(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104408
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】超合金材料のクラッド層を形成する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/04 20060101AFI20170316BHJP
B23K 9/16 20060101ALI20170316BHJP
B23K 9/173 20060101ALI20170316BHJP
B23K 9/167 20060101ALI20170316BHJP
B23K 26/342 20140101ALI20170316BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20170316BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
B23K9/04 N
B23K9/04 G
B23K9/16 G
B23K9/173 A
B23K9/167 A
B23K26/342
B22F3/105
B22F7/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-556161(P2015-556161)
(86)(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公表番号】特表2016-514052(P2016-514052A)
(43)【公表日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】US2014014096
(87)【国際公開番号】WO2014121046
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】13/754,983
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド ジェイ. ブラック
(72)【発明者】
【氏名】アーメド カメル
【審査官】
篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/121060(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/120913(WO,A2)
【文献】
国際公開第2014/120475(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0181255(US,A1)
【文献】
特開2013−068085(JP,A)
【文献】
特開2011−136344(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0173592(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/070578(WO,A1)
【文献】
特開2011−083822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/04
B22F 1/00
B22F 3/105
B22F 7/04
B23K 9/16
B23K 9/167
B23K 9/173
B23K 26/342
C22C 19/05
F01D 5/28
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状コア材料が入れられている中空の金属シースを含んでいる供給材料を基材上に溶解して、所望の超合金クラッド材料の層を、スラグの層の下に形成するステップを有し、
当該金属シースは、所望の超合金材料の押出成形可能な元素サブセットを含んでおり、前記粉末状コア材料は粉末状金属と粉末状フラックスとを含んでおり、当該粉末状金属と粉末状フラックスは、前記シースと溶融したときに、前記所望の超合金材料の元素を補完し、
前記超合金クラッド材料とスラグとを冷ました後に、前記スラグを除去して、所望の超合金クラッド材料の層を露出させるステップとを有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粉末状金属のメッシュサイズ範囲と前記粉末状フラックスのメッシュサイズ範囲とは重なっている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記供給材料にエネルギービームを印加することによって、前記供給材料を溶解するステップをさらに有している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
アークを形成するために前記供給材料を通して前記基材に電流を印加することによって前記供給材料を溶解するステップと、
酸素と二酸化炭素のうちの少なくとも1つを含むシールドガスを供給して、前記溶解ステップの間、前記アークを安定させるステップと、
酸素と二酸化炭素のうちの少なくとも1つと反応するチタンを補填するために、前記所望の超合金クラッド材料内に含まれる量を超える量のチタンを前記粉末状金属に含ませるステップとを有している、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、金属接合の分野に関し、具体的には、粉末状フラックスと粉末状金属とが入れられている中空の有芯供給材料を用いた溶接クラッド構築および材料修理に関する。
【0002】
発明の背景技術
溶接法は、溶接対象の材料の種類に依存して著しく大きく変わってくる。種々の条件下でも比較的容易に溶接することができる材料もあれば、他方では、周辺の基材を劣化させることなく構造的に確実な接合を実現するためには特殊な処理を必要とする材料もある。
【0003】
通常のアーク溶接は一般的には、消耗性の電極を供給材料として用いる。たとえば鋼、ステンレス鋼およびニッケル基合金等を含んだ多数の合金を溶接する場合、溶湯プール中の溶融した材料を雰囲気から保護できるようにするためには、不活性のカバーガスまたはフラックス材料を用いることができる。不活性ガスプロセス、および、不活性ガスと活性ガスとを併用したプロセスには、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)(タングステンイナートガス(TIG)との呼称でも知られている)や、ガスメタルアーク溶接(GMAW)(金属不活性ガス(ミグ;MIG)や金属活性ガス(マグ;MAG)との用語でも知られている)も含まれる。フラックス保護による処理法には、フラックスを同様に供給するサブマージアーク溶接(SAW)、電極のコアにフラックスが含まれているフラックスコアードアーク溶接(FCAW)、および、フラックスが溶加材電極の外側に被膜されているシールドメタルアーク溶接(SMAW)が含まれる。
【0004】
溶接の熱源としてエネルギービームを用いることも公知である。たとえば、溶湯プールのシールドを実現する粉末状フラックス材料を用いて、事前に配置したステンレス鋼粉末を炭素鋼基材に溶着させるためにレーザエネルギーが用いられてきた。フラックス粉末は、ステンレス鋼粉末と混合することができ、または、別個のカバー層として設けることもできる。本願の発明者が知る限りでは、フラックス材料は、超合金材料を溶接する際には用いられたことが無い。
【0005】
超合金材料は、溶接凝固割れやひずみ時効割れが生じやすいため、最も溶接しにくい材料に属すると認識されている。ここで「超合金」との用語は、関連分野において通常用いられている意味で用いる。具体的には、優れた機械的強度および高温時耐クリープ性を示す、高い耐食性かつ耐酸化性の合金を指す。超合金は典型的には、高含有量のニッケルまたはコバルトを含む。超合金の例としては、ハステロイ、インコネル合金(たとえば IN 738,IN 792,IN 939)、レネ(Rene)合金(たとえば Rene N5,Rene 80,Rene 142)、ハイネス(Haynes)合金、Mar-M、CM 247、CM 247 LC、C263、718、X-750、ECY 768、282、X45、PWA 1483 および CMSX(たとえば CMSX-4)単結晶合金との商標や販売名で販売されている合金が含まれる。
【0006】
超合金材料の中には、当該超合金材料の溶接修理を成功させるために、修理中に当該超合金材料の延性を格段に増加させるため、非常に高い温度(たとえば華氏1600°ないしは870℃)まで当該超合金材料を予熱したものがある。この技術は「ホットボックス溶接」修理、または、「超合金昇温溶接(SWET)」修理とも称され、通常は、手動GTAWプロセスを用いて行われる。しかしホットボックス溶接は、部品処理面温度を均一に維持するのが困難であること、および、完全な不活性ガスシールドを維持するのが困難であることにより制限されてしまい、また、このように非常に高温の部品付近にて作業するオペレータにかかる物理的問題によっても制限されてしまう。
【0007】
超合金材料溶接の用途の中には、基材の加熱を抑制するためにチルプレートを用いて行う用途もある。これにより、基材の熱の影響が生じること、および、応力に起因する亀裂の問題を抑制することができる。しかしこの技術は、部品の幾何学的特性によってチルプレートが使用しにくくなる多くの修理用途においては、実用的でない。
【0008】
図6は、種々の合金の相対的な溶接性を、各合金のアルミニウム含有率およびチタン含有率に依存して示す従来図である。上記2つの元素の濃度が比較的低いのでガンマプライム含有率が比較的低い、インコネル(登録商標)IN718 等の合金は、一般的にその溶接が部品の比較的低応力の領域に限定されるにもかかわらず、当該合金の溶接性は比較的高いと考えられている。上記2つの元素の濃度が比較的高い、インコネル(登録商標)IN939 等の合金は、一般的には溶接性を有さないか、または、当該合金の溶接を可能とするためには、上記にて説明した、材料の温度/延性を増大させ、かつプロセスの入熱を最小限にする特殊な手順を用いなければならないと考えられている。ここで考察のために、破線80は境界を示している。この破線80の下方は溶接性領域であり、この破線80の上方は非溶接性領域である。この線80は、縦軸にてアルミニウム含有率3重量%と交差し、かつ、横軸上にてチタン含有率6重量%と交差する。非溶接性領域では、一般的にはアルミニウム含有率が最も高い合金が、溶接が最も困難であると考えられている。
【0009】
また、超合金粉粒子の薄層を超合金基材に溶着するために、選択的レーザ溶融法(SLM)または選択的レーザ焼結法(SLS)を用いることも公知である。その溶湯プールは、レーザ加熱中、たとえばアルゴン等の不活性ガスを適用することによって雰囲気からシールドされる。これらの手法は、溶着した材料の層中に含まれる粒子の表面に付着した酸化物(たとえば酸化アルミニウムや酸化クロム)を捕捉することにより、当該酸化物の捕捉に付随して細孔や封入や他の欠陥を引き起こす傾向にある。処理後高温アイソスタティックプレス(HIP)を用いて、このようなボイドや封入、割れを解消することにより、溶着した被膜の特性を改善することが多い。
【0010】
非溶接性領域にある超合金材料の中には、許容可能な溶接法や修理法が知られていないものもある。さらに、合金含有率がより高い新規の超合金が継続的に開発され続けているので、商業上実用化可能な、超合金材料に対応する接合プロセスを開発しようという挑戦は増え続けている。
【0011】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】多層粉末を用いたクラッド形成プロセスを示す図である。
【
図2】混合層粉末を用いたクラッド形成プロセスを示す図である。
【
図3】有芯フィラーワイヤと
コールドメタルアーク溶接トーチとを用いたクラッド形成プロセスを示す図である。
【
図4】有芯フィラーワイヤとエネルギービームとを用いたクラッド形成プロセスを示す図である。
【
図5】エネルギービームの重なりパターンを示す図である。
【
図6】種々の超合金の相対的な溶接性を示す従来技術図である。
【実施例】
【0013】
本願発明者は、溶接が非常に困難な超合金材料を不具合無しで溶着するのに使用できるクラッド形成プロセスを開発した。従前は、フラックス材料は超合金材料を溶接する際には使用されたことがなかったが、本発明の方法の実施形態は、融解および再凝固プロセス中に粉末状フラックス材料を適用できるという利点を奏する。幾つかの実施形態では、エネルギービーム加熱プロセス、例えばレーザビーム加熱のエネルギー入力も正確に制御される。粉末状フラックス材料は、高温のホットボックス溶接や、チルプレートを使用したり、または不活性シールドガスを用いる必要なく、超合金材料を割れ無しで接合するため、ビームエネルギーの捕捉、不純物洗浄、大気シールド、ビードの成形および冷却温度制御を実施するのに有効である。本発明の種々の構成要素は、数十年前から溶接業において公知となっているが、本願の発明者は、これらの材料の、長年にわたるクラッキング問題を解決する、超合金クラッド形成プロセスの複数の工程を組み合わせたものを開発するという革新的なことを成し遂げた。
【0014】
図1に、超合金基材12の予熱やチルプレートを全く使用することなく、室温の周辺温度で、超合金材料のクラッド層10を超合金基材12上に溶着する処理を示す。基材12は、たとえばガスタービンエンジンブレードの一部を成すことができ、また、幾つかの実施形態では、クラッド形成プロセスを修理プロセスの一部とすることができる。顆粒状の粉末層14を基材12上に事前配置し、レーザビーム16を当該粉末層14の両端間にわたって移動させることにより、当該粉末を溶融して、スラグ層18により被覆されたクラッド層10を形成する。クラッド10およびスラグ18は、粉末状の超合金材料20の層に粉末状フラックス材料22の層を被覆したものを含む粉末層14から形成される。
【0015】
フラックス材料22と、その結果物であるスラグ層18とは、クラッド層10とその下にある基材12の割れを防止するのに有利である数多くの機能を果たす。まず第一に、フラックス材料22およびスラグ層18は、溶融状態の材料の領域と凝固した(しかし未だ高温の)クラッド材料10の領域との双方を、レーザビーム16の進行方向にある大気からシールドする機能を有する。スラグは表面に向かって泳いで、溶融状態または高温の金属を大気から分離する。幾つかの実施形態では、高コストの不活性ガスの使用を回避するかまたはその使用量を最低限に抑えるため、シールドガスを生成するように、フラックスを調合することができる。第二に、スラグ18は、凝固した材料を緩慢かつ均等に冷却させるためのブランケットとして機能する。このように冷却させることにより、溶接後再加熱またはひずみ時効割れに寄与する可能性のある残留応力を低減させることができる。第三に、スラグ18は、溶融した金属のプールの高さ幅比を所望の1:3付近に維持するように、当該プールを成形するのを補助する。第四として、フラックス材料22は、溶接凝固割れの発生に寄与する、硫黄やリン等の微量不純物を除去する洗浄作用を実現する。この洗浄は、金属粉末の脱酸を含む。フラックス粉末は金属粉末に密接しているので、前出の機能を実現するのに特に効果的である。最後に、フラックス材料22は、エネルギーの吸収捕集機能を実現することにより、熱エネルギーへのレーザビーム16の変換効率を高くし、これにより、たとえば1〜2%等以内での入熱の正確な制御を容易にすることができ、また、これにより処理中の材料温度の厳密な制御を容易にすることができる。さらに、処理中に揮発した元素の損失を補償するように、または、金属粉末自体では実現されない成分を溶着物に積極的に与えるように、フラックスを調合することもできる。総合的に、これらの処理工程によって、従前はホットボックスプロセスやチルプレートを用いてしか接合できないと考えられていた材料について、室温で超合金基材上に超合金クラッドの割れ無しの溶着部が生成される。
【0016】
図2に、超合金材料のクラッド層30を超合金基材32上に溶着する他の実施形態を示す。超合金基材32は本実施形態では、複数の柱状結晶粒34を有する方向性凝固した材料として示されている。この実施形態では、粉末層36を事前配置しておくか、または、粉末状の合金材料38と粉末状フラックス材料40との双方を混合したものを含む均質層として、基材32の表面上に供給する。幾つかの実施形態では、粉末層36の厚さを、公知の選択的レーザ溶融プロセスや選択的レーザ焼結プロセスにおいて典型的である1mm未満とするのではなく、1mmから数mmの厚さとすることができる。従来技術の典型的な粉末状フラックス材料の粒径は、たとえば0.5〜2mmの範囲である。しかし、粉末状合金材料38の粒径範囲(メッシュサイズ範囲)は0.02mm〜0.04mmとするか、または0.02〜0.08mmとするか、または、この範囲の一部の範囲とすることができる。このようにメッシュサイズ範囲が異なっていても、各材料がそれぞれ別個の層を構成する
図1の実施形態は良好に機能するが、
図2の実施形態では、粉末を混合して供給するのを容易にするため、また、溶融プロセス中のフラックスによるカバーを改善するためには、粉末状の合金材料38のメッシュサイズ範囲と粉末状のフラックス材料40のメッシュサイズ範囲とが重なるかまたは同一であることが有利である。
【0017】
図2の実施形態におけるエネルギービーム42は、一般的には方形の横断面形状を有するダイオードレーザビームであるが、他の公知の形式のエネルギービームを用いることも可能であり、たとえば電子ビーム、プラズマビーム、1つまたは複数の円形レーザビーム、走査レーザビーム(1次元走査、2次元走査または3次元走査)、集積レーザビーム等を用いることも可能である。方形の形状は、クラッド被覆する対象が比較的大面積である実施形態、たとえばガスタービンエンジンブレードの先端を修理する実施形態に特に有利である。ダイオードレーザにより生成されるこのような幅広い面積のビームは、溶接入熱、熱影響部、基材による希釈および残留応力を低減させるのを補助し、これらはいずれも、超合金修理に通常付随して生じる割れ現象を引き起こす傾向を低下させることができる。幅広い面積でのレーザ露光を実現するのに用いられる光学的条件および光学系機械設備は、以下のものを含むことができるが、これらに限定されない:
レーザビームの焦点はずし距離
焦点において方形のエネルギー源を生成するダイオードレーザの使用
焦点において方形のエネルギー源を生成するための、セグメントミラー等のインテグレート光学系の使用
1次元以上でのレーザビームの走査(ラスタ走査)
可変ビーム径(たとえば、微細加工作業を行う際には、焦点ビーム径は0.5mmであり、比較的微細でない作業を行う際には、焦点ビーム径は2.0mmにまで及ぶ)の集光光学系の使用
カスタム形状の溶着層を形成するため、光学系および/または基材の移動を、選択的レーザ溶融プロセスまたは選択的レーザ焼結プロセスと同様にプログラミングすることができる。上述のプロセスにより奏される、公知のレーザ溶融法やレーザ焼結法に対する利点には、以下のものが含まれる:
溶着速度が速く、各層処理中の溶着厚が厚いこと。
シールドが、不活性ガスを用いる必要なく高温の溶着金属全体に及ぶように改善されたこと。
フラックスにより、凝固割れの原因となる成分の溶着物の洗浄が強化されること。
フラックスによってレーザビーム吸収が増大し、処理装置へ戻る反射が最小限になること。
スラグ形成により溶着物が成形されて支持され、熱が保存されて冷却速度が緩慢になり、これにより、溶接後熱処理中にひずみ時効(再加熱)割れに寄与してしまう残留応力が低下すること。
フラックスにより成分損失が補償されるか、または合金成分が追加され、溶着が厚いことにより、部品形成全体にかかる総時間が大幅に短縮するので、粉末およびフラックスの事前配置または供給を効率的に、選択的に行うことが可能であること。
【0018】
また、
図2の実施形態には、ベース合金供給材料44(択一的に溶加材とも称される)を使用することも示されている。供給材料44は、ワイヤまたはストリップの形態とすることができ、このワイヤまたはストリップは、基材32に向かう方向に供給または振動され、エネルギービーム42によって溶融されて溶湯プールの一部となる。要望に応じて、レーザビームから得る必要がある総エネルギーを低減するため、供給材料を(たとえば電気的に)予熱することができる。中には、ワイヤ形状またはストリップ形状に成形するのが困難または不可能である超合金材料も存在するが、純粋なニッケルまたはニッケルクロムまたはニッケルクロムコバルト等の材料は、ワイヤ形状またはストリップ形状で容易に入手可能である。
図2の実施形態では、ベース合金供給材料44、粉末状合金材料38および粉末状フラックス材料40は好適には、クラッド材料層30が所望の超合金材料の組成を有するように選定される。溶加材とすることができるのは、所望の超合金材料を決定する元素組成の押出成形可能な元素サブセットのみであり、粉末状金属材料には、溶加材中の成分を補完して、所望の超合金材料を決定する元素組成を完成させる成分が含まれる。溶加材および粉末状金属材料は溶湯プール内において組み合わされて、所望の超合金材料30の修復した表面を形成する。
図1にて示しているように、当該処理により、クラッド形成材料層30を保護し、成形し、かつ熱絶縁するスラグ層46が生成される。
【0019】
図3に、
コールドメタルアーク溶接トーチ54を用いて超合金基材52上に超合金材料層50を溶着する実施形態を示す。トーチ54は、中空の金属シース57に粉末状コア材料59を充填したものを有する有芯ワイヤまたはストリップ材料の形態の溶加材56を供給して溶解するために用いられる。粉末状コア材料59は、粉末状の金属合金および/またはフラックス材料を含むことができる。好適には金属シース57は、中空形状に簡単に成形することが可能な材料から成り、たとえばニッケルまたはニッケルクロムまたはニッケルクロムコバルトから成り、粉末状材料59は、溶加材56が溶解したときに所望の超合金組成を形成するように選定される。たとえば、シース対粉末状コア材料のソリッド対ソリッド比を3:2の比に維持できるようにするため、前記シースは、所望の超合金組成を実現するのに十分なニッケル(またはコバルト)を含む。アークの熱が溶加材56を溶解して、スラグ層58が被覆された所望の超合金材料層50を形成する。粉末状フラックス材料を溶加材56中に含有させるか(たとえば、コア体積の25%)、または、粉末状フラックス材料を基材52の表面(図示していない、
図2参照)上に事前に配置しておくか、または基材52の表面上に溶着するか、または電極をフラックス材料によって被覆するか、またはこれら組み合わせることができる。粉末状補助金属材料を溶湯プール内に加えることもできる(図示していない、
図1および2参照)。これは基材52の表面上に事前に配置されるか、または、溶解ステップの間に、溶湯プール内に直接的に供給されることによって行われる。種々の実施形態において、フラックスを導電性(エレクトロスラグ)とするか、または非導電性(サブマージアーク)とすることができ、また、フラックスを化学的に中性またはアディティブとすることができる。上記にて説明したように、必要な処理エネルギーを低減するため、‐本実施例では、
コールドメタルアークトーチから得る必要がある処理エネルギーを低減するため、‐溶加材を予熱することができる。フラックスを使用することにより、シールドが実現され、これにより、
コールドメタルアークプロセスにて通常必要とされる不活性ガスまたは部分的に不活性のガスを使用する必要性を低減または無くすことができる。
【0020】
図4に示す実施形態では、溶加材66を溶解するためにレーザビーム64等のエネルギービームを用いて、超合金基材62上に超合金材料層60を溶着する。上記にて
図3を参照して既に説明したように、溶加材66は、中空形状に成形するのが容易である材料から構成された金属シース68を有し、当該材料はたとえばニッケルまたはニッケルクロムまたはニッケルクロムコバルト等であり、粉末状材料70は、溶加材66を前記レーザビーム64により溶解したときに所望の超合金組成が形成されるように選定される。前記粉末状材料70は、粉末状フラックスと合金成分との双方を含むことができる。レーザビーム64の熱が溶加材66を溶解して、スラグ層72が被覆された所望の超合金材料層60を形成する。上記のように、必要な処理エネルギーを低減するため、‐本実施例では、レーザビームから得る必要のある処理エネルギーを低減するため、‐溶加材を予熱することができる。
【0021】
1つの実施態様の溶加材56,66は、以下のように、合金247材料を溶着するように調合されている:
・シースソリッド体積は、総金属ソリッド体積の約60%であり、純粋なNiである。
・コア金属粉末体積は、総金属ソリッド体積の約40%であり、前記シースからの純粋ニッケルと共に溶解または混合したときに、公称で8.3重量%のCrと、10重量%のCoと、0.7重量%のMoと、10重量%のWと、5.5重量%のAlと、1重量%のTiと、3重量%のTaと、0.14重量%のCと、0.015重量%のBと、0.05重量%のZrと、1.5重量%のHfとの組成の合金247を生成するのに十分なCr,Co,Mo,W,Al,Ti,Ta,C,B,ZrおよびHfを含む。
・コアフラックス粉末体積は、大部分が非金属である追加的なワイヤ体積であり、アルミナ、フッ化物およびケイ酸塩を35:30:35の比で含む。当該ワイヤ体積のサイズは場合によっては、金属粉末体積のサイズと等しくすることができる。フラックスのメッシュサイズ範囲は、コア金属粉末内において均等に分布するようにされている。
【0022】
溶融熱をアークにより生成する実施形態では、アーク安定性を維持するために、フラックスまたはシールドガス中に酸素または二酸化炭素を含ませるのが通常である。しかし、溶融プロセス中に、酸素または二酸化炭素はチタンと反応して、チタンの一部は蒸気または酸化物となって失われてしまう。本発明により、チタンの損失を補填するため、被溶着超合金組成において所望のチタン量を超えるように、溶加材内に含まれるチタン量を調整することができる。たとえば上述の合金247の場合には、コア金属粉末に含まれるチタン量を1%から3%増加させることができる。
【0023】
他の合金、例えばステンレス鋼を、類似のプロセスによって溶着することが可能であるとの認識がなされる。ここでは、有芯供給材料に粉末状コア材料が充填される。この粉末状コア材料は、粉末状フラックスと、粉末状金属とを含んでいる。粉末状金属は、シース材料の組成を補うために用いられ、これによって、所望の化学的性質を有するクラッディング材料が得られる。溶解ステップの間の蒸発によって材料が損失してしまう実施形態の場合には、粉末状金属は、この損失を補填するために、損失材料を超過して含んでいる。例えば合金321ステンレス鋼シース材料が、酸素または二酸化炭素を含んでいるシールドガス下で溶着される場合には、酸素または二酸化炭素との反応によって、幾分かのチタンがこのシース材料から失われる。粉末状コア材料は、このような実施形態において、この損失を補填するために粉末状フラックスおよび粉末状チタンを含んでおり、これによって、所望の合金321クラッディング組成が得られる。
【0024】
超合金材料修理方法は、
・欠陥を除去するために、修理対象の超合金材料の表面を規定通りに研磨することにより前処理するステップと、
・前記表面を洗浄するステップと、
・その後、前記表面上に、フラックス材料を含む粉末材料の層を事前配置または供給するステップと、
・その後、スラグ層が浮かんでいる溶湯プールに、前記粉末と前記表面の上部層とを溶解するため、当該表面全体にわたってエネルギービームを移動させ、前記溶湯プールおよびスラグを凝固させるステップと
を有することができる。
前記溶解は、典型的には公知の機械的および/または化学的処理によってスラグを除去することにより、基材の前記表面におけるあらゆる素地欠陥を治癒して当該表面を修復状態にするという機能を有する。前記粉末状材料はフラックス材料のみとすることができ、または、超合金クラッド材料層を形成したい実施形態の場合には、前記溶解によって前記表面上に当該クラッド層を形成するように、当該粉末状材料は金属粉末を含むことができ、当該金属粉末は、粉末状フラックス材料層の下方に配置される別個の層とするか、または、当該粉末状フラックス材料と混合するか、または、フラックス材料と組み合わせて複合粒子とすることができる。このような溶解は、クラッド材料層を表面上に形成する。オプションとして、供給材料をストリップまたはワイヤの形態で溶湯プールに導入することができる。前記粉末状金属材料および供給材料(もし使用する場合)と、前記フラックス材料からの中性またはアディティブの任意の金属寄与分とが、溶湯プール中にて組み合わされて、所望の超合金材料の組成を有するクラッド層を生成する。幾つかの実施形態では、ニッケル、ニッケルクロム、ニッケルクロムコバルト、または、押出成形しやすい他の金属の供給材料を、適切な合金金属粉末と組み合わせることにより、前記クラッドにおいて所望の超合金組成を実現する。このことにより、所望の超合金材料をワイヤまたはストリップの形状に成形する問題を回避することができる。
【0025】
基材の予熱は、許容範囲の生成物を得るために必ず必要というわけではないが、たとえば、基材の延性を増加させるため、および/または、フィラーを溶融するために必要なビームエネルギーを削減するため、前記溶解ステップの前に超合金基材および/または供給材料および/または粉末に熱を加えることが望ましい実施形態もある。一部の超合金基材の延性の改善は、合金の融点の約80%を上回る温度で実現される。また、特定の用途では、オプションとしてチル固定具を用いることもできる。このことにより、エネルギービームの高精度の入熱と相俟って、溶解処理の結果として材料中に生成される応力を最低限に抑えることができる。本発明はさらに、不活性シールドガスを用いる必要を無くすこともできる。しかし、好適である場合には、一部の用途では補助シールドガスを用いることもできる。溶加材44を用いる場合、一部の実施形態ではこの溶加材44を予熱することができる。
【0026】
使用可能なフラックス材料は、販売名リンカーンウェルドP2007、Bohler Soudokay NiCrW‐412、ESAB OK10.16または10.90、スペシャルメタルNT100、エルリコンOP76、サンドヴィク50SWまたはSAS1で販売されているフラックス等の、市販のフラックスを含む。使用前にフラックス粒子を粉砕することにより、より小さな所望のメッシュサイズ範囲にすることができる。当該分野で既知のフラックス材料は典型的に、アルミナ、フッ化物および珪酸塩を含み得る。本願に開示されたプロセスの幾つかの実施形態は、有利には、所望のクラッディング材料の金属成分を含み得る。これは例えば酸化クロム、酸化ニッケルまたは酸化チタンである。本発明の方法により、上記の合金も含めて、たとえばガスタービンエンジン等の高温用途に慣用されている現在入手可能な任意の鉄、ニッケル基もしくはコバルト基の超合金を接合、修理またはコーティングすることができる。
【0027】
他の変形態様では、エネルギービームに代えて、またはエネルギービームと併用して、供給材料を介して溶解用の熱を生成することができる。たとえば、
図2のワイヤ状またはストリップ状の供給材料44に通電することにより、粉末層およびフラックスの下方にアークを生成することができる。その際には当該ワイヤは、押出成形された形態で容易に入手可能な材料(すなわち、超合金材料ではない材料)とし、前記粉末は、組み合わされた溶湯プール中にて所望の超合金組成を成すのに必要な他の合金成分を含む。これに代えて択一的に、たとえば、超合金クラッド材料層を形成するのに有効であるエレクトロスラグ溶接プロセスを行いやすくするように、前記粉末およびフラックスとして導電性のものを選定することができる。さらに他の実施形態では、従来のプラズマアーククラッド形成装置を用いて、フラックス粉末と超合金粉末材料とを混合したものを超合金基材へ供給することができる。その際にはオプションとして、チル固定具を用いることができる。種々の実施形態において、前記基材、供給材料および/または粉末を予熱することができる。入熱の精度は、電極を用いた場合よりも(±10〜15%)エネルギービームを用いた方が高くなるので(±1〜2%)、総入熱量の半分を上回る入熱量については、エネルギービームを用いるのが好適である。ビームのエネルギーにより、サブマージアーク処理またはエレクトロスラグ処理は、基材からの希釈化が最小限である予備的な溶湯プールを生じさせることができ、その後、基材に対して大きな影響を更に及ぼすことなく、サブマージアークまたはエレクトロスラグの寄与分が溶着体積に追加され、このことにより、希釈化現象を最小限にすることができる。
【0028】
他の実施形態では、サブマージアーク溶接フラックスと合金247粉末とを混合したものを、2.5mmから5.5mmまでの深さに事前配置した。すると、最終的な溶接後熱処理を行った後、当該混合物により、割れ無しのレーザクラッド溶着を実現することができた。0.6kWから最大2kWの出力レベルのイッテルビウムファイバレーザと、ガルバノメータ走査光学系とを併用することにより、125mm/minのオーダの進行速度で、3mmから10mmまでの幅の溶着物を形成した。溶着物の断面を染色浸透探傷試験および金属組織検査することにより、割れが存在しないことが確認された。合金247は、
図6にも示しているように、公知の合金の中で最も溶接しにくい合金に属するので、3重量%を上回るアルミニウム含有率の超合金も含めた全範囲の超合金組成において、本発明が動作可能であることを示すものであるといえる。
【0029】
超合金基材を修理する際に粉末状フラックス材料を用いることの利点は、アディティブのクラッド材料が溶着されているか否かで実現されるとの認識がなされている。超合金基材の表面割れは、粉末状フラックス材料により当該表面を覆い、その後、当該表面とフラックス材料とを加熱して、スラグ層が浮かんでいる溶湯プールを形成することにより修復することができる。スラグ層で保護しながら溶湯プールを凝固することにより、亀裂や汚染物が無い表面が形成される。
【0030】
一般的に方形のエネルギー密度を有するダイオードレーザを用いることにより、レーザエネルギーを表面積全体にわたって当てることができる。これに代えて択一的に、円形レーザビームを基材に沿って進行させるときに往復させてラスタ走査することにより、面状のエネルギー分布を生じさせることができる。
図5に、1つの実施形態のラスタ走査パターンを示しており、当該ラスタ走査パターンは、焦点径Dを有する、一般的に円形のビームを、第1の位置74から第2の位置74’へ移動させ、その後、第3の位置74”へ移動させ、以下同様のことを繰り返す、というものである。材料の最適な加熱および溶融を実現するために有利なのは、方向変化位置における前記ビーム径パターンのオーバーラップOの大きさをDの25〜90%の間とすることである。これに代えて択一的に、表面積全体において所望のエネルギー分布を実現するために、2つのエネルギービームを同時にラスタ走査させることもできる。その際には、各ビームパターンの重なりが、各ビームの径の25〜90%の範囲内となるようにする。
【0031】
粉末状材料を用いることにより、溶着される材料の組成が時間的かつ空間的に変化する、機能材料類に属する材料の溶着が容易になる、ということは高く評価されるだろう。例えば、製品の内壁から外壁に向かって、または製品内部から表面付近に向かって、合金組成を変えることも可能である。必要な機械的特性や耐食特性が異なる、想定される動作条件に応じて、また、材料コストも考慮して、合成組成を変化させることもできる。
【0032】
本発明の種々の実施形態を図示および説明したが、これらの実施形態は単なる一例であることは明らかであり、本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更および置換が可能である。したがって、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。