特許第6104269号(P6104269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104269
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】光度測定装置および光度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20170316BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   G01N21/27 Z
   G01N21/03 Z
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-543898(P2014-543898)
(86)(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公表番号】特表2015-500462(P2015-500462A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2012074005
(87)【国際公開番号】WO2013079619
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年10月13日
(31)【優先権主張番号】106036
(32)【優先日】2011年12月1日
(33)【優先権主張国】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】511102240
【氏名又は名称】バイオサーフィット、 ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】デ オリヴェイラ ガルシア ダ フォンセカ、ジョアオ マニュエル
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−270964(JP,A)
【文献】 特開平08−114501(JP,A)
【文献】 特表2010−509590(JP,A)
【文献】 特開昭58−063837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の壁と第2の壁との間の室に配置された液体の光度測定方法であって、前記第2壁が1つまたは複数の回折反射面を備え、
第1波長を有する第1光ビームを前記第1の壁および液体を通って前記1つまたは複数の回折反射面上の第1位置に導いて、第1の選択された回折次数の第1の選択次数ビームが前記第1の壁で前記第2の壁に向かって反射するように前記第1光ビームを回折させ、前記第1の選択された回折次数と異なる第1の他の回折次数の第1の他の次数ビームが前記第1の壁を通って前記室から出射するように、反射した前記第1の選択次数ビームが前記1つまたは複数の回折反射面上の第2位置で回折することと、
前記第1の他の次数ビームを検出して、前記第1の他の次数ビームに関連する第1信号を得ることと、
前記第1信号を用いて光度測定を行うことと、
を備えることを特徴とする光度測定方法。
【請求項2】
前記第1の選択された回折次数と前記第1の他の回折次数は、異符号の回折次数であることを特徴とする請求項1に記載の光度測定方法。
【請求項3】
前記第1の選択された回折次数と前記第1の他の回折次数は、異符号の1次回折次数であることを特徴とする請求項1に記載の光度測定方法。
【請求項4】
前記第1位置で反射したビームを検出することと、前記第1位置で反射したビームの強度に関連する正規化信号を得ることと、前記正規化信号を用いて前記第1の他の次数ビームの強度を正規化し、前記第1信号を得ることと、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光度測定方法。
【請求項5】
第2波長を有する第2光ビームを前記第1の壁を通って前記第1位置に導いて、第2の選択された回折次数の第2の選択次数ビームが前記第1の壁で前記第2の壁に向かって反射するように前記第2光ビームを回折させることであって、前記第2の選択次数ビームは、前記第1の選択次数ビームと実質的に一致し、反射した前記第2の選択次数ビームは、前記第2の選択された回折次数と異なる第2の他の回折次数の第2の他の次数ビームが前記第1の壁を通って前記室から出射するように、前記1つまたは複数の回折反射面上の第2位置で回折し、前記第1および第2の選択された回折次数は任意選択で同じであり、前記第1および第2の他の回折次数は任意選択で同じである、ことと、
前記第2の他の次数ビームを検出して、前記第2の他の次数ビームに関連する第2信号を得ることと、
前記第1および第2信号を用いて前記光度測定を行う、または前記第2信号を用いて第2の光度測定を行うことと、
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光度測定方法。
【請求項6】
前記第1の選択された回折次数は、前記第2位置で回折する前に、前記第2の壁で少なくとも一度反射することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光度測定方法。
【請求項7】
前記第2の壁は、複数の回折反射面と、回折反射面の各組の間に配置された非回折面とを備え、前記第1の選択次数ビームは、前記第2位置で回折する前に、前記第2の壁の非回折面で少なくとも一度反射することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光度測定方法。
【請求項8】
前記第2位置は、前記複数の回折反射面のうち第1の1つと一致し、前記第1信号の信号品質の測定を行うことと、信号品質の前記測定が品質条件を満たしているか判定することと、品質条件が満たされていない場合、前記第1の1つと異なる、前記複数の回折反射面のうち第2の1つを選択することと、前記第2位置が前記複数の回折反射面のうち前記第2の1つと一致するように前記第1位置を変更することと、を備えることを特徴とする請求項7に記載の光度測定方法。
【請求項9】
前記第1ビームは、前記第1の壁の不透明層の開口を通過し、前記第1位置を変更することは、異なる開口を通過するよう前記第1ビームを移動することを含むことを特徴とする請求項8に記載の光度測定方法。
【請求項10】
複数の第1位置は、前記第1の壁の不透明層の対応する開口により規定され、前記第1ビームは、前記開口を照射して、対応する第2位置がそれぞれ前記複数の回折反射面のうち異なる1つ上にあるように複数の第1ビームを形成し、結果として生じる複数の第1の他の回折次数ビームを検出することを含むことを特徴とする請求項7に記載の光度測定方法。
【請求項11】
前記第2の壁から反射した複数のビームを検出することと、前記複数のビームを用いて、前記第1位置の1つまたは複数の位置、前記第2位置の位置および前記第2の壁の方向を決定することと、を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の光度測定方法。
【請求項12】
前記液体は、血液または血清試料であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の光度測定方法。
【請求項13】
光エミッタと、光検出器と、試料室とを備え、前記試料室の第1の壁と第2の壁との間に配置された液体の光度測定を行う光度測定装置であって、前記第2の壁が1つまたは複数の回折反射面を備え、
前記光エミッタから放射された第1波長を有する第1光ビームが前記第1の壁および液体を通って前記1つまたは複数の回折反射面上の第1位置に導かれ、第1の選択された回折次数の第1の選択次数ビームが前記第1の壁で前記第2の壁に向かって反射するように前記第1光ビームが回折され、前記第1の選択された回折次数と異なる第1の他の回折次数の第1の他の次数ビームが前記第1の壁を通って前記室から出射するように、反射した前記第1の選択次数ビームが前記1つまたは複数の回折反射面上の第2位置で回折され、
前記第1の他の次数ビームが前記光検出器で検出され、前記第1の他の次数ビームに関連する第1信号が得られ、
前記第1信号を用いて光度測定が行われる、ことを特徴とする光度測定装置
【請求項14】
前記試料室は、取り外し可能なカートリッジに設けられることを特徴とする請求項13に記載の光度測定装置
【請求項15】
前記カートリッジを回転させて前記カートリッジ中に液体の流れをおこすためのモータをさらに備えることを特徴とする請求項14に記載の光度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光度測定方法およびシステム、およびそのような方法およびシステムのための試料室、特に、限定はされないが血液または血漿試料の分析のための試料室に関する。
【背景技術】
【0002】
光度測定は様々な用途に用いられる。例えば、測定される物質またはシステムは、光波長に応じて異なって光に影響を及ぼす可能性がある。一つの主用途は、ある液体中の化合物の存在および定量化の測定に関係する。特に、生物学および医学の分野では、これは、通常、測定されるべき化合物を含む、例えば血清などの液体を通る光路に沿って通過した後の光強度の測定を必要とする。殆どのこのような用途では、特に少ない試料量および小型化の多重測定の利用では、利用可能な液量に大きな制限があり、従って光路の長さに大きな制限がある。
【0003】
上述の用途は、液体中の光吸収に基づいており、それ故、信号対雑音比は光路長に正比例する。
【0004】
多くの用途は、マイクロ流体セットアップとともに、大きな面内領域および小さな深さプロファイルを有する平面構造を利用している。先行研究は、マイクロプリズムと液体ルーティングを使用して、試料量を増加することなく光路長を大きくしていた。例えば、"Direct hemoglobin measurement by monolithically integrated optical beam guidance",M. Grumann et al. TRANSDUCERS'05 p1106-1109 (2005)を参照されたい。これは参照により本明細書に組み込まれる。このような装置は、製造可能性および有用性に関して重大な不都合を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故、少ない液体量において高精度の光度測定、特に高度に多重化された測定を可能とするとともに、さらに製造および操作が容易である、改良された装置および方法に対する大きな必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、請求項1に記載された光度測定を導く方法と請求項13に記載されたシステムが開示される。
【0007】
有利には、入射光の反射した回折次数を用いることにより、試料室中で1または複数回光を制御可能に誘導して(内部全反射または別の方法により)反射させ、その後、さらなる回折により試料室から出射させることができる。これにより、試料内の経路長を増大し且つ制御することが可能となる。
【0008】
いくつかの波長多重された実施形態では、第1の回折を用いて異なる波長のビームを同時に調整および誘導することができ、それらはその後更なる回折で再び分離する。さらにいくつかの更なる実施形態では、非回折面を複数の回折面間に散在させることにより、実質的に無損失の反射による試料中の伝搬を、ビームに試料中を進行させて最後の回折により試料から出射させる能力と組み合わせることができる。これにより、各反射が対応する回折と関係する実施形態と比較して、試料から出射するビームに対してより大きな強度を維持することが可能となる。これらの実施形態は、これらの実施形態における所与の光路長に対して達成可能な信号強度を高めるために波長多重の実施形態と組み合わせることが可能である。
【0009】
第2の態様では、請求項15に規定される光度測定室が開示される。
【0010】
測定室に光度測定用の試薬と反射回折面を提供することにより、上述のシステムに用いられた際に、上述の方法が可能となる。光吸収が液体および試薬中の分子間の相互作用の影響を受ける試薬または任意の他の液体を選ぶことによって、光度測定室は、血液または血清試料とともに用いることができる。さらに、光ビームを誘導する回折を用いることにより、測定室を組み込んだ装置は、例えば標準的なCD/DVD製造プロセスを含む効率的な量産技術を用いて製造することが可能である。
【0011】
第3の態様では、請求項16に規定される光度測定室が開示される。
【0012】
上述の方法に使用された際、所与の光路長に対して強度を増大させることが可能となる。
【0013】
第4の態様では、請求項21に規定されるように、複数の試料室を有するカートリッジを製造する方法が提供される。
【0014】
有利には、室を規定する透明ディスク部分に適用される不透明層に開口を選択的に配置することにより、試料室中に製造間接費の低い異なる光路長を得ることができる。これは、多数の個別の回折面が存在する際に最も有利であるが、より幅広く適用することもできる。
【0015】
概して、この開示は、マイクロ流体室内に反射回折格子を用いた新たな光度測定装置および操作方法を提供する。さらに、静止および移動する試料カートリッジにおける多波長吸着および光度測定のための改良された装置および操作方法が開示される。
【0016】
一実施形態は、試料液体内へのある波長の光の入射と、一連の(i)第1の反射回折格子での回折、(ii)液体試料を閉じ込める面での内部全反射、(iii)光が試料ホルダから出射することを可能とする少なくとも1つの第2の回折、(iv)試料から出射する光を測定するための光学的測定要素と、に関する。少なくとも1つの全反射間に配置される、例えば異符号(例えば+1次そのとき−1次回折次数)の多重回折を利用することにより、少ない液体試料量に対して比較的長い光路で光特性の測定が可能となる。
【0017】
更なる一実施形態は、一連の(i)第1の反射回折格子での回折、(ii)液体試料を閉じ込める面での内部全反射、(iii)光が試料ホルダから出射することを可能とする少なくとも1つの第2の回折、(iv)試料から出射する光を測定するための光学的測定要素、を移動する多波長ビームに関する。製造可能性の制限が軽減された状態で装置をこの実施形態に組立てることができ、非常に少ない液体試料量で高分解能の光度測定を得るために装置を容易に動作することができる。
【0018】
別の実施形態は、それぞれ第1の回折と少なくとも1つの内部全反射を伴って液体試料量内を進行する、異なる波長の多重回折次数の測定に関する。開示された原理を用いた装置は、必要以上の製造可能性の制限が無い状態で組立てることができ、少なく液体試料量の高分解能光度測定だけでなく、内部品質管理目的または化合物の定量化を多重化するための自己参照測定を得るために容易に動作することができる。
【0019】
追加的な一実施形態は、上記記載に従う装置に関し、さらに試料カートリッジに光スリットを含み、大きな光強度損失無しで異なる光路に対して装置の使用を可能とする。さらに、高度に多重化されたカートリッジは、基本的に同一の液体検出ゾーンを用いて製造されてよい。所定位置の光スリットを開くことから成る最終製造プロセスステップのうち1つを変更するだけで、異なる化合物の定量化に対する異なる光度測定のために異なる光路を有することができる。
【0020】
更なる一実施形態は、移動可能カートリッジ、すなわち回転カートリッジに関する。このカートリッジは、所与の液体、例えば血液から完全な多重化された光度測定を行うことができる。異なる構造およびユニットを統合して所定の方法で動作する装置は、従来の分析装置と比較したときに大きな利点を有する完全な分析システムを提供する。
【0021】
更なる一実施形態は、開示の改善された光度測定構成を用いた多重パラメータ血液解析に関する。
【0022】
更なる一実施形態は、回折格子を有し、多重化光度特性の測定を可能とする装置の改善された動作に関する。さらに、開示された装置の動作は、分析目的のために移動可能カートリッジでの自己参照および内部品質管理測定を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
特定の実施形態は、本開示の原理を説明するためだけの実施例によって、添付の図面を参照してこれから記載される。
図1】従来の光度測定装置を説明するための図である。
図2】回折格子を備える光度測定装置を説明するための図である。
図3図2の装置の詳細を説明するための図である。
図4】調整可能な光路長を備える光度測定装置を説明するための図である。
図5a-d】図4に示す装置の入射領域をさらに詳細に説明するための図である。
図6】光度測定室を組み込んだ遠心分離式カートリッジの平面断面を説明するための図である。
図7A図6に示す遠心分離式カートリッジの横断面を説明するための図である。
図7B図7Aの図の詳細を説明するための図である。
図8A図6の遠心分離式カートリッジの血漿抽出部を説明するための図である。
図8B図6の遠心分離式カートリッジの混合部を説明するための図である。
図8C図6の遠心分離式カートリッジのいくつかのキャリブレーション検出部を説明するための図である。
図8D図6の遠心分離式カートリッジのいくつかの測定検出部を説明するための図である。
図8E図6の遠心分離式カートリッジの測定検出部および超過室を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、既知の従来の光度測定装置を示す。エミッタ(10)は、多波長の光(20)を特性が明らかにされるべき液体(50)を収容している液体容器(40)を通過して検出器(30)中に放射する。容器(40)は、その表面(41)〜(44)が大きな光吸収係数を有さないように形成される。液体量は、通常は少なくとも数マイクロリットルであり、液体容器のサイズは少なくとも数ミリメートルである。
【0025】
図2は、開示された原理を具体化する光度測定装置を示す。エミッタ(11)は、特定の波長のビームを放射するコンポーネント(12)、(13)および(14)を含む。各コンポーネントは、カートリッジ(または他の試料室)(40)に対して特定の方向で配置され、光は液体(50)を通過して反射回折層(42)に到達する。各ビームの回折次数+1は、カートリッジ内部で実質的に同じ角度であり、カートリッジ(40)の上面(41)に対して十分に接線方向であり、従って液体(50)内で内部全反射をもたらす。各ビームの光はその後、再び少なくとも一度回折する。回折次数−1は、カートリッジ(40)の上面(41)に対して十分に垂直であり、カートリッジから抜ける。検出器(31)は、異なる波長、異なる光路長および、ある実施形態では異なる回折次数のビームの光強度を測定するために用いられる。
【0026】
エミッタモジュール(11)は、液体(23)内部で1次の反射回折次数と本質的に同じ角度を得るように配置されたいくつかの個別素子(12)、(13)などを含んでもよい。
【0027】
図3は、図2の更なる詳細図を提供する。異なる波長の入射ビーム(21)は、1次回折(23)が全てのビームに関して本質的に同じように面(41)および(42)に対して方向付けられるように配置された異なる入射角を有する。ゼロ次回折(22)(すなわち光ビーム)は、カートリッジ(40)から出射して、測定に用いられる。第1の内部全反射の後、第2の回折が起こる。この場合、ゼロ次回折(25)が同じ方向に進み、再度カートリッジ(40)の上面(または液体/カートリッジ界面)で内部全反射する。−1次回折(24)は、波長に応じた異なる角度(24a)、(24b)および(24c)でカートリッジから出射する。このプロセスは回折格子面(42)での第3の回折で再度繰り返され、さらなる−1次回折ビーム(26)がカートリッジから出射する。
【0028】
一実施形態では、エミッタ(11)は、波長が340nmと405nmで、TE偏光で、カートリッジに対して46.6°(340nm)と40.2°(405nm)に方向が固定された、2つのコリメートされたLEDを含む。両方のLEDは、カートリッジ(40)の下面(42)における本質的に同じ点に向けられる。希釈された血漿溶液(50)がカートリッジ(40)中に挿入される。PBSを用いた1:21の希釈であり、屈折率n_liq=1.33を有する。カートリッジ検出ゾーンは0.2mmの液厚を有する。340nmのビームは、回折面(43)に33.1°の角度で入射し、405nmのビームは、回折面(43)に29.0°の角度で入射する。回折面は、100nmの金で覆われた周期800nm、高さ50nmのポリカーボネートの正弦台形回折格子から成る。両方のビームのゼロ次は、カートリッジから出射し、両者は23.6%(340nm)と27.4%(405nm)の全効率で検出器(31)に入射に入射する。両方のビームは、3.8%(340nm)と3.0%(405nm)の全効率で、回折面において60°の1次反射回折次数で回折する。これらの回折ビームは、カートリッジと空気の界面での入射角が全反射角(n_liq=1.33に対し、theta_tir〜48.7°)を超えているため、カートリッジ(40)の上面で内部全反射する。この第1の内部全反射は最初の回折スポットから〜0.4mmの距離で起こる。最初の回折スポットから〜0.8mmの距離において、第2の回折が起こり、ゼロ次は同じ角度60°の方に進み、マイナス1次は0.23%(340nm)と0.14%(405nm)の全効率で33.1°(340nm)と29.0°(405nm)の入射角を有する。第2の回折のゼロ次は、1.8%(340nm)と1.6%(405nm)の全効率を有し、カートリッジの上面(42)において再度内部全反射する。最初の回折スポットから〜1.6mmの距離において、第3の回折が起こり、そのマイナス1次は0.11%(340nm)と0.07%(405nm)の全効率を有してカートリッジから出射し、検出器で測定される。再び、ゼロ次が液体(50)に沿って伝搬する。
【0029】
液体中における各波長の全路長は、〜0.5mm(第1ビーム、ゼロ次回折)、〜1.3mm(第2ビーム、第1内部全反射後の+1次回折の−1次回折)および〜2.1mm第3ビーム、第2内部全反射後の+1次回折の−1次回折)である。液体中における各波長の全路長には小さな差異がある(第1ビームに関し〜4%、第2ビームに関し〜2%、第3ビームに関し〜1%)。
【0030】
各回折では他の回折次数も発生する。場合によっては、これらが大きな強度を有し、考慮が必要となる可能性がある。本明細書で詳述される実施例においては、2次の反射回折ビームが〜13.1°(340nm)と〜6°(405nm)の角度で起こるが、これらのビームは−1次回折より少なくとも一桁小さい強度を有する。従って、関係のある信号収集には干渉しない。
【0031】
上記の実施例は、分離した異なる波長を有する異なるビームと異符号の回折次数(例えば+1次回折の−1次回折)の連続的な回折を、光度測定用途に使用する可能性について説明している。それらの間では、通常の透明面の内部全反射が起こる。観察されるビームの比較的低い強度(例えば、最初のビーム強度の〜0.1%)は、実際には大きな制限ではない。高い初期強度を用いればよいからである。連続的な反対する回折の数は、より長い光路長に対しては増大されてもよい。上述の実施例では、第4の回折が光路の〜2.9mmに対応し、第5の回折が光路の〜3.7mmに対応し、ビームは340nmではそれぞれ0.051%と0.024%の強度を有し、405nmではそれぞれ0.004%と0.001%の強度を有する。
【0032】
一方、多くの用途では、強度があまり異ならない連続的なビームを有することが好ましい見なされるかもしれない。
それ故、単一のセンサ(例えばCCDまたはCMOS2次元画像センサ)を用いて異なる光路で光スポットを同時に測定してもよい。この特定の目的に対しては、最適化された回折格子形状、すなわち三角形プロファイルまたはぼんやりした(lazed)正弦波プロファイルまたは他の最適化されたプロファイルを用いてもよい。
【0033】
さらに、液体は、特定の化合物の存在と濃度に従って光特性を変化させる試薬を含んでもよく、従ってそれは特定の化合物の定量的な目的に用いられてもよい。上述の説明のさらなる実施例では、この装置は血液試料中のコレステロールの定量化に用いられる。液体はコレステロール・エステラーゼ、コレステロール・デヒドロゲナーゼおよびニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドを含む。コレステロール・エステラーゼは、血漿中に含まれ、コレステロールおよび脂肪酸を形成するコレステロール・エステルの加水分解を含む。NAD+(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)の存在下において、コレステロール・デヒドロゲナーゼは、コレステロールをコレスト−4−エン−3−オンとNADHに変化させ、NADHは340nmと405nmの光ビームの光強度を測定することにより定量化される(例えば、Kayamori, Y, et al. Endpoint colorimetric method for assaying total cholesterol in serum with cholesterol dehydrogenase. Clin Chem 1999; 45: 2158-2163を参照。これは参照により本明細書に組み込まれる)。従って、この装置は、血漿試料中のコレステロールの濃度を定量化するために用いることができる。
【0034】
一実施形態では、エミッタ(11)は、波長が340nm、405nm、500nm、550nmおよび600nmで、カートリッジに対して角度46.6°(340nm)、40.2°(405nm)、31.7°(500nm)、27.6°(550nm)および23.7°(600nm)で方向が固定され、全てカートリッジ(40)の下面(42)における実質的に同じ点に集中するように配置された、5個のコリメートされたLEDを含む。このように多波長を使用することにより、ある化学反応または酵素反応または他の反応の後の異なった光吸着に基づいて、幅広い種類の生体化合物の検出に装置を用いることが可能となる。多くのその他の用途が同じメカニズムを用いた光度測定システムで見られ、生体試料に限定されず、そしてまた吸着測定に限定されない。
【0035】
上記の実施例は、連続的な回折次数のために光強度の大きな減少を含む可能性がある。これは、ある用途又はある装置の手に負えないと見なされる可能性がある。さらなる実施形態は、光強度の大きな損失がない、光度測定用途のための、内部全反射間で起こる反対の回折を探索する方法を提供する。そこでは、カートリッジの1つの要素の簡単な変更により、異なる光路が本質的に同一のカートリッジ(40)で使用される。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態に係る、光路長を調整可能な光度測定装置を示す。エミッタ(11)の光源(12)からの大きなコリメートビーム(21d)は、トップカバー(41)の特定の入射領域(41b)においてカートリッジ(40)内に向けられる。この装置はまた検出器(31)を含み、カートリッジ(40)の下面(42)は、異なる位置に回折格子パターン(43a)、(43b)、(43c)および(43d)を含む。カートリッジ(40)の入射領域(41b)は、異なる光スリットまたはアパーチャ(41c)、(41d)、および(41e)を有する。これらのスリットは、開閉されうる。スリットの開閉により、液体(50)中の光路長の調整が可能となる。
【0037】
図5aは、先に図4に示した実施形態に係るカートリッジにおける特定の入射領域をさらに詳細に示す。3つの位置の光スリット(41c)、(41d)および(41e)が開閉可能である。スリットの開閉により、液体(50)内部の光路の調節が可能となる。
【0038】
図5bは、先に図4に示した光度測定装置において第1スリットが開いた場合を示す。特定の光波長、入射角および回折格子パターンの特定の位置によって、最後の回折領域(43d)でのみ第2の回折が起こる。大きな入射ビーム(21)から細いビーム(21d)のみが液体(50)を通過し、第1回折領域(43a)で第1の回折が起こる。1次回折ビーム(23a)は、カートリッジ(40)の上面(41)で内部全反射する。異なる回折パターン(43a)、(43b)、(43c)および(43d)の位置は、ビーム(23b)が第2回折パターン(43b)に入射せずに、代わりに平面で反射するように規定および固定される。この面は、反射層(例えば金)または透明材料で構成されてよい。後者の場合、その入射角が内部全反射角を超えるため、ビームは再度全反射する。再び、ビーム(23b)は上面(41)で内部全反射し、再度、第3回折パターン(43c)ではなく、平面に入射する。最後に反射ビーム(23d)は内部全反射し、第3回折パターン(43d)に入射する。ここで、ゼロ次反射回折ビーム(23g)はカートリッジ内を進み続けるが、−1次反射回折(24d)はカートリッジから出射し、検出器(31)で測定される。ビーム(24d)の強度が測定されてよく、定量化目的のための情報が抽出されてもよい。この構成は、長い光路長に対する連続的な回折において光損失を最小化するため、他の構成より好ましいと考えられる。ビーム(22a)の強度は、自己参照(self-referencing)のために用いられてもよい。ビーム(22a)の位置は、検出器およびエミッタに対するカートリッジ(40)の方向を決定するために用いられてもよい。ビーム(22a)と(24d)の相対位置は、カートリッジの方向を評価するため、または液体(50)内の全光路を直接決定するために用いられてもよい。
【0039】
図5cは、先に図4に示した光度測定装置において第2スリットが開いた場合を示す。特定の光波長、入射角および回折格子パターンの特定の位置によって、第3回折領域(43c)で第2の回折が起こる(そして更なる回折が第4回折領域(43d)で起こる)。大きな入射ビーム(21)から細いビーム(21d)のみが液体(50)を通過し、第1回折領域(43a)で第1の回折が起こる。1次回折ビーム(23a)は、カートリッジ(40)の上面(41)で内部全反射する。異なる回折パターン(43a)、(43b)、(43c)および(43d)の位置は、ビーム(23b)が第2回折パターン(43b)に入射せずに、代わりに平面で反射するように規定および固定される。この面は、反射層(例えば金)または透明材料で構成されてよい。後者の場合、その入射角が内部全反射角を超えるため、ビームは再度全反射する。再び、ビーム(23b)は上面(41)で内部全反射し、再度、第3回折パターン(43c)ではなく、平面に入射する。その後、反射ビーム(23d)は第3回折パターン(43c)に入射する。そこでゼロ次反射回折ビーム(23e)は再度上面(41)で内部全反射し、その後第4回折パターン(43d)に入射する。平面(43c)におけるマイナス1次の反射回折ビームはカートリッジ(40)から出射し、検出器(31)で検出される。さらに、平面(43d)におけるマイナス1次の反射回折ビーム(24f)もカートリッジ(40)から出射し、検出器(31)で検出される。そのような方法で組み込まれた装置は、第3回折パターン(43c)に至るまで光路長が増大され、大きな光強度の損失がなく、従って信号対雑音比が大きいため、分光光度特性の測定に用いられてよい。また、異なる光ビーム(22b)、(24e)および(24f)の強度および位置に直接関連する組み込みの内部品質管理で動作してもよい。
【0040】
図5dは、先に図4に示した光度測定装置において第3スリットが開いた場合を示す。特定の光波長、入射角および回折格子パターンの特定の位置によって、そして開いているスリットの位置によって、4つの回折ビームが検出器(31)に到達する。それぞれが異なる光路に相当する。前の図で説明したのと同じ動作の後に、光ビームは各回折格子パターン(43a)、(43b)、(43c)および(43d)に連続して方向付けられ、毎回−1次反射回折がカートリッジ(40)から出射し、毎回ゼロ次回折がカートリッジ(40)の上面(41)で第1の内部全反射をした後、次の回折パターンで回折される。
【0041】
図5a〜5dに示す実施形態では、2度回折の光路長それぞれの光強度は、第2の正反対の回折(opposite diffraction)のみが起こるため、実質的に同じである。これは、必要な経路長/第2の回折が起こるべき回折パターンに応じてどのスリットを開くか選択することにより達成される。
【0042】
ある実施形態では、細い最初のビームといくつかの開いたスリットを備えるカートリッジを用いる。細いビームは、軸に沿って移動可能であってよく、ビーム経路と垂直である。このように、特定の離散的な値からの全光路長の選択は、ビームがカートリッジ(40)の対応するスリットに入射するように光エミッタを移動することによりなされる。
【0043】
ある用途では、全光路長は、良好な信号対雑音比を可能とするほど十分に大きくなければならないが、一方でさらに、適切な測定(例えば信号飽和などがない)を可能とするほど十分に小さくなければならない。詳述された移動可能ビームを備える実施例は、より一般的なカートリッジに対して用いられ、以下の方法で動作してもよい。(i)1つまたは複数の光エミッタが、エミッタの移動の軸に沿って所定の位置に配置される。(ii)特定の入射スリットに対応するある全光路長に対して測定が実行される。(iii)内部品質管理測定(internal quality control measurements)が、信号対雑音比および/または信号飽和の観点から決定される。(iv)内部品質管理測定の結果が、必要な全光路長と関連する、合否基準に対して設定された所定の値と比較される。(va)全光路長に関して合格基準に達した場合、光度データの測定値がさらに受け入れられ、そしてさらに処理される。または(vb)全光路長に関して拒否基準に達した場合、使用された光路長が小さすぎることを確認することにより、その後エミッタがより大きな光路長に対応する新たな位置に移動し、ステップ(ii)〜(v)が再度実行される。または(vc)全光路長に関して拒否基準に達した場合、使用された光路長が大きすぎることを確認することにより、その後エミッタがより小さな光路長に対応する新たな位置に移動し、ステップ(ii)〜(v)が再度実行される。
【0044】
別のある実施形態では、スリットが幅広のビームにより同時に照射され、図5b〜5dに示す光路の重ね合わせをもたらす。これらの実施形態では、エミッタ(11)を移動することにより選択するよりむしろ、検出器(31)で検出されるビームから対応する一つを選択することにより適切な経路長が選択される。
【0045】
上述の装置および動作モードは、分析用途に大きな利点を有する。特に、別々のステップにおける全光路長の変化は、ロバスト性および全体的な検出精度を高める。さらに、必要な光路長は、検出される化合物の濃度に直接関連する可能性がある。複合試料では、かなり濃度範囲が異なる多数の化合物の測定が必要となる可能性がある。既知のアプローチは、検出装置の範囲内に出力信号を合わせることができるようにするために、異なる検出室の試料希釈の調整を必要とする。高度に多重化された測定においては、この事実は装置を大幅に複雑にする。記載された実施形態を用いた場合、各化合物に対して最適な光路を調整することにより、大きく異なる濃度の化合物を測定に基本的に同じ希釈で、高度に多重化された検出装置を構築および動作させることができる。
【0046】
多くの用途では、移動可能なカートリッジ、特に、多重測定を行うためにカートリッジを回転することにより流体の流れをおこす遠心分離式のカートリッジの使用を必要とする。ある実施形態は、移動可能なカートリッジの光度測定に大きな利点を提供する。特に、多数の出力ビームの存在、すなわち、カートリッジからの第1のゼロ次ビーム、および1つまたは多数の−1次回折ビーム(または他の次数のビーム)は、エミッタ(11)および/または検出器(31)に対するカートリッジ(40)の位置および方向を決定するために用いられる。1つまたは多数の波長からの異なる回折ビームの光強度を測定するだけでなく、それらの相対距離を測定することにより、カートリッジの位置および/または方向を測定することができる。この測定は、場合によっては、カートリッジの位置および/または方向を所定の合否範囲内または合否範囲外に示すある測定の合格および/または拒否を可能とする、品質管理目的に用いられてよい。さらなるより複雑な分析システムでは、位置および/または方向測定は、カートリッジの位置または報告の調整または修正のための内部フィードバックループに用いられてもよい。
【0047】
図6は、遠心分離式カートリッジ(40)の平面横断面図を示す。カートリッジ(40)は、異なる検出領域での試料処理および光吸着の測定のための異なるマイクロ流体構造を含む。初期リザーバ(60)は、更なる処理のための十分なバッファを備える液体ブリスタ(liquid blister)(61)を含む。血液が血液注入口(74)に入れられ、所定量の血漿が特定の血漿分離マイクロ流体構造(73)に抽出される。バッファは、初期リザーバ(60)から固定容積の追加のリザーバ(71)および(72)内にアリコートされ、血漿は、初期リザーバから希釈リザーバ(80)内に所定の割合で希釈される。希釈リザーバ(80)から、液体は、血液の成分の存在および量に応じて光吸着を変化させる試薬を含む多数の検出ゾーン(90)内に送られる。装置を稼働した場合、単純な回転動作と、検出ゾーン(90)において希釈された血漿を通過する回折光の測定とにより、多数の血液パラメータの検出が可能となる。
【0048】
図7Aは、図6に示す遠心分離式カートリッジの断面図を示す。カートリッジ(40)は、接着層(49)により共に接着された2つのディスク部分(42)および(44)から成る。上側ディスク(42)は、前に図6に示した全ての流体構造を含み、単純な回転プロトコルを用いて、追加の外部液体ポンプを用いること無しで、多数の血漿パラメータの決定を可能なように作動される。下側ディスク(42)は、回折パターン(43)を含み、多波長の光回折を提供するために用いられ、このような方法で希釈された血漿の異なる光路長を通過する異なる光ビームの検出を可能とする。カートリッジ(40)は、ディスク形状であり、カートリッジをモータに結合するために用いられる1つの中心孔(47)を含む。
【0049】
図7Bは、先に図7Aを参照して説明した装置の詳細を図示しており、多数の可能な光入射スリット(41c)、(41d)および(41e)と、多数の回折格子パターン領域(43a)、(43b)、(43c)および(43d)とを示す。接着層(49)は、透明であってもなくてもよく、光の変化を最小限にするために検出ゾーン(90)に割り込んでいてもよい。下側ディスクは回折格子領域の上部に反射を目的とした金属コーティングを含んでもよい。
【0050】
図8Aは、遠心分離式カートリッジの血漿抽出部を示す。血液は血液注入口(74)に入れられ、所定の血液量は血液室(75)の寸法により規定される。十分に高い速度でカートリッジ(40)を回転することにより、血液はリザーバ(75)内のその初期位置からより小さい容積の外側リザーバ(76)内に移動する。この後者は、オーバーフロー室(77)に接続されるとともに、血漿チャネル(78)により他の構造に接続されている。気体の圧力平衡は、空気チャネル(45)、(79a)および(79b)により維持される。室(76)および(77)と、チャネル(78)の入口との間の接続により規定される容積は、構造(73)から抽出される血漿量であり、本発明に係る光度測定手段による血液パラメータの測定にさらに使用される。
【0051】
図8Bは、参照により本明細書に組み込まれる国際出願PCT/PT2009/000081号に記載された、遠心分離式カートリッジの混合部を示す。所定の血漿量がチャネル(78)から届き、次々に混合部(84)にてチャネル(71a)および(72a)を介して異なるバッファ室からのバッファと混合される。混合された希釈血漿は、希釈室(80)内に送られる。
【0052】
図8Cは、遠心分離式カートリッジのいくつかのキャリブレーション検出部(95)を示す。キャリブレーション検出部は、バッファを受け取り、測定検出ゾーン(90)で用いられるものと一致する試薬を含んでいてよい。バッファは、分配リング(95g)と全てのキャリブレーション検出部(95a)、(95b)、(95c)および(95d)を満たす。超過した液体は、室(95e)に送られ、正確な量が各キャリブレーション検出部に入れられる。
【0053】
図8Dは、遠心分離式カートリッジのいくつかの測定検出部(90)を示す。希釈血漿は、分配チャネル(81)を用いて希釈室(80)から分配リング(91)内に移動する。各検出部(90b)、(90c)等は、光特性の変化、すなわち対応する血漿化合物の濃度に比例する光吸収、に関与する試薬を含んでいてよい。
【0054】
図8Eは、遠心分離式カートリッジの測定検出部(90)と超過室(92)を示す。分配リング(91)は、希釈血漿の正確な量が各検出部(90a)〜(90z)に分配されることを可能とし、超過した液体量は超過室(92)に送られる。空気圧平衡は空気チャネル(94)によって維持される。
【0055】
一実施形態では、図6,7および8に示すカートリッジ(40)と、前の図面(例えば図2)に示すエミッタ(11)および検出器(31)とを備える装置は、完全な分析システムとして動作してよく、自動的な方法で、最初に上述したようにマイクロ流体の試料調整作業(例えば、血漿分離、血漿混合および希釈)を行い、その後、血液中に存在する異なる化合物の同時測定のために多波長での多重化光吸着測定を行う。
【0056】
このような実施形態の具体例をこれから記載する。分析システムは、図6,7および8に示すカートリッジ(40)を含む。カートリッジ(40)は、2つのポリカーボネートディスク部分からなる。2つのポリカーボネートディスク部分は、それぞれ厚さ0.6mmであり、0.02mmの接着層により互いに接合される。一方のディスク部分(44)は、異なる室とチャネルを規定する、0.2mmと0.05mmの2つの深さのキャビティを含む。他方のディスク部分(42)は、上側ディスク部分の検出ゾーンキャビティと一致した同じ領域に、周期800nm、高さ50nmおよび100nmの金コーティングの回折格子構造を含む。
【0057】
カートリッジは、使用の前にシールされた、80uLの標準的なPBSバッファを有する液体ブリスタを含む。プラスチック部および接合部に加えて、カートリッジ(40)は、キャリブレーション検出ゾーンおよび測定検出ゾーンにも配置される乾燥試薬を含む。
【0058】
このシステムは、以下の方法で動作する。
(i)液体ブリスタが破裂する。
(ii)15μlの全血が血液注入口に入れられる。
(iii)所定量13μlの全血が毛細管現象により血液測定室を満たす。
(iV)カートリッジが十分高い回転速度で回転し、2つの事象が並行して起こる:
a.13μlの全血が血漿分離室に移動し、その後、〜1μlの血液を血漿室からオーバーフロー室にあふれ出させることにより、12μlの正確な血液計量が規定され、その後血漿が遠心力作用により血液細胞から分離される。
b.標準的なバッファがブリスタ室から、15μlの第1アリコートと45μlの第2アリコートを規定するアリコート構造内に流出し、その後、最後の45μlのアリコート室からキャリブレーション検出部内にあふれ出し、そこで〜10μlのバッファが4つのキャリブレーション検出部を満たし、超過の〜10μlがオーバーフロー室に流れる。
(v)確実に適切な血漿分離と適切なバッファアリコートがなされるのに十分な長い時間の後、カートリッジが停止され、(バッファアリコートを保持するサイフォンと同様に)サイフォン78が毛細管作用により準備される。
(vi)カートリッジが再度50Hzで回転し、最初に15μlのバッファと3μlの血漿との間で混合が行われ、順に18μlの希釈血漿と45μlのバッファとが混合され、合計63μlの希釈血漿を希釈室に異動する。
(vii)カートリッジが再度停止され、希釈室の出口で毛細管現象によりサイフォンが準備される。
(Viii)カートリッジが再度、今度は25Hzで回転し、希釈血漿が分配室を介して検出室を満たす。
(ix)同時に、カートリッジが一定速度で回転している間に、キャリブレーション検出ゾーンと測定検出ゾーンの両方において、例えば図2を参照して上述したように多波長で光吸着測定が実行される。
(x)異なる化合物から血漿濃度を導き出すために、多波長での光吸収が測定され、キャリブレーションデータと比較される。
【0059】
上記のように形成および動作する装置は、標準的な射出成形CD/DVD機械で製造されたプラスチック成形品であるDVD状のカートリッジ内で、15μlの血液のみを用いて、21の血液パラメータまで同時定量を可能とする。さらに、カートリッジは全く同じ検出ゾーンを有してよく、測定される血液パラメータに応じて異なる光路長を用いて、異なる測定に対して十分にフレキシブルであってよい。上記に従う装置の実施は、標準的な光吸着システムと比較していくつかの見地で大きな利点を提供する。
−高度多重測定に要求される試料量が大幅に、少なくとも1/6に減少する(例えば、他の既知のシステムにおける90uLの血液と比較して、上記装置では15uLの血液)。この事実は、医療診断、特にポイント・オブ・ケア診断においては特別な利点である。
−試薬の量もまた、試料量と同じ割合で減少し、カートリッジの製造コストの大幅な低下をもたらす。
−必要なカートリッジが簡易な構造となり、大幅に低いコストで製造が可能となる。
−内部品質管理および自己参照で光度測定が可能となり、既知のシステムと比較して、高い信号対雑音比をもたらすとともに誤測定のリスクを低下させる。
【0060】
以下がまた開示されている。
a.少なくとも1つの特定の関連波長を有する光源、
b.検出器、
c.少なくとも反射回折面を備える、液体試料を保持するためのカートリッジ、
を備え、
光は、最初にカートリッジ内で、液体と接触する前記第1の回折格子面において、ある回折次数で回折し、その後カートリッジの異なる界面で内部全反射し、そして、少なくとも液体と接触する前記第2の回折面において、異符号の回折次数で起こる第2の回折で再び回折し、第2の回折ビームが光検出器により検出され、関係する波長の光度測定情報が検出ビームから抽出される。
【0061】
エミッタが多波長光源、LEDまたはレーザまたは任意の他の光源部品から成る、上述のシステム。
【0062】
連続スペクトルの光源から成り、検出器が特定波長の多数のフィルタを含む、上述のシステム。
【0063】
カートリッジが多数の光入射スリットを含み、各スリットに入射する光がカートリッジ内部で異なる回数連続して回折し、検出器が、それぞれ液体内で異なる全光路に対応する異なるスポットを測定する、上述のシステム。
【0064】
光吸着測定が異なる波長に対して実行される、上述のシステム。
【0065】
光エミッタが、340nm、405nm、467nm、500nm、550nm、600nm、630nm、780nmおよび850nmのうち1つまたは複数の波長を備える一連のLEDまたはレーザダイオードから成る、上述のシステム。
【0066】
検出器が、CCDまたはCMOS画像センサなどの2次元光検出器から成る、上述のシステム。
【0067】
光度測定を実行するための方法であって、異なる波長が液体を含むカートリッジに入射し、カートリッジが入射光ビームを受ける多数の光スリットを有し、多数のビームが、最初にカートリッジ内で、液体と接触する前記第1の回折格子面において、ある回折次数で回折し、その後カートリッジの異なる界面で内部全反射し、そして、少なくとも液体と接触する前記第2の回折面において、異符号の回折次数で起こる第2の回折で再び回折し、第2の回折ビームが光検出器により検出され、関係する波長の光度測定情報が検出ビームから抽出される、方法。
【0068】
−多数の同一又は異なる波長の回折ビームが、エミッタおよび/または検出器に対するカートリッジの相対位置および相対方向を測定するために用いられ、
−多数の回折ビームの位置および光強度が、スポット間の測定距離とともに品質管理目的のために用いられる、および/または、多数のスポットの強度が所定の値と比較され、結果によって測定が受け入れ又は拒絶される、上述のシステム。
【0069】
(i)多数の回折ビームの光強度が光度特性の測定に用いられ、
(ii)結果が所定の値と比較され、結果によって測定が受け入れ又は拒絶され、
(iii)拒絶された場合、光エミッタの位置が異なる位置に動かされ、光が異なるスリットに入射し、ビームが液体内部を異なる光路で進み、
ステップ(i)から(iii)が再び実行される、上述の方法。
【0070】
(i)カートリッジがディスク形状であり、少なくとも1つの血液注入口、バッファブリスタ、少なくとも1つの混合部および少なくとも2つの検出部を含み、
(ii)ある血液化合物の存在下で光を吸着することができる、またはある血漿化合物の存在下で光吸着を引き起こすある反応を高めることができる、特定の試薬が少なくとも1つの検出ゾーンに配置され、
(iii)少なくとも1つの面が反射回折格子を備える部分を含み、
(iv)カートリッジが回転により作動され、次々に血漿抽出、血漿混合および希釈を実行し、
(v)少なくとも2つの波長のビームで測定が行われ、ビームは最初に回折し、その後全反射し、最後に異符号の回折次数で回折し、
(vi)光吸着測定がキャリブレーション値と比較され、
(vii)血漿の濃度が測定される、上述の検出システム。
【0071】
血液が、測定される化合物を含んだ任意の他の複合流体により取り替えられた、上述の検出システム。
【0072】
光度測定用途のためのカートリッジの製造プロセスであって、
a.同様の検出室を規定する少なくとも2つのキャビティを有する1つのプラスチック成形品を、その面の少なくとも一部分に回折格子を有するプラスチック成形品に接着することと、
b.同様の検出室を規定する少なくとも2つのキャビティの上部に、紙またはプラスチックのラベルを配置することにより、またはスクリーン印刷若しくは任意のその他の印刷方法により、異なる光入射スリットを形成することと、
を備え、各光スリットが、離散した多波長を用いた光度測定システムのための異なる全光路に対応する、製造プロセス。
【0073】
当然のことながら、上述の様々な実施形態を必要に応じて組み合わせることが可能であり、そのような組み合わせが本開示に含まれる。例えば、任意の記載された実施形態が遠心分離式カートリッジとともに用いられてよい。さらに、図2および図3を参照して説明された波長多重は、例えば所望の波長のいくつかの個別の幅広ビーム光源を用いることにより、図4および図5a〜dを参照して説明された光路長選択/多重と組み合わせることができる。
【0074】
本開示は、特定のタイプの回折面またはパターンに限定されず、特定用途のそれぞれに対して当業者は特定の回折形状およびプロファイルおよびパターンを選択してよい。
【0075】
さらに、本開示は、特定のタイプのカートリッジ寸法または材料に限定されない。特に、上側カートリッジ部分(44)は、通常は光に対して透明であってよく、または反射および透過用のパターンを有していてもよい。さらに、光エミッタはレーザまたはダイオードレーザ又は任意の他の適切な光源を用いて実施されてもよいため、本開示はLEDを備える光エミッタの使用に限定されない。
【0076】
記載の実施形態は、標的分子濃度に応じて光吸収に影響を及ぼすために試薬を用いているが、付加試薬無しでこのような分子のラベルフリー検出(label free detection)が上記説明に含まれるように、特定の血液中のタンパク質などのいくつかの分子は異なる周波数の光を異なって吸収する。
【0077】
本開示は、マイクロ流体スケールに限定されないが、他の用途、例えば巨視的スケールが同じように想定される。誤解を避けるために、「マイクロ流体」という用語は、本明細書において少なくとも1次元が1mm未満であるリザーバまたはチャネルなどの流体要素を有する装置を意味するものと見なされる。
【0078】
本発明は特定の記載された実施形態および実施例に限定されることを意図していないが、添付の請求項により規定される。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E