特許第6104243号(P6104243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6104243尿素反応器トレイ、反応器、および生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104243
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】尿素反応器トレイ、反応器、および生成方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/32 20060101AFI20170316BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20170316BHJP
   C07C 275/00 20060101ALI20170316BHJP
   C07C 273/04 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B01J19/32
   B01J19/24 Z
   C07C275/00
   C07C273/04
【請求項の数】29
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-519661(P2014-519661)
(86)(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公表番号】特表2014-525827(P2014-525827A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】IB2012053421
(87)【国際公開番号】WO2013008147
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】MI2011A001299
(32)【優先日】2011年7月12日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514008239
【氏名又は名称】サイペム エッセ.ピ.ア.
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】ウーゴ アヴァリャーノ
(72)【発明者】
【氏名】リーノ カルレッシ
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−527949(JP,A)
【文献】 特開2006−335653(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0270872(US,A1)
【文献】 特開昭50−084465(JP,A)
【文献】 米国特許第03922326(US,A)
【文献】 特開昭57−130530(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00055496(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/32
B01J 19/24
B01J 10/00
C07C 273/04
C07C 275/00
B01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基板(10)と、
前記基板(10)から前記基板(10)に対して垂直なそれぞれの略平行軸(A)に沿って縦方向に突出し、前記基板(10)内に形成されたそれぞれの開口部(15)と連通するそれぞれの略凹状の内側空洞(17、37)を有する複数の中空のカップ形状部材(11、11A)と、
を備える尿素反応器トレイ(4)であって、
前記基板(10)の底面(14)から下方向に突出し、前記開口部(15)を有する開放上端部(21)と閉鎖底端部(22)との間で軸方向に各々が延在する、複数の第1のカップ形状部材(11)を備え、
各々の第1のカップ形状部材(11)が、
前記軸(A)と略交差し、気相および/または液相の優先的な貫通流のための貫通循環穴(25)を備えた横方向壁(23)と、
前記閉鎖底端部(22)を閉鎖し、循環穴を有さない底壁(24)とを備え、
各々の第1のカップ形状部材(11)の前記横方向壁(23)が、主に気相の貫通流のための第1の循環穴(25A)と主に液相の貫通流のための第2の循環穴(25B)とを有し、前記第1の循環穴と前記第2の循環穴の全てが前記軸(A)と略交差し、
前記第1の穴(25A)が、前記第2の穴(25B)より前記開放上端部(21)近くに位置し、前記第1の穴(25A)が、前記第2の穴(25B)より小さいことを特徴とする尿素反応器トレイ(4)。
【請求項2】
前記第1の穴(25A)が、前記開放上端部(21)近くの前記カップ形状部材(11)の上部領域(26)内に位置し、
前記第2の穴(25B)が、前記閉鎖底端部(22)近くの前記カップ形状部材(11)の底部領域(27)内に位置する請求項1に記載の反応器トレイ。
【請求項3】
前記第1の穴(25A)が、2〜20mmの直径(D1)を有し、
前記第2の穴(25B)が、4〜30mmの直径(D2)を有する請求項1または請求項2に記載の反応器トレイ。
【請求項4】
前記第1の穴(25A)が、2〜4mmの直径(D1)を有し、
前記第2の穴(25B)が、4〜8mmの直径(D2)を有する請求項3に記載の反応器トレイ。
【請求項5】
前記第1の穴(25A)が、1つまたは複数の軸方向に連続する列内に配置され、
前記開放上端部(21)に最も近い列が、前記基板(10)の底面(14)から1mm以上の距離を離して位置する、請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器トレイ。
【請求項6】
前記開放上端部(21)に最も近い列が、前記基板(10)の底面(14)から15〜20mmの距離を離して位置する、請求項5に記載の反応器トレイ。
【請求項7】
前記第1の穴(25A)が、前記横方向壁(23)に対して傾斜する、請求項1から6のいずれか一項に記載の反応器トレイ。
【請求項8】
前記第2の穴(25B)が、1つまたは複数の軸方向に連続する列内に配置され、
前記閉鎖底端部(22)に最も近い列が、前記底壁(24)から0mm以上の距離を離して位置する、請求項1から7のいずれか一項に記載の反応器トレイ。
【請求項9】
前記第1および第2の穴(25A、25B)のサイズおよび数、ならびに、前記第1のカップ形状部材(11)の数は、前記第1の穴(25A)の合計面積が、前記トレイ(4)の合計面積の0%から20%の間の範囲であり、前記第2の穴(25B)の合計面積が、前記トレイ(4)の合計面積の1%から20%の間の範囲となるものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の反応器トレイ。
【請求項10】
前記第1および第2の穴(25A、25B)のサイズおよび数、ならびに、前記第1のカップ形状部材(11)の数は、前記第1の穴(25A)の合計面積が、前記トレイ(4)の合計面積の0%から4%の間の範囲であり、前記第2の穴(25B)の合計面積が、前記トレイ(4)の合計面積の1%から5%の間の範囲となるものである、請求項9に記載の反応器トレイ。
【請求項11】
それぞれの第1のカップ形状部材(11)と位置合わせされその上に重ね合わされ、前記基板(10)の上方のそれぞれの閉鎖上端部(31)とそれぞれの開口部(15)と連通するそれぞれの開放底端部(32)との間で前記基板(10)から上方向に突出する複数の第2のカップ形状部材(11A)を備え、前記第2のカップ形状部材(11A)の各々が、前記軸(A)と略交差する、前記基板(10)の上方に位置する第3の貫通循環穴(25C)を備えた横方向壁(33)と、前記軸(A)に対して略垂直であり、前記閉鎖上端部(31)を閉じ、循環穴を有さない上部端壁(34)とを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の反応器トレイ。
【請求項12】
各々の第1のカップ形状部材(11)および前記それぞれの重ね合わされた第2のカップ形状部材(11A)が、前記基板(10)内の前記開口部(15)の1つを通って嵌合された管状本体(36)の、前記基板(10)の下方および上方それぞれに突出するそれぞれの部分(35)を画定する請求項11に記載の反応器トレイ。
【請求項13】
各々の第2のカップ形状部材(11A)の前記横方向壁(33)内の前記第3の穴(25C)が、前記第1のカップ形状部材(11)内の、主に液相の貫通流のための前記第2の穴(25B)と形状および配置において類似するまたは同一である請求項11または12に記載の反応器トレイ。
【請求項14】
前記第1および第2のカップ形状部材(11、11A)が、略円筒状である請求項11から13のいずれか一項に記載の反応器トレイ。
【請求項15】
前記第1および第2のカップ形状部材(11、11A)が、2Dから5/2Dの間の範囲の間隔で前記基板(10)上に格子パターンで配置され、この場合Dは、前記第1および第2のカップ形状部材(11、11A)の直径である、請求項1から14のいずれか一項に記載の反応器トレイ。
【請求項16】
縦方向軸(X)に沿って実質的に延在し、反応室(3)を画定するシェル(2)と、前記シェル(2)の内側に相互離間された関係で収容された複数の反応器トレイ(4)とを備える尿素反応器(1)であって、
前記トレイ(4)が、請求項1から15のいずれか一項に記載されたものであることを特徴とする尿素反応器。
【請求項17】
各々のトレイ(4)が、前記基板(10)を前記軸(X)に対して略垂直にして配置され、
各々の第1のカップ形状部材(11)は、前記基板(10)から下方向に突出し、
前記底端部(22)は、前記反応室(3)の内側のプロセス流体の正常な流れ方向に実質的に対応する縦方向の軸方向の上方向では、前記開放上端部(21)より前にある請求項16に記載の反応器。
【請求項18】
前記軸(X)に沿って異なる高さのトレイ(4)が、主に気相および液相それぞれの貫通流のためのそれぞれの第1の穴(25A)および第2の穴(25B)を有し、
前記気相および液相のそれぞれの合計流れ断面を規定する合計面積が、前記反応器(1)の内側の前記トレイ(4)の場所に応じて異なり、前記第1の穴(25A)の合計面積が、上方向に1つのトレイ(4)から別のトレイにかけて低減し、前記第2の穴(25B)の合計面積が、上方向に1つのトレイ(4)から別のトレイにかけて増大する請求項16または17に記載の反応器。
【請求項19】
アンモニアを含む液相および二酸化炭素を含む気相を、反応器(1)の内側で、トレイ(4)によって分離されたコンパートメント(7)を通して同じ上方向に供給することによって、前記反応器(1)の内側でアンモニアと二酸化炭素との反応を引き起こすステップを含む尿素生成方法であって、
前記気相および前記液相が、1つのコンパートメント(7)から次のコンパートメントへと、各々のトレイ(4)の基板(10)からそれそれぞれの軸(A)に沿って、それぞれの開放上端部(21)とそれぞれの閉鎖底端部(22)との間に下方向に突出する複数の中空の第1のカップ形状部材(11)の横方向壁(23)を貫通して形成された横断方向穴(25)を通って流れ、
前記第1のカップ形状部材(11)が、穴を有さない底壁(24)によって閉鎖されたそれぞれの底端部(22)を有し、そのために前記液相及び前記気相は前記横断方向穴(25)を通って専ら前記軸(A)に交差する方向に各々の第1のカップ形状部材(11)に流入し、
前記気相を、前記第1のカップ形状部材(11)の前記横方向壁(23)を貫通して形成された第1の穴(25A)を主に通して供給するステップと、
前記液相を、前記第1のカップ形状部材(11)の前記横方向壁(23)を貫通してこれもまた形成され、前記横方向壁(23)を貫通する前記第1の穴(25A)より低い位置にある第2の穴(25B)を主に通して供給するステップと
を含み、
前記第1の穴(25A)が、前記第2の穴(25B)より小さい尿素生成方法。
【請求項20】
前記第1の穴(25A)が、2〜20mmの直径(D1)を有し、前記第2の穴(25B)が、4〜30mmの直径(D2)を有する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の穴(25A)が、2〜4mmの直径(D1)を有し、前記第2の穴(25B)が、4〜8mmの直径(D2)を有する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の穴(25A)が、1つまたは複数の軸方向に連続する列内に配置され、
前記開放上端部(21)に最も近い列が、前記基板(10)の底面(14)から1mm以上の距離を離して位置する請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記開放上端部(21)に最も近い列が、前記基板(10)の底面(14)から15〜20mmの距離を離して位置する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の穴(25A)が、前記横方向壁(23)に対して傾斜する請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の穴(25B)が、1つまたは複数の軸方向に連続する列内に配置され、
前記閉鎖底端部(22)に最も近い列が、前記底壁(24)から0mm以上の距離を離して位置する請求項19から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1および第2の穴(25A、25B)のサイズおよび数ならびに第1のカップ形状部材(11)の数が、前記第1の穴(25A)の合計面積が、前記トレイ(4)の合計面積の0%から20%の間の範囲であり、前記第2の穴(25B)の合計面積が、前記トレイ(4)の合計面積の1%から20%の間の範囲となる請求項19から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1および第2の穴(25A、25B)のサイズおよび数ならびに第1のカップ形状部材(11)の数が、前記第1の穴(25A)の合計面積が、前記トレイ(4)の合計面積の0%から4%の間の範囲であり、前記第2の穴(25B)の合計面積が、前記トレイ(4)の合計面積の1%から5%の間の範囲となる請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記反応器(1)の縦方向軸(X)に沿って異なる高さのトレイ(4)が、前記第1の穴(25A)および第2の穴(25B)の異なる合計面積を有し、このため前記気相および前記液相の異なる合計流れ断面を有し、
前記第1の穴(25A)の合計面積が、上方向に1つのトレイ(4)から別のトレイにかけて低減し、
前記第2の穴(25B)の合計面積が、上方向に1つのトレイ(4)から別のトレイにかけて増大する請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のカップ形状部材(11)に流入した後、前記気相および液相が、それぞれの第1のカップ形状部材(11)と位置合わせされその上に重ね合わされた第2のカップ形状部材(11A)内へと上方向に流れ、
前記第2のカップ形状部材(11A)が、穴を有さない端壁(34)によって閉鎖されたそれぞれの上端部(31)を有し、前記軸(A)と略交差する、前記基板(10)の上方に位置する第3の貫通穴(25C)を有し、
前記気相および前記液相は、専ら前記軸(A)と交差する方向に前記第2のカップ形状部材(11A)から流出する請求項19から28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素反応器トレイ、反応器、および生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、尿素は、二酸化炭素とアンモニアを反応させて、尿素および水に分解するカルバミン酸アンモニウムを形成する方法を用いて工業的に生成される。
【0003】
したがって、一般的な反応器は、加圧された反応室の内側で並流で流れる気相および液相を含む。
【0004】
アンモニアおよび二酸化炭素の炭酸アンモニウム、最終的には尿素への変換は、トレイ反応器を用いて強化され、すなわち尿素の発生量を増大させるように強化される。
【0005】
尿素トレイ反応器は、通常は縦方向の軸に沿って実質的に延在する、通常は円筒状のシェルを実質的に含み、内側に要素すなわちトレイが嵌合される。トレイは、反応室をコンパートメントに分割し、反応器の内側に物質特有の通路を形成するように成形された、および/または、穿孔された、それぞれの金属セクションによって画定される。
【0006】
トレイは通常、反応器の縦方向軸に対して垂直であり、軸に沿って反応器の全高さまで等しく離間される。
【0007】
トレイは穿孔されることが非常に多い。すなわち、さまざまに配置され、場合によって異なる形状および/またはサイズのものである穴を有する。
【0008】
トレイは、好ましくは、反応器に通常設けられるマンホールを通って挿入されるように設計され、そのためこれらはまた、既存の反応器に嵌合させ、および/または取り外し、取り換えることができる。そうした理由のため、トレイは、通常、一緒に嵌合する複数の部分で構成される。
【0009】
トレイは、さまざまな機能を有し、特に、
−軽(より速い)相の保持時間を最大化し、
−反応器セクションに沿って反応剤をできるだけ等しく分配して「逆混合」を防止し、
−気相および液相の混合を強化し、
−「泡サイズ」を低減して二酸化炭素中のアンモニアの拡散を向上させる。
【0010】
数多くの尿素反応器トレイの設計および形状が、知られている。
【0011】
穿孔されたトレイを備えた尿素反応器は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載されている。
【0012】
他の用途の他のトレイ設計は、特許文献5および特許文献6に記載されている。
【0013】
既知の構成、特に尿素を生成するように特別に設計された上記の文献のものは、実際に、逆混合および負荷損失を低減することによって、2つの相の各々に優先的通路を設けることにより軽(気)相および重(液)相を確実にほぼ等しく分配することによって、及び、1つのトレイと別のトレイの間の非侵入型(非衝撃型)の混合を可能にすることによって、発生量を増大させることを実現する。
【0014】
しかしながら、既知の解決策は、依然として改良の余地を残している。
【0015】
一般的に言えば、既知の解決策は、(いずれも超臨界流体からなる)軽相および重相の完全な混合を実現することはできず、これらの相は、密度の相違により、トレイの設計および配置によって、特にトレイ内の穴の形状、場所、およびサイズによって画定された別個の優先的通路に沿って流れる傾向がある。
【0016】
この欠点はまた、反応剤の最終的変換も損ない、したがって尿素の発生量を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第495418号明細書
【特許文献2】欧州特許第781164号明細書
【特許文献3】米国特許第6444180号明細書
【特許文献4】米国特許第6165315号明細書
【特許文献5】米国特許第3070360号明細書
【特許文献6】米国特許第3222040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、既知の技術の上記の欠点を解消するように設計され、特に、気相および液相の完全な混合および高い尿素発生量を実現する尿素反応器トレイ、反応器、および生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、したがって、請求項1で実質的に定義された尿素反応器トレイに関する。
【0020】
本発明はまた、請求項16および19それぞれで実質的に定義された尿素反応器および尿素生成方法にも関する。
【0021】
本発明のさらなる優先的特性は、従属請求項に示される。
【0022】
本発明による反応器トレイの形状は、尿素反応器および尿素生成方法において気相および液相を完全に混合し、そのため尿素発生量を大きく増大させることを実現する。
【0023】
本発明による反応器トレイおよび反応器は、概して、製造および設置が極めて容易でもある。
【0024】
本発明の非限定的な実施形態が、添付の図を参照して例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態による尿素反応器の部分的概略図である。
図2図1の反応器の拡大詳細図である。
図3図2の詳細な上面図である。
図4図1の反応器で使用可能なトレイの概略平面図である。
図5図1の反応器で使用可能なトレイの概略平面図である。
図6】本発明の第2の実施形態による尿素反応器の部分的概略図である。
図7図6の反応器の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、尿素反応器1、特にトレイ反応器の内部を示している。
【0027】
反応器1は、縦方向軸Xに沿って実質的に延在し、反応器1の内側に反応室3を画定するシェル2と、シェル2の内側に収容された複数のトレイ4(図1では1つのみが示される)とを備える。
【0028】
簡単にするために、本発明に関連しない反応器1の他の既知の構成要素部分、例えば反応剤、ならびに製品装填および排出システム、加熱および加圧システムなどは示されない。
【0029】
シェル2は、横方向の、例えば、略円筒状の壁5と、横方向壁5のそれぞれの対向する軸方向端部にある2つの端部分(図示せず)とを有する。
【0030】
トレイ4は、例えばブラケット6または他の支持具によって横方向壁5に嵌合される。
【0031】
図1は1つのトレイ4のみを示しているが、反応器1は複数のトレイ4を収容し、トレイ4は、軸Xに対して略垂直であり、軸Xに沿って離間されて、反応室3をコンパートメント7に分割し、反応室3の内側に物質のための通路を画定する。
【0032】
各々のトレイ4は、有利には、ただし必ずしもそうではないが、適切な締結装置9によって互いに連結された複数の取り外し可能なモジュラーセクション8を備える。
【0033】
図2および図3も参照すれば、各々のトレイ4は、例えば円形ディスクの形態の基板10と、基板10から下方向に突出する複数のカップ形状部材11とを備える。
【0034】
より詳細には、基板10は、互いに対向する、例えば略平坦で平行である上面13および底面14を有する。
【0035】
上面13は、好ましくは上面13と同一平面のそれぞれの縁16によって境界付けられた複数の開口部15を有する。
【0036】
カップ形状部材11は、基板10の底面14から下方向に突出する。
【0037】
各々のカップ形状部材11は、中空であり、軸Xに対して略平行の軸Aに沿って縦方向に延在し、それぞれの開口部15と連通する略凹状の内側空洞17を画定し、開口部15を備えた開放上端部21と閉鎖底端部22との間を軸方向に延在する。
【0038】
より詳細には、各々のカップ形状部材11は、横方向壁23および底壁24を備える。
【0039】
図1から図3の非限定的な例では、ただし必ずしもそうではないが、カップ形状部材11は、略円筒状である。横方向壁23は、略円筒状であって軸Aの周りに延在し、底壁24は、略円形であって軸Aに対して垂直である。
【0040】
しかしながら、カップ形状部材11は、例として説明し示したものとは異なって成形されてよい。より詳細には、これらは、軸Aに対して傾斜したおよび/または(軸Aに対して垂直な)円形断面以外の横方向壁23を有することができる。図示しない他の実施形態では、カップ形状部材11は、略円錐台形状、角柱、角錐台形状などでよく、および/またはさまざまな形状、例えば略円形または多角形、また、軸Aに沿って一定または可変の断面を有することができる。図示する例のように中央で線対称であるのとは対照的に、カップ形状部材11は、(軸Aに対して垂直な)水平軸に沿って長手方向に細長くてもよい。これらは、例えば、平面図において、略矩形または楕円形、または基本的に細長い形状を有することができ、横方向壁23は、軸Aに対して略平行でよく、または軸Aに対してさまざまに傾斜してよく、それによって例えば複数の平行のまたはさまざまに配置された突出部を基板10の底面14の下方に画定することができる。
【0041】
しかしながら、一般的に言えば、各々のカップ形状部材11は、以下で説明するように、開口部15を備えた開放上端部21と、実質的に穴を有さない底壁24によって閉鎖された底端部22とを有する。
【0042】
カップ形状部材11の位置、より詳細には開放端部21および閉鎖端部22の位置は、反応室3の内側のプロセス流体の正常の流れ方向によって決定される。尿素をアンモニアおよび二酸化炭素から生成するためのほとんどの反応器のように、反応器1内を循環するプロセス流体は、気相、またはいわゆる軽相と、液相、またはいわゆる重相とを実質的に含む。いずれの相も、略上方向に流れる。
【0043】
したがって、反応室3の内側のプロセス流体の流れ方向に実質的に対応する(軸Aおよび軸Xに対して平行な)略軸方向では、各々のカップ形状部材11の閉鎖端部22は、開放端部21より前にある。
【0044】
横方向壁23は、その形状に関係なく、液相および/または気相の優先的な貫通流を可能にするように設計された貫通循環穴25を有する。
【0045】
したがって、各々のカップ形状部材11は、軸Aと略交差する循環穴25を有し、この穴は、図示する例では、軸Aに対して略径方向である。
【0046】
各々のカップ形状部材11は、さまざまなサイズの穴25を有し、より詳細には、開放上端部21近くの上部領域26内の気(軽)相の貫通流のためのより小さい穴25Aと、閉鎖底端部22近くの底領域内27の液(重)相の貫通流のためのより大きい穴25Bとを有する。
【0047】
穴25は、必ずしも円形ではなく、いかなる形状でもよい。例えば、これらは、スロットまたはスリットの形態の、円形、多角形、楕円形、略矩形などでよい。
【0048】
図1の概略図より詳細な穴25の図を示す)図2の例では、穴25は円形であり、カップ形状部材11は、上部領域26内の直径D1の穴25Aの第1のグループと、底領域27内の、直径D1より大きい直径D2の穴25Bの第2のグループとを備える。
【0049】
いずれのグループの穴25も、好ましくは、横方向壁23上では等しく離間され、例えば、等しく軸方向に離間された複数の連続する列内に配置される。隣接する列内の穴25は、(より大きい穴25Bによって示すように)位置合わせされてよく、または(より小さい穴25Aによって示すように)交互に配列されてよい。
【0050】
例として、(より小さい)第1のグループの穴25Aは、およそ2〜20mm、好ましくは約2〜4mmの直径D1を有し、グループ内の上列(すなわちカップ形状部材11の開放上端部21および基板10の面14に最も近い列)内の穴25Aは、基板10の底面14からおよそ1mm以上、好ましくは約15〜30mmの距離を離して位置する。
【0051】
上記の測定値は単に示唆的なものであり、円形穴25以外の場合、この測定値は、穴の直径とは対照的に、相当直径または水力直径、すなわち同じ面積の円形断面が有するであろう直径を指すことができる。
【0052】
第1のグループ内の穴25Aは、横方向壁23に対して、より詳細には約30°内向きに、好ましくは横方向壁23に対して垂直という点で下方向に随意に傾斜する。この傾斜は制限するものではなく、穴25Aは、横方向壁23に対して垂直という点で上方向に傾斜することもできる。穴25Aの傾斜はまた、横方向壁23の厚さによって決まり、実質的にかつ主に気相のみが穴25Aを流れ抜けること、およびカップ形状部材11の内側で相が完全に混合することを確保する働きをする。
【0053】
(より大きい)第2のグループ内の穴25Bは、およそ4〜30mm、好ましくは約4〜8mmの直径D2を有し、底端部22に最も近い穴25Bの列は、底壁24から、0mm以上の距離を離して位置して、液相の貫通流を確保する。
【0054】
気相穴25Aの上列(すなわち基板10の底面14に最も近い列)の基板10からの距離は、均一な気相「フード」を形成することによって、トレイ4の下方に、すなわち基板10の底面14の下方に、確実に気相を等しく分布させるために重要である。
【0055】
換言すれば、各々のコンパートメント7内では、プロセス流体の気相および液相の両方は、(軸Xに対して平行な)略軸方向に上方向に流れ、気(軽)相はトレイ4の底面14に接して堆積して、基板10の底面14と穴25Aの上列の間の距離に等しい高さのヘッドを形成する。したがって、カップ形状部材11の軸Aに対して略径方向に、またはいずれにせよ反応器1の縦方向軸Xと略交差して、気相が主として穴25Aを流れ抜ける。十分なヘッドに到達すると、より重い液相もまた、反応器1の縦方向軸Xと略交差する方向に、穴25Aより低い穴25Bを流れ抜ける。液相および気相の両方は、空洞17に沿って流れて上昇し、ここでこれらが局所的に混合され、開口部15を通って次のコンパートメント7に流れる。
【0056】
このため、本発明の形状により、プロセス流体は、穴25によって画定された強制通路によって、径方向に各々のカップ形状部材内に流れさせられる。したがって、カップ形状部材11は、2つの相の完全な混合を確保する局所混合器として作用する。
【0057】
図4および図5における非限定的な例では、カップ形状部材11(および開口部15)は、規則的なパターンで、例えば格子パターンで等しく離間されて基板10上に配置される。より詳細には、カップ形状部材11は、およそ1.5D以上、好ましくは約2Dから5/2D(この場合Dは、カップ形状部材11の直径である)の間隔Lだけ離間されて置かれ、セクション8の製造が簡易化される。図示しない他の実施形態では、カップ形状部材11は、他の不規則なパターン、および/または、図示するもの以外の間隔を有して、基板10上に配置される。
【0058】
例として、カップ形状部材11の直径Dは、およそ20mm以上であり、好ましくは約100〜160mmである。
【0059】
カップ形状部材11は、穴25の数に応じて、好ましくは、1平方メートルあたり36個より少ない数になり、より好ましくは、1平方メートルあたり12個から18個の間の範囲である。
【0060】
2つのグループ(すなわち2つの相用)の穴25の数は、トレイ4上のカップ形状部材11の数に応じて選択される。カップ形状部材11の数は、反応器1の内側のトレイ4の直径および場所にしたがって選択される。一般的に言えば、トレイ4の形状(特に、穴25のサイズおよび数ならびにカップ形状部材11の数)は、ここでも反応器1の内側のトレイ4の場所に応じて、合計気相流断面(すなわち穴25Aの合計面積)が、トレイ4の合計面積のおよそ0〜20%、好ましくは約0〜4%であり、合計液相流断面(すなわち穴25Bの合計面積)が、トレイ4の合計面積のおよそ1〜20%、好ましくは約1〜5%になるように選択される。
【0061】
一般的に言えば、気相流断面および液相流断面の合計(すなわち穴25Aおよび25Bの合計面積)は、反応器1の内側のトレイ4の場所に応じて変化する。反応器1の内側の異なる高さにあるトレイ4は、異なる合計気相流断面および合計液相流断面を有してよく、好ましくは有する。より詳細には、1つのトレイ4から次のトレイへ上方向に作用すると、合計気相流断面は低減し(上部トレイ4においては実際的にゼロにさえなり)、一方で合計液相流断面は、増大するかほぼ一定のままである。
【0062】
2つの相の優先的通路を作り出すことを回避するために、トレイ4(すなわち基板10)の表面内、またはカップ形状部材11の底壁24内には、循環穴、すなわち、1つのコンパートメント7から別のコンパートメントへの直接的な流体の流れを可能にする循環穴は存在しない。
【0063】
トレイ4の表面および/またはカップ形状部材11の底壁24は、腐食を結果として生じさせ得る滞留気体ポケットの形成を防止するために、滞留穴28を有することができる。(図1では一部のみが概略的に示されている)滞留穴28は、ここでも優先的通路を作り出すことを回避するために、気相および液相の流れ穴25の直径D1およびD2の両方より直径が小さく、好ましくは約2〜3mmの直径であり、さらに、穴25の数よりもおよそ少なくとも1桁分少ない。
【0064】
したがって、底壁24は、(プロセス流体が好ましくはそこを通って循環する)循環穴25を有さないという意味で実質的には穴を有さず、任意に滞留穴28のみを有する。用語「滞留穴」は、サイズおよび/または場所的に、循環穴に対して優先的な液相または気相の通路を形成しない穴を意味するように意図されている。
【0065】
本発明による尿素生成方法を実施するために、アンモニアと二酸化炭素との反応は、適切な圧力および温度状態で反応器1の内側で引き起こされる。より詳細には、アンモニアを含む液相および二酸化炭素を含む気相は、反応室3の内側の同じ方向で上方向に、トレイ4によって分離された連続するコンパートメント7を通って循環される。
【0066】
前述したように、各々のコンパートメント7内では、液相および気相の両方は、上方向に(Xに対して平行な)略軸方向に流れ、トレイ4の底面14に接して堆積する。気相は、主として穴25Aを通ってカップ形状部材11の空洞17内に流れ、液相は、主として穴25Bを通って空洞17内に流れる。2つの相は、空洞17の内側で局所的に混合され、次のコンパートメント7へと流れ続ける。
【0067】
すでに説明したものと類似するまたは同一であるすべての詳細が、同じ参照番号を用いて示される図6および図7の実施形態では、各々のトレイ4は、基板10と、図1から図3を参照して説明した、基板10から(すなわち基板10の底面14から)下方向に縦方向に突出する複数の底部の第1のカップ形状部材11と、基板10から(すなわち基板10の上面13から)上方向に突出し、それぞれの第1のカップ形状部材11と位置合わせされその上に重ね合わせられた複数の上部の第2のカップ形状部材11Aとを備える。
【0068】
カップ形状部材11Aもまた中空であり、軸Xに対して略平行のそれぞれの軸Aに沿って縦方向に延在する。より詳細には、各々のカップ形状部材11Aは、軸Aに沿って、基板10の上方に位置する閉鎖上端部31と、開口部15と連通する開放底端部32との間に延在する。カップ形状部材11Aは、軸Aの周りに延在し、軸Aと略交差し,基板10の上方に位置する貫通循環穴25Cを有する横方向壁33と、軸Aに対して略垂直であり、閉鎖上端部31を閉じ、実質的に穴を有さず、すなわち循環穴を有さない、上端壁34とを備える。
【0069】
換言すれば、軸Aに沿って縦方向に重ね合わされた対向するカップ形状部材11、11Aの対は、基板10から突出し、各々の底部のカップ形状部材11およびそれぞれの重ね合わされた上部カップ形状部材11Aは、基板10内の開口部15の1つを通って嵌合された管状本体36の、基板10の下方および上方それぞれに突出するそれぞれの部分35を画定する。
【0070】
各々のカップ形状部材11Aは、開口部15およびその下方のカップ形状部材11の1つの空洞17と連通する略凹状の内側空洞37を有する。
【0071】
各々の上部カップ形状部材11Aの横方向壁33内の穴25Cは、例えば、それぞれの底部カップ形状部材11の主に液相の循環穴25Bと、形状および配置において類似しているまたは同一である。より詳細には、各々の上部カップ形状部材11Aの穴25Cは、対応する底部カップ形状部材11の穴25Bの合計面積とほぼ等しい(カップ形状部材11Aを通る両方の相の合計の流れ断面を規定する)合計面積を有する。
【0072】
例えば、穴25Cのサイズ及び穴25Cおよびカップ形状部材11Aの数は、両方の相の合計流れ断面(すなわち穴25Cの合計面積)が、反応器1の内側のトレイ4の場所に応じて、トレイ4の合計面積のおよそ1〜20%、好ましくは約1〜5%であるように選択される。
【0073】
この変形例でも、アンモニアと二酸化炭素との反応は、適切な圧力および温度状態において反応器1の内側で引き起こされる。より詳細には、アンモニアを含む液相および二酸化炭素を含む気相は、反応室3の内側で、トレイ4によって分離された連続するコンパートメント7を通って上方向に同じ方向に循環される。
【0074】
前述したように、各々のコンパートメント7内では、液相および気相の両方は、(軸Xに対して平行な)略軸方向に上方向に流れ、トレイ4の底面14に接して堆積する。気相は、主として穴25Aを通ってカップ形状部材11の空洞17内に流れる。液相は、主として穴25Bを通って空洞17内に流れる。2つの相は、空洞17の内側で局所的に混合される。
【0075】
両方の相は、カップ形状部材11の内側で略軸方向(縦方向)に上方向に流れ、それぞれのカップ形状部材11と位置合わせされてその上に重ね合わされたカップ形状部材11A内に入り、穴25Cを通って、すなわち軸Aと略交差してカップ形状部材11Aから流出し、次のコンパートメント7へと流れ続ける。
【0076】
この変形例でも、トレイ4(すなわち基板10の)の表面内、またはカップ形状部材11、11Aの端壁24、34内には、循環穴、すなわち1つのコンパートメント7から別のコンパートメントへの直接的な流れを可能にする循環穴は存在せず、それによって気相および/または液相のための優先的通路を作り出すことを回避する。
【0077】
トレイ4の表面、および/または、底壁24、および/または、端壁34は、上記で説明したような任意の滞留穴28を有する。
【0078】
図1図5を参照して上記で参照された、例えば、循環穴およびカップ形状部材のサイズおよび配置に関する追加の特性もまた、図6および図7の変形例に適用される。
【0079】
しかしながら、明らかなことに、本明細書で説明し図示した反応器トレイ、反応器、および方法には、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく変更が加えられてよい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7