(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
血液透析に用いられる透析液は、従来の酢酸透析液から、近年は患者の負担が少ない重炭酸透析液に変わってきている。しかしながら、重炭酸透析製剤は、含有する成分である重炭酸イオンが、電解質成分として含有されるカルシウムイオン並びにマグネシウムイオンと反応して、不溶性の化合物(重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウムなどの重炭酸金属塩)を生成するため、一剤化することは困難である。そのため、カルシウムイオン及びマグネシウムイオン等を含む電解質成分、必要に応じて添加されるブドウ糖及びpH調整剤を含む濃厚液「A剤」と、重炭酸イオンの炭酸水素ナトリウムからなる粉末の「B剤」の2剤構成からなる透析用剤が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、この濃厚液「A剤」は、通常約5〜15L程度の濃厚液がポリエチレン容器に充填されており、その大きさ及び重量から、輸送コスト、病院での保管スペース及び使用後の廃棄方法等が大きな問題となっている。
そこで、これらの問題を解決する手段としてA剤を粉末剤として提供することが考えられるようになり、既に製品化もされている(特許文献1)。このような粉末透析製剤は、透析製剤を構成する各原料成分(粉末)を混合し、場合によってはバインダー液を添加して造粒し、乾燥し、整粒し、粉末〜顆粒製剤として提供することが広く行われている。
【0004】
しかしながらこれらの製剤では、含有する成分自体が微粉末状のものが多く、製剤を溶解装置に投入するに際して粉塵が発生したり、また、pH調整剤として使用されている酢酸による酢酸臭が強かったりするため、製造現場、医療現場等での作業環境を悪化させる原因となっている。
また、pH調整剤として少量含有される酢酸は、本来的には生体内にほとんど存在しないもの(0.1mEq/L以下)であり、また最近になって酢酸に起因すると思われる透析中の頭痛や、血圧低下等の臨床症状の発現が問題視されるようになっている。
【0005】
すなわち、重炭酸透析製剤にpH調整剤として添加される8〜12mEq/L程度の少量の酢酸は問題ないと考えられていた。しかしながら、近年の透析療法の長期化や、ダイヤライザーの性能の向上等により、添加された酢酸自体が過度に負荷されることとなり、循環器に悪い影響を与えるようになり、また酢酸不耐症等、酢酸の副作用は予想以上に強いことが認識されるようになってきた。そこで酢酸を全く含まないクエン酸等の固体有機酸を使用した透析製剤が登場するに至った(特許文献2、3)。
【0006】
ところで含有されるpH調整剤としてのクエン酸等の固体有機酸は、ブドウ糖と一緒に接触した状態で長期間保存すると、その強酸性のためにブドウ糖の分解が生じ、ブドウ糖分解物である5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)等の生成が起こり、特に水分過多の場合にはこの分解が激しいものである。
【0007】
従来のpH調整剤として酢酸−酢酸塩(酢酸ナトリウム)を使用していた場合には、酢酸が固形状の酢酸ナトリウムに速やかに浸透し、pH4〜5に中和されることから、酢酸自体がブドウ糖と直接接触することが無く、上記の点は問題とされていなかったが、pH調整剤として酢酸以外の固体有機酸を使用した場合には大きな問題であり、かかるブドウ糖の分解を抑制した粉末透析用製剤の開発が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明は、上記現状を鑑み、pH調整剤として酢酸を含有しない固体有機酸を使用した粉末透析製剤において、ブドウ糖の分解を抑制した固形透析用剤を提供することを課題とする。
【0010】
かかる課題を解決するべく、本発明者らは鋭意検討した結果、固体有機酸について、微細粉末状態の固形有機酸含有量を低減すること、具体的には含有させる固形有機酸について、特定の粒子径以下の粒子の割合をコントロールすること、或いは固体有機酸をコーティングすることで、かかる問題点が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
しかして、その一つの基本的態様として請求項1に記載の本発明は、電解質成分、ブドウ糖及びpH調整剤からなる固形透析用剤において、含有される固体有機酸として、その粒子径150μm以下の粒子が20%以下である固体有機酸を使用することを特徴とする固形透析用剤である。
【0012】
より好ましい請求項2に記載の発明は、含有する固体有機酸として、その粒子径150μm以下の粒子が10%以下である固形透析用剤である。
【0013】
また、別の基本的態様としての請求項3に記載の本発明は、電解質成分、ブドウ糖及びpH調整剤からなる固形透析用剤において、含有される固体有機酸がコーティングした固体有機酸であることを特徴とする固形透析用剤である。
【0014】
更に本発明は上記の各態様において、具体的には以下の構成からなるものである。
(1)固体有機酸がクエン酸であることを特徴とする上記に記載の固形透析用剤;
(2)固体有機酸のコーティングをクエン酸ナトリウム溶液で行うものであることを特徴とする上記に記載の固形透析用剤;
である。
【0015】
また本発明は更に別の態様として、固形透析用剤の製造方法であり、具体的には、電解質成分、ブドウ糖及びpH調整剤からなる固形透析用剤において、請求項6に記載の発明は、電解質成分及びブドウ糖からなる乾燥した造粒物に、固体有機酸として、その粒子径が250μm以下の粒子が10%以下である固体有機酸を添加することを特徴とする固形透析用剤の製造方法であり、また請求項7に記載の発明は、電解質成分からなる乾燥した造粒物に、固体有機酸として、クエン酸ナトリウムによりコーティングした固体有機酸を添加することを特徴とする固形透析用剤の製造方法であり、特に固体有機酸がクエン酸であることを特徴とする上記の固形透析用剤の製造方法である。
【0016】
更にまた本発明は、別の基本的態様としての請求項9に記載の発明は、電解質成分、ブドウ糖及びpH調整剤からなる固形透析用剤において、含有される固体有機酸として、微粉末状態の粒子の含有量が少ない固形有機酸を使用することを特徴とする固形透析製剤である。
【0017】
より好ましくは、粒子径250μm以下の粒子が20%以下である固形有機酸を使用することを特徴とする、更には固体有機酸がクエン酸であることを特徴とする上記の固形透析用剤である。
【0018】
また、本発明は更に別の態様としての請求項12に記載の発明は、電解質成分、ブドウ糖及びpH調整剤からなる固形透析用剤において、電解質成分及びブドウ糖からなる乾燥した造粒物に、固体有機酸として、微粉末状態の粒子の含有量が少ない固形有機酸を添加することを特徴とする固形透析用剤の製造方法であり、好ましくは、粒子径250μm以下の粒子が20%以下である固形有機酸、または粒子径150μm以下の粒子が10%以下である固形有機酸を添加することを特徴とする固形透析用剤の製造方法である。
【0019】
また本発明は、電解質成分、ブドウ糖及びpH調整剤からなる固形透析用剤において、電解質成分からなる乾燥した造粒物に、固体有機酸として、クエン酸ナトリウムによりコーティングした微粉末状態の粒子の含有量が少ない固体有機酸を添加することを特徴とする固形透析用剤の製造方法でもある。
【0020】
更に本発明は、別の態様として、上記に記載の固形透析用剤を、炭酸水素ナトリウムからなるB剤と組み合わせてなることを特徴とする人工腎臓透析用剤である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により提供される固形透析用剤は、pH調整剤として酢酸を含有しないで固体有機酸を使用したことにより、酢酸不耐症等の副作用が無いと共に、ブドウ糖分解物である5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)等の生成を抑制した、より安定性の高い粉末透析用剤が提供される利点を有している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明が提供する固形透析用剤とは、電解質成分、pH調整剤及びブドウ糖からなる、いわゆる「A剤」であり、炭酸水素ナトリウムからなる「B剤」と共に、適切な濃度に希釈、混合した後、血液透析用灌流液として使用される。
このときの各成分の配合量は、例えば以下濃度であることが好ましい。
Na
+ 130〜145mEq/L
K
+ 0〜4mEq/L
Ca
++ 0〜4mEq/L
Mg
++ 0〜2mEq/L
Cl
− 55〜135mEq/L
HCO
3− 20〜45mEq/L
固体有機酸イオン 0.02〜10mEq/L
ブドウ糖 0〜2.0g/L
【0024】
特に好ましい電解質成分としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムであるが、その他の電解質成分も必要に応じて特に制限なく使用することができる。
【0025】
pH調整剤である固体有機酸としては、クエン酸の他、例えば乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸、フマール酸等の固体有機酸を挙げることができ、また、これらの成分を組み合わせて用いることもできる。その中でも特にクエン酸をpH調整剤として使用するのが好ましい。
【0026】
本発明が提供する固形透析用剤においては、pH調整剤として使用する上記の固体有機酸としては、微粉砕状態の粒子の含有量が少ない固形有機酸を使用するのがよい。
そのような微粉砕状態の粒子の含有量が少ない固形有機酸として、具体的には一緒に配合されるブドウ糖、或いは電解質成分である塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の塩化物との接触をなくすか、或いはできるだけ少なくするために、粒子径250μm以下の粒子が20%以下、より好ましくは10%以下の含有量である固形有機酸、或いは粒子径100μm以下の粒子が10%以下、より好ましくは5%以下の含有量である固形有機酸を使用するのがよい。
【0027】
また、別の手段として、かかるpH調整剤としての固体有機酸をコーティングして使用する。
かかるコーティングは例えば、固体有機酸をブドウ糖溶液、或いはpH調整剤であるクエン酸ナトリウム溶液により、その表面をブドウ糖、或いはクエン酸ナトリウムでコーティングするのがよい。
【0028】
なお、コーティングの方法としては、流動層、転動層、コーティングパンなど一般的なコーティング方法を使用して行うことができる。
【0029】
本発明が提供する固形透析用剤は、電解質成分、ブドウ糖、及びpH調整剤として上記したように特異的な固体有機酸を含有する粉末製剤であるが、その製造方法は、電解質成分、及び必要によりブドウ糖からなる乾燥した造粒物に、固体有機酸を添加することにより行われる。
かかる造粒工程は、固形透析用剤を造粒するために一般的に行われている造粒方法、造粒装置を使用するのがよく、特に限定されないが、バインダー液を添加しながら、練合、造粒、乾燥する湿式造粒法が特に好ましい。その際、使用する装置としては、均一に練合、造粒することができる混合装置がよく、例えば、バーチカル・グラニュレーターや、ハイスピードミキサー等がある。
【0030】
本発明の造粒にあっては、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムを、水及び/又はエタノールにて溶解してバインダー液として用いることが好ましい。この際、原料総重量の約0.2〜20%程度、より好ましくは約0.3〜10%程度、更に好ましくは約0.5〜5%程度の水及び/又はエタノールに溶解するのがよい。バインダーの水分量を約0.2%以下とした場合には、各粒子の付着凝集作用が小さく、造粒が進みにくい。一方、水分量が20%以上となると、造粒装置内で粉末が湿潤して飴状になり、造粒が困難である。
【0031】
造粒物の粒度としては、150μm以上1700μm以下の粒子が95%以上、より好ましくは150μm以上1400μm以下の粒子が95%以上、さらに好ましくは250μm以上1200μm以下の粒子が95%以上であることが、使用される固体有機酸と混合したときの均一性の良さ及び使用する際の粉立ちによる周囲の汚れ(さらには機械等の腐食)の防止の観点から好ましい。
なお、この原料総重量とは、透析用剤の構成成分である電解質成分、pH調整剤のうち、造粒に供する成分を全て合わせた重量をいう。
【0032】
また、原料総重量によっては水及び/又はエタノールの量が少なくなり、塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムを溶解させると飽和状態になり、全量を溶解させることができない場合には、塩化カルシウム又塩化マグネシウムのどちらか、或いは塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの一部を溶解させてバインダーとして用いることもできる。この場合、バインダー液に溶解しない残りの塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムについては、他の成分と一緒に粉砕し、造粒を行うのがよい。
【0033】
バインダー液の添加方法は、粗大粒の形成を防ぎ、含有量の均一性に優れた製剤とするために、バインダー液が万遍なく行き渡るように添加すればよく、例えば、攪拌混合している粉末に噴霧したり、滴下したりする方法等が好ましい。このように、潮解性のある塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムをバインダー液として使用することによって、含有均一性に優れた固形透析用剤を調製することができる。
また、原料総重量の約0.2〜20%程度の水及び/又はエタノールに溶解させることによって、水及び/又はエタノールの含有量を減少させ、乾燥時間を短縮することができるので、製造効率もよく、分解の少ない製剤とすることができる。
【0034】
本発明にあっては、造粒前の各成分を約1.5mm以下の粒子になるように粉砕し、一定の大きさにそろえる解砕工程を組み入れることもできる。この結果、次の造粒工程において、原料を均一の混合することができるため、最終的に含量均一性に優れた透析用剤を製造することができる。この解砕工程では、透析用剤の構成成分である電解質成分のうち、バインダーとする塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウム以外の成分を約1.5mm以下の粒子となるように解砕するのが好ましい。この場合、使用する解砕装置としては、各成分を1.5mm以下の大きさに解砕できるものであれば、一般的な解砕型整粒機を使用して行うことができ、造粒物としては、平均粒度が標準篩で12〜100メッシュであることが好ましい。
【0035】
また、本発明におけるかかる解砕工程においては、塩化ナトリウムのみを別に約1.5mm程度以下に解砕しておいてもよい。すなわち、塩化ナトリウム抜きの電解質成分を造粒、整粒、乾燥し、塩化ナトリウム以外の成分を含む透析用剤の造粒物を製造した後、解砕下塩化ナトリウムを混合、または分包して透析用剤とすることもできる。
本発明が提供する固形透析用剤にあっては、含有成分のうち塩化ナトリウムは原料総重量の約60〜80%程度を占めるため、塩化ナトリウム抜きの造粒物では装置の規模を小さくすることができ、製造コストの削減や製造効率を上げることができる。
更に分包する場合には、例えば、中仕切りになっている複数室に分離された袋に、塩化ナトリウム抜きの造粒物を入れることにより、開封する際に一度に開封することができ、成分の入れ忘れや、入れ違いを防止することができ、操作性もよい製剤を提供することができる。
【0036】
次に、かくして造粒、整粒された造粒物を乾燥する乾燥工程で使用する乾燥機としては、一般的に固形透析用剤の整粒・乾燥工程に使用されている乾燥装置、例えば、流動層乾燥機や、振動式乾燥機を用いることができる。
【0037】
次いで、本発明の特異的な固体有機酸であるpH調整剤を、上記で乾燥した造粒物と混合する。電解質成分等の造粒物の乾燥後に、固体有機酸を混合することにより、ブドウ糖分解物である5−HMF等の生成をより抑制することができ、安定な固形透析用剤が得られるという利点がある。
この場合の混合装置は、一般的に使用されているものでよく、特に限定されない。
【0038】
本発明にあっては、ブドウ糖は固体有機酸をコーティングしない場合には、ブドウ糖を予め電解質成分と共に造粒しておくのがよい。或いは、乾燥した電解質成分の造粒物に、pH調整剤である固体有機酸を混合する際に、一緒に混合させることもできる。
或いは、固体有機酸を混合する前に、ブドウ糖を乾燥した電解質成分の造粒物と混合させておくのもよい。
【0039】
かくして調製された本発明の固形透析用剤は、適当な容器包装材により包装され、透析用「A剤」として提供される。かかる包装用材としては、水蒸気及びガスの透過を防ぐものが好ましく、例えば透湿度(40℃、90%RH)が1.0g/m
2/24時間以下のものを用いることが好ましい。材質としては、例えば、以下の積層材を挙げることができる。PET/ガラス蒸着PET/PE、PET/酸化アルミニウム/ナイロン、PET/SiOx/CPP、PET/SiOx/ナイロン/CPP及びOPP/SiOx/CPP等である。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を、試験例、実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0041】
試験例1:pH調整剤として固体クエン酸について、粒子径が150μm以下のクエン酸の存在によるブドウ糖分解に及ぼす影響
下記表1に記載の処方からなる固形透析用剤であって、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ブドウ糖及びクエン酸ナトリウムからなる乾燥造粒物に、pH調整剤として、100メッシュパス(150μm以下)の固体有機酸であるクエン酸を、添加比率を変え混合し、固形透析用剤を得た。
【0042】
【表1】
【0043】
各混合物を50℃で保存し、保存開始後3、5及び10日目に、生成するブドウ糖分解物である5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)の生成を測定した。
5−HMFの生成量は、試料2.9gを水21mLに溶解し、分光光度計により284nmにおける吸光度を測定し、その値により表した。
その結果を
図1に示した。
【0044】
図中に示した結果からも判明するように、100メッシュパス(150μm以下)のクエン酸の添加率が多いほど、ブドウ糖分解物である5−HMFの生成が多く、20%以下で5−HMFの生成抑制効果が認められ、10%以下ではその効果は特に顕著なものであった。
【0045】
試験例2:微粉砕状のクエン酸(粒子径が250μm以下、或いは150μm以下)の存在によるブドウ糖分解に及ぼす影響
下記表2に記載する60メッシュパス(250μm以下)及び100メッシュパス(150μm以下)の微粉砕状態のクエン酸を含有するクエン酸4.9gを使用し、後記する実施例1で得られた乾燥造粒物400gと混合し、混合物を60℃にて20時間保存し、生成するブドウ糖分解物である5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)の生成を測定した。
測定は、ブドウ糖濃度が2.5%になるように溶解し、分光光度計により284nmにおける吸光度を測定し、その値により表した。
その結果を、併せて表2中に示した。
【0046】
【表2】
【0047】
上記の表の結果に基づいて、100メッシュパス(150μm以下)の微粉砕状態のクエン酸を含有するクエン酸を基準とした結果を
図2に示した。
また、上記の結果に基づいて、60メッシュパス(250μm以下)の微粉砕状態のクエン酸を含有するクエン酸を基準とした結果を
図3に示した。
表2、及び
図2並びに
図3に示した結果からも判明するように、微細粉末状のクエン酸の含有量が多いクエン酸を添加することにより、5−HMFの生成が多く、100メッシュパス(150μm以下)のクエン酸の含有率が低いほど5−HMFの生成抑制効果が認められ、10%以下ではその効果は特に顕著なものであることが理解される。
一方、60メッシュパス(250μm以下)のクエン酸の含有率については、その20%以下、好ましくは10%以下で5−HMFの生成抑制効果が顕著なものであることが理解される。
【0048】
試験例3:クエン酸を混合する前の乾燥造粒物における微細粉体物がブドウ糖分解に影響を及ぼすか否かの検討
後記する実施例1で得られた乾燥造粒物について、その微細粉体物[100メッシュパス(150μm以下)]の含有量の異なる検体A〜Cを、60℃にて20時間保存し、生成するブドウ糖分解物である5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)の生成を測定した。
なお、各検体A〜Cの微細粉体物[100メッシュパス(150μm以下)]の含有量は、以下の表3に記載の通りであった。
【0049】
【表3】
【0050】
5−HMFの測定は、ブドウ糖濃度が2.5%になるように溶解し、分光光度計により284nmにおける吸光度を測定し、その値により表した。
その結果を、併せて表3中に示した。
【0051】
上記の表3の結果に基づいて、100メッシュパス(150μm以下)の微粉砕状態の乾燥造粒物を含有各検体の5−HMFの吸光度を図に示すと
図4の通りとなる。
図中に示した結果からも判明するように、クエン酸を添加する前の造粒物については、その造粒物を微粉砕化したものが存在したとしても、ブドウ糖の分解に対する影響はほとんどないことが判明する。
【0052】
以上の試験例1〜3の結果から、微粉砕化されたクエン酸の添加量を少なくすること、すなわち、電解質成分、ブドウ糖及びpH調整剤からなる固形透析用剤において、含有される固体有機酸、例えばクエン酸として、微粉砕状態の粒子の含有量が少ないクエン酸を使用することにより、ブドウ糖の分解を抑えた安定した固形透析製剤となる本願発明の特徴がよく理解できる。
【0053】
実施例1:固形透析用剤の調製
塩化ナトリウム9429g、塩化カリウム228g、塩化カルシウム338g、クエン酸ナトリウム42g及びブドウ糖2305gを、バーチカル・グラニュレーター(VG−25型、パウレックス社製)で混合した混合物に、塩化マグネシウム158gを水117(1%)に溶解して、バインダー液として添加し、練合、混合し、この造粒物を流動層乾燥機にて乾燥した。
次いで、この乾燥造粒物2848gを用い、粒子径が150μm以下の粒子を5%未満であるクエン酸34gをV型混合機にて混合し、本発明の固形透析用剤を得た。