(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の重合性組成物は、ノルボルネン系モノマーとメタセシス重合触媒とを含む混合物(重合性組成物用混合物)を冷却固化してなる重合性の組成物である。
【0014】
(ノルボルネン系モノマー)
ノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネン環構造を有する化合物であればよく、特に限定されないが、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエン二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;シクロペンタジエン四量体等の七環体;等を挙げることができる。
これらのノルボルネン系モノマーは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;エチリデン基等のアルキリデン基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;等の置換基を有していてもよい。さらに、これらのノルボルネン系モノマーは、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、オキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等の極性基を有していてもよい。
【0015】
このようなノルボルネン系モノマーの具体例としては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、シクロペンタジエン−メチルシクロペンタジエン共二量体、5−エチリデンノルボルネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン、エチレンビス(5−ノルボルネン)等が挙げられる。
ノルボルネン系モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明においては、上記ノルボルネン系モノマーのなかでも、室温での取り扱いが容易であることから、凝固点が20℃以上のものが好ましく、凝固点が28℃以上のものがより好ましく、凝固点が35℃以上のものがさらに好ましい。なかでも、入手が容易であり、反応性に優れ、得られる成形体が耐熱性に優れたものとなる点から、ジシクロペンタジエン(凝固点31℃)及びトリシクロペンタジエン(凝固点68℃)が好ましく、ジシクロペンタジエンが特に好ましい。
【0017】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、ノルボルネン系モノマーと開環共重合し得るシクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロオクテン、シクロドデセン等の単環シクロオレフィン等を、コモノマーとして用いてもよい。
【0018】
(メタセシス重合触媒)
メタセシス重合触媒は、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオンおよび/または化合物が結合してなる錯体である。遷移金属原子としては、第5,6および8族(長周期型周期表、以下同様)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては、たとえばタンタルが挙げられ、第6族の原子としては、たとえばモリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、たとえばルテニウムやオスミウムが挙げられる。これら遷移金属原子の中でも、第8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ルテニウムまたはオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、本発明の重合性組成物を塊状重合に供して成形体を得る場合、得られる成形体には未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質な成形体が得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。
【0019】
ルテニウムカルベン錯体としては、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【化2】
【0020】
上記一般式(1)および(2)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。R
1およびR
2が互いに結合して環を形成した例としては、フェニルインデニリデン基などの、置換基を有していてもよいインデニリデン基が挙げられる。
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、カルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホン酸基、炭素数6〜20のアリールスルホン酸基、ホスホン酸基、炭素数6〜20のアリールホスホン酸基、炭素数1〜20のアルキルアンモニウム基、および炭素数6〜20のアリールアンモニウム基等を挙げることができる。これらの、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、および炭素数6〜10のアリール基等を挙げることができる。
【0021】
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。アニオン性配位子とは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、ハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。
【0022】
L
1およびL
2は、ヘテロ原子含有カルベン化合物またはヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物を表す。ヘテロ原子含有カルベン化合物及びヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ化合物である。触媒活性向上の観点からヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましい。ヘテロ原子とは、周期律表第15族および第16族の原子を意味し、具体的には、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ヒ素原子、およびセレン原子などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、窒素原子、酸素原子、リン原子、および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
【0023】
前記ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記一般式(3)または(4)で示される化合物が好ましく、触媒活性向上の観点から、下記一般式(3)で示される化合物が特に好ましい。
【化3】
【0024】
上記一般式(3)および(4)中、R
3、R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20個の有機基;を表す。ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例は、上記一般式(1)および(2)の場合と同様である。
また、R
3、R
4、R
5およびR
6は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
なお、本発明の効果がより一層顕著になることから、R
5およびR
6が水素原子であることが好ましい。また、R
3およびR
4は、置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、置換基として炭素数1〜10のアルキル基を有するフェニル基がより好ましく、メシチル基が特に好ましい。
【0025】
前記中性電子供与性化合物としては、例えば、酸素原子、水、カルボニル類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、イミン類、芳香族類、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類等が挙げられる。
【0026】
上記一般式(1)および(2)において、R
1、R
2、X
1、X
2、L
1およびL
2は、それぞれ単独で、および/または任意の組合せで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよい。
【0027】
また、本発明で用いるルテニウムカルベン錯体としては、上記一般式(1)または(2)で表される化合物のなかでも、本発明の作用効果がより顕著になるという点より、上記一般式(1)で表される化合物が好ましく、中でも、以下に示す一般式(5)または一般式(6)で表される化合物であることがより好ましい。
【0028】
一般式(5)を以下に示す。
【化4】
【0029】
上記一般式(5)中、Zは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR
12、PR
12またはAsR
12であり、R
12は、水素原子;ハロゲン原子;またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、Zとしては酸素原子が好ましい。
なお、R
1、R
2、X
1およびL
1は、上記一般式(1)および(2)の場合と同様であり、それぞれ単独で、および/または任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成しても良いが、X
1およびL
1が多座キレート化配位子を形成せず、かつ、R
1およびR
2は互いに結合して環を形成していることが好ましく、置換基を有していてもよいインデニリデン基であることがより好ましく、フェニルインデニリデン基であることが特に好ましい。
また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子または珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)および(2)の場合と同様である。
【0030】
上記一般式(5)中、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、または炭素数6〜20のヘテロアリール基で、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基または炭素数6〜10のアリール基を挙げることができ、環を形成する場合の環は、芳香環、脂環およびヘテロ環のいずれであってもよいが、芳香環を形成することが好ましく、炭素数6〜20の芳香環を形成することがより好ましく、炭素数6〜10の芳香環を形成することが特に好ましい。
【0031】
上記一般式(5)中、R
9、R
10およびR
11は、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)および(2)の場合と同様である。
R
9、R
10およびR
11は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。
【0032】
なお、上記一般式(5)で表わされる化合物の具体例およびその製造方法としては、たとえば、国際公開第03/062253号(特表2005−515260)に記載のもの等が挙げられる。
【0033】
一般式(6)を以下に示す。
【化5】
【0034】
上記一般式(6)中、mは、0または1である。mは1が好ましく、その場合、Qは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、メチレン基、エチレン基またはカルボニル基であり、好ましくはメチレン基である。
【0035】
【化6】
は、単結合または二重結合であり、好ましくは単結合である。
【0036】
R
1、X
1、X
2およびL
1は、上記一般式(1)および(2)の場合と同様であり、それぞれ単独で、および/または任意の組み合わせで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成しても良いが、X
1、X
2およびL
1が多座キレート化配位子を形成せず、かつ、R
1は水素原子であることが好ましい。
【0037】
R
13〜R
21は、水素原子;ハロゲン原子;またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子もしくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基;であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子または珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)および(2)の場合と同様である。
R
13は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、R
14〜R
17は、好ましくは水素原子であり、R
18〜R
21は、好ましくは水素原子またはハロゲン原子である。
【0038】
なお、上記一般式(6)で表わされる化合物の具体例およびその製造方法としては、たとえば、国際公開第11/079799(特表2013−516392)に記載のもの等が挙げられる。
【0039】
メタセシス重合触媒の使用量は、反応に使用するモノマー1モルに対して、通常、0.01ミリモル以上であり、好ましくは0.1〜50ミリモル、より好ましくは0.1〜20ミリモルである。メタセシス重合触媒の使用量を上記範囲とすることにより、得られる重合性組成物の反応性と保存安定性とを高度にバランスさせることができる。
【0040】
(その他の成分)
また、本発明の重合性組成物は、上述したノルボルネン系モノマーおよびメタセシス重合触媒以外のその他の成分を含有するものであってもよく、このようなその他の成分としては、活性剤、重合遅延剤、充填材などが挙げられる。
【0041】
活性剤は、上述したメタセシス重合触媒の共触媒として作用し、上述したメタセシス重合触媒の重合活性を向上させる化合物である。このような活性剤としては、特に限定されないが、その具体例としては、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライド、アルコキシアルキルアルミニウムハライド等の有機アルミニウム化合物;テトラブチル錫等の有機スズ化合物;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物;ジメチルモノクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラクロロシラン、ビシクロヘプテニルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のクロロシラン化合物;等が挙げられる。
【0042】
活性剤の使用量は、特に限定されないが、メタセシス重合触媒1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上であり、使用量の上限は、好ましくは100モル以下、より好ましくは20モル以下である。活性剤の使用量が少なすぎると、重合活性が低くなりすぎて、反応に要する時間が長くなるため生産効率が悪くなる。逆に、使用量が多すぎると、反応が激しくなり過ぎてしまい、所望の樹脂成形体を得難くなる場合がある。
【0043】
重合遅延剤は、後述するように、ノルボルネン系モノマーを含有するモノマー液とメタセシス重合触媒を含有する触媒液とを混合し、液状の重合性組成物用混合物(以下、液状混合物という場合がある。)を調製し、これを冷却固化して、本発明の重合性組成物を調製する際、調製中に重合が開始してしまうことを抑制するのに有用である。このような重合遅延剤としては、ホスフィン類、ホスファイト類、ビニルエーテル誘導体、エーテル、エステル、ニトリル化合物、ピリジン誘導体、アルコール類、アセチレン類およびα−オレフィン類などが挙げられる。これらのなかでも、重合遅延剤としての効果が高く、ノルボルネン系モノマーとメタセシス重合触媒とを混合した際に、得られる液状混合物の増粘を効果的に抑制できるという点より、ホスフィン類、又は下記式(7)で表されるピリジン誘導体が特に好ましい。
【化7】
【0044】
上記一般式(7)中、R
22、R
23およびR
24は、それぞれ独立して、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、もしくは置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルケニル基である。また、R
22、R
23およびR
24のうち、少なくとも2つは、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルケニル基である。すなわち、上記一般式(7)で表されるピリジン誘導体は、2つのメタ位および1つのパラ位(3位、4位および5位)のうち、2箇所または3箇所が置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルケニル基で置換されており、かつ、2つのオルト位(2位および6位)が、いずれも置換基で置換されていない(2つのオルト位には、いずれも、水素原子が結合している)化合物である。
【0045】
R
22、R
23およびR
24を構成する置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は、1〜10であり、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。また、置換基を有していてもよいアルケニル基の炭素数は、通常2〜10であり、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜4である。なお、これらアルキル基またはアルケニル基に導入される置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(アルコール性水酸基)、−C(=O)−R、−OR、−C(=O)−O−R、−OC(=O)−R(Rは、いずれも炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜11のアリール基である。)などが挙げられる。
【0046】
上記一般式(7)で表されるピリジン誘導体としては、2つのメタ位が置換されている(R
22およびR
24が置換されている)2置換体、1つのメタ位およびパラ位が置換されている(R
22およびR
23が置換されている)2置換体、2つのメタ位およびパラ位が置換されている(R
22、R
23およびR
24が置換されている)3置換体のいずれでもよいが、その添加効果がより顕著になるという点より、2つのメタ位が置換されている2置換体、または、1つのメタ位およびパラ位が置換されている2置換体が好ましい。
【0047】
重合遅延剤の使用量は、特に限定されないが、メタセシス重合触媒100重量部に対して、好ましくは15〜1800重量部であり、より好ましくは50〜900重量部、さらに好ましくは150〜500重量部である。
【0048】
なお、重合遅延剤は、液状混合物により重合性組成物を調製する場合だけでなく、後述する固形状の重合性組成物用混合物により重合性組成物を調製する場合にも、工程安定化の観点から、適宜用いられる。
【0049】
充填材としては、特に限定されないが、たとえば、アスペクト比が5〜100の繊維状充填材や、アスペクト比が1〜2の粒子状充填材が挙げられる。また、これら繊維状充填材と粒子状充填材を組み合わせて用いることもできる。
【0050】
繊維状充填材の具体例としては、ガラス繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノライト、塩基性硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、テトラポット型酸化亜鉛、石膏繊維、ホスフェート繊維、アルミナ繊維、針状炭酸カルシウム、針状ベーマイトなどを挙げることができる。なかでも、少ない添加量で剛性を高めることができ、しかも塊状重合反応を阻害しないという点より、ウォラストナイトが好ましい。
【0051】
粒子状充填材の具体例としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、酸化アンチモン、赤燐、各種金属粉、クレー、各種フェライト、ハイドロタルサイト等を挙げることができる。これらの中でも、塊状重合反応を阻害しないので、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナおよび水酸化アルミニウムが好ましい。
【0052】
また、上記充填材は、その表面を疎水化処理したものであることが好ましい。疎水化処理した充填材を用いることにより、充填材の凝集・沈降を防止でき、また、ノルボルネン系モノマーの塊状重合体中における充填材の分散を均一にすることができる。疎水化処理に用いられる処理剤としては、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ステアリン酸等の脂肪酸、油脂、界面活性剤、ワックス等を挙げることができる。充填材の疎水化処理は、後述するようにして重合性組成物用混合物を調製する際に、疎水化処理剤を充填剤と同時に混合することによっても可能であるが、予め疎水化処理を行なった充填材を用いて重合性組成物用混合物の調製を行なうのが好ましい。
【0053】
本発明の重合性組成物中における、充填材の配合量は、ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、100〜500重量部であることがより好ましい。充填材の配合量を上記範囲とすることにより、得られる樹脂成形体の強度を十分なものとすることができる。
【0054】
また、本発明の重合性組成物には、上記以外の各種添加剤を含有させてもよい。このような添加剤としては、改質剤、老化防止剤、着色剤、光安定剤、難燃剤などが例示される。
【0055】
(重合性組成物の調製)
本発明の重合性組成物は、必須成分であるノルボルネン系モノマーおよびメタセシス重合触媒、ならびに所望により添加される活性剤や重合遅延剤などのその他の成分を含む重合性組成物用混合物を調製し、該混合物を冷却固化することにより調製される。
なお、本発明において、重合性組成物用混合物または重合性組成物を構成するノルボルネン系モノマーが複数ある場合、ノルボルネン系モノマーの凝固点とは、使用するノルボルネン系モノマーの混合物につき、JIS K0065に従って測定した値をいう。
【0056】
重合性組成物用混合物は、たとえば、以下の2つの方法により調製することができる。
【0057】
第1の方法では、予め凝固点以下に冷却して固形状としたノルボルネン系モノマーと、メタセシス重合触媒と、所望により添加される充填剤等のその他の成分とを、該モノマーが実質的に融解しない温度下で冷却しながら混合することにより、重合性組成物用混合物を調製する。本方法では、固形状の重合性組成物用混合物(以下、固形状混合物という場合がある。)が得られる。
【0058】
固形状のノルボルネン系モノマーの形態としては、後述する粉砕機または混合機で取り扱い可能なものであればよく、特に限定されない。当該形態としては、たとえば、ブロック状や粉末状が挙げられる。ブロック状のノルボルネン系モノマーとしては、通常、一辺が50〜300mm程度の大きさであり、粉末状のノルボルネン系モノマーとしては、通常、平均粒径0.2〜20mm程度の大きさである。当該平均粒径は、レーザー回折散乱法により測定可能である。
なお、固形状のノルボルネン系モノマーは、所定の温度下に固形物として取り扱うことができればよく、一部融解した状態のものが含まれていてもよい。
【0059】
メタセシス重合触媒は、粉末として混合しても、または溶媒中に分散もしくは溶解してなる触媒液として混合してもよい。
粉末として混合する場合、たとえば、融点40〜80℃の不活性固体により、予めメタセシス重合触媒をコーティングしておいてもよい。かかる不活性固体としては、たとえば、パラフィンが好適に用いられる。そのようにすることで、メタセシス重合触媒の安定性を向上させることができる。
触媒液に用いられる前記溶媒としては、メタセシス重合触媒に対して不活性な溶媒であればよく、特に限定されないが、たとえば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類;ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルなどが挙げられる。中でも、芳香族炭化水素が好ましく、トルエンが特に好ましい。
【0060】
その他の成分を用いる場合、それらはノルボルネン系モノマーに予め添加しておいてもよいし、触媒液に含有させておいてもよいし、または、各成分の混合時に混合液等の形で別途添加してもよい。
【0061】
各成分を混合する際の温度としては、通常、使用するノルボルネン系モノマーの凝固点より低い温度範囲であり、ノルボルネン系モノマーの凝固点から5℃以上低い温度とすることが好ましく、凝固点から10℃以上低い温度とすることがより好ましい。混合温度がかかる範囲内にあれば、ノルボルネン系モノマーが実質的に融解することなく、塊状重合の進行が抑えられ、均一な重合性組成物用混合物が効率よく得られる。混合温度としては典型的には25℃以下が好適である。
【0062】
各成分の混合時、同時に固形状のノルボルネン系モノマーの粉砕を行ってもよいし、または単に各成分の混合のみを行ってもよい。前者の場合、ブロック状のノルボルネン系モノマーが、後者の場合、粉末状のノルボルネン系モノマーが、好適に用いられる。また、各成分の混合に用いる装置としては、前者の場合、スクリーンカッター、ハンマーミルおよびロータリーカッターなどの粉砕機が、後者の場合、ヘンシェルミキサーおよびプラネタリーミキサーなどの混合機が、好適に用いられる。なお、ボールミルは両者の場合に用いることができる。混合操作は、公知の方法に従って行えばよく、一段階で行っても二段階以上で行ってもよい。また、粉砕機と混合機とを適宜組み合わせて用いてもよい。
【0063】
以上により固形状混合物が得られるが、後述する冷却固化時における成形性に優れることから、ノルボルネン系モノマーは粉末状であるのが好ましい。
【0064】
第2の方法では、液状のノルボルネン系モノマーと、メタセシス重合触媒と、所望により添加される充填剤等のその他の成分とを、得られる混合物が液状を保つ温度下で混合することにより、重合性組成物用混合物を調製する。本方法では、液状の重合性組成物用混合物が得られる。
【0065】
本方法としては、たとえば、ノルボルネン系モノマーを含有するモノマー液に、メタセシス重合触媒を含有する触媒液を混合し、攪拌する方法が挙げられる。ノルボルネン系モノマーを含有するモノマー液に、メタセシス重合触媒を含有する触媒液を混合する際の混合温度は、通常、ノルボルネン系モノマーの凝固点以上の温度であり、ノルボルネン系モノマーの凝固点から10℃高い温度までの範囲とすることが好ましく、凝固点から5℃高い温度までの範囲とすることがより好ましい。混合温度がかかる範囲内にあれば、ノルボルネン系モノマーの塊状重合の進行を実質的に抑えて、均一な重合性組成物用混合物を効率的に得ることができる。モノマー液と触媒液との混合温度としては、典型的には、30〜60℃、好ましくは35℃〜45℃である。
なお、メタセシス重合触媒は粉末として配合することもできる。
【0066】
その他の成分を用いる場合、これらはモノマー液、触媒液のいずれかに含有させておいてもよいし、または、各成分の混合時に混合液等の形で別途添加してもよい。
【0067】
重合性組成物用混合物は以上のようにして調製することができるが、固形状混合物では、ノルボルネン系モノマーは凝固して流動性を失っており、メタセシス重合触媒と混合しても、塊状重合が進行することがない。一方、液状混合物では、塊状重合が進行する可能性があるため、温度管理をより厳密に行う必要があり、また、続く冷却固化までの時間をより短時間にする必要がある。したがって、操作自由度が高く、より安定して重合性組成物用混合物が得られることから、重合性組成物用混合物は第1の方法により調製するのが好適である。
【0068】
次いで、得られた重合性組成物用混合物を冷却固化し、本発明の重合性組成物を得る。冷却固化の方法としては、特に限定されないが、たとえば、以下の方法が挙げられる。なお、本発明において「冷却固化」とは、冷却下に固めることを意味する。
【0069】
固形状混合物の場合、所定量ずつ、打錠機やプレス成型機にて冷却下に加圧成形して冷却固化することにより、本発明の重合性組成物を調製することができる。成形時の圧力は、特に限定されないが、通常、10MPa程度である。なお、後述するようにして樹脂成形体を製造する際、冷却下、用いる成形型に対し直接、固形状混合物を詰め込んで固めることにより、当該成形型内において本発明の重合性組成物を調製してもよい。
【0070】
液状混合物の場合、ノルボルネン系モノマーの塊状重合が実質的に進行する前に、冷却固化する必要がある。たとえば、液状混合物を得ると、所定量ずつ適宜成形しつつ、即座に冷却固化することにより、本発明の重合性組成物を調製することができる。
なお、上記成形においては、後述の成形型を利用することができる。
【0071】
重合性組成物用混合物を冷却固化する際の冷却温度としては、使用するノルボルネン系モノマーの種類に応じて設定すればよいが、ノルボルネン系モノマーの凝固点よりも20℃以上低い温度とすることが好ましく、30℃以上低い温度とすることがより好ましい。具体的な冷却温度としては、−60〜0℃が好ましく、−40〜−10℃がより好ましい。冷却温度を上記範囲とすることにより、ノルボルネン系モノマーの塊状重合を適切に停止させることができ、しかも、再度加熱等することにより、ノルボルネン系モノマーの塊状重合を開始させた際における反応性を、十分かつ安定したものとすることができる。
【0072】
本発明において、重合性組成物用混合物の調製は、原料ロスをなくし樹脂成形体の生産効率を高める観点から、当該混合物の必要量を考慮し、ノルボルネン系モノマーとメタセシス重合触媒とを混合した際、各々、それらが即座に充分に混合されうる最適量を用いて行うのが好ましい。特に液状混合物を調製するに当たっては、例えば、用いるモノマー液と触媒液と、それぞれ同様な粘度を有する液体を用意し、その混合性を確認することで、両液の最適量を適宜決定することができる。
【0073】
ノルボルネン系モノマーとメタセシス重合触媒とを混合して得られる重合性組成物用混合物を冷却固化する際には、冷却固化を行なう前に、該混合物を、予め製造する成形体に応じた重量となるように秤量し、予め製造する成形体に応じた重量の冷却固化体を得るような構成とすることが好ましい。この際には、製造する成形体と同じ重量の冷却固化体を得るような構成としてもよいし、あるいは、製造する成形体に対応する複数の冷却固化体を得るような構成としてもよい。
【0074】
(樹脂成形体の製造方法)
本発明の樹脂成形体の製造方法は、上述した本発明の重合性組成物を、塊状重合する工程を備え、これにより、樹脂成形体を得るものである。
【0075】
本発明においては、上述した本発明の重合性組成物を塊状重合させ、樹脂成形体を得る際には、通常、所望の形状に応じた成形型を用い、該成形型中で、冷却固化体の状態の重合性組成物を加熱して塊状重合させることにより、所望の形状を有する樹脂成形体を得ることができる。
【0076】
成形型としては、特に限定されないが、たとえば、雄型と雌型とで形成される金型を用いることができる。また、用いる型は、必ずしも剛性の高い高価な金型である必要はなく、金属製の型に限らず、樹脂製の型、または単なる型枠を用いることができる。金属製の型を用いる場合の材質としては、特に限定されないが、スチール、アルミニウム、亜鉛合金、ニッケル、銅、クロム等が挙げられ、鋳造、鍛造、溶射、電鋳等のいずれの方法で製造されたものでもよく、また、メッキされたものであってもよい。型の構造は型に重合性組成物を注入する際の圧力を勘案して決めるとよい。また、金型の型締め圧力は、通常、ゲージ圧で0.1〜9.8MPa程度である。
【0077】
型温度は、使用するノルボルネン系モノマーの種類に応じて適宜選定すればよいが、ノルボルネン系モノマーの凝固点よりも30℃以上高い温度とすることが好ましく、凝固点よりも50℃以上高い温度とすることがより好ましい。典型的には、型温度としては、通常、60〜160℃、好ましくは80〜120℃である。塊状重合の時間は適宜選択すればよいが、冷却固化体の状態の重合性組成物を型内に配置させた後、通常20秒〜20分、好ましくは20秒〜5分である。
【0078】
雄型および雌型を対とする金型で形成されるキャビティ内に重合性組成物を供給して塊状重合させる場合において、一般に意匠面側金型の金型温度T1(℃)を意匠面と反対側の金型の金型温度T2(℃)より高く設定しておくことが好ましい。これにより、成形体の表面外観をヒケや気泡のない美麗なものとすることができる。T1−T2は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、上限が好ましくは60℃である。T1は、上限が好ましくは110℃、より好ましくは95℃であり、下限が好ましくは50℃である。T2は、上限が好ましくは70℃、より好ましくは60℃であり、下限が好ましくは30℃である。
【0079】
金型温度を調整する方法としては、たとえば、ヒータによる金型温度の調整;金型内部に埋設した配管中に循環させる温調水、油等の熱媒体の温度調整;等が挙げられる。
【0080】
塊状重合の終了後、例えば、金型を型開きして脱型することにより、樹脂成形体を得ることができる。
【0081】
本発明の重合性組成物は、ノルボルネン系モノマーとメタセシス重合触媒とを含む混合物を冷却固化してなるものであるため、ノルボルネン系モノマーの塊状重合が進行することなく保存安定性に優れており、しかも、ノルボルネン系モノマーとメタセシス重合触媒とが既に充分な混合状態にあるため、本発明の重合性組成物を加熱して溶融、重合硬化させることで、品質安定性に優れた微小な樹脂成形体を工業規模で効率的に生産することができる。本発明によれば、重合性組成物を調製する段階において、ノルボルネン系モノマーとメタセシス重合触媒とを均一に混合し、得られた混合物を、所望の樹脂成形体に応じた重量に秤量し、これを冷却固化することができるため、得られた重合性組成物を塊状重合させることで、たとえ微小な樹脂成形体を得る場合(たとえば、重量が100g未満の成形体を得る場合)であっても、優れた品質安定性を実現することができる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
【0083】
(1)硬化時間
実施例、比較例に示す方法により所定温度に加温した金型上に重合性組成物を載置した後、重合性組成物全体が硬化に至るまでの時間(単位:分)を計測し、これを硬化時間とした。
【0084】
(2)金型クリーニング頻度
実施例、比較例に示す方法により、サンプル板の成形および得られたサンプル板を金型から取り出す作業を繰り返し行い、サンプル板の離型性が悪く、変形・破壊が発生し、これにより金型のクリーニングが必要となった時の回数を計測し、その値を金型クリーニング頻度として計測した。
【0085】
(3)ガラス転移温度(Tg)の測定
実施例、比較例に示す方法によりサンプル板を成形し、得られたサンプル板をφ3×1mmの大きさに加工し、φ3×1mmの大きさとしたサンプル板を用いて、示差走査熱量計(DSC-6220、セイコーインスツル社製)により、昇温速度10℃/minで30℃から220℃までDSC曲線の測定を行った。
そして、得られたDSC曲線より、変極点よりも低温側のベースラインを延長した直線と、変極点よりも高温側のベースラインを延長した直線との交点の値を読み取り、これをガラス転移温度(Tg)とした。
【0086】
実施例1
(触媒液の調製)
メタセシス重合触媒として、下記式(8)で示すルテニウム触媒(VC843、Strem Chemicals社製)0.6部、および2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT、老化防止剤)15部をシクロペンタノン82部に溶解させ、次いで、3,4−ジメチルピリジン2.2部、およびフェニルトリクロロシラン0.1部混合することで、触媒液を得た。
【化8】
【0087】
(サンプル板の成形)
40℃に加温したジシクロペンタジエン100部に、トリフェニルホスフィン0.5部、および上記にて調製した触媒液3.3部を添加し、これらを混合して重合性組成物用混合物を調製し、得られた重合性組成物用混合物を、それぞれ100g、50g、10gになるよう小分けした。そして、その後速やかに−20℃まで急速冷凍することで、冷却固化体の状態の重合性組成物を得た。
【0088】
そして、上記とは別に、金型として、内部に縦250mm×横200mm×厚さ4mmの空間を有するアルミニウム製雌型を準備して70℃に加温した。その後、上記にて得られた冷却固化体の状態の重合性組成物(100g、50g、10gの小分けにしたそれぞれの重合性組成物)を金型上に置き、塊状重合を開始させた。そして、上述した方法にしたがい、硬化時間の計測を行った後、硬化終了した後所定時間経過後に金型より成形品を取り出し、サンプル板を得た。そして、得られたサンプル板について、上述した方法にしたがい、ガラス転移温度(Tg)の測定を行なった。また、その後、このようなサンプル板の成形および金型からの取り出しを繰り返し行い、上述した方法にしたがい、金型クリーニング頻度の測定を行なった。これらの結果を表1に示す。
【0089】
実施例2
ジシクロペンタジエンの代わりに、テトラシクロドデセンを使用した以外は、実施例1と同様にして、冷却固化体の状態の重合性組成物およびサンプル板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
実施例3
ジシクロペンタジエンの代わりに、エチリデンテトラシクロドデセンを使用した以外は、実施例1と同様にして、冷却固化体の状態の重合性組成物およびサンプル板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
実施例4
重合性組成物用混合物を得る際に、ジシクロペンタジエン100部に対し、水酸化アルミニウム150部をさらに添加した以外は、実施例1と同様にして、冷却固化体の状態の重合性組成物およびサンプル板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
実施例5
金型温度を40℃とした以外は、実施例1と同様にしてサンプル板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
実施例6
40℃に加温したジシクロペンタジエン100部に、トリフェニルホスフィン0.5部を溶解させ、−20℃まで急速冷凍することで、固形状のモノマー組成物を得た。
次いで、タンクを15℃に保持したプラネタリーミキサーに上記モノマー組成物をそのまま100部投入し、次いで実施例1と同様にして作製した触媒液3.3部を投入し、10分間混合して重合性組成物用混合物を得た。当該混合物を、それぞれ100g、50g、10gになるよう小分けし、−20℃まで急速冷凍すると共に加圧成形し、重合性組成物を得た。得られた重合性組成物を用い、実施例1と同様にしてサンプル板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
実施例7
(触媒液の調製)
メタセシス重合触媒として、下記式(9)で示すルテニウム触媒(Zhan 1N)0.6部、およびBHT 15部をシクロペンタノン82部に溶解させることで、触媒液を得た。
【化9】
【0095】
(サンプル板の成形)
上記で得られた触媒液を使用し、実施例1と同様にして、冷却固化体の状態の重合性組成物およびサンプル板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
実施例8
使用した触媒液を、実施例7と同様にして作製した触媒液に替えたこと以外は実施例6と同様にして重合性組成物およびサンプル板を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
比較例1
高比率衝突混合方式のRIM機を使用し、実施例1と同様にして調製した触媒液3.3部と、ジシクロペンタジエン100部およびトリフェニルホスフィン0.5部からなるモノマー液100.5部を吐出速度100g/s、50g/s、10g/sで衝突混合させ、それぞれ得られた混合液100g、50g、10gを、実施例1と同様の金型に、それぞれ直接吐出した以外は、実施例1と同様にしてサンプル板を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0098】
比較例2
ジシクロペンタジエンの代わりに、テトラシクロドデセンを使用した以外は、比較例1と同様にして、サンプル板を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0099】
比較例3
モノマー液として、ジシクロペンタジエン100部、トリフェニルホスフィン0.5部、および水酸化アルミニウム150部からなるモノマー液250.5部を使用した以外は、比較例1と同様にして、サンプル板を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0100】
【表1】
【表2】
【0101】
表1に示すように、本発明所定の冷却固化体の状態の重合性組成物を用いた実施例1〜8においては、100gの樹脂成形体を成形した場合に加えて、50g、10gと微小な樹脂成形体を成形した場合においても、100gの樹脂成形体を成形した場合と同程度のガラス転移温度を有する良好な成形体を得ることができた。しかも、実施例1〜8においては、金型クリーニング頻度、すなわち、不完全な成形体が得られてしまい、これにより金型からの離型性が悪く、変形・破壊が発生し、金型のクリーニングが必要になった時の回数である金型クリーニング頻度についても、100g、50g、10gの樹脂成形体いずれの場合でも良好であり、いずれの場合でも適切な成形体を連続的に得ることが可能であることが確認できた。
【0102】
一方、表2に示すように、従来と同様に、高比率衝突混合方式のRIM機を使用して、触媒液と、モノマー液とを衝突混合させ、得られた混合液を用いて、樹脂成形体を得た比較例1〜3においては、100gの樹脂成形体については、比較的良好な結果が得られるものの、50g、10gと微小な樹脂成形体を成形した場合には、樹脂成形体を得ることができなかったり、また、樹脂成形体を得ることができても、ガラス転移温度が検出されず、不完全な成形体となる結果となった。また、比較例1〜3においては、50g、10gと微小な樹脂成形体を成形した場合には、樹脂成形体を得ることができなかったり、あるいは、不完全な成形体しか得ることができなかったため、1度の成形で金型のクリーニングが必要となる結果となった。