(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104370
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】容量センサー配列および容量センサー配列を備えるタッチセンサー式スクリーン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20170316BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
G06F3/041 470
G06F3/044 Z
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-515431(P2015-515431)
(86)(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公表番号】特表2015-520460(P2015-520460A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】EP2013057980
(87)【国際公開番号】WO2013182342
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2015年1月19日
(31)【優先権主張番号】102012011626.8
(32)【優先日】2012年6月9日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508039825
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ オートモーティブ エレクトロニクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ラインル、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジュース、 マンフレッド
【審査官】
若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−086236(JP,A)
【文献】
特開2012−251030(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0100727(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの容量センサー(2)、および、前記少なくとも1つの容量センサー(2)の正面に適用されるコーティング(3)を備える容量センサー配列(1)であって、前記コーティング(3)は平坦なマルチレベルの層構造(3.1から3.n)を含み、前記マルチレベルの層構造のそれぞれは低減された干渉電気容量を有し、それぞれが電気的に直列に接続され、および、層状に配置される複数の容量層(3.1から3.n)から形成され、少なくとも1つの拡散防止層が各前記干渉電気容量の間に設けられることを特徴とする容量センサー配列。
【請求項2】
請求項1に記載の容量センサー配列(1)において、
前記容量層(3.1から3.n)は、容量センサーの正面(2)、または、前記容量センサーの正面の上に配置されるバッキング層(2)に直接適用されることを特徴とする容量センサー配列(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の容量センサー配列(1)において、
前記容量層(3.1から3.n)のそれぞれの電気容量(C1からCn)は同じであることを特徴とする容量センサー配列(1)。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の容量センサー配列(1)において、
前記容量層(3.1から3.n)は、樹脂および/または金属から形成されることを特徴とする容量センサー配列(1)。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の容量センサー配列(1)において、
前記容量層(3.1から3.n)は透明であることを特徴とする容量センサー配列(1)。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の容量センサー配列(1)において、
前記容量層(3.1から3.n)は塗布層であることを特徴とする容量センサー配列(1)。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の容量センサー配列(1)において、
前記容量層(3.1から3.n)は印刷方式で適用される層であることを特徴とする容量センサー配列(1)。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の容量センサー配列(1)において、
いずれの場合にも1つの電気的絶縁層(I1、I2)が前記容量層(3.1から3.n)の間に配置されていることを特徴とする容量センサー配列(1)。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の容量センサー配列(1)において、
いずれの場合にも少なくとも1つの絶縁層が導電層および/または臨界層の間に配置されていることを特徴とする容量センサー配列(1)。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の容量センサー配列(1)を少なくとも1つ備えるタッチセンサー式スクリーン(4)。
【請求項11】
請求項10に記載のタッチセンサー式スクリーン(4)において、
前記容量センサー配列(1)は表示ユニットの正面または背面(5)に配置されることを特徴とするタッチセンサー式スクリーン(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの容量センサー、および、前記少なくとも1つの容量センサーの正面に適用されるコーティングを備える容量センサー配列に関する。
【0002】
本発明は、さらに少なくとも1つの当該容量センサー配列を備えるタッチセンサー式スクリーンに関する。
【背景技術】
【0003】
技術デバイスでプログラムが実行されるタッチセンサー式スクリーンはスクリーンをタッチすることで制御可能であり、従来技術として一般に知られている。この点に関して、それぞれのタッチセンサー式スクリーンは、画像を表示するための表示ユニットおよびオペレータによるタッチを感知するための容量センサー配列を備える。センサー配列は、前記センサー配列が現在の位置でタッチされると、画像の同じ位置で英数字およびシンボルであらわされる特定の機能が実行されるように設計される。
【0004】
欧州特許出願公開第EP1,811,364A2号は、タッチセンサー式表面を備えるディスプレイデバイスを開示し、このディスプレイデバイスは、物体、例えば、ディスプレイデバイスの表面に接触または接触しそうになるほど近づく指の位置を決定するための層システムを備える。この場合には、層システムは容量的および抵抗的に容量を評価可能なように設計される。この目的のために、層システムは容量層配列と抵抗層配列を備え、当該容量層配列はキャパシター電極として使用される導電層とこの層の正面に配置される柔軟な絶縁層を備える。
【0005】
本発明の目的は、従来技術に比べて改良された容量センサー配列、および、当該容量センサー配列を備えるタッチセンサー式スクリーンを規定することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
容量センサー配列については、本発明の目的は本発明の請求項1に記載される特徴によって実現され、タッチセンサー式スクリーンについては、本発明の請求項10に記載される特徴によって実現される。
【0007】
容量センサー配列は、少なくとも1つの容量センサーと、前記少なくとも1つの容量センサーの正面に適用されるコーティングを備える。本発明によれば、コーティングはマルチレベルの層構造を備え、当該マルチレベルの層構造は、電気的に直列に接続され、および、層状に配置される複数の容量層から形成される。
【0008】
単一の容量層から形成されるシングルレベルコーティングに比較して、電気的に直列に接続され、複数の容量層を備えるこのマルチレベルの層構造によって、コーティングの全容量が低減される。したがって、コーティングによって生成されるいわゆる干渉キャパシタンスが非常に低減される。これによって、シングルレベルコーティングで達成されるよりも、未接触センサーと接触センサーとの間の容量センサーの有用な信号の差異が非常に大きくなるという特に有利な態様の結果となる。したがって、接触状態と非接触状態を安定してお互いに区別することができ、その結果、確実であると同時に再現性のある測定によって、故障の影響を受けにくい確固とした確実な評価が実現可能となる。さらに、現在、厚さが厚い材料、および/または、特定の特性を持つ材料が、容量センサーとオペレータの皮膚表面との間に配置されるべき容量を持つことが可能となっている。
【0009】
容量センサー配列の1つの構成によれば、容量層は、容量センサーの正面に、あるいは、容量センサーの正面の上に配置されるバッキング層に直接適用される。この配列は、容易に製作可能である。
【0010】
さらなる構成によれば、各容量層は同一の電気容量をそれぞれ有する。したがって、容量層の全容量をあらかじめ決めることは非常に容易である。さらなる構成では、容量層のそれぞれの容量は異なってもよい。
【0011】
1つの改良形態では、容量層は樹脂および/または金属から形成され、したがって堅牢性が非常に高いことで特徴付けられる。
【0012】
1つの構成によれば、導電層および/または臨界層は、拡散を防ぐためおよび他の理由によって絶縁層によって分離される。したがって、すべての種類の層およびレベル並びに自由に選択可能なオーダーの層構造を使用できるので、干渉キャパシタンスが大きいシングルレベルコーティングに比べて、全容量を低減することができる。この場合には、導電層は極薄金属層、すなわち光学的に透明な金属層を意味することが理解できる。前記層間の抵抗は低く、電気的に導電性である。
【0013】
拡散のために、導電層が変化する危険性がある。この拡散は絶縁層によって防ぐことができる。
【0014】
例えば、臨界層は、空気の存在によって酸化される不安定層であることを意味すると理解される。これらの層が絶縁層でコーティングされると、安定した、一定の特性を実現でき、特に2つの絶縁層を使用する場合には、臨界層の老化および経年変化を、時間の関数として最小化することができる。
【0015】
1つの可能な構成では、容量層は透明であるので、その結果、容量センサー配列は、タッチセンサー式スクリーン用途に適している。
【0016】
その上、容量層は特に層の塗布によって形成され、それは例えば印刷方式で適用される層である。その結果、容量層は、非常に薄い厚さ、および、複雑ではない非常に簡単な態様で製造できる。
【0017】
1つの可能な改良形態によれば、お互いから容量層を電気的に絶縁するために、いずれの場合にも容量層の間に1つの電気的絶縁層が配置されるので、層のそれぞれの容量を最小化し長期間の安定性を確実にする。
【0018】
本発明によるタッチセンサー式スクリーンは、本発明による少なくとも1つの容量センサー配列を備える。
【0019】
容量センサー配列をコーティングするマルチレベルの層構造、および、その結果としての低減された干渉キャパシタンスのために、指などの入力補助手段による接触を確実に感知することができ、その結果、タッチセンサー式スクリーンに結合する技術デバイスで実行されるプログラムを、故障に影響されないで確固として制御することが実現可能となる。入力補助手段は、電気的に導電性のスタイラスペン、または、例えば該動作に好適な人工器官である他の特定の工具であってもよい。
【0020】
有利な構成では、容量センサー配列は表示ユニットの正面または背面に配置される。この場合には、容量センサー配列は特に、センサー配列が現在の位置でタッチされると、同じ位置で表示ユニットによって出力される画像上の英数字およびシンボルであらわされる特定の機能を実行するように設計される。この場合には、表示ユニットおよび制御パネル前面のマルチレベルの層構造によって、いわゆるブラックパネル効果を実現することが可能になり、その結果、ユーザインターフェース上で最小の反射と同時に最適コントラストを生成することが可能になる。したがって、反射低減層およびすべての望ましい光学的効果を生成できる。対照的に、これらの有利な効果は干渉キャパシタンスを最小にした、相当な複雑性だけが含まれる単一層構造では実現できない。
【0021】
本発明の例示的実施形態のより詳細な説明を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明による容量センサー配列の第1の例示実施形態の断面図を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示される容量センサー配列を含む、本発明によるタッチセンサー式スクリーンの第1の例示実施形態の断面図を概略的に示す図である。
【
図3】本発明による容量センサー配列の第2の例示実施形態の断面図を概略的に示す図である。
【
図4】
図3に示される容量センサー配列を含む、発明によるタッチセンサー式スクリーンの第2の例示実施形態の断面図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
すべての図面において、お互いに対応する部分には同一の参照記号が付与される。
【0024】
図1は、本発明による、容量センサー2を含む容量センサー配列1の第1の例示実施形態の断面図を示す図である。容量センサー2はいずれのタイプの容量センサー2であってもよく、特に容量センサー2は、指または入力補助手段によって接触されると電気容量が変化する。センサー2の接触状態と非接触状態の間のこの容量変化は、容量センサー2に結合する技術デバイス(図示せず)でのプログラムの実行を制御するために使用される。
【0025】
容量センサー2は、複数の容量層3.1から3.nで構成される、マルチレベルのコーティング3の正面上に提供される。容量層3.1から3.nのそれぞれはお互いに対して容量結合し、複数の層状になって上下に配置され、その結果キャパシターの直列回路が提供される。可能な構成では、層3.1から3.nは、樹脂および/または金属から形成され、透明であるいずれのタイプの層であってもよい。
【0026】
可能な実施形態では、層3.1から3.nの層と層の間は電気的に導電性であり、お互いに電気的に直列に接続されている。したがって、本実施形態の層3.1から3.nもお互いに対して容量結合し、複数の層状になって上下に配置され、キャパシターの直列回路が形成される。
【0027】
可能な実施形態では、層3.1から3.nは塗布層である。層3.1から3.nは容量センサー2に例えば、印刷方式で直接適用され、図示しない実施形態では、容量センサー2の正面の上に配置されるバッキングプレートに適用される。
【0028】
代替例示実施形態(
図3により詳細に図示されている)では、さらにいずれの場合にも電気的絶縁層I1、I2が層3.1から3.nの間に配置される。
【0029】
容量層3.1から3.nの電気的に直列の回路によって、実効全容量Ctotは、単一層またはシングルレベル構造のコーティング3に比べて以下の式にしたがって低減される。ここで全容量Ctotの逆数は、容量層3.1から3.nのそれぞれの容量C1からCnの逆数の和から求められる:
【数1】
【0030】
したがって、結果として得られる全容量は、容量層3.1から3.nのそれぞれの容量C1からCn中のいずれか最も大きい1つの容量よりも小さい。
【0031】
例えば、それぞれ同一の容量C1、C2を有する2つの容量層3.1、3.2にコーティング3が実施される場合には、結果として得られる全容量Ctotはそれぞれの容量C1、C2の半分に過ぎない。この全容量Ctotが容量センサー2の干渉キャパシタンスとして機能する。シングルレベルコーティング3に比べて干渉キャパシタンスが半分に低減されるので、容量センサー2がタッチされると大きな測定信号がセンサー2によって感知され得る。この大きな測定信号は、センサー2の接触状態と非接触状態間の高い分解能を持つ大きな信号変化によってもたらされ、したがって故障の影響を受けにくいセンサー配列1となる。
【0032】
それぞれ同一の容量C1、C2、C3を有する、3つの容量層3.1、3.2、3.3にコーティング3が実施される場合には、結果として得られる全容量Ctotは、今度はそれぞれの容量C1、C2、C3の3分の1になる。シングルレベルコーティング3に比べて3分の2だけ干渉キャパシタンスが低減するので、容量センサー2がタッチされると、大きな信号変化と高い分解能を有するセンサー2によってさらに改良された測定信号が検知可能となり、したがってセンサー配列1は故障の影響をさらに受けにくくなる。
【0033】
それぞれ同一の容量C1からC4を有する4つの容量層3.1から3.4にコーティング3が実施される場合には、結果として得られる全容量Ctotは、今度はそれぞれの容量C1からC4の4分の1になる。シングルレベルコーティング3に比べて4分の3だけ干渉キャパシタンスが低減するので、容量センサー2がタッチされると、大きな信号変化と高い分解能を有するセンサー2によって3つの層3.1から3.3の実施形態に比べてさらに改良された測定信号が検知可能となり、したがってセンサー配列1は故障の影響をさらに受けにくくなる。
【0034】
さらに有利な点として、複数の容量層3.1から3.nを備えるコーティング3のマルチレベル設計は、カラーカバレッジ(color coverage)およびカラーサチュレーション(color saturation)がシングルレベルすなわち単一層形成のコーティング3の実施形態に比べて改良されることを意味する。カラーカバレッジおよびカラーサチュレーションが比較的高い当該シングルレベルすなわち単一層形成のコーティング3の場合には、有効な全容量Ctotが大きくなり、非接触状態と接触状態との間の容量センサー2の有用な信号の変化は非常に小さいので、検知することが非常に困難となり、容量センサー2の検知は不十分、または、全く不可能となる。したがって、再現性ある測定および評価はもはや不可能になる。
【0035】
コーティング3の理想的な全容量Ctotは零であり、その結果、容量層3.1から3.nの数が増加すると、非接触状態と接触状態との間の容量センサー2の有用な信号の変化、すなわちこれらの状態間の信号の変化が連続的に大きくなり、センサー配列1の分解能が連続して大きくなり、センサー配列1は故障に対する影響が連続的に低減する。
【0036】
図2は、本発明によるタッチセンサー式スクリーン4の第1の例示実施形態の断面図を示す。スクリーン4は、例えば、LCDディスプレイの形態である表示ユニット5を備える。代替実施形態では、他のタイプの表示ユニット5が設けられてもよい。
【0037】
図1に示される容量センサー配列1は表示ユニット5の正面に配置される。センサー配列1、すなわち容量センサー2およびそのコーティング3は透明であるので、その結果ユーザが検出可能な形態で、特に英数字および/またはシンボルが表示ユニット5によって表示される。代替構成(図示せず)では、容量センサー配列1は表示ユニット5の背面に配置される。
【0038】
スクリーン4に接続される制御ユニット(これ以上詳細には図示されない)に記憶される制御コマンドは、表示される情報に割り当てられる。センサー配列1がタッチされると、容量センサー2の容量が変化し、ここで変化の大きさからセンサー配列1がタッチされた位置を決定することができる。表示ユニット5によって表示される画像上のオペレータが選択した位置は当該決定された位置から導かれ、および、この位置で表示される情報に割り当てられた制御コマンドが実効される。制御コマンドによって、スクリーン4に結合される技術デバイス(図示せず)のプログラム動作が制御される。
【0039】
図3は、本発明による容量センサー配列1の第2の例示実施形態の断面図であり、ここでは、その上、層3.1から3.nの層間のいずれの間にも電気的絶縁層I1、I2が配置されている。これらの電気的絶縁層I1、I2によって、それぞれの容量C1〜Cnを長期間最小化することが可能となる。
【0040】
図4は、本発明によるタッチセンサー式スクリーン4の第2の例示実施形態の断面図を示す。この場合には、
図3に示される容量センサー配列1は表示ユニット5の正面に配置される。
【符号の説明】
【0041】
1 センサー配列
2 センサー
3 コーティング3.1層〜3.n層
4 スクリーン
5 表示ユニット
C1〜Cn 各容量
Ctot 全容量
I1、I2 層