(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104361
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】生物変換により長鎖脂肪酸から中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸を生産する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20170327BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20170327BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20170327BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20170327BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20170327BHJP
C12P 7/04 20060101ALI20170327BHJP
C12P 7/42 20060101ALI20170327BHJP
C12P 7/44 20060101ALI20170327BHJP
C12P 7/64 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
C12N15/00 AZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P7/04
C12P7/42
C12P7/44
C12P7/64
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-504505(P2015-504505)
(86)(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公表番号】特表2015-517808(P2015-517808A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】KR2013002885
(87)【国際公開番号】WO2013151393
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2014年10月29日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0036372
(32)【優先日】2012年4月6日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0056029
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0005814
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514252784
【氏名又は名称】イファ ユニバーシティ−インダストリー コラボレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク,チン ピョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,チ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ウン ヨン
【審査官】
川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】
Appl. Microbiol. Biotechnol., 2007, Vol. 75, pp. 1095-1101
【文献】
J. Chem. Soc., 1963, pp. 5889-5893
【文献】
Eur. J. Org. Chem., 2002, pp. 3711-3730
【文献】
Biochem. Lett., 2007, Vol. 29, pp. 1393-1398
【文献】
Appl. Microbiol. Biotechnol., 2007, Vol. 73, pp. 1065-1072
【文献】
Appl. Environ. Microbiol., 2009, Vol. 75, No. 10, pp. 3106-3114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12P 1/00−41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水酵素をコードする遺伝子、アルコール脱水素酵素をコードする遺伝子、BVMOをコードする遺伝子、及びエステル加水分解酵素をコードする遺伝子が導入された形質転換体であって、長鎖脂肪酸から中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸(ω−hydroxy fatty acid )、又はα,ω−ジカルボン酸(α,ω−dicarboxylic acid)を生成する形質転換体。
【請求項2】
前記長鎖脂肪酸としてオレイン酸(oleic acid(C18))を用いた場合、中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸としてω−ヒドロキシノナン酸(ω−hydroxynonanoic acid(C9))が生成される請求項1に記載の形質転換体。
【請求項3】
前記長鎖脂肪酸としてオレイン酸を用いた場合、α,ω−ジカルボン酸としてα,ω−デカン二酸(α,ω−decanedioic acid(C10))が生成され、アルコールとしてオクタノール(C8)が生成される請求項1に記載の形質転換体。
【請求項4】
アルコール脱水素酵素をコードする遺伝子、BVMOをコードする遺伝子、及びエステル加水分解酵素をコードする遺伝子が導入された形質転換体であって、ヒドロキシ長鎖脂肪酸から中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸を生成する形質転換体。
【請求項5】
前記ヒドロキシ長鎖脂肪酸としてリシノール酸(C18)を用いた場合、中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸としてω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸(ω−hydroxyundec−9−enoic acid(C11))が生成される請求項4に記載の形質転換体。
【請求項6】
前記ヒドロキシ長鎖脂肪酸としてレスクエロール酸(lesquerolic acid(C20))を用いた場合、中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸としてω−ヒドロキシトリデク−11−エン酸(ω−hydroxytridec−11−enoic acid(C13))が生成される請求項4に記載の形質転換体。
【請求項7】
アルコール脱水素酵素をコードする遺伝子がさらに導入され、前記長鎖脂肪酸としてオレイン酸(C18)を用いた場合、α,ω−ジカルボン酸としてα,ω−ノナンニ酸(α,ω−nonanedioic acid(C9))が生成される請求項1に記載の形質転換体。
【請求項8】
加水酵素をコードする遺伝子、アルコール脱水素酵素をコードする遺伝子、BVMOをコードする遺伝子、エステル加水分解酵素をコードする遺伝子、及びアミノ基転移酵素をコードする遺伝子が導入され、長鎖脂肪酸からω−アミノ脂肪酸を生成する形質転換体。
【請求項9】
前記長鎖脂肪酸としてオレイン酸(C18)を用いた場合、ω−アミノ脂肪酸として ω−アミノノンナン酸(ω−aminononanoic acid(C9))が生成される請求項8に記載の形質転換体。
【請求項10】
(a)請求項1〜9のいずれかの形質転換体と長鎖脂肪酸を反応させて反応物を得るステップと、
(b)前記反応物から分解産物を回収するステップとを含む、長鎖脂肪酸から分解産物を生産する方法。
【請求項11】
前記長鎖脂肪酸は、オレイン酸、リシノール酸(ricinoleic acid)、12−ヒドロキシステアリン酸(12−hydroxystearic acid)、リノレン酸(linoleic acid)、パルミトレイン酸(palmitoleic acid)、レスクエロール酸又はそれらの組み合わせである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記分解産物は、中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸、アルコール又はそれらの組み合わせである請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記分解産物は、炭素数5〜14の中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸、炭素数2〜14のノルマルアルコール又はそれらの組み合わせである請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記分解産物は、 ω−ヒドロキシノナン酸、ω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸、 ω−ヒドロキシトリデク−11−エン酸、α,ω−ノナンニ酸(azelaic acid)、α,ω−デカン二酸(sebacic acid)、 ω−アミノノンナン酸、ヘプタン酸(heptanoic acid)、ノナン酸(nonanoic acid)、ω−ヒドロキシウンデカン酸(ω−hydroxyundecanoic acid)、ω−ヒドロキシトリデカン酸(ω−hydroxytridecanoic acid)、α,ω−ウンデク−2−エンニ酸(α,ω−undec−2−enedioic acid(cis−2−undecene−1,11−dioic acid))、ノルマルオクタノール又はそれらの組み合わせである請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物変換により長鎖脂肪酸から中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸を生産する方法に関するものであり、より具体的には、BVMOを発現するように形質転換された形質転換体、前記形質転換体を用いた生物変換により炭素数16〜20の長鎖脂肪酸から炭素数5〜14の中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸又はアルコールを生産する方法、前記BVMOを用いてケト脂肪酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸誘導体を生産する方法、及び前記方法で作製された新規ω−ヒドロキシ脂肪酸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ω−ヒドロキシ脂肪酸は、脂肪酸の末端に1個のヒドロキシ基(水酸化基)を有する脂肪酸の一種であり(HOCH
2(CH
2)nCOOH)、ポリエチレン系プラスチックの製造時にモノマーとして用いられており、乳化剤、接着剤、コーティング剤の生産、化粧品や医薬品の製造に広く用いられている。また、ポリアミド、ポリエステル系プラスチックの製造、化粧品や日用品の製造に広範囲に用いられている長鎖ジカルボン酸合成の前駆体としても用いられる。
【0003】
中鎖α,ω−ジカルボン酸(HOOC(CH
2)nCOOH)とω−アミノ脂肪酸(H
2NCH
2(CH
2)nCOOH)は、ポリアミド、ポリエステルなどのプラスチック製造時にモノマーとして用いられており、乳化剤、凍結防止剤、ペイント、コーティング剤の生産にも用いられている。また、抗菌活性などの様々な生理活性があるので、化粧品、食品、日用品の生産にも広く用いられている。例えば、炭素数10の中鎖ジカルボン酸であるセバシン酸((HOOC)(CH
2)
8(COOH))は、年間50,000MT以上生産されており、プラスチック、ろうそく、化粧品、乳化剤、凍結防止剤、腐食防止剤の生産に用いられている。また、抗菌活性を有するので、にきび治療剤、化粧品、日用品の製造にも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5952517号明細書
【特許文献2】米国特許第6392074号明細書
【特許文献3】米国特許第5420316号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0105774号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Biotechnol. Lett., 29: 1393-1398, 2007
【非特許文献2】J. Biotechnol., 158: 17-23, 2012
【非特許文献3】Appl. Microbiol. Biotechnol. 73: 1065-1072, 2007
【非特許文献4】Agric Biol. Chem., 54: 2039-2045, 1990
【非特許文献5】J. Biotechnol. 262: 17712-17718, 1987
【非特許文献6】ChemCatChem, 5: 154-157, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸は、自然界にほとんど存在しないため、主に化学合成法により産業的に生産されているが、化学合成法は高温・高圧、強酸及び/又は環境に深刻な問題を引き起こす毒性酸化物を要するという問題がある(特許文献1,2,3,4)。例えば、セバシン酸は、リシノール酸を化学的に分解することにより作製されている(特許文献1,2)。しかし、リシノール酸を化学的に分解するためには200〜300℃以上の高温工程が必要であり、硫酸などの強酸や、重金属イオン触媒、有機溶媒などの毒性物質を用いるので作製過程が危険なだけでなく、作製後に環境汚染物質を多量に排出するなどの問題がある。
【0007】
炭素数9の中鎖ジカルボン酸であるアゼライン酸は、オレイン酸のオゾン分解(ozonolysis)により生産されている(特許文献3)。しかし、上記技術によりアゼライン酸を生産する際には、強酸化剤であるオゾンを多量に用い、それにより様々な副産物が生成され、生成される副産物を除去するために重金属触媒を用いる分離精製工程を必ず行わなければならないという問題がある。このように、複雑な分離精製工程、環境汚染、エネルギー過剰使用などの様々な問題があるので、これらを改善する研究の必要性が高まっている。そこで、環境にやさしく、単純化された工程による作製方法が盛んに研究されており、生体触媒反応を用いた工程を開発しようとする研究が盛んに行われている。例えば、酵素を用いた長鎖脂肪酸から長鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸を生産する方法、石油化合物である炭化水素から中鎖ジカルボン酸を作製する方法などは開発されているが、酵素を用いた再生可能な長鎖脂肪酸から中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸、アルコールなどを作製する方法はいまだ開発されていない。
【0008】
本発明者らは、BVMOが、炭素数16〜20の長鎖脂肪酸由来のケト脂肪酸を、エステル加水分解酵素により切断される鎖内にエステル基が導入された脂肪酸誘導体の形態に変換することを見出し、前記BVMO遺伝子が導入された形質転換微生物を用いると、前記長鎖脂肪酸から中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸、アルコールなどを作製できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、BVMOを発現する形質転換体を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記形質転換体を用いた生物変換により長鎖脂肪酸から様々な分解産物を生産する方法を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、前述した方法で作製されて化学式1で表されるω−ヒドロキシ脂肪酸を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のBVMOを発現する形質転換体を用いた生物変換反応により、培地に含まれる炭素数16〜20の長鎖脂肪酸を分解して炭素数5〜14のω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸、アルコールなどの分解産物を大量に生成することができるので、ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸又はアルコールのより安全かつ経済的な生産に広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1a】加水酵素、アルコール脱水素酵素、BVMO及びエステル加水分解酵素を用いて長鎖脂肪酸(炭素数18のオレイン酸)から中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸(炭素数9のω−ヒドロキシノナン酸)を生成する反応を順に示す概略図である。
【
図1b】アルコール脱水素酵素、BVMO及びエステル加水分解酵素を用いて長鎖脂肪酸(炭素数18のリシノール酸)から中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸(炭素数11のω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸)を生成する反応を順に示す概略図である。
【
図1c】アルコール脱水素酵素、BVMO及びエステル加水分解酵素を用いて長鎖脂肪酸(炭素数20のレスクエロール酸)からω−ヒドロキシ脂肪酸(炭素数13のω−ヒドロキシトリデク−11−エン酸)を生成する反応を順に示す概略図である。
【
図1d】加水酵素、アルコール脱水素酵素、BVMO及びエステル加水分解酵素を用いて長鎖脂肪酸(炭素数18のオレイン酸)からα,ω−ジカルボン酸(炭素数10のα,ω−デカンニ酸)とオクタノールを生成する反応を順に示す概略図である。
【
図1e】加水酵素、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素、BVMO、エステル加水分解酵素、シュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素を用いて長鎖脂肪酸(炭素数18のオレイン酸)からα,ω−ジカルボン酸(炭素数9のα,ω−ノナンニ酸)を生成する反応を順に示す概略図である。
【
図1f】加水酵素、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素、BVMO、エステル加水分解酵素、シュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素、アミノ基転移酵素を用いて長鎖脂肪酸(炭素数18のオレイン酸)からω−アミノ脂肪酸(炭素数9のω−アミノノンナン酸)を生成する反応を順に示す概略図である。
【
図2a】本発明のオレイン酸加水酵素、アルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を用いてオレイン酸から生産された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の時間の経過による生産量の変化を示すグラフである。
【
図2b】本発明のオレイン酸加水酵素、アルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を用いてオレイン酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸を生産し、それをエステル加水分解酵素で反応させた反応産物のGC/MS分析結果を示すグラフである。
【
図3a】本発明のアルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を用いてリシノール酸から生産された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の時間の経過による生産量の変化を示すグラフである。
【
図3b】本発明のアルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を用いてリシノール酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸を生産し、それをエステル加水分解酵素で反応させた反応産物のGC/MS分析結果を示すグラフである。
【
図4】本発明のアルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を用いてレスクエロール酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸を生産し、それをエステル加水分解酵素で反応させた反応産物のGC/MS分析結果を示すグラフである。
【
図5a】本発明のオレイン酸加水酵素、アルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を用いてオレイン酸から生産された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の時間の経過による生産量の変化を示すグラフである。
【
図5b】本発明のオレイン酸加水酵素、アルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を用いてオレイン酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸を生産し、それをエステル加水分解酵素で反応させた反応産物(セバシン酸)のGC/MS分析結果を示すグラフである。
【
図6】本発明のオレイン酸加水酵素、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を用いてオレイン酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸を生産し、それにエステル加水分解酵素とシュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素を発現する形質転換体を投入して反応させ、得られた反応産物の時間の経過に伴う生産量を示すグラフである。
【
図7】オレイン酸加水酵素、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素、BVMO及びエステル加水分解酵素、シュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素を発現する形質転換体を用いてリシノール酸から生産されたα,ω−ウンデク−2−エンニ酸(cis−2−undecene−1,11−dioic acid)の時間の経過による生産量の変化を示すグラフである。
【
図8】本発明のオレイン酸加水酵素、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を用いてオレイン酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸を生産し、それにエステル加水分解酵素、シュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素、アミノ基転移酵素を発現する形質転換体を投入して反応させ、得られた反応産物の時間の経過に伴う生産量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、BVMO遺伝子が導入された形質転換体を提供する。
【0015】
本発明における「BVMO(Baeyer-Villiger monooxygenase)」とは、ケトンを酸化させてラクトンやエステル化合物を生成するBaeyer−Villiger酸化反応を含む様々な酸化反応を触媒する酵素であるmonooxygenaseの一種を意味する。本発明の目的上、形質転換体で発現してケト脂肪酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸誘導体(例えば、10−ケトステアリン酸(10−ketostearic acid)から10−オクチルオキシ(octyloxy)−10−オキソデカン酸(oxodecanoic acid))を生産する反応を触媒する活性を示すものであれば、前記BVMOは特にこれらに限定されるものではないが、シュードモナス属菌株(Pseudomonas sp.)、ロドコッカス属菌株(Rhodococcus sp.)、ブレビバクテリウム属菌株(Brevibacterium sp.)、コマモナス属菌株(Comamonas sp.)、アシネトバクター属菌株(Acinetobacter sp.)、アルスロバクター属菌株(Arthrobacter sp.)、ブラキモナス属菌株(Brachymonas sp.)などの微生物由来のBVMOであることが好ましく、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・ベロニイ(Pseudomonas veronii)、ロドコッカス・ジョスティ(Rhodococcus jostii)又はシュードモナス属菌株HI−70(Pseudomonas sp. strain HI-70)由来のBVMOであることがより好ましく、シュードモナス・プチダ由来のBVMOであることが最も好ましい。前記BVMOをコードする遺伝子の塩基配列は、NCBIのGenBankなどの公知のデータベースから得られるが、その例としては、GenBank Accession No. CAFK01000010で表される遺伝子、BVMO遺伝子を発現するように作製された発現ベクターpJOE−KT2440BVMO(非特許文献1)などから得られる遺伝子などが挙げられ、配列番号9のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列などであることが好ましい。
【0016】
また、前記BVMOは、ケト脂肪酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸誘導体を生産する反応を触媒する活性を示すBVMOを形質転換体として発現できる限り、BVMOを構成するアミノ酸配列の少なくとも1つの位置で1個又は複数(タンパク質のアミノ酸残基の立体構造における位置や種類によって異なるが、具体的には2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加又は逆位されたアミノ酸配列を含んでもよく、前記BVMOの活性を保持又は強化できる限り、前記BVMOのアミノ酸配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、微生物の種又は菌株によって前記ポリペプチドが有する活性を示す酵素のアミノ酸配列が異なることがあるので、特にこれらに限定されるものではなく、前記アミノ酸の置換、欠失、挿入、付加又は逆位などには、前記BVMOの活性を有する微生物の個体又は種の違いに基づく場合など、天然に生じる突然変異配列又は人為的な変異配列を含んでもよい。
【0017】
本発明における「相同性」とは、互いに異なる2つのアミノ酸配列又は塩基配列間の同一性を意味し、スコア(score)、同一性(identity)、類似性(similarity)などのパラメーター(parameter)を計算するBLAST 2.0を用いる、当業者に周知の方法により決定されるが、特にこれに限定されるものではない。
【0018】
本発明における「形質転換体」とは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドをベクターにより宿主内に導入し、その後前記標的タンパク質を発現するように変異させた細胞又は微生物を意味する。ここで、前記宿主細胞に導入されるポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現するものであれば、いかなる形態であってもよい。
【0019】
本発明が提供する前記形質転換体は、公知のBVMOをコードするポリヌクレオチド配列が導入された発現ベクター又は公知の発現ベクターpJOE−KT2440BVMO(非特許文献1)などを宿主細胞に導入することにより作製することができる。ここで、用いることのできる宿主細胞としては、本発明のBVMOをコードするポリヌクレオチド配列が導入されBVMOを発現する宿主細胞であれば、特に限定されるものではないが、生物変換工程への適用に適した培養可能な単細胞の原核生物又は真核生物の細胞を用いることが好ましく、大腸菌、酵母などを用いることがより好ましく、大腸菌BL21(DE3)細胞を用いることが最も好ましい。
【0020】
本発明の形質転換体は、培地に含まれる炭素数16〜20の長鎖脂肪酸を分解して炭素数5〜14の中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸を生産するのに用いることができ、このために、前記BVMOをコードする遺伝子以外に、加水酵素(hydratase)やリポキシゲナーゼ(lipoxygenase)をコードする遺伝子、アルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase)をコードする遺伝子、エステル加水分解酵素(esterase)をコードする遺伝子、アミノ基転移酵素(aminotransferase)をコードする遺伝子などがさらに導入される。
【0021】
本発明における「加水酵素(hydratase)」とは、炭素二重結合に水を加えてヒドロキシ化合物を可逆的に生成する酵素を意味するが、逆反応によりヒドロキシ化合物から水を除去することができるので「脱水酵素(dehydratase)」ともいえる。前記加水酵素は、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、リシニバシラス・フシフォルミス(Lysinibacillus fusiformis)、マクロコッカス・カセオリティカス(Macrococcus caseolyticus)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)などの菌株由来のものを用いることが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。本発明の目的上、前記加水酵素は、炭素数16〜20の長鎖脂肪酸にヒドロキシ基を加えてヒドロキシ脂肪酸を生成するために用いられる。
【0022】
本発明における「リポキシゲナーゼ(lipoxygenase)」とは、不飽和脂肪酸に分子状酸素を添加する酸素添加酵素であり、不飽和脂肪酸のcis,cis−1,4−ペンタジエン構造を認識してメチレンの水素原子を立体特異的に抽出し、反対側(antarafacial)で酸素を添加してヒドロペルオキシドを生成する反応を触媒する酵素を意味する。本発明の目的上、前記リポキシゲナーゼは、前述した加水酵素と同様に、炭素数16〜20の長鎖脂肪酸にヒドロキシ基を加えてヒドロキシ脂肪酸を生成するために用いられる。
【0023】
本発明における「アルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase)」とは、アルコールから水素を除去してアルデヒド、ケトン又はカルボン酸を生成する反応を触媒する酵素を意味する。前記アルコール脱水素酵素は、ミクロコッカス・ルテウス、シュードモナス属菌株由来のものを用いることが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。本発明の目的上、前記アルコール脱水素酵素は、前記加水酵素又はリポキシゲナーゼにより生成されたヒドロキシ脂肪酸から水素を除去してケト脂肪酸を生成するか、エステル加水分解酵素により生産されたω−ヒドロキシ脂肪酸をω−オキソ脂肪酸(ω-oxofatty acid)又はα,ω−ジカルボン酸を生産するために用いられる。
【0024】
本発明における「エステル加水分解酵素(esterase)」とは、エステル化合物のエステル結合を加水分解する酵素を意味する。本発明の目的上、前記エステル加水分解酵素は、BVMOにより生成された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸誘導体のエステル基を分解するために用いられる。
【0025】
本発明における「アミノ基転移酵素(aminotransferase)」とは、ω−オキソ脂肪酸のオキソ基をアミノ基に変換する酵素を意味する。前記アミノ基転移酵素は、微生物由来のものを用いることができ、特にこれに限定されるものではないが、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)、シリシバクター・ポメロイ(Silicibacter pomeroyi)、ロドコッカス・スフェロイデス(Rhodococcus sphaeroides)、メソリゾビウム・ロティMAFF(Mesorhizobium lotimaff)、シリシバクター(Silicibacter sp.)などの菌株由来のものを用いることが好ましい。本発明の目的上、前記アミノ基転移酵素は、アルコール脱水素酵素により生成されたω−オキソ脂肪酸からω−アミノ脂肪酸を生産するために用いられ、C9、C11、C12及びC13のω−オキソ脂肪酸からω−アミノ脂肪酸を生産するために用いられることが好ましい。
【0026】
本発明の一実施例においては、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)由来のオレイン酸加水酵素遺伝子及びミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)由来のアルコール脱水素酵素遺伝子を含むpACYC/オレイン酸加水酵素/アルコール脱水素酵素発現ベクターを大腸菌E.coli BL21(DE3)菌株に導入して加水酵素及びアルコール脱水素酵素を発現する1次形質転換体を作製し、前記1次形質転換体にシュードモナス・プチダ由来のBVMO遺伝子発現ベクターpJOE−KT2440BVMOを導入してオレイン酸加水酵素、アルコール脱水素酵素及びBVMOを同時に発現する2次形質転換体を作製した(実施例1)。
【0027】
上記目的を達成するために、本発明の他の実施形態として、前記形質転換体を用いた生物変換により長鎖脂肪酸から様々な分解産物を生産する方法を提供する。
【0028】
具体的には、本発明の長鎖脂肪酸から分解産物を生産する方法は、(a)BVMOをコードする遺伝子が導入された形質転換体と長鎖脂肪酸を反応させて反応物を得るステップと、(b)前記反応物から分解産物を回収するステップとを含む。ここで、前記分解産物は、中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸又はアルコールであってもよい。前記分解産物は、炭素数5〜14の中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸、又は炭素数2〜14のノルマルアルコールであってもよく、ω−ヒドロキシノナン酸、ω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸、ω−ヒドロキシトリデク−11−エン酸、α,ω−ノナンニ酸(azelaic acid)、α,ω−デカン二酸(sebacic acid)、ω−アミノノンナン酸、ヘプタン酸、ノナン酸、ω−ヒドロキシウンデカン酸、ω−ヒドロキシトリデカン酸、α,ω−ウンデク−2−エンニ酸(cis−2−undecene−1,11−dioic acid)、ω−アミノウンデク−9−エン酸(ω−aminoundec−9−enoic acid)、α,ω−トリデク−2−エンニ酸(α,ω−tridec−2−enedioic acid)、ノルマルオクタノールなどであることがより好ましい。
【0029】
ここで、前記長鎖脂肪酸は、特にこれらに限定されるものではないが、炭素数16〜20の直鎖型脂肪酸であることが好ましく、オレイン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、レスクエロール酸などであることがより好ましい。
【0030】
また、前記反応とは、基質として用いられる長鎖脂肪酸に前記形質転換体から生産される加水酵素、リポキシゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、エステル加水分解酵素、アミノ基転移酵素などの様々な酵素を反応させて前記長鎖脂肪酸の切断、分解又はアミノ基の転移を触媒する酵素反応を意味するが、前記形質転換体から生産される一連の酵素は形質転換体の内部で生産され、生産された酵素が形質転換体の外部に分泌されるので、前記反応は形質転換体の内部で行われてもよく、外部で行われてもよい。例えば、炭素源を含む培地で前記形質転換体を培養しながら、培地に含まれる炭素源が所定量消費されたら長鎖脂肪酸を培地に加え、前記形質転換体から生産された前記酵素により長鎖脂肪酸を切断、分解又はアミノ基を転移させることにより様々な分解産物を生産する方式を用いることもでき、長鎖脂肪酸を含む反応緩衝液に前記形質転換体を入れ、長鎖脂肪酸を切断、分解又はアミノ基を転移させることにより様々な分解産物を生産する方式を用いることもでき、前記各酵素を形質転換体から分離し、分離した酵素を各担体に固定化してから長鎖脂肪酸が含まれる反応緩衝液を加え、前記固定化した酵素で長鎖脂肪酸を切断又は分解することにより様々な分解産物を生産する方式を用いることもできる。ここで、培地又は反応緩衝液に含まれる長鎖脂肪酸の含有量は、特にこれに限定されるものではないが、0.1〜100g/Lの最終濃度となるように加えることが好ましい。
【0031】
本発明における「培養」とは、微生物を人工的に調節した好適な環境条件で生育させることを意味する。本発明において、前記形質転換体を培養する方法は、当業界で周知の方法を用いることができる。具体的には、前記培養は、バッチプロセス又は流加もしくは反復流加プロセス(fed batch or repeated fed batch process)で連続して培養することができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
培養に用いられる培地は、適当な炭素源、窒素源、アミノ酸、ビタミンなどを含有する通常の培地内において、好気性条件下で温度、pHなどを調節しながら適切な方式で特定菌株の要件を満たすものでなければならない。用いることのできる炭素源としては、グルコース、スクロース、ラクトースなどの糖、脂肪、脂肪酸、グリセリンが挙げられる。これらの物質は、単独で用いることもでき、混合物として用いることもできる。用いることのできる窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機窒素源と、グルタミン酸などのアミノ酸及びペプトン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物などの有機窒素源とを用いることができる。これら窒素源は、単独で用いることもでき、組み合わせて用いることもできる。好気状態を維持するために、培養物内に酸素又は酸素含有気体(例えば、空気)を注入する。培養物の温度は通常15℃〜37℃、好ましくは20℃〜30℃であり、前記培養は10〜100時間行われる。
【0033】
また、反応液から中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸、アルコールなどの分解産物を回収するステップは、透析、遠心分離、濾過、溶媒抽出、クロマトグラフィー、結晶化などの当業界で公知の方法により行うことができる。例えば、前記反応液を遠心分離した後、形質転換体を除去し得られた上清を溶媒抽出法に適用することにより目的とする分解産物を回収する方法を用いることができるが、それ以外にも、前記各分解産物の特性に合わせて公知の実験方法を組み合わせて前記分解産物を回収する方法であれば、特に限定されるものではない。
【0034】
本発明において、提供する加水酵素をコードする遺伝子、アルコール脱水素酵素をコードする遺伝子、BVMOをコードする遺伝子、エステル加水分解酵素をコードする遺伝子、及びアミノ基転移酵素をコードする遺伝子を異なる組み合わせで宿主細胞に導入すると、異なる機能を有する様々な形質転換体を作製することができ、前記作製した各形質転換体は、培地や反応液に存在する炭素数16〜20の長鎖脂肪酸(オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、レスクエロール酸など)から炭素数5〜14の中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸又はアルコールを生成することができる。
【0035】
例えば、大腸菌にアルコール脱水素酵素をコードする遺伝子、及びBVMOをコードする遺伝子を導入することにより作製された形質転換体は、長鎖脂肪酸を鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸に変換することができ、前記形質転換体がエステル加水分解酵素、アルコール脱水素酵素又はアミノ基転移酵素を単独で又は組み合わせてさらに含む場合、前記変換された、鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸は、様々な形態の中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸又はアルコールに変換することができる。
【0036】
本発明の一実施例として、加水酵素、アルコール脱水素酵素、BVMO及びエステル加水分解酵素を発現する形質転換体は、オレイン酸(C18)などの長鎖脂肪酸からω−ヒドロキシノナン酸(C9)などの中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸を生成することができるが、加水酵素は長鎖脂肪酸をヒドロキシ脂肪酸に変換させ、アルコール脱水素酵素は前記変換されたヒドロキシ脂肪酸から水素を除去してケト脂肪酸を生成し、BVMOは前記生成されたケト脂肪酸を酸化させて鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸を生成し、エステル加水分解酵素は前記生成された、鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸のエステル結合を加水分解して中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸を生成する(
図1a)。
【0037】
本発明の他の実施例として、アルコール脱水素酵素、BVMO及びエステル加水分解酵素を発現する形質転換体は、リシノール酸(C18)などのヒドロキシ長鎖脂肪酸から ω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸(C11)などの中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸を生成することができるが、アルコール脱水素酵素は前記ヒドロキシ長鎖脂肪酸から水素を除去してケト脂肪酸を生成し、BVMOは前記生成されたケト脂肪酸を酸化させて鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸を生成し、エステル加水分解酵素は前記生成された、鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸のエステル結合を加水分解して中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸を生成する(
図1b)。
【0038】
本発明のさらに他の実施例として、アルコール脱水素酵素、BVMO及びエステル加水分解酵素を発現する形質転換体は、レスクエロール酸(C20)などのヒドロキシ長鎖脂肪酸から ω−ヒドロキシトリデク−11−エン酸(C13)などの中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸を生成することができるが、アルコール脱水素酵素は前記ヒドロキシ長鎖脂肪酸から水素を除去してケト脂肪酸を生成し、BVMOは前記生成されたケト脂肪酸を酸化させて鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸を生成し、エステル加水分解酵素は前記生成された、鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸のエステル結合を加水分解して中鎖ω−ヒドロキシ脂肪酸を生成する(
図1c)。
【0039】
本発明のさらに他の実施例として、加水酵素、アルコール脱水素酵素、BVMO及びエステル加水分解酵素を発現する形質転換体は、オレイン酸(C18)などの長鎖脂肪酸からα, ω−デカンニ酸(C10)などのα,ω−ジカルボン酸とオクタノール(C8)を生成することができるが、加水酵素は長鎖脂肪酸をヒドロキシ脂肪酸に変換させ、アルコール脱水素酵素は前記変換されたヒドロキシ脂肪酸から水素を除去してケト脂肪酸を生成し、BVMOは前記生成されたケト脂肪酸を酸化させて鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸を生成し、エステル加水分解酵素は前記生成された、鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸のエステル結合を加水分解してα,ω−ジカルボン酸とアルコールを生成する(
図1d)。
【0040】
本発明のさらに他の実施例として、加水酵素、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素、BVMO、エステル加水分解酵素及びシュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素を発現する形質転換体は、オレイン酸(C18)などの長鎖脂肪酸からα,ω−ノナン二酸(C9)などのα,ω−ジカルボン酸を生成することができるが、加水酵素は長鎖脂肪酸をヒドロキシ脂肪酸に変換させ、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素は前記変換されたヒドロキシ脂肪酸から水素を除去してケト脂肪酸を生成し、BVMOは前記生成されたケト脂肪酸を酸化させて鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸を生成し、エステル加水分解酵素は前記生成された、鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸のエステル結合を加水分解してω−ヒドロキシ脂肪酸を生成し、シュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素は前記ω−ヒドロキシ脂肪酸から水素を除去してα,ω−ジカルボン酸を生成する(
図1e)。
【0041】
本発明のさらに他の実施例として、加水酵素、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素、BVMO、エステル加水分解酵素、シュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素及びアミノ基転移酵素を発現する形質転換体は、オレイン酸(C18)などの長鎖脂肪酸からω−アミノノナンニ酸(C9)などのω−アミノ脂肪酸を生成することができるが、加水酵素は長鎖脂肪酸をヒドロキシ脂肪酸に変換し、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素は前記変換されたヒドロキシ脂肪酸から水素を除去してケト脂肪酸を生成し、BVMOは前記生成されたケト脂肪酸を酸化させて鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸を生成し、エステル加水分解酵素は前記生成された、鎖内にエステル基が導入された長鎖脂肪酸のエステル結合を加水分解してω−ヒドロキシ脂肪酸を生成し、シュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素は前記ω−ヒドロキシ脂肪酸から水素を除去してω−ケト脂肪酸を生成し、アミノ基転移酵素は前記生成されたω−ケト脂肪酸にアミノ基を転移させてω−アミノ脂肪酸を生成する(
図1f)。
【0042】
一方、長鎖脂肪酸から生産されたω−ヒドロキシ脂肪酸は、シュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素によりα,ω−ジカルボン酸に変換されるか(実施例5及び6)、アミノ基転移酵素との連続反応によりω−アミノ脂肪酸に変換される(実施例7)。
【0043】
前記形質転換体により生成された炭素数5〜14のω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸及びアルコールは、前記形質転換体から培地又は反応緩衝液に分泌されるので、前記形質転換体を固定化担体に固定するか、前記形質転換体を流加又は連続培養すると、炭素数5〜14のω−ヒドロキシ脂肪酸、α,ω−ジカルボン酸、ω−アミノ脂肪酸及びアルコールを大量に生産することができる。
【0044】
本発明の一実施例によれば、ステノトロフォモナス・マルトフィリア由来のオレイン酸加水酵素遺伝子、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素遺伝子を大腸菌BL21(DE3)菌株に導入して加水酵素及びアルコール脱水素酵素を発現する形質転換体を作製し、前記形質転換体にシュードモナス・フルオレッセンス由来のBVMO遺伝子を導入して加水酵素、アルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を作製した(実施例4)。また、加水酵素、アルコール脱水素酵素、BVMOを発現する形質転換体を培養してオレイン酸と反応させた結果、10−ヒドロキシステアリン酸、10−ケトステアリン酸、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸が生産され(
図5)、それにシュードモナス・フルオレッセンス由来のエステル加水分解酵素を投入して反応させることにより、α,ω−デカンニ酸とオクタノールを生産することができた。
【0045】
上記目的を達成するために、本発明のさらに他の実施形態として、前述した方法で作製され、下記化学式1で表される新規ω−ヒドロキシ脂肪酸を提供する。
【0047】
前記化合物は、前述した方法により作製することができる。例えば、オレイン酸加水酵素、アルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する形質転換体を培養してレスクエロール酸と反応させることにより、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸を生産することができ、前記生産された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸にシュードモナス・フルオレッセンス由来のエステル加水分解酵素を投入して反応させることにより、前記化学式1の新規ω−ヒドロキシ脂肪酸を生産することができる。前記生産された新規ω−ヒドロキシ脂肪酸は、GC/MS分析により構造を確認することができる。
【0048】
上記目的を達成するために、本発明のさらに他の実施形態として、前記BVMOを用いてケト脂肪酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸誘導体を生産する方法を提供する。
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
多段階の酵素合成を用いたω−ヒドロキシノナン酸の生産
1)遺伝子クローニング
オレイン酸加水酵素とアルコール脱水素酵素遺伝子とを含む組換え発現ベクターを作製するために、ステノトロフォモナス・マルトフィリア由来のオレイン酸加水酵素遺伝子とミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素遺伝子のクローニングを行った。
【0051】
まず、オレイン酸加水酵素遺伝子は、プラスミドベクターpET28(+)a/オレイン酸加水酵素(非特許文献2)を鋳型とし、制限酵素であるPvuIとXhoIの切断部位を含むように作製されたプライマー(配列番号1及び2)を用いたPCRを行って増幅した。
正方向プライマー:5’−gctagcatgtattacagtaatggtaactatgaa−3’(配列番号1)
逆方向プライマー:5’−ggctcgagctatattagtttactttctttca−3’(配列番号2)
【0052】
前記増幅したPCR産物を制限酵素であるPvuIとXhoIで切断し、プラスミドベクターpACYC(Novagen社製)に挿入してpACYC/オレイン酸加水酵素発現ベクターを作製した。
【0053】
また、アルコール脱水素酵素は、ミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素のDNA塩基配列(Genebank Accession No.ZP_07049769)を鋳型とし、制限酵素であるEcoRIとHindIIIの切断部位を含むように作製されたプライマー(配列番号3及び4)を用いたPCRを行って増幅した。
正方向プライマー:5’−atcgaattcgtccgagttcacccgtttcga−3’(配列番号3)
逆方向プライマー:5’−atatcaagcttcagccgagcggggtgtcct−3’(配列番号4)
【0054】
前記増幅したPCR産物を制限酵素であるEcoRIとHindIIIで切断し、前記作製されたpACYC/オレイン酸加水酵素発現ベクターに挿入し、pACYC/オレイン酸加水酵素/アルコール脱水素酵素発現ベクターを作製した。
【0055】
2)宿主細胞の培養
大腸菌E.coli BL21(DE3)は、プラスミド保持のために10g/lグルコース及び適切な抗生剤が含まれるリーゼンバーグ(Riesenberg)培地で培養した。ここで、リーゼンバーグ培地は、4g/lのN(NH
4)
2HPO
4、13.5g/lのKH
2PO
4、1.7g/lのcitric acid、1.4g/lのMgSO
4、及び10ml/lのtrace metal solution(10g/lのFeSO
4、2.25g/lのZnSO
4、1.0g/lのCuSO
4、0.5g/lのMnSO
4、0.23g/lのNa
2B
4O
7、2.0g/lのCaCl
2、及び0.1g/lの(NH
4)
6Mo
7O
24)が含まれており、ミクロコッカス・ルテウスはLB培地で培養した。
【0056】
3)形質転換体を用いたω−ヒドロキシノナン酸の生産
まず、実施例1−1)のステノトロフォモナス・マルトフィリア由来のオレイン酸加水酵素遺伝子とミクロコッカス・ルテウス由来のアルコール脱水素酵素遺伝子が挿入されたpACYC/オレイン酸加水酵素/アルコール脱水素酵素発現ベクターを実施例1−2)で培養した大腸菌BL21(DE3)菌株に導入することにより1次形質転換体を作製した。
【0057】
次に、前記1次形質転換体にシュードモナス・プチダ由来のBVMO遺伝子を発現するように作製された発現ベクターpJOE−KT2440BVMO(非特許文献1)を導入することにより、オレイン酸加水酵素、アルコール脱水素酵素及びBVMOを発現する2次形質転換体を作製した。
【0058】
次に、前記2次形質転換体をリーゼンバーグミネラル培地で30℃及び200rpmの条件で培養しながら、IPTGとラムノースを処理してオレイン酸加水酵素、アルコール脱水素酵素及びBVMOを発現させ、そこに1mMのオレイン酸と反応させることにより、ω−ヒドロキシノナン酸を生産した(
図2)。
図2aは前記2次形質転換体を用いて生産された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の時間の経過に伴う生産量の変化を示すグラフであり、(●)はオレイン酸の濃度を示し、(△)は10−ヒドロキシステアリン酸の濃度を示し、(▽)は10−ケトステアリン酸の濃度を示し、(■)は鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の濃度を示し、(▲)はω−ヒドロキシノナン酸の濃度を示す。
図2bは反応終了後にエステル加水分解酵素で処理して反応産物をGC/MSで分析した結果を示す図である。オレイン酸から生産された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸は、ほとんどn−ノナン酸とω−ヒドロキシノナン酸に変換された。
【実施例2】
【0059】
リシノール酸からのω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸の生産
実施例1で作製した形質転換体を用いて、基質であるリシノール酸からω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸を生産した。
【0060】
すなわち、オレイン酸の代わりに1mMのリシノール酸を加えることを除いては、実施例1−3)と同様の方法でω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸を生産した(
図3)。
図3aは前記形質転換体を用いてリシノール酸から生産された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の時間の経過に伴う生産量の変化を示すグラフであり、(△)はリシノール酸の濃度を示し、(▽)は12−ケトオレイン酸の濃度を示し、(■)は鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の濃度を示し、(▲)はω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸の濃度を示す。
図3bは反応終了後にエステル加水分解酵素で処理して反応産物をGC/MSで分析した結果を示す図である。リシノール酸から生産された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸は、ほとんどn−ヘプタン酸とω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸に変換された。
【実施例3】
【0061】
レスクエロール酸からのω−ヒドロキシトリデク−11−エン酸の生産
実施例1で作製した形質転換体を用いて、基質であるレスクエロール酸からω−ヒドロキシトリデク−11−エン酸を生産した。
【0062】
すなわち、オレイン酸の代わりに1mMのレスクエロール酸を加えることを除いては、実施例1−3)と同様の方法でω−ヒドロキシトリデク−11−エン酸を生産した(
図4)。
図4は前記形質転換体とエステル加水分解酵素を用いてレスクエロール酸からω−ヒドロキシトリデク−11−エン酸を生産し、その反応産物をGC/MSで分析した結果を示す図である。レスクエロール酸は、ほとんどヘプタン酸とω−ヒドロキシトリデク−11−エン酸に変換された。
【実施例4】
【0063】
オレイン酸からのα,ω−デカンニ酸の生産
実施例1で作製したpACYC/オレイン酸加水酵素/アルコール脱水素酵素発現ベクターとシュードモナス・フルオレッセンス由来のBVMO遺伝子発現ベクター(非特許文献3)を大腸菌BL21(DE3)菌株に導入して形質転換体を作製し、それを用いて基質であるオレイン酸からα,ω−デカンニ酸(セバシン酸)を生産した(
図5)。
図5aは前記形質転換体を用いて生産された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の時間の経過に伴う生産量の変化を示すグラフであり、(●)はオレイン酸の濃度を示し、(△)は10−ヒドロキシステアリン酸の濃度を示し、(▽)は10−ケトステアリン酸の濃度を示し、(■)は鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の濃度を示す。
図5bは反応終了後にエステル加水分解酵素で処理して反応産物をGC/MSで分析した結果を示す図である。オレイン酸から生産された、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸は、ほとんどセバシン酸とノルマルオクタノールに変換された。
【実施例5】
【0064】
オレイン酸からのα,ω−ノナンニ酸の生産
1)遺伝子クローニング
エステル加水分解酵素とアルコール脱水素酵素遺伝子とを含む組換え発現ベクターを作製するために、シュードモナス・フルオレッセンス由来のエステル加水分解酵素遺伝子とシュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素遺伝子をクローニングした。
【0065】
まず、エステル加水分解酵素遺伝子は、プラスミドベクターpGASTON/エステル加水分解酵素(非特許文献4)を鋳型とし、制限酵素であるNdeIとXhoIの切断部位を含むように作製されたプライマー(配列番号5及び6)を用いたPCRを行って増幅した。
正方向プライマー:5’−gcgccatatgatgagcacatttgttgcaaaa−3’(配列番号5)
逆方向プライマー:5’−gcgcctcgagtcagtggtgatggtgatgatgactccgccgccacttt−3’(配列番号6)
【0066】
前記増幅したPCR産物を制限酵素であるNdeIとXhoIで切断し、プラスミドベクターpCOLAduet−1(Novagen社製)に挿入してpCOLAduet−1/エステル加水分解酵素発現ベクターを作製した。
【0067】
また、アルコール脱水素酵素は、シュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素のDNA塩基配列(非特許文献5)を鋳型とし、制限酵素であるBamHIとNotIの切断部位を含むように作製されたプライマー(配列番号7及び8)を用いたPCRを行って増幅した。
正方向プライマー:5’−gcgcggatccgatgtacgactatataatcgtt−3’(配列番号7)
逆方向プライマー:5’−gcgcgcggccgcttagtggtgatggtgatgatgcatgcagacagctat−3’(配列番号8)
【0068】
前記増幅したPCR産物を制限酵素であるBamIとNotIで切断し、前記作製されたpCOLAduet−1/エステル加水分解酵素発現ベクターに挿入し、pCOLAduet−1/エステル加水分解酵素/アルコール脱水素酵素発現ベクターを作製した。
【0069】
2)形質転換体を用いたα,ω−ノナンニ酸の生産
まず、実施例5−1)のシュードモナス・フルオレッセンス由来のエステル加水分解酵素とシュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素遺伝子が挿入されたpCOLAduet−1/エステル加水分解酵素/アルコール脱水素酵素発現ベクターを実施例1−2)で培養した大腸菌BL21(DE3)菌株に導入することにより形質転換体を作製した。
【0070】
実施例1で作製した形質転換体と実施例5−1)で作製した形質転換体を用いて、基質であるオレイン酸からα,ω−ノナンニ酸(アゼライン酸)を生産した。実施例1で作製した形質転換体を用いて、オレイン酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸を生産し、実施例5−1)で作製した形質転換体を用いて、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸からアゼライン酸を生産した(
図6)。
図6は生産されたアゼライン酸の時間の経過に伴う生産量の変化を示すグラフであり、(■)は鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の濃度を示し、(▲)はω−ヒドロキシノナン酸の濃度を示し、(◇)は9−オキソノナン酸の濃度を示し、(◆)はアゼライン酸の濃度を示す。
【実施例6】
【0071】
リシノール酸からのα,ω−ウンデク−2−エンニ酸の生産
実施例1で作製したpACYC/オレイン酸加水酵素/アルコール脱水素酵素発現ベクター、シュードモナス・プチダ由来のBVMO遺伝子発現ベクター、及び実施例5−1)で作製したpCOLAduet−1/エステル加水分解酵素/アルコール脱水素酵素発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)菌株に導入して形質転換体を作製した。
【0072】
前記形質転換体を用いて、リシノール酸(C
18H
34O
3)からα,ω−ウンデク−2−エンニ酸を生産した(
図7)。
図7は前記形質転換体を用いてリシノール酸から生産されたα,ω−ウンデク−2−エンニ酸の時間の経過に伴う生産量の変化を示すグラフであり、(△)はリシノール酸の濃度を示し、(▽)は12−ケトオレイン酸の濃度を示し、(■)は鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の濃度を示し、(▲)はω−ヒドロキシウンデク−9−エン酸の濃度を示し、(◇)は9−オキソウンデク−9−エン酸の濃度を示し、(◆)はα,ω−ウンデク−2−エンニ酸の濃度を示す。
【0073】
なお、前記形質転換体を用いることにより、レスクエロール酸からヘプタン酸とα,ω−トリデク−2−エンニ酸を生産することができた。
【実施例7】
【0074】
オレイン酸からのα−アミノエンニ酸の生産
1)形質転換体の作製
まず、実施例5−1)のシュードモナス・フルオレッセンス由来のエステル加水分解酵素とシュードモナス・プチダ由来のアルコール脱水素酵素遺伝子が挿入されたpCOLAduet−1/エステル加水分解酵素/アルコール脱水素酵素発現ベクターを大腸菌に導入して1次形質転換体を作製した。
【0075】
次に、前記1次形質転換体にシリシバクター由来のアミノ基転移酵素を発現するベクター(非特許文献6)を導入することにより、エステル加水分解酵素、アルコール脱水素酵素及びアミノ基転移酵素を発現する2次形質転換体を作製した。
【0076】
2)形質転換体を用いたα−アミノエンニ酸の生産
実施例1で作製した形質転換体と実施例6−1)で作製した2次形質転換体を用いて、基質であるオレイン酸からα−アミノエンニ酸を生産した。実施例1で作製した形質転換体を用いて、オレイン酸から鎖内にエステル基が導入された脂肪酸を生産し、実施例6−1)で作製した形質転換体を用いて、鎖内にエステル基が導入された脂肪酸からα−アミノエンニ酸を生産した(
図8)。
図8は生産されたα−アミノエンニ酸の時間の経過に伴う生産量の変化を示すグラフであり、(■)は鎖内にエステル基が導入された脂肪酸の濃度を示し、(▲)はω−ヒドロキシノナン酸の濃度を示し、(◇)は9−オキソノナン酸の濃度を示し、(◆)はα−アミノエンニ酸の濃度を示す。
【0077】
なお、前記形質転換体を用いることにより、リシノール酸からヘプタン酸とα−アミノウンデク−9−エン酸を生産することができた。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]