。本実施の形態では、潤滑溝15,16はそれぞれ、約270°の角度領域にわたって延びている。この角度領域は、180°〜360°であってよい。潤滑溝15,16の深さは、1μm〜500μmであってよい。潤滑溝15,16は、ピストン軸線17に対して平行に、かつピン孔軸線18(図2)に対して垂直方向に位置する平面に配置されている。
【0012】
潤滑溝15,16を製造するためには、回転可能に支持されたである旋削バイト(回転切削バイト:Drehmeissel)を備える従来の旋盤(回転切削機械)が使用される。この旋削バイトの、上記課題に適した切削面は半径方向外側に配置されている。
【0013】
潤滑溝15,16の製造を詳しく説明するために図2が参照される。たとえば図2に示されているような潤滑溝16を製造するためには、まず、旋削バイトの回転軸線がピン孔軸線18に重なって位置しているように、旋削バイトがピン孔13内に配置される。旋削バイトは回転させられて、この場合、旋削バイトの半径方向の寸法は、ピン孔13の内壁に対する接触が生じないようになっている。
【0014】
次いで、旋削バイトの回転軸線は、潤滑溝16が予定されている方向に移動される。この移動の方向は、ピストン軸線17に対して平行であり、かつ潤滑溝がピン孔13の天底領域および赤道領域にわたって延びていることが望ましい場合には、ピストン頂面2から離れる方向に向けられていてよい。
【0015】
しかし移動の方向は、ピストン軸線17に対して傾斜していてもよく、この場合、エンジン運転時に作動行程の点火圧最大値がピストン1、ひいてはコンロッドに作用する位置にコンロッドが位置している場合に、この方向がコンロッド軸線に一致するようになっていると有利である。このことは、ピン孔13の、作業行程時に最大の圧力負荷にさらされている天頂領域が潤滑溝16を備えず、したがって最大の載置面積を有しているので、この天頂領域においてピン孔13および該ピン孔13内に位置しているピンの摩耗が最小限にされるという利点を有している。
【0016】
旋削プロセスの終了後に潤滑溝16が最後まで形成されている場合、旋削バイトの回転軸線19は、たとえば、図2に記載されているような位置にある。この場合、ピン孔軸線18と旋削バイトの回転軸線19との間の間隔"X"は、潤滑溝16の深さの半分と全深さとの間にある大きさを有している。
【0017】
このことは、旋削バイトの切削面と旋削バイトの回転軸線19との間の距離が、旋削バイトの回転軸線の移動時にどの程度増大されるかに関連していて、この場合、この距離の増大の程度は、一方ではピン孔内面のどの角度領域にわたって潤滑溝16が延びているかにとって重要である。他方では、距離の増大は潤滑溝16の深さを規定する。
【0018】
たとえば、旋削バイトの切削面と旋削バイトの回転軸線19との間の距離の増大が、まさにピン孔軸線18と旋削バイトの回転軸線19との間の間隔Xに一致する場合、潤滑溝16は、360°の角度領域にわたって延びていて、天低領域における潤滑溝16の深さは間隔Xの二倍である。
【0019】
旋削バイトの切削面と旋削バイトの回転軸線19との間の距離が一定に保たれている場合、潤滑溝16は、天底および赤道領域にわたって180°延びていて、天底領域における潤滑溝16の深さは、ピン孔軸線18と旋削バイトの回転軸線19との間の間隔Xにまさに一致する。この場合、実際には、旋削バイトが、潤滑溝15,16が延びる、調節される所望の角度領域に応じた必要条件を得るために簡単な試験が必要である。
【0020】
この場合、旋削バイトの代わりに、ピストン1を移動させることも可能であり、これによって旋削バイトの切削面をピン孔の内面に接触させて、ピン孔の内面に潤滑溝を加工成形することが生じ得る。この場合、ピストン1は、回転軸線19とピストン頂面2との間の間隔が増大される方向に移動させられる。
【0021】
図3および図4には、ピン孔12’,13’の半径方向の内側面に配置された潤滑溝20,21が示されている。これらの潤滑溝20,21は、ピストン軸線17に対して傾斜して位置する2つの平面に配置されている。この場合、これら両平面は、ピストン頂面とは反対の方向で互いに接近する方向に延びているので、潤滑溝20,21は、ピン孔12’,13’の天底の近傍でピンボス10’,11’の半径方向の内側面に開口している。ピンがピン孔12’,13’内に位置している場合、潤滑溝20,21の終端領域22,23で開口が形成され、これらの開口を通じて毛細管効果かつピン孔内でのピンの運動に基づいて、油が潤滑溝20,21内に流入し、ひいてはピン孔12’,13’内におけるピンの潤滑が改善される。
【0022】
潤滑溝20,21の製造に関しては、図4が参照される。たとえば、潤滑溝21の製造時に、旋削バイトがピン孔13’内に導入され、旋削バイトの回転軸線19’は、本実施の形態では5°である所定の角度αだけ傾けられる。この角度αは、5°〜30°であってよい。次いで、旋削バイトは回転させられ、潤滑溝15,16の製造に関して上記で説明したように、ピストン軸線17の方向にまたはピストン軸線17に対して傾斜してずらされる。
【0023】
この場合、旋削バイトの代わりに、ピストンが所定の角度αだけ傾けられてもよい。引き続き、潤滑溝15,16をピン孔の内面に旋削加工するために、旋削バイトの切削面がピン孔の内面に接触するまで、ピストンまたは旋削バイトが移動させられてよく、潤滑溝15,16がピン孔内に旋削加工され得る。
【0024】
図5および図6では、本発明の実施の形態によるピン孔12'',13''は、それぞれ4つの潤滑溝24,25,26,27,28,29,30,31を有している。
【0025】
この実施の形態の利点は、潤滑溝の個数の増大によって、ピン孔12''および13''の潤滑材収容能力が増大することにあり、ひいてはピストンピンの潤滑が改善されることにある。さらに、真ん中の潤滑溝25,26,29,30内には油が集まり、この油は、エンジンの停止時にも潤滑溝25,26,29,30内に留まり、これによりエンジンのコールドスタート条件を改善する。
【0026】
製造は、潤滑溝15,16,20,21で説明したように行われるが、旋削バイトがピン孔12'',13''毎に複数回当てつけられなければならず、各潤滑溝24〜31を上述のようにピン孔12'',13''内に加工成形する、という差異がある。
【0027】
相並んで位置する複数の潤滑溝24〜31をピン孔12'',13''内に旋削加工する別の手段は、まず、旋削バイトの回転軸線がピン孔軸線18に対して同軸的に位置するまで、旋削バイトをピン孔12'',13''の手前に位置決めし、次いで、ピン孔軸線と旋削バイトの回転軸線との間に十分な間隔が生じるまで、旋削バイトの回転軸線をピストンに対して移動させるか、またはピストンを旋削バイトに対して移動させることにある。これにより、引き続き、回転する旋削バイトを当該旋削バイトの回転軸線の方向でピン孔を通して案内することができる。
【0028】
この場合、旋削バイトの切削面と旋削バイトの回転軸線との間の間隔が、旋削バイトの切削面がピン孔の天底および赤道にのみ接触するように選択されなければならない。ピン孔の、ピストン頂面とは反対の側に位置する相並んで位置する複数の潤滑溝がピン孔の内面に加工成形される。これにより形成された潤滑溝の個数は、この場合、旋削バイトの回転速度および送り速度に関連しており、この場合、これらの速度は潤滑溝の所望の個数に相応して調節されなければならない。
【0029】
この場合、ピン孔内には、軸受けブシュが圧入されていてもよいので、潤滑溝は軸受けブシュの内面にも加工成形される。軸受けブシュの孔は、潤滑溝の配置および製造に関して、ピン孔に対応する。
【符号の説明】
【0030】
X ピン孔軸線18と旋削バイトの回転軸線19との間の間隔
1,1’,1'' ピストン
2 ピストン頂面
3 燃焼凹部
4 リング部分
5,6,7 リング溝
8 リング支持体
9 クーリングチャンネル
10,10’,10'',11,11’,11'' ピンボス
12,12’,12'',13,13’,13'' ピン孔
14 スカートエレメント
15,16 潤滑溝
17 ピストン軸線
18 ピン孔軸線
19,19’ 旋削バイトの回転軸線
20,21 潤滑溝
22,23 潤滑溝20,21の終端領域
24〜31 潤滑溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6