【文献】
JAHNEN-DECHENT WILLI,CIRCULATION RESEARCH,2011年 6月10日,V108 N12,P1494-1509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で用いられる場合、「石灰化」という用語は、最も広い意味で、インビボおよびインビトロにおける、難溶性もしくは不溶性のカルシウム塩の任意の沈着および/もしくは沈澱、ならびに/またはカルシプロテイン粒子 (CPP) の形成として理解され得る。本明細書で用いられる場合、「石灰化」、「か焼」、「カルシウム沈着」、および「カルシウム沈殿」という用語は、互換的に理解され得る。任意に、石灰化は、石灰化プラークの形成をもたらし得、微小石灰化であってよく、ならびに/または溶液中のカルシウム塩の沈澱、したがって、一次および/もしくは二次CPPを含むがこれらに限定されない不溶性もしくは難溶性のカルシウム含有粒子の形成であってよい。
【0017】
本発明の文脈において用いられる場合、「難溶性」という用語は、塩が、20℃の水中で10 mM未満、1 mM未満、0.1 mM未満、10μM未満、1μM未満、0.1μM未満、または10 nM未満の溶解度を有し得るという意味で理解され得る。「不溶性」という用語は、塩が、20℃の水中で10 nM未満、1 nM未満、または0.1 nM未満の溶解度を有し得るという意味で理解され得る。
【0018】
好ましくは、石灰化はインビボにおける石灰化である。このことは、対象の体内にある場合の流体中で石灰化が起こり、該インビボの石灰化の傾向が本発明の方法によって判定されることを意味する。石灰化がインビボにおける石灰化であってよいという事実は、本方法がインビトロでも行われ得るということを排除し得ない。本発明を通して用いられる場合、「行う」および「実施する」という用語は互換的に理解され得る。好ましくは、本方法自体はインビトロで行われ、したがってヒトまたは動物体で実行されない。しかしながら、本方法によって得られる結果は、患者の診断に使用可能である。
【0019】
インビボにおける石灰化の文脈において、石灰化はまた、1つまたは複数の石灰化プラークの形成として理解され得る。この文脈において、「石灰化プラーク」および「石灰化病変」という用語は互換的に理解され得る。プラーク形成は、患者の身体の様々な部位で起こり得る。より好ましくは、石灰化は、血管石灰化、弁石灰化、心血管石灰化、または1つもしくは複数の軟部組織の石灰化である。最も好ましくは、石灰化は心血管石灰化である。
【0020】
本明細書で用いられる場合の心血管石灰化は、最も広い意味で、1つまたは複数の血管、より好ましくは内膜および/または中膜に局在する1つまたは複数のプラークの形成として理解され得る。血管におけるプラーク形成はまた、血管内プラークの形成とも称され得る。この血管内プラークは、「心血管石灰化」と称される患者体内の血管の石灰化の1つの理由となり得る。心血管石灰化、したがって心血管系における石灰化病変の形成は、筋緊張亢進、心筋梗塞、および脳卒中(卒中発作)などの多くの疾患のリスクを高め得る。石灰化の高度に明白な形態は、下肢などの四肢の切断の必要性をさらに招き得る。病的な心血管石灰化の1つの重症型は「メンケベルグアテローム性動脈硬化症」であり、これは「中膜石灰化硬化症」とも称される。ここでは、中型サイズの血管の壁の中間層(中膜)においてカルシウム沈着が生じるにつれて、血管は硬化する。その結果として、脈圧が病的に上昇する。プラーク形成は、脂肪線条を特徴とし得る。これらの脂肪線条は典型的に、脂肪酸、コレステロール、および/または1つもしくは複数の他のステロイドの蓄積を特徴とする。多くの場合、これらのプラーク形成物(プラーク)は、低密度リポタンパク質 (LDL) および/または白血球細胞、特に酸化低密度リポタンパク質 (LDL) を取り込んだマクロファージの取り込みによってさらに特徴決定される。これらの白血球細胞が大量の細胞膜を蓄積した後、これらはまた泡沫細胞とも称される。プラーク形成の後期では、細胞外脂質コアが形成され得る。さらに、プラークの外側および/またはより古い部分は、時間と共により石灰性となり、代謝的に活性が低下し、および物理的により硬化し得る。プラークは、様々な量の細胞残屑、カルシウム、および/または線維性結合組織をさらに含み得る。任意に、これは線維性被膜を形成し得る。最終的に、プラークは潜在的に血小板凝固、アテローム性動脈硬化症、および/または狭窄を引き起こし得る。
【0021】
本発明の文脈において、インビボにおける石灰化はまた、腎臓、特に腎盂、尿管、膀胱、胆嚢、および/または胆管などのある種の器官の管腔における石灰化として理解され得る。結果として、それぞれ腎石(腎結石)および胆石が生じ得る。腎石および胆石はあらゆる集団で頻繁に生じ、重篤な症状を引き起こし得る。その上、石灰化は軟部組織において起こり得、軟部組織を硬化させ得る。ここでは、石灰化は、病的組織、および潜在的には重篤な臨床症状を潜在的に含む対応する病的状態を招き得る。ある種の型の脳腫瘍などのいくつかの型の腫瘍は、独特の局所石灰化(カルシウム斑点)を有するが、異なるサイズのカルシウム斑点はまた、いかなる臨床症状も引き起こさず、またはいかなる病的状態も示さずに脳内に生じる場合もある。
【0022】
本発明の文脈において用いられる場合、石灰化はまた、主に1つまたは複数の有機物質から構成される任意の沈着物を伴う石灰化であってもよい。例示的には、この沈着物は、例えば、腎石、胆石、プラーク形成物、および/またはそれらの1つの前駆体であってよい。好ましくは、これらの沈着物はプラーク形成物であってよい。
【0023】
あるいは、石灰化はインビトロにおける石灰化である。本明細書で用いられる場合、「インビトロ」および「エクスビボ」という用語は互換的に理解され得る。インビトロにおける石灰化は、体外の任意の環境において起こり得る。例示的には、本発明の状況におけるインビトロにおける石灰化は、流体、好ましくは水性流体と接触している任意の中空装置において起こり得る。医薬との関連において、このような中空装置は、例示的には注射針、手術針、チューブ、シリンジ、透析機、透析膜、または血液もしくは血漿保存物であってよい。あるいは、このような中空装置はまた、チューブ、菅(例えば、水管)、洗濯機、食洗器、湯沸かし器、やかん、深鍋、平鍋、コーヒーメーカー、給茶機、洗面器、浴槽、便器、小便器、または石灰化流体と接触している任意の機械または機械の一部であってもよい。
【0024】
本発明の文脈において用いられる場合、「流体」という用語は、最も広い意味で、石灰化を引き起こし得る任意の流体として理解され得る。本明細書で用いられる場合、「流体」、「液体」、および「溶液」という用語は互換的に理解され得る。好ましくは、流体は、水性流体、したがって、50% (w/w) を超える水、60% (w/w) を超える水、70% (w/w) を超える水、80% (w/w) を超える水、90% (w/w) を超える水、または95% (w/w) を超える水を含む流体である。流体は体液であってよく、または技術的流体であってもよい。
【0025】
本発明の文脈において用いられる場合、「流体が石灰化する傾向」という用語は、最も広い意味で、流体が石灰化を生じる傾向として理解され得る。石灰化の傾向はまた、最も広い意味で、石灰化圧、したがって流体が石灰化を生じる能力として理解され得る。したがって、流体が石灰化する傾向が高い場合、流体はカルシウムおよび/またはリン酸濃度の増加に際して石灰化を示す可能性が高く、流体が石灰化する傾向が低い場合、流体はカルシウムおよび/またはリン酸濃度の増加に際して石灰化を示さないか、または石灰化をほとんど示さない可能性が高い。本発明の文脈において、流体が石灰化する傾向は、好ましくは流体が石灰化する全体的な傾向であり、したがって巨視的観点における全体としての、流体により媒介される石灰化の傾向である。
【0026】
流体が石灰化する傾向は、流体が石灰化を妨げる傾向の逆である。その結果として、本発明はまた、流体が石灰化を妨げる傾向を判定する方法に関する。この文脈において、石灰化の防止または阻害はまた、「体液性防御線」とも称され得る。この体液性防御線は、カルシウムおよび/またはリン酸濃度の増加によって圧倒され得る。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「判定すること」という用語は、最も広い意味で、流体が石灰化する傾向の状態および強度の特徴決定として理解され得る。この文脈において、「判定すること」という用語は、任意に、流体が石灰化する傾向を調べる段階、試験する段階、測定する段階、調査する段階、アッセイする段階、探索する段階、および評価する段階のうちのいずれか1つを含み得るが、これらに限定され得ない。患者から得られた試料において流体が石灰化する傾向を判定する状況において、該判定することはまた、「診断すること」という用語と互換的に理解され得る。
【0028】
本発明の文脈において用いられる場合、「該流体の試料」という用語は、最も広い意味で、流体を含む任意の組成物として理解され得る。本発明の文脈において、「該流体の試料」、「流体の試料」、および「試料」という用語は互換的に理解され得る。好ましくは、試料は流体試料である。本明細書で用いられる場合、「液体」および「流体」という用語は互換的に理解され得る。最も好ましくは、試料は水性試料である。試料は、5% (v/v) 未満の、5% (v/v) を超える、10% (v/v) を超える、20% (v/v) を超える、30% (v/v) を超える、40% (v/v) を超える、50% (v/v) を超える、60% (v/v) を超える、70% (v/v) を超える、80% (v/v) を超える、90% (v/v) を超える流体を含み得るか、または実に流体のみから構成され得る。好ましくは、試料は25% (v/v) 〜75% (v/v) の流体を含んでよく、最も好ましくは30% (v/v) 〜60% (v/v) の流体を含み得る。しかしながら、当業者は、試料中の流体の量が、流体の型、適用される読み取り法、ならびに試料中のカルシウムおよびリン酸濃度に依存することを認めるであろう。
【0029】
「可溶性カルシウム塩および可溶性リン酸塩を添加すること」という用語は、最も広い意味で、カルシウムイオンおよびリン酸イオンの試料への添加として理解され得る。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「可溶性カルシウム塩」という用語は、水中で可溶性であるカルシウム陽イオン (Ca
2+)を含む任意の塩を指す。
【0031】
本発明を通して、「可溶性塩」という用語は、最も広い意味で、20℃の水中で10 nMを超える、0.1μMを超える、1μMを超える、10μMを超える、0.1 mMを超える、1 mMを超える、または10 mMを超える溶解度を有する塩として理解され得る。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「可溶性カルシウム塩」という用語は、カルシウム陽イオン (Ca
2+) を含む任意の可溶性塩を指す。例示的に、可溶性カルシウムは塩化カルシウム (CaCl
2) であってよい。当業者は、カルシウム陽イオンの適用濃度が、試料中の流体の量、流体の型、適用される読み取り法、および試料中のリン酸濃度に依存することを理解するであろう。好ましくは、カルシウムイオンは、水中または適切な緩衝液中の水溶液として試料に添加され、ここで、可溶性カルシウム塩は、例えば広範に中性pHであるHepes緩衝液中などで可溶性である。あるいは、カルシウム塩はまた、流体の試料中に直接溶解してもよい。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「可溶性リン酸塩」という用語は、リン酸陽イオン (PO
43-)、リン酸水素陽イオン (HPO
42-)、および/またはリン酸二水素陽イオン (H
2PO
4-) のうちの少なくとも1つを含む任意の可溶性塩を指す。例示的に、可溶性リン酸塩はリン酸水素ナトリウム(Na
2HPO
4) および/またはリン酸二水素ナトリウム (NaH
2PO
4) であってよい。好ましくは、可溶性リン酸塩は、水中または適切な緩衝液中の水溶液として試料に添加され、ここで、カルシウム陽イオンもまた、例えば広範に中性pHであるHepes緩衝液中などで可溶性である。あるいは、可溶性リン酸塩はまた、流体の試料中に直接溶解してもよい。
【0034】
実際に、可溶性カルシウム塩およびリン酸塩の使用濃度は、異なる試料間で相違が十分に観察可能である範囲内で選択される。したがって、カルシウムおよびリン酸の全濃度、すなわち固有のおよび添加されるカルシウムおよびリン酸の合計した濃度は、好ましくは、水中または緩衝液中のリン酸カルシウムの溶解度積を上回ってよい。一方、カルシウムおよびリン酸の該全濃度は、好ましくは、試料中に含まれる流体の沈澱阻害特性の最大能力を、5桁を超えて、4桁を超えて、3桁を超えて、2桁を超えて、または1桁を超えて上回るべきではない。好ましくは、試料と接触させる前の溶液中のリン酸カルシウム沈殿の形成を回避するために、カルシウムとリン酸は独立して試料に添加される。
【0035】
好ましくは、カルシウムおよびリン酸の濃度は、試料中で過飽和してよい。したがって、カルシウム x リン酸の積は試料中で過飽和している。
【0036】
流体ならびに可溶性カルシウム塩およびリン酸塩以外に、試料は、本方法を妨げない任意の他の無機および/または有機成分をさらに含み得る。試料は、Hepes緩衝液などの、本方法を妨げない緩衝液をさらに含み得る。pHは任意のpHに調整することができる。好ましくは、pHは、広範に中性pH、すなわちpH 5.5〜pH 8.0であってよく、より好ましくはpH 6.0〜pH 8.0、さらにより好ましくはpH 6.5〜pH 7.8、さらにより好ましくはpH 7.2〜pH 7.6、最も好ましくは生理的pH、すなわちおよそpH 7.4のpHであってよい。
【0037】
試料は、手動でまたは自動的に混合することができる。試料容量は、適用する検出法に依存してよく、典型的には小さなマイクロアレイ設定のためのナノリットル範囲から、例えば遠心分離またはカラムベースの方法などの巨視的アレイのためのミリリットル範囲までの間で変動する。
【0038】
試料は典型的に、それらの供給源から(例えば、患者からまたは技術的装置から)得られて直接、または数分もしくは数日以内に用いられる。試料が数時間を超えて貯蔵される場合には、試料は好ましくは室温でまたは冷蔵庫内で貯蔵され得る。あるいは、試料はまた凍結、急速凍結、または凍結乾燥状態で貯蔵されてもよく、その後例えば-20℃、-80℃、または液体窒素中などの、凝固点を下回る任意の温度で貯蔵され得る。凍結乾燥粉末はまた、周囲温度でも貯蔵され得る。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「インキュベートすること」という用語は、最も広い意味で、流体の試料をCPPの形成を可能にする条件に供することとして理解され得る。
【0040】
本明細書で用いられる場合、「CPPの形成を可能にする条件」という用語は、CPPが形成され得る任意の条件を指す。典型的に、該CPPは難溶性リン酸カルシウムを含み得る。
【0041】
好ましくは、試料は、広範に中性pHで、すなわちpH 5.5〜pH 8.0の条件で、より好ましくはpH 6.0〜pH 8.0、さらにより好ましくはpH 6.5〜pH 7.8、さらにより好ましくはpH 7.2〜pH 7.6で、最も好ましくは生理的pHで、すなわちおよそpH 7.4のpHでインキュベートされ得る。
【0042】
沈澱反応は典型的に温度感受性であるため、異なる試料を互いに比較するには、および/または較正曲線と比較するには、温度または温度プロファイルを同等の範囲内に設定する。最も好ましくは、試料は一定温度でインキュベートし、互いに比較される試料間の温度の差は、5℃未満、4℃未満、3℃未満、2℃未満、1℃未満、0.5℃未満、0.25℃未満、またはさらには0.1℃未満であるべきである。好ましくは、一定温度は、0℃〜100℃の範囲内、より好ましくは0℃〜45℃の範囲内、さらにより好ましくは4℃〜42℃の範囲内、さらにより好ましくは20℃〜40℃の範囲内、さらにより好ましくは36℃〜38℃の範囲内、さらにより好ましくは36.0℃〜37.5℃の範囲内、および最も好ましくは36.5℃〜37.0℃の範囲内であってよい。
【0043】
あるいは、温度は、温度プロファイルの形態で測定中に変動してよい。この温度プロファイルもまた、互いに比較される全試料において同等であってよい。
【0044】
本発明の文脈において用いられる場合、「カルシプロテイン粒子」、「カルシウムタンパク質粒子」、「石灰化タンパク質粒子」、および「CPP」という用語は、最も広い意味で、カルシウム陽イオンを含む任意の粒子として理解され得る。「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、本発明を通して互換的に理解され得る。本発明の文脈において、「粒子」、「ナノスフェア」、「沈澱物」、「コロイド」、および「凝集物」という用語は、互換的に理解され得る。CPPの形成の文脈において、粒子は好ましくは、試料溶液中の分子の蓄積によって形成される。好ましくは、CPP中では、カルシウム陽イオンが難溶性塩を形成する。例示的に、該難溶性塩はリン酸カルシウムおよび/またはその1つもしくは複数の複合体であってよい。任意に、該難溶性塩は、結晶、好ましくはナノメートルまたはマイクロメートル範囲、最も好ましくはナノメートル範囲の結晶を形成し得る。規則的な結晶構造は任意に、1つまたは複数のポリペプチドまたは他の分子の取り込みによって妨げられ得る。しかしながら、CPPは、例えば、カルシウムと相互作用し得る1つまたは複数のポリペプチド(例えば、フェチュインポリペプチド(例えば、フェチュインA)、アルブミンポリペプチド(例えば、血清アルブミン)、カルビンジン、S-100タンパク質、オステオカルシン、ビタミンD依存性カルシウム結合タンパク質、ラクトフェリン、ラクトフェリシン)、有機陰イオン(例えば、シュウ酸)、無機陰イオン(例えば、炭酸および/またはピロリン酸)、有機陽イオン、無機陽イオン(例えば、マグネシウムおよび/またはH
+イオン)、ビタミン(例えば、ビタミンD)、ホルモン(例えば、ステロイド、チロキシン)などの、流体中に見出されるおよび/または試料に添加された任意の他の無機または有機の分子および/またはイオンをさらに含み得る。CPPが一般的に好ましくは、カルシウム陰イオンおよび/またはカルシウム塩と相互作用する成分、ならびにカルシウム陰イオンおよび/またはカルシウム塩と相互作用する該成分と相互作用する他の成分を含み得ることが、当業者によって理解されるであろう。しかしながら、他の分子、特に疎水性分子もまた沈殿物中に蓄積し得る。
【0045】
本発明の文脈において、CPPは好ましくは固形または半固形粒子である。したがって、流体試料中でのCPPの形成は懸濁液をもたらす。CPPは任意のサイズを有し得る。好ましくは、CPPはナノメートルまたはマイクロメートル範囲のサイズを有する。この状況で用いられる場合、「サイズ」という用語は、沈殿物の平均直径を意味する。
【0046】
任意にCPPは、例えば、蛍光ポリペプチド(例えば、シアン蛍光タンパク質 (CFP)、緑色蛍光タンパク質 (GFP)、または黄色蛍光タンパク質 (YFP)、赤色蛍光タンパク質 (RFP)、mCherry等)、小分子色素(例えば、Cy色素(例えば、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy 7)、Alexa色素(例えば、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 750)、Visen色素(例えば、VivoTag680、VivoTag750)、S色素(例えば、S0387)、DyLightフルオロフォア(例えば、DyLight 750、DyLight 800)、IRDye(例えば、IRDye 680、IRDye 800)、フルオレセイン色素(例えば、フルオレセイン、カルボキシフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート (FITC))、ローダミン色素(例えば、ローダミン、テトラメチルローダミン (TAMRA))、またはHOECHST色素)、量子ドット、またはこれらの2つもしくはそれ以上の組み合わせを混合することにより、さらに蛍光染色され得る。しかしながら、好ましくは、CPPは蛍光染色されない。
【0047】
本発明のCPPは、その成分に応じて、広範に球状の粒子、紡錘形状粒子、不規則形状の粒子、または結晶状粒子であってよい。一次CPPは広範に球状であるのに対して(
図5A参照)、二次CPPは紡錘形状または不規則形状を有する(
図5B参照)。使用される方法に応じて、異なる形状は粒子の光散乱に影響を及ぼす場合もあれば、または及ぼさない場合もある。好ましくは、これは光散乱に影響を及ぼす。
【0048】
CPPの文脈において、当業者は一次CPPと二次CPPを識別する(Jahnen-Dechent et al, 2011参照)。一次CPPは二次CPPよりも直径が小さい。さらに、一次CPPは広範に球状形状を有するのに対して、二次CPPはむしろ不規則形状を有する。
【0049】
この文脈において、「一次カルシプロテイン粒子」および「一次CPP」という用語は、最も広い意味で、流体の試料に可溶性カルシウム塩および可溶性リン酸塩を添加してから数秒後または数分後という短い時間内に最初に形成される粒子として理解され得る。一次CPPの平均直径は100 nm未満である。好ましくは、一次CPPのサイズは50 nm〜100 nmの範囲内であり、最も典型的には約60 nm〜75 nmの範囲内である。しかしながら、サイズはまた、本方法で用いられる特定の濃度および条件に依存することが、当業者によって理解されるであろう。典型的には、タンパク質成分として、一次CPPは主にフェチュインAおよびアルブミンを含む。
【0050】
この文脈において、「二次カルシプロテイン粒子」および「二次CPP」という用語は、最も広い意味で、移行成熟段階における一次CPPの自発的移行により、インキュベーション時に形成される粒子として理解され得る。この段階はまた、タイミングを計りかつ協調的な様式で起こり得る。典型的に、この移行はまた粒径の増加を伴う (Wald et al., 2011)。この移行段階は、一次CPPの最初の形成よりもかなり長い時間を必要とし得る。当業者は、移行速度が反応条件に依存することを認めるであろう。典型的に、移行段階の広範な完全性は、数分、数時間、数日、数週間、またはさらには数カ月という範囲の時間を必要とし得る。移行段階の広範な完全性は、1分超、5分超、10分超、30分超、1時間超、2時間超、6時間超、12時間超、1日超、2日超、1週間超、1カ月超、6カ月超、またはさらには1年超を必要とし得る。二次CPPの平均直径は100 nmよりも大きい。典型的には、二次CPPは、100 nm〜500 nmの範囲内、最も典型的には約100 nm〜200 nmの範囲内のサイズを有する。しかしながら、サイズはまた、本方法で用いられる特定の濃度および条件に依存することが、当業者によって理解されるであろう。典型的には、タンパク質成分として、二次CPPは、フェチュインA、アルブミン、ならびにさらなる高分子量および低分子量成分を含む。好ましくは、これらのさらなるタンパク質成分は、5〜150 kDa、より好ましくは10〜100 kDaの分子量を有する。さらに、150 kDaよりも大きな分子量を有する高分子量複合体が存在してもよい。
【0051】
本発明の文脈において用いられる場合、「一次CPPの形成の速度」という用語は、最も広い意味で、経時的な流体中での一次CPPの生成の速度として理解され得る。これは例示的には、特定の流体または試料容量中の一次CPPの量として、一次CPPの容量として、または一次CPPの質量として定量され得る。典型的に、一次CPPは流体または試料中で最初に形成され、一次CPPの二次CPPへの移行により、消失し得るかまたは量が減少し得る。一次CPPの形成は典型的に、流体のカルシウム、リン酸、マグネシウム、および水素イオン濃度、ならびに石灰化阻害剤および促進剤の濃度に依存する。
【0052】
本発明の文脈において用いられる場合、「二次CPPの形成の速度」という用語は、最も広い意味で、経時的な流体中での二次CPPの生成の速度として理解され得る。これは例示的には、特定の流体または試料容量中の二次CPPの量として、二次CPPの容量として、または二次CPPの質量として定量され得る。典型的に、二次CPPは、一次CPPの二次CPPへの移行により形成される。一次CPPの形成と同様に、二次CPPの形成もまた典型的に、流体のカルシウム、リン酸、マグネシウム、および水素イオン濃度、ならびに石灰化阻害剤および促進剤の濃度に依存する。
【0053】
本発明の文脈において用いられる場合、「形成の速度を決定すること」という用語は、最も広い意味で、CPPの生成における変化の観察および定量として理解され得る。上記のように、CPPの形成は典型的に、溶液の濁度の増加を引き起こす。溶液の吸光度および溶液の光散乱特性は増加する。形成速度は、当技術分野で公知の任意の手段によって決定され得る。例示的には、これは、当技術分野で公知の任意の方法を用いて決定され得る。
【0054】
本発明の文脈において用いられる場合、「一次および/または二次CPPの量」という用語は、特定容量の流体もしくは試料中に含まれる一次および/もしくは二次CPPの数、特定容量の流体もしくは試料中に含まれる一次および/もしくは二次CPPの質量、または特定容量の流体もしくは試料中に含まれる一次および/もしくは二次CPPの容量を指す。特定容量中に含まれる一次および/または二次CPPの質量は、乾燥粒子の質量または溶液中の粒子の質量として決定され得る。
【0055】
一次CPPの二次CPPへの移行の文脈において用いられる場合、「移行」という用語は、最も広い意味で、インキュベーション時のカルシウム含有粒子、すなわちカルシプロテイン粒子 (CPP) の再構成、すなわちCPPの1つの型、すなわち一次CPPの、CPPの別の型、すなわち二次CPPへの変換として理解され得る。本明細書において、「移行」、「変換」、および「再構成」という用語は、互換的に理解され得る。移行はまた、移行成熟段階として理解され得る。この段階は、タイミングを計りかつ協調的な様式で起こり得る。典型的に、移行は粒径の増加を伴う。
【0056】
本発明の文脈において用いられる場合、「移行速度」という用語は、最も広い意味で、一次CPPのCPPへの移行の動力学として理解され得る。典型的に、移行速度は、一次CPPの二次CPPへの移行の最大半数移行時間 (T
50) の時点として定量される。本発明の文脈において、移行速度は好ましくは、マグネシウム (Mg
2+) の存在下で遅くなり、リン酸 (PO
43-、HPO
42-、H
2PO
4-) の存在下で加速されることが実証される(
図2A参照)。
【0057】
本発明の文脈において用いられる場合、「移行速度を決定すること」という用語は、最も広い意味で、CPPの平均サイズの変化の観察および定量として理解され得る。上記のように、本発明の文脈において、移行は典型的にCPPのサイズの増加を意味する。移行速度は、当技術分野で公知の任意の手段によって決定され得る。例示的には、これは、光学的方法(例えば、吸光度を測定すること、光散乱の変化を検出すること、レーザー回析および/または相関分光法において変化を検出すること)を用いて決定され得る。
【0058】
本発明の文脈において用いられる場合、「形成速度の増加」という用語は、最も広い意味で、一次および/または二次CPPのより速い形成が起こることとして理解され得る。
【0059】
本発明の文脈において用いられる場合、「量の増加」という用語は、最も広い意味で、一次および/または二次CPPの数、量、または容量がより多く出現することとして理解され得る。
【0060】
本発明の文脈において用いられる場合、「移行速度の増加」という用語は、最も広い意味で、一次CPPの二次CPPへのより速い移行が起こることとして理解され得る。この状況では、流体の試料について決定された移行速度T
50を、1つまたは複数の対照試料と比較することができる。
【0061】
本明細書で用いられる場合、「石灰化の傾向が高い」という用語は、最も広い意味で、流体が石灰化するより高い傾向が現れることとして理解され得る。したがって、石灰化の傾向が高い流体は、不溶性または難溶性カルシウム塩を沈澱させる傾向がより高い。よって、石灰化の傾向が高いこととはまた、石灰化が発生する可能性および/または石灰化の強度が増加することを意味する。
【0062】
好ましくは、本発明の方法の段階 (iii) は少なくとも、一次CPPの二次CPPへの移行の移行速度を決定すること(段階 (c))を含む。
【0063】
好ましい態様において、一次および/もしくは二次CPPの形成の速度、一次および/もしくは二次CPPの量、ならびに/または一次CPPの二次CPPへの移行の速度のうちの1つまたは複数を決定する段階(段階 (iii))は、光学的方法、特に、
吸光光度法、
光散乱の検出、
相関分光法、
またはこれらの2つもしくはそれ以上の組み合わせ
からなる群より選択される光学的方法によって行われる。
【0064】
本発明の文脈において用いられる場合、「光学的方法」という用語は、最も広い意味で、一次および二次CPPの検出、特徴決定、および/または定量に光が用いられる任意の方法として理解され得る。光学的方法は、例えば顕微鏡的方法などの視覚的方法であってよく、または例えば光散乱の検出もしくはレーザー回析もしくは相関分光法などの非視覚的方法であってもよい。
【0065】
本発明の文脈において用いられる場合、「吸光光度法」という用語は、最も広い意味で、本発明の流体の吸光度または吸光の決定として理解され得る。典型的に、溶液の吸光度は、一次および二次CPPの形成に際して、濁度が増加するために増加する。この濁度は、1つもしくは複数の較正試料との比較により肉眼によって評価することができ、または技術的装置によって測定することができる。一次CPPの二次CPPへの転換もまた、吸光度に影響を及ぼし得る。吸光光度法は、例えばキュベットを用いる光度計またはマイクロタイタープレート(例えば、96ウェルプレートまたは386ウェルプレート)を用いるプレートリーダーなどの、当技術分野で公知の任意の装置によって行うことができる。吸光光度法は、当技術分野において適切な任意の波長の光を用いて行うことができる。好ましくは、波長は、100 nm〜2000 nmの範囲内、より好ましくは200 nm〜1500 nmの範囲内、さらにより好ましくは250 nm〜1000 nmの範囲内、より好ましくは280 nm〜1000 nmの範囲内、より好ましくは300 nm〜900 nmの範囲内、より好ましくは400 nm〜800 nmの範囲内である。選択される波長が、キュベットまたはマイクロタイタープレートも、試料流体自体もが考慮すべき吸光度を示さない範囲内であることが好ましいことを、当業者は認識するであろう。
【0066】
本発明にわたって用いられる場合、励起光の波長は、特定の光源(例えば、特定のレーザー線を有するレーザー)の選択によって、1つもしくは複数のフィルター、1つもしくは複数の半透性鏡、および/もしくは1つもしくは複数の音響光学ビームスプリッターを通した励起光の伝導によって、ならびに/または1つもしくは複数のプリズムおよび/もしくは1つもしくは複数の光グリッドにより光を特定の波長に分割することによって、選択され得る。同様に、試料を通過した光も、1つまたは複数の特定の波長の検出を可能にするために、1つもしくは複数のフィルター、1つもしくは複数の半透性鏡、および/もしくは1つもしくは複数の音響光学ビームスプリッターを通して、ならびに/または1つもしくは複数のプリズムおよび/もしくは1つもしくは複数の光グリッドにより光を特定の波長に分割することによって、伝導され得る。
【0067】
光は、当技術分野で公知の任意の装置によって検出され得る。例示的に、検出器は、アバランシェフォトダイオード (APD)、光電子増倍管 (PMT)、および/またはダイオードアレイであってよい。ダイオードアレイは、4個を超える、10個を超える、100個を超える、1000個を超える、またはさらには10000個を超えるダイオードを含み得る。
【0068】
本発明の文脈において用いられる場合、「光散乱」という用語は、最も広い意味で、光が、散乱される伝播エネルギーの形態である、任意の形態の散乱として理解され得る。光散乱は、当業者によってよく知られている現象である。したがって、光散乱は、直線路からの光線の偏向であってよい。例示的に、これは伝播媒質中での不規則性によって誘発され得る。本発明の文脈において、該伝播媒質中での不規則性は好ましくは、試料中のCPP、および試料流体と該CPPとの間の界面によって引き起こされる。本発明の文脈において検出される散乱は主に、試料にわたるCPPのランダムでかつ高密度の分布による散漫散乱である。粒子の形状は、粒子の光散乱特性に影響を及ぼし得る。光散乱はさらに、散乱される光の波長に、したがって励起光の周波数に依存し得る。本明細書で用いられる場合、「励起光」および「入射光」という用語は互換的に理解され得る。
【0069】
本発明の文脈において用いられる場合、「光散乱の検出」という用語は、最も広い意味で、散乱光の同定、決定、および定量のための当技術分野で公知の任意の方法として理解され得る。典型的に、任意の光源の光の光線が試料に励起され、1つ、2つ、またはそれ以上の角度で照射光線に散乱された光が検出される。
【0070】
光散乱の検出は、当技術分野で公知の任意の方法によって行われ得る。例示的に、光散乱の検出は、レイリー散乱、ラマン散乱、ミー散乱、チンダル散乱、ブリルアン散乱の検出であってよい。好ましくは、光散乱は主にレイリー散乱である。
【0071】
本発明の文脈において、レイリー散乱とはCPPの粒子による光の弾性散乱であり、ここで、散乱光の波長は典型的に励起光の波長よりも小さい。レイリー散乱の強度は、粒子のサイズに依存する。典型的に、この強度は粒径の6乗に広範に比例し、かつ励起光の波長の4乗に広範に反比例する。用いられる励起光の波長は典型的に、400 nm未満、350未満、300 nm未満、250 nm未満、200 nm未満、またはさらには150 nm未満と同程度の短波長である。しかしながら、当業者は、実験設定に関して、他の波長もまた適用可能であり得ることを認めるであろう。
【0072】
ラマン散乱は当業者によってよく知られており、非弾性光散乱に基づき、ここで、光は、主に分子内振動および回転である光学フォノンと相互作用する。走査型モノクロメーターを使用する標準的分光計を用いて、ラマン散乱を測定することができる。ミー散乱は、球状粒子、特に、励起光の波長よりもはるかに大きい球状粒子による幅広いクラスの光の散乱である。散乱強度は一般に、波長に強く依存しないが、粒子サイズに感受性がある。大きな粒子のミー散乱強度は、粒径の2乗に広範に比例する。チンダル散乱は、粒子の球状形状への制限を除いて、ミー散乱と類似している。これは、本発明のコロイド懸濁液に特に適用可能である。ブリルアン散乱は、光子と、格子振動の振動量子である、固体における音響フォノンとの、または液体における弾性波との相互作用から生じる。
【0073】
より好ましくは、試料はレーザービームによって励起され、散乱光の検出は1つ、2つ、またはそれ以上の角度で測定される。より好ましくは、光散乱は比濁法によって測定される。
【0074】
前方散乱光(160°〜180°の角度で測定される)および/または側方散乱光(<160°の角度で測定される)を検出することができる。ここで、前方散乱光は、励起レーザービームを参照しておよそ1800°の角度で、励起レーザービームを参照しておよそ170°の角度で、または励起レーザービームを参照しておよそ160°の角度で光検出され得る。側方散乱光は、励起レーザービームを参照して任意の他の角度で光検出され得る。例示的に、側方散乱光は、およそ30°、40°、45°、70°、75°、および/または90°の角度で検出され得る。しかしながら、当業者は、本発明の文脈において任意の他の角度での検出もまた使用され得ることを認めるであろう。検出はまた、変動する角度で、すなわち本方法中に時間と共に変動する角度で行うこともできる。あるいは、検出はまた、同時に2つまたはそれ以上の異なる角度で行うこともできる。異なる角度での光散乱が測定される場合、これは動的光散乱と称され得る。励起は連続的励起であってよく、またはパルス励起であってもよく、ここで、励起時間はナノ秒、マイクロ秒、または秒の範囲内である。パルス励起は、任意の回数繰り返すことができる。測定は、1回または2回以上行うことができる。例示的に、測定は、2回、3回、4回、5回、10回、20回、30回、40回、50回、100回、150回、200回、250回、またはそれよりも頻繁に繰り返すことができる。例示的に、1つの測定サイクルは、1μs未満、およそ10μs、0.1 s,0.5 s,1.0 s,1.5 s、2 s、5 s、10 s、またはそれよりも長く持続し得る。
【0075】
波長およびレーザー強度は、試料に従って調整することができる。本明細書で用いられる場合、レーザー回析の検出は、光回析の検出に適切な当技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。一般に、光回析は量子理論に基づく。粒子と関連した波長は、ド・ブロイ波長:
粒子の運動量 (p) = [プランク定数 (h)]/[波長 (λ)]
である。ここで、ゆっくりと動く粒子については、粒子の運動量はその速度を乗じたその質量に相当する。
【0076】
本発明の文脈において用いられる場合、沈降技法は、最も広い意味で、本発明のCPPの沈降に基づく任意の方法として理解され得る。沈降技法は自然の重力のみに基づき得るか、または遠心力によって促進され得る。好ましくは、本発明の状況における沈降技法は、遠心力によって促進され得る。任意に、沈殿物の容量および/または重量を決定することができ、特に沈殿物と上清との容量比および/または重量比を決定することができる。あるいはおよび/または加えて、沈殿物の沈降定数を決定することもできる。あるいはおよび/または加えて、例えばショ糖勾配遠心分離により、沈殿物の重量密度を決定することもできる。
【0077】
上記の方法の2つまたはそれ以上を互いに組み合わせることができることが理解されるであろう。さらに、上記の方法の2つまたはそれ以上を1つまたは複数の光学的方法と組み合わせることができることもまた理解されるであろう。
【0078】
励起光は、当技術分野で公知の任意の光源であってよい。好ましくは、励起光はレーザービームまたはHgランプである。
【0079】
好ましい態様において、光学的方法で用いられる励起光はレーザービームである。
【0080】
本発明の文脈において用いられる場合、レーザーは当技術分野で公知の任意のレーザーであってよい。レーザーは典型的に、他の技術を用いて達成できない比較的高度の空間的および時間的コヒーレンスを示す。好ましくは、レーザー光はさらに単色性であり、および/または1つのレーザー線が放射に関して選択される。例示的に、レーザーはHeNeレーザーまたはアルゴンイオンレーザーであってよい。HeNeレーザーは典型的におよそ633 nmの波長の光を放射し、アルゴンイオンレーザーは典型的におよそ488 nmの波長の光を放射する。レーザー強度は、試料に対して調整することができる。比濁法に関して、レーザー強度は例示的には0.1〜1000 mWの範囲内、好ましくは1〜100 mWの範囲内、より好ましくは10〜50 mWの範囲内であってよい。
【0081】
さらに、レーザーによって放出される光および/または散乱光は、1つもしくは複数のフィルター、1つもしくは複数の半透性鏡、および/もしくは1つもしくは複数の音響光学ビームスプリッターを通して伝導されてよく、ならびに/または1つもしくは複数のプリズムおよび/もしくは1つもしくは複数の光グリッドにより特定の波長に分割されてもよい。光は、当技術分野で公知の任意の装置によって検出され得る。例示的に、検出器は、アバランシェフォトダイオード (APD)、光電子増倍管 (PMT)、および/またはダイオードアレイであってよい。ダイオードアレイは、4個を超える、10個を超える、100個を超える、1000個を超える、またはさらには10000個を超えるダイオードを含み得る。
【0082】
より好ましい態様において、光学的方法は、光散乱を検出することにより、好ましくは動的光散乱により、より好ましくは相互相関動的光散乱により、さらにより好ましくは三次元相互相関動的光散乱により、特に比濁法により行われる。
【0083】
本明細書で用いられる場合、光散乱を検出することは、静的光散乱を検出すること、または動的光散乱を検出することであってよい。好ましくは、光散乱を検出することは、動的光散乱を検出することである。
【0084】
本発明の文脈において用いられる場合、「動的光散乱」という用語は、物理学における技法として「光子相関分光法」および「準弾性光散乱」という用語と互換的に理解され得、これらは、散乱強度の時間依存的揺らぎの観察によって、溶液中の懸濁液中の小さな粒子のサイズ分布プロファイルを決定するために使用され得る。典型的に、これらの揺らぎは、溶液中の小分子はブラウン運動を起こしており、そのため溶液中での散乱体間の距離は時間と共に絶えず変化しており、結果的に周囲の粒子による建設的干渉と相殺的干渉が交互に生じるという事実によって起こる。この強度揺らぎ内で、散乱体の運動の時間スケールに関する情報が入手できる。
【0085】
動的光散乱は任意の型の光散乱に基づき得る。典型的に、この光散乱はレイリー散乱を含む。好ましくは、放射光はレーザーである。例示的に、動的光散乱は準弾性レーザー光散乱であってよい。次いで、粒子の動的情報が、実験中に記録された強度トレースの自己相関から導き出され得る。
【0086】
本発明の文脈において、「相互相関」という用語は、最も広い意味で、シグナル処理における2つの波形の類似性の尺度として理解され得る。これは、長期シグナルをより短い特性に関して探索するためによく用いられる。
【0087】
本明細書で用いられる場合、「三次元相互相関動的光散乱」、「3D相互相関動的光散乱」、および「3D動的光散乱」という用語は、互換的に理解され得る。
【0088】
本発明の文脈において用いられる場合、「比濁法」という用語は、最も広い意味で、小さい粒子の希薄懸濁液は、粒子を通過した光を単純に吸収するのではなくこれを散乱するという原理に基づいて、試料を通過する光の光強度をある角度で測定することにより、広範に水性の試料中の濁度を測定することによって行われる方法として理解され得る。比濁法は、手動で、または半自動化もしくは自動化様式で測定され得る。
【0089】
この文脈において、散乱光は、例えばおよそ30°、40°、45°、70°、75°、および/または90°などの任意の角度で測定され得る。より好ましくは、光は90°配置で検出される。典型的に、光源はレーザーである。試料について得られた結果は任意に、較正試料について得られた1つもしくは複数の値と比較することができ、または1つもしくは複数の検量線と比較することができる。
【0090】
比濁法はエンドポイント比濁法であってよく、または動的比濁法として経時的に測定され得る。本明細書で用いられる場合、エンドポイント比濁法とは、CPPのサイズの形成または再構成が広範に完了してよく、それ以上変化しないかまたはほとんど変化しないことを意味する。動的比濁法では、光散乱は経時的に測定される。典型的に、光散乱の測定は、カルシウムおよび/またはリン酸が添加された直後に開始され、しばらくの間継続される。動的比濁法により、粒子サイズ分布および平均粒子サイズの変化を経時的に観察することが可能になる。好ましくは、比濁法は、本発明の文脈において用いられる場合、動的比濁法である。試料の底に沈澱した可能性のある大きな粒子の検出を可能にするために、各測定の前に試料を任意に振盪または混合してもよい。試薬が一定である限り、変化の速度は、体液が石灰化する傾向の量と直接関連すると見なされ得る。
【0091】
光学的方法により、一次CPPの二次CPPへの移行の移行速度を決定する段階(段階 (iii))を行う代わりに、当技術分野で公知の任意の他の適切な方法によってこれを行ってもよい。好ましくは、このような方法は、試料中に存在する粒子の平均サイズまたは平均質量の検出に基づく。
【0092】
本発明の文脈において、一次および/もしくは二次CPPの形成の速度、一次および/もしくは二次CPPの量、ならびに/または一次CPPの二次CPPへの移行の速度のうちの1つまたは複数を決定する段階(段階 (iii))はまた、当技術分野で公知の任意の他の方法であってもよく、したがってまた非光学的方法、または2つもしくはそれ以上の非光学的方法の組み合わせ、または1つもしくは複数の光学的方法と1つもしくは複数の非光学的方法の組み合わせであってもよい。
【0093】
本発明の好ましい態様において、一次および/もしくは二次CPPの形成の速度、一次および/もしくは二次CPPの量、ならびに/または一次CPPの二次CPPへの移行の速度のうちの1つまたは複数を決定する段階(段階 (iii))は、
沈降技法、
濾過解析、
サイズ排除クロマトグラフィー、
粒度分析、
音響分光法、
またはこれらの2つもしくはそれ以上の組み合わせ
からなる群より選択される任意の方法によって行われる。
【0094】
本発明の文脈において用いられる場合、「沈降技法」という用語は、最も広い意味で、一次および/または二次CPPの沈着に基づいた任意の方法として理解され得る。好ましくは、一次CPPと二次CPPは異なる沈降定数を有し得、したがって異なる時点で沈降し得る。典型的に、二次CPPが最初に沈降し得る。本発明の沈降技法は重力のみに基づき得るか、または遠心力もまた含み得る。好ましくは、本発明の沈降技法は遠心力もまた含み得る。二次CPPおよび/または一次CPPを含むペレットが形成され得る。あるいはまたは加えて、平衡遠心分離(例えば、ショ糖勾配遠心分離)が使用され得る。ここで、一次CPPと二次CPPは、それらの異なる質量密度のために互いに分離され得る。一般に、分離された一次CPPおよび二次CPPは、それらの容量もしくは質量を決定することにより、または例えば顕微鏡法などの光学的方法によってこれらを観察することにより、さらに調査され得る。任意に、沈殿物の容量および/または重量を決定することができる。一次CPPの二次CPPへの移行の動力学プロファイルを観察するために、いくつかの試料を調査することができる。
【0095】
本明細書で用いられる場合、「顕微鏡的方法」は例示的に、光学顕微鏡法(例えば、明視野顕微鏡法)、蛍光顕微鏡法(例えば、(共焦点)レーザー走査型顕微鏡法 (LSM)、誘導放出抑制顕微鏡法(STED顕微鏡法))、電子顕微鏡法(例えば、走査型電子顕微鏡法 (SEM)、透過型電子顕微鏡法 (TEM)、走査型透過電子顕微鏡法 (STEM)、走査型トンネル顕微鏡法 (STM))、走査型ヘリウムイオン顕微鏡法 (SHIM)、走査型プローブ顕微鏡法 (SPM)、および/または原子間力顕微鏡法 (AFM)であってよい。
【0096】
本発明の文脈において用いられる場合、「濾過解析」という用語は、最も広い意味で、試料の分子および/または粒子ふるいに基づいた任意の方法として理解され得る。本明細書で用いられる場合、「ふるいにかけること」および「濾過すること」という用語は互換的に理解され得る。濾過することは、終端または連続的濾過であってよい。任意に、濾過はまた交差濾過であってもよい。粒子は、それらのサイズにより分離および/または単離され得る。好ましくは、フィルターは、一次CPPは通過させるが、二次CPPは停滞するサイズを有する。任意に、沈殿物の容量および/または重量を決定することができ、特に沈殿物と上清との容量比および/または重量比を決定することができる。
【0097】
本発明の文脈において用いられる場合、サイズ排除クロマトグラフィーは、最も広い意味で、本発明のCPPを体液の試料から分離するのに適した任意のクロマトグラフィー法として理解され得る。好ましくは、一次CPPと二次CPPは異なる溶出プロファイルを示す。サイズ排除クロマトグラフィーはまた、分子量クロマトグラフィーとも称され得る。任意に、沈殿物の容量および/または重量を決定することができ、特に特定の画分の容量比および/または重量比を決定することができる。
【0098】
本発明の文脈において用いられる場合、光学的粒度分析は、最も広い意味で、粒子サイズの光学的決定のための任意の方法として理解され得る。本発明の文脈において、光学的粒度分析は典型的に顕微鏡ベースの方法である。任意に、特定の構造を同定するため、ならびにサイズおよび数の点でこれらを特徴決定するおよび定量するために、好ましくは2値マスクに基づいたコンピュータ支援方法を用いることができる。当業者は、本発明の対応するマクロを適用する方法を知っているであろう。このマクロは、例えばJavaに基づいたオープンソースプログラムImageJによるなど、任意の適切なコンピュータプログラム上で実行され得る。
【0099】
本発明の文脈において用いられる場合、「音響分光法」という用語は、最も広い意味で、流体中に分散している粒子に関する情報を収集するために音を使用する任意の方法として理解され得る。本発明の文脈において、この音は典型的に超音波である。分散した粒子は、光と同様に超音波を吸収し、散乱させる。音響分光法は、散乱されたエネルギーを角度に対して測定すること、または伝達されたエネルギーを周波数に対して測定することに基づき得る。結果として得られた超音波減衰周波数スペクトルは、粒子サイズ分布を算出するための生データである。音響分光法の一例は、超音波減衰分光法である。粒子の平均サイズを決定することができる。
【0100】
さらに、本発明の段階 (iii) はまた、電気抵抗計数によって行われ得る。本発明の文脈において用いられる場合、電気抵抗計数は、最も広い意味で、試料の電気抵抗の変化を検出することに基づいた任意の方法として理解され得る。好ましくは、単一の粒子または数個の粒子のみが一度に通過できるサイズの細い針に試料を通す。電気抵抗計数の一例はコールターカウンターであり、これは、個々の非導電性粒子が通過する時に起こる、開口部を通過する液体の伝導率の瞬時の変化を測定する。粒子数はパルスを計数することによって得られ、サイズは各パルスのサイズに依存する。好ましくは、より大きな二次CPPの1つが通過すると、より小さな一次CPPの1つが通過するよりもより強いシグナルを示す。サイズの特定の閾値を設定することにより、一次および二次CPPの数を決定することができる。
【0101】
好ましくは、電気抵抗計数は電気化学的インピーダンス分光法 (EIS) である。本明細書で用いられる場合、「電気化学的インピーダンス分光法」、「EIS」、「インピーダンス分光法」、および「誘電分光法」という用語は、最も広い意味で、誘電率によって表される場合の多い、外部場と試料の電気双極子モーメントの相互作用に基づいて、周波数の関数として媒質の誘電特性を測定する方法として理解され得る。任意に、EISによって得られた入手データは、ボードプロットまたはナイキストプロットに図示され得る。
【0102】
上記の方法の2つまたはそれ以上を互いに組み合わせることができることが理解されるであろう。さらに、上記の非光学方法の2つまたはそれ以上を1つまたは複数の光学的方法と組み合わせることができることもまた理解されるであろう。
【0103】
好ましい態様では、少なくとも1つの光学的方法が電気抵抗計数と併用される。より好ましい態様では、光散乱に基づく方法が電気抵抗計数と併用される。さらにより好ましい態様では、動的光散乱に基づく方法が電気抵抗計数と併用される。最も好ましい態様では、比濁法が電気化学的インピーダンス分光法 (EIS) と併用される。これは任意の装置によって行われ得る。特に好ましくは、これは1つまたは複数のマイクロ流体デバイスによって行われる。
【0104】
好ましくは、使用される方法は、少なくとも1つの光学的方法および/または音響方法を含み得る。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも1つの光学的方法を含む。
【0105】
本発明の文脈において、流体は、石灰化を引き起こし得る任意の流体であってよい。流体は体液であってよく、または技術的流体であってもよい。
【0106】
好ましい態様において、流体は体液であり、特にここで、流体は血液、血液血漿、血液血清、リンパ液、および/または尿である。
【0107】
本明細書で用いられる場合、「体液」という用語は、最も広い意味で、例えば、血液、尿、脳脊髄液、リンパ液、唾液、および/または任意の腺からの1つもしくは複数の分泌液などの、身体から得られ得る任意の流体として理解され得る。「体液」という用語はまた、例えば血液血清または血液血漿といった、1つまたは複数の処理段階(例えば、遠心分離、濾過、交差濾過、沈澱、および/または生体液を分画するための任意の他の公知の方法)の後に身体から得られ得る任意の流体を含み得る。本明細書で用いられる場合、「血液血清」および「血清」という用語は互換的に理解され得る。同様に、「血液血漿」および「血漿」という用語は互換的に理解され得る。好ましくは、体液は血液、血液血漿、血液血清、またはリンパ液である。
【0108】
体液は典型的に、患者から得られて直接、または数分もしくは数日以内に用いられる。試料が数時間を超えて貯蔵される場合には、試料は好ましくは室温でまたは冷蔵庫内で貯蔵され得る。本発明の文脈において用いられる場合、「室温」および「周囲温度」という用語は互換的に理解され得る。あるいは、試料はまた凍結、急速凍結、または凍結乾燥状態で貯蔵されてもよく、その後例えば-20℃、-80℃、または液体窒素中などの、凝固点を下回る任意の温度で貯蔵され得る。凍結乾燥粉末はまた、周囲温度でも貯蔵され得る。患者から体液を得ることは典型的に、患者にとって健康上のリスクはなく、医療専門家ではない人、例えば在宅患者でさえ実施することができる。
【0109】
より好ましい態様において、流体は患者から得られた体液であり、好ましくはここで、該患者は石灰化を発症しており、かつ/または石灰化を発症するリスクがあり、特にここで、該患者は透析患者である。
【0110】
好ましくは、石灰化を発症した、および/または石灰化を発症するリスクがある患者は、石灰化プラークを発症している、および/または石灰化プラークを発症するリスクがある。しかしながら、石灰化はまた微小石灰化であってもよく、または溶液中のカルシウム沈澱、したがって、任意に一次および/もしくは二次CPPを含む任意のカルシウム沈殿物の形成であってよい。
【0111】
体液は患者から得ることができ、または保存試料から得ることができ、または人工体液であってよい。
【0112】
本明細書で用いられる場合、「患者から得られる」という用語は、最も広い意味で、任意の手段によって患者の身体から体液を受け取ることとして理解され得る。例示的に、血液は血管から採取することができ、リンパ液はリンパ管から採取することができ、脳脊髄液は脳脊髄管腔から得ることができ、ならびに/または尿および/もしくは汗を採取することもできる。体液をまたさらに処理することができることも理解されるであろう。例示的に、血液血漿または血液血清血液は、当技術分野で公知の任意の手段によって血液から抽出され得る。体液は本発明の方法で用いることができ、または1時間まで、2時間まで、6時間まで、12時間まで、1日までの間、もしくはさらにそれ以上長い間、適切な条件で貯蔵することもできる。1日を超えて貯蔵された体液の試料は、保存試料と称され得る。
【0113】
本明細書で用いられる場合、「保存試料」という用語は、最も広い意味で、1日を超えて、2日を超えて、1週間を超えて、2週間を超えて、1カ月を超えて、2カ月を超えて、6カ月を超えて、または1年を超えて貯蔵されている任意の試料として理解され得る。
【0114】
体液試料は純粋な体液として貯蔵することができ、または上記に詳細に要約されたように、試料の他の成分をさらに含む試料として貯蔵することもできる。一般に、体液に適したすべての貯蔵条件を用いることができる。例示的に、体液試料は、室温、4℃、-20℃、-80℃、または液体窒素中で貯蔵され得る。したがって、体液試料は液体または凍結状態で貯蔵され得る。あるいは、体液試料は凍結乾燥または乾燥状態で貯蔵され得る。保存試料は例示的に、血液保存物、血清もしくは血漿保存物、またはリンパ液保存物であってよい。
【0115】
患者は、健常患者、または石灰化の特別なリスクがある患者であってよい。好ましくは、患者は、石灰化プラークを発症する高い傾向を有する。この高い傾向は、先天的および/または後天的理由を有し得る。
【0116】
本発明の文脈において用いられる場合、「患者」という用語は、最も広い意味で、臨床症状が発生するかまたはしないかに関係なく、体液が得られ得る任意の対象または個体として理解され得る。患者は、ヒトを含む任意の動物であってよい。好ましくは、患者は哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0117】
石灰化プラークを発症した、および/または石灰化プラークを発症するリスクがある患者は健常であってよく、または石灰化の特別なリスクを有し得る。該患者は、例えば、筋緊張亢進、糖尿病、腎臓機能障害、またはリウマチ性疾患などの任意の臨床症状に苦しんでいても、またはいなくてもよい。例示的に、腎臓機能障害は慢性腎臓病 (CKD) であってよい。
【0118】
本明細書で用いられる場合、「身体」という用語は、最も広い意味で、任意の生物対象、または10年未満前、5年未満前、4年未満前、3年未満前、2年未満前、1年未満前、6カ月未満前、5カ月未満前、4カ月未満前、3カ月未満前、2カ月未満前、1カ月未満前、2週間未満前、1週間未満前、2日未満前、1日未満前、12時間未満前、6時間未満前、もしくは1時間未満前に生存していた対象として理解され得る。好ましくは、身体は、ヒトを含む任意の動物の身体である。動物は好ましくは脊椎動物であり、より好ましくは内温動物、さらにより好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0119】
任意に、石灰化の潜在的なまたは公知の阻害剤または促進剤である化合物を、体液に添加することができる。次に、特に該化合物を含む試料を、該阻害剤を含まない対応する試料と比較する場合に、石灰化を阻害するまたは促進する該化合物の能力を試験することができる。有利には、本発明の方法は、その天然状況における、すなわち体液中での該化合物の作用を特徴決定する可能性を提供する。石灰化の阻害剤は例示的に、フェチュイン(例えば、フェチュインA)およびアルブミン(例えば、血清アルブミン)である。インビトロでは、例えばエチレンジアミン四酢酸 (EDTA) などのキレート剤または固定化陽イオン交換体もまた、石灰化を阻害するために使用することができる。
【0120】
さらに、加えてまたはあるいは、石灰化を阻害するためにリン酸結合剤を使用することもできる。例示的に、一般的なリン酸結合剤は、水酸化アルミニウム(例えば、Alucaps)、炭酸カルシウム(例えば、Calcichew、Titralac)、酢酸カルシウム(例えば、Phosex、PhosLo)、炭酸ランタン(Fosrenol)、セベラマー(例えば、Renagel、Renvela)、および酢酸カルシウム/炭酸マグネシウム(例えば、Renepho、OsvaRen)を含む。
【0121】
体液はまた、1つまたは複数の成分を水溶液中に混合し、溶解させることによって得られた人工体液であってもよい。
【0122】
本明細書で用いられる場合、「透析患者」という用語は、最も広い意味で、失われたまたは限定された腎機能に対する人工代用物または支持物を必要とする任意の患者として理解され得る。透析患者は典型的に、石灰化プラークを発症する特別なリスクがある患者であることが理解されるであろう。
【0123】
別のより好ましい態様において、患者は、血管、弁、および/または軟部組織の石灰化を患っており、好ましくはここで、該患者はリウマチ性疾患、悪性疾患、および/または感染症をさらに患っており、特にここで、該患者は、
腎機能障害、
高血圧症、
真性糖尿病、
脂質異常症、
十分なミネラル化の欠如、特に骨粗鬆症および/または骨軟化症、ならびに
アテローム性動脈硬化症
からなる群より選択される症候群のうちの少なくとも1つを示す。
【0124】
本発明の文脈において用いられる場合、「リウマチ性疾患」という用語は、最も広い意味で、典型的には主に関節炎によって引き起こされる、関節および結合組織に影響を及ぼす任意の医学的問題として理解され得る。本明細書において、「リウマチ性疾患」、「リウマチ」、「リウマチ性障害」、および「リウマチ性疾患」という用語は互換的に理解され得る。リウマチ性疾患には、強皮症、線維筋痛症候群、強直性脊椎炎、滑液包炎、腱炎、手関節、関節包炎、変形性関節症、乾癬性関節炎、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、腱鞘炎、回帰性リウマチ、および筋炎が含まれ得るが、これらに限定され得ない。しかしながら、リウマチ性疾患にはまた非関節性リウマチ(例えば、局所疼痛症候群、軟部組織リウマチ)もまた含まれ得る。
【0125】
本発明の文脈において用いられる場合、「悪性疾患」という用語は、最も広い意味で、公知の任意の悪性障害として理解され得る。悪性疾患は、新生物、具体的には1つまたは複数の腫瘍をもたらす障害であってよい。悪性疾患はしたがって、癌を含む腫瘍退縮性障害であってよい。「癌」という用語は、最も広い意味で理解され得る。これは、原発および二次腫瘍、転移、ならびに他の種類の病的新生物の発生を含み得る。しかしながら、悪性疾患はまた、例えば、悪性高血圧症、悪性高熱、悪性外耳炎、悪性三日熱マラリア(典型的に熱帯熱マラリア原虫 (Plasmodium falciparum) によって引き起こされる)、または神経弛緩薬性悪性症候群などの非腫瘍性疾患であってもよい。
【0126】
感染症は、当技術分野で公知の任意の感染症であってよい。
【0127】
本明細書で用いられる場合、「症候群」という用語は、最も広い意味で、特定の疾患または障害の状況において起こる場合の多い、1つまたは複数のいくつかの臨床的に認識できる特性、徴候、症状、現象、および/または特徴の任意の関連性として理解され得、そのため1つまたは複数の特性の存在は疾患または障害の存在を示し得る。症候群は、医療専門家によって、すなわち医師によってもしくは看護師によって観察され得、および/または患者によって観察され、潜在的に報告され得る。
【0128】
本明細書で用いられる場合、「腎機能障害」という用語は、最も広い意味で、腎臓系、特に腎臓の任意の機能不全として理解され得る。例示的に、腎機能障害は慢性腎臓病 (CKD) であってよい。任意に、腎機能障害はまた腎症であってよい。本明細書で用いられる場合の「腎症」という用語は、一方または両方の腎臓の機能障害または非機能性を指す。
【0129】
本明細書で用いられる場合、「高血圧症」および「筋緊張亢進」という用語は、最も広い意味で、高血圧の状態として互換的に理解され得、当技術分野で周知である。
【0130】
本明細書で用いられる場合、「真性糖尿病」および「糖尿病」という用語は、最も広い意味で、血糖値の調節の不全を特徴とする障害の一群として理解され得る。これは、人が高血糖を有する代謝疾患の一群を含む。典型的に、真性糖尿病は、患者の身体が十分なインスリンを産生しない場合、および/または患者の体内の細胞が、産生されたインスリンに対して適切に反応しない場合に起こる。真性糖尿病は任意に、例えば、多尿症(頻尿)、多飲症(口渇感の増大)、および/または多食症(空腹感の増大)などの多くの臨床的および非臨床的症状をもたらし得る。
【0131】
本発明の文脈において用いられる場合、「脂質異常症 (dyslipidemia)」および「脂質異常症 (dyslipidaemia)」という用語は、最も広い意味で、血液中の異常な量の脂質(例えば、コレステロールおよび/またはトリグリセリド)を特徴とする任意の障害として互換的に理解され得る。
【0132】
本発明の文脈において用いられる場合、「骨粗鬆症」という用語は、最も広い意味で、骨ミネラル密度 (BMD) の減少、骨微細構造の悪化、ならびに/または骨中のタンパク質の量および多様性の変化を特徴とする障害として理解され得る。
【0133】
本発明の文脈において用いられる場合、「骨軟化症」という用語は、最も広い意味で、骨の軟化を特徴とする障害として理解され得る。これは、利用できるリンおよびカルシウムの不適切な量に続発する不完全な骨ミネラル化によって引き起こされ得、ならびに/または副甲状腺機能亢進症の結果としての骨からのカルシウムの過剰な再吸収によって引き起こされ得る。
【0134】
本明細書で用いられる場合、「アテローム性動脈硬化症」、「動脈硬化症」、「心血管アテローム性動脈硬化症」、「心血管動脈硬化症」、および「心血管プラーク」という用語は、最も広い意味で、血管内のプラークの沈着として互換的に理解され得る。プラークは、血管の管腔内に、または中型サイズの血管の壁の中間層(中膜)に沈着し得る。プラークは、他のミネラル、タンパク質、脂肪酸、トリグリセリド、コレステロール、低密度リポタンパク質 (LDL)、高密度リポタンパク質 (HDL)、および/または糖と組み合わせてカルシウム塩を含み得る。さらに、細胞、または例えばマクロファージ、赤血球 (RBC)、および血小板などの細胞断片も、プラークの一部となり得る。病的形態のアテローム性動脈硬化症はまた、動脈硬化性血管疾患または (ASVD) とも称され得る。心血管プラークは、筋緊張亢進、心筋梗塞、および脳卒中(卒中発作)などの多くの疾患のリスクを高め得る。石灰化の高度に明白な形態は、下肢などの四肢の切断の必要性をさらに招き得る。最も明白な形態のアテローム性動脈硬化症の1つは、メンケベルグアテローム性動脈硬化症である。「メンケベルグ (Monckeberg) アテローム性動脈硬化症」、「メンケベルグ (Monckeberg) アテローム性動脈硬化症」、および「中膜石灰化硬化症」という用語は、互換的に使用され得る。メンケベルグアテローム性動脈硬化症は、アテローム性動脈硬化症の最も重症な形態の1つである。ここでは、中型サイズの血管の壁の中間層(中膜)においてカルシウム沈着が生じるにつれて、血管は硬化する。本明細書で用いられる場合、アテローム性動脈硬化症はまた、カルシフィラキシス、血管石灰化の重症症候群、血栓症、および皮膚壊死を含み得る。
【0135】
好ましい態様において、流体は人工体液および/または輸液である。
【0136】
本明細書で用いられる場合、「人工体液」という用語は、最も広い意味で、当技術分野で公知の任意の体液のための任意の補足物として理解され得る。例示的に、これは血液代替物、血漿代替物、または血清血液代替物であってよい。例示的に、血液代替物には、パーフルオロカーボンベースの血液代替物(例えば、Oxygent (Alliance Pharmaceuticals)、Oxycyte (Oxygen Biotherapeutics)、PHER-02 (Sanguine Corp)、Perftoran)、ヘモグロビンベースの血液代替物(例えば、Hemopure (Biopure Corp)、Oxyglobin (Biopure Corp)、PolyHeme (Northfield Laboratories)、Hemospan (Sangart)、Dextran-Haemoglobin (Dextro-Sang Corp)、Hemotech (HemoBiotech))、Fluorasol-DA、HemAssist (Baxter International)、またはHemolink (Hemosol, Inc.)が含まれ得るが、これらに限定され得ない。さらに、血液代替物は幹細胞から得ることができ、ここで、幹細胞は好ましくはヒト胚性幹細胞ではない。その上、デンドリマー、生分解性ミセル、胎盤臍帯血、またはヘムエリトリンを用いて、血液代替物を得ることもできる。
【0137】
本明細書で用いられる場合、「輸液」という用語は、最も広い意味で、当技術分野で公知の注入に適した任意の溶液として理解され得る。例示的に、輸液は、等張電解質溶液、等張生理食塩水、等張完全電解質溶液、グルコース溶液、リンガー溶液、またはコロイド溶液であってよい。輸液は、1つまたは複数の薬学的活性薬剤、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに有し得ることが理解されるであろう。一般に、輸液は任意の薬学的に許容される成分を含んでよく、それは、荷電性または非荷電性、極性または非極性、高分子量分子または小分子であってよい。
【0138】
人工体液または輸液は、当技術分野で公知の石灰化のための任意の阻害剤または促進剤を含んでもよいし、または含まなくてもよいことが理解されるであろう。これは石灰化のための該阻害剤もしくは促進剤を天然で含んでよく、または石灰化の該阻害剤もしくは促進剤をこのような人工体液もしくは輸液に添加することもできる。典型的に、技術的流体は、当技術分野で公知の石灰化のための任意の阻害剤を含み得る。例示的に、このような石灰化阻害剤は、フェチュインポリペプチド(例えば、フェチュインA)およびアルブミン(例えば、血清アルブミン)、例えばエチレンジアミン四酢酸 (EDTA) などのキレート剤、固定化陽イオン交換体、またはリン酸結合剤(例えば、水酸化アルミニウム(例えば、Alucaps)、炭酸カルシウム(例えば、Calcichew、Titralac)、酢酸カルシウム(例えば、Phosex、PhosLo)、炭酸ランタン(Fosrenol)、セベラマー(例えば、Renagel、Renvela)、酢酸カルシウム/炭酸マグネシウム(例えば、Renepho、OsvaRen))であってよい。
【0139】
別の好ましい態様において、流体は技術的流体であり、好ましくはここで、該流体は水性流体であり、特にここで、該流体は、工業処理流体、洗濯剤または食器洗浄剤、石鹸泡、シャワーバス (shower bath)、入浴剤、冷却液、食料品を含むか、または食料品の生産のために使用することが目的とされる流体である。
【0140】
本明細書で用いられる場合、「技術的流体」という用語は、最も広い意味で、工業施設、食料品生産、および/または家庭内目的の状況で使用可能な任意の流体として理解され得る。工業施設での使用は、例えば、工業処理流体として、汎用クリーナーとして、水添加剤として(例えば、水軟化剤として)、または冷却剤としての使用であってよい。食料品生産のための使用は、調理、焼き、ロースト、揚げ、濃縮、とろみつけ、保存、乾燥、凍結乾燥、浸出、蒸留を含み得る。食料品には、飲料(例えば、水、ジュース、レモネード、浸出飲料(例えば、コーヒー、茶)、インスタント飲料(例えば、インスタントコーヒー、インスタント茶)、牛乳、ビール、ワイン、酒、強い酒)、食糧(例えば、パン製品(例えば、パン、ケーキ、ビスケット)、甘い菓子、果物、インスタント食品(例えば、ポケットスープ)が含まれ得るが、これらに限定され得ない。家庭内目的のための流体は、例示的に、洗濯剤、食器洗浄剤、石鹸泡、シャワーバス、トイレ洗浄剤、柔軟剤、リンス剤、含浸剤、浴室クリーナー、汎用クリーナー、水添加剤(例えば、水軟化剤)、または入浴剤であってよい。
【0141】
技術的流体は界面活性剤を含んでもまたは含まなくてもよく、洗濯物、皿、または他の家庭用物品を洗浄するために用いられてもまたは用いられなくてもよい。さらに、該流体はまた、家庭用洗浄剤、WC洗浄剤、水槽洗浄剤、または石灰化を防ぐもしくは促進することが当技術分野で公知の任意の他の水添加剤であってもよい。あるいは、技術的流体は、工業施設の状況で使用され得る。典型的に、技術的流体は、液体形態または乾燥形態のいずれかであるカルシウム塩を含む残存物の形態の石灰化を回避するよう意図される。このことは、細いチューブまたはパイプが使用される場合に特に重要であり得る。さらに、このことは、高硬度を有する水が使用される場合に特に重要であり得る。
【0142】
本発明の方法は、特定の温度プロファイルに従って変動温度で、または一定温度で行われ得る。
【0143】
本明細書で用いられる場合、「工業処理流体」という用語は、最も広い意味で、石灰化の傾向を有し得る、任意の工業処理で用いられる任意の流体として理解され得る。好ましくは、工業処理流体は工業処理水であってよい。本明細書で用いられる場合、「工業処理水」、「工業用水」、「処理用水」、「上水」、および「処理水」という用語は、互換的に理解され得る。例示的に、工業処理流体は、冷却液として、洗浄液として、脱塩するために、またはタービン(例えば、蒸気タービン)で用いられる流体として使用され得る。
【0144】
技術的流体は、当技術分野で公知の石灰化のための任意の阻害剤または促進剤を含んでもよいし、または含まなくてもよいことが理解されるであろう。これは石灰化のための該阻害剤もしくは促進剤を天然で含んでよく、または石灰化の該阻害剤もしくは促進剤をこのような技術的流体に添加することもできる。典型的に、技術的流体は、当技術分野で公知の石灰化のための任意の阻害剤を含み得る。例示的に、このような石灰化阻害剤は、フェチュインポリペプチド(例えば、フェチュインA)およびアルブミン(例えば、血清アルブミン)、例えばエチレンジアミン四酢酸 (EDTA) などのキレート剤、固定化陽イオン交換体、またはリン酸結合剤(例えば、水酸化アルミニウム(例えば、Alucaps)、炭酸カルシウム(例えば、Calcichew、Titralac)、酢酸カルシウム(例えば、Phosex、PhosLo)、炭酸ランタン(Fosrenol)、セベラマー(例えば、Renagel、Renvela)、酢酸カルシウム/炭酸マグネシウム(例えば、Renepho、OsvaRen))であってよい。
【0145】
好ましい態様において、該方法は一定温度および/または一定pHで行われる。
【0146】
本明細書で用いられる場合、「一定」という用語は、温度が本発明の方法の段階 (iii) 中に広範に同じままであることを意味する。最も好ましくは、互いに比較される試料間の温度の差は、5℃未満、4℃未満、3℃未満、2℃未満、1℃未満、0.5℃未満、0.25℃未満、またはさらには0.1℃未満であるべきである。好ましくは、一定温度は、0℃〜100℃の範囲内、より好ましくは0℃〜45℃の範囲内、さらにより好ましくは4℃〜42℃の範囲内、さらにより好ましくは20℃〜40℃の範囲内、さらにより好ましくは36℃〜38℃の範囲内、さらにより好ましくは36.0℃〜37.5℃の範囲内、および最も好ましくは36.5℃〜37.0℃の範囲内であってよい。任意に、使用される装置は温度センサーを含み得る。
【0147】
本明細書で用いられる場合、pH (potentia hydrogenii) は、当技術分野で共通して理解される通りに、すなわち流体中の水素イオン活量の負の常用対数として理解され得る。
【0148】
本明細書で用いられる場合、「一定」という用語は、pHが本発明の方法の段階 (iii) 中に広範に同じままであることを意味する。最も好ましくは、互いに比較される試料間のpHの差は、3 pH単位未満、2 pH単位未満、1 pH単位未満、0.8 pH単位未満、0.6 pH単位未満、0.4 pH単位未満、0.2 pH単位未満、0.1 pH単位未満、または0.05 pH単位未満未満であるべきである。pHは任意のpHに調整することができる。好ましくは、pHは、広範に中性pH、すなわちpH 5.5〜pH 8.0であってよく、より好ましくはpH 6.0〜pH 8.0、さらにより好ましくはpH 6.5〜pH 7.8、さらにより好ましくはpH 7.2〜pH 7.6、最も好ましくは生理的pH、すなわちおよそpH 7.4のpHであってよい。
【0149】
上記のように、試料は好ましくは流体試料である。本方法は、本発明の方法を行うのに適した任意の装置で行うことができる。担体の選択は特定の方法に依存することが理解されるであろう。例示的に、本方法は、1個もしくは複数個のキュベットを用いて、1枚もしくは複数枚の顕微鏡スライドガラスを用いて、マルチウェル形式を用いて、マイクロアレイを用いて、1本もしくは複数本のプラスチック反応チューブを用いて、1個もしくは複数個のガラスバイアルを用いて、クロマトグラフィーカラムを用いて、シリンジを用いて、針を用いて、またはこれらの2つもしくはそれ以上の組み合わせを用いて行うことができる。使用される装置の表面は、本方法を、したがって具体的には石灰化の傾向を妨げないかまたはほとんど妨げないべきであることが理解されるであろう。
【0150】
好ましい態様において、本方法は、
(a) マルチウェル形式、より好ましくは8ウェルチャンバープレート、16ウェルチャンバープレート、96ウェルマイクロタイタープレート、もしくは384ウェルマイクロタイタープレート、特に96ウェルマイクロタイタープレート;
(b) フロースルーセル;または
(c) マイクロ流体デバイス
のうちの1つで行われる。
【0151】
本明細書で用いられる場合、「フロースルーセル」という用語は、最も広い意味で、体液の試料を通過させ、そこで石灰化の傾向が判定される装置として理解され得る。ここで、流れは定常流であってよく、または測定のために中断されてもよい。
【0152】
本発明の方法から得られたデータは、手動で、半自動的に、または自動的に解析され得る。
【0153】
一般に、本方法はオフラインまたはオンラインで行われ得る。
【0154】
本明細書で用いられる場合、「オフライン」という用語は、最も広い意味で、第1段階で体液試料が提供され(例えば、患者の身体、保存試料、または技術的流体の試料)、本発明の方法の段階 (i) 〜 (iii) がその後行われる任意の方法として理解され得る。したがって、本方法はバッチ式で行われる。例示的に、透析患者から得られた体液の石灰化の傾向は、患者の血液循環が透析機と接続される前に、接続されている間に、接続された後にオフラインで診断され得る。以前に技術的装置で使用された、オフラインで測定される試料(例えば、冷却回路で使用された冷却液、または洗濯機での洗濯剤)についても、同様のことが当てはまると考えられる。
【0155】
本明細書で用いられる場合、「オンライン」という用語は、最も広い意味で、体液試料の提供と本発明の方法の段階 (i) 〜 (iii) が広範に同時に行われる任意の方法として理解され得る。その結果、体液は提供され、装置に通され、同時に測定される。ここで、流れは定常流であってよく、または測定のために中断されてもよい。任意に、体液は患者から直接抽出される。任意に、解析された体液またはその画分は、患者の身体に戻される。オンライン装置が任意に患者の体内に組み入れられることさえ可能である。技術的装置(例えば、冷却回路)からオンラインで測定される試料についても、同様のことが当てはまると考えられる。典型的に、オンライン測定は経時的な測定である。例示的に、透析患者から得られた体液の石灰化の傾向は、患者の血液循環が透析機と接続される時にオンラインで診断され得る。次いで、本発明の方法が自動的にまたは半自動的に行われ得る。透析機は、内在ユニットとしてまたは追加物として、本発明の方法を行う装置さえも含み得る。
【0156】
測定は経時的に行われてよく、またはエンドポイントでの測定であってもよい。好ましくは、測定は経時的な測定である。
【0157】
本発明の文脈において用いられる場合、「経時的に」という用語は、最も広い意味で、測定が1つの試料中で異なる時点で行われる任意の測定として理解され得る。経時的な測定はまた、動的測定とも称され得る。例示的に、経時的な測定は動的比濁法であってよい。当業者は、2つの測定間で選択される時間間隔が典型的に、粒子の形成および/または再構成の速度に依存することを認めるであろう。粒子の速い形成および/または再構成を決定するために、当業者は典型的に短い時間間隔を選択し、よりゆっくりとした過程については当業者は典型的により長い時間間隔を選択する。時間間隔は典型的に、数分〜数時間の範囲内であってよい。上記のように、速度は典型的に、挿入された濃度および希釈度に依存する。例示的に、測定は、数秒、数分、数時間、数日、またはさらには数週間という全時間にわたって行われ得る。好ましくは、経時的な測定の文脈において、測定は、カルシウムおよび/またはリン酸が添加された直後に開始される。試薬が一定である限り、変化の速度は、体液が石灰化する傾向の量と直接関連すると見なされ得る。試料の底に沈澱した可能性のある大きな粒子もまた検出するために、各測定の前に試料を任意に振盪または混合してもよい。
【0158】
本明細書で用いられる場合、「エンドポイント」という用語は、最も広い意味で、CPPのサイズの形成または再構成が広範に完了し、それ以上変化しないかまたはほとんど変化しない時点での測定として理解され得る。試料の底に沈澱した可能性のある大きな粒子もまた検出するために、各測定の前に試料を任意に振盪または混合してもよい。
【0159】
本発明の方法は、当技術分野で公知のこの方法に適した任意の原理によって行われ得る。一次CPPの二次CPPへの移行の移行速度を決定する段階(段階 (iii))は、当技術分野で公知の任意の方法によって行われ得る。好ましくは、このような方法は、試料中に存在する粒子の平均サイズまたは平均質量を検出することに基づく。
【0160】
本明細書で用いられる場合、「マイクロ流体デバイス」という用語は、最も広い意味で、任意の小型診断ツールとして理解され得る。マイクロ流体デバイスは、本発明の文脈において適している、当技術分野で公知の任意のマイクロ流体デバイスであってよい。マイクロアレイもまた、ラブオンチップとして理解され得る。典型的に、マイクロ流体デバイスは、例えば、スライドガラス、セラミックスライド、金属スライド、シリコン薄膜セル、プラスチックスライド、またはコンパクトディスク (CD) 形式などの固体基材上の二次元アレイである。本発明の光学的方法を可能にするために、マイクロ流体デバイスの少なくとも一部は好ましくは、本発明の方法に用いられる光に対して透過性であってよい。マイクロ流体デバイスは、1つまたは複数のマイクロ流体チャネルおよび/またはチャンバーを含み得る。これらのチャネルはまた、試料の混合に使用され得る。マイクロ流体デバイスにおいて、一次および/または二次CPPの形成、ならびに一次CPPの二次CPPへの移行の過程のうちの一方または両方が加速され得る。マイクロ流体デバイスはまた、フロースルーセルであってもよい。マイクロ流体デバイスはまた、特に流体が尿である状況において、診断用医療用尿試験紙であってもよい。
【0161】
本方法は、手動で行われ得るか、半自動化され得るか、または自動化され得る。
【0162】
好ましい態様において、少なくとも、一次および/もしくは二次CPPの形成の速度、一次および/もしくは二次CPPの量、ならびに/または一次CPPの二次CPPへの移行の速度のうちの1つまたは複数を決定する段階(段階 (iii))は自動化されており、より好ましくは、少なくとも、カルシプロテイン粒子 (CPP) の形成を可能にする条件で、前記試料をインキュベートする段階、および一次CPPの二次CPPへの移行の移行速度を決定する段階(段階 (ii) および (iii))は自動化されており、具体的には段階 (i)、(ii)、および (iii) のすべてが自動化されている。
【0163】
本発明の文脈において用いられる場合、「自動化される (automated)」および「自動化される (automatized)」という用語は、最も広い意味で、本方法の人手による作業の必要性を減らすための、任意の制御システムおよび/または情報技術、特にコンピュータ支援プロセスの使用として互換的に理解され得る。例示的に、本明細書で用いられる場合の自動化は、自動ピペットの使用および/またはコンピュータ支援読み取り方法を含み得る。任意に、自動化は、コンピュータ支援実験計画および/または得られたデータのコンピュータ支援解析さえも含み得る。得られた結果の図示もまた含まれ得る。
【0164】
好ましい態様において、一次CPPは100 nmよりも小さい平均直径を有し、二次CPPは100 nmよりも大きい平均直径を有する。
【0165】
より好ましくは、一次CPPのサイズは50 nm〜100 nmの範囲内であり、より好ましくは約60 nm〜75 nmの範囲内である。二次CPPはより好ましくは、100 nm〜500 nmの範囲内、最も典型的には約100 nm〜200 nmの範囲内のサイズを有し得る。しかしながら、上記のように、一次CPPのサイズおよび二次CPPのサイズは典型的に、本方法で用いられる特定の濃度および条件に依存することが、当業者によって理解されるであろう。
【0166】
体液に関して決定される、一次CPPの二次CPPへの移行の移行速度は、異なる体液試料を互いに比較することにより解析することができ、または1つもしくは複数の較正試料と比較することができる。
【0167】
好ましい態様において、段階 (iii) の一次および/もしくは二次CPPの形成の速度を決定すること (a)、一次および/もしくは二次CPPの量を決定すること (b)、ならびに/または一次CPPの二次CPPへの移行の速度を決定すること (c) のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数の対照試料と比較される。
【0168】
本発明の文脈において用いられる場合、「対照試料」という用語は、最も広い意味で、参照試料として使用可能な任意の試料として理解され得る。本明細書で用いられる場合、「対照試料」および「較正試料」という用語は互換的に理解され得る。対照試料は標準化試料(例えば、公知の特性を備えた試料)であってよく、または内部対照、すなわち試験された試料のうちの1つであってもよい。典型的に、広範に同一の反応条件(例えば、広範に同じ温度で、広範に同じ緩衝液で、広範に同じpHで、可溶性カルシウム塩および可溶性リン酸塩の広範に同じ濃度で測定される)、および広範に同一の方法の使用において、対照試料はまた広範に同一の結果を示す。問題の試料および対照試料の石灰化の傾向は、アッセイで(例えば、1枚のマイクロタイタープレート上で、または1枚のマイクロ流体デバイス上で)同時に測定することができ、同じ日に続いて(例えば、キュベット中で)測定することができ、または異なる日に測定することさえできる(例えば、石灰化の傾向を判定するために使用される装置は、対照試料によって較正されているか、または後に対照試料によって較正される)。
【0169】
対照試料の使用により、測定の標準化がもたらされ得、したがって、得られた結果は、測定が同様に実施されるその装置におけるこの対照試料と比較され、この対照試料に対して照会されるため、本方法は装置非依存的となる。次に、対照試料に対する変化として、変化を定量することができる。較正試料は1つもしくは複数の体液を含んでよく、または人工試料であってもよい。任意に、人工試料は、例えばフェチュインポリペプチド(例えば、フェチュインA)またはアルブミンポリペプチド(例えば、血清アルブミン)などの、一次CPPの二次CPPへの移行の阻害剤の既定濃度を有し得る。
【0170】
流体が体液である場合、本発明の状況における対照試料は好ましくは、健常患者から得られた試料であってよい。流体が技術的流体、人工体液、または輸液である場合、本発明の状況における対照試料は好ましくは、許容される石灰化傾向を有する試料であってよい。石灰化の傾向が、対照試料について得られたものよりもかなり高い場合、このことは、石灰化の傾向が望ましくなく高いこと、およびさらなる行為(例えば、石灰化阻害剤の投与または使用)が任意に所望され得ることを示し得る。石灰化の傾向が、対照試料について得られたものよりもかなり低い場合、このことは、石灰化の傾向が望ましくなく低いこと、およびさらなる行為(例えば、石灰化促進剤、カルシウム、および/またはリン酸の投与または使用)が任意に所望され得ることを示し得る。
【0171】
本発明の任意の方法から得られたデータは、当技術分野で公知の任意の手段によって解析することができる。
【0172】
好ましい態様において、段階 (iii) の一次CPPの二次CPPへの移行の速度を決定すること (c) は、一次CPPの二次CPPへの移行の最大半数移行時間 (T
50) の時点を決定することにより決定される。
【0173】
本発明の文脈において用いられる場合、「最大半数移行時間」または「T
50」という用語は、最も広い意味で、一次CPPの二次CPPへの移行の半分(50%移行)が達成される時点として理解され得る。T
50の次元は時間であり、したがって、秒(sまたはsec)、分 (min)、時間 (h)、日 (d)、週 (w)、月、また年 (a) という単位で示される。最も典型的には、T
50は分で示される。
【0174】
T
50値は、試料の測定された光散乱(例えば、相対的比濁単位 (RNU) で示される)を時間(例えば、[分]で示される)に対してプロットすることにより、例示的にはXYグラフをプロットすることにより、決定され得る(
図1B参照)。プロットされたデータは、非線形回帰(例えば、log(アゴニスト) 対 反応‐可変勾配で示される)によって適合化され得る。次に、一次CPPのみが存在する試料における光散乱を、二次CPPのみが存在する試料における光散乱と共に決定する。光散乱間の算術平均を算出する。最後に、全光散乱がこのような算術平均を表す時点 (T
50) を決定する。この文脈において、T
50値はまたRNU
T50値とも称され得る。
【0175】
本発明の方法は任意に、当技術分野で周知のストークス・アインシュタイン式による二次キュムラント適合からの流体力学半径 (Rh) の算出をさらに含み得る。したがって、T
50値はまた、試料中のCPPの平均直径サイズ(例えば、[nm]で示される)を時間(例えば、[分]で示される)に対してプロットすることにより、例示的にはXYグラフをプロットすることにより、決定され得る(
図1A参照)。プロットされたデータは、非線形回帰(例えば、log(アゴニスト) 対 反応‐可変勾配で示される)によって適合化され得る。次に、一次CPPの平均粒子サイズおよび二次CPPの平均粒子サイズを決定する。一次CPPの平均粒子サイズと二次CPPの平均粒子サイズの算術平均を算出する。最後に、全CPPの平均粒子サイズがこのような算術平均を表す時点 (T
50) を決定する。
【0176】
データをプロットすること、データを適合化させること、および/またはT
50(またはRNU
T50)値を算出することは、手動で行うことができ、またはコンピュータ支援方法によって行うこともできる。コンピュータ支援方法は、任意の適切なプログラムによって、例えばExcel(登録商標)および/またはGraphPad Prism(登録商標)によって行われ得る。
【0177】
本発明の方法は、科学的目的、工業目的、および/または臨床目的のために行うことができる。例示的には、これを用いて、患者における石灰化の傾向の先天的および/または後天的傾向の間の相互作用に関するさらなる情報を得ることができる。さらに、本方法を用いて、石灰化阻害剤および促進剤を同定し、特徴決定することもできる。石灰化に及ぼすそれらの影響を判定するために、本方法を化合物の一次および/または二次スクリーニングに使用することさえもできる。このスクリーニングは、無細胞スクリーニングおよび任意にハイスループットスクリーニングであってよい。
【0178】
石灰化阻害剤および促進剤を同定し、特徴決定する状況において、阻害剤または促進剤は患者に投与され得るか、またはインビトロで体液と混合され得る。阻害剤または促進剤が患者に投与され得る場合には、一定時間の後に、該患者からの試料を得て、本発明の方法により試験する。阻害剤または促進剤がインビトロで体液と混合される場合には、阻害剤または促進剤を混合した後に試料を一定時間インキュベートし、本発明の方法を実施する。
【0179】
本発明の方法は、未知の石灰化阻害剤および促進剤を同定するため、ならびに既知の特徴決定された石灰化阻害剤および促進剤をより詳細に試験するために役立ち得る。さらに、異なる1つもしくは複数の阻害剤および/または1つもしくは複数の促進剤の間の相互作用を調査することもできる。阻害剤および促進剤は、患者において、または医学的産物もしくは組成物(例えば、医療機器の表面における血液保存物)中で活性のある化合物であってよい。あるいは、阻害剤または促進剤はまた、非医学的内容物中で活性のある化合物であってもよい。例示的に、石灰化の阻害剤は、消費物品(例えば、洗濯剤、食器洗浄剤、家庭用洗浄剤、トイレ洗浄剤、水槽洗浄剤等)および水添加剤中に使用され得る。
【0180】
その上、本発明の方法はまた、石灰化を発症する患者のリスクを判定するために用いることもできる。その結果、医師および/または医療スタッフは、石灰化阻害剤で患者を治療すべきかどうか、およびどのように治療すべきかに関するさらなる情報を得ることができ、よって情報に基づいて治療法を決定することができる。
【0181】
添付の図面および以下の実施例は、本発明を説明するが、添付の特許請求の範囲によって付与される保護範囲を限定しないように意図される。
【実施例】
【0183】
方法
血清標本のサンプリングおよび調製
健常ボランティア8名からの静脈血をSarstedt Monovette(登録商標)バイアル中に採取した。30分間の凝固の後、試料を室温で3,000 x gで10分間遠心分離した。全個体からの血清をプールし、一定量に分割した。10〜16週齢のDBA/2フェチュインAノックアウトマウス、ヘテロ接合性マウス、および野生型マウス(Schafer et al, 2003;Jahnen-Dechent et al, 1997)からの血液を、屠殺時に心臓からサンプリングした。
【0184】
尿毒症および血管石灰化を誘導するために、0.75%アデニン、およびカルシウム1.05%、リン0.8%、タンパク質18.5%を補充した飼料を4週間与えた雄ウィスターラット(Charles River、Sulzfeld, Germany)からの血液を、16週齢の時点で屠殺時に下大静脈から採取した (Pasch et al, 2008)。同様に、通常 (0.9%) 生理食塩水中のチオ硫酸ナトリウム(0.4 g/kg体重)で6週間にわたり週に3回腹腔内より処置した、同じ齢および性別の健常、非尿毒症、非石灰化ラットから、対照血液を採取した。注目すべきは、チオ硫酸ナトリウム (Na
2S
2O
3) は、40 mMまでの量で血清に添加した場合、本アッセイ法にいかなる影響も及ぼさなかった。
【0185】
室温での凝固の後、ヒト、マウス、またはラットからの血液試料を室温で3,000 x gで10分間遠心して、血液細胞から血清を分離した。血清を液体窒素中で衝撃凍結し、-80℃で貯蔵した。比濁計アッセイ法で使用する前に、試料を融解し、試料の凍結および融解中に形成した可能性があり(凍結沈殿物)、沈澱加速核を提供することによって本アッセイ法を妨げる恐れのある潜在的小粒子を除去するために、室温で10,000 x gで30分間遠心分離した。
【0186】
装置、プラスチック材料、および化学物質
Nephelostar(登録商標)比濁計はbmg labtech、Offenburg, Germanyから購入し、Liquidator96(商標)卓上ピペッティングシステムはMettler Toledo GmbH、Giessen, Germanyから購入した。96ウェルプレートはBrand GmbH、Wertheim, Germany製であり、96ウェルプラスチックカバーはCarl Roth GmbH、Karlsruhe, Germany製であった。化学物質(例えば、NaCI、Hepes、CaCl
2、NaH
2P0
4、Na
2HP0
4、およびNaOH)はすべて、「解析支持 (pro analysi)」等級の品質で、AppliChem、Darmstadt, Germanyから購入した。
【0187】
タンパク質定量
溶液中のタンパク質を定量するには、Pierce BCAタンパク質アッセイキットを製造業者の説明書に従って使用した。BSA(2 mg/ml、Pierce)を標準物質として使用した。ウェスタンブロットは、レーン当たり1 mgのタンパク質または0.4 mgの純粋フェチュインAまたはアルブミンを負荷して、SDS-PAGE(4%〜12%)を用いて標準的プロトコールに従って行った。フェチュインAおよびアルブミンに対する以下の一次抗体を使用した:ポリクローナルウサギ抗ヒトフェチュインA抗血清5359(Behring AG、Marburg, Germany)およびマウス抗ヒトアルブミン(1:2500、カタログ番号0300-0080;AbD Serotec)。蛍光検出のために、以下の西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体を使用した:ブタ抗ウサギIgG(1:5000、カタログ番号P0217;Dako)およびウサギ抗マウスIgG(1:2000、カタログ番号P0260;Dako)。タンパク質染色は、Imperial Protein Stainを用いて製造業者の説明書 (Thermo Scientific) に従って行った;レーン当たり6.0 mgの全タンパク質または2.5 mgの純粋フェチュインAもしくはアルブミンを負荷した。
【0188】
三次元相互相関動的光散乱 (3D-DLS)
高粒子密度を有する溶液中の多重散乱は、標準的な動的光散乱法による特徴決定を妨げる。したがって、本発明者らは、混濁CPP試料を解析するために、3D相互相関動的光散乱 (3D-DLS) 設定を使用した。He-Neレーザー(JDS Uniphase、Koheras GmbH、632.8 nm、25 mW、Type LGTC 685-35)、2つのアバランシェフォトダイオード(Perkin Eimer、Type SPCM-AQR- 13- FC)、およびALV 5000相関器を備えた標準的な光散乱装置(ALV GmbH、Langen, Germany)を用いて、50〜52回の測定を行った。光散乱は90°配置で検出した。試料温度は、Pt-100温度センサーを備えた外部サーモスタットにより調整した。ストークス・アインシュタイン式による二次キュムラント適合から、流体力学半径 Rhを算出した。測定は、2分間隔で1400分の期間に及んだ。以前のTEM調査から、成熟した二次CPPが、およそb/a z 0.3の軸比を有する楕円形状であることが明らかになった。明確にするために、本発明者らは、個々のCPP段階を特徴決定するために、半軸ではなく、流体力学半径を算出した。
【0189】
比濁計アッセイ法
三次元相互相関動的光散乱 (3D-DLS) は、溶液中のレーザー散乱を検出し、これらのデータを統合して、粒子サイズの発達に関する経時的な情報をもたらす方法である。
【0190】
保存溶液:1. NaCl溶液:NaCl 140 mM、2. カルシウム溶液:CaCl
2 40 mM + Hepes 100 mM + NaCI 140 mM、NaOH 10 mMでpHを37℃で7.40に調整、3. リン酸溶液:Na
2HP0
4 19.44 mM + NaH
2P0
4 4.56 mM + Hepes 100 mM + NaCI 140 mM、NaOH 10 mMでpHを37℃で7.40に調整。96ウェルプレートの調製:溶液はすべて恒温室で34.5℃に予め温め、ここではまた、全ピペッティング段階を、すべてのピペッティング段階のために1組の新しいピペッティングチップを用いてliquidator96(商標)卓上ピペッティングシステムで行った。これらのピペッティング段階は、以下の順序で行った:1. NaCl溶液:20μl/ウェル、2. 血清80μl/ウェル、3. 振盪1分間、4. リン酸溶液50μl/ウェル、5. 振盪1分間、6. カルシウム溶液50μl/ウェル、振盪1分間。ウェル内の気泡をポケットライターで崩壊させ、96ウェルをマイクロプレート用のThinSeal(商標)粘着シーリングフィルムで覆った。96ウェルプレートの列「A」は信頼性のない結果を示す場合が多いため、これは概して除外した。アッセイ条件およびnephelostar(登録商標)設定:装置の内部放射をオフにして、34.5℃の恒温室内で測定。これにより、36.5℃〜37℃の内部測定温度がもたらされた。nephelostar(登録商標)は、ウィンドウズコンピュータプラットフォーム上でNephelostar供給業者のGalaxyソフトウェアにより操作および制御された。アッセイは、水平方向プレート読み取りモードでウェルあたり1.5秒の測定時間および0.1秒の位置遅延の200サイクルで行い、本発明者らの標準的アッセイ法について合計で180秒/サイクルのサイクル時間になった。これにより、アッセイ当たり合計で10時間の総アッセイ実行時間になった。いくつかの測定では、サイクル時間は360秒または540秒まで延長され、これによりそれぞれ合計で20時間および30時間のアッセイ時間になった。ゲインおよびレーザー調整は90%必要値に設定し、レーザービーム焦点1.5 mmおよびレーザー強度50%でゲイン50とした。
【0191】
データ処理
実行の完了後、データはExcel(登録商標)に転送され、行から列に置き換えられた。データ列はGraphPad Prism(登録商標)プログラムにコピーされ、XYグラフが作成された。データは次に、「ロバスト適合」適合化法を用いて「log(アゴニスト) 対 反応‐可変勾配(4パラメータ)」モードで非線形回帰を算出することにより処理された。結果としてT
50およびRNU
T50に関して得られた値は、必要に応じてさらに処理された。
【0192】
結果
ここで、本発明者らは、フェチュインA溶液の代わりにヒト血清が使用された場合にも、一次CPPが同様に生成されるかどうかを試験した(
図1A、下部)。実際に、いずれの場合にも同等のサイズ(直径約50 nm)の一次CPPが生成され、これらは全く異なる時間枠内であるにもかかわらず二次CPP(直径約150 nm)への自発的移行を起こした(
図1A)。これらの極めて異なる移行時間を考えて、本発明者らは、移行の遅れは一次CPPの安定性を反映し得る、およびこの段階を測定することにより、血清に固有の石灰化阻害傾向の定量的推定が提供され得ると推測した。
【0193】
3D-DLSは広く利用できず、1日に1試料しか測定することができないため、本発明者らは、言及した移行段階を検出するための実際的でかつ幅広く適用可能な別のアッセイ法を確立することを目的とした。比濁法はDLSと同じ原理に基づいており、混濁溶液中のレーザー光散乱の量を定量する。その結果として、移行はまた比濁法によっても検出可能であり(
図1B)、肉眼でさえも見えることは注目すべきである(
図1C)。
【0194】
比濁計ベースのアッセイ法を確立するために、本発明者らは自動化レーザーベースマイクロプレート比濁計nephelostar(登録商標)を利用し、これを96ウェルプレートモードで実行した。得られたデータをExcel(登録商標)およびGraphPad prism(登録商標)ソフトウェアを用いて解析して、非線形回帰曲線をもたらし、最大半数移行時間(T
50、
図1A)およびこの時点における相対的比濁単位(RNU
T50、
図1B)の得られた値を決定した。
【0195】
本発明者らは温度(37℃)およびpH(37℃で7.40)について生理的条件を選択し、このアッセイ法をウェルあたり200μlの最終容量用に設計した。このような200μlは、20μl NaCl 140 mM、80μl 血清、50μlリン酸 24 mM、および50μlカルシウム 40 mM溶液からなり、これらはこの順序で混合した。リン酸溶液およびカルシウム溶液にはNaCl 140 mMおよびHepes 100 mMを補充し、pHを37℃で7.40に調整した。この混合によって、以下に示されるような最終濃度が生じた:
pH 7.40および37℃において
Ca
2+:10 mM
PO
42-:6 mM
NaCl:140 mM
Hepes:50mM
【0196】
20μl NaClは、添加実験に使用可能な追加容量として導入した。広範囲のカルシウム濃度およびリン酸濃度を体系的に試験し(
図2A)、以下の3つの理由から、カルシウム10 mM(すなわち、保存溶液中40 mM)およびリン酸6 mM(すなわち、保存溶液中24 mM)という最終濃度を本発明者らのアッセイ法において最終的に選択した:(i) 移行が、あらゆる方向に変化するための空間を残して、時間およびRNU座標系の中央の位置で起こった、(ii) これらの濃度は、ヒドロキシルアパタイトの形成に関してカルシウムとリン酸の数値的に最適な関係を示す、(iii) CPPを調査する本発明者らの以前の実験が、これらの濃度を用いて行われた。
【0197】
残念ながら、アッセイ法を標準化するための最初の試みは、所与の96ウェルプレート内でさえ莫大な変動を示し(
図3A)、移行段階が、pHのわずかな変動(
図2C)および使用血清量(
図2D)に対して敏感である、極めて敏感な生理化学的過程であることが示された。
【0198】
アッセイ法の安定化(
図3B)は、3つの重要な修正を導入することによって達成された:(i) Nephelostar(登録商標)の内部放射器をオフにして特別な恒温室内でアッセイを実行することにより、アッセイ温度を安定化した、(ii) マルチチャネルピペットの代わりに高精度96ウェルピペッティング装置(Liquidator96(商標))を使用することにより、ピペッティング容量を安定化した、および (iii) より温度感受性の高いTris緩衝液の代わりにHepesを使用することにより(
図2B)、試験の温度感受性を軽減した。これらの条件下で、アッセイ法は安定しており、高度に再現性のある結果をもたらし(
図3B)、本発明者らの技能で日中のばらつきは+/- 5.2%および日間のばらつきは+/- 11.6%であった。
【0199】
アッセイ結果とインビボでの石灰化との相関関係を確認するために、本発明者らはフェチュインAノックアウトマウス (ko)、ヘテロ接合性マウス (het)、および野生型マウス (wt) の血清を比較し(
図4A、B、およびC)、ヘテロ接合性マウスおよび野生型マウスと比較した場合にノックアウトマウス (ko) 由来の血清中ではT
50がより短いことを見出した。石灰化尿毒症ラット由来の血清と健常非石灰化ラット由来の血清を比較した場合にも、同様のパターンが認められた(
図4DおよびE)。ここでもやはり、移行 (T
50) は非石灰化動物よりも石灰化動物においてより早く起こった。
【0200】
本発明者らはまた、健常ボランティアおよび血液透析患者由来の血清を試験した。この場合もやはり、試験によって、石灰化易発性個体と非石灰化易発性個体(すなわち、血液透析患者と健常ボランティア)が識別され(
図4F)、この試験が血清中の石灰化傾向を反映することが示された。
【0201】
これらの結果から、ここで示される比濁計アッセイ法が、内因性の血清関連石灰化傾向の推定を提供することが確認される。
【0202】
本発明の試験は、Ca (10 mM) およびリン酸 (6 mM)を添加することにより、血清の過飽和度を増加させる。過飽和の特異的影響は、所与の血清中のフェチュインA、アルブミン、リン酸等の固有の濃度に依存する。一般的な法則として、カルシウムおよびリン酸過飽和度が高いほど、T
50は低くなり、RNU
50は高くなる。これは、同様にHD患者および健常ボランティア由来の血清に当てはまる。RNU
50は、リン酸のいくらかの寄与と共に、CPPのタンパク質内容物(フェチュインA、アルブミン)に大きく依存する。T
50は、フェチュインAおよびアルブミンのいくらかの寄与と共に、Mgおよびリン酸に大きく依存する。したがって、低いT
50は高いRNU
50と関連している場合が多く、逆もまた同様である。しかしながら、両変数が異なる‐しかし重複している‐決定因子に依存するという理由で、普遍的なRNU
50対T
50比を決定することはできない。
【0203】
要約すると、本発明者らは、例示的に血液血清中で示される、体液の石灰化傾向を測定する比濁計ベースのアッセイ法を示す。このアッセイ法の広い分野での潜在的な適用を考えると、本方法は、臨床研究および科学研究において生体内ミネラル化関連問題を調査および解明するのに、ならびにインビボおよびエクスビボでの診断において有用なツールである。
【0204】
参考文献