(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104247
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】レーザー治療の最適化
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20170316BHJP
A61B 18/20 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
A61F9/008 120A
A61B18/20
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-524091(P2014-524091)
(86)(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公表番号】特表2014-525805(P2014-525805A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】US2012049402
(87)【国際公開番号】WO2013019998
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月29日
(31)【優先権主張番号】61/514,419
(32)【優先日】2011年8月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510326175
【氏名又は名称】トプコン・メディカル・レーザー・システムズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TOPCON MEDICAL LASER SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100082821
【弁理士】
【氏名又は名称】村社 厚夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】パランカー ダニエル ヴイ
【審査官】
石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−513279(JP,A)
【文献】
特表2010−508120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008
A61B 18/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照データを含む参照データベースであって、前記参照データが、レーザー治療のパラメータセット及び対応する推定外傷サイズの複数ペアを含む、前記参照データベースと、
プロセッサと、
を備える患者の眼をレーザー治療するためのシステムであって、
前記プロセッサは、
レーザー治療のパラメータセットを受け取り、該レーザー治療のパラメータセットは、レーザー治療ビームの一つ又は複数のパラメータを含み、
前記参照データを使用して、前記レーザー治療ビームで生成される外傷部の推定サイズを決定し、前記外傷部の推定サイズは受け取った前記レーザー治療のパラメータセットの関数であり、
所望の外傷パターン密度を受け取り、さらに、
前記外傷部の決定された推定サイズと受け取った所望の外傷パターン密度を使用して、前記所望の外傷パターン密度となる患者の眼の複数の外傷部を生成するようになったレーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定するように作動可能であることを特徴とするシステム。
【請求項2】
標的治療領域のサイズを受け取ることをさらに含み、前記レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定することは、さらに前記標的治療領域のサイズに基づいており、レーザー治療ビームスポットの前記推奨パターンに基づく前記患者の眼に対する前記レーザー治療ビームの適用は、前記標的治療領域のサイズに対応するサイズを有する領域上に複数の外傷部を形成することになる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
レーザー治療ビームを生成するように構成されるレーザーエネルギ源と、
前記レーザー治療ビームスポットの推奨パターンに基づいてレーザー治療ビームを施すように構成されるコントローラと、
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記レーザー治療パラメータセットは、前記レーザー治療ビームの空中ビームサイズ、コンタクトレンズのタイプ、コンタクトレンズの拡大係数、前記レーザー治療ビームのパルス持続時間、及び前記外傷部の所望の臨床グレードの1つ又はそれ以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記レーザー治療パラメータセットは、前記外傷部の所望の臨床グレードを含み、該外傷部の所望の臨床グレードは、目に見えない外傷グレードを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定することは、前記決定した外傷部の推定サイズ及び前記所望の外傷パターン密度の少なくとも一部に基づいて、レーザー治療ビームスポットの推奨数を決定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定することは、前記決定した外傷部の推定サイズ及び前記所望の外傷パターン密度の少なくとも一部に基づいて、少なくとの2つのレーザー治療ビームスポットの間の推奨間隔を決定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記外傷部の推定サイズを決定することは、前記レーザー治療ビームのパラメータセットの値が前記参照データから外れている場合、前記参照データの少なくとも一部に基づいて前記外傷部の推定サイズを補間することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記レーザー治療ビームは、パターン化されたレーザー治療ビームを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、
更新された参照データを受け取り、
前記更新された参照データを前記参照データベースに格納する、
ようにさらに作動可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
患者の眼のレーザー治療のためのコンピュータ実行可能命令を含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、該コンピュータ実行可能命令は、
レーザー治療のパラメータセット及び所望の外傷パターン密度を受け取り、該レーザー治療のパラメータセットは、レーザー治療ビームの一つ又は複数のパラメータを含み、
参照データを使用して、前記レーザー治療ビームで生成される外傷部の推定サイズを決定し、前記参照データが、レーザー治療のパラメータセット及び対応する推定外傷サイズの複数ペアを含み、前記外傷部の推定サイズは受け取った前記レーザー治療のパラメータセットの関数であり、さらに
前記外傷部の決定された推定サイズと受け取った所望の外傷パターン密度を使用して、前記所望の外傷パターン密度となる患者の眼の複数の外傷部を生成するようになったレーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定することを特徴とする非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
標的治療領域のサイズを受け取る命令をさらに含み、前記レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定することは、さらに前記標的治療領域のサイズに基づいており、レーザー治療ビームスポットの前記推奨パターンに基づく前記患者の眼に対する前記レーザー治療ビームの適用は、前記標的治療領域のサイズに対応するサイズを有する領域上に複数の外傷部を形成することになる、請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
前記レーザー治療パラメータセットは、前記レーザー治療ビームの空中ビームサイズ、コンタクトレンズのタイプ、コンタクトレンズの拡大係数、前記レーザー治療ビームのパルス持続時間、及び前記外傷部の所望の臨床グレードの1つ又はそれ以上を含む、請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記レーザー治療パラメータセットは、前記外傷部の所望の臨床グレードを含み、該外傷部の所望の臨床グレードは、目に見えない外傷グレードを含む、請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定することは、前記決定した外傷部の推定サイズ及び前記所望の外傷パターン密度の少なくとも一部に基づいて、レーザー治療ビームスポットの推奨数を決定することを含む、請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定することは、前記決定した外傷部の推定サイズ及び前記所望の外傷パターン密度の少なくとも一部に基づいて、少なくとの2つのレーザー治療ビームスポットの間の推奨間隔を決定することを含む、請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記外傷部の推定サイズを決定することは、前記レーザー治療ビームのパラメータセットの値が前記参照データから外れている場合、前記参照データの少なくとも一部に基づいて前記外傷部の推定サイズを補間することを含む、請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記レーザー治療ビームは、パターン化されたレーザー治療ビームを含む、請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記参照データは、参照データベースに格納され、
更新された参照データを受け取り、
前記更新された参照データを前記参照データベースに格納する、
命令をさらに含む、請求項11に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国特許法第119条(e)による2011年8月2日出願の米国仮出願番号61/514,419「網膜光凝固のための外傷パターン」の優先権を主張するものであり、その開示内容全体は引用により本明細書に組み込まれている。
(技術分野)
本出願は全体的には眼のレーザー治療に関し、詳細には眼の光熱治療の最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年、米国及び他の国において多数の患者が眼の介入治療を受けている。当該治療は、一般にレーザー治療ビームの形態のレーザーエネルギを使用する必要があり、該レーザーエネルギは、標的とされる組織構造に対する制御された出力及び制御された持続期間を有し、目で見える又は見えない外傷部を引き起こす。これらの治療は、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、新生血管疾患、加齢黄斑変性、緑内障、網膜炎及び虚血に反応して産生される雨血管新生因子に起因する網膜血管漏洩等の臨床的問題を解決するために利用される。
【0003】
従来の眼の治療のために使用できるレーザーを使った治療の1つは網膜光凝固術であり、一般に50から200msの暴露期間及び100から500μmの範囲のスポットサイズを使用する514又は532nmレーザーを利用して行うことができる。初期の網膜光凝固術は、比較的強い網膜外傷部の付与を伴っており、結果的に不適当に内網膜に広がる熱損傷につながる。最近の網膜光凝固術は、穏やかな外傷部の適用を伴い、眼の神経節細胞層及び神経線維層の損傷を制限するようになっている。より最近では、網膜光凝固術は進化しており、走査型レーザーを用いて眼の上への複数スポットパターンの適用を伴う。パターン化されたスポットの適用は、10−30msの範囲の短パルス持続時間を用いて行うことができる。短い暴露時間によって熱拡散が減少するので、これらの外傷部は、対応する単一スポットに比べてより軽微で小さくなる傾向にある。
【0004】
前述のレーザー治療術のうちのいずれか1つを利用して、医師は、眼の所望の部位に複数の外傷部を形成するための複数のレーザー治療ビーム適用を用いて患者の眼を治療することができる。例えば、現在、医師は、レーザー治療ビームの単一適用を患者の眼に施して結果として生じる外傷部を観察する。次に、医師は、先に生じた外傷部の近くに他のレーザー治療ビーム適用を施すことができる。一般に、後続のレーザー治療ビーム適用の部位は医師が決定し、後続の各レーザー治療ビーム適用の間の距離は、外傷径の所定の画分に対応する。このようにして、医師は、患者の眼の所望の治療領域上に複数の外傷パターンを作り出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この施術は、目に見える外傷部を生じる単一スポットのレーザー治療ビームを用いて患者を効果的に治療するために利用することができるが、医師は先に形成した目に見えない外傷部に基づいてレーザー治療ビームを位置決めできなので、目に見えない外傷部を生じるレーザー治療ビームを用いて患者を治療するために利用することができない。さらに、この施術は、パターンをパターン化レーザー治療ビーム適用に先立って決定する必要があるので、パターン化レーザー治療ビームを用いて患者を治療するために利用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
眼のレーザー治療の最適化のためのシステム及びプロセスが提供される。本プロセスは、レーザー治療ビームのパラメータセット(例えば、空中ビームサイズ、コンタクトレンズ、パルス持続時間、及び所望の臨床グレード)を受け取る段階と、レーザー治療ビームが生成する外傷部の推定サイズを決定する段階と、所望の外傷パターン密度(例えば、フルグリッド、ミドルグリッド等)を受け取る段階と、レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定する段階と、を含むことができる。レーザー治療ビームスポットの推奨パターンは、推奨されるレーザー治療スポット数を含むことができる。
【0007】
本プロセスは、レーザー治療パラメータセット及び推定外傷サイズの複数ペアを含む参照データを取得する段階をさらに含むことができる。いくつかの実施例において、参照データは、光凝固術に適用可能なレーザー設定値の範囲を表す、眼に接するさまざまなビームサイズ、パルス持続時間、及び臨床グレードといった、広範囲のレーザパラメータのために、眼の凝固ゾーンの幅を計測することで取得することができる。計測値及び関連データは、参照データベースに格納することができる。
【0008】
本プロセスは、レーザー治療ビームのパラメータセットを用いて参照データベースに問い合わせる段階をさらに含む。参照データベースへの問い合わせに基づいて、レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定することができる。受け取ったパラメータが、参照データベースに格納されたパラメータと直接適合しない場合、プロセスは、格納された計測値に基づいて推定された外傷サイズを補間する段階を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定するための例示的なプロセスを示す。
【
図2】種々のレーザー治療パラメータを有するレーザー治療ビームによって形成された例示的な深刻な外傷部の図を示す。
【
図3】
図1のプロセスを使用して生成することができるレーザー治療ビームスポットの例示的なパターンを示す。
【
図4】
図1に示すプロセスを実行するために用いることができる例示的なレーザー治療システムを示す。
【
図5】目に見える又は見えない外傷部の付与のための例示的なレーザー治療システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の開示及び実施例の説明は、実施可能な特定の実施例を例示する添付の図面を参照する。本開示の範囲を逸脱することなく他の実施例を実施できること及び構造的な変更を行い得ることを理解されたい。
【0011】
前述のように、レーザー治療システムは、外傷部を生成するか又は所望の部位で眼の温度を上昇させるためにレーザーエネルギを眼の標的部位に照射するために広く用いられている。本明細書で説明するシステム及びプロセスは、ユーザ提供パラメータに基づいて患者の眼に施すことができるレーザー治療ビームスポットの推奨パターン(例えば、レーザー治療ビーム適用の数及び間隔)をユーザに提供するために使用することができる。
【0012】
図1は、レーザー治療パラメータセットに基づいてレーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定するための、レーザー治療システムで実行することができる例示的なプロセス100を示す。ブロック101において、参照データを取得することができる。参照データは、1つ又はそれ以上のレーザー治療パラメータセット及び関連の外傷サイズを含むことができる。1つの実施例において、参照データは、眼に対して種々のパラメータのレーザー治療ビームを照射して、結果として生じる目に見える外傷部、目に見えない外傷部、又は種々のレーザー治療ビームで起因する温度変化を観測することで取得することができる。例えば、干渉断層法(OCT)、眼底撮影法等を利用して、種々のレーザー設定値を用いて発生した凝固ゾーンのサイズを計測することができる。
図2は、レーザー治療ビーム適用に起因する凝固ゾーン幅201を有する深刻な外傷部(400μm空中ビームサイズを用いて発生)の例示的なOCT及び眼底検査の写真であり、レーザー治療ビーム適用は、(A)100msレーザー暴露期間(中程度の外傷部につながる)、(B)20msレーザー暴露期間(中程度の外傷部につながる)、(C)20msレーザー暴露期間(軽度の外傷部につながる)、及び(D)20msレーザー暴露期間(辛うじて目に見える程度の外傷部につながる)である。
【0013】
レーザー治療パラメータ及び結果として生じる外傷部に関連するデータは、多次元参照データベースに格納することができる。その後、参照データベースを使用して、データベースを直接参照するか又は補間することで種々のレーザー設定値に関する外傷サイズを予測することができる。以下の表1は、参照データベースに格納することができる例示的な参照データを示す。表1は、空中ビームサイズ、パルス持続時間、及び所望の外傷部の臨床グレードの間の関連性を示す。特定の数値が提示されているが、ブロック101で取得したデータに基づいて他の数値を用いることができることを理解されたい。
【0014】
表1
外傷部の幅、空中ビームサイズ、パルス持続時間、及び臨床グレードの間の関連性
【0015】
参照データベースは種々の方法で参照データに格納できることを理解されたい。1つの実施例として、参照データベースは、レーザー治療パラメータセット及び結果として生じる外傷サイズのペアの各々を含むことができる。他の実施例において、平均外傷サイズは、レーザー治療パラメータセットに関連して格納することができる。さらに他の実施例において、参照データベースに格納された参照データに基づいて数学的モデルを生成できる。
【0016】
ブロック103において、レーザー治療パラメータセットを受け取ることができる。いくつかの実施例において、パラメータセットは、空中ビームサイズ、コンタクトレンズの仕様(例えば、コンタクトレンズのタイプ、コンタクトレンズの倍率等)、パルス持続時間、及び所望の外傷部の臨床グレードの1つ又はそれ以上を含むことができる。例えば、システムは、レーザー治療パラメータセット(例えば、空中ビームサイズ、コンタクトレンズ仕様、パルス持続時間、及び所望の外傷部の臨床グレード)を医師又はシステムの他のユーザから受け取ることができる。
【0017】
ブロック105において、外傷パターン治療密度(又は、各外傷部間の所望の間隔)を受け取ることができる。例えば、システムは、所望の外傷パターン治療密度を医師又は他のユーザから受け取ることができる。
【0018】
ブロック107において、システムは、レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定することができ、レーザー治療ビームスポットは、ブロック105から受け取った外傷パターン密度を発生するように配置される。いくつかの実施例において、レーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定する段階は、照査されるレーザー治療ビームスポットの数、及びレーザー治療ビームスポットの間隔を決定する段階を含むことができる。いくつかの実施例において、レーザー治療ビームスポットの数及びレーザー治療ビームスポットの間隔を決定するために、システムは、ブロック103で受け取ったレーザー治療パラメータセット(例えば、空中ビームサイズ、コンタクトレンズ仕様、パルス持続時間、及び所望の外傷部の臨床グレード)及び参照データベースに格納された参照データに基づいて期待される外傷サイズを決定することができる。例えば、システムは、ブロック103で受け取ったような正確なパラメータ値を含むデータ点を識別して(例えば、同じレーザー治療パラメータセットを有する参照データ入力)、対応する外傷サイズを出力することができる。しかしながら、ブロック103で受け取ったパラメータ値と参照データベースに格納された参照データとが完全に一致しない場合、システムは、参照データに基づいて推定外傷サイズを補間することができる。例えば、参照データに基づいて数学的モデルを生成して、線形又は非線形補間を行うことができる。
【0019】
次に、システムは、網膜(又は、眼の他の部位)の所定の領域を凝固させるために、照射されるレーザー治療ビームスポットの推奨数、及び治療パターンの各スポット間の間隔を決定することができる。ブロック107で実行される決定ステップの詳細は
図3を参照して以下に説明する。
【0020】
プロセス100は、特定の順序で示されるブロックを含むが、各ブロックは、任意の順序で実行することができる。さらに、プロセス100は、
図1に示すブロックの全て又はサブセットを含むことができる。例えば、既に参照データベースが生成されている場合、ブロック101は実行しなくてもよい。代わりに、既存の参照データベースをブロック103、105、及び107を実行するために用いることができる。
【0021】
図3は、プロセス100を利用して生成又は推奨することができる4つのレーザースポットの例示的なパターンを示し、Pはレーザーパターンの周期、D
Lは網膜上のレーザースポットの直径、D
Rは外傷部の直径、S
Lは各レーザースポット間(ビーム直径を単位としたエッジ間)の相対的な間隔、及びSRは、結果として生じる各外傷部間(外傷直径を単位とした)の相対的な間隔である。
【0022】
いくつかの実施例において、完全散乱パン網膜光凝固(PRP)治療は、外傷直径D
Rの半分だけ各外傷部の間隔をあけて配置する段階を含み、軽度散乱PRP治療は、1つの外傷直径DRだけ各外傷部の間隔をあけて配置する段階を含むことができる。網膜の凝固領域の画分は、パターンの1周期の面積(P
2)に対する外傷面積(πD
R2/4)の比率によって決まる。F=πD
R2/4P
2である。P=D
R(1+S
R)、F=π/4(1+S
R)
2である。例えば、軽度散乱(S
R=1)は、網膜の約20%の凝固を引き起こすが、完全散乱(S
R=0.5)は、治療ゾーンの網膜の最大34%の凝固を引き起こす。
【0023】
半自動パターン適用を定めるために、各レーザースポット(S
L)の間の間隔は、結果として生じる外傷部(S
R)の間の間隔に関連させる必要がある。パターン周期は、両方のパラメータの関数として表すことができ、P=D
R(1+SR)=D
L(1+S
L)である。結果として生じる外傷サイズをビーム直径に関連付けすると(D
R=D
L・g(係数gは、外傷グレード、パルス持続時間、及び空中ビームサイズの関数であり、一部のパラメータは表1に示されている))、各レーザースポットの間隔は、S
L=g(1+S
R)−1で表すことができる。例えば、400μmの空中ビーム幅をもつレーザー治療ビームのパルス持続時間20msを用いて生成した軽グレード外傷部に関して、gは1に近い値とすることができる。従って、ビーム間隔は、結果として生じる外傷部の間隔と同じか又はほぼ同じとすることができる。辛うじて目に見える外傷部(g=0.74)を用いる他の実施例において、各外傷部の間隔はより狭くすることができる。同程度の面積が凝固される場合、完全散乱に関して0.5直径の代わりにSL=0.11、軽度散乱に関して1の代わりにSL=0.48を用いることができる。
【0024】
コンタクトレンズを使用する場合、ビームサイズは、レンズの倍率の逆数でスケール調整することができる。例えば、レンズが像を2倍に拡大する場合、網膜上のビームサイズは、同じ大きさだけ縮小される。以下の表2は、いくつかの共通コンタクトレンズに関する例示的な像拡大係数及びその逆数(例えば、ビーム拡大係数(L))を示す。ビーム拡大係数L(表2参照)によるビームサイズを考慮するとD
L=L・D(Dは空気中のビーム直径)、P=L・D・(1+S
L)であり、所望の外傷部の数は、標的治療面積Sretの全面積を単位周期(P
2)で除算することで計算することができ、N=Sret/P
2=Sret/(L・D・(1+S
L))
2である。平均眼球直径22mmを用いると、赤道前方の面積はSret=760mm
2である(網膜の全面積は約1050mm
2であるが、赤道前方部には内視鏡だけを用いて、又は強膜圧迫法で容易にアクセスできる)。しかしながら、他のSret値を用いて眼の任意の所望の標的治療面積に対応することができる。従って、外傷部の全数Nは、空気中のD(単位mm)、レンズ拡大係数L、外傷グレード係数g、及び所望の外傷部間隔係数SRの関数として計算することができ、N=760/(L・D・g・(1+S
R))
2である。
【0025】
表2 接眼コンタクトレンズ及び人間の眼での倍率
【0026】
例えば、空気中のビームD=200μm(0.2mm)及びレンズ倍率L=2(Volk SuperQuad 160)ではビームサイズDL=400μmとなるはずである。20msの軽度病に関してはほぼg=1なので、同じ直径DR=g・DL=400μmとなるはずである。完全散乱(S
R=0.5)では、周期P=D
R(1+S
R)=600μmをもつはずなので、外傷部の数N=Sret/P2=760/0.36=2111である。辛うじて目に見える外傷部では(g=0.74)、完全散乱に関する全数はN=3855である。同じビーム直径では、対応する完全散乱に関する20msの中度の外傷部(g=1.15)の数はN=1596である。100msの中度の外傷部(g=1.39)では、同じ面積は1093個のスポットでカバーされる。
【0027】
いくつかの実施例において、眼の標的治療領域のサイズは、ブロック107を実行する前にユーザから受け取ることができる。例えば、医師は所望の治療領域を入力することができる、システムは、前述のプロセス及び式を用いて、所望の治療領域の外傷部を生成するレーザー治療スポットの数及び各スポットの間の間隔を特定して所望の外傷パターン密度を有する、レーザー治療ビームスポットのパターンを戻すことができる。このようにして、医師は、レーザー治療パラメータセット、所望の治療領域、及び所望の外傷パターン密度だけを提示すればよい。この情報に基づいて、システムは、医師に対して標的治療領域に照射するレーザー治療ビームスポットのパターンを推奨することができる。
【0028】
プロセス100を利用してレーザー治療ビームの適用の前にレーザー治療ビームスポットの推奨パターンを決定ことで、ユーザは、所望の治療領域上に外傷部を形成するために、複数のレーザー治療ビーム適用を施すことができる。これにより、従来の単一スポット(パターン化されていない)光凝固術に対する改善が可能になり、典型的に、医師又は他のユーザは前回の暴露からの外傷部を観察して外傷直径の所定の画分に対応する距離で次のパルスを位置付ける。特に、目に見えない外傷部を生成する場合、医師又は他のユーザは、前回生成した目に見えない外傷部に基づいて次のパルスを位置付けることができない。しかしながら、プロセス100を利用すると、前回生成した目に見える外傷部に基づいて後続のパルスを位置付けることに依存していないので、ユーザは所望の外傷パターンを生成することができる。従って、いくつかの実施例において、参照データベースは、OCT等の画像モダリティを用いて観測した目に見えない外傷部に関するデータを含むことができる。これにより、従来技術では不可能な目に見えない外傷部を適切な間隔をあけて配置することができる。
【0029】
さらに従来の光凝固術では、全パターンはパターン化されたレーザーの適用に先立って決定する必要があるので、パターン化されたレーザー治療ビーム照射は不可能である。従って、プロセス100は、外傷部は設定値に応じてレーザースポットよりも大きくすること又は小さくすることができるので、ユーザがスポットの間隔を前もって適切に設定することを好都合に可能にする。
【0030】
いくつかの実施例において、参照データベースは、医師又はユーザの個人的好みを反映するようにさらに更新して調整することができる。例えば、外傷部の臨床グレード(強度、軽度、辛うじて目に見える等)を規定するプロセスに対する主観性が存在し、医師は僅かにスケールを変えることができる。システムのユーザは、種々の臨床グレードで生成された外傷部を測定(検眼鏡又はOCT又は他の画像モダリティで)して、その値をデータベースに格納することができ、結果的に診療を自身のためにカスタマイズすることができる。
【0031】
図4は、プロセス100を実行するために用いることができる例示的なシステム400を示す。システム400は、プロセス100のブロック101で取得した参照データを格納する参照データベース403を含むことができる。システム400は、さらに汎用又は特定用途向けプロセッサ405を含むことができ、ブロック103でプロセス100のユーザ401からレーザー治療パラメータセット(例えば、空中ビームサイズ、コンタクトレンズ仕様、パルス持続時間、及び所望の外傷部の臨床グレード)を受け取るように接続される。プロセッサ405は、さらにブロック105でユーザ401から所望の外傷パターン密度(又は各外傷部の間の所望の間隔)を受け取ることができる。さらに、プロセッサ405は、データベース403に接続して受け取ったレーザー治療パラメータ(例えば、空中ビームサイズ、コンタクトレンズ仕様、パルス持続時間、及び所望の外傷部の臨床グレード)を用いて問い合わせすること、及びデータベース403に接続してレーザー治療パラメータと結果として生じる外傷サイズとの間の関連性を含む参照データを受け取ることができる。受け取ったレーザー治療パラメータをデータベース403からの参照データと直接比較すること又は補間を行うことで、プロセッサ405は、照射するレーザー治療ビームスポットの推奨数及び各レーザー治療ビームスポットの間の推奨間隔を決定することができる。決定したレーザー治療ビームスポットの推奨数及び各スポット間の推奨間隔は、ユーザ401に提示することができる(例えば、システム400のディスプレイによって)。さらに、決定したレーザー治療ビームスポットの推奨数及び各スポット間の推奨間隔は、ユーザ401が手動で又はプロセッサ405から自動でレーザー照射システム405に提供することができる。プロセッサ405は、全凝固領域(例えば、ユーザ401又は他の供給源から受け取った)に関する所定の基準に基づいてレーザー治療ビームスポットの推奨数を決定することができる。例えば、1つの基準は、完全散乱治療、軽度グレード、100msパルス持続時間の凝固領域と同等のものとして定義することができる。
【0032】
図示されていないが、システム400は、プロセッサ405に実行命令を提供する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体をさらに含むことができる。例えば、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、前述のプロセス100を実行するための命令を含むことができる。このような命令は一般に「コンピュータプログラムコード」と呼ばれ(コンピュータプログラムの形態又は他のグループ分けでグループ化することができる)、実行されると、プロセッサは本明細書に記載の装置及びプロセスの実施形態の特徴及び機能を実行することができる。いくつかの実施例において、コンピュータ可読記憶媒体は、情報及びプロセッサが実行する命令を記憶するための、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は他のダイナミックメモリ等のメインメモリを含むことができる。また、メインメモリは、プロセッサが実行する命令の実行時の一次変数又は他の中間情報を記憶するために使用することができる。コンピュータ可読記憶媒体は同様に、プロセッサに関する静的情報及び命令を記憶するように接続される読み込み専用メモリ(ROM)又は他の静的記憶装置を含むことができる。
【0033】
図5は、システム400のレーザー照射システム405として使用することができる例示的なレーザー照射システム500を示す。システム500は、単一レーザービームを伝送するように構成されるレーザー源501を含むことができる。いくつかの実施形態において、レーザー源501は、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ダイオードレーザー、Nd−YAGレーザー、又は眼の治療に適する他の何らかの他のパルス又は連続波レーザーを含むことができる。レーザー源501から生じるビームは、約1msから約1秒の持続時間の連続又はパルスビームとすること、約30mWから約2Wの出力とすること、約50μmから約500μm(例えば、約60μm又は約400μm)の直径とすること、目に見えるスペクトル(例えば、532nm、561nm、577nm、647nm、659nm、又は670nm)の波長とすること、又は目に見えないスペクトル(例えば、810nm)の波長とすることができる。しかしながら、他の特性のレーザーエネルギのビームを発生するレーザー源501を利用できることを理解されたい。
【0034】
システム500は、レーザー源501から生じるレーザービームを処理する光学ハードウェア507をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、光学ハードウェア507は、患者に照射するレーザービームの「スポットサイズ」を調整するためのスポットサイズセレクタ(図示せず)を含むことができる。ビームの「スポットサイズ」は、レーザービームのサイズ又は直径を呼ぶ。スポットサイズセレクタは、連続倍率変更光学系、種々の倍率の回転式タレット光学系、又は当業者には公知に任意の他の構成の光学系を含むことができる。スポットサイズセレクタは、レーザー源501から単一レーザービームを受け取り、選択倍率を変えることで単一レーザービームのサイズを調整するように構成することができる。単一レーザービームは、スポットサイズセレクタに向けること、光ファイバでスポットサイズセレクタに向けること、又はリレー光学系又は平行光学系を用いて自由空間レーザー源からスポットサイズセレクタに向けることができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、光学ハードウェア507は、追加的に又は代替的にレーザー源501からの単一レーザービームを利用して単一レーザービーム又はパターン化されたレーザービームを生成する走査ハードウェアをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、走査ハードウェアは、平行光学レンズ(図示せず)、検流計、MEMSデバイス、回転ポリゴン等の第1及び第2の走査デバイス(図示せず)、及び第1及び第2の走査デバイスを分ける光学リレーレンズセット(図示せず)を含むことができる。平行光学レンズは、レーザービームを受光するように構成することができる。平行光学レンズの出力は、検流計、MEMSデバイス、回転ポリゴン等の第1の走査デバイスに向けられる平行ビームとすることができる。第1の走査デバイスの位置は、コンピュータ制御システム(例えば、コントローラ503)を用いて精密に制御することができ、平行ビームを第2の検流計、MEMSデバイス、回転ポリゴン等の第2の走査デバイスに向けるようになっている。第2の走査デバイスは、コンピュータ制御システム(例えば、コントローラ503)に応答して、平行ビームを第1の走査デバイスの調節方向に対して直交する方向で調節するように構成することができる。つまり、一対の走査デバイスを使用して治療ビームのX−Y直交座標位置を調節することができる。いくつかの実施例において、このことは患者の眼511に対して単一治療ビームを動かすことで行うことができる。他の実施例において、走査デバイスは、パターン形成効果をもたらすためにレーザー源501で生成されるパルスに同期して、複数の位置を通って比較的速く循環することができる。図示のシステムにおいて、光学ハードウェア507から出射するビームは、患者の眼511に向けることができる。治療ビームは、細隙灯、頭部装着レーザー倒像検眼鏡、手持ち式レーザーエンドプローブ(endoprobe)等の公知の照射デバイスを使って患者の眼511に照射することができる。
【0036】
さらに、システム500は、レーザー源501(例えば、パルス持続時間、出力、波長等)、及び光学ハードウェア507の構成要素を制御するためのコントローラ503を含むことができる。コントローラ503は、システム500の種々の構成要素を制御するように構成される汎用又は特定用途向けプロセッサを含むことができる。
コントローラ503は、レーザー治療ビームスポットの推奨数及び各スポット間の間隔をユーザ401又はプロセッサ405から受け取るように接続され、それに応じてシステム500の構成要素を制御する。いくつかの実施形態において、システム500はさらにコントローラ503用の命令、レーザー源501用の設定値、及び/又はシステム500に関連する何らかの他のデータを格納するためのデータベース505を含むことができる。
【0037】
さらに、システム500は、ユーザインタフェース509を含むことができ、オペレータはシステム500の種々の設定値を調整することができる。いくつかの実施形態において、ユーザインタフェース509は、ノズ、スライダ、タッチスクリーン、キーボード、ディスプレイ、又は任意の他のインタフェース構成要素、又はこれらを組み合わせたものを含むことができ、オペレータは、システム500と対話することができる。
【0038】
図4及び5には特定の構成要素が示されているが、システム400及び500は、安全装置、レーザー治療ビームの狙いを定めるハードウェア等の当業者には公知の他の構成要素を含み得ることを理解されたい。さらに、システム400及び500は別体で示されているが、これらのシステムの一部又は全ての構成要素は、単一のシステムに組み合わせることができる。さらに、一部の構成要素は、別体とするか又は単一のユニットに組み合わせることができる。例えば、いくつかの実施例において、同じ汎用又は特定用途向けプロセッサをプロセッサ405及び制御装置503として使用することができる。
【0039】
レーザースポット及び対応する外傷部は円形に限定されるものではなく、他の形状にできることを理解されたい。例えば、行長が幅よりも長い直線形状の外傷部を含む細長い形状とすることができる。
【0040】
本開示及び実施例は、添付図面を参照して十分に説明されるが、当業者には種々の変形例及び変更例が明白であることに留意されたい。このような変形例及び変更例は、請求項で定義されるような本開示及び実施例の範囲に含まれることを理解されたい。
【符号の説明】
【0041】
401 ユーザ
403 参照データ
405 プロセッサ
405 レーザー照射システム