特許第6104276号(P6104276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6104276リチウムイオン電池用の正に帯電したケイ素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104276
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用の正に帯電したケイ素
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20170316BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20170316BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20170316BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20170316BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20170316BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20170316BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20170316BHJP
【FI】
   H01M4/38 Z
   H01M4/48
   H01M4/36 C
   H01M4/36 E
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M4/134
   H01M4/139
   H01M4/1395
【請求項の数】32
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-546511(P2014-546511)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-500558(P2015-500558A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2012075409
(87)【国際公開番号】WO2013087780
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】61/570,375
(32)【優先日】2011年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/630,873
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12164773.9
(32)【優先日】2012年4月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12167592.0
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502270497
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】プット,ステイン
(72)【発明者】
【氏名】ジレイアー,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ドリーセン,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ブリーデル,ジャン−セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】マークス,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ロングリー,デルフィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゴイア,ダン,ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャギ,ジョン,アイ.
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−196338(JP,A)
【文献】 特開2011−049046(JP,A)
【文献】 特開2011−086599(JP,A)
【文献】 特開2011−011928(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0147797(US,A1)
【文献】 特開2010−055775(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0292570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
H01M 4/131
H01M 4/134
H01M 4/1391
H01M 4/1395
H01M 4/36
H01M 4/48
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム蓄電池用の負極材料であって、ケイ素を含むコアを含み、前記コアの表面は、OSiH基(ここで1<x<3、1≦y≦3、およびx>yである)を有し、前記材料は、pH3.5〜9.5の範囲内で正のゼータ電位を有する、負極材料であって、
前記コアは平均粒度20nm〜200nmを有し、前記コアが、
−純ケイ素;または
−SiおよびSiOのナノメートルスケールの混合物からなる一酸化ケイ素粉末;または
−SiO表面層(0<x<2である)を有し、前記表面層が0.5nm〜10nmの平均厚さを有するケイ素;または
−式SiO・(M(ここで0<x<1および0≦y<1であり、aおよびbは電気的中性が得られるように選択され、MはCa、Mg、Li、Al、およびZrのいずれか1つ以上である)で表されるケイ素酸化物と金属酸化物との均一混合物;または
−合金Si−X(Xは、Sn、Ti、Fe、Ni、Cu、Co、およびAlからなる群のうちのいずれか1種類以上の金属である)、
のいずれかからなる、負極材料。
【請求項2】
リチウム蓄電池用の負極材料であって、ケイ素を含むコアを含み、前記コアの表面は、無機ナノ粒子からなるコーティングにより少なくとも部分的に覆われ、前記材料は、pH3.5〜9.5の範囲内で正のゼータ電位を有する、負極材料。
【請求項3】
前記無機ナノ粒子が、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、およびアンチモン化合物のいずれか1つである、請求項2に記載の負極材料。
【請求項4】
前記アルミニウム化合物がアルミニウムまたはAlのいずれかであり、前記亜鉛化合物が亜鉛または酸化亜鉛のいずれかであり、前記アンチモン化合物がアンチモンまたは酸化アンチモンのいずれかである、請求項3に記載の負極材料。
【請求項5】
前記無機ナノ粒子が、前記コア上に第1のコーティング層を形成し、前記第1のコーティ
ング層が10nm未満の厚さを有する、請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の負極材料。
【請求項6】
記コアと前記無機ナノ粒子との間に位置する第2のコーティング層をさらに含み、前記第2のコーティング層が炭素またはアルミニウムのいずれかを含む、請求項5に記載の負極材料。
【請求項7】
前記第1のコーティング層の厚さが1〜5nmである、請求項5または請求項6に記載の負極材料。
【請求項8】
前記第1のコーティング層は2〜5nmの厚さを有する、請求項5または請求項6に記載の負極材料。
【請求項9】
前記無機ナノ粒子が、還元によってアルミニウム、亜鉛、およびアンチモンのいずれか1つに変換されやすい前駆体材料からなる、請求項2乃至請求項8のいずれか一項に記載の負極材料。
【請求項10】
リチウム蓄電池用の負極材料であって、ケイ素を含むコアを含み、前記コアの表面は、陽イオン性多価金属イオンの吸着により少なくとも部分的に覆われ、前記材料はpH3.5〜9.5の範囲内で正のゼータ電位を有する、負極材料。
【請求項11】
前記金属イオンが、Alイオン、Sbイオン、Feイオン、Tiイオン、およびZnイオンからなる群のうちのいずれか1つ以上である、請求項10に記載の負極材料。
【請求項12】
リチウム蓄電池用の負極材料であって、ケイ素を含むコアを含み、前記コアの表面は、アミノ官能性金属化合物に共有結合したシラノール基によって少なくとも部分的に覆われ、前記金属は、Si、Al、およびTiからなる群のうちのいずれか1つ以上であり、前記材料はpH3.5〜9.5の範囲内で正のゼータ電位を有する、負極材料。
【請求項13】
リチウム蓄電池用の負極材料であって、ケイ素を含むコアを含み、前記コアの表面は、陽イオン性多価金属酸化物のナノ粒子の吸着により少なくとも部分的に覆われ、前記材料はpH3.5〜9.5の範囲内で正のゼータ電位を有する、負極材料。
【請求項14】
前記金属酸化物が、Al酸化物、Ca酸化物、Mg酸化物、Pb酸化物、Sb酸化物、Fe酸化物、Ti酸化物、Zn酸化物、およびIn水酸化物からなる群のうちのいずれか1つ以上である、請求項13に記載の負極材料。
【請求項15】
pH4〜9.5の範囲内で正のゼータ電位を有する、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の負極材料。
【請求項16】
pH4以上においてゼロ電荷点を有する、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の負極材料。
【請求項17】
前記コアの平均粒度が20nm〜200nmであり、前記コアが、
−純ケイ素;または
−SiおよびSiOのナノメートルスケールの混合物からなる一酸化ケイ素粉末;または
−SiO表面層(0<x<2である)を有し、前記表面層が0.5nm〜10nmの平均厚さを有するケイ素;または
−式SiO・(M(ここで0<x<1および0≦y<1であり、aおよびb
は電気的中性が得られるように選択され、MはCa、Mg、Li、Al、およびZrのいずれか1つ以上である)で表されるケイ素酸化物と金属酸化物との均一混合物;または
−合金Si−X(Xは、Sn、Ti、Fe、Ni、Cu、Co、およびAlからなる群のうちのいずれか1種類以上の金属である)、
のいずれかからなる、請求項2乃至請求項16のいずれか一項に記載の負極材料。
【請求項18】
1〜60m/gのBET値を有する、請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の負極材料。
【請求項19】
水溶性、またはN−メチルピロリドン可溶性のいずれかのバインダー材料をさらに含む、負極中での請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の負極材料の使用。
【請求項20】
黒鉛をさらに含む、負極中での請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の負極材料の使用。
【請求項21】
請求項2または請求項15乃至請求項18のいずれか一項に記載の負極材料の製造方法であって:
−ナノサイズのケイ素材料を準備するステップと、
−前記ケイ素材料を水中に分散させるステップと、
−ある量の陽イオン性多価金属イオンを前記分散液中に供給するステップと、
−前記分散液のpHを2〜3.5の値に調整するステップと、その後、
−前記分散液のpHをpH3.5〜4の値に調整するステップと、
−前記分散液のゼータ電位を測定するステップと、そして
前記ゼータ電位が負である場合は、
−前記分散液のpHを前回のpH値よりも0.5大きい値にさらに調整し、前記分散液のゼータ電位を測定するステップと、
−正のゼータ電位が測定されるまで前記調整ステップを繰り返すステップとを含む、方法。
【請求項22】
前記分散液のpHを2〜3.5の値に調整するステップが、HClの添加によって行われ、そして
前記分散液のpHを3.5〜4の値に調整するステップと、前記分散液のpHを前回のpH値よりも0.5大きい値にさらに調整するステップとの双方が、NaOHの添加によって行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項2乃至請求項9または請求項15乃至請求項18のいずれか一項に記載の負極材料の製造方法であって:
−ナノサイズのケイ素材料を準備するステップと、
−反応室中、少なくとも1mbarの真空下、50〜500℃の温度において、気体の有機アルミニウム流、有機亜鉛流、または有機アンチモン流と水蒸気とを使用して、2〜10nmの厚さの層が形成されるまで、前記ケイ素材料に対して原子層堆積プロセスを行うステップとを含む、方法。
【請求項24】
前記有機アルミニウム化合物がトリメチルアルミニウムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項10または請求項11または請求項15乃至請求項18のいずれか一項に記載の負極材料の製造方法であって:
−ナノサイズのケイ素材料を準備し、前記ケイ素材料を水中に分散させるステップと、
−ある量の陽イオン性多価金属イオンを前記分散液中に供給するステップと、
−前記分散液を混合し、それにより前記ケイ素材料を、陽イオン性多価金属イオンの吸着によって少なくとも部分的に覆うステップと、
−前記金属イオン−ケイ素混合物を乾燥させるステップとを含む、方法。
【請求項26】
−前記乾燥させた金属イオン−ケイ素混合物を水中に再分散させるステップと、
−前記分散液を2〜6のpHまで酸性化させるステップとの追加のステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記金属イオンが、Alイオン、Sbイオン、Feイオン、Tiイオン、およびZnイオンからなる群のうちのいずれか1つ以上である、請求項25または請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項13または請求項15乃至請求項18のいずれか一項に記載の負極材料の製造方法であって:
−ナノサイズのケイ素材料を準備するステップと,
−前記ケイ素材料を水中に分散させるステップと、
−ある量の陽イオン性多価金属酸化物のナノ粒子を前記分散液に加えるステップと、
−前記分散液を撹拌し、それにより前記ケイ素材料の表面を、陽イオン性多価金属酸化物のナノ粒子の吸着によって少なくとも部分的に覆うステップと、
−前記金属酸化物−ケイ素混合物を乾燥させるステップとを含む、方法。
【請求項29】
前記金属酸化物がAl酸化物、Ca酸化物、Mg酸化物、Pb酸化物、Sb酸化物、Fe酸化物、Ti酸化物、Zn酸化物、およびIn水酸化物からなる群のうちのいずれか1つ以上である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ケイ素材料が、
−純ケイ素;または
−SiおよびSiOのナノメートルスケールの混合物からなる一酸化ケイ素粉末;または
−SiO表面層(0<x<2である)を有し、前記表面層が0.5nm〜10nmの平均厚さを有するケイ素;または
−式SiO・(M(0<x<1および0≦y<1であり、aおよびbは電気的中性が得られるように選択され、MはCa、Mg、Li、Al、およびZrのいずれか1つ以上である)で表されるケイ素酸化物と金属酸化物との均一混合物;または
−合金Si−X(Xは、Sn、Ti、Fe、Ni、Cu、Co、およびAlからなる群のうちのいずれか1種類以上の金属である)、
のいずれかからなる、請求項21乃至請求項29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の負極材料を含むLiイオン蓄電池の電極接合体(electrode assembly)の製造方法であって:
−請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の負極材料を水溶液中に分散させることによって第1のスラリーを得るステップと、
−前記第1のスラリーのpHを、前記負極材料のゼータ電位が正になる範囲内の値に調整するステップと、
−CMC塩を水に溶解させることで、バインダー材料の水溶液を得るステップと、
−前記バインダー材料の水溶液のpHを、前記負極材料のゼータ電位が正になる範囲内の値に調整するステップと、
−前記第1のスラリーおよび前記バインダー材料の水溶液を混合して第2のスラリーを得るステップと、
−導電性炭素を前記第2のスラリー中に分散させるステップと、
−前記第2のスラリーを集電体の上に塗布するステップと、
−前記第2のスラリーを含む前記電極接合体を105〜175℃の温度で硬化させるステップとを含む、方法。
【請求項32】
前記バインダー材料の水溶液が1〜4重量%のNa−CMC濃度を有する、請求項31に記載の電極接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素を含み、表面のゼータ電位に影響を与えるべく化学的に処理またはコーティングされた表面を有する、リチウムイオン電池用負極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
Liイオン技術は、携帯用電池市場において優位に立っており、EVおよびHEV用途の重要な候補である。したがってこのような大容量用途では、より高いエネルギー密度および出力比の電極の必要性に加えて、安全性およびコストの問題を克服する必要がある。この問題に対処するため、古典的なLi挿入機構と比較して、種々のLi反応性機構(変換、置換、および合金化反応)が用いられる多種多様な研究方向が探求されており、ある程度成功を収めている。最近の知見では、商業用セルにおける高速実装の段階において、インターカレーション化合物(カンラン石LiFePO)を有する正極側および合金化反応が起こるアノード側の双方で、ナノ材料が最終的に使用されている。
【0003】
リチウムを有する元素の電気化学的合金化の実験的研究は70年代前半に始まっており、その頃にDeyは、室温におけるSn、Pb、Al、AuなどとのLi合金の形成を記載しており、それらが冶金学的方法で製造されたものに類似していることを指摘している。1976年には、Li12Si、Li14Si、Li13Si、およびLi22Siの相が連続的に形成されることによって、Liが高温でSiと電気化学的に反応することが見出された。我々は、この電気化学反応が、室温ではLi15Siの端成分に限定されることを現在では知っているとしても、対応する重量容量(3579mAh/g)および体積容量(8330mAh/cm)の双方は、それらの性質(インターカレーション、合金化、変換)とは無関係に、これまで確認された他のすべてのLi取り込み反応をはるかに上回っており、過去、現在、および確実に未来でもこの系に関心が向けられると自己評価される。
【0004】
したがって、合金ベースの電極に固有の欠点は、後の充電/放電による大きな体積変動によって生じる低いサイクル寿命(たとえば急速な容量低下)にあり、この結果、電極の電気化学的摩耗が生じ、それによって電気的パーコレーションの減少が生じ、その間に粒子表面上で大規模な電解質の劣化が生じる。この問題を回避するため、第1選択の解決法は、通常の変形および転位の機構がマイクロスケールの場合と同じではなく、すなわち小さな粒子は破壊されずに歪みを緩和できることから、ナノ粒子でできた電極を使用することである。残念ながら、これらのナノスケールケイ素粉末は、空気に曝露されると急速に酸化し、そして市販のSiの表面、または国際公開第2012/000858号パンフレットに開示されるようなプラズマ法でその場で形成されるSiの表面は、(プロトン化された)シラノール基SiOHで覆われている。これらの表面シラノール基は、電池の寿命中にアノード電極中のケイ素粒子の最適ではない挙動を生じさせる。
【0005】
電極の完全性を維持するための他の方法は、
1)基材への強い接着によって最良の電気的接触が得られ、したがってサイクル中に高品質の電気的接触を可能にする、金属薄膜の形成、或いは、2)魅惑的なサイクル特性を有するSi/C/カルボキシ−メチル−セルロース(CMC)電極が得られるように、適切なバインダーを用いた(金属−炭素−バインダー)複合電極の製造、或いは、3)体積緩衝マトリックスとして機能する炭素との金属−炭素(Si/C、Sn/C)複合材料の有機前駆体の熱分解による精密化、のいずれかである。
【0006】
スラリー調製の改善および良好なバインダーの選択によって、ケイ素系電極の挙動を改
善するために、10年間で大きな進展がなされた。にもかかわらず、次の段階の改善を実現するため、特にサイクル中のより良好な容量維持を実現するために、活物質粒子をさらに調整する必要がある。現在、リチウム対電極を用いてアノード容量を維持できる場合には、限定量のリチウムを含有するカソードを用いたケイ素系金属系電極は、一般に低い容量維持を示す。この問題を回避するため、ケイ素表面を変性することで電解質の劣化を制限する必要がある。
【0007】
ケイ素表面を変性し保護するために、種々の方策を用いることができる。しかし、材料は、電解質の安定性の電位窓を増加させ、それによって電解質の分解を減少させる必要があるため、新たな表面を電解質の反応性に応じて選択する必要もある。米国特許出願公開第2011/0292570号明細書において、正の表面電荷を有するSiナノ粒子は、グラフェンでコーティングされている。この正電荷は、アミノ基およびアンモニウム基、たとえばNRおよびNR(RはH、炭素原子数1乃至6(C〜C)−アルキル、または炭素原子数1乃至6(C〜C)−ヒドロキシアルキルから選択される)から好ましくは選択される官能基によってナノ粒子表面を変性することによって得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、サイクル中により良い容量維持を得ることが可能な蓄電池の負極中に使用される、新規なSi系粒子を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様から見ると、本発明は、リチウム蓄電池に使用するための負極材料を提供することができ、前記材料はケイ素を含むコアを含み、該材料は、pH3.5〜9.5、好ましくはpH4〜9.5の範囲内で正のゼータ電位を有する。ある実施形態においては、3.5〜9.5の範囲内、さらには4〜9.5の範囲内のpHで、ゼータ電位は少なくとも+10mV、好ましくは少なくとも+20mVである。より高いゼータ電位を有することの利点は、水性媒体中でのペーストの調製中に、炭素、活物質、およびバインダーの分散が改善されることである。当然ながら、ゼータ電位は、脱塩水中で測定される電位を意味する。コア材料は、ナノメーターサイズ(したがって少なくとも1つの寸法が100nm未満である)、サブミクロンサイズ、またはミクロンサイズであってよく、国際公開第2012/000854号パンフレットに記載されているような、Si粒子の平均粒度がSiワイヤーの平均幅の少なくとも5倍であり、好ましくはSiワイヤーの平均幅の少なくとも10倍である、ナノサイズSi粒子およびナノサイズSiワイヤーの混合物を含んでよい。Liイオン二次電池用のこの負極材料は、サイクル中の容量低下を制限することにおいて大きな利点が得られる。一実施形態においては、この材料は、pH4以上、好ましくはpH7以上でゼロ電荷点を有する。
【0010】
別の一実施形態においては、コアは20nm〜200nmの平均粒度を有し(平均粒径は、無孔質の球状粒子および個別の材料の理論密度を仮定して計算した。導出全体は示さないが、ナノメートルの単位での平均粒径の計算式は、6000/(m/g単位でのBET表面積)×(g/cm単位での密度)である)、コアは、
−純ケイ素(少なくとも冶金グレード)、または
−SiおよびSiOのナノメートルスケールの混合物からなり、粉末はマイクロメートルスケールであってよい一酸化ケイ素粉末、または
−SiO表面層(ここで0<x<2である)を有し、表面層が0.5nm〜10nmの平均厚さを有するケイ素、または
−式SiO・(M(ここで0<x<1および0≦y<1であり、aおよびbは電気的中性が得られるように選択され、MはCa、Mg、Li、Al、およびZrのいずれか1つ以上である)で表されるケイ素酸化物と金属酸化物との均一混合物、または
−合金Si−X(ここで、Xは、Sn、Ti、Fe、Ni、Cu、Co、およびAlからなる群のうちのいずれか1種類以上の金属である)、
のいずれかからなる。純ケイ素はナノメートルサイズであってよい。ある実施形態においては、ケイ素は炭素でコーティングされ得る。ケイ素材料は、国際公開第2012−000858号パンフレットに開示されるような、SiO表面層(ここで0<x<2である)を有し、表面層は0.5nm〜10nmの平均厚さを有する、20nm〜200nmの平均一次粒度を有するSi粉末であってもよい。米国特許出願公開第2010−0270497号明細書、国際公開第2007−120347号パンフレット、または同時係属出願の国際出願PCT/EP2011/068828号明細書に開示されるように、前述の合金は、Siに加えて、Sn、Ti、Ni、Fe、Cu、Co、およびAlなどの金属を含むことができる。
【0011】
特定の一実施形態においては、コアの表面はOSiH基(ここで1<x<3、1≦y≦3、およびx>yである。)を有する。前記OSiH基は、シラノール(SiOH)およびSiH(ここで1<x<3である)の混合物であると見なすこともできる。シラノール基およびSiHの存在は以下のものによって検出することができる。
H MAS NMR分光法:1.7ppm前後および4ppm前後の2つの明確な領域を示す。第1のものはSi−OHに対応し、第2のものは吸着した水またはSiH基に帰属される。
29Si MAS/CPMG NMR分光法:単離シラノールまたは隣接シラノールの双方のケイ素のいずれかである1つのヒドロキシル基を有するケイ素原子に帰属される−100ppmの第1のバンドを示す。−82ppmにおけるもう1つのバンドは、少なくとも1つの水素を有するケイ素(SiH)に帰属される。
−DRIFT赤外分光法:種々の結晶モードおよび、1100cm−1前後におけるSi−O−Siモードの存在を示す。3500cm−1前後のピークはヒドロキシル化シラノール基に帰属される。2260〜2110cm−1では、種々のピークがOySiHxのデフォーメーション(deformation)モードに帰属される。
【0012】
別の一実施形態において、コアの表面は、無機ナノ粒子からなるコーティングによって少なくとも部分的に覆われる。表面が少なくとも部分的に覆われるとは、この場合もコアの表面がOSiH基(ここで、1<x<3、1≦y≦3、およびx>yである)をさらに有することができることを意味する。これらの無機ナノ粒子は、アルミニウム化合物(Alなど)、亜鉛化合物(酸化亜鉛など)、およびアンチモン化合物(酸化アンチモンなど)のいずれか1つであってよい。一実施形態において、コーティング中のナノ粒子は、還元によってアルミニウム、亜鉛、およびアンチモンのいずれか1つに変換されやすい前駆体材料からなる。ナノ粒子は、10nm未満の厚さを有する第1のコーティング層をコア上に形成することができる。コアとナノ粒子の第1のコーティングとの間に位置する第2のコーティング層を設けることができ、前記第2のコーティング層は炭素またはアルミニウムのいずれかを含む。第1および第2のコーティング層のいずれか一方または双方は電気化学的に活性であってよい。コアの表面が無機ナノ粒子からなるコーティングで少なくとも部分的に覆われる実施形態は、コアの表面がOSiH基(ここで1<x<3、1≦y≦3、およびx>yである)を有する実施形態と組み合わせることができる。
【0013】
別の特定の一実施形態において、コアの表面は、第1級、第2級、および第3級のアミン官能基のいずれか1つ以上を有するカチオン性ポリマーの吸着により少なくとも部分的に覆われる。表面が少なくとも部分的に覆われるとは、この場合もコアの表面がOSiH基(ここで1<x<3、1≦y≦3、およびx>yである)をさらに有することができることを意味する。さらに別の特定の一実施形態において、コアの表面は、陽イオン性多価金属イオンの吸着により少なくとも部分的に覆われる。表面が少なくとも部分的に覆
われるとは、この場合もコアの表面がOSiH基(ここで1<x<3、1≦y≦3、およびx>yである)をさらに有することができることを意味する。一実施形態においては、金属イオンは、Alイオン、Sbイオン、Feイオン、Tiイオン、およびZnイオンからなる群のうちのいずれか1つ以上であってよい。この実施形態は、コアの表面がOSiH基(ここで1<x<3、1≦y≦3、およびx>yである)を有する実施形態と組み合わせることができる。さらなる特定の一実施形態において、コアの表面は、陽イオン性多価金属酸化物のナノ粒子の吸着により少なくとも部分的に覆われる。表面が少なくとも部分的に覆われるとは、この場合もコアの表面がOSiH基(ここで1<x<3、1≦y≦3、およびx>yである)をさらに有することができることを意味する。一実施形態において、金属酸化物は、Al酸化物、Mg酸化物、Pb酸化物、Sb酸化物、Fe酸化物、Ti酸化物、Zn酸化物、およびIn水酸化物からなる群のうちのいずれか1つ以上である。さらに別の特定の一実施形態においては、コアの表面は、アミノ官能性金属化合物に共有結合したシラノール基(−Si−O基)で少なくとも部分的に覆われ、前記金属は、Si、Al、およびTiからなる群のうちのいずれか1つ以上である。表面が少なくとも部分的に覆われるとは、この場合もコアの表面がOSiH基(ここで1<x<3、1≦y≦3、およびx>yである)をさらに有することができることを意味する。一実施形態においては、コア表面の化学的処理に使用されるアミノ官能性金属化合物はアルコキシドであってよい。
【0014】
第2の態様からみると、本発明は、水溶性、またはN−メチルピロリドン可溶性のいずれかのバインダー材料をさらに含む、負極中での前述の活物質の使用を提供することができる。前記負極は黒鉛をさらに含むことができる。
【0015】
第3の態様からみると、本発明は、負極材料の製造方法であって:
−ナノサイズのケイ素材料を準備するステップと、
−ケイ素材料を水中に分散させるステップと、
−ある量の陽イオン性多価金属イオンを分散液中に供給するステップと、
−分散液のpHを2〜3.5、好ましくは2〜2.5の値に調整するステップと、その後、
−分散液のpHをpH3.5〜4の値に調整するステップと、
−分散液のゼータ電位を測定するステップと、そして
ゼータ電位が負である場合は、
−分散液のpHを前回のpH値よりも0.5大きい値にさらに調整し、前記溶液のゼータ電位を測定するステップと、
−正のゼータ電位が測定されるまで調整ステップを繰り返すステップとを含む、方法を提供することができる。
多価陽イオンが分散液中に混合されると、陽イオン性多価金属イオンが吸着することによりケイ素材料が部分的に覆われ、これが続いてのpH調整のステップ中に無機ナノ粒子からなるコーティングに変換される。ナノサイズのケイ素材料は、中性pHで脱塩水中に分散させることができる。分散液のpHを2〜3.5の値に調整するステップは、HClの添加によって行うことができる。pHが2未満の値に調整されると、Siが酸性溶液中に溶解する危険性がある。分散液のpHを3.5〜4の値に調整するステップと、該当する場合には分散液のpHを前回のpH値よりも0.5大きい値にさらに調整するステップとの双方を、NaOHの添加によって行うことができる。陽イオン性多価金属イオンは、ナノサイズのケイ素材料中に(偶発的な)ドーパントとして存在し得、或いは、分散液の形成に使用される水に加えられることもできる。
【0016】
本発明は、負極材料の製造方法であって:
−ナノサイズのケイ素材料を準備するステップと、
−反応室中、少なくとも1mbarの真空下、50〜500℃の温度において、気体の有
機アルミニウム流、有機亜鉛流、または有機アンチモン流と水蒸気とを使用して、2〜10nmの厚さの層が形成されるまで、前記ケイ素材料に対して原子層堆積プロセスを行うステップとを含む、方法を提供できる。真空は最終的には10−1mbarであってよく、プロセスをより経済的にするために、温度は150〜250℃であってよい。
【0017】
本発明はまた、負極材料の製造方法の実施形態であって:
−ナノサイズのケイ素材料を準備し、そのケイ素材料を水中に分散させるステップと、
−ある量の陽イオン性多価金属イオンを分散液中に供給するステップと、
−分散液を混合することによって、陽イオン性多価金属イオンの吸着によりケイ素材料を少なくとも部分的に覆うステップと、
−金属イオン−ケイ素混合物を乾燥させるステップとを含む、実施形態を提供できる。ナノサイズのケイ素材料は、中性pHで脱塩水中に分散させることができる。金属イオンは、たとえばAlイオン、Sbイオン、Feイオン、Tiイオン、およびZnイオンからなる群のうちのいずれか1つ以上であってよい。乾燥ステップは、真空下で70〜100℃の温度で少なくとも1時間加熱するステップを含むことができる。この方法は、乾燥した金属イオン−ケイ素混合物を水中に再分散させるステップと、該分散液を2〜6のpHに酸性化するステップとの追加のステップを含むことができる。このようにしてより大きな値のゼータ電位が実現される。双方の追加のステップは、2〜6のpHである酸性溶液中に再分散させることにより組み合わせることができる。この方法の実施形態を、本発明の第3の態様で最初に示された方法と組み合わせることもできる。
【0018】
本発明はまた、負極材料の製造方法であって:
−ナノサイズのケイ素材料を準備するステップと、
−ケイ素材料を、アンモニウムイオンを含む水中に分散させ、ケイ素材料の表面をシラノール基で覆うステップと、
−アミノ官能性金属酸化物化合物を混合物に供給するステップと、
−混合物を撹拌することによって、シラノール基を前記アミノ官能性金属化合物に共有結合させるステップと
−混合物を乾燥させるステップとを含む、方法を提供できる。アンモニウムイオンは、溶液のpHを制御するために加えられる。金属酸化物化合物の溶解をより容易にするために、溶液はエタノールを含むことができる。乾燥ステップは、真空下で70〜100℃の温度に少なくとも1時間加熱するステップを含むことができる。先にエタノールによる洗浄ステップを行うことができる。金属酸化物化合物中の金属は、たとえばSi、Al、およびTiからなる群のうちのいずれか1つ以上であってよい。
【0019】
本発明は、負極材料の製造方法であって:
−ナノサイズのケイ素材料を準備するステップと、
−ケイ素材料を水中に分散させるステップと、
−ある量の陽イオン性多価金属酸化物のナノ粒子を分散液に加えるステップと、
−分散液を撹拌することによって、陽イオン性多価金属酸化物のナノ粒子の吸着によりケイ素材料の表面を少なくとも部分的に覆うステップと、
−金属酸化物−ケイ素混合物を乾燥させるステップとを含む、方法も提供することができる。ナノサイズのケイ素材料は、中性pHで脱塩水中に分散させることができる。金属酸化物は、たとえばAl酸化物、Mg酸化物、Pb酸化物、Sb酸化物、Fe酸化物、Ti酸化物、Zn酸化物、およびIn水酸化物からなる群のうちのいずれか1つ以上であってよい。乾燥ステップは、真空下で70〜100℃の温度に少なくとも1時間加熱するステップを含むことができる。
【0020】
異なる方法の実施形態において、最終生成物は、0.01cc/g未満の開放多孔質容積を有することができる。方法の一実施形態において、前述の各方法におけるナノサイズ
材料は、粒子、または粒子とワイヤーとの混合物のいずれかからなることができ、粒子およびワイヤーの双方がナノサイズであり、粒子の平均粒度は、ワイヤーの平均幅の少なくとも5倍であり、好ましくはワイヤーの平均幅の少なくとも10倍である。別の方法の一実施形態においては、ケイ素材料は、
−純ケイ素、または
−SiおよびSiOのナノメートルスケールの混合物からなり、マイクロメートルスケールであってよい一酸化ケイ素粉末、または
−SiO表面層(ここで0<x<2である)を有し、表面層が0.5nm〜10nmの平均厚さを有するケイ素、または
−式SiO・(M(ここで0<x<1および0≦y<1であり、aおよびbは電気的中性が得られるように選択され、MはCa、Mg、Li、Al、およびZrのいずれか1つ以上である)で表されるケイ素酸化物と金属酸化物との均一混合物、または
−合金Si−X(ここで、Xは、Sn、Ti、Fe、Ni、Cu、Co、およびAlからなる群のうちのいずれか1種類以上の金属である)、
のいずれかから構成され得る。
【0021】
第4の態様からみると、本発明は、前述の負極材料を含むLiイオン蓄電池のための電極接合体(electrode assembly)の製造方法であって:
−負極材料を水溶液中に分散させることによって第1のスラリーを得るステップと、
−第1のスラリーのpHを、前記材料のゼータ電位が正になる範囲内の値に調整するステップと、
−CMC塩を水に溶解させることで、バインダー材料の水溶液を得るステップと、
−バインダー材料の水溶液のpHを、前記材料のゼータ電位が正になる範囲内の値、好ましくは第1のスラリーのpH値に調整するステップと、
−第1のスラリーおよびバインダー材料の水溶液を混合して第2のスラリーを得るステップと、
−導電性炭素を第2のスラリー中に分散させるステップと、
−第2のスラリーを集電体、好ましくは銅箔の上に塗布するステップと、
−第2のスラリーを含む電極接合体を105〜175℃の温度で硬化させるステップとを含む、方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、負に帯電したポリマー(23)で囲まれた、正に帯電した層(22)を有するケイ素粒子(21)の概略図である。
図2図2は、ケイ素粒子(または一次粒子)(11)の図であり、該一次粒子の表面に、A:無機層(12)のコーティング、B:物理的に吸着させた有機分子(13)、C:化学的に結合させた有機分子(14)、D:吸着させたナノ粒子(二次粒子)(15)を有する図である。
図3図3は、ALD反応器の図であり、Pはポンプを、N−pはナノ粉末を、Arはアルゴンガス源を示す図である。
図4図4は、アルミナコーティング(62)を有するケイ素粒子(61)のTEM写真を示す図である。
図5図5は、コーティングされたケイ素(1)のゼータ電位(mV)対pH、および未処理ケイ素(2)との比較を示す図であるである。
図6図6は、ケイ素およびコーティングされたケイ素のCMC溶液中の懸濁液の経時による粘度変化を示す図であり、□=CMCのみの場合(空試験)、●=未処理ケイ素の場合(参照)、△=アルミナコーティングされたケイ素の場合を示す図である。
図7図7は、アノード材料としてコーティングされたケイ素を使用した電池の可逆脱リチオ化容量(1)、およびアノード材料として未処理ケイ素を使用した電池の脱リチオ容量(2)との比較を示す図である。
図8図8は、アノード材料としてアルミナコーティングされたケイ素(25サイクルのALD)を使用した電池の可逆脱リチオ化容量を示す図である。
図9図9は、アルミナコーティングを有するケイ素ナノワイヤーのTEM写真(a)、並びに、該サンプルのアルミナコントラスト(b)、ケイ素コントラスト(c)、および酸素コントラスト(d)のEFTEMマップを示す図である。
図10図10は、ナノワイヤーのpHに従うゼータ電位(mV)を示す図であり、コーティングされたナノワイヤー(1)、および未処理ナノワイヤー(2)との比較を示す図である。
図11図11は、酸塩基処理されたケイ素のpHに従うゼータ電位(mV)を示す図である。
図12図12は、処理されたケイ素をアノード材料として使用した電池の可逆脱リチオ化容量(1)、および未処理ケイ素をアノード材料として使用した電池の脱リチオ化容量(2)との比較を示す図である。
図13図13は、APTS(Si:APTS=4/5)コーティングされたケイ素(1)のゼータ電位(mV)対pH、および未処理ケイ素(2)との比較を示す図である。
図14図14は、吸着したアルミナナノ粒子を有するケイ素(1)のゼータ電位(mV)対pH、および未処理ケイ素(2)との比較を示す図である。
図15図15は、アルミナ吸着ケイ素をアノード材料として使用した電池の可逆脱リチオ化容量(mAh/g対サイクル数)(1)、およびアルミナ処理したシリカを吸着したケイ素をアノード材料として使用した電池の可逆脱リチオ化容量(2)を示す図である。
図16図16は、物理的に吸着させたカチオン性ポリマーを有するケイ素(1)のゼータ電位(mV)対pH、および未処理ケイ素(2)との比較を示す図である。
図17図17は、カチオンコーティングされたケイ素(1)のゼータ電位(mV)対pH、および未処理ケイ素(2)との比較を示す図である。
図18図18は、カチオンコーティングされたケイ素をアノード材料として使用した電池の可逆脱リチオ化容量(mAh/g対サイクル数)を示す図である。
図19図19は、アルミコーティングされたケイ素(異なるBET)(1)のゼータ電位(mV)対pH、および未処理ケイ素(初期BETと同じ)(2)との比較を示す図である。
図20図20は、アルミナコーティングされた一酸化ケイ素(1)のゼータ電位(mV)対pH、および未処理一酸化ケイ素(2)との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的は、Siを含む粒子のための変性された粒子表面を提案することであり、それによって、バインダーとの良好な相互作用によりサイクル全体を通して容量が維持され、そして電解質と表面との反応性が低下する。本発明において提案される方法は、粒子表面を変性し、pH3.5〜9.5の範囲内で正のゼータ電位を有する表面である、正に帯電した表面を形成することである。
【0024】
正に帯電した粒子は、蒸留水中に20g/lの粉末が分散するという特徴を有する。水性媒体の分散系のゼータ電位「Z」は、たとえばColloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を使用して測定される。特定のpHにおいてZが0を超える場合に、最終的に粒子は正に帯電した粒子であると定義され、負に帯電した粒子はZ<0を有する粒子として定義される。これは図1に示されている。
【0025】
ケイ素表面は、中性pHでは本来負に帯電しており、pH2〜3(シリカの等電点またはIEP)では正に帯電しうる。表面化学基は、主として脱プロトン化したシラノール基である。この帯電は、負に帯電したバインダーとの良好な相互作用には好都合ではない。
実際、好ましいバインダーは、中性またはより低いpHで負に帯電するカルボキシルメチルセルロースバインダー(CMC)またはポリアクリレートPAAなどの水溶性ポリマーである。
【0026】
本発明者らは粒子表面を変性するための以下の4つの異なる方法を提案する(図2参照):
(A)層堆積法による、または粒子がケイ素を含むコアで構成され、無機層がコアに結合し、コーティングは、後のコーティングとなる成分を含む粉末の連続的な酸−塩基処理を含む化学処理によって得られることによる、少なくとも部分的な無機層のコーティング(たとえばアルミナ、酸化亜鉛、または酸化アンチモンのコーティング);
(B)粒子(たとえば陽イオン性分子)へのコアに陽イオン(たとえば陽イオン性多価金属イオン)または有機分子の物理吸着;
(C)有機分子の化学吸着(共有結合の形成)(たとえば表面シラノール上への、シラン型分子の、または一般に任意のアミノ官能性金属酸化物のグラフト化);及び
(D)粒子のコアへのナノ粒子(二次粒子)の吸着(たとえば、ケイ素表面の表面におけるアルミナのナノ粒子の吸着)。
【0027】
図2は球状粒子を示しているが、粒子はケイ素を含むワイヤーからも構成され得る。
【0028】
コーティングが適用される場合、リチウムは薄層(有機層または無機層)を通過して拡散可能であるため、このコーティングは絶縁性であり得る。また、薄い金属酸化物コーティングが適用される場合、リチウムイオン電池の第1サイクル中に、該酸化物を金属および酸化リチウムに変換できるというさらなる利点が存在する。この不可逆変換によって、ケイ素のように、リチウムと合金を形成することができ、さらなる容量を得ることができ、体積膨張が可能となる金属表面が形成される;提案されるアルミナ/アルミニウム、亜鉛、またはアンチモンのコーティングは、ケイ素の体積膨張とともに成長して、電解質/ケイ素の接触を継続的に保護することができる。
【0029】
この正に帯電したケイ素またはケイ素を含む材料は、リチウムイオン電池におけるアノード材料として試験される。粉末をバインダーおよび炭素導電体と混合してスラリーを形成し、これを銅箔上にコーティングする。本発明は、銅箔上のコーティング中のケイ素、炭素、およびポリマーの分散性を改善し、容量維持を改善し、そして不可逆性を低下させることによって、ケイ素を含む粒子の電気化学的挙動を改善することができる。
【実施例】
【0030】
実施例1:アルミナコーティングされたケイ素
この実施例では、ナノサイズコーティングを形成するための堆積方法である、原子層堆積(ALD)によって、アルミナコーティングが適用される。ALDプロセスでは、2つの(またはそれを超える)交互の表面自己制御式の化学気相堆積反応が行われる。この技術は、ナノ粉末のコーティングにも使用される。定置装置を使用して少量の粉末をコーティングすることができるが、より多い量の場合は、米国特許出願公開第2011/0200822号明細書に記載されるように、流動粒子床反応器または回転反応器を使用することができる。Alのコーティングは、トリメチルアルミニウム(TMA)およびHOを反応物質として使用して、熱ALDによって堆積させることができる。反応温度はおよそ200℃である。反応性表面の飽和状態は、前駆体の分解生成物に対して質量分析を使用することで、観測することができる。
【0031】
この実施例において、国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製され、21m/gのBET、0.001cc/g未満の開放多孔質容積(アルゴン流下150℃で1時間サンプルを予備加熱した後、77KでNの等温吸脱着によって、ASA
P装置で測定を行った)、酸素含有量<4重量%、80nm<D80<200nmで規定される一次粒度、および初期の負のゼータ電位(水中pH7で測定)を有する、5gのナノケイ素粉末を秤量し、ガラス反応器(図3参照)に投入した。反応器出口3は、真空油ポンプに10−2mbarで接続した。反応器ガス入口1を、swagelok(登録商標)管および自動弁を使用してトリメチルアルミニウム(TMA)供給部(97%、Sigma−Aldrich)に接続した。反応器ガス入口2を、swagelok(登録商標)管および自動弁を使用して、HO(脱イオン化した)のガラス瓶に接続した。1「サイクル」の間、TMAおよび水のガス流を使用した。表面がTMAで飽和状態になるまで(5分)、反応器からTMAに接続される弁を開放し、そして弁を閉じた。この後、反応器からHOに接続される弁を5分間開放した。コーティングの形成に、6サイクル(TMAの後に水)を使用した。同量の未処理のナノケイ素粉末を参照例として使用する。
【0032】
顕微鏡写真は、ケイ素粒子の表面におけるコンフォーマル(conformal)に均一で薄い(3nm)アルミナコーティングを示した(図4参照)。この粉末のBET表面は20m/g(未処理ケイ素の21m/gと同等である)と測定され、アルゴン下150℃で1時間サンプルを予備加熱した後、77KでNの等温吸脱着の結果より0.001cc/g未満の多孔質容積を有した。アルミニウム量はICPによって測定され、2重量%の値が算出された。
【0033】
たとえばALDプロセスは:
−少なくとも10−1mbarの真空下、150〜250℃の温度で、反応室中にナノサイズのケイ素材料を準備するステップと、
−気体の有機アルミニウム、有機亜鉛、または有機アンチモン化合物を反応室に注入するステップと、
−ケイ素材料の表面を有機アルミニウム、有機亜鉛、または有機アンチモン化合物で飽和させるステップと、続いて
−水蒸気を反応室に注入するステップと、それによって
−ケイ素材料の表面に酸化アルミニウム、酸化亜鉛、または酸化アンチモンのコーティングをもたらすステップとを含み、
2〜10nmの厚さのコーティングが形成されるまで
−気体の有機アルミニウム、有機亜鉛、または有機アンチモン化合物を反応室に注入するステップと、
−ケイ素材料の表面を有機アルミニウム、有機亜鉛、または有機アンチモン化合物で飽和させるステップと、続いて
−水蒸気を反応室に注入するステップとを
繰り返す。
【0034】
得られた材料のゼータ電位の測定を以下の手順に従い実施した:参照である2重量%のナノケイ素粉末およびアルミナコーティングされたケイ素の双方の脱塩水懸濁液150mlを、超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。水性媒体のこの懸濁液のゼータ電位を、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を用いて測定した。サンプルを、中性pHから酸性pHまでは0.5MのHClで、より塩基性のpHまでは0.5MのNaOHで、自動的に滴定した。
【0035】
ナノケイ素粉末上の強い負の表面電荷が明確に測定された(図5、線2参照)。ゼータ電位はpH5から2において負であった。アルミナコーティングされたケイ素の場合、粉末は、pH9.5から少なくともpH2.5において正のゼータ電位を有していた(図5、線1)。
【0036】
50重量%のこの粉末(乾燥残留物を基準とする)、25重量%のNa−CMCバイン
ダー(分子量<200,000)、および25重量%の導電性添加剤(Super C65、Timcal)を使用してスラリーを調製した。最初のステップでは、2.4%のNa−CMC溶液を調製し、終夜溶解させた。次に、導電性炭素をこの溶液に加え、高剪断ミキサーで20分間撹拌した。導電性炭素の良好な分散が得られた後、活物質を加え、スラリーを再び高剪断ミキサーを使用して30分間撹拌した。電解質とケイ素表面との間の接触をコーティングが防止することの裏付けの1つは、CMC溶液の粘度変化である。剪断速度が制御された条件下で、コーン−プレート測定用形状を用い、Fysica MCR300レオメーターで23℃において流動特性を測定した。ポリマー(この例ではCMC)が未処理ケイ素表面と接触すると、CMC/Si溶液/懸濁液の粘度低下が観測された。図6に示すように、CMCのみを用いた空試験に対して、ケイ素をアルミナでコーティングした場合には粘度が維持され(□=CMCのみの場合、●=未処理ケイ素の場合(基準)、△=アルミナコーティングされたケイ素の場合)、このことはケイ素が別の材料(この場合Al)で完全に覆われていることを証明した。
【0037】
得られたスラリーを、125μmの湿潤厚さで銅箔(17μm)上にコーティングし、次に70℃で2時間乾燥させることによって、電極を作製した。円形電極を打抜き、小型真空オーブン中150℃で3時間乾燥させた。グローブボックス(乾燥アルゴン雰囲気)中で準備したコインセルを使用して、電極を金属リチウムに対して電気化学的に試験した。使用した電解質は、EC/DEC(50/50重量%)+10%FEC+2%VC(Semichem社)の混合物中の1MのLiPFであった。コインセルを、CCモードにおいて、10mV〜1.5Vで、C/5(3570mAh/gの活物質が5時間で完全充電又は放電されることを意味する)のCレートで試験した。結果を図7に示す。
アルミナのコーティングによって電極の挙動が改善されることが明らかである(線1):100サイクル後、放出容量は依然としておよそ2400mAh/gであるのに対し、未処理ケイ素では1000mAh/gであった(線2)。1nmよりも薄いコーティングでは所望の効果が得られないことも分かった。
【0038】
比較例1:アルミナの厚さが大きいアルミナコーティングされたケイ素
実施例1のようにALDプロセスを使用して、アルミナコーティングされたケイ素を作製した。この粉末の作製には(実施例1の6サイクルと比較して)25サイクル(TMAの後に水)を使用した。アルミナ層の厚さは12nmであった。表面のBETは16m/gまで減少し、アルミナ量は8重量%の粉末にて測定された。実施例1のようにスラリーおよび電池を作製し、その結果を図8に示す。容量は第1サイクルから500mAh/g未満であり、この容量がその後サイクルで低下した。この結果は、電気化学反応を可能にするために、ケイ素の表面に薄層を有することが重要であることを明確に示すものであった。
【0039】
実施例2:アルミナコーティングされたケイ素粒子およびナノワイヤー
この実施例において、国際公開第2012/000854号パンフレットに従い作製され、酸素含有量が<4重量%であるSi粒子およびナノワイヤー上に、原子層堆積(ALD)によってアルミナコーティングを適用した。合成手順は実施例1に示される。
【0040】
顕微鏡写真(図9参照)は、ケイ素粒子の表面上のコンフォーマル(conformal)に均一で薄いアルミナコーティングを示した。コーティングされた粉末をエタノール中に分散させ、その後Cu支持体上に搭載された炭素グリッド上に配置した。粉末の損傷を回避するため、サンプル調製における粉砕ステップは行わなかった。ケイ素、アルミナ、および酸素のコントラストを示すEFTEMマップを、Philips CM30−FEG顕微鏡を使用し、300kVにおいて得た(図9参照)。アルミニウム量をICPによって測定し、2重量%の値を算出した。実施例1と同様に、経時によるCMC−粉末溶液の粘度変化を測定することによって、ケイ素が異なる材料(この場合Al)で完
全に覆われていることを証明することが可能である。
【0041】
ゼータ電位の測定を以下の手順により行った。参照である2重量%の粉末およびアルミナコーティングされたケイ素ナノワイヤーの双方の脱塩水懸濁液150mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。水性媒体のこの懸濁液のゼータ電位を、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を用いて測定した。サンプルを、中性pHから酸性pHまでは0.5MのHClで、より塩基性のpHまでは0.5MのNaOHで、自動的に滴定した。
【0042】
ナノワイヤー上の強い負の表面電荷が明確に測定された(図10、線2参照)。ゼータ電位はpH8から2において負であった。アルミナコーティングされたケイ素ナノワイヤーの場合、粉末はpH8から少なくともpH2において大きな正のゼータ電位を有していた(図10、線1)。
【0043】
実施例3:ケイ素表面の酸塩基処理
2重量%のナノケイ素の脱塩水懸濁液150mlを超音波処理(225W120秒)によって調製した。該ナノケイ素は国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製され、そしてBET 25m/g、酸素含有量<4重量%、80nm<D80<200nmで規定される粒度、少なくとも0.1重量%のアルミニウム混入物(プラズマで発生させたケイ素粉末に典型的である)を有しており、該混入物は粒子表面に濃縮され、そして初期の負のゼータ電位を有していた(水中pH7で規定される)。この懸濁液に、pHを2に下げるため既知量の0.5MのHClを加えた。その後、懸濁液のpHをpH4に戻すために、0.5MのNaOHを加えた。水性媒体のこの懸濁液のゼータ電位を、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を用いて測定した。+12mVのゼータ電位が測定されたように、これらの粒子に対して測定された電荷は正であった。
【0044】
図11は、酸塩基処理中の懸濁液の電荷の変動を示す。測定は、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を使用し、0.5MのHClおよび0.5MのNaOHの溶液を使用して行った。酸処理の間、ほぼ確実に、酸化されたSi表面上のシラノール基のプロトン化のため、およびアルミニウム化合物混入物質が溶解して、アルミニウムイオンを遊離させることにより、pH5未満では、表面電荷の急激な減少が観察された(ゼータ電位の絶対値の減少と解釈される)。逆滴定(=塩基処理)の間、pH3.4〜pH4.9においてゼータ電位が正となった。塩基の添加の間、電極表面でアルミナの堆積が起こり、それによって正電荷が生じる。アルミナ量が少ないため被覆は全体的とはならず、これが、5を超えるpHで電位が負になる表面挙動を説明する。
【0045】
電極を作製するために、最初のステップは、終夜溶解させ、次にそのpHを、あらかじめ調製したケイ素懸濁液のpHに調整することによる、2.4%のNa−CMC溶液の調製である。導電性炭素を加え、高剪断ミキサーを使用して混合物を20分間撹拌した。導電性炭素の良好な分散が得られた後、活物質懸濁液(処理されたケイ素)を加え、得られたスラリーを再び高剪断ミキサーを使用して30分間撹拌した。スラリーを、50重量%のこの粉末、25重量%のNa−CMCバインダー(分子量<200,000)、および25重量%の導電性添加剤(Super C65、Timcal)の最終組成にて調製した。
【0046】
得られたスラリーを、125μmの湿潤厚さで銅箔(17μm)上にコーティングし、次に70℃で2時間乾燥させることによって、電極を作製した。円形電極を打抜き、小型真空オーブン中150℃で3時間乾燥させた。グローブボックス(乾燥アルゴン雰囲気下
)中で準備したコインセルを使用して、電極を金属リチウムに対して電気化学的に試験した。使用した電解質は、EC/DEC(50/50重量%)+10%FEC+2%VC(Semichem社)の混合物中の1MのLiPFであった。コインセルを、CCモードにおいて、10mV〜1.5Vで、C/5(3570mAh/gの活物質が5時間で完全充電又は放電されることを意味する)のCレートで試験した。未処理ナノケイ素粉末(2)のサイクル中の容量変化を、アルミナコーティングされたケイ素(1)の変化と比較した結果を図12に示す。
【0047】
アルミニウムイオンの存在下での酸/塩基処理によって電極の挙動が改善されることが明らかであった;100サイクル後、放出容量はおよそ3000mAh/gであるのに対し、未処理ケイ素では1000mAh/gであった。
【0048】
実施例4:シランコーティングされたケイ素
12gのナノケイ素粒子(国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製)を、NHOH、HO、およびCOH(純エタノール)をそれぞれ1:10:14の比率で含有する1000cmの溶液中に分散させた。水酸化アンモニウム(NHOH、30%)はJ.T Baker社より供給された。懸濁液を20分間超音波処理し、さらに終夜撹拌した。次に、6gのAPTS(ケイ素アルコキシド:3−アミノプロピルトリエトキシシラン)を懸濁液に加え、10分間超音波処理し、さらに終夜撹拌した。APTSはSigma Aldrich社より購入した。粒子を沈降させ、母液を除去した。次に、アミン変性されたSi粒子を、エタノールで3回洗浄し、次に真空オーブン中60℃で終夜乾燥させた。
【0049】
表面変性の有効性を、広範囲のpH値にわたる電気泳動移動度測定から求めたゼータ電位(ZP)によって評価した。この粉末の表面ゼータ電位を、Brookhaven Instruments社のZetaPALSを使用して調べた。該粉末を0.001mol/LのKCl中に溶解させることによって、0.25mg/cmの変性ケイ素を含有する分散液を調製した。イオン強度を一定に維持するために、0.1mol/LのKOH溶液および0.1mol/LのHCl溶液を使用してpHを調整した。種々のAPTS:Si重量比を試験して、粒子表面に正電荷を得るためには少なくとも1:2の比率が推奨されると判断した。
【0050】
図13は、アミン変性されたケイ素(APTS:Siの重量比=5:4)(線1)および未処理ケイ素(線2)のゼータ電位を、一定イオン強度におけるpHの関数として示したものである。7未満のpH値にて、粒子の表面電荷における負から正への変化によって表面変性の達成が証明され、アミン処理された粒子は中性pHで等電点を有していた。他方、未処理Si粒子は、3〜11のpH範囲にわたって負に帯電した。APTSで処理されたすべてのケイ素粒子は、APTS:Siの重量比が1:2を超える場合に、類似のゼータ電位プロファイルを有していた。
【0051】
APTSは、正電荷の形成に使用できるカチオン性シランの一例である。同じ効果は、APTSの誘導体(アミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、アミノトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなど)、トリエトキシ(3−イソシアナトプロピル)シランの誘導体、またはN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリンの誘導体でも得ることができる。
【0052】
実施例5:ケイ素粒子上のナノアルミナ粒子の吸着
1重量%のナノケイ素(国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製)の脱塩水懸濁液100mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。Al/Siの比率を少なくとも2にするために、この懸濁液に、水中に分散させた既
知量の2重量%Alナノ粒子(市販品:DISPARAL P2、Sasol社;粒度<30nm)の水懸濁液を加えた。この実施例では、5重量%のAlナノ粒子を加えた。この混合した分散液をローラーバンク上に30分間置いた。アルミナ/ケイ素の重量比が2/1未満では、凝集体(アルミナ吸着粒子を有するケイ素粒子)の電荷は負に維持された;実際には、ケイ素表面を十分に覆い、凝集体が正の平均電荷を有するための最小量のアルミナ粒子が推奨される。多孔度の分析では、処理後にある程度の微孔性を示す(<0.01cc/g)ことが示された。これは、おそらくはアルミナのナノ粒子の間に形成される。
【0053】
この混合後、溶液のpHを6とし、水性媒体のこの懸濁液のゼータ電位を、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を用いて測定した。+45mVのゼータ電位が測定されたように、これらの粒子に対して測定される電荷は正であった。この値は、アルミナコロイドがケイ素粒子の表面上に吸着されたことを示している。混合した分散液を次にロータバップ(rotavap)によって乾燥させ、真空下で80℃に10時間加熱した。
【0054】
ゼータ電位の測定を以下の手順に従い実施した:参照である1重量%のナノケイ素粉末、および処理されたケイ素粉末の双方の脱塩水懸濁液100mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。水性媒体のこれらの懸濁液のゼータ電位を、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を用いて測定した。サンプルを、中性pHから酸性pHまでは0.5MのHClで、より塩基性のpHまでは0.5MのNaOHで、自動的に滴定した。53mVのゼータ電位が測定されるように、処理されたケイ素の初期電荷は正であった。したがって、この値は、アルミナのナノ粒子の吸着が、乾燥プロセスの間、維持されることを示すものであった。ナノケイ素粉末上の強い負の表面電荷が明確に測定された(図14、線2)。未処理ケイ素の場合pH2から少なくともpH5までゼータ電位は負であるが、処理されたケイ素粉末はpH9.5から少なくともpH2.5まで正のゼータ電位を有していた(図14、線1)。
【0055】
実施例1のように、スラリーおよび電池を作製し、コインセル試験の結果を図15に示す。ナノアルミナ粒子の吸着によって電極の挙動が改善されることが明らかとなった(線1):初期の放出容量は材料の理論容量と類似しており、100サイクル後、放出容量は依然としておよそ2200mAh/gであるのに対し、未処理ケイ素では1000mAh/gであった(図7の線2参照)。
【0056】
実施例6:カチオン性ポリマーの吸着
カチオン性ポリマーの吸着に関して、既知の分散剤:化学式が(CNH)nまたは
【化1】
であるポリエチレン−イミン(PEI):を使用した。
【0057】
このポリマーは、第1級、第2級、および第3級のアミン官能基を有する分岐ポリマーである。窒素をプロトン化することで、強く正に帯電したポリマーを作製することができる。また水に対して可溶性であるという利点も得られる。
【0058】
1重量%のナノケイ素(国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製
)の脱塩水懸濁液100mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。この懸濁液に、水中に分散させたある量の1重量%PEI(PEIは10kmol/g、pHを6に調整した)を加えた。この混合した分散液をローラーバンク上に30分間置いた。この混合後、水性媒体の懸濁液のゼータ電位を、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を用いて測定した。+30mVのゼータ電位が測定されるように、粒子に対して測定される電荷は正であった。この値は、ポリマー鎖がケイ素粒子の表面上に吸着されたことを示す。好ましい効果を得るには、PEI/Siの重量比が少なくとも0.35/1であることが推奨され、またはケイ素表面1m当たり少なくとも14mgのPEI量が推奨される。この値は、正電荷を得るためには、実施例5のナノアルミナの場合よりも、はるかに少量のPEIが必要となることを示している。混合した分散液を次にロータバップで乾燥させ、減圧下で80℃に10時間加熱した。
【0059】
ゼータ電位の測定を以下の手順に従い実施した。参照である1重量%のナノケイ素粉末、および処理されたケイ素粉末の双方の脱塩水懸濁液100mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。水性媒体のこれらの懸濁液のゼータ電位を、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を用いて測定した。サンプルを、中性pHから酸性pHまでは0.5MのHClで、より塩基性のpHまでは0.5MのNaOHで、自動的に滴定した。+35mVのゼータ電位が測定されるように、処理されたケイ素の初期電荷は正であった。したがって、この値は、乾燥の間、PEIの吸着が維持されることを示すものである。
【0060】
ナノケイ素粉末上の強い負の表面電荷が明確に測定された(図16、線2)。未処理ケイ素の場合、pH12から2までゼータ電位は負であるが、処理されたケイ素粉末はpH6から少なくともpH2.5まで正のゼータ電位を有していた(図16、線1)。
【0061】
他のカチオン性界面活性剤、およびpH依存性の第1級、第2級、または第3級アミンを主成分とするポリマー、たとえばオクテニジン二塩酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジンN−オキシド)、ポリ(N−ビニルピロリドン)などの吸着によっても、この効果を得ることもできる。
【0062】
実施例1のようにスラリーおよび電池を作製した。カチオン性ポリマーの吸着によって、電極の容量維持が改善された:100サイクル後、放出容量は依然として1500mAh/gを超えるのに対し、未処理ケイ素では1000mAh/gであった(図7、線2)。
【0063】
実施例7:ケイ素粒子上の陽イオンの吸着
1重量%のナノケイ素(国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製)の脱塩水懸濁液100mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。この懸濁液に、少なくとも26mgのAl3+(AlCl塩の形態)を加えた。これによって、Al/Si比が少なくとも0.026、またはケイ素1m当たり少なくとも1mgのAlとなった。この混合した分散液をローラーバンク上に30分間置いた。混合した分散液を次にロータバップによって乾燥させ、真空下で80℃に10時間加熱した。
【0064】
ゼータ電位の測定を以下の手順に従い実施した:参照である1重量%のナノケイ素粉末、および処理されたケイ素粉末の双方の脱塩水懸濁液100mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。水性媒体のこれらの懸濁液のゼータ電位を、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を用いて測定した。この溶液の初期のpHは5.3であり、ゼータ電位は+40mVであった。次に、サンプルを、中性pHから酸性pHまでは0.5MのHClで、より塩基性のpH
までは0.5MのNaOHで、自動的に滴定した。再分散処理した粉末は、2〜7において正のゼータ電位を有し(図17、線1)、2〜5において+65mVの安定した値を有した。未処理ケイ素の場合、少なくともpH5から2でゼータ電位は負となった(図17、線2)。
【0065】
実施例1のようにスラリーおよび電池を作製し、結果を図18に示す(mAh/g単位の容量対サイクル数)。陽イオンの吸着で電極の挙動が改善されたことが明らかであった(線1):100サイクル後、放出容量は依然としておよそ約1950mAh/gであるのに対し、未処理ケイ素では1000mAh/gであった(図7、線2)。
【0066】
AlClに加えて、他の水溶性アルミニウム塩、あるいはSb、Ti、およびZn(すべて陽イオン性多価金属)を使用して、類似の結果を得ることができる。
【0067】
実施例8a:アルミナコーティングされたケイ素:比表面積の変動
この実施例において、国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製され、40m/gのBET、0.001cc/g未満の開放多孔質容積(アルゴン流下150℃で1時間サンプルを予備加熱した後、77KでNの等温吸脱着によって、ASAP装置で測定を行った)、酸素含有量<4重量%、および初期の負のゼータ電位(水中pH7で測定)を有する、5gのナノケイ素粉末を使用し、実施例1のように処理した。
【0068】
顕微鏡写真は、ケイ素粒子の表面におけるコンフォーマル(conformal)に均一で薄い(3nm)アルミナコーティングを示した。この粉末のBET表面は40m/g(ALD処理後のBETから変化なし)と測定され、0.001cc/g未満の開放多孔質容積(アルゴン流下150℃で1時間サンプルを予備加熱した後、77KでNの等温吸脱着によって、ASAP装置で測定を行った)を有した。アルミニウム量をICPによって測定し、3.4重量%の値が算出された。得られた材料のゼータ電位の測定を以下の手順に従い実施した:参照である2重量%のナノケイ素粉末およびアルミナコーティングされたケイ素の双方の脱塩水懸濁液150mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。水性媒体のこの懸濁液のゼータ電位を、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を用いて測定した。サンプルを、中性pHから酸性pHまでは0.5MのHClで、より塩基性のpHまでは0.5MのNaOHで、自動的に滴定した。ナノケイ素粉末上の強い負の表面電荷が明確に測定された(図19、線2参照)。ゼータ電位はpH6から2において負であった。アルミナコーティングされたケイ素の場合、粉末は、少なくともpH9から少なくともpH2.5まで正のゼータ電位を有した(図19、線1)。
【0069】
実施例1に記載されるように電極を作製し、試験を行った。アルミナのコーティングによって電極の挙動が改善されるという結果が示された:100サイクル後、放出容量は依然としておよそ2500mAh/gであるのに対し、未処理ケイ素では1000mAh/gであった(図7、線2参照)。1nmよりも薄いコーティングでは所望の効果が得られないことも分かった。
【0070】
実施例8b:アルミナコーティングされたケイ素:比表面積の変動
この実施例1において、BET 1m/g、0.001cc/g未満の開放多孔質容積(アルゴン流下150℃で1時間サンプルを予備加熱した後、77KでNの等温吸脱着によって、ASAP装置で測定を行った)、酸素含有量が<4重量%、初期の負のゼータ電位(水中pH7で規定される)を有する、市販のマイクロメートルサイズの粉末(Aldrich社)5gを使用し、実施例1のように処理した。
【0071】
顕微鏡写真は、ケイ素粒子の表面上のコンフォーマル(conformal)に均一で
薄い(3nm)アルミナコーティングを示す。得られた材料のゼータ電位の測定を実施例8aのように行った。ケイ素粉末上の負の表面電荷が明確に測定された。ゼータ電位はpH6から2まで負であった。アルミナコーティングされたケイ素の場合、少なくともpH7から少なくともpH2.5まで、粉末は正のゼータ電位を有した。
【0072】
実施例9:アルミナコーティングされた一酸化ケイ素
この実施例において、ナノメートルスケールのSiおよびSiOの混合物からなり、2m/gのBET、およそ32重量%の酸素含有量、初期の負のゼータ電位(水中pH7で規定される)を有する、5gのマイクロメートルサイズの一酸化ケイ素粉末を使用し、実施例1のように処理した。
【0073】
顕微鏡写真は、ケイ素粒子の表面上のコンフォーマル(conformal)に均一で薄い(3nm)アルミナコーティングを示した。この粉末のBET表面および酸素含有量は、ALD処理中に変化しなかった。得られた材料のゼータ電位の測定を以下の手順に従い実施した:参照である2重量%のナノケイ素粉末およびアルミナコーティングされたケイ素の双方の脱塩水懸濁液150mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。水性媒体のこの懸濁液のゼータ電位を、Colloidal Dynamics社のZetaprobe Analyser(商標)を用いて測定した。サンプルを、中性pHから酸性pHまでは0.5MのHClで、より塩基性のpHまでは0.5MのNaOHで、自動的に滴定した。ナノメートルサイズの一酸化ケイ素粉末上の強い負の表面電荷が明確に測定された(図20、線2参照)。ゼータ電位はpH7から少なくとも4までは負であった。アルミナコーティングされた一酸化ケイ素の場合、粉末は少なくともpH3からpH6.8まで正のゼータ電位を有した(図20、線1)。
【0074】
実施例10:アルミナおよび炭素がコーティングされたケイ素
この実施例において、国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製したケイ素コアと、CVD(トルエンの化学気相堆積)技術により形成した炭素コーティングとからなり、20m/gのBET、約4重量%の酸素含有量、およびほぼ0の初期ゼータ電位(水中pH7で規定される)を有する、5gの炭素コーティングされたナノメートルサイズのケイ素粉末を使用し、実施例1のように処理した。ALD後、粒子特性(アルミナ層厚さおよびBETおよび酸素含有量)は前実施例と類似していた。ゼータ電位測定によって正電荷の増加が測定された(上記実施例のように行った)。
【0075】
実施例11:ケイ素表面上のナノ粒子の吸着:In(OH)のナノ粒子
1重量%のナノケイ素(国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製した)の脱塩水懸濁液100mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。この懸濁液に、In(OH)/Siの比を少なくとも0.02にするために、水中に分散させた既知量の1重量%のIn(OH)ナノ粒子(市販品:粒度<30nm)を加えた。この混合した分散液をローラーバンク上に30分間置いた。この水酸化インジウム/ケイ素の重量比が0.02未満では、凝集体(吸着粒子を有するケイ素粒子)の電荷は負に維持された;実際には、ケイ素表面を十分に覆い、凝集体が正の平均電荷を有するための最小量の粒子が推奨される。
【0076】
実施例12:ケイ素表面上のナノ粒子の吸着:アルミナ処理されたシリカのナノ粒子
1重量%のナノケイ素(国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製した)の脱塩水懸濁液100mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。この懸濁液に、処理されたSiO/Siの比を少なくとも1.5にするために、水中に分散させた既知量の2重量%のアルミナ処理されたシリカ(Levasil 200s)ナノ粒子を加えた。この混合した分散液をローラーバンク上に30分間置いた。この処理されたSiO/ケイ素の重量比が1.5を超えると、凝集体(吸着粒子を有するケイ
素粒子)の電荷は負に維持された;実際には、ケイ素表面を十分に覆い、凝集体が正の平均電荷を有するための最小量の粒子が推奨される。
【0077】
実施例1のようにスラリーおよび電池を作製し、結果を図15(線2)に示す。この種類のナノ粒子の吸着によって電極の挙動が改善されることが明らかであった:100サイクル後、放出容量は依然としておよそ1600mAh/gであるのに対し、未処理ケイ素では1000mAh/gであった(図7、線2)。
【0078】
実施例13:ケイ素表面上のナノ粒子の吸着:酸化鉄のナノ粒子
1重量%のナノケイ素(国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製した)の脱塩水懸濁液100mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。この懸濁液に、Fe/Si比を少なくとも2にするため、水中に分散させた既知量の少なくとも2重量%の酸化鉄(市販品、粒度20.25nm)ナノ粒子を加えた。この混合した分散液をローラーバンク上に30分間置いた。この酸化鉄/ケイ素の重量比が2未満では、凝集体(吸着粒子を有するケイ素粒子)の電荷は負に維持された;実際には、ケイ素表面を十分に覆い、凝集体が正の平均電荷を有するための最小量の粒子が推奨される。ナノメートルサイズのケイ素粉末上の負の表面電荷が明確に測定された。ゼータ電位はpH4.5から少なくとも9において負であった。酸化鉄がコーティングされたケイ素の場合、粉末は少なくともpH2からpH8まで正のゼータ電位を有した。
【0079】
実施例1のようにスラリーおよび電池を作製した。酸化鉄のナノ粒子の吸着によって電極の挙動が改善されることが明らかであった:100サイクル後、放出容量は依然としておよそ2000mAh/gであるのに対し、未処理ケイ素では1000mAh/gであった(図7、線2)。同時に、吸着粒子がエネルギー貯蔵に加わる重要であることもまた観察された。実際、酸化鉄ナノ粒子は、変換プロセスにより可逆的に還元できることが知られている。
【0080】
実施例14:ケイ素表面上のナノ粒子の吸着:酸化マグネシウムのナノ粒子
1重量%のナノケイ素(国際公開第2012/000858号パンフレットに従い作製した)の脱塩水懸濁液100mlを超音波処理(225Wで120秒)によって調製した。この懸濁液に、MgO/Siの比を少なくとも1にするために、水中に分散させた既知量の少なくとも2重量%の酸化マグネシウム(市販の)ナノ粒子を加えた。この混合した分散液をローラーバンク上に30分間置いた。このMgO/ケイ素の重量比未満では、凝集体(吸着粒子を有するケイ素粒子)の電荷は負に維持された;実際には、ケイ素表面を十分に覆い、凝集体が正の平均電荷を有するための最小量の粒子が推奨される。ナノメートルサイズのケイ素粉末上の負の表面電荷が明確に測定された。ゼータ電位は少なくともpH3.5から少なくとも9において負であった。酸化鉄がコーティングされたケイ素の場合、粉末は少なくともpH2から少なくともpH9まで正のゼータ電位を有した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】国際公開第2012/000858号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0292570号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/000854号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0200822号明細書
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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