(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族化合物は、シクロヘキシルベンゼン、酢酸−3−フェニルプロピル、フェニルプロピオネート、ビフェニル、2−メチルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、ナフタレン、アニソール、シクロペンチルベンゼン、トルエン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン及びこれらのハロゲン化物、フルオロベンゼン、クロロベンゼンから選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンを含む携帯電話機、ノートパソコンなどのモバイル機器の小型化・軽量化が著しく進行しており、また多機能化に伴って消費電力も増加している。そのため、これらの機器の電源として使用される二次電池においても、軽量化及び高容量化の要望が高まっている。また、車両からの排ガスによる環境問題を解決するため、内燃機関を使用しない電気自動車(EV)や、内燃機関と電気モーターを併用したハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)の開発が進められている。
【0003】
このような用途の電源としては、従来はニッケル−水素蓄電池が広く用いられていたが、より高容量かつ高出力な電源として、非水電解質二次電池を利用することが検討されている。特に、電動工具、EV、HEV、PHEVなどの動力用電源では、高容量、高出力であるだけでなく、長期的な使用に伴う内部抵抗の変化が少ない電源が必須となっている。
【0004】
非水電解質二次電池の高容量化を達成する手法として、充電電圧を上げることにより使用可能な電圧幅を広げる手法が知られている。しかし、充電電圧を上げた場合には、正極活物質の酸化力が強くなり、また、正極活物質は触媒性を有する遷移金属(例えば、Co、Mn、Ni、Feなど)を有しているため、正極活物質の表面で電解液の分解反応などが生じる。この結果、充放電を阻害する被膜が正極活物質の表面に形成され、電池の内部抵抗が上昇して出力が低下するという問題があった。
【0005】
そのため、例えば下記特許文献1には、非水電解質二次電池におけるリチウムイオンを吸蔵、放出しうる正極活物質粒子表面に、Gdなどの希土類元素の酸化物を存在させ、高電位における定電圧連続充電(フロート充電)保存時の充電電流の増加を抑制すること、すなわち非水電解液と正極活物質との反応を抑制することが提案されている。
【0006】
一方、リチウム二次電池などの非水電解質二次電池は、他の二次電池と比較して高いエネルギー密度を有するため、安全性の確保もより重要になっている。特に、過充電状態においては、正極からは過剰なリチウムが抽出され、負極ではリチウムが過剰に挿入されるため、正・負極の両極が熱的に不安定化する。その結果、正極ないし負極と非水電解液との急激な発熱反応が生じて、電池が発熱し、電池の安全性が低下することがあった。
【0007】
そこで、例えば下記特許文献2には、非水電解液に添加剤として少量の芳香族化合物を添加させ、充電時に電池の最大動作電圧以上の電池電圧となった際に、芳香族化合物を反応させてガスを発生させるとともに正極活物質表面に重合物を形成することにより、過充電電流を消費して電池を保護することが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について各種実験例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各種実験例は、本発明の技術思想を具体化するために例示するものであって、本発明をこれらの実験例に限定することを意図するものではない。本発明は、特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0014】
[実験例1]
以下に本発明の実験例1に係る非水電解質二次電池の具体的製造方法について説明する。
〔正極板の作製〕
共沈法により作製した[Ni
0.35Mn
0.30Co
0.35](OH)
2とLi
2CO
3とを所定比で混合した後、900℃で加熱することでLi
1.06Ni
0.33Mn
0.28Co
0.33O
2で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を得た。このリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物粒子1000gを3リットルの純水に投入して撹拌した。次に、これに硝酸エルビウム5水和物4.58gを溶解した溶液を加えた。この際、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加え、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を含む溶液のpHが9となるように調整した。次いで、吸引濾過、水洗した後、大気中300℃で5時間熱処理して得られた粉末を乾燥し、表面にオキシ水酸化エルビウムが均一に付着したリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を得た。上記オキシ水酸化エルビウムの付着量は、エルビウム元素換算で、上記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の遷移金属の総モル量に対して、0.1モル%であった。
【0015】
上述のようにして調製された表面にオキシ水酸化エルビウムが付着されたリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質を92質量部、導電剤としてのカーボンブラックを5質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)粉末を3質量部となるよう混合し、これをN−メチルピロリドン(NMP)溶液と混合して正極合剤スラリーを調製した。次いで、正極合剤スラリーを正極集電体としてのアルミニウム箔(厚さ15μm)の両面に塗布して正極集電体の両面に正極合剤層を形成し、乾燥した後、圧縮ローラーを用いて圧延した。その後、正極芯体露出部にアルミニウム製の正極タブを溶接により取付け、正極板を作製した。
【0016】
〔負極板の作製〕
負極板13は次のようにして作製した。負極活物質としては黒鉛粉末を用いた。増粘剤としてのCMC(カルボキシメチルセルロース)を水に溶解した溶液に黒鉛粉末を投入し、撹拌混合した後、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)(スチレン:ブタジエン=1:1)を混合して負極合剤スラリーを調製した。黒鉛、CMC及びSBRの質量比は、98:1:1とした。この負極合剤スラリーを負極集電体としての銅箔(厚さ10μm)の両面に塗布して負極集電体の両面に負極合剤層を形成し、乾燥した後、圧縮ローラーを用いて圧延した。次いで、負極芯体露出部に銅−ニッケルクラッド材からなる負極タブを溶接により取付け、負極板を作製した。
【0017】
〔非水電解液の作製〕
エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジメチルカーボネート(DMC)をそれぞれ体積比で30:30:40となるように混合したものを溶媒とした。このように調製した溶媒に支持塩としてのLiPF
6を1mol/Lとなるように溶解させ、さらにLiBOBを0.1mol/Lとなるように溶解させた。その後ビニレンカーボネートを1質量%添加し、さらに芳香族化合物としてシクロヘキシルベンゼン(CHB)を4質量%添加して非水電解液を作製した。ここで、白金電極を作用極とし、参照極、対極をLi金属とした電気化学セルを用いて25℃で評価した上記電解液の電位走査試験によって、約4.65V vs.Li/Li
+から酸化分解電流が急激に増加し始め、CHBの酸化分解電位が約4.65V vs.Li/Li
+であることを確認した。なお、CHBを添加させない場合(後述する実験例3に用いた非水電解液に相当する)は、5V vs.Li/Li
+程度まで電位を上げても急激な酸化分解電流の増加は認められなかった。
【0018】
〔非水電解質二次電池の作製〕
上記のようにして作製した正極および負極を、ポリエチレン製のセパレータを介して対向するように巻き取って巻回電極体を作製し、アルゴン雰囲気下のドライボックス中にて、この巻回電極体を電解液とともに電池缶に封入することにより、実験例1に係る円筒形非水電解質二次電池を作製した。なお、作製した円筒形非水電解質二次電池の具体的な組み立て工程及びその具体的な構成については後述する。
【0019】
[実験例2]
実験例2においては、実験例1における非水電解液において、芳香族化合物としてCHBに換えて酢酸−3−フェニルプロピル(PPA)を添加したこと以外は実験例1と同様にして非水電解液を作製した。また、実験例1と同様にして電位走査試験を行い、PPAの酸化分解電位が約4.8V vs.Li/Li
+であることを確認した。そして、上記電解液を用いたこと以外は実験例1と同様にして、実験例2に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0020】
[実験例3]
実験例3においては、実験例1における非水電解液において、芳香族化合物を添加しないこと以外は実験例1と同様にして、実験例3に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0021】
[実験例4]
実験例4においては、実験例1における正極板において、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の表面にオキシ水酸化エルビウムを付着させなかったものを用いたこと以外は実験例1と同様にして、実験例4に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0022】
[実験例5]
実験例5においては、実験例2における正極板において、正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の表面にオキシ水酸化エルビウムを付着させなかったものを用いたこと以外は実験例2と同様にして実験例5に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0023】
[電池の構成]
ここで、実験例1〜5に共通する円筒形非水電解液二次電池10の構成について、
図1を用いて説明する。この円筒形非水電解質二次電池10では、正極11と負極12とがセパレータ13を介して巻回された巻回電極体14が用いられている。この巻回電極体14の上下にはそれぞれ絶縁板15及び16が配置されており、巻回電極体14が負極端子を兼ねるスチール製の円筒形の電池外装缶17の内部に収容されている。負極12の負極集電タブ12aは電池外装缶17の内側底部に溶接されているとともに、正極11の正極集電タブ11aは安全装置が組み込まれた電流遮断封口体18の底板部に溶接されている。
【0024】
非水電解液は、電池外装缶17内に注入された後、真空含浸されている。電流遮断封口体18は、その周囲にガスケット19が挟まれ、電池外装缶17の開口端部がカシメられて固定されている。このような構成を備える実験例1〜5に共通する円筒形非水電解液二次電池10は、18650サイズ(直径18mm、長さ65mm)であり、充電終止電圧:4.2V、放電終止電圧:2.5Vでの定格容量は1300mAhである。
【0025】
[定電圧連続充電保存試験]
上述のようにして作製された実験例1〜5の各非水電解質二次電池について、以下のようにして定電圧連続充電保存前後の内部抵抗の増加量を測定した。まず、作製直後の実験例1〜5の各非水電解質二次電池について、室温下において、1khzの交流で4端子法を用いて定電圧連続充電保存前の電池の内部抵抗を計測した。
【0026】
次いで、実験例1〜5の各非水電解質二次電池をそれぞれ60℃の恒温槽に3時間放置した後、充電電流450mAで電池電圧が4.2Vとなるまで定電流で充電し、電池電圧が4.2Vに達した後はさらに4.2Vの定電圧で24時間充電を継続した。その後、実験例1〜5の各非水電解質二次電池を、放電電流450mAの定電流で電池電圧が2.5Vとなるまで放電させ、室温まで冷却した後に、1khzの交流で4端子法を用いて定電圧連続充電保存後の電池の内部抵抗を計測した。
そして、上記で得られた測定値から、実験例1、2、4、5の電池の定電圧連続充電保存前後の内部抵抗の増加量を、実験例3の電池の内部抵抗増加量を100%として相対値で求めた。結果を纏めて表1に示した。
【0028】
表1から明らかなとおり、実験例1及び2に係る非水電解質二次電池は、実験例3に係る非水電解質二次電池に比すると定電圧連続充電保存後の内部抵抗の上昇が抑制されていることがわかる。実験例3の非水電解質二次電池は、非水電解液中にCHBもPPAも有せず、希土類元素の化合物を正極活物質粒子の表面に付着させた正極のみを用いている。このように、希土類元素の化合物が付着した正極活物質のみを用いた場合には、正極活物質の表面で非水電解液の分解反応が継続的に生じるため、内部抵抗上昇が大きくなる。
【0029】
正極活物質粒子の表面に希土類元素の化合物を付着させると、この箇所は正極活物質粒子と非水電解液とが直接接触することが防止される。しかしながら、定電圧連続充電保存時には、希土類元素の化合物が付着されていない箇所で継続的に非水電解液の分解反応が起こるため、内部抵抗の上昇が大きくなると考えられる。
【0030】
芳香族化合物のCHBやPPAのみを加えた実験例4及び5に係る非水電解質二次電池では、定電圧連続充電保存時に正極活物質粒子の表面にこれらの芳香族化合物の分解により抵抗成分となる重合物が生成するため、内部抵抗が大幅に上昇したものと考えられる。芳香族化合物の酸化分解反応は、芳香族化合物の酸化分解電位が充電状態での正極電位より低い場合には必然的に生じるが、芳香族化合物の酸化分解電位が充電状態での正極電位より高い場合でも僅かに生じる。そのため、非水電解液中へ芳香族化合物を添加した際の内部抵抗の上昇という課題は、芳香族化合物の酸化分解電位が充電状態での正極電位より高い場合でも生じる課題である。
【0031】
したがって、実験例1及び2の非水電解質二次電池における定電圧連続充電保存後の内部抵抗上昇抑制効果は、表面に希土類元素の化合物が付着した正極活物質を有する正極と、上記のような芳香族化合物を含む非水電解液とを組み合わせて用いるときにのみ特異的に発現する効果であることが分かる。
【0032】
実験例1及び2の非水電解質二次電池では、正極活物質粒子の表面に付着した希土類元素の化合物と芳香族化合物が定電圧連続充電保存時の初期段階に反応し、正極活物質粒子の表面に均一な保護被膜を形成する。その結果、以後の定電圧連続充電保存時における非水電解液の分解反応が抑止されるため、定電圧連続充電保存後の内部抵抗上昇が抑制されるものと考えられる。
【0033】
実験例1及び2の非水電解質二次電池において、このような良質な保護被膜を形成される要因は、詳細については未だに明らかではないが、以下のとおりではないかと考えられる。正極活物質粒子の表面に希土類元素の化合物が付着していると、希土類元素が4f軌道の電子を有しているため、π電子軌道を有する芳香族化合物が正極側へ選択的に引き寄せられる。そのため、充電反応に伴って、均一に分散している希土類元素と芳香族化合物とが反応して、正極活物質粒子の表面に良質な被膜が均一に形成されるためであると考えられる。
【0034】
実験例1〜3では、正極活物質粒子の表面に付着させる希土類元素の化合物としてオキシ水酸化エルビウムを用いた例を示したが、他の希土類元素の化合物であってもよい。希土類元素の水酸化物、希土類元素のオキシ水酸化物又は希土類元素の酸化物であることが好ましい。特に、希土類元素の水酸化物又は希土類元素のオキシ水酸化物であれば、上記作用効果が一層良好に発揮されるようになる。
【0035】
正極活物質粒子の表面に付着した希土類元素の水酸化物は、熱処理するとオキシ水酸化物や酸化物となる。しかし、一般に、希土類元素の水酸化物やオキシ水酸化物が安定的に酸化物となる温度は500℃以上であるが、このような温度で熱処理すると、表面に付着した希土類元素の化合物の一部は正極活物質の内部に拡散してしまい、正極活物質表面の結晶構造変化を抑制する効果が低下するおそれがある。そのため、希土類元素の化合物としては、希土類元素の酸化物を含まないことが好ましい。なお、希土類元素の化合物には、他に希土類元素の炭酸化合物や、希土類元素の燐酸化合物などが一部含まれていてもよい。
【0036】
上記希土類元素の化合物に含まれる希土類元素としては、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、セリウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられ、中でも、ネオジム、サマリウム、エルビウムであることが好ましい。ネオジムの化合物、サマリウムの化合物、及びエルビウムの化合物は、他の希土類元素の化合物に比べて平均粒径が小さく、正極活物質粒子の表面により均一に析出し易くなるので、好ましい。
【0037】
希土類元素の化合物の具体例としては、水酸化ネオジム、オキシ水酸化ネオジム、水酸化サマリウム、オキシ水酸化サマリウム、水酸化エルビウム、オキシ水酸化エルビウムなどが挙げられる。また、希土類元素の化合物として、水酸化ランタン又はオキシ水酸化ランタンを用いた場合には、ランタンは他の希土類元素よりも安価であるということから、正極の製造コストを低減することができる。
【0038】
希土類元素の化合物の平均粒径(D
50)は1nm以上100nm以下であることが望ましい。希土類元素の化合物の平均粒子径が100nmを超えると、正極活物質粒子の粒径に対する希土類元素の化合物の粒径が大きくなり過ぎるために、正極活物質粒子の表面が希土類元素の化合物によって緻密に覆われなくなる。これにより、正極活物質粒子と非水電解質やその還元分解生成物が直に触れる面積が大きくなるので、非水電解質やその還元分解生成物の酸化分解が増加し、充放電特性が低下する。
【0039】
希土類元素の化合物の平均粒子径が1nm未満になると、正極活物質粒子の表面が希土類元素の化合物によって緻密に覆われ過ぎるため、正極活物質粒子の表面におけるリチウムイオンの吸蔵,放出性能が低下して、充放電特性が低下する。このようなことを考慮すれば、希土類元素の化合物の平均粒径は、10nm以上50nm以下であることが、より好ましい。
【0040】
オキシ水酸化エルビウムなどの希土類元素の化合物を正極活物質粒子に付着させる方法としては、正極活物質粒子を分散した溶液に、例えば希土類元素の塩を溶解した水溶液を混合することで得られる。また別の方法としては、正極活物質粒子を混合しながら、希土類元素の塩を溶解した水溶液を噴霧した後に、乾燥する方法も採用し得る。中でも、正極活物質粒子を分散した溶液に、エルビウム塩などの希土類塩を溶解した水溶液を混合する方法を用いることが好ましい。この理由としては、正極活物質粒子の表面に、希土類元素の化合物をより均一に分散して付着させることができるからである。この際、正極活物質粒子を分散した溶液のpHを一定にすることが好ましく、特に1〜100nmの微粒子を、正極活物質粒子の表面に均一に分散させて析出させるには、pHを6〜10に規制することが好ましい。pHが6未満になると、正極活物質粒子の遷移金属が溶出するおそれがある一方、pHが10を超えると、希土類元素の化合物が偏析してしまうおそれがある。
【0041】
正極活物質としてのリチウム含有遷移金属酸化物における遷移金属の総モル量に対する希土類元素の割合は、0.003モル%以上0.25モル%以下であることが望ましい。この割合が0.003モル%未満になると、希土類元素の化合物を付着させた効果が十分に発揮されないことがある一方、この割合が0.25モル%を超えると、正極活物質粒子表面におけるリチウムイオン透過性が低くなって、電池特性が低下する。
【0042】
正極活物質としてのリチウム含有遷移金属酸化物は、Li、Ni及びMnを含み、層状構造を有することが好ましい。リチウム含有遷移金属酸化物は、一般式Li
1+xNi
aMn
bCo
cO
2+d(式中、x,a,b,c,dは、x+a+b+c=1、0<x≦0.2、a≧b、a≧c、0<c/(a+b)<0.65、1.0≦a/b≦3.0、−0.1≦d≦0.1の条件を満たす)で表される酸化物であることがより好ましい。
【0043】
ここで、上記一般式に示されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物において、Coの組成比cと、Niの組成比aと、Mnの組成比bとが、0<c/(a+b)<0.65の条件を満たすものを用いるのは、Coの割合を低くして、正極活物質の材料コストを低減させるためである。また、上記一般式に示されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物において、Niの組成比aと、Mnの組成比bとが1.0≦a/b≦3.0の条件を満たすものを用いるのは、a/bの値が3.0を超えてNiの割合が多くなると、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の熱安定性が低下して、発熱がピークになる温度が低くなるため、安全性を確保するための電池設計で不利が生じるためである。一方、a/bの値が1.0未満になってMnの割合が多くなると、不純物層が生じ易く、電池容量が低下する。このようなことを考慮すれば、1.0≦a/b≦2.0という条件、特に、1.0≦a/b≦1.8という条件を満たすことが一層好ましい。
【0044】
さらに、上記一般式に示されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物において、Liの組成比(1+x)におけるxが0<x≦0.2の条件を満たすものを用いることが好ましい。0<xの条件を満たしていると、電池の出力特性が向上する。一方、x>0.2になると、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の表面に残留するアルカリ成分が多くなって、電池を作製する工程においてスラリーがゲル化し易くなると共に、酸化還元反応を行う遷移金属量が少なくなって、正極容量が低下する。このようなことを考慮すれば、0.05≦x≦0.15という条件を満たすことがより好ましい。
【0045】
加えて、上記一般式に示されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物において、Oの組成比(2+d)におけるdが−0.1≦d≦0.1の条件を満たすようにするのは、上記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が酸素欠損状態や酸素過剰状態になって、その結晶構造が損なわれるのを防止するためである。
【0046】
なお、上記の正極活物質としてのリチウム含有遷移金属酸化物には、ホウ素(B)、フッ素(F)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)、タングステン(W)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)からなる群から選択された少なくとも一種が含まれていてもよい。
【0047】
上記芳香族化合物としては、通常は酸化分解電位が4.2〜5.0V vs.Li/Li
+、好ましくは4.4〜4.9V vs.Li/Li
+のものを用いることが好ましい。ここで、酸化分解電位とは、作用極として白金電極を用い、25℃で電位走査試験をした際に、酸化電流が急激に増加し始める(急激に酸化分解が生じる)電位のことである。酸化分解電位が電池の満充電状態における正極の電位に対して高すぎると過充電防止効果が小さくなり、逆に低すぎると通常条件での電池使用時に電池特性を著しく劣化させることがある。
【0048】
上記芳香族化合物としては、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、酢酸−3−フェニルプロピル(PPA)以外の他の芳香族化合物を含んでいてもよい。このような他の芳香族化合物としては、従来公知の過充電抑制剤として用いられている芳香族化合物が挙げられる。他の芳香族化合物の具体例としては、ビフェニル、2−メチルビフェニルなどのアルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、ナフタレン、トルエン、アニソール、シクロペンチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼンなどのベンゼン誘導体、フェニルプロピオネートなどのフェニルエーテル誘導体及び、それらのハロゲン化物や、
フルオロベンゼン、クロロベンゼンなどのハロゲン化ベンゼンを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい
【0049】
これらの芳香族化合物の含有量は、非水溶媒全体の0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。この含有量が多すぎると電解液の伝導度低下や耐酸化性の低下など、電池特性に悪影響を及ぼし、逆に含有量が少なすぎると定電圧連続充電保存後の内部抵抗上昇抑制効果が十分に発現しない。
【0050】
本発明の非水電解質二次電池において、その負極に用いる負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出できるものであれば特に限定されず、例えば、炭素材料や、リチウムと合金化する金属或いは合金材料や、金属酸化物などを用いることができる。なお、材料コストの観点からは、負極活物質に炭素材料を用いることが好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、ハードカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブなどを用いることができる。特に、高率充放電特性を向上させる観点からは、負極活物質に黒鉛材料を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を用いることが好ましい。
【0051】
非水電解質における非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などの環状炭酸エステル;フルオロエチレンカーボネート(FEC)などのフッ素化された環状炭酸エステル;γ−ブチロラクトン(γ−BL)やγ−バレロラクトン(γ−VL)などのラクトン類(環状カルボン酸エステル);ジメチルカーボネート(DMC)やエチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジブチルカーボネート(DBC)などの鎖状炭酸エステル;フッ素化プロピオン酸メチル(FMP)、フッ素化エチルメチルカーボネート(F−EMC)などのフッ素化された鎖状炭酸エステル;ピバリン酸メチルやピバリン酸エチル、メチルイソブチレート、メチルプロピオネートなどの鎖状カルボン酸エステル;N,N'−ジメチルホルムアミドやN−メチルオキサゾリジノンなどのアミド化合物;スルホランなどの硫黄化合物;テトラフルオロ硼酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどの常温溶融塩;これらを用いることができる。また、これらを2種以上混合して用いるようにしてもよい。
【0052】
非水電解質における非水溶媒中に溶解させる電解質塩としては、非水電解質二次電池において一般に電解質塩として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)や、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC(C
2F
5SO
2)
3、LiAsF
6、LiClO
4、Li
2B
10Cl
10、Li
2B
12Cl
12などを一種単独又はこれらから複数種を混合したものを用いることができる。特に、非水電解質二次電池における高率充放電特性や耐久性を高めるためには、LiPF
6を用いることが好ましい。また、LiPF
6に加え、オキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩(LiBOBなど)をさらに含有させてもよい。
【0053】
非水電解質には、電極の安定化用化合物として、例えば、ビニレンカーボネート(VC)やアジポニトリル(AdpCN)、ビニルエチルカーボネート(VEC)、無水コハク酸(SUCAH)、無水マイレン酸(MAAH)、グリコール酸無水物、エチレンサルファイト(ES)、ジビニルスルホン(VS)、ビニルアセテート(VA)、ビニルピバレート(VP)、カテコールカーボネートなどを添加するようにしてもよい。これらの化合物は、2種以上を適宜に混合して用いるようにしてもよい。
【0054】
また、本発明の非水電解質二次電池において、上記の正極と負極との間に介在させるセパレータとしては、正極と負極との接触による短絡を防ぎ、かつ非水電解液を含浸して、リチウムイオン伝導性が得られる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン製やポリエチレン製のセパレータ、ポリプロピレン−ポリエチレンの多層セパレータなどを用いることができる。