【実施例】
【0024】
以下、この発明について、青銅系銅合金としての具体的な実施例を挙げて説明する。まず、用いる原料について説明する。
【0025】
(実施例1、2)
単体のCu、単体のSn、硫化鉄、Cu−Fe、CuPを混合して坩堝に入れ、窒素雰囲気中で加熱し融解させて溶湯を得る。
【0026】
この溶湯を、流し出し、その流路上のノズルから常温窒素ガスを噴射し、10
3K/s程度で急冷するとともに粒子を得た。この粒子の内、粒径が150μm以下の粉末を後述する試験に用いた。
【0027】
アトマイズ法で得る実施例の目標とする材料中元素比は、実施例1ではSnが9.0〜11.0質量%、Feが1.5〜2.5質量%、Sが0.5〜0.7質量%、Pが0.01〜0.03質量%、残部がCuと不可避不純物である。また、実施例2では、Snが9.0〜11.0質量%、Feが1.5〜2.5質量%、Sが1.8〜2.2質量%、Pが0.01〜0.03質量%残部がCuと不可避不純物である。
【0028】
<X線回折試験>
こうして得られた粒子の粉末について、粉末X線回折法による解析を行った。装置はX線回折装置(XRD、(株)リガク RINT−2500H/PC)を用いた。X線源はCoKα(30kV−100mA)であり、方式はθ−2θ法である。走査解像度は0.02°で、走査速度は2°/minで行うよう60rpmで試料を回転させた。実施例1の結果を
図1に、実施例2の結果を
図2に示す。それぞれ(a)は全強度グラフ、(b)は拡大グラフである。いずれも、Cu
5FeS
4の一形態であるPDF(Powder Diffraction File(International Centre for Diffraction Date−ICDD発行))42−1405の回折ピーク(各図下のグラフ)に相当する箇所にピークが観測されており、溶湯からの急冷によってCu
5FeS
4が生成していることが確認された。またその他の硫化物及び硫黄単体は検出されなかった。このため、実施例1及び2において、硫黄はほぼ全量がCu
5FeS
4を形成していると考えられる。
【0029】
この粒子粉末とCu(80)―Sn(20)合金粉末を混合したものを、厚さ3.2mmのバックメタル(SPC鋼板100mm×28mm)上に厚さ2.5mmとなるように散布し、還元雰囲気下の管状炉にて、830〜860℃の範囲で、10分間に亘って加熱し一次焼結を行った。その後ローラにて一次圧延を行い、次に一次焼結と同等の条件で二次焼結を行い、総厚さが90%程度(銅合金層の厚さ2mm程度)となった焼結試料を得た。この焼結試料について、上記と同様に粉末X線回折法による解析を行った。実施例1の結果を
図3に、実施例2の結果を
図4に示す。いずれも、Cu
5FeS
4の一形態であるPDF25−1424の回折ピーク(各図下のピーク)に対応する箇所にはっきりとしたピークが観測された。またその他の硫化物及び硫黄単体は検出されなかった。このため、焼結後もCu
5FeS
4の構造が変化しているものの、硫黄はほぼ全量がCu
5FeS
4を形成したままであると考えられる。
【0030】
<成分分析>
実施例1及び2の焼結した試験片について、成分分析を行った。それぞれの成分の含有率の分析は、Sn、FeについてはICP発光分光分析法により行い、Sの含有率の分析は高周波燃焼赤外線吸収法により行い、Pの含有率はモリブドバナドりん酸吸光光度法により行い、Pbについては、ICP発光分光分析法により行った。なお、ICP発光分光分析法にあたっては、ICP分析装置として、サーモエレクトロン社製:IRIS Advantage RP CID 検出器を用いた。また、残余分を銅と計算した。その結果を表1に示す。上記の通り、Sは全量がCu
5FeS
4を形成していると考えられるので、成分比から、実施例1では2.03質量%、実施例2では6.34質量%のCu
5FeS
4が含まれると考えられる。また、比較例1及び2については合金の目標値を表1に記載した。
【0031】
【表1】
【0032】
<摩擦摩耗試験>
次に、上記の実施例1及び2、比較例1として従来の鉛含有摺動材用合金であるCAC603、比較例2としてCu:88wt%−Sn:12wt%からなるCu−Sn合金について、試験片を作製して摩擦摩耗試験を行い、PV値を測定した。
【0033】
まず、試験片の作製について説明する。実施例1,2ではガスアトマイズ法で得られた粒子とCu(80)−Sn(20)合金粉末を混合したもの、比較例2では下記表1に記載の成分比の粉末を用いX線回折試験と同じ方法にて試験片を制作した。
【0034】
実施例1,2及び比較例2の焼結品を、
図5に示す形状のφ5×4tで摺動表面はRa3.2のバイメタルチップ11に加工した。なお、図の左側12が銅合金層で、右側13がバックメタルである。これを、
図6に示す形状の内周がφ5.0であるチップホルダー15に、セットボルト16にて固定して試験片とした。また、比較例1のCAC603摺動材については、
図7に示す形状のピン17(非段つき部19がφ8×25tで、段つき部18がφ5×6tであるように摺動側を段つき加工してある。摺動表面はRa3.2。)に加工したものを試験片とした。これらのピンと摺動させるディスクは、
図8に示す形状の通り、φ55×5tで試験面がRa3.2のS45C鉄鋼製試料ディスク21を用いた。
【0035】
試験機は、高千穂精機(株)製摩擦摩耗試験機RI−S−500NPを用いた。試験機のディスク21及びチップ試験片22は流量200ml/minで流れるオイル(昭和シェル(株)製リムラD20W−20)に浸漬させており、試験環境の温度は80±5℃を維持させた。
【0036】
試験はディスクの周速を6.2m/sとし、3分間のなじみ運転の後、25MPaずつ荷重(平均面圧)を上昇させるステップ運転とし、各荷重では2分間保持した。試験中に油煙が発生した時点を焼き付きと想定して試験を終了させた。表1に各荷重での平均摩擦係数と焼き付き時の付加における平均面圧と周速の積である最大PV値を示す。
【0037】
実施例1及び2は鉛を有する従来の摺動材CAC603と同等以上の平均摩擦係数とPV値を示し、有効な摺動特性が発揮することが確かめられた。また実施例1と2を比較するとCu
5FeS
4を多く含む実施例2の方が良好な平均摩擦係数とPV値を示していることがわかる。これに対し、Cu
5FeS
4を有さない比較例2は一段階目の昇圧後すぐに焼き付きを起こしてしまい、摺動特性を発揮しなかった。
【0038】
他の実施例として水アトマイズ法にて製作した粒子粉末を使用して上記と同様に製作した試験片と焼結前の粉末のX線回折試験を行ったところ、図示は省略するが両者ともCu
5FeS
4(PDF25−1424)の回折ピークに相当する箇所にはっきりとピークが観測され、その他の硫化物や硫黄単体のピークは観測されなかった。