特許第6104253号(P6104253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

特許61042532チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステム
<>
  • 特許6104253-2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステム 図000011
  • 特許6104253-2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104253
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20170316BHJP
   A61B 5/05 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   A61B5/05 351
   A61B5/05 370
   A61B5/05ZDM
【請求項の数】26
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-533818(P2014-533818)
(86)(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公表番号】特表2014-528296(P2014-528296A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2012067840
(87)【国際公開番号】WO2013050223
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2014年5月21日
(31)【優先権主張番号】102011084072.9
(32)【優先日】2011年10月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】チー−チュン チェン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス フーバー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ラインシュケ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ザイゼンベアガー
(72)【発明者】
【氏名】マークス フェスター
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴュンシュ
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−095929(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0279058(US,A1)
【文献】 特開2003−033332(JP,A)
【文献】 特開昭63−192428(JP,A)
【文献】 特表2007−507719(JP,A)
【文献】 特表2010−525855(JP,A)
【文献】 特表2010−532136(JP,A)
【文献】 特開昭61−095237(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0150401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムのための電力用増幅装置の設定方法において、
前記増幅装置を、負荷状況に依存して閉ループ制御回路により整合し、
無負荷測定によって、前記負荷状況の種類もしくは前記負荷状況の少なくとも1つのパラメータを求める、
ことを特徴とする、
増幅装置の設定方法。
【請求項2】
前記閉ループ制御回路は、前記増幅装置の出力信号のフィードバックを有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記フィードバックにおいて前記出力信号の遅延を行う、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記増幅装置に基づき負荷状況を求め、該負荷状況に応じて前記2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムの少なくとも1つのコントローラを設定する、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記増幅装置の適切な増幅率を設定するために、負荷に依存するフィードフォワードコントローラを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコントローラは負荷に依存する別のコントローラを含み、該別のコントローラは4つのSISO型PIコントローラを有する、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記信号を前記増幅装置の上流で分離する、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記負荷状況を
患者のサイズ、
患者の体重、
検査すべき領域または器官、
検査台のポジション、
MRT測定を実施するボディコイルのポジション、
検査台に対し相対的な患者のポジション、
のうち少なくとも1つのパラメータに基づき求める、
請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記増幅装置の設定を前記無負荷測定中に実施する、請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記無負荷測定後、患者とともにMRT測定を実施する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記MRT測定において前記閉ループ制御回路を整合する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムの駆動装置において、
電力用増幅装置が設けられており、
該増幅装置は、負荷状況に応じて閉ループ制御回路により整合され、
無負荷測定によって、前記負荷状況の種類もしくは前記負荷状況の少なくとも1つのパラメータが求められる、
ことを特徴とする、
2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムの駆動装置。
【請求項13】
前記閉ループ制御回路は、前記増幅装置の出力信号のフィードバックを有している、請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記閉ループ制御回路のフィードフォワード分岐中に、少なくとも1つのコントローラが設けられており、該コントローラにより前記増幅装置の増幅率が設定され、該コントローラにより前記増幅装置の定常化時間が設定される、請求項12または13記載の装置。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項記載の装置を備えた2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステム。
【請求項16】
2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムの駆動装置において、
電力用増幅装置が設けられており、
該増幅装置は、負荷状況に応じて閉ループ制御回路により整合され、
前記閉ループ制御回路は、前記増幅装置の出力信号のフィードバックを有し、
前記閉ループ制御回路のフィードフォワード分岐中に、少なくとも1つのコントローラが設けられており、該コントローラにより前記増幅装置の増幅率が設定され、該コントローラにより前記増幅装置の定常化時間が設定される、
ことを特徴とする2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムの駆動装置。
【請求項17】
記増幅装置、負荷状況に依存して閉ループ制御回路により整合され
前記閉ループ制御回路は、前記増幅装置の出力信号のフィードバックを有しており
前記フィードバックにおいて前記出力信号の遅延われる
請求項16記載の装置
【請求項18】
記増幅装置、負荷状況に依存して閉ループ制御回路により整合され
前記増幅装置に基づき負荷状況求められ、該負荷状況に応じて前記2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムの少なくとも1つのコントローラ設定される、
請求項16記載の装置
【請求項19】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記増幅装置の適切な増幅率を設定するために、負荷に依存するフィードフォワードコントローラを含む、請求項18記載の装置
【請求項20】
前記少なくとも1つのコントローラは負荷に依存する別のコントローラを含み、該別のコントローラは4つのSISO型PIコントローラを有する、請求項18または19記載の装置
【請求項21】
記増幅装置、負荷状況に依存して閉ループ制御回路により整合され
前記信号前記増幅装置の上流で分離される、
請求項16記載の装置
【請求項22】
記増幅装置、負荷状況に依存して閉ループ制御回路により整合され
前記負荷状況
患者のサイズ、
患者の体重、
検査すべき領域または器官、
検査台のポジション、
MRT測定を実施するボディコイルのポジション、
検査台に対し相対的な患者のポジション、
のうち少なくとも1つのパラメータに基づき求められる、
請求項16記載の装置
【請求項23】
2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムのための電力用増幅装置の設定方法において、
前記増幅装置を、負荷状況に依存して閉ループ制御回路により整合し、
前記増幅装置の設定を無負荷測定中に実施し、
前記無負荷測定後、患者とともにMRT測定を実施する、
ことを特徴とする増幅装置の設定方法。
【請求項24】
前記MRT測定において前記閉ループ制御回路を整合する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムのための電力用増幅装置の設定方法において、
前記増幅装置を、負荷状況に依存して閉ループ制御回路により整合し、
前記増幅装置の設定を無負荷測定中に実施し、
前記負荷状況を前記無負荷測定によって求める、
ことを特徴とする増幅装置の設定方法。
【請求項26】
請求項16から22のいずれか1項記載の装置を備えた2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステム用の増幅装置の設定方法、ならびに2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムの制御装置に関する。
【0002】
磁気共鳴トモグラフィ(MRT略してMRとも称する;英語ではMagnetic Resonance Imagingを略してMRI)は、とりわけ医療診断において体内の組織および器官の構造と機能を表示させるために用いられる画像生成方法である。これは物理的に核スピン共鳴の原理に基づくものであり、ゆえに核スピントモグラフィとも称する。一般的な事項に関する詳細は、たとえばhttp://de.wikipedia.org/wiki/Magnetresonanztomographieを参照されたい。
【0003】
MRTによって人間(または動物)の体部の断層画像を生成することができ、これによって器官と病気に冒された多くの器官変化の判定を行うことができる。磁気共鳴トモグラフィは、強い磁界と無線周波数領域の交番電磁界に基づくものであり、これらによって体内の特定の原子核(たいていは水素原子核/プロトン)が共鳴して励起され、それによって受信電流回路内で電気信号が誘導される。この装置の場合、負担となるレントゲン放射あるいは他のイオン化作用のある放射は発せられないし用いられない。画像コントラストの基本となるのは、種々の組織形態で緩和時間がそれぞれ異なる、ということである。そのほか、種々の組織(たとえば筋肉、骨など)における水素原子の含有量が異なることも、画像コントラストの形成に寄与する。
【0004】
本願で提案されるアプローチは特に、MRIにおいて使用されるような無線周波数電力増幅器システム(RFPAシステムとも呼ばれ、これはRadio Frequency Power Amplifierのことである)のために電圧調整を行う電圧調整方法もしくは電圧調整装置に関するものである。
【0005】
本発明の課題は、MRT技術を改善し、特にそれぞれ異なる負荷状況(患者、器官、ポジション)に合わせて、フレキシブルに最適化できるようにすることである。
【0006】
この課題は、独立請求項の特徴により解決される。従属請求項には有利な実施形態が示されている。
【0007】
上述の課題を解決するため、2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムのための増幅装置の設定方法において、増幅装置が負荷状況に応じて閉ループ制御回路により整合される。
【0008】
このようにしてRF励起信号を安定化させることができ、様々な負荷状況に合わせてフレキシブルな最適化を達成することができる。
【0009】
有利には増幅装置は、磁気共鳴トモグラフィシステムの各チャネルごとに固有の増幅器を有している。
【0010】
本発明によるアプローチによれば、2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムを個々の負荷状況に合わせて固有に較正することができ、これによって負荷状況に好適な設定を利用できるようになる。このことで測定結果が著しく改善され、複数のボディコイルを投入可能である点を考慮しても、2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムのフレキシビリティが高められる。
【0011】
さらにこのことで、まったく異なる負荷状況が発生することを考慮しても、決められた規定(予め定められた最大の、厳密な、もしくは適切な増幅率を遵守した高速な定常化時間)を満たすことが、同様に可能となる。
【0012】
1つの実施形態によれば、閉ループ制御回路は、増幅装置の出力信号のフィードバックを有しており、たとえば増幅装置の入力端へのフィードバックを有している。
【0013】
コントローラ(制御素子)を設定するために、閉ループ制御回路のフィードフォワード分岐中にフィードバックを組み込むことができる。
【0014】
さらに別の実施形態によれば、フィードバックにおいて出力信号の遅延が行われる。
【0015】
このためにたとえば遅延素子を設けることができる。
【0016】
たとえば1つの実施形態によれば、増幅装置に基づき負荷状況が求められ、この負荷状況に応じて2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムのコントローラが設定される。
【0017】
特に測定に基づき、たとえば無負荷測定(閉ループ制御されない測定)に基づき、負荷状況の種類もしくは負荷状況の少なくとも1つのパラメータを求める(たとえば推定する)ことができる。
【0018】
さらに1つの実施形態によれば、少なくとも1つのコントローラは、増幅装置の適切な増幅率(特に最大増幅率または厳密な増幅率)を設定するために、負荷に依存するフィードフォワードコントローラを含んでいる。
【0019】
負荷に依存するフィードフォワードコントローラを用いることによって、増幅装置の増幅率を設定もしくは閉ループ制御することができる。特にこのようにして保証できるのは、予め定められた最大増幅率を超えない、ということである。
【0020】
さらに1つの実施形態によれば、少なくとも1つのコントローラは負荷に依存する別のコントローラを含んでおり、これは4つのSISO型PIコントローラを有している。
【0021】
たとえば負荷に依存する両方のコントローラは、互いに並列に接続されている。4つのSISO型PIコントローラ(2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムの1つのチャネルに対しそれぞれ2つのコントローラ)に基づき、定常化時間の加速ひいてはMRT撮影のタイムラグの改善を達成することができる。
【0022】
付加的な実施形態によれば、信号が増幅装置の上流で分離される。
【0023】
たとえば増幅装置の前段に、分離コンポーネントを接続することができる。たとえばこの分離コンポーネントに基づき、信号中のスタティックな成分が低減され、もしくは抑圧され、および/または予め定められた基準尺度に合わせて値のスケーリングが行われる。
【0024】
別の実施形態によれば負荷状況は、
患者のサイズ、
患者の体重、
検査すべき領域または器官、
検査台のポジション、
MRT測定を実施するボディコイルのポジション、
検査台に対し相対的な患者のポジション、
のうち少なくとも1つのパラメータに基づき求められる。
【0025】
1つの実施形態によれば、増幅装置の設定は無負荷測定中に実施される。
【0026】
無負荷測定(開ループ動作または開ループ測定とも称する)は有利には、増幅装置もしくは閉ループ制御回路の設定のための測定に関わるものである。これを負荷状況に応じて行うことができ、その際、たとえば患者がMRTシステム内で予め定められたポジションをとるようにし、本来のMRT検査の前に測定を実施して、ついで行われる測定のためにMRTシステムを最適化されたかたちで設定できるようにする。
【0027】
1つの択一的な実施形態によれば、無負荷測定後に患者を伴うMRT測定が実施される。
【0028】
別の実施形態によれば、MRT測定において閉ループ制御回路が整合される。
【0029】
MRT測定中であっても閉ループ制御回路を整合することができ、このようにすることで取得された測定結果の品質を改善することができる。
【0030】
さらに1つの実施形態によれば、負荷状況が無負荷測定によって求められる。
【0031】
負荷状況を、無負荷測定中に求められたパラメータに依存して(いっしょに)求めることもできる。換言すれば、負荷状況を求め負荷状況に依存して閉ループ制御回路を整合する目的で、もしくは閉ループ制御回路を介して増幅装置を整合する目的で、無負荷測定中に求められたパラメータも使用することができる。
【0032】
さらに既述の課題は、2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムの駆動装置において、増幅装置が設けられており、この増幅装置は、負荷状況に応じて閉ループ制御回路により整合可能であることによっても解決される。
【0033】
この目的で閉ループ制御回路を、たとえば既述の方法を実行できるように構成されたプロセッサユニットおよび/または少なくとも1つの部分的に固定配線された回路または論理回路として実装することができる。その際、いかなる種類のプロセッサまたは計算機またはコンピュータであっても、相応に必要とされる周辺機器(記憶装置、I/Oインタフェース、入出力機器等)とともに使用することができる。
【0034】
方法について述べた既述の説明は、装置についても同様に当てはまる。この装置を、1つのコンポーネントとして実現することもできるし、あるいは複数のコンポーネントに分散させて実現することもできる。
【0035】
1つの実施形態によれば、閉ループ制御回路は、増幅装置の出力信号のフィードバックを有しており、たとえば増幅装置の入力端へのフィードバックを有している。
【0036】
さらに1つの実施形態によれば、閉ループ制御回路のフィードフォワード分岐中に、少なくとも1つのコントローラが設けられており、このコントローラにより増幅装置の増幅率が設定され、このコントローラにより増幅装置の定常化時間が設定される。
【0037】
さらに既述の課題は、ここで述べた装置を含む2チャネル型磁気共鳴トモグラフィシステムによっても解決される。
【0038】
さらにここで述べた解決手段にはコンピュータプログラム製品も含まれており、これはディジタルコンピュータのメモリにロード可能であり、既述の方法における各ステップの実施に適したプログラムコード部分を含んでいる。
【0039】
さらに既述の課題は、以下のようなコンピュータ読み取り可能な記憶媒体たとえば任意の記憶装置によっても解決される。すなわちこの記憶媒体は、コンピュータにより実行可能な(たとえばプログラムコードの形態をとる)命令を含んでおり、それらの命令は、コンピュータがここで述べた方法の各ステップを実施するのに適したものである。
【0040】
これまで述べてきた本発明固有の事項、本発明の特徴、利点ならびにその実現手法については、以下の実施例の説明を通していっそうはっきりと明確に理解できるようになる。次に、図面を参照しながらそれらの実施例について詳しく説明する。見やすくするため、ここでは同じ部材または同じ働きをする部材には同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】2チャネル型MRTシステムに使用するための、閉ループ制御される無線周波数電力増幅器(RFPA)を示すブロック図
図2】2チャネル型MRTシステムの択一的な実施形態を示すブロック図
【0042】
MIMOシステム(英語:Multiple Input Multiple Output)とは、複数の入力端および複数の出力端もしくは複数の入力変量および複数の出力変量をもつシステムのことである。多変量システムという用語が使われる場合も多い。入力変量と出力変量をちょうど1つずつ有するシステムは、SISO(英語:Single Input Single Output)とも呼ばれる。
【0043】
RFPAシステムには、無線周波数領域たとえば高周波領域の電力増幅器が含まれている。この場合、チャネルごとに無線周波数信号(RF信号とも称する)が増幅され、RF信号は特定の振幅と位相を有している。
【0044】
以下で提案するのは、2チャネル型RFPAシステムである。開ループ制御もしくは閉ループ制御の視点からすると、2チャネル型RFPAシステムは4×4のMIMOシステムであり、このシステムは、調整可能なRF信号の振幅ならびに位相のために、それぞれ2つのチャネルを有している。
【0045】
図1には、2チャネル型MRTシステムに使用するための、閉ループ制御されるRFPAシステムのブロック図が示されている。
【0046】
目標値または基準値si(ただしi=1〜4)が、負荷に依存するフィードフォワードコントローラ102へ供給される。さらに、遅延された出力値di(ただしi=1〜4)が目標値から減算され、その結果が値
i = si −di ただしi=1〜4
として、負荷に依存するコントローラ101へ供給される。コントローラ101は、各チャネルiごとに1つずつ、4つのSISO型PIコントローラを有している。
【0047】
PIコントローラ(比例積分制御器とも称する)は、比例要素の部分と積分要素の部分とから成る。
【0048】
コントローラ102の出力値fiがコントローラ101の出力値wiと組み合わせられて値kiが形成され、すなわち、
i =wi +fi ただしi=1〜4
が形成され、これらの値は分離コンポーネント103へ供給される。たとえばこの分離コンポーネント103に基づき、信号ki中のスタティックな成分が低減され、もしくは抑圧され、および/または予め定められた基準尺度に合わせて値kiのスケーリングが行われる。
【0049】
分離コンポーネント103はRFPAシステム104に関して分離を行う。換言すれば、RFPAシステムの手前に分離コンポーネントを組み込むことにより、RFPAシステムは機能的に互いに分離された4つのSISOシステムに相応する。これに応じて分離システムの出力端から、値piがRFPAシステム104へ供給される。
【0050】
分離コンポーネント103はRFPAシステムの入出力を分離する。すなわち4つの入力信号の各々はRFPAシステムの4つの出力信号のうちの1つに対応し、これによって入力信号と出力信号との間に本来存在していた結合が低減され、もしくは(大幅に)削除される。このようにして4×4のRFPAシステムは、4つの1×1のサブシステムに分割される。この場合、たとえば4つの1×1のサブシステムの各々が同じ直流電圧増幅率を有するように、スケーリングが行われる。
【0051】
分離コンポーネント103は、負荷状況に応じて定められる。これは次のようにして行われる。すなわちこの場合、閉ループ制御を一時的にスイッチオフし、目標電圧信号s1,s2,s3,s4となるように順々にステップを与えて、出力電圧u1,u2,u3,u4を定める。それらのステップ応答から、RFPAシステムの直流電圧増幅率(4×4の行列)を決定することができる。最も簡単なケースでは、分離コンポーネント103は直流電圧増幅行列の反転である。別の選択肢として、直流電圧増幅行列の反転を、さらに4つの入力スケーリング係数と乗算することができる。
【0052】
負荷状況に基づいて、もしくは実験的に求められたRFPAシステム104の直流電圧増幅行列に基づいて、相応の情報106がルックアップテーブル105へ伝達され、このテーブルに基づき情報106が、コントローラ101および102に対応するセッティングに変換される。有利であるのは、無負荷測定ないしは開ループ測定において、および/または検査実行中に、これを行うことである。
【0053】
RFPAシステム104は出力値uiを(たとえば出力電圧として)供給し、それらの出力値はさらに、遅延素子107によって遅延された出力値diに変換される。
【0054】
このようにしてRFPAシステム104は効率的に駆動され、(フィードバック)情報106によって、RFPAシステムを個々の負荷状況に合わせて最適化して作動させることができるようになる。
【0055】
この場合、コントローラ101は、定常化された状態における制御偏差を低減もしくは除去するために使用される。
【0056】
コントローラ102は、定常化時間を加速し、それによってMRT撮影におけるタイムラグを改善するために用いられる。
【0057】
分離コンポーネント103はたとえば、スタティックな分離行列とスケーリング行列を含んでおり、これらは4つのチャネル間のクロストークを低減もしくは(少なくとも部分的に)回避する役割を果たす。
【0058】
様々な負荷状況に対し効率的なMRT測定を実現し、つまりはMRTシステムのパフォーマンスと効率を改善する目的で、コントローラ102に種々のフィードフォワード増幅行列を設けることができ、場合によってはコントローラ101のためにそれ相応に整合されたセッティングを行うことができる(PIコントローラのパラメータ設定)。これらは情報106に応じて選定され、さらに情報106自体は個々の負荷状況に応じて求められたものである。つまり情報106を、コントローラ101,102の適切なセッティングを含むルックアップテーブル105のエントリのアドレッシングに用いることができる。ついでコントローラ101,102に対し、上述のセッティングが行われる。
【0059】
このようにしてRFPAシステム104の負荷に依存して、ルックアップテーブル105を用いて適切な増幅率を選定することができる。したがって必要とされる高速の定常化時間を、そのつど具体的な負荷状況に応じて達成することができ、それと同時に高品質の撮影を保証することができる。
【0060】
特にRFPAシステムを、たとえば予め定められた以下のような規定が満たされるようにセッティングすることができる:
1)1つのステップ応答に対し、(目標値の前後たとえば5%のレベルの許容幅に達するための)定常時間を、(定常偏差成分を含めないで)10msよりも短くする。
2)増幅器出力端の予め定められた最大電圧を超過しない。
3)様々な負荷状況に対して規定1),2)を遵守する。その際、これらの負荷状況はたとえば、様々な患者およびその検査対象器官ならびにMRT検査における種々のポジションに相応する。
【0061】
このような負荷状況は、種々のファクタに左右される可能性がある。たとえば被検領域と関連させて、患者のサイズを推定することができる。このような推定にあたり、以下のパラメータのうち少なくとも1つのパラメータを考慮することができる:
−患者の体重
−たとえば検査台のポジションおよび/または検査台上の患者のポジション(たとえば俯せ/仰向け、右側臥位/左側臥位等)に応じた被検領域
−無負荷測定(開ループ測定とも称する)。
【0062】
無負荷測定中、負荷に依存する実際のシステム特性を測定することができ、閉ループ制御のパラメータを、最適化されたダイナミックなシステム応答が達成されるように調節することができる。
【0063】
この無負荷測定に続いて、患者の本来の検査(MRT測定)が行われる。
【0064】
図2には、2チャネル型MRTシステムの概略図が示されている。
【0065】
目標値sw1は伝播時間コンポーネント201と加算素子203とへ供給され、伝播時間コンポーネント201の出力結果は加算素子207へ供給される。加算素子207の出力結果は、スイッチ218を介してループフィルタ205へ、さらには加算素子203へと供給される。加算素子203の出力つまり目標値sw1とループフィルタ205の出力値との加算結果は、分離コンポーネント209へ供給される。
【0066】
目標値sw2は伝播時間コンポーネント202と加算素子204とへ供給され、伝播時間コンポーネント202の出力結果は加算素子208へ供給される。加算素子208の出力結果は、スイッチ219を介してループフィルタ206へ、さらには加算素子204へと供給される。加算素子204の出力つまり目標値sw2とループフィルタ206の出力値との加算結果は、やはり分離コンポーネント209へ供給される。
【0067】
このようにして分離コンポーネント209を介して、目標値sw1から修正された(目標)値sw1′が生じ、同様に目標値sw2から修正された(目標)値sw2′が生じる。
【0068】
値sw1′は、ディジタル/アナログ変換器210と増幅器212とを介して、処理ユニット214へ供給される。同様に値sw2′は、ディジタル/アナログ変換器211と増幅器213とを介して、処理ユニット214へ供給される。
【0069】
処理ユニット214から、到来波a1およびa2が長さlBCのケーブルを介して、ボディコイル217へ伝達される。ボディコイル217は処理ユニット214へ、到来波b1およびb2もしくは電圧値uBC1およびuBC2を供給する。
【0070】
処理ユニット214からアナログ/ディジタル変換器215を介して、測定されたディジタル実際値として電圧uBC1が加算素子207へ供給されて、伝播時間コンポーネント201の出力値から減算される。同様に処理ユニット214からアナログ/ディジタル変換器216を介して、測定されたディジタル実際値として電圧uBC2が加算素子208へ供給されて、伝播時間コンポーネント202の出力値から減算される。
【0071】
図2の目標値は、実数部と仮数部とを含む複素信号である。
【0072】
修正された目標値sw1′およびsw2′は、図1に示した値から以下のようにして得られる:
sw1′=p1+i * p2
sw2′=p3+i * p4
【0073】
求められた出力電圧uBC1およびuBC2(ボディコイル217における電圧)は、図1に示した値から以下のようにして得られる:
BC1=u1+i * u2
BC2=u3+i * u4
入力変量と出力変量との関係を、2x2の複素行列(結合行列)によって記述することができる:
【数1】
【0074】
行列は、ボディコイル217の負荷状況と、電力増幅器の出力反射係数rQ1およびrQ2とに依存し、本来の検査(撮影)前の無負荷測定ないしは開ループ測定(適合)の際に決定される。
【0075】
無負荷測定を以下のようにして行うことができる:
−組み込まれたボディコイルの散乱行列を求め、行列を電力増幅器の推定された出力反射係数に基づき求める。このアプローチが特に適している理由は、散乱行列がSAR監視(SAR: specific absorption rate 比吸収率)にも必要とされ、それゆえ事前に求められるからである。つまりこれによって、計算および通信に必要とされる余分な手間ないしはコストが僅かになる。
−行列をじかに求める。この場合、有利には電力増幅器の実際の特性が考慮される。スタティックな分離とスケーリングのために、行列の反転を利用することができ(図1の分離コンポーネント103も参照)、これによってMRTシステムの最適化されたダイナミックな測定を実現することができる。
【0076】
以下の説明は、たとえばボディコイルにおける電圧uBCに基づく閉ループ制御についてもはてはまる。これは例示した制御量に相応する。別の選択肢として、あるいはこれに加えて、たとえば到来波を制御量として使用することもできる。
【0077】
処理ユニット214自体においてさらに別の結合が行われず、このユニット自体に固有反射が(ほぼ)ないかぎり、到来波は以下の通りとなる:
【数2】
ここでτi(i=1,2)は、目標値swi′と、ボディコイル217の散乱行列の較正平面
【数3】
との間における個々の経路伝送を、較正平面と(同様に較正平面に変換された)電力増幅器の(非線形の)反射係数rQiに関連づけて記述するものである。
【0078】
したがって到来波からボディコイル217の散乱係数を介して、以下のように送出波が得られる:
【数4】
【0079】
伝送位相
【数5】
であれば、
【数6】
となり、したがって、
【数7】
となる。
【0080】
有利には分離行列によって、無負荷測定時(すなわち開ループ動作中)に次式が成り立つことが保証されることになる:
【数8】
これにより条件として
-1
が得られる。
【0081】
このようにして分離された区間の閉ループが閉じられると、双方が互いに独立して動作する。殊にこのことは、振幅の大きさが、非線形の出力反射係数が分離の基礎を成す小信号値とは異なるようなレベルになるまで該当する。
【0082】
特定の境界条件のもとで起こり得るのは、行列を反転できなかったり、あるいは反転が少なくとも数値的に不安定になったりすることである。このことは、ゼロまたは少なくともきわめてゼロに近い値の行列の行列式において現れる。
【0083】
物理的に見ると、電圧uBC2はこのケースでは、両方の励起信号の組み合わせとは無関係に、単一の複素係数においてのみ、電圧uBC1とは異なる。有利にはこのようなケースは実践では回避される。なぜならば、さもないと動作中に散乱行列が著しく僅かに変化したときに、あるいは出力反射係数が強度の変調によって変化したときに、システムが不安定になってしまうからである。
【0084】
閉じた式で表した分離行列
【数9】
からわかるのは、共通分母の項がゼロになってはならないこと、この条件は出力反射係数には依存せず、ボディコイルの散乱行列と、ボディコイルの電圧面に対する電気的長さlBCとにのみ依存する、ということである。
【0085】
したがって分離行列を求めるために、以下のパラメータが既知であると有利である:
−較正平面に関するボディコイルの散乱行列(これは負荷状況ごとに測定可能)。
−電力増幅器の小信号出力反射係数を較正平面に変換する(これはたとえば一回測定することができる)。
−較正平面と、ボディコイルにおける電圧の基準面との間の長さlBC(これはたとえば構造的な事前設定でありそれ相応に受け入れ可能)。
【0086】
無負荷測定の効率を、
−周波数
−波形および/または
−少なくとも1つの後続のパルス(もしくは信号)の大きさ
を考慮して、パラメータを適合ないしは推定するようにして高めることができる。
【0087】
すでに説明したように、この無負荷測定に続いて患者の本来の検査(MRT測定)が行われる。この場合、MRT測定は、事前の較正(無負荷測定)中に場合によっては考慮または補償されなかった時間的変動を受ける可能性がある。ただしMRT測定中であってもシステムパラメータの変化を検出することができ、これはシステムパラメータを無負荷測定におけるRFPAの入力変量および出力変量と比較することによって行われる。このような付加的な情報に基づきMRT測定自体が行われている間、パラメータを適応的に追従制御(調整)することができる。たとえば、接続されたアンテナを介して増幅器チャネルに発生する位相のずれを、フィードバックループとフィードフォワードコントローラを用いて補償することができる。この種の(たとえば連続的な)適応化によって、閉ループ制御のダイナミックな特性を(MRT測定中も)持続的に改善することができる。
【0088】
このようにこれまで述べてきたアプローチによって、RFPAシステムの(たとえば増幅の)フレキシブルかつダイナミックな設定ならびに追従制御が可能となり、しかもこれを実際の負荷状況に応じて行うことができる。この場合、負荷状況はたとえば、患者の体重、検査台のポジション、検査台上の患者のポジション、検査すべき器官、先行の測定データ、ならびにMRT測定実行中に発生する他のパラメータに左右される可能性がある。
【0089】
これまで本発明を、少なくとも1つの実施例に基づき図面に示しながら詳しく説明してきたが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、当業者であれば本発明の権利範囲を逸脱することなく、さらに別の実施形態を導き出すことができる。
【符号の説明】
【0090】
101 負荷に依存するコントローラ(4つのSISO型PIコントローラを含む)
102 負荷に依存するフィードフォワードコントローラ
103 分離コンポーネント
104 RFPAシステム
105 ルックアップテーブル
106 (負荷状況に依存する)情報
107 遅延素子
201 伝播時間コンポーネント
202 伝播時間コンポーネント
203 加算素子
204 加算素子
205 ループフィルタ
206 ループフィルタ
207 加算素子
208 加算素子
209 分離コンポーネント
210 ディジタル/アナログ変換器
211 ディジタル/アナログ変換器
212 増幅器
213 増幅器
214 処理ユニット
215 アナログ/ディジタル変換器
216 アナログ/ディジタル変換器
217 ボディコイル
218 スイッチ
219 スイッチ
図1
図2