【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、静止部材と、静止部材から延びる細長いシャフトと、シャフトの遠位端に位置する先端作用部とを備える内視鏡手術器具であって、静止部材が、使用者の指によって係合されるようになされた少なくとも1つの接触部を含み、器具が、使用者の親指によって係合されるように構成された接触部を含む可動部材も含み、可動部材の接触部と静止部材の接触部との間の長手方向の移動によって、可動部材が、第1の近位位置と第2の遠位位置と該第2の
遠位位置よりも比較的短い距離だけ遠位の第3の位置との間で静止部材に対して長手方向に移動し、第1の
近位位置と第2の
遠位位置との間の可動部材の移動によって、先端作用部が、第1の先端作用部位置と第2の先端作用部位置との間で付随して移動させられ、器具は、可動部材を第1の
近位位置へ付勢する付勢機構と、ラッチ機構とをさらに備え、可動部材が第1の
近位位置から第3の位置へ最初に移動させられるときに、付勢機構の作用によって可動部材が第2の
遠位位置に戻ると、ラッチ機構によって可動部材が第2の
遠位位置に保持されるようにラッチ機構が係合される内視鏡手術器具が提供される。器具、好ましくは可動部材は、可動部材が第2の
遠位位置と第3の位置との間で移動するときにこの移動に付随して先端作用部を移動させないように構成された空移動機構を含んでもよい。
【0006】
空移動機構の主な目的は、先端作用部に加えられる力を制限することである。典型的には、この空移動機構がバネを備え、このバネは、第2の
遠位位置と第3の位置との間の可動部材の移動が、先端作用部を移動させることなくバネを圧縮又は緩和させるように、可動部材内に配置される。先端作用部は、器具の遠位端における制限ストッパによって制御される。空移動機構は、制限ストッパ機構が過剰な負荷を受けるのを防ぐ。この空移動機構によって確実に、ラッチ機構を解除するために、望ましくない先端作用部の移動を何ら引き起こすことなく可動部材を第2の
遠位位置から第3の位置に移動することができる。
【0007】
他の観点から、内視鏡手術器具は、静止部材、当該静止部材から延出している延出シャフト、および前記シャフトの先端に配置された先端作用部を有し、前記静止部材は使用者の指がかかるよう構成された少なくとも1つの接触部を有し、この器具は使用者の親指がかかるよう構成された可動部材も有し、前記移動部材と前記静止部材の接触部間の長手方向の移動が、前記静止部材に対して前記移動部材を第1の
近位位置、第2の
遠位位置、および第3の位置との間で移動させ、前記第3の位置は前記第2の
遠位位置に対し先端側であって比較的小さい距離の位置にあり、前記移動部材の前記第1の
近位位置と前記第2の
遠位位置との間の移動は、前記先端作用部の第1および第2の先端作用位置間の対応した移動を引き起こし、この器具は前記可動部材をその第1の
近位位置に付勢する付勢機構と、ラッチ機構をさらに有し、ラッチ機構は、前記移動機構がその第1の
近位位置から第3の位置に初めて移動する時は、前記移動機構が付勢機構の作用によりその第2の
遠位位置に前記移動機構がその第2の
遠位位置に当該ラッチ機構によって保持されるように係合されるものであり、この器具は、前記可動部材が前記第1の
近位位置と前記第1の
近位位置及び前記第2の
遠位位置の間の途中位置との間で移動するときにこの移動に付随して前記先端作用部を移動させないように構成された空移動機構をさらに有する。
【0008】
繰り返すが、前記空移動機構は、典型的には、前記移動部材の前記第1の
近位位置と前記第2の
遠位位置との間の移動が前記先端作用部の移動ではなくスプリングの圧縮およびその解除を引き起こすように、前記移動部材の中に配置された前記スプリングを有する。これにより、積極的で支持された前記移動部材の前記第1の
近位位置から前記第2の
遠位位置への移動によってのみ前記先端作用部が駆動され、内視鏡の移動等によって引き起こされる小さな移動や、他の凸部や揺れ等によっては駆動されない。
【0009】
典型的には、前記空移動機構は、前記移動部材の単一のボア内に配置された第1および第2のスプリングを有し、これにより、前記第1および第2の空移動機構の両方のための望ましい効果を提供する。
【0010】
用語「静止部材」は、患者の体内の位置においてシャフト及び先端作用部を操作するために動かされるものであるため、この部材が固定化されていることを意味するものではない。しかし、手術器具が所定の位置に配置されて使用者が先端作用部を作動させたいとき、静止部材は所定の位置に留まり、可動部材は静止部材に対して移動する。つまり、可動部材の移動によって先端作用部が作動させられる。
【0011】
静止部材及び可動部材は、片手の親指及び他の指によって動作できるハンドル機構を形成する。このようにして、接触部同士を互いに対して直動スライド動作させることによって、可動部材(ピストンなど)を静止部材に対して操作することができる。これは、ハサミ型の構成において一方のアームが他方のアームに対して回転する他のタイプのハンドル機構とは区別される。直動スライド機構において、可動部材の移動は、片手の親指と他の指との間の移動によって達成することができる。しかし、可動部材がその(配備された)第2の
遠位位置に移動されると、可動部材は、ラッチ機構が解除されるまでの間その位置に確実にラッチ機構によって保持される。これは、器具を配備した状態に確実に保持し続けるために外科医(又は助手)がハンドルを所定の位置に保持しなければならない従来技術の装置とは大きく異なっている。
【0012】
前述の通り、この器具は、可動部材を第1の
近位位置へ付勢する付勢機構を含む。第1の
近位位置が非配備位置又は「静止」位置であり、第2の
遠位位置が配備位置である場合、配備するために力が必要とされる非配備位置へ器具を付勢することは、好適であることが多い。しかし、ラッチ機構によって、一度器具が配備された後は、付勢力を上回る力を作用させ続けずともその位置に器具が保持されて使用者が力を解放することができる配備位置に器具を確実に固定することができる。
【0013】
好ましくは、ラッチ機構は、可動部材が、第2の
遠位位置から第3の位置へ続いて移動するときに、付勢機構の作用によって可動部材が第1の
近位位置に戻ることができるように、ラッチ機構の係合が解除されるように構成される。このようにして、使用者が、器具を配備したいとき又は先端作用部を作動させたいとき、使用者は、可動部材が、第1の
近位位置から第2の
遠位位置へ移動するようにハンドルを動かす。使用者は、可動部材が(典型的には第2の
遠位位置よりもわずかに遠い)第3の位置に到達するまで、可動部材を移動させ続ける。次いで、使用者はハンドルを解除し、可動部材は、ラッチ機構によって保持されている場合には、付勢機構の影響によって第2の
遠位位置に戻るように移動する。
【0014】
使用者が元の位置に器具を後退させたいとき又は先端作用部を戻したいときは、使用者は、もう一度ハンドルを動かし、可動部材をもう一度第3の位置へ移動させる。ここで、ハンドルが解除されると、ラッチ機構が解除され、可動部材が第1の
近位位置へ戻るように動く。したがって、このラッチ機構は、格納式ボールペンの機構と動作においてやや類似する「クリックオン・クリックオフ」機構である。好ましくは、静止部材は、付勢機構及びラッチ機構を含む。
【0015】
好ましくは、ラッチ機構が、静止部材及び可動部材のうちいずれか一方に設けられたカム従動子によって構成され、静止部材及び可動部材のうち他方に設けられたカム軌道に係合する。典型的には、カム軌道は、可動部材に存在し、カム従動子が、静止部材上に存在する。カム構成は、可動部材が第1の
近位位置と第2の
遠位位置との間で移動するときに、可動部材を静止部材に対して自動的に固定及び固定解除する。
【0016】
好ましい構成によれば、カム従動子が、片持ちアーム上に位置し、片持ちアームの一端が、カム従動子が設けられている部材に配置される。好ましくは、カム軌道は、可動部材が第1の
近位位置から第2の
遠位位置に移動するときにカム従動子が辿る第1の経路と、可動部材が第2の
遠位位置から第1の
近位位置に移動するときにカム従動子が辿る第2の経路とを備える。このようにして、カム従動子は、器具が配備されるときには一の経路を辿り、ラッチが解除されて器具が後退するときには別の経路を辿る。好ましくは、カム軌道は、可動部材が第2の
遠位位置から第1の
近位位置へ移動するときに、カム従動子が第1の経路ではなく第2の経路を確実に辿るようにV字形部分を備える。カム従動子は、器具が配備されるときにはV字形部分へ一の側から入り、器具が後退するときには他の側へ抜け出す。
【0017】
好ましい構成によれば、静止部材がハウジングを含み、可動部材がハウジング内を移動する。典型的には、静止部材が円筒形の孔を含み、可動部材が円筒形の孔内に配置されたピストンである。したがって、この器具は、先端作用部を作動させるためにピストンが円筒形の孔内で摺動するシリンジと共通するところがある。
【0018】
より詳細には、好ましい器具においては、可動部材は、長手方向に互いに相対的に摺動可能な第1の部分及び第2の部分を備える。第1の部分は、使用者の親指用の接触部を有し、第2の部分は、先端作用部に連結され、可動部材は、長手方向の孔を有すると共に、該孔内に配置された、可動部材の第1の部分に対して可動部材の第2の部分を長手方向に各方向に付勢するための第1のバネ及び第2のバネを備える。この構成は、第2の
遠位位置と第3の位置との間の可動部材の移動が、先端作用部の移動を引き起こすことなく第1のバネによって吸収され、第1の
近位位置と、第1の
近位位置及び第2の
遠位位置の間の途中位置との間の可動部材の移動が、先端作用部の移動を引き起こすことなく第2のバネによって吸収されるように動作する空移動機構として作用する。
【0019】
好ましい一構成によれば、先端作用部が、一対のジョーを備え、可動部材が第1の
近位位置に配されているときにジョーは開いた状態となり、可動部材が第2の
遠位位置に配されているときにジョーが閉じた状態となる。これは、器具が、組織を把持及び操作可能なジョーを有する鉗子装置であるときに典型的なものである。あるいは、先端作用部が、配備位置と後退位置との間で移動可能な電極を備え、可動部材が第1の
近位位置に配されているときに電極は後退位置に配され、可動部材が第2の
遠位位置に配されているときに電極は配備位置に配される。これは、器具が、配備又は後退可能であると共に組織を蒸発又は凝固可能な電極を有する電気手術器具であるときに典型的なものである。
【0020】
本発明は、
静止部材と、該静止部材から延びる細長いシャフトと、該シャフトの遠位端に位置する先端作用部とを備える内視鏡手術器具用のハンドルであって、ハンドルが、静止部材と、可動部材とを備え、静止部材が、使用者の指によって係合されるように構成された少なくとも1つの接触部を含み、可動部材が、使用者の親指によって係合されるように構成された接触部を含み、可動部材の接触部と静止部材の接触部との間の長手方向の移動によって、可動部材が、第1の近位位置と第2の遠位位置と該第2の
遠位位置よりも比較的短い距離だけ遠位の第3の位置との間で静止部材に対して長手方向に移動し、器具が、可動部材を第1の
近位位置へ付勢する付勢機構と、ラッチ機構とをさらに備え、可動部材が第1の
近位位置から第3の位置へ最初に移動させられるときに、付勢機構の作用によって可動部材が第2の
遠位位置に戻ると、ラッチ機構によって可動部材が第2の
遠位位置に保持されるようにラッチ機構が係合されるハンドルにさらに属する。このハンドルは、使用時に、前記可動部材が前記第1の
近位位置と前記第1の
近位位置及び前記第2の
遠位位置の間の途中位置との間で移動するときにこの移動に付随して前記先端作用部を移動させないように構成された空移動機構を備え、前記先端作用部は使用時に延出シャフトの先端に配置されるものであり、前記延出シャフトは使用時にこのハンドルから延出するものである。
【0021】
好ましくは、ラッチ機構は、可動部材が第2の
遠位位置から第3の位置へ続いて移動するときに、付勢機構の作用によって可動部材が第1の
近位位置へ戻ることができるようにラッチ機構の係合が解除されるように、構成されている。
【0022】
次に、本発明を、添付図面を参照して一例を用いてさらに説明する。