【文献】
Jingcheng Zhuang, Khurran Waheed, Robert Bogdan Staszewski,A Technique to Reduce Phase/Frequency Modulation Bandwidth in a Polar RF Transmitter,IEEE TRANSACTIONS ON CIRCUITS AND SYSTEMS,米国,2010年 8月,Vol.57,No.8,pp.2196-2207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イベント検出ステージ(170)は、前記微分された位相成分の極大値及び極小値を検出し、前記イベント基準は、検出された前記極大値及び極小値のうちの1つにおける前記微分された位相成分が、位相閾値を超える大きさを有することを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の変調器。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様によれば、変調器であって、
変調信号の振幅成分及び位相成分を生成するポーラ生成ステージと、
前記位相成分を微分することによって、微分された位相成分を生成する微分器ステージと、
前記振幅成分と前記微分された位相成分とのうちの少なくとも1つがイベント基準を満たすことを検出することによって、広帯域幅イベントを検出するイベント検出ステージと、
前記広帯域幅イベントの検出に応じて前記振幅成分を反転させることによって、修正された振幅成分を生成する振幅反転ステージと、
前記広帯域幅イベントの検出に応じて、180度の大きさを有し、かつ、前記微分された位相成分の符号と逆の符号を有する位相オフセットを、前記微分された位相成分に加えることによって、微分及び修正された位相成分を生成する位相オフセットステージと、
前記修正された振幅成分を用いて、搬送波信号の振幅を変調する振幅変調ステージと、
前記微分及び修正された位相成分を用いて、前記搬送波信号の周波数を変調する位相変調ステージと、
を備える変調器が提供される。
【0010】
第2の態様によれば、変調方法であって、
変調信号の振幅成分及び位相成分を提供するステップと、
前記位相成分を微分することによって、微分された位相成分を生成するステップと、
前記振幅成分と前記微分された位相成分とのうちの少なくとも1つがイベント基準を満たすことを検出することによって、広帯域幅イベントを検出するステップと、
前記広帯域幅イベントの検出に応じて前記振幅成分を反転させることによって、修正された振幅成分を生成するステップと、
前記広帯域幅イベントの検出に応じて、180度の大きさを有し、かつ、前記微分された位相成分の符号と逆の符号を有する位相オフセットを、前記微分された位相成分に加えることによって、微分及び修正された位相成分を生成するステップと、
前記修正された振幅成分を用いて、搬送波信号の振幅を変調するステップと、
前記微分及び修正された位相成分を用いて、前記搬送波信号の周波数を変調するステップと、
を含む変調方法が提供される。
【0011】
微分された信号による周波数変調は、微分なしの信号による位相変調と等価である。したがって、微分及び修正された位相成分を用いて搬送波信号の周波数を変調することは、微分なしの、修正された位相成分を用いて搬送波信号の位相を変調することと等価である。したがって、変調器は、コンポジット(振幅及び位相)変調された搬送波信号を提供できる。広帯域幅イベントの検出に応じた、具体的には広帯域幅イベントからの、振幅成分を反転は、修正された振幅成分の帯域幅が、反転なしの振幅成分の帯域幅よりも狭くなることをもたらすことが可能である。振幅成分の反転を補償するために、広帯域幅イベントの検出に応じて、具体的には広帯域幅イベントから、微分された位相成分に対して位相オフセットが加えられうる。正または負でありうる位相オフセットは、180度の大きさを有し、その符号は、微分された位相成分の符号と逆となるように選択されうる。帯域幅の低減は、送信機の実装を容易にし、かつ、上記変調器を用いる送信機のコンポジット信号の帯域幅を低減することができ、それにより、ピーク周波数偏差を低減し、デュプレックス距離雑音を低減し、より短いデュプレックス距離を使用可能にするとともに、振幅成分と位相成分との間のタイミングの不整合に対する耐性を増加させることができる。
【0012】
第1の好適な実施形態では、イベント基準は、微分された位相成分の大きさが、位相閾値またはそれと等価の周波数閾値を超えることを含みうる。この特徴によって、広帯域幅イベントを低複雑度の方法で検出することが可能になる。
【0013】
イベント検出ステージは、微分された位相成分の極大値及び極小値を検出してもよく、イベント基準は、検出された極大値及び極小値のうちの1つにおける、微分された位相成分が、位相閾値を超える大きさを有することを含んでもよい。同様に、上記方法は、微分された位相成分の極大値及び極小値を検出するステップを含んでもよく、イベント基準は、検出された極大値及び極小値のうちの1つにおける、微分された位相成分が、位相閾値を超える大きさを有することを含んでもよい。これにより、広帯域幅イベントを低複雑度の方法で検出することが可能になる。
【0014】
第2の好適な実施形態では、イベント基準は、振幅成分に適用されてもよい。変調信号の軌跡が、原点の近くまたは原点を通過する場合、振幅成分の大きさが減少し、位相成分の変化速度が増加し、それ故に、微分された位相成分の大きさが増加する。したがって、振幅は、広帯域幅イベントを示しうるとともに、微分された位相成分の大きさを示しうるか、または位相成分の変化速度を示しうる。イベント基準を満たす振幅成分の発生の検出が、広帯域幅イベントの発生の判定の手段として使用されうるとともに、具体的には、微分された位相成分の大きさがいつ位相閾値を超えるのかを検出する手段として、または、等価的には、位相成分の変化速度がいつ位相閾値を超えるのかを検出する手段として使用されうる。
【0015】
イベント基準は、振幅成分が振幅閾値よりも低いことを含んでもよい。これは、低複雑度での実施が可能な基準を提供する。振幅閾値は、変調器及び変調方法が使用される特定のシステムに対して最適化されてもよい。
【0016】
ポーラ生成ステージは、変調信号の振幅成分及び位相成分を、当該変調信号の同相成分及び直交位相成分から生成しうる。同様に、上記方法では、変調信号の振幅成分及び位相成分を提供するステップは、変調信号の同相成分及び直交位相成分を提供するステップと、同相成分及び直交位相成分から振幅成分及び位相成分を生成するステップと、を含みうる。この特徴は、低複雑度の実施に寄与するとともに、変調信号の同相成分及び直交位相成分を供給する既存の装置との互換性を実現する。
【0017】
イベント検出ステージは、振幅成分がイベント基準を満たしていることが発生したことを、同相成分及び直交位相成分から検出してもよい。同様に、上記方法では、振幅成分がイベント基準を満たしていることが発生したことを、同相成分及び直交位相成分から検出してもよい。この特徴は、振幅成分及び位相成分の生成前に広帯域幅イベントを検出することを可能にすることによって、変調器または変調方法における遅延を低減することに寄与しうる。
【0018】
イベント検出ステージは、広帯域幅イベントに応じて、反転ステージが振幅成分を反転させる前に、当該振幅成分がゼロを通過するよう変調信号を適応させてもよい。同様に、上記方法は、広帯域幅イベントに応じて、振幅成分の前記反転の前に、当該振幅成分がゼロを通過するよう変調信号を適応させるステップを含んでもよい。この特徴は、位相オフセットが加えられる際に振幅成分がゼロであることを確実にすることによって、帯域幅の低減を改善しうる。
【0019】
イベント検出ステージは、同相成分及び直交位相成分にパルスを加えることによって、振幅成分がゼロを通過するよう変調信号を適応させてもよい。同様に、上記方法では、振幅成分がゼロを通過するよう変調信号を適応させるステップは、同相成分及び直交位相成分にパルスを加えるステップを含んでもよい。これにより、適応処理についての低複雑度の実施を実現できる。
【0020】
変調器は、同相成分及び直交位相成分をそれぞれ蓄積することによって、変調信号を遅延させる第1及び第2遅延ステージを備えてもよく、イベント検出ステージは、蓄積された同相成分及び蓄積された直交位相成分にパルスを加えることによって、振幅成分がゼロを通過するよう変調信号を適応させてもよい。同様に、上記方法は、同相成分及び直交位相成分をそれぞれ蓄積することによって、変調信号を遅延させるステップを含んでもよく、同相成分及び直交位相成分へのパルスの付加は、蓄積された同相成分及び蓄積された直交位相成分へのパルスの付加を含んでもよい。この特徴は、適応処理についての低複雑度の実施を容易にする。
【0021】
上記パルスは、二乗余弦パルスまたはハニング・フィルタリングされたパルスであってもよい。これらのタイプのパルスは、修正された振幅成分と微分及び修正された位相成分の修正部分と、これらの成分の未修正の部分との間で、滑らかまたは緩やかな遷移をもたらすことによって、帯域幅の大幅な低減を実現できる。
【0022】
位相変調ステージは、搬送波信号を生成し、微分及び修正された位相成分によって搬送波信号の周波数を変調するための位相ロックループを備えてもよい。同様に、上記方法では、微分及び修正された位相成分を用いて搬送波信号の周波数を変調するステップは、位相ロックループを用いて搬送波信号を生成し、微分及び修正された位相成分を、搬送波信号の周波数を変調するために位相ロックループに適用するステップを含んでもよい。これにより、変調器及び変調方法を汎用的にすることが可能になり、例えば、プログラム可能な搬送波周波数が実現される。
【0023】
位相ロックループは、2点変調用に構成されてもよい。この特徴によって、位相ロックループの高速な動作を実現できる。
【0024】
振幅成分を反転させることによる、修正された振幅成分の生成は、振幅成分の符号の反転を含んでもよく、振幅変調ステージは、修正された振幅成分の大きさを示す大きさ信号を生成する絶対ステージと、修正された振幅成分の符号を示す符号指示子を生成する符号判定ステージと、修正された振幅成分が負の値を有することを符号指示子が示すことに応じて、微分及び修正された位相成分を反転させることによって、符号付きの微分及び修正された位相成分を生成する位相反転ステージと、大きさ信号と符号付きの微分及び修正された位相成分とを乗算する混合器と、を備えてもよい。同様に、上記方法では、振幅成分を反転させることによる、修正された振幅成分の生成は、振幅成分の符号の反転を含んでもよく、修正された振幅成分を用いて搬送波信号の振幅を変調するステップ、及び微分及び修正された位相成分を用いて搬送波信号の周波数を変調するステップは、修正された振幅成分の大きさを示す大きさ信号を生成するステップと、修正された振幅成分の符号を示す符号指示子を生成するステップと、修正された振幅成分が負の値を有することを符号指示子が示すことに応じて、微分及び修正された位相成分を反転させることによって、符号付きの微分及び修正された位相成分を生成するステップと、大きさ信号と符号付きの微分及び修正された位相成分とを乗算するステップと、を含んでもよい。この特徴によって、変調器の低複雑度の実施を実現することが可能である。
【0025】
位相反転ステージは、微分及び修正された位相成分の差動成分を入れ替えることによって、微分及び修正された位相成分を反転させてもよい。同様に、上記方法では、微分及び修正された位相成分の反転処理は、微分及び修正された位相成分の差動成分の入れ替えを含んでもよい。この特徴は、反転処理の低複雑度の実施を実現することが可能である。
【0026】
変調器は、修正された振幅成分を用いて搬送波信号の振幅を変調する前に当該修正された振幅成分をフィルタリングするための、振幅反転ステージと振幅変調ステージとの間に接続された第1フィルタを備えてもよい。同様に、上記方法は、修正された振幅成分を用いて搬送波信号の振幅を変調する前に当該修正された振幅成分をフィルタリングするステップを含んでもよい。そのようなフィルタリングは、帯域幅の低減に寄与しうるとともに、振幅の反転による帯域幅の低減に起因する複雑度を低くしうる。
【0027】
変調器は、微分及び修正された位相成分を用いて搬送波信号の位相を変調する前に当該微分及び修正された位相成分をフィルタリングするための、位相オフセットステージと位相変調ステージとの間に接続された第2フィルタを備えてもよい。同様に、上記方法は、微分及び修正された位相成分を用いて搬送波信号の位相を変調する前に当該微分及び修正された位相成分をフィルタリングするステップを含んでもよい。そのようなフィルタリングも帯域幅の低減に寄与しうる。
【0028】
変調器は、微分された位相成分の符号と逆となるように位相オフセットの符号を制御する符号制御ステージを備えてもよい。同様に、上記方法は、微分された位相成分の符号と逆となるように位相オフセットの符号を制御するステップを含んでもよい。この特徴は、微分及び修正された位相成分の帯域幅を最小限にすることに寄与しうる。
【0029】
第3の態様によれば、第1の態様に係る変調器を備える送信機が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照すると、曲線a)及びb)は、変調信号のI/Q信号についての軌跡の例であり、即ち、横座標は、変調信号の同相信号成分(I)を表し、縦座標は、変調信号の直交位相信号成分(Q)を表す。信号の軌跡a)及びb)は、原点を通過していることがわかる。振幅は、信号の軌跡が原点に近づくにつれて減少し、信号の軌跡が原点を通過する時点でゼロとなり、信号の軌跡が原点から離れるにつれて増加する。原点における振幅の高速な変化は、振幅成分が広い帯域幅を有することにつながる。
【0033】
信号の軌跡が原点を通過する時点で振幅成分を反転させることによって(例えば、振幅成分の符号を反転させることによって)、振幅成分の帯域幅は減少しうる。
図2には、この様子が示されており、破線は反転前の振幅成分の波形を表している。
図2では、水平方向の目盛りは、デジタル領域における、サンプリングされた形式を有する振幅成分についてのサンプル番号である。時刻t
1において、振幅はゼロに達して反転が行われ、その結果、実線で表される、振幅成分の反転された部分が得られる。本発明は、時刻t
1において振幅成分の急激な変化を除去する。時刻t
2において、振幅は再びゼロに達して反転が行われ、その結果、破線で表されるように連続する振幅成分が得られる。第2の反転によって、時刻t
2において振幅成分の急激な変化が除去される。このように、修正された振幅成分は、時刻t
1より前と、同様に時刻t
2より後では、当初のもの、即ち、修正されていない振幅成分と等しく、t
1からt
2の期間では、反転された振幅成分と等しい。時刻t
1から時刻t
2のような反転期間中、修正された振幅成分は負の値によって表されうる一方で、当該修正された振幅成分の残りの部分は正の値を有する。したがって、修正された振幅成分は、符号付き振幅成分とも称されうる。
【0034】
更に、
図1に示す信号の軌跡が原点を通過するため、変調信号の位相が、正から負の値に、または負から正の値に、180度変化する。原点における位相の高速な変化は、位相成分が広い帯域幅を有することにつながる。
図3には、この様子が示されており、破線は位相成分の波形を表しており、180度、即ち、πラジアン(即ち、3.142ラジアン)の、位相の急激な変化が、信号の軌跡が原点を通過する時刻t
1及びt
2において生じている。
図3では、水平方向のスケールは、デジタル領域における、サンプリングされた形式を有する位相成分についてのサンプル番号である。
図3において実線で示すように、時刻t
1及びt
2において位相オフセットを加えることで、位相の急激な変化が低減または除去されうるとともに、位相成分の変化速度が低減されうる。時刻t
2における位相オフセットは、時刻t
1における位相オフセットと大きさは等しいが符号が反対である。このように、修正された位相成分は、時刻t
1より前と、同様に時刻t
2より後では、当初のもの、即ち、修正されていない位相成分と等しく、t
1からt
2の期間では、オフセットされた位相成分と等しい。修正された位相成分の帯域幅は、当初のものの、即ち、修正されていない位相成分の帯域幅と比べて低減される。
【0035】
振幅成分及び位相成分が修正されるべき時、即ち、時刻t
1及びt
2は、振幅成分をモニタリングして振幅基準を適用することによって、または、位相成分をモニタリングして位相基準を適用することによって、決定されうる。これは、振幅成分において広い帯域幅を生じさせるイベントは、位相成分において広い帯域幅を生じさせるイベントと一致するためである。具体的には、修正された振幅成分及び修正された位相成分によって変調された、コンポジット変調された搬送波信号の帯域幅は、修正された振幅成分がゼロである場合に位相オフセットが生じる(即ち、加えられる)と、最小化される。
【0036】
振幅変調成分をAとして表し、位相変調成分をΦとして表すと、ポーラ変調器によって生成されるコンポジット変調された搬送波信号は、A.e
jΦとして表されうる。修正された振幅成分を、正及び負の値を有するA
*として表すと、SGN(A
*)がA
*の符号である場合に、振幅成分Aは、A=A
*.SGN(A
*) としても表されうる。これは、修正された振幅成分A
*に対するSGN(A
*)の乗算は、A
*の負の値を正の値に変換するためである。また、位相変調された搬送波信号e
jΦは、e
jΦ=e
jΦ*.SGN(A
*) としても表されうる。これは、修正された位相成分Φ
*における180度の位相オフセットは、搬送波信号の位相の反転と等価であり、位相変調された搬送波信号に対するSGN(A
*)の乗算は、同様に、搬送波信号の位相の反転と等価であり、積e
jΦ*.SGN(A
*)におけるこれら2つの反転は、互いを打ち消し合うためである。
【0037】
したがって、コンポジット変調された搬送波は、
A.e
jΦ=A
*.SGN(A
*).e
jΦ*.SGN(A
*) (1)
として表すことが可能である。SGN(A
*)が+1または−1の値を有するため、積SGN(A
*).SGN(A
*)=1であり、それ故、
A.e
jΦ=A
*.e
jΦ* (2)
これは、修正された位相成分によって搬送波信号を位相変調することによって、及び、修正された振幅成分によって搬送波信号を振幅変調することによって、コンポジット変調された搬送波信号が生成されうることを示す。
【0038】
式(1)は、以下のように書き直されうる。
A.e
jΦ=ABS(A
*).e
jΦ*.SGN(A
*) (3)
これは、A
*.SGN(A
*)=ABS(A
*) であるためであり、ABS(A
*)は、修正された振幅成分の絶対値である。したがって、コンポジット変調された搬送波を生成する代替方法は、修正された位相成分によって搬送波信号を位相変調し、位相変調された搬送波信号e
jΦ*を、修正された振幅成分の符号に従って反転させるとともに、その結果として得られる位相変調された搬送波を、修正された振幅成分の絶対値によって振幅変調することである。
【0039】
上述のような位相成分の修正は、修正された位相成分を提供するために、位相成分に対する位相オフセットの付加を伴うが、代替的には、微分された位相成分Φ'を提供するために、位相成分Φは微分されてもよく、また、微分及び修正された位相成分Φ'
*を提供するために、微分された位相成分に位相オフセットが付加されてもよい。信号がサンプリングされた形式で処理されるデジタルの実施では、位相成分の微分は、位相成分についての連続するサンプル間の位相差の判定を含みうる。この場合、微分された位相成分は、位相成分についての連続するサンプル間の、一連の位相差を含む。位相成分の微分は、搬送波信号の位相変調が、搬送波信号を周波数変調する位相ロックループを用いて実行される場合に適している。これは、微分された変調信号を用いる周波数変調が、微分なしの変調信号を用いる位相変調と等価であるためである。
【0040】
図1を参照して上述したように、信号の軌跡a)及びb)は、原点を通過し、それにより広帯域幅イベントを生じさせる。しかし、信号の軌跡が原点を通過しないとしても、信号の軌跡が原点の近くを通過する場合に帯域幅が増加する可能性がある。
図4には、そのような信号の軌跡の例が、曲線c)及びd)によって表されている。
図4を参照すると、信号の軌跡が原点に近づくほど振幅が減少し、信号の軌跡が原点から離れるほど振幅が増加することがわかる。この場合もやはり、原点近くにおける振幅の急速な変化は、広い帯域幅を有する振幅成分を生じさせる結果となる。同様に、軌跡が原点の近くを通過する際に位相成分が急速に変化し、それにより広い帯域幅を有する位相成分を生じさせる結果となる。
【0041】
信号の軌跡が原点の近くにある際に振幅成分を反転させることによって、振幅成分は、ゼロを通過するように変更される。これは、
図2から理解することができ、同図では、反転前の振幅成分はゼロにならないとしても、反転の結果、修正された振幅成分は負の値を継続し、それ故に、修正された振幅成分の振幅は、必然的にゼロを通過することが容易に確認できる。サンプリングされた信号として振幅成分が処理された場合、修正された振幅成分がゼロに達する時刻は、通常、反転前の振幅成分の最後のサンプルと、反転後の修正された振幅成分の最初のサンプルの前との間であるか、あるいは逆に、振幅反転の期間の最後における、反転前の修正された振幅成分の最後のサンプルと、反転後の振幅成分の最初のサンプルの前との間である。
【0042】
振幅成分及び位相成分の帯域幅を更に低減するために、原点の近くを通過する信号の軌跡は、サンプル・インスタントの原点を通過するようにシフトすることによって調整可能であり、その結果、振幅成分の符号を反転させ、かつ、位相成分または微分された位相成分に対して位相オフセットを適用する上述の技術は、シフトされた信号の軌跡に適用可能である。これにより、位相オフセットの付加が、修正された振幅成分がゼロを通過することと確実に整合する。
【0043】
以下では、広帯域幅イベントの発生を判定する異なる方法として、振幅成分を反転させ、微分された位相成分に位相オフセットに付加し、信号の軌跡をシフトさせ、かつ、コンポジット変調された搬送波信号を生成する、上述の技術を採用する実施形態について説明する。
【0044】
図5を参照すると、送信機600は、変調信号の同相成分(I)及び直交位相成分を生成するベースバンドプロセッサ(BB)610を備える。本実施形態では、同相成分及び直交位相成分は、デジタル領域においてサンプル形式で生成される。しかし、これは必須ではなく、それらの成分は、代替的にはアナログ領域において生成されうる。ベースバンドプロセッサ610は、変調器500と接続される。変調器500は、例えばデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)で実施されうる信号処理ステージ100を備える。信号処理ステージ100は、同相成分を受信するためにベースバンドプロセッサ610と接続されるI入力112と、直交位相成分を受信するためにベースバンドプロセッサ610と接続されるQ入力116と、を有する。信号処理ステージ100は、同相成分及び直交位相成分をポーラ(極)形式に変換して変調を導入し、それによって、信号処理ステージ100の振幅出力142に送られる修正された振幅成分A
*と、信号処理ステージ100の微分位相出力146に送られる微分及び修正された位相成分Φ'
*と、を生成する。
【0045】
変調器500は、更に、位相変調ステージ200を備え、位相変調ステージ200は、微分及び修正された位相成分を受信するために信号処理ステージ100の微分位相出力146と接続された、微分位相変調入力202を有する。位相変調ステージ200は、搬送波信号を生成するとともに、当該搬送波信号の周波数を変調するために微分及び修正された位相成分を用いる。上述のように、微分された信号による搬送波信号の周波数変調は、微分なしの信号による搬送波の位相変調と等価である。位相変調ステージ200は、位相変調された搬送波信号を送るための位相変調済み搬送波出力204を有し、位相変調は、微分及び修正された位相成分の積分である。
【0046】
変調器500は、更に、振幅変調ステージ300を備え、振幅変調ステージ300は、修正された振幅成分を受信するために信号処理ステージ100の振幅変調出力142と接続された、振幅変調入力302と、位相変調された搬送波信号を受信するために位相変調ステージ200の位相変調済み搬送波出力204と接続された、位相変調済み搬送波入力304と、を有する。振幅変調ステージ300は、修正された振幅成分を、位相変調された搬送波信号の振幅を変調するために用いる。振幅及び位相変調されたコンポジット搬送波信号は、変調器500の変調器出力510と接続された、振幅変調ステージ300の出力306に送られる。電力増幅器(PA)620は、コンポジット搬送波信号を増幅するために、変調器出力510と接続されている。アンテナ630は、増幅されたコンポジット搬送波信号を伝搬させるために、電力増幅器620の出力と接続されている。
【0047】
信号処理ステージの第1の実施形態では、広帯域幅イベントは、変調信号の位相成分(または、より具体的には微分された位相成分)を評価することによって検出される。
図6を参照すると、信号処理ステージ100の第1の実施形態は、ポーラ生成ステージ(CORDIC)120を備え、CORDIC120は、同相成分Iを受信するために、I成分パルス整形フィルタ114を介して信号処理ステージ100のI入力112と接続されたI入力122と、直交位相成分Qを受信するために、Q成分パルス整形フィルタ118を介して信号処理ステージ100のQ入力116と接続されたI入力124と、を有する。I成分パルス整形フィルタ114とQ成分パルス整形フィルタ118は、オプションのエレメントであり、変調信号の同相及び直交位相成分の平滑化をもたらす。ポーラ生成ステージ120は、標準cordic機能を用いて変調信号の振幅成分A及び位相成分Φを生成するために、同相成分及び直交位相成分を用いる。振幅成分は、ポーラ生成ステージ120の振幅出力126に送られ、位相成分は、ポーラ生成ステージ120の位相出力128に送られる。
【0048】
ポーラ生成ステージ120の位相出力128は、微分器ステージ150の入力と接続される。微分器ステージ150は、総和ステージ160の第1入力162と接続される。微分器ステージ150は、位相成分を微分して、微分された位相成分Φ'を、総和ステージ160の第1入力162に送る。総和ステージ160の第2入力164は、位相オフセットを受信するために、イベント検出ステージ170の位相オフセット出力176と接続される。
【0049】
イベント検出ステージ170は、広帯域幅イベントの発生を検出するとともに、振幅成分から、修正された振幅成分A
*の生成を制御し、かつ、微分された位相成分から、微分及び修正された位相成分Φ'
*の生成を制御する。イベント検出ステージ170は、制御ステージ(CONT)178を備える。振幅反転ステージ130の第1入力132は、振幅成分を受信するために、振幅出力126と接続される。振幅反転ステージ130の第2入力134は、振幅成分の符号が反転されるべきか否かを示す符号指示子(sign indication)を受信するために、イベント検出ステージ170の符号出力174と接続される。符号指示子は、例えば、反転が不要であることを示す+1、及び反転が必要であることを示す−1であってもよく、振幅反転ステージ130は、符号指示子を振幅成分に乗算する。振幅反転ステージ130の出力は、変調された振幅成分を送るために、オプションの振幅成分フィルタ140を介して信号処理ステージ100の振幅変調出力142と接続される。
【0050】
総和ステージ160は、位相オフセットを、微分された位相成分に付加する。総和ステージ160の出力は、微分及び修正された位相成分を送るために、オプションの位相成分フィルタ144を介して信号処理ステージ100の位相変調出力146と接続される。
【0051】
制御ステージ178は、微分された位相成分を受信するために、微分器ステージ150の出力156と接続された入力を有する。制御ステージ178は、符号指示子を生成及び位相オフセットを生成するために、微分された位相成分を用い、符号指示子をイベント検出ステージ170の符号出力174に送り、位相オフセットをイベント検出ステージ170の位相オフセット出力176に送る。微分された位相成分は、位相成分の変化速度に相当し、当該変化速度は位相成分の周波数にも相当する。したがって、微分された位相成分の高い値は、位相成分の変化速度が速いこと及び位相成分の周波数が高いことを示し、それ故に、変調信号における広帯域幅イベントを示す。広帯域幅イベントは、微分された位相成分が、位相閾値Φ_limを超える値を有することを判定することによって検出可能であるが、周波数は位相の変化速度と等しいため、当該位相閾値は、周波数閾値FM_limに相当するものと考えられてもよい。振幅成分及び位相成分がサンプリングされた形式で処理される、信号処理ステージ100のデジタルの実施では、位相成分の連続するサンプル間の値の差分が、微分された位相成分を示す。例えば、信号の軌跡が原点を通過する場合、原点に対していずれかの側にある位相成分の、連続するサンプル間の値の差分は、信号の軌跡の方向に依存して、πか−πである。オプションとして、位相成分の周波数の指示子を提供するために、位相成分の連続するサンプル間の値の差分は、サンプル間隔で除算されてもよい。位相閾値は、特定のシステムの性能を最適化するために、システム依存の値を有しうる。
【0052】
イベント検出ステージ170は、広帯域幅イベントを検出した場合、イベント検出ステージ170の位相オフセット出力176に送る位相オフセット用の値を決定する。この値は、信号の軌跡の方向に依存して、πまたは−πを取りうるとともに、その符号は、広帯域幅イベントにおいて、微分された位相成分の符号と逆となるように選択される。したがって、微分された位相成分が正となるように、広帯域幅イベントにおいて位相成分が増加している場合、位相オフセットは−πとなるように選択され、一方、微分された位相成分が負となるように、広帯域幅イベントにおいて位相成分が減少している場合、位相オフセットはπとなるように選択される。
【0053】
信号の軌跡が原点を通過する場合、原点に対していずれかの側の、位相成分の連続するサンプル間の値の差分は、πまたは−πであり、総和ステージ160による位相オフセットの付加は、この差分をキャンセルし、その結果として、微分及び修正された位相成分の帯域幅を、微分された位相成分の帯域幅に比べて減少させる。信号の軌跡が原点の近くを通過するが原点を通過しない場合、原点に対していずれかの側の、位相成分の連続するサンプル間の値の差分は、大きさがπより小さく、総和ステージ160による位相オフセットの付加は、この差分をキャンセルせず、その結果として、微分された位相成分に、残留した急激な変化をもたらす。しかし、位相成分フィルタ144は、微分及び修正された位相成分の帯域幅を更に低減することができる。広帯域幅イベントが検出されていない場合、位相オフセットは不要であり、それ故に、位相オフセット出力176はゼロに設定される。
【0054】
また、イベント検出ステージ170(または、より具体的には制御ステージ178)は、広帯域幅イベントを検出した場合、イベント検出ステージ170の符号出力174に送る符号指示子用の値を決定する。符号指示子は、初期値として+1に設定され、
図3の 時刻t
1 におけるような最初の広帯域幅イベントの検出まで、この値で維持される。
最初の広帯域幅イベントの検出によって、符号指示子は反転され、即ち、−1に設定され、
図3の 時刻t
2 におけるような次の広帯域幅イベントの発生まで、この値で維持される。このようにして、符号指示子は、広帯域幅イベントごとに切り替えられる。
【0055】
図7を参照すると、振幅及び位相成分のサンプルをデジタル領域で処理する場合の、
図6を参照して上述した信号処理ステージ100によって実行されうるステップのフローチャートが示されている。
ステップ710で、位相閾値Φ_limが初期化される。位相閾値Φ_limは、送信信号において許容される最大周波数偏差に相当し、それ故に、微分された位相成分についての許容される最大の大きさである。
ステップ712で、Sign_Aと表記される符号指示子が+1に初期化される。微分された位相成分Φ'に相当するか、等価的には、位相成分の周波数に相当する、位相変調成分Φのサンプル(または、より具体的には位相変調成分の連続するサンプル間の差分)の処理は、ステップ714において始まる。
ステップ714で、微分された位相成分Φ'が、サンプルのウィンドウ内で最大値Φ'_maxまたは最小値Φ'_minに達したかどうかが判定される。これは、例えば、微分された位相成分の各サンプルを、その前後のサンプルと比較することによって実行されうる。ここで、最大値Φ'_maxは、前後のサンプルの両方が、比較される中間サンプルの値よりも小さい値を有する場合に示され、最小値Φ'_minは、前後のサンプルの両方が、比較される中間サンプルの値よりも大きい値を有する場合に示される。最小値Φ'_minは、負の値を有し、そのため、前後のサンプルの両方は、より大きい値(即ち、より小さい負の値)を有する。最大値Φ'_maxまたは最小値Φ'_minが判定された場合、 フローはステップ716に進む。
ステップ716で、|Φ'|と表記される、判定された最大値Φ'_maxまたは最小値Φ'_minの大きさが、位相閾値Φ_limと比較される。|Φ'|がΦ_limを超えない場合、広帯域幅イベントが検出されていないとみなされ、フローがステップ718に進み、当該ステップで、Φ_offsetと表記される位相オフセットがゼロに設定される。一方、ステップ716で、|Φ'|が閾値Φ_lim以上である場合、広帯域幅イベントが検出されたとみなされ、フローがステップ720に進む。
ステップ720で、符号指示子Sign_Aが反転され、即ち、現在+1に設定されている場合には−1に変更され、現在−1に設定されている場合には+1に変更される。
その後、フローはステップ722に進み、当該ステップで、微分された位相成分Φ'が正であるかどうかが判定され、微分された位相成分Φ'が正であることは、周波数偏差が正であること(即ち、位相成分の過去のサンプルに対する位相成分の増加)に相当する。微分された位相成分Φ'が正である場合、位相成分が広帯域幅イベントで増加していることを示し、ステップ724で、位相オフセットΦ_offsetが−πに設定される。逆に、微分された位相成分Φ'が負である場合、位相成分が広帯域幅イベントで減少していることを示し、ステップ726で、位相オフセットがπに設定される。
ステップ718、724及び726からフローがステップ728に進むと、当該ステップで、振幅成分に符号指示子Sign_Aを乗算することによって、符号付き振幅成分とも称される、修正された振幅成分A
*が生成される。
その後、フローはステップ730に進み、当該ステップで、位相オフセットΦ_offsetを、微分された位相オフセットΦ'に付加することによって、
図7においてΦ'
*と表記される、微分及び修正された位相成分が生成される。
その後、振幅成分の次のサンプルと微分された位相成分の次のサンプルとを処理するために、フローはステップ714に戻る。
ステップ710から726は、イベント検出ステージ170によって実行されうる。その場合、ステップ728は、振幅反転ステージ130の動作に相当し、ステップ730は、総和ステージ160の動作に相当する。
【0056】
図8を参照すると、振幅変調ステージ300の第1の実施形態は、第1差動入力352及び第2差動入力354を有する混合器350を備える。振幅変調ステージ300の振幅変調入力302は、第1デジタル・アナログ変換器(DAC)330を介して、混合器350の第1差動入力352の正入力352+と接続される。振幅変調ステージ300の振幅変調入力302は、更に、乗算器310の第1入力312と接続される。
当該乗算器の第2入力314は−1に設定され、乗算器310の出力316は、第2デジタル・アナログ変換器(DAC)340を介して、混合器350の第1差動入力352の負入力352−と接続される。このようにして、混合器350には、変調された振幅成分A
*の、正及び負の差動成分A
*+,A
*−が提供される。第1及び第2DAC330,340は、正及び負の入力値を処理可能な符号付きDACである。
【0057】
振幅変調ステージ300の位相変調済み搬送波入力304は、差動形式の周波数変調された(または、等価的には位相変調された)搬送波信号を受信するための、正入力及び負入力304+,304−を備える。位相変調済み搬送波入力304の正入力及び負入力304+,304−は、混合器350の第2差動入力354の正入力及び負入力354+,344−とそれぞれ接続される。混合器350は、位相変調された搬送波信号と、修正された振幅成分とを差動形式で乗算し、それによって、修正された振幅成分によって、位相変調された搬送波信号を振幅変調して、実質的には式(2)の右辺の積を形成するとともに、コンポジット変調された搬送波信号を、振幅変調ステージ300の差動出力306の正出力及び負出力306+,306−に送る。
【0058】
図9を参照すると、振幅変調ステージ300の第2の実施形態では、振幅変調ステージ300の振幅変調入力302は、修正された振幅成分A
*の大きさを示す大きさ信号|A
*|を生成する絶対ステージ325の入力327と接続される。絶対ステージ325の出力329は、DAC335を介して、混合器350の第1入力352と接続される。振幅変調ステージ300の振幅変調入力302は、更に、修正された振幅成分A
*の符号を示す符号指示子SGN(A
*)を生成する符号判定ステージ322の入力368と接続される。符号判定ステージ322の出力366は、位相反転ステージ360に符号指示子を送るために、位相反転ステージ360の制御入力367と接続される。振幅変調ステージ300の位相変調済み搬送波入力304は、差動形式の位相変調された搬送波信号を受信するための、正入力及び負入力304+,304−を備える。位相変調済み搬送波入力304の正入力及び負入力304+,304−は、位相反転ステージ360を介して、混合器350の第2差動入力354の正入力及び負入力354+,354−とそれぞれ接続され、位相反転ステージ360は、例えば、切り替えスイッチであってもよい。位相反転ステージ360は、次に混合器350の第2差動入力354の正入力及び負入力354+,354−に送られる位相変調された搬送波信号の差動成分を、符号指示子SGN(A
*)に応じて入れ替えるよう構成される。
【0059】
混合器350は、差動形式の位相変調された搬送波信号と、大きさ信号|A
*|とを乗算し、実質的には、式(3)の右辺の積を形成するとともに、コンポジット変調された搬送波信号を、振幅変調ステージ300の差動出力306の、正出力及び負出力306+,306−に送る。
【0060】
図10を参照すると、位相変調ステージ200の実施形態は、2点変調用に構成された位相ロックループを備える。位相変調入力202は、位相検出器(PD)212の第1入力と接続される。基準信号を生成する基準発振器210の出力は、位相検出器212にクロックを提供するために、位相検出器212の第2入力に接続される。位相検出器212の出力は、ループフィルタ214を介して、加算器216の第1入力と接続される。加算器216の第2入力は、位相変調入力202と接続される。このようにして、微分及び修正された位相成分Φ'
*は、位相検出器212及び加算器216の両方に適用される。加算器216の出力は、デジタル制御発振器(DCO)218の制御入力と接続される。DCO218の出力は、位相量子化ステージ(PQ)222の第1入力と接続される。位相量子化ステージ222の第2入力は、基準発振器210の出力と接続される。位相量子化ステージ222は、DCO218の出力に送られる位相変調された搬送波信号と、基準発振器210によって生成される基準信号との間の、位相または時間の差分についての指示子を生成する。位相差を示す、位相量子化ステージ222の出力は、位相検出器212の第3入力と接続される。位相検出器212は、微分及び修正された位相成分Φ'
*から、示された位相差を減算する。差動形式のDCO218の出力は、増幅器220を介して、同様に差動形式の位相変調済み搬送波出力204の正出力及び負出力204+,204−と接続される。
【0061】
信号処理ステージ100の第2の実施形態では、変調信号の同相成分及び直交位相成分を使用して、変調信号の振幅を評価することによって、広帯域幅イベントが検出される。更に、第2の実施形態は、ゼロを通過するように振幅成分を適応させるための提供を含む。
図11を参照すると、信号処理ステージ100の第2の実施形態は、変調信号の同相成分Iを受信するためのI入力112と、変調信号の直交位相成分Qを受信するためのQ入力116と、を備える。信号処理ステージ100のI入力112は、I成分パルス整形フィルタ114を介して、イベント検出ステージ170のI入力と接続される。信号処理ステージ100のQ入力116は、Q成分パルス整形フィルタ118を介して、イベント検出ステージ170のQ入力と接続される。I成分パルス整形フィルタ114及びQ成分パルス整形フィルタ118は、オプションのエレメントであり、変調信号の同相及び直交位相成分の平滑化を提供する。イベント検出ステージ170は、以下で説明する、測定ステージ(AMP)182と、検出ステージ184と、適応ステージ180と、制御遅延ステージ183と、制御ステージ(CONT)178と、を備える。イベント検出ステージ170のQ入力は、適応ステージ180のQ入力196と接続され、イベント検出ステージ170のI入力は、適応ステージ180のI入力195と接続される。
【0062】
適応ステージ180のI入力195は、変調信号の同相成分をサンプル数N/2だけ遅延させるためのI成分遅延ステージ185の入力と接続される。I成分遅延ステージ185の出力は、I成分総和ステージ193の第1入力と接続される。I成分総和ステージ193の出力は、適応ステージ180のI出力197と接続され、I出力197は、それ自体がイベント検出ステージ170のI出力と接続され、また、それ自体がポーラ生成ステージ(CORDIC)120のI入力122と接続される。適応ステージ180のQ入力196は、変調信号の直交位相成分をサンプル数N/2だけ遅延させるためのQ成分遅延ステージ189の入力と接続される。Q成分遅延ステージ189の出力は、Q成分総和ステージ194の第1入力と接続される。Q成分総和ステージ194の出力は、適応ステージ180のQ出力198と接続され、Q出力1978は、それ自体がイベント検出ステージ170のQ出力と接続され、また、それ自体がポーラ生成ステージ120のQ入力124と接続される。
【0063】
測定ステージ182は、第1入力及び第2入力を有する。第1入力は、I成分パルス整形フィルタ114によるフィルタリング後の変調信号の同相成分を受信するために、I成分パルス整形フィルタ114の出力と接続される。第2出力は、Q成分パルス整形フィルタ118によるフィルタリング後の変調信号の直交位相成分を受信するために、Q成分パルス整形フィルタ118の出力と接続される。測定ステージ182は、当該振幅は、標準codic機能のために用いられうる変調信号の同相及び直交位相成分から変調信号の振幅を判定するとともに、測定ステージ182は、特に、変調信号の振幅の極小値を判定する。検出ステージ184の入力は、測定ステージ182によって判定される最小振幅のそれぞれの指示子を受信するために、測定ステージ182の出力と接続されており、変調信号の最小振幅が振幅閾値A
Thよりも大きいかどうかを検出する。
【0064】
検出ステージ184の出力は、振幅閾値A
Th以下の変調信号の最小振幅の検出についての指示子を提供するために、適応ステージ180の制御入力190と接続される。適応ステージ180の制御入力190は、I成分サンプル・ホールド(S/H)ストア186と、Q成分サンプル・ホールド・ストア188と、波形生成器(WFG)187と接続される。I成分サンプル・ホールド(S/H)は、更に、同相成分を受信するための、適応ステージ180のI入力195と接続された入力を有し、Q成分サンプル・ホールド(S/H)は、更に、直交位相成分を受信するための、適応ステージ180のQ入力196と接続された入力を有する。振幅閾値A
Th以下の、変調信号の最小振幅を検出ステージ184が検出したことに応じて、I成分S/Hストア186は、最低でも変調信号の同相成分の値を蓄積し、Q成分S/Hストア188は、最低でも変調信号の直交位相成分の値を蓄積する。また、振幅閾値A
Th以下の、変調信号の最小振幅を検出ステージ184が検出したことに応じて、WFG187は、パルスであってもよいNサンプルの適応波形を生成することを開始する。波形生成器187の出力は、I成分適応混合器191の第1入力、及びQ成分適応混合器192の第1入力と接続される。I成分S/Hストア186の出力は、I成分適応混合器191の第2入力と接続され、I成分適応混合器191は、適応波形と、I成分S/Hストア186に蓄積された変調信号の同相成分の値を乗算するとともに、結果として得られた積を、I成分総和ステージ193の第2入力と接続された出力に送る。Q成分S/Hストア188の出力は、Q成分適応混合器192の第2入力と接続され、Q成分適応混合器192は、適応波形と、Q成分S/Hストア188に蓄積された変調信号の直交位相成分の値を乗算するとともに、結果として得られた積を、Q成分総和ステージ194の第2入力と接続された出力に送る。したがって、適応ステージ180は、変調信号の振幅の最小値が振幅閾値A
Thを超えないことの検出に応じて、変調信号の同相及び直交位相成分を適応させることを開始し、最小値がゼロにシフトするように当該最小値の座標によってスケーリングされた適応波形を付加することによって、検出された最小値の前のN/2サンプルについて開始する。適応処理は、適応波形のNサンプルについて継続する(即ち、検出された最小値の後のN/2サンプルまで継続する)。
【0065】
したがって、検出ステージ184によって、変調信号の振幅が振幅閾値A
Th以下であると判定された場合、これは、信号の軌跡が原点の近くにあることを示し、それ故に、変調信号が現在、広い帯域幅を有することを示す。このような広帯域幅イベントが検出された場合、上述のように、適応ステージ180が、変調信号の軌跡を、原点を通過するようにシフトさせることによって、適応または変更された後に、変調信号の同相及び直交位相成分はポーラ生成ステージ120に送られる。逆に、検出ステージ184によって、変調信号の振幅が振幅閾値A
Thより大きいと判定された場合、これは、変調信号の軌跡が、原点の近くにはないことを示し、それ故に、変調信号が現在、広い帯域幅を有していないことを示す。この場合、変調信号の同相及び直交位相成分は、修正されずに、I成分遅延ステージ185及びQ成分遅延ステージ189によってそれぞれ単に遅延されて、ポーラ生成ステージ120に送られる。
【0066】
適応波形は、パルスであってもよい。他のタイプのパルスが代替的に使用されてもよいが、適切なパルスは、二乗余弦パルス、またはハニング・フィルタリングされたパルスである。二乗余弦パルスは、EVMの劣化とACLRの劣化のトレードオフに対して、より良好な制御を可能にしうる。狭いパルスは、ACLRの劣化をもたらしうる一方で、長いパルスは、EVMの劣化をもたらしうる。変調信号の同相及び直交位相成分にパルスが付加される適応処理について説明してきたが、他の適応処理が代替的に使用されてもよく、例えば、同相及び直交位相成分の一部を、パルスのような波形で置き換える処理であってもよいし、あるいは、パルスのような波形との、同相及び直交位相成分の畳み込み処理であってもよい。
【0067】
適応処理の後、適応ステージ180のI出力197に送られる同相成分は、広帯域幅イベントが検出される後続の適応処理が行われた、信号処理ステージ100のI入力112における同相成分に相当する。同様に、適応ステージ180のQ出力198に送られる直交位相成分は、広帯域幅イベントが検出される後続の適応処理が行われた、信号処理ステージ100のQ入力116における直交位相成分に相当する。
【0068】
ポーラ生成ステージ(CORDIC)120は、I入力122及びQ入力124を有し、I入力122は、適応ステージ180のI出力197から同相成分を受信するために、イベント検出ステージ170のI出力と接続され、Q入力124は、適応ステージ180のQ出力197から直交位相成分を受信するために、イベント検出ステージ170のQ出力と接続される。ポーラ生成ステージ120は、標準cordic機能を使用して、変調信号の振幅成分A及び位相成分Φを生成するために、同相成分及び直交位相成分を用いる。振幅成分は、ポーラ生成ステージ120の振幅出力126に送られ、位相成分は、ポーラ生成ステージ120の位相出力128に送られる。
【0069】
検出ステージ184の出力は、振幅閾値A
Th以下の、変調信号の最小振幅が検出されていることを示す、検出ステージ184からの指示子を、サンプル数N/2だけ遅延させるための、第1遅延ステージ183を介して、制御ステージ178の入力172とも接続される。広帯域幅イベントの発生を意味するこのような指示子に応じて、制御ステージ178は、イベント検出ステージ170の符号出力174に送る符号指示子Sign_Aを生成するとともに、イベント検出ステージ170の位相オフセット出力176に送る位相オフセットを生成する。
【0070】
振幅反転ステージ130の第1入力132は、振幅成分Aを受信するために、ポーラ生成ステージ120の振幅出力126と接続される。振幅反転ステージ130の第2入力134は、振幅成分の符号が反転されるべきかどうかを示す、符号指示子Sign_Aを受信するために、イベント検出ステージ170の符号出力174と接続される。符号指示子は、例えば、反転が不要であることを示すために+1であってもよく、また、反転が必要であることを示すために−1であってもよく、振幅反転ステージ130は、振幅成分Aと符号指示子Sign_Aを乗算するための乗算器を備えていてもよい。振幅反転ステージ130の出力は、修正された振幅成分A
*を送るために、オプションの振幅フィルタ140を介して、信号処理ステージ100の振幅変調出力142と接続される。符号指示子は、初期値として+1に設定されてもよく、
図3の時刻t
1におけるような、最初の広帯域幅イベントの検出まで、この値に保たれてもよい。最初の広帯域幅イベントの検出によって、符号指示子は反転され(即ち、−1に設定され)、
図3の時刻t
2におけるような次の広帯域幅イベントの発生まで、−1に保たれる。このようにして、符号指示子は、広帯域幅インベントごとに切り替えられる。
【0071】
ポーラ生成ステージ120の位相出力128は、微分器ステージ150の入力と接続され、微分器ステージ150の出力156は、総和ステージ160の第1入力162と接続される。微分器ステージ150は、位相成分を微分し、微分された位相成分を、総和ステージ160の第1入力162に送る。イベント検出ステージ170の位相オフセット出力176は、乗算ステージ139の第1入力と接続され、必要となる位相オフセットの大きさの指示子を提供する。この指示子は、位相オフセットが必要ない場合にはゼロであってもよいし、広帯域幅イベントの検出の結果として位相オフセットが必要となる場合にはπであってもよい。符号判定ステージ131は、微分ステージ150の出力156と接続された入力を有し、微分された位相成分の符号を判定する。当該符号判定ステージの出力は、反転ステージ133を介して、乗算ステージ139の第2入力と接続される。したがって、乗算ステージ139の第2入力は、微分された位相成分の符号についての反転指示子を受信し、当該指示子は、例えば、微分された位相成分が負である場合には+1、微分された位相成分が正である場合には−1であってもよい。乗算ステージ139は、必要となる位相オフセットの大きさについての指示子と、微分された位相成分の符号についての反転指示子を乗算し、総和ステージ160の第2入力164と接続された、乗算ステージ139の出力に位相オフセットを提供する。当該位相オフセットは、広帯域幅イベントが検出されている場合には±πであり、それ以外の場合にはゼロであり、位相オフセットの符号は、微分された位相成分の符号とは逆となるように選択される。このようにして、位相オフセットの符号は、共同して符号制御ステージを形成する符号判定ステージ131、反転ステージ133及び乗算ステージ139によって、選択される。総和ステージ160は、当該位相オフセットを、微分された位相成分に付加する。総和ステージ160の出力は、微分及び修正された位相成分を送るために、オプションの位相フィルタ144を介して、信号処理ステージ100の位相変調出力146と接続される。
【0072】
図6に示す信号処理ステージ100の場合のように、
図11の実施形態のイベント検出ステージ170は、広帯域幅イベントを検出すると、位相オフセット出力176に送る位相オフセットの値を決定する。この値は、信号の軌跡の方向に依存して、πまたは−πを取りうるとともに、広帯域幅イベントにおける位相の変化速度を低減するように選択される。信号の軌跡が原点を通過する場合、原点に対していずれかの側の、位相成分の連続するサンプル間の値の差分は、πまたは−πであり、総和ステージ160による位相オフセットの付加は、πまたは−πラジアンの変化をキャンセルする。信号の軌跡が原点の近くを通過するが原点を通過しない場合、原点に対していずれかの側の、位相成分の連続するサンプル間の値の差分は、大きさがπより小さい。しかし、振幅成分の反転によって、上述のように、信号の軌跡は、当該信号の軌跡が通過するように位相の変化が±πとなる結果として、確実に原点を通過するように変更され、πまたは−πラジアンの位相オフセットは、広帯域幅イベントにおけるこの位相変化をキャンセルでき、それにより、広帯域幅イベントにおける位相の変化速度を低減する。その結果として、信号処理ステージ100の位相変調出力146に送られる微分及び修正された位相成分の帯域幅は、位相変調成分及び微分された位相変調成分の帯域幅に対して低減される。
【0073】
図12を参照すると、変調方法は、ステップ810における、同相成分I及び直交位相成分Qを含む変調信号を提供するステップを含む。ステップ812で、広帯域幅イベントが発生したかどうかを検出するために試験が実行され、その試験の結果が記録される。
ステップ814で、変調信号(特に、同相成分及び直交位相成分)を、I成分遅延ステージ185及びQ成分遅延ステージ189のような遅延ステージにおいて一時的に蓄積することによって、変調信号が遅延される。
ステップ812において広帯域幅イベントの発生が記録された場合、ステップ816で、遅延ステージで蓄積された変調信号は、広帯域幅イベントの発生時に当該変調信号が確実にゼロ振幅を有するように、適応される。この適応処理は、例えば、蓄積された変調信号に対するパルスの付加(具体的には、蓄積された同相成分及び直交位相成分に対するパルスの付加)を含みうる。変調信号の蓄積は、当該適応処理が、広帯域幅イベントにおける変調信号及びそれ以降の変調信号だけでなく広帯域幅イベントに先行する変調信号を修正することを可能にし、それ故に、ゼロ振幅に至る、変調信号の振幅の緩やかな遷移をもたらすことを可能にする。
【0074】
ステップ818で、変調信号の振幅成分A及び位相成分Φが、ステップ816において必要な場合に修正された、蓄積された変調信号から生成される。変調信号の同相及び直交位相成分から、これらの振幅及び位相成分を生成するために、標準cordic機能が用いられうる。変調信号がステップ816で適応された場合、このステップにおいて、振幅成分が、適応処理の結果として、広帯域幅イベントの発生時にゼロを通過するようになり、位相成分が、±πの位相変化を有するようになる。
ステップ820で、位相成分Φを微分することによって、微分された位相成分Φ'が生成される。
【0075】
ステップ822で、広帯域幅イベントの発生から、振幅成分を反転させることによって、修正された振幅成分A
*が生成される。このようにして、次の広帯域幅イベントが検出されるまで、広帯域幅イベントを過ぎて振幅成分の反転が継続し、その検出時において、ポイント反転が再び適用されることで、それ以前の反転がキャンセルされる(即ち、更なる広帯域幅イベントが検出されるまで、振幅成分が再反転される)。したがって、修正された振幅成分A
*は、反転及び再反転が交互に行われる期間で構成され、各期間は、広帯域幅イベントで始まる。
【0076】
また、広帯域幅イベントがステップ812で記録された場合、ステップ822では、広帯域幅イベントの発生時に、180度の大きさを有する位相オフセットを、微分された位相成分Φ'に付加することによって、微分及び修正された位相成分Φ'
*が生成される。位相オフセットの符号は、微分された位相オフセットΦ'の符号とは逆となるように選択される。したがって、広帯域幅イベントがステップ812で記録されていない場合、微分及び修正された位相成分Φ'
*は、微分された位相オフセットΦ'と等しい。
【0077】
ステップ824で、修正された振幅成分A
*が、搬送波信号の振幅を変調するために用いられ、ステップ826で、微分及び修正された位相成分Φ'
*が、搬送波信号の周波数を変調するために用いられる。その後、継続する変調信号の処理のためにフローがステップ810に戻ってもよい。
【0078】
図13を参照すると、グラフa)及びb)は、変調信号の振幅変調成分のスペクトル及び修正された振幅成分のスペクトルをそれぞれ示し、グラフc)及びd)は、変調信号の位相変調成分のスペクトル及び修正された位相成分のスペクトルをそれぞれ示し、グラフe)は、従来技術の変調器を用いて、変調信号の振幅変調成分と位相変調成分の両方によって変調された場合の、送信機の出力信号のスペクトルを示し、グラフf)は、本明細書で説明した変調器500を用いて、修正された振幅変調成分と微分及び修正された位相変調成分によって変調された、送信機の出力信号のスペクトルを示す。
図13のグラフは、WCDMA用の信号に関するものである。
図13の各グラフを表示する目的で、各グラフの信号は、10MHzの帯域幅を有する第3次ベッセル(Bessel)フィルタを用いた帯域制限が行われている。本グラフは、修正された振幅成分、微分及び修正された位相成分、及びそれら両方によって変調されたコンポジット信号の帯域幅が、修正なしの帯域幅と比較して大幅に低減されることを明らかにしている。また、本例では、ピーク周波数の偏差が、10MHzから5MHzに半減している。帯域幅の低減は、ターゲット・デュプレックス距離の雑音が、より低いデュプレックス距離でもたらされるのを可能にする。変調あり及びなしの両方のACLRマージンは、10dBである。更に、修正された振幅成分と微分及び修正された位相成分を使用することで、振幅成分と位相成分との間のタイミングの不整合に対するより高い耐性がもたらされる。コンポジット信号のスペクトルの、時間遅延に対する依存性は、特に、遠方スペクトルにおいて大幅に改善される。このことは、修正された振幅成分と微分及び修正された位相成分の帯域幅が低減され、遠方ではキャンセルが必要とされないために、直感的に理解されうる。
図12に示す例では、修正された振幅成分と微分及び修正された位相成分を使用することによって、EVMが0.7%から0.9%にわずかに劣化する。振幅閾値及び位相閾値(または、等価の周波数閾値)の選択によって、ピーク周波数偏差の低減及び遠方雑音(far-out noise)の低減と、ACLR及びEVMの劣化との間のトレードオフが実現される。
【0079】
信号処理ステージ100の他の実施形態では、
図11を参照して説明した測定ステージ182、検出ステージ184及び適応ステージ180は、
図6を参照して説明した、信号処理ステージ100の実施形態において、ポーラ生成ステージ120によって処理される前に原点を通過するように変調信号の軌跡をシフトさせるよう、変調信号の同相成分及び直交位相成分を適応させるために、I成分及びQ成分パルス整形フィルタ114,118とポーラ生成ステージ120との間に組み込まれてもよい。この場合、変調信号の適応された同相成分及び直交位相成分から生成された、微分された位相成分について、広帯域幅イベントの検出が、イベント検出ステージ170によって実行され、それ故に、当該検出処理では、適応処理の前の変調信号の同相成分及び直交位相成分に基づいてイベント検出ステージ170が広帯域幅イベントを検出する
図11の実施形態とは対照的に、適応処理の効果が考慮される。
【0080】
変調器、変調方法及び送信機について、WCDMA及びLTEとの関連で説明してきたが、それらの適用は、LTEに限定されず、それらは他の無線システムにおいて採用されてもよい。
【0081】
他の変形及び修正は、当業者には明らかである。そのような変形及び修正は、本明細書に記載の特徴に代えて、または本明細書に記載の特徴に加えて使用されうる、既に知られている均等及び他の特徴を求めうる。個別の実施形態との関連で説明された特徴は、1つの実施形態において組み合わせて提供されてもよい。逆に、1つの実施形態との関連で説明された特徴が、個別に提供されてもよいし、または任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。
【0082】
なお、「備える(comprising)」との用語は、他のエレメントまたはステップを除外するものではなく、「1つの(a)」または「1つの(an)」との用語は、複数のものを除外するものではなく、請求項に記載された複数の特徴の機能を1つの特徴が実行してもよく、請求項の参照符号は、請求項の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
また、図面は必ずしもスケーリングが行われておらず、むしろ、本発明の原理を説明する際に大まかに強調が行われていることに留意されたい。