特許第6104423号(P6104423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104423
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】魚のうろこ取り器
(51)【国際特許分類】
   A22C 25/02 20060101AFI20170316BHJP
   A47J 43/28 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   A22C25/02
   A47J43/28
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-73947(P2016-73947)
(22)【出願日】2016年4月1日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3184855号
【原出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2016-127864(P2016-127864A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】313004377
【氏名又は名称】高川 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100128624
【弁理士】
【氏名又は名称】穂坂 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138483
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 晃一
(72)【発明者】
【氏名】高川 雄二
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−229220(JP,A)
【文献】 実開昭57−158387(JP,U)
【文献】 実開昭51−006099(JP,U)
【文献】 特開2007−330492(JP,A)
【文献】 特開2002−034440(JP,A)
【文献】 特開2005−169058(JP,A)
【文献】 特開昭58−220643(JP,A)
【文献】 実開昭56−162145(JP,U)
【文献】 米国特許第02338647(US,A)
【文献】 米国特許第03995902(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 25/02
A47J 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
うろこを取り除く作用部が、上方かつ後方に向けて角αで傾斜する傾斜面と、前方に向けて緩やかに膨らむ前方向カーブと下方に向けて緩やかに膨らむ下方向カーブとを成す底面とを備えるうろこ取り器であって、前記角αが20度から60度であり、前記作用部の先端が丸みを帯びていることを特徴とするうろこ取り器。
【請求項2】
把持部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のうろこ取り器。
【請求項3】
中空であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のうろこ取り器。
【請求項4】
後端が塞がっていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のうろこ取り器。
【請求項5】
前記下方向カーブが円筒形状の部材の側面のカーブを利用して得られることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のうろこ取り器。
【請求項6】
前記作用部の備える、上方かつ後方に向けて角αで傾斜する傾斜面と、前方に向けて緩やかに膨らむ前方向カーブと下方に向けて緩やかに膨らむ下方向カーブとを成す底面とが、中空の円筒形状部材を角αの傾斜を以て切り分けたことによって得られることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のうろこ取り器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は魚のうろこ取り器に関する。
【背景技術】
【0002】
うろこのある魚類の調理に際しては、うろこを取り除く必要がある。うろこ取り器においては、主に、小さな力で、取り残しなく、素早く、容易にうろこを取り除くことができること、および取ったうろこが飛び散らないことが求められる。また、うろこ取り器の構造は故障を避けるためにできる限り単純であることが望ましく、さらに、製造コストを安価に抑えるために、製造が容易であることが望ましい。
【0003】
従来より、様々なうろこ取り器が開発されてきた。特許文献1には、図6に示す通り、操作かん31の先端部に、掻取部材32を取り付けたうろこ取り器30が記載されている。うろこ取り器30では、矢印で示す方向にうろこを掻き取る。うろこ取り器30の掻取部材32は、所定の曲率を保持して湾曲形成され作用部33がうろこを掻き取る際の進行方向に突出している。また、掻取部材32は、側方から見て操作かんを取り付けた部位が作用部33よりも高くなるような傾斜を成している。
【0004】
特許文献2には、図7に示す通り、握持柄部43に本体41を取り付けたうろこ取り器40が記載されている。本体41は直径40〜150mmの円を底面とする円錐形であり、底面の縁と側面とが形成する刃の角度は30〜60度である。刃をこのような形状にすることにより、魚の鱗に対する抵抗を極小にしている。
【0005】
特許文献3には、図8に示す通り、刃51と柄53を備えるうろこ取り器50が記載されている。うろこ取り器50では、刃51の先端52は、わずかに丸みを帯びており、魚の皮や身を傷つけることがないようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−330492公報
【0007】
【特許文献2】特開2004−290046公報
【0008】
【特許文献3】実開平6−5483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のうろこ取り器よりも、いっそう効率の良いうろこ取り器、すなわち、小さな力で、取り残しなく、素早く、容易にうろこを取り除くことができるうろこ取り器であって、取ったうろこが飛び散らないうろこ取り器の開発が、常に望まれている。また、構造が単純で故障の少ないうろこ取り器、製造が容易で製造コストを安価にできるうろこ取り器の開発が、常に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
うろこを取り除く作用部が、上方かつ後方に向けて角αで傾斜する傾斜面と、前方に向けて緩やかに膨らむ前方向カーブと下方に向けて緩やかに膨らむ下方向カーブとを成す底面とを備えるうろこ取り器によって課題を解決する。
【0011】
うろこを取り除く作用部は、取り除く対象のうろこの下側に入り込む必要があるため、上方かつ後方に向けた傾斜角αと、前方に向けて緩やかに膨らむ前方向カーブと、下方に向けて緩やかに膨らむ下方向カーブを備えることが適している。
【0012】
従来のうろこ取り器には、上記特徴のうち、作用部が、上方かつ後方に向けて角αで傾斜する傾斜面を備えたもの(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3)、又は前方に向けて緩やかに膨らむ前方向カーブとを備えたもの(例えば特許文献1)はある。しかし、従来、下方に向けて緩やかに膨らむ下方向カーブをも備えたものは見当たらない。下方向カーブを備えることによって、作用部が、魚体を適度に押圧することができ、この結果作用部先端がうろこの下側にいっそうスムーズに入り込むことができる。
【0013】
また、作用部の底面が、前方に向けて緩やかに膨らむ前方向カーブと下方に向けて緩やかに膨らむ下方向カーブとを成すことにより、魚体と接する面積はより小さくなり、この結果、小さな力で取り残しなく素早くうろこを取り除くことができる。
【0014】
また、うろこは、魚の胴部、尾部、鰭と胴部の境界部、等、いずれにもついており、魚体の形状は様々な凹凸を成しているところ、うろこ取り器の作用部の底面の形状が前方向カーブと下方向カーブを成すことにより、そのような様々な凹凸に対応することが容易である。すなわち、魚体を載置し、うろこ取り器を握った後は、魚体を載置し直したり、うろこ取り器を持ち替えたりすることなく、魚体全体のうろこを取り除くことができる。すなわち、作業者の、力の方向や大きさを調節するのみで、魚体の凹部、凸部、のいずれに対しても、うろこ取り器を同一方向に擦り動かして、うろこを取り除くことができる。
【0015】
角αが大きすぎると、作用部の先端がうろこの下に入り込むことができない。また、角αが小さすぎると、うろこを取り除く方向、すなわちうろこを上方に導く方向の力が不充分でスムーズにうろこを取り除くことができない。角αは、そのような、大きすぎる場合の問題点、小さすぎる場合の問題点の、いずれも持たない大きさであることが必要である。
【0016】
角αが20度から60度である場合には、上記のような、角αが大きすぎる場合の問題点、小さすぎる場合の問題点の、いずれをも持たない。
【0017】
作用部の先端が丸みを帯びていることを特徴とするうろこ取り器によって課題を解決する。作用部の先端が丸みを帯びており尖っていないことにより、作用部の先端が魚体に突き刺さることがない。作用部の先端が魚体に突き刺さると、うろこ取り器を、魚体上でスムーズに移動させることができないため、そのようなことがないようにする必要がある。
【0018】
把持部材を備えることを特徴とするうろこ取り器によって課題を解決する。パイプ状材料の側面をそのまま把持部とせずに、例えば側面の上方に、掴みやすい把持用の部材を別途取り付けることによって、いっそう使いやすくなる。
【0019】
中空であることを特徴とするうろこ取り器によって課題を解決する。取り除かれたうろこは、うろこ取り器の上方の天井に相当する部位と、側方の壁に相当する部位に衝突して中空部分で落下し、中空部分の内部に留まる。ある程度うろこが溜まった後、
うろこをまとめて廃棄することができる。
【0020】
後端が塞がっていることを特徴とするうろこ取り器によって課題を解決する。後端が塞がっていることにより、中空部分の内部に溜まったうろこが後方から漏れ出るのを防ぐことができる。
【0021】
下方向カーブが円筒形状の部材の側面のカーブを利用して得られるうろこ取り器によって課題を解決する。本願に係るうろこ取り器では、下方向カーブを備えることが最も重要な特徴である。円筒形状の部材の側面は、全体がカーブして円を構成しているので、このような側面のカーブを利用することにより、下方向カーブを容易に得ることができる。
【0022】
作用部の備える、上方かつ後方に向けて角αで傾斜する傾斜面と、前方に向けて緩やかに膨らむ前方向カーブと下方に向けて緩やかに膨らむ下方向カーブとを成す底面とが、中空の円筒形状部材を角αの傾斜を以て切り分けたことによって得られることを特徴とするうろこ取り器によって課題を解決する。中空の円筒形状部材を角αの傾斜を以て切り分けることにより、「作用部の備える角αの傾斜と前方に向けて緩やかに膨らむ前記前方向カーブと下方に向けて緩やかに膨らむ前記下方向カーブとを備えた作用部」を容易に得ることができる。また、そのような作用部は一回切り分けることにより二つ得られる。中空の円筒形状部材を、手で掴むことができる大きさのものにし、さらに、うろこ取り器として扱いやすい大きさになるよう、後端を切り落とすことにより、容易にうろこ取り器が製造できる。
【0023】
これに適した中空の円筒形状部材としては、例えば適度な太さの竹がある。また、うろこ取り器は清潔さを保つ必要があるため、ステンレス素材やアルミ素材のパイプを利用するのも望ましい。これらの素材は、切り分けられて尖った先端に丸みを与えることも容易である。
【発明の効果】
【0024】
下方向カーブを備えたことによって、魚体に適度な押圧を加えながら、作用部先端がうろこの下側にスムーズに入り込むことができる。また、魚体の凹部、凸部、のいずれに対しても、同一方向に擦り動かすことによりうろこを取り除くことができる。この結果、小さな力で取り残しなく素早くうろこを取り除くことができる。作用部の先端が尖っておらず丸みを帯びていることにより、作用部の先端が魚体に突き刺さることがなく、うろこ取り器を、魚体上でスムーズに移動させることができる。
【0025】
中空であることにより、取り除かれたうろこは、中空部分の内部に留まり、ある程度溜まった後にまとめて廃棄ができる。さらに後端を例えば蓋上のものにより閉じることによって、中空部分の内部に溜まったうろこが後方から出ないようにすることができる。
【0026】
本願に係るうろこ取り器は構造が単純であるので、破損や故障が少ない。
【0027】
中空の円筒形状部材を角αの傾斜を以て切り分ける、というごく簡単な操作で、「うろこを取り除く作用部が、上方かつ後方に向けて角αで傾斜する傾斜面と、前方に向けて緩やかに膨らむ前方向カーブと下方に向けて緩やかに膨らむ下方向カーブとを成す底面とを備えるうろこ取り器」を二つ得られる。
【0028】
ステンレスやアルミ素材のパイプを原材料とすることにより、清潔さを容易に保つことができるうろこ取り器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本願に係るうろこ取り器の一例を示す。
図2】本願に係るうろこ取り器の一例の作用部の形状の例を示す。
図3】本願に係るうろこ取り器の一例の例を示す。
図4】本願に係るうろこ取り器の一例を用いてうろこを取る様子を示す。
図5】本願に係るうろこ取り器の一例を用いてうろこを取る様子を示す。
図6】従来のうろこ取り器を示す。
図7】従来のうろこ取り器を示す。
図8】従来のうろこ取り器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態例を図1図5に示す。図1に示す通り、うろこを取る際にうろこ取り器を魚体上で進行させる方向を前方、その反対方向を後方、うろこを取る際に魚体が位置する方向を下方、その反対方向を上方とする。前後方向軸及び上下方向軸のいずれとも直交する軸の、前方から見て右を右側、その反対側を左側とする(図2の(c))。
【0031】
図2の(a)に作用部13を右側から見た説明図、(b)に作用部13を上方から見た説明図、(c)に作用部13を前方から見た説明図を示す。
【0032】
図1及び図2を参照して、うろこ取り器10は、うろこの下側に入り込んでうろこを魚体から剥がす際に直接作用する作用部13を有する。作用部13は、傾斜面12を有する。傾斜面12は底面との関係で角α傾斜している。作用部13の底面は、前方に向けて緩やかに膨らむ前方向カーブ16と下方に向けて緩やかに膨らむ下方向カーブ17とを成している。
【0033】
うろこ取り器10の内部は空洞部14となっており、後端15は開放されている。うろこ取り器10の側面はパイプ状材料の側面がそのままうろこ取り器10の側面を構成しており、うろこを取る際に把持する把持部11として機能する。
【0034】
図3の(a)は、図1及び図2に示すうろこ取り器を側面から見た図である。先端18は角が削られ丸みを帯びている。
【0035】
図3の(b)は、作用部13の角αが約20度の場合のうろこ取り器を側面から見た図である。作用部13の角αが約20度といった小さいものである場合に、傾斜面12を一平面上の傾斜面にすると、把持のための部位を確保することができない。このため、作用部13の角αが小さい場合には、傾斜面12を一平面上のものとせずに、12’で示す別の平面上のものも設ける。これにより、側面に把持のための部位を確保できる。
【0036】
図4を参照して、うろこを取る際には、うろこ取り器10の作用部13の底面を魚体20に押し当て、魚体20の表面で矢印a、矢印b、矢印cの方向に滑り動かす。図5の(a)は図4の矢印aの方向にうろこを取る際の状態を前方から見た説明図である。同様に、図5の(b)、図5の(c)は、それぞれ、図4の矢印b、矢印cの方向にうろこを取る際の状態と対応している。
【0037】
矢印aの方向にうろこを取る際、うろこ取り器の左側には平坦な背びれがあり、左側には厚みのある胴体があるため、両者の境界部位は凹んでおりうろこが取りにくい。図6図7図8に示すような従来のうろこ取り器30、40または50によって、このような部位のうろこを取り残すことなく取ろうとする場合、うろこ取り器の刃を、前後方向に並ぶうろこの下側に入り込ませることが困難なため、うろこ取り器を擦り動かす方向を、例えば矢印dの方向に変更する必要があり、魚の向きや作業者の立ち位置を変更して作業する必要が生じる。
【0038】
しかし、うろこ取り器10によれば、下方向カーブ17が魚体を効率よく下方に押し下げ、作用部13の先端が前後方向に重なるうろこの間にスムーズに入り込む。このため、魚の向きや作業者の立ち位置を変更することなく、うろこを取り除くことができる。
【0039】
矢印cの方向にうろこを取る際には、うろこ取り器10の左側には厚みのある胴体があり、右側には平坦な胸鰭と腹鰭があるため、両者の境界部位は凹んでおり、矢印aの場合と同様の問題が生じる。
【0040】
矢印bの方向にうろこを取る際には、矢印bが滑らかに膨らむ魚の胴体のいわば尾根であるため、うろこ取りの作用部の先端が前後方向に重なるうろこの間に入り込ませるのは、やはり困難である。しかし、うろこ取り器10によれば、図5の(b)に示す通り、下方向カーブ17が、膨らんだ魚体を押し下げるため、作用部13の先端は、前後方向に重なるうろこの下側にスムーズに入り込む。
【符号の説明】
【0041】
10 うろこ取り器
11 把持部
12 傾斜面
13 作用部
14 空洞部
15 後端
16 前方向カーブ
17 下方向カーブ
18 作用部先端
20 魚体
30 うろこ取り器
31 操作かん
32 掻取部材
33 作用部
40 うろこ取り器
41 本体
42 作用部
43 握持柄部
50 うろこ取り器
51 刃
52 刃の先端
53 柄
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8