(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104281
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】コールドガススプレー方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/02 20060101AFI20170316BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20170316BHJP
C23C 4/11 20160101ALI20170316BHJP
C23C 24/04 20060101ALI20170316BHJP
C01G 23/04 20060101ALN20170316BHJP
B01J 35/02 20060101ALN20170316BHJP
【FI】
B05D1/02 F
B05D7/24 302A
C23C4/11
C23C24/04
!C01G23/04 C
!B01J35/02 J
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-553658(P2014-553658)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公表番号】特表2015-512765(P2015-512765A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2013000121
(87)【国際公開番号】WO2013110441
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2015年8月26日
(31)【優先権主張番号】102012001361.2
(32)【優先日】2012年1月24日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】12002885.7
(32)【優先日】2012年4月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391009659
【氏名又は名称】リンデ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ハインリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー クレマー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ゲアトナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クラッセン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン−オリヴァー クリーマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング グッツマン
(72)【発明者】
【氏名】山田 基宏
【審査官】
増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−297184(JP,A)
【文献】
特開2012−25983(JP,A)
【文献】
特開2007−126751(JP,A)
【文献】
特開2013−12300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
C23C 4/00−4/18
B01J 35/02
C23C 4/11
C23C 24/04
C01G 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒活性スプレー粒子を含むスプレー粉末を、キャリアガスによりノズル内で加速し、前記スプレー粉末が、基板への衝突時にコーティングを形成する、コールドガススプレー方法であって、
前記光触媒活性スプレー粒子の少なくとも一部が、ナノ結晶凝集体からなり、該ナノ結晶凝集体は、200〜800m2/gの多孔率を有し、該多孔率を、窒素を用いたBET測定により決定し、
前記キャリアガスは、ノズルスロート部の上流側で、900℃より高い温度を有することを特徴とする、コールドガススプレー方法。
【請求項2】
窒素若しくはヘリウム又はこれらから成る混合物を、キャリアガスとして使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ結晶凝集体は、二酸化チタン(TiO2)、三酸化タングステン(WO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、二酸化スズ(SnO2)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ナトリウムタンタル(NaTaO)、酸化亜鉛(ZnO)、α酸化鉄(III)(α−Fe2O3)、バナジン酸ビスマス(BiVO4)、酸窒化タンタル(TaON)、窒化三タンタル(V)(Ta3N5)、酸化インジウムタンタル(IV)(InTaO4)及び/又は酸化インジウムニオブ(IV)(InNbO4)を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノ結晶凝集体は、アナターゼである二酸化チタンを含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ結晶凝集体は、250〜600m2/gの多孔率を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ結晶凝集体は、0.1〜4GPaの硬さを有し、該硬さをナノインデンタによって決定することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ナノ結晶凝集体からなる少なくとも前記光触媒活性スプレー粒子を、プレチャンバ又は延長された収束領域においてキャリアガスにより加熱することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
可視光において光触媒活性を有するコーティングを製造することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングは、少なくとも80μmの厚さであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
光触媒活性スプレー粒子を含むスプレー粉末を、キャリアガスによりノズル内で加速し、前記スプレー粉末が、基板への衝突時にコーティングを形成する、コーティングの製造方法であって、
前記光触媒活性スプレー粒子の少なくとも一部が、ナノ結晶凝集体からなり、該ナノ結晶凝集体は、200〜800m2/gの多孔率を有し、該多孔率を、窒素を用いたBET測定により決定し、
前記キャリアガスは、ノズルスロート部の上流側で、900℃より高い温度を有することを特徴とする、コーティングの製造方法。
【請求項11】
可視光において光触媒活性を有するコーティングを形成する、請求項10に記載のコーティングの製造方法。
【請求項12】
二酸化チタンからなるコーティングを形成する、請求項10又は11に記載のコーティングの製造方法。
【請求項13】
スプレー粒子の層よりも大きな厚さを有するコーティングを形成する、請求項10から12までのいずれか1項に記載のコーティングの製造方法。
【請求項14】
被コーティング物と、前記コーティングとの間に接着剤を供給することを特徴とする、請求項10から13までのいずれか1項に記載のコーティングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒活性スプレー粒子を含むスプレー粉末を、キャリアガスによりノズル内で加速し、基板への衝突時にコーティングを形成するコールドガススプレー方法に関する。さらに本発明は、コーティング及びコーティングを備えた物にも関する。
【0002】
コールドガススプレー時には、一般的には金属製のスプレー粒子が、比較的低温のガス流、つまりキャリアガス内で高速に加速されるので、金属製のスプレー粒子は、基板又は被加工品への衝突時に、粒子が衝突時に塑性変形することによりコーティングを形成する。コーティングが生じるように、粒子は最低衝突速度を有する必要がある。キャリアガス及び粒子の加速は、通常、ラバールノズルにおいて行われる。粒子が加熱されたキャリアガスにおいて延性を有するようになるので、キャリアガスは頻繁に加熱され、その結果、衝突時に層形成が促進される。さらに、比較的高いキャリアガス速度が達成される。しかしこの構成においては、スプレー粒子が溶融しないということに注目したい。したがって、キャリアガスの温度は比較的低く、コールドガススプレー又はキネティックスプレーと称呼される。
【0003】
光触媒活性コーティングを製造する、種々異なる方法がある。このようなコーティングは、光入射時に触媒作用を有する。この触媒作用は、例えば抗菌又は抗ウイルス作用において、又はレッドクス反応開始においても示される。つまり、有害物質が除去され、バクテリア及びウイルスが殺菌されることにより、殺菌及び清浄が可能である。このような光触媒活性層は、二酸化チタンからなるのが通常である。例えば、二酸化チタンのドーピングにより、通常、単にUV光においてのみ光触媒活性である二酸化チタン層は、可視光においても活性になる、ということを達成することができる。
【0004】
欧州特許出願公開第2302099号明細書には、光触媒活性二酸化チタンを用いたコールドガススプレーによる、衛生品、台所品、医療品のコーティングが記載されている。欧州特許出願公開第1785508号明細書には、光触媒活性二酸化チタンのコールドガススプレーが開示されていて、スプレー粉末は、金属成分を備えた光触媒活性二酸化チタンからなっている。独国特許出願公開第102004038795号明細書には、コールドガススプレーによる光触媒活性プラスチック表面の製造が記載されている。特開2009066594号公報にも、可視光において光触媒活性であるように、窒素、炭素又は土硫黄がドーピングされた光触媒活性二酸化チタンのコールドガススプレーが開示されている。中華人民共和国特許出願第1443071号にも、二酸化チタンのコールドガススプレーが開示されている。
【0005】
雑誌「Deposition of TiO
2 Ceramic Particles on Cold Spray Process」M. Yamada et al. in, DVS264, 172 - 176, 2010には、二酸化チタンのコールドガススプレーが記載されていて、ナノ一次粒子が使用される。
【0006】
雑誌「Formation of TiO
2 photocatalyst through cold spraying」C.-J. Li et al., IEEE Conference on Intelligent Transportation, ITSC Proceedings, 10. Mai 2004第1〜5頁には、光触媒活性二酸化チタンのコールドガススプレーについて記載されている。このようなことが同様に、J.-O. Kliemann et al. in 「Layer formation of cold-sprayed ceramic titanium dioxide layers on metal surfaces」, DVS 264, 90-95, 2010にも記載されている。
【0007】
欧州特許出願公開第2257656号公報においても、光触媒活性コーティングのコールドガススプレーについて記載されている。この場合、スプレー粉末として、ナノ結晶二酸化チタンを備えたマトリックス材が使用される。加工個所をUV光又はレーザ光によって照射することにより、光触媒活性は可視光へとシフトする、ということがコールドガススプレー中に達成される。
【0008】
本発明において、光触媒活性スプレー粒子を含むスプレー粉末が、キャリアガスによりノズル内で加速され、基板への衝突時にコーティングを形成する、コールドガススプレー方法であって、光触媒活性スプレー粒子の少なくとも一部が、200〜800m
2/gの多孔率或いは比表面積を有するナノ結晶性凝集体からなり、多孔率を、窒素を用いたBET測定により特定する方法を提案する。
【0009】
本発明に係る方法によって、質的に極めて良好なコーティングが獲得される、ということが意外にも示された。コーティングは、高い光触媒活性を特徴とする。さらに、コーティングは使用中に、少ない摩耗しか示さず、かつかき傷及び他の使用痕に対する高い耐性を示す。さらに、コーティングは、好ましくはディープイエロー(satten gelb)において表れるので、コーティングが、可視光の部分を吸収するということが即座に明らかになる。本発明に係る方法によって、特に可視光の波長によっても励起可能な光触媒活性コーティングを、質的に極めて高く製造することが可能であり、このことは極めて経済的である。光触媒活性、特にスプレー粒子の可視光における光触媒活性は、本発明に係る方法よって減じられることはなく、それどころか驚異的に向上する。このことは、コールドガススプレーにおいて使用される比較的高い温度において極めて簡単に破壊される、可視光における光触媒活性にも意外にも当てはまる。その理由はこのような活性は、電子の帯構造におけるシフトに基づくからである。帯構造の移動は、また大抵好ましくは、外来原子のドーピングにより達成される。出願人は、このことはおそらく、本発明に係る方法において、所望の帯移動をもたらすことがあるキャリアガスとスプレー粒子との相互作用が生じることに起因し得ると推測している。そのために、おそらくコールドガススプレーにおける方法パラメータは、スプレー粒子の特性との組合せにおいて極めて重要である。
【0010】
好ましくは、ノズルスロート部の手前のキャリアガスは、400℃より高い、好ましくは800℃より高い、特に好ましくは900℃より高い温度を有している。1000℃より高い、それどころか1100℃より高い温度すら可能である。高温のキャリアガスにおいて、スプレー粒子も加熱されるようになっている、コールドガススプレープロセスにおける高い温度にも関わらず、スプレー粒子の光触媒活性が得られたままであり、光触媒活性コーティングをスプレーすることができる。むしろ、キャリアガスの温度が高くなるにつれて、コーティングの光触媒活性さえも増大する、ということが分かった。このことは、実際に、温度が高くなるにつれて、スプレー粒子の特別な特性が衰えるということが予期され得るので、それだけに意外である。驚くべきことに、キャリアガスはそれどころか上記高い温度を有することができ、それにもかかわらず、高い光触媒活性を備えたコーティングが発生する。
【0011】
窒素がキャリアガスとして使用されると特に有利である。ナノ結晶凝集体は窒素に対して連続気泡性となっているので、窒素はナノ結晶凝集体内に進入することができる。窒素に関しては、ナノ結晶凝集体はしたがって極めて高い表面を有する。したがって窒素は、ナノ結晶体に大規模に堆積することができ、ナノ結晶体と相互作用することができる。ここで好ましくは、窒素及びスプレー粒子の温度も高いので(前段落参照)、ナノ結晶体と窒素との反応は著しく促進される。ここで意外にも、高い温度に関わらず、コールドガススプレープロセス中に、ナノ結晶体の、光触媒活性、それどころか可視光において光触媒活性型が生じるように、反応は進むということが示された。
【0012】
これに対して択一的な構成として、ヘリウムをキャリアガスとして使用することができる。このキャリアガスの使用は、実験において同様に特に有利であることが示された。
【0013】
ヘリウムの利点を、キャリアガスである窒素の利点と組み合わせるために、好ましくは両方のガスの混合物をキャリアガスとして使用することもできる。この構成において、キャリアガスとして使用される、残りにヘリウムを含む混合物における窒素割合の増加は、例えば価格を通常下げるので、付加的にキャリアガスの価格にも影響を与えることができる。
【0014】
好ましくは、ナノ結晶凝集体は、二酸化チタン(TiO
2)、三酸化タングステン(WO
3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)、二酸化スズ(SnO
2)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ナトリウムタンタル(NaTaO)、酸化亜鉛(ZnO)、α酸化鉄(III)(α−Fe
2O
3)、バナジン酸ビスマス(BiVO
4)、酸窒化タンタル(TaON)、窒化三タンタル(V)(Ta
3N
5)、酸化インジウムタンタル(IV)(InTaO
4)及び/又は酸化インジウムニオブ(IV)(InNbO
4)を含む。このうち二酸化チタン(TiO
2)は、特にアナターゼとして特に有利である。この化合物は、光触媒活性、特に可視光における光触媒活性を有する。本発明に係る方法において上記化合物が使用されると、化合物がコールドガススプレー時にスプレー粒子として曝されている負荷にも関わらず光触媒活性、特に可視光における光触媒活性を保持し続け、それどころか大抵は改良される。
【0015】
アナターゼ型二酸化チタン(Titandioxid in der Modifikation Anatase)は、700℃以上の温度を起点に、かつ温度が高くなるに連れて、迅速にルチル型(die Modifikation Rutil)に転移する。しかしルチルとしては、二酸化チタンは光触媒不活性である。本発明に係る方法によって、明らかに700℃以上で、ひいてはその他の方法において見られる、不活性ルチル相への転移温度の上側にある温度にも関わらず、光触媒活性コーティング、特に可視光における光触媒活性コーティングが生じる。つまり、キャリアガス及びスプレー粒子の高い温度に基づき予期されるナノ結晶の転移は生じず、むしろ所望の型がより強化されて発生する。
【0016】
本発明の有利な構成において、ナノ結晶凝集体は、250〜600m
2/g(立方メートル/グラム)、好ましくは280〜450m
2/gの多孔率を有する。この多孔率は、窒素を用いたBET測定により特定される。したがって、光触媒活性層が生じるように、つまり、請求項1に記載の多孔率、好ましくは上記多孔率を有するスプレー粒子を有する粉末を使用する必要がある。したがって、極めて高い連続気泡性の凝集体を使用する必要がある。
【0017】
好ましくは、ナノ結晶凝集体は、0.1〜4GPa(ギガパスカル)、好ましくは0.2〜2GPaの硬さを有している。硬さはナノインデンタによって特定される。このような硬さは、一方でナノ結晶凝集体をコールドガススプレー用に使用することができる程度に十分である一方で、上記硬さは必要な多孔率が存在している程度に十分に低い。
【0018】
したがって特に有利には、アナターゼ型二酸化チタンを含むスプレー粒子を含有する粉末が使用される。スプレー粒子は、つまり有利には少なくとも部分的に、アナターゼ型二酸化チタンからなるナノ結晶粒子よりなっている。このナノ結晶粒子は、好ましくは5〜30ナノメートルの大きさを有する。このナノ結晶粒子は、ナノ結晶凝集体に加工される。ナノ結晶粒子は、つまりナノ結晶凝集体に凝集され、好ましくは焼結される。この焼結により、ナノ結晶凝集体はより硬くなるので、コールドガススプレー時の負荷に耐える。ナノ結晶凝集体は、好ましくは5〜150μm、特に好ましくは10〜30μmの大きさを有する。ナノ結晶凝集体は、多孔率及び硬さに関する要求を満たすので、窒素がスプレー粒子と相互作用することができるように、十分に連続気泡性である一方で、コールドガススプレー装置のガスビームにおいて加速できるように、十分な硬さを有することができる。コーティングしたい物(物体)への衝突時に、可視光において光触媒活性層が形成される。
【0019】
本発明に係る方法によって、つまりスプレー粒子が、コーティングされる物への衝突時に所定の速度、及び粘着性を有しかつ光触媒活性のコーティングが発生するようになっている可変性を有することをもたらすパラメータが使用される。このことは、おそらく、スプレー粒子が、衝突時に制御されて破裂し、次いで、コーティングの形成に繋がる新たな結合が生じるということに起因し得る。つまり、コーティングのこの形成は、スプレー粉末の特性に帰することができる。
【0020】
スプレー粉末が、ほぼ専らナノ結晶凝集体のみからなっていると、さらに特に有利である。スプレー粉末には、つまり、金属製の又はその他の付加的な成分は付与されず、スプレー粉末は、つまり、ナノ結晶凝集体以外に、汚染物質だけを含む。スプレー粒子の特性が、スプレー粉末としてコールドスプレーすることができるようになっているので、付加的な成分は必要ない。
【0021】
本発明の有利な構成において、ナノ結晶凝集体からなる少なくとも光触媒活性のスプレー粒子は、プレチャンバ(Vorkammer)又は/及び延長された収束領域において、キャリアガスにより加熱される。プレチャンバは、ノズルの収束領域の手前にある領域である。延長された収束領域とは、ノズルスロート部へ向かうノズルの延在部は、幅広の領域を介して延びていることを意味する。高温のキャリアガスにおけるスプレー粒子の長い滞在時間を有する上記コールドガススプレーノズルは、例えば欧州特許出願公開第1791645号明細書に記載されている。キャリアガスによるナノ結晶凝集体の加熱のために、少なくともナノ結晶凝集体、特に全てのスプレー粉末は、プレチャンバ若しくは延長された収束領域の手前の領域の上流側又はプレチャンバ若しくは延長された収束領域の手前の領域に注入される。コールドガススプレーガンが、プレチャンバ又は延長された収束領域を有する場合、スプレー粒子は、高温のガスにおける滞在時間が長いので、高温のキャリアガスによって特に良好に加熱され、スプレー粒子への熱移行を行うことができる。ノズルの拡散した領域、つまりノズルスロート部の後方において、キャリアガスは膨張に基づき再び冷却され、この場合、スプレー粒子はもはや高温にはならない。
【0022】
特に好ましくは、本発明に係る方法によって、可視光における光触媒活性を備えたコーティングが製造される。コーティングが、可視光においても光触媒活性を有していると、例えば清浄及び殺菌のための所望の反応が、可視光しかない場合に起こる。したがってUV光は必要でない。このことは、人工的に光を当てられるか、又は窓を介しての日光が射し込む、部屋及び空間においてコーティングを使用することが望まれる場合に有利である。このような光は、日光とは異なり、UVの割合を有していないか、又は極めて少ないUVの割合しか有していない。したがって、本発明に係る方法によって製造された層は、内部空間においても使用可能である。
【0023】
本発明のさらに有利な構成において、コーティングは、少なくとも80μm、好ましくは少なくとも100μmの厚さである。本発明に係る方法によって、つまり肉厚な層を製造することができる。好ましくは、コーティングは、少なくとも80μm、好ましくは少なくとも100μmの厚さを有する。つまり、本発明に係る方法によって、肉厚なコーティングを製造することが可能である。肉厚なコーティングは、スプレー粒子の層(Lage)よりも肉厚であることを特徴とする。つまり肉厚のコーティングは、1つのスプレー粒子の層よりも多い層を有する。コーティングが肉厚の場合、材料ペアの延性の重要性は、明らかに二の次であり、粒子衝突時に別の結合メカニズムが、基板との結合及び層の形成をもたらす。肉厚の層が、可視光において光触媒活性であると、ディープイエローであり、そのようなものとして簡単に認識することができる。
【0024】
コーティングが、好ましくは金属製の成分を有していないということを確認されたい。コーティングは、好ましくは他の成分も含んでいない。本発明に係る方法によって、つまり、一般的な不純物質を除いて専ら二酸化チタンからなるコーティングを製造することが可能である。
【0025】
さらに、本発明に係る方法によって製造されているコーティングを特許請求の範囲において請求する。本発明に係る方法によって製造されたコーティングは、その均質性及びその層厚さを特徴とする。本発明に係る方法によって製造されたコーティングだけが有する特性は、例えば顕微鏡写真において認識することができる。光マイクロスコープにおいて、均質性及び層厚さを特定することができ、透過型電子顕微鏡において、ナノ結晶性の一次粒子が認識される。コーティングは、スプレープロセス中に吸収された付加的な窒素、若しくはコーティングの表面構造及び色彩への窒素の影響も表す。
【0026】
好ましくは、コーティングは可視光における光触媒活性を有する。コーティングが、好ましくは二酸化チタンからなってもいる。
【0027】
さらに、上記本発明に係るコーティングを有する物を、特許請求の範囲において請求する。この構成において、好ましくはコーティングしたい物におけるコーティングの下に、コーティングしたい物と、コーティングとの間で接着剤を提供する接着剤層が供給されている。これにより、コーティングの耐性が改良される。つまり、有利な構成において本発明に係る方法は、コールドスプレー前に接着剤層を被着することで補完される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【0029】
以下に、例示のコールドガススプレーガンを使用した本発明に係る方法を詳細に説明する。
【0030】
そのために、
図1にコールドガススプレーガンを概略的に示し、全体を符号1で示す。コールドガススプレーガン1は、以下で詳細に説明するコールドガススプレーノズル10を有する。
【0031】
コールドガススプレーガン1は、基板Sに向けられていて、ガス入口2,3を有する。このガス入口2,3を介して、キャリアガスG、特にキャリアガスGの加熱されたガス流を提供することができる。キャリアガスGの加熱のために、スプレーガン1の上流側にガス加熱装置が配設されている。他のガス入口3を、ガス混合及び/又はガス流Gのガス温度の調節のために使用することができる。
【0032】
スプレー粉末Pをスプレーガン1に供給する粉末入口4が設けられている。さらに、スプレーガン1の上流側に提供されている粉末供給器(図示せず)が設けられている。キャリアガスG及び粉末Pは、スプレーガン1の、複数の部分からなるハウジング6の内側に配置されている混合室5内に到達する。複数の部分からなるハウジング6は、部分的に開放した状態で示されている。
【0033】
コールドガススプレーノズル10は、スプレーガン側にノズル入口11を有し、基板側にノズル出口12を有する。ノズル入口11とノズル出口12との間に、ノズル通路13が延びている。このノズル通路13は、ノズルスロート部14を有する。ノズル入口からノズルスロート部14に向かって、ノズル通路13の横断面は縮小していく。ここが収束領域(der konvergente Bereich)である。ノズルスロート部14からノズル出口12に向かって、ノズル通路13はいわゆる発散領域(der divergente Bereich)において拡大している。その結果、ラバール効果により圧縮されてかつ加熱されたガス流を促進することができる。適切に加熱されたスプレー粉末Pを備えたキャリアガスGが、ガス粉末混合物GPとして基板Sに向けられる。
【0034】
このコールドガススプレーガン1に、粉末入口4を介して、上記有利な特性を有するスプレー粉末が供給される。スプレー粉末は、特に、連続気泡性であるが、固くまとめられた凝集体を有する、アナターゼ型における二酸化チタンからなるナノ結晶性の凝集体からなる粉末である。この粉末は、好ましくは窒素からなるキャリアガスGにおいて、ノズルスロート部14に向かって収束領域において加熱される。ノズルスロート部14の下流側におけるノズルの発散領域において、ガス及び粉末は、十分に高い速度で加速される。粉末は、次いで高い運動エネルギーでもって基板に衝突する。
【0035】
基板Sに、本発明によってコーティングが形成されるので、基板Sは、コーティングされた物若しくはコーティングされた物の一部である。