【実施例】
【0052】
本発明は、以下の非制限的な実施例によってさらに明確にされるが、実施例は純水に発明の例示のためのものである。
【0053】
[実施例1(大型結晶で有機を含まないチャバザイトの合成)]
純水(または脱イオン水、deionized water)、水酸化カリウム溶液(45wt%KOH)およびカリウム交換したY型ゼオライト粉体を合わせて混合し、次の組成のゲルを形成した:5.5SiO
2:1.0Al
2O
3:1.09K
2O:66H
2O。このゲル組成物は、0.05のOH/SiO
2比を有する。1.5wt%のチャバザイトシードを加える前に、ゲルを室温にて約30分間攪拌し、さらに30分間攪拌した。それからゲルをオートクレーブに投入した。オートクレーブを120°Cに加熱し、当該温度に60時間維持しつつ、300rpmで攪拌した。冷却後、生成物を濾過により回収し、純水で洗浄した。得られた生成物は、チャバザイトのXRDパターンを有し、SARが5.5であり、16.5wt%のK
2Oを含んでいた。生成物を硝酸アンモニウムで4回交換し、カリウムの含有量を0.27wt%K
2Oまで減少させた。
【0054】
[実施例2(アンモニア交換チャバザイトのCa交換)]
引き続き、実施例1のサンプルを硝酸カルシウムで、80°Cにて2時間かけて交換した。交換の後に、材料を濾過し、純水で洗浄し、それから乾燥した。
【0055】
[実施例3(CaチャバザイトのFe交換)]
実施例2からのカルシウム交換チャバザイトのサンプルを、周辺温度(または環境温度)にて3時間かけて、硫酸鉄で交換した。濾過、洗浄および乾燥の後、サンプルは2.5wt%のCaOおよび5.2wt%のFe
2O
3を含んでいた。
【0056】
[比較例4(アンモニア交換チャバザイトのFe交換)]
実施例1のアンモニア交換チャバザイトのサンプルを、周辺温度(または環境温度)にて3時間かけて、硫酸鉄で交換した。濾過、洗浄および乾燥した後、サンプルは3.2wt%Fe
2O
3を含んでいた。
【0057】
[実施例5(CaチャバザイトのCu交換)]
実施例2のカルシウム交換チャバザイトのサンプルを、60°Cにて2時間かけて、硝酸銅で交換した。濾過、洗浄および乾燥した後、サンプルは2.7wt%のCaOおよび5.5wt%のCuOを含んでいた。
【0058】
[比較例6(アンモニア交換チャバザイトのCu交換)]
実施例1のアンモニア交換チャバザイトのサンプルを、60°Cにて2時間かけて、硝酸銅で交換した。濾過、洗浄および乾燥した後、サンプルは5.0wt%のCuOを含んでいた。
【0059】
[実施例7(大型結晶で有機を含まないチャバザイトの合成)]
純水、水酸化カリウム溶液(45wt% KOH)およびカリウム交換したY型ゼオライト粉体を合わせて混合し、次の組成のゲルを形成した:5.5SiO
2:1.0Al
2O
3:1.02K
2O:66H
2O。このゲル組成物は、0.025のOH/SiO
2比を有している。0.5wt%のチャバザイトシードを加える前に、このゲルを室温で約30分間攪拌し、さらに30分間攪拌した。それから、ゲルをオートクレーブに投入した。オートクレーブを140°Cに加熱し、当該温度に36時間維持しつつ、300rpmで攪拌した。冷却後、生成物を濾過により回収し、純水で洗浄した。得られた生成物は、チャバザイトのXRDパターンを有し、SARは5.6であり、16.7wt%のK
2Oを含んでいた。生成物を、硝酸アンモニウムで2回交換し、カリウムの含有量を2.0wt%K
2Oまで減少させた。
【0060】
[実施例8(アンモニア交換チャバザイトのCa交換)]
引き続き、実施例7のサンプルを、80°Cにて2時間かけて、硝酸カルシウムで交換した。交換の後、材料を濾過し、純水で洗浄し、それから乾燥した。
【0061】
[実施例9(CaチャバザイトのCu交換)]
実施例8のカルシウム交換チャバザイトのサンプルを、60°Cにて3時間かけて、硝酸銅で交換した。濾過、洗浄および乾燥した後、サンプルは2.9wt%のCaOおよび5.4wt%のCuOを含んでいた。
【0062】
[実施例10(CaチャバザイトのCu交換)]
実施例8のカルシウム交換チャバザイトのサンプルを、60°Cにて2時間かけて、硝酸銅で交換した。濾過、洗浄および乾燥した後、サンプルは3.1wt%のCaOおよび3.2wt%のCuOを含んでいた。
【0063】
[実施例11(カルシウム交換チャバザイトでの酢酸銅の初期湿潤含浸)]
実施例8のカルシウム交換チャバザイトのサンプルに、周辺温度にて、酢酸銅を含浸させた。含浸の後、材料を550°Cにて2時間焼成した。サンプルは4.2wt%のCaOおよび2.1wt%のCuOを含んでいた。
【0064】
[実施例12(アンモニア交換チャバザイトのSr交換)]
引き続き、実施例1のサンプルを、80°Cにて2時間かけて、酢酸ストロンチウムで交換した。交換の後、材料を濾過し、純水により洗浄し、それから乾燥した。
【0065】
[実施例13(SrチャバザイトのCu交換)]
実施例12のストロンチウム交換チャバザイトのサンプルを、60°Cにて2時間かけて、硝酸銅で交換した。濾過、洗浄および乾燥した後、サンプルは8.9wt%のSrOおよび5.0wt%のCuOを含んでいた。
【0066】
[実施例14(アンモニア交換チャバザイトでの硝酸ランタンの初期湿潤含浸)]
実施例7のサンプルに、周辺温度にて、硝酸ランタン溶液を含浸させた。含浸の後、材料を550°Cにて2時間を焼成した。
【0067】
[実施例15(LaチャバザイトのCu交換)]
実施例14のランタンチャバザイトのサンプルを、60°Cにて2時間かけて、硝酸銅で交換した。濾過、洗浄および乾燥した後、サンプルは8.7wt%のLa
2O
3と3.0wt%のCuOを含んでいた。
【0068】
(サンプル性能評価)
実施例3〜6および9〜16からのサンプルは、10vol%の水蒸気の存在下で、700、750および/または800°Cで16時間の間蒸気処理を行い、自動車の排気エージング条件(aging condition)をシミュレートした。
【0069】
エージング前後の材料の表面積を、BET法に従って、窒素ガス吸着を用いて測定した。これらの測定のために、Quantachrome Autosorbユニットを用い、液体窒素温度にて0.01〜0.05の相対圧力(P/P0)でデータを収集した。
【0070】
表面積測定と同時に収集された窒素吸着データは、t−プロット法を用いて材料のミクロポア容積を計算するためにも用いられた。
【0071】
NO
x変換率に関する熱水的にエージングされた材料の活性を、還元剤としてNH
3を用いて、フロースルータイプの反応器を用いて試験した。粉体のゼオライトサンプルをプレスした、35/70メッシュにふるいをかけ、石英管反応器に入れた。NO
xのNH
3−SCRガス組成は、500ppmNO、500ppmNH
3、5vol%O
2、0.6%H
2Oおよび残部N
2であった。空間速度は50,000h
−1であった。反応器の温度は傾斜をつけられ(または徐々に上げられ)、NO
x変換率は、MKS MultiGas2030赤外線分析器を用いて、各温度間隔にて測定された。
【0072】
表1は、10パーセント水/空気中で700°Cにて16時間蒸気処理した後の、Caを有するFeチャバザイトおよびCaを有さないFeチャバザイトでの、NH
3−SCR中の、表面積の保持率およびNO
x変換率を比較している。
【0073】
【表1】
【0074】
表1は、Ca−Feチャバザイトの表面積の保持率が、Caを有さない対応する材料のそれを上回ることを示す。本発明に係る材料の表面積およびミクロポア容積の保持率は、この失活(または脱活性化、deactivation)シミュレーションに暴露した後、少なくとも70%であるべきであり、好ましくは少なくとも80%であるべきである。
【0075】
図1に示すSCRデータを参照すれば、10パーセント水/空気中で700°Cにて16時間蒸気処理を受けたサンプルを試験した場合、Caをさらに含むFeチャバザイトについてのNO
x変換率は、Caを含まないFeチャバザイトのそれを遙かに上回っていることが明らかである。
【0076】
表2は、10パーセント水/空気中で700°Cにて16時間蒸気処理した後の、Caを有するCuチャバザイトおよびCaを有さないCuチャバザイトでのNH
3−SCR中、表面積の保持率およびNO
x変換率を比較している。
【0077】
【表2】
【0078】
表3は、10パーセント水/空気中で750°Cにて16時間蒸気処理した後の、Ca、SrまたはLaを有するCuチャバザイトおよびCa、SrまたはLaを有しないCuチャバザイトでの、NH
3−SCR中の表面積の保持率およびNO
x変換率を比較している。
【0079】
【表3】
【0080】
表4は、10パーセント水/空気中で800°Cにて16時間蒸気処理した後の、Caを有するCuチャバザイトおよびCaを有しないCuチャバザイトでの、NH
3−SCR中の、表面積の保持率およびNO
x変換率を比較している。
【0081】
【表4】
【0082】
表2〜4は、Ca−Cuチャバザイトの表面積保持率が、Caを有しない対応する材料よりも上回ることを示している。本発明に係る材料の表面積およびミクロポア容積の保持率は、例えば、10パーセントの水/空気中で700〜800°Cにて16時間、これらの失活シミュレーションに暴露した後、少なくとも70%であるべきであり、好ましくは少なくとも80%であるべきである。
【0083】
図2は、10パーセントの水/空気中で700°Cにて16時間蒸気処理をした後、Caを有するCuチャバザイトおよびCaを有しないCuチャバザイトでの、SCRのデータを比較している。
図2のデータは、200〜400°Cを超える範囲の温度で、向上したNO
xの安定性を示している。
【0084】
図3は、900°Cで10パーセントの水/空気中で1時間蒸気処理した後の、比較例17のSCRデータを本発明の実施例23と比較している。データは、2つの金属(ここではカルシウム)を含有するSAPO−34サンプルが、Caを含有しないサンプルと比較して、改善されたNO
x変換効率を示すことを表している。
【0085】
[実施例16(SAPO−34の合成)]
擬ベーマイトアルミナ、リン酸、アンモニウム安定化シリカゾル(Nyacol 2040NH4)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)溶液、モルホリンおよび純水を合わせて混合し、以下のモル組成を有するゲルを形成した。
0.6SiO
2:1.0Al
2O
3:1.0P
2O
5:0.85モルホリン:0.4TEAOH:32.5H
2O
【0086】
ゲルを、室温にて30分間攪拌し、オートクレーブに投入する前に、ゲルの全無機固形分の約1%の量でSAPO−34のシードを添加した。オートクレーブは180°Cに加熱され、当該温度にて24時間維持された。冷却後、生成物を濾過により回収し、純水で洗浄した。それから、生成物を乾燥させ、焼成して有機を除去した。SAPO−34生成物は、約12%のSiO
2を含んでいた。
【0087】
[比較例17(SAPO−34のCu交換)]
実施例16のSAPO−34のサンプルを、60°Cにて3時間かけて、硝酸銅で交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、サンプルは3.0wt%のCuOを含んでいた。
【0088】
[実施例18(SAPO−34のCa交換)]
実施例16のSAPO−34のサンプルは、周辺温度にて2時間かけて、水酸化カルシウムで交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、サンプルは0.9wt%のCaOを含んでいた。
【0089】
[実施例19(Ca−SAPO−34のCu交換)]
実施例18のCa−SAPO−34のサンプルを、周辺温度にて4時間かけて、硝酸銅で交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、サンプルは1.9wt%のCuOおよび0.8wt%のCaOを含んでいた。
【0090】
[実施例20(SAPO−34のK交換)]
実施例16のSAPO−34のサンプルを、80°Cにて2時間かけて、硝酸カリウムで交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、サンプルは1.5wt%のK
2Oを含んでいた。
【0091】
[実施例21(K−SAPO−34のCu交換)]
実施例20のK−SAPO−34のサンプルを、周辺温度にて4時間かけて、硝酸銅で交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、サンプルは3.0wt%のCuOおよび1.5wt%のK
2Oを含んでいた。
【0092】
[実施例22(Ca−SAPO−34の直接合成)]
擬ベーマイトアルミナ、リン酸、アンモニウム安定化シリカゾル(Nyacol 2040NH4)、酢酸カルシウム、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)溶液、モルホリンおよび純水を合わせて混合して、以下のモル組成を有するゲルを形成した。
0.5SiO
2:1.0Al
2O
3:1.0P
2O
5:0.1CaO:0.85モルホリン:0.4TEAOH:31.5H
2O
【0093】
ゲルを、室温にて30分間攪拌し、オートクレーブに投入する前に、ゲルの全無機固形分の約1%の量でSAPO−34のシードを添加した。オートクレーブは180°Cに加熱し、当該温度にて24時間維持した。冷却後、生成物を濾過により回収し、純水で洗浄した。それから、生成物を乾燥させ、焼成して有機を除去した。Ca−SAPO−34生成物は、約11%のSiO
2と1.7%のCaOを含んでいた。
【0094】
[実施例23(直接合成されたCa−SAPO−34のCu交換)]
実施例22のCa−SAPO−34のサンプルを、60°Cにて3時間かけて、硝酸銅で交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、サンプルは3.0wt%のCuOを含んでいた。
【0095】
[実施例24(SAPO−34のCaおよびCu交換)]
実施例16のCa−SAPO−34のサンプルを、40°Cにて3時間かけて、水酸化カルシウムおよび硝酸銅で交換した。濾過し、洗浄し、乾燥させた後、サンプルは3.5wt%のCuOおよび0.60wt%のCaOを含んでいた。
【0096】
(熱水安定性試験)
水安定性試験は、4gの材料を12gの水中でスラリーにすることにより実施した。スラリーを23mLのParrボンベに入れて、Parrボンベを105°Cのオーブンに24時間置いた。続いて、スラリーを濾過し、洗浄し、乾燥させた。水処理の前後で、表面積を分析した。
【0097】
(蒸気安定性試験)
サンプルはまた、10vol%の水蒸気の存在下で900°Cにて1時間蒸気処理され、自動車の排気エージング条件をシミュレートした。水熱的にエージングされた材料のNO
x変換率に関する活性は、還元剤としてのNH
3を用いて、フロースルータイプの反応器を用いて試験した。粉体のゼオライトサンプルをプレスして、35/70メッシュにふるいをかけ、石英管反応器に入れた。反応器の温度は傾斜をつけられ、NO
x変換率は、赤外線分析器を用いて、各温度間隔にて測定された。
【0098】
表5は、105°Cにて24時間水処理した後の、種々のSAPO−34サンプルの、表面積の保持率を比較する。
【0099】
【表5】
【0100】
表5は、実施例18、19、20、21、23および24におけるように、SAPO−34へのCaまたはKの添加は、熱水処理に対して材料を安定させ、一方、CaまたはKを有しない材料(実施例16のSAPO−34および比較例17のCu−SAPO−34)は、当該処理により実質的に完全に破壊されることを示している。本発明のSAPO−34材料は、熱水処理を受けた後に、その表面積およびミクロポア容積の少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%を保持することが望ましい。
【0101】
表6は、10パーセントの水/空気中で900°Cにて1時間蒸気処理した後の、実施例17、23および24のNH
3−SCR中のNO
x変換率を比較している。
【0102】
【表6】
【0103】
表6は、特に175°Cのような低温にて、Caを含む本発明の実施例23および24が、Caを含まない比較例17よりも、900°Cにて1時間蒸気処理した後で、NH
3−SCRに関して活性であることを示す。
【0104】
特に断りのない限りにおいて、構成要素の量、反応状態およびその他明細書および特許請求の範囲で用いられるもの等を表現する全ての数字は、あらゆる場合において用語“およそ”によって修正されるものとして理解されるべきである。その結果、特段の指示が無い限り、以下の明細書および添付する特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本発明により得られようとする所望の特性によって変化するかもしれない概算である。
【0105】
本発明の他の実施形態は、明細書の考慮および開示された本発明の実施から当業者にとって明白である。明細書および実施例は例示としてのみ考慮され、本発明の正確な範囲は次の特許請求の範囲により指示されることを意図している。