(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0018】
図1及び
図2に示されるように、分光器1Aは、CANパッケージの構成を有するパッケージ2と、パッケージ2内に収容された光学ユニット10Aと、複数のリードピン3と、を備えている。パッケージ2は、金属からなる矩形板状のステム4と、金属からなる直方体箱状のキャップ5と、を有している。ステム4とキャップ5とは、ステム4のフランジ部4aとキャップ5のフランジ部5aとが接触させられた状態で、気密に接合されている。一例として、ステム4とキャップ5との気密封止は、露点管理(例えば−55℃)がなされた窒素雰囲気中で行われる。これにより、湿度による樹脂部の劣化や、外気が下がった際における内部結露を防止し、高い信頼性を得ることができる。なお、パッケージ2の一辺の長さは、例えば10〜20mm程度である。
【0019】
キャップ5においてステム4と対向する壁部5bには、パッケージ2外からパッケージ2内に光L1を入射させる光入射部6が設けられている。光入射部6は、壁部5bに形成された断面円形状の光通過孔5cを覆うように円形板状或いは矩形板状の窓部材7が壁部5bの内側表面に気密に接合されることで、構成されている。なお、窓部材7は、例えば、石英、硼珪酸ガラス(BK7)、パイレックス(登録商標)ガラス、コバール等、光L1を透過させる材料からなる。赤外線に対してはシリコンやゲルマニウムも有効である。また、窓部材7には、AR(Anti Reflection)コートが施されていてもよい。更に、窓部材7は、所定波長の光のみを透過させるフィルタ機能を有していてもよい。
【0020】
各リードピン3は、ステム4の貫通孔4bに配置された状態で、ステム4を貫通している。各リードピン3は、例えばコバール金属にニッケルめっき(1〜10μm)と金めっき(0.1〜2μm)等を施した金属からなり、光入射部6とステム4とが対向する方向(以下、「Z軸方向」という)に延在している。各リードピン3は、電気的絶縁性及び遮光性を有する低融点ガラスからなるハーメティックシール部材を介して、貫通孔4bに固定されている。貫通孔4bは、矩形板状のステム4の長手方向(以下、「X軸方向」という)及びZ軸方向に垂直な方向(以下、「Y軸方向」という)において互いに対向する一対の側縁部のそれぞれに、X軸方向に沿って複数ずつ配置されている。
【0021】
光学ユニット10Aは、パッケージ2内においてステム4上に配置されている。光学ユニット10Aは、分光素子20と、光検出素子30と、支持体40と、を有している。分光素子20には、分光部21が設けられており、分光部21は、光入射部6からパッケージ2内に入射した光L1を分光すると共に反射する。光検出素子30は、分光部21によって分光されると共に反射された光L2を検出する。支持体40は、分光部21と光検出素子30との間に空間が形成されるように光検出素子30を支持している。
【0022】
分光素子20は、シリコン、プラスチック、セラミック、ガラス等からなる矩形板状の基板22を有している。基板22における光入射部6側の表面22aには、内面が曲面状の凹部23が形成されている。基板22の表面22aには、凹部23を覆うように成形層24が配置されている。成形層24は、凹部23の内面に沿って膜状に形成されており、Z軸方向から見た場合に円形状となっている。
【0023】
成形層24の所定領域には、鋸歯状断面のブレーズドグレーティング、矩形状断面のバイナリグレーティング、正弦波状断面のホログラフィックグレーティング等に対応するグレーティングパターン24aが形成されている。グレーティングパターン24aは、Z軸方向から見た場合にY軸方向に延在するグレーティング溝がX軸方向に沿って複数並設されたものである。このような成形層24は、成形材料(例えば、光硬化性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン、有機・無機ハイブリッド樹脂等のレプリカ用光学樹脂)に成形型を押し当て、その状態で、成形材料を硬化(光硬化や熱硬化)させることで、形成される。
【0024】
成形層24の表面には、グレーティングパターン24aを覆うように、Al、Au等の蒸着膜である反射膜25が形成されている。反射膜25は、グレーティングパターン24aの形状に沿って形成されており、この部分が、反射型グレーティングである分光部21となっている。以上のように、分光部21は、基板22上に設けられることで、分光素子20を構成している。
【0025】
光検出素子30は、シリコン等の半導体材料からなる矩形板状の基板32を有している。基板32には、Y軸方向に延在するスリット33が形成されている。スリット33は、光入射部6と分光部21との間に位置しており、光入射部6からパッケージ2内に入射した光L1を通過させる。なお、スリット33における光入射部6側の端部は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向において、光入射部6側に向かって末広がりとなっている。
【0026】
基板32における分光部21側の表面32aには、X軸方向に沿ってスリット33と並設されるように光検出部31が設けられている。光検出部31は、フォトダイオードアレイ、C−MOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等として構成されたものである。基板32の表面32aには、光検出部31に対して電気信号を入出力するための端子34が複数設けられている。
【0027】
支持体40は、Z軸方向においてステム4と対向するように配置されたベース壁部41と、X軸方向において互いに対向するように配置された一対の側壁部42と、Y軸方向において互いに対向するように配置された一対の側壁部43と、を含む中空構造体である。各側壁部42,43は、分光部21の側方からステム4に対して立設されるように配置されており、分光部21を包囲した状態でベース壁部41を支持している。
【0028】
ベース壁部41には、光検出素子30が固定されている。光検出素子30は、基板32における分光部21と反対側の表面32bがベース壁部41の内側表面41aに接着されることで、ベース壁部41に固定されている。つまり、光検出素子30は、ベース壁部41に対してステム4側に配置されている。
【0029】
ベース壁部41には、中空構造体である支持体40の内側の空間と外側の空間とを連通する光通過孔(光通過部)46が形成されている。光通過孔46は、光入射部6と基板32のスリット33との間に位置しており、光入射部6からパッケージ2内に入射した光L1を通過させる。なお、光通過孔46は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向において、光入射部6側に向かって末広がりとなっている。Z軸方向から見た場合に、光入射部6の光通過孔5cは、光通過孔46の全体を含んでおり、光通過孔46は、スリット33の全体を含んでいる。
【0030】
各側壁部42におけるステム4側の端部には、底面44a及び側面44bを有する切欠き部44が形成されている。各側壁部43におけるステム4側の端部には、底面45a及び側面45bを有する切欠き部45が形成されている。切欠き部44の底面44aと切欠き部45の底面45aとは、側壁部42,43よって画定される開口部に沿って連続している。同様に、切欠き部44の側面44bと切欠き部45の側面45bとは、当該開口部に沿って連続している。この連続する切欠き部44,45には、分光素子20の基板22の外縁部が嵌められている。
【0031】
図2及び
図3に示されるように、光学ユニット10Aは、支持体40から突出する突出部11を更に有している。突出部11は、ステム4から離間する位置に配置されている。突出部11は、各側壁部43におけるステム4と反対側の端部から、分光部21と反対側(すなわち、中空構造体である支持体40の外側)に突出しており、各側壁部43の当該端部に沿ってX軸方向に延在している。なお、光学ユニット10Aでは、ベース壁部41の外側表面41b、及び突出部11におけるステム4と反対側の表面11aが略面一となっている。
【0032】
図1及び
図2に示されるように、光学ユニット10Aにおいては、分光素子20の基板22におけるステム4側の表面22b、各側壁部42におけるステム4側の端面42a、及び各側壁部43におけるステム4側の端面43aが略面一となっている。この状態で、基板22の表面22b、各側壁部42の端面42a、及び各側壁部43の端面43aがステム4の内側表面4cに接着され、これにより、分光素子20及び支持体40がステム4上に固定されている。
【0033】
図4に示されるように、光学ユニット10Aは、支持体40に設けられた配線12を更に有している。配線12は、複数の第1端子部12aと、複数の第2端子部12bと、複数の接続部12c、とを含んでいる。各第1端子部12aは、ベース壁部41の内側表面41aに配置されており、支持体40の内側の空間に露出している。各第2端子部12bは、突出部11の表面11aに配置されており、支持体40の外側且つパッケージ2の内側の空間に露出している。各接続部12cは、対応する第1端子部12aと第2端子部12bとを接続しており、支持体40内に埋設されている。
【0034】
なお、配線12は、一体的に形成されたベース壁部41、側壁部42,43及び突出部11に設けられることで、成形回路部品(MID:Molded Interconnect Device)を構成している。この場合、ベース壁部41、側壁部42,43及び突出部11は、AlN、Al2O3等のセラミック、LCP、PPA、エポキシ等の樹脂、成形用ガラスといった成形材料からなる。
【0035】
配線12の各第1端子部12aには、ベース壁部41に固定された光検出素子30の各端子34が電気的に接続されている。対応する光検出素子30の端子34と配線12の第1端子部12aとは、ワイヤ8を用いたワイヤボンディングによって電気的に接続されている。
【0036】
図2及び
図3に示されるように、配線12の各第2端子部12bには、ステム4を貫通する各リードピン3が電気的に接続されている。各リードピン3には、フランジ状のストッパ3aが設けられている。各リードピン3は、ステム4から離間する位置に配置された突出部11まで延在し、ストッパ3aがステム4側から突出部11に接触した状態(すなわち、ストッパ3aが突出部11におけるステム4側の表面11bに接触した状態)で、突出部11の貫通孔11cに挿通されている。各第2端子部12bは、突出部11の表面11aにおいて貫通孔11cを包囲している。この状態で、対応するリードピン3と配線12の第2端子部12bとは、導電性樹脂或いは半田、金ワイヤ等によって電気的に接続されている。なお、リードピン3の中には、ステム4の貫通孔4b及び突出部11の貫通孔11cに固定されているだけで、配線12に電気的に接続されていないものもある。
【0037】
以上のように構成された分光器1Aにおいては、
図1に示されるように、光L1は、パッケージ2の光入射部6からパッケージ2内に入射し、ベース壁部41の光通過孔46及び光検出素子30のスリット33を順次通過して、支持体40の内側の空間に入射する。支持体40の内側の空間に入射した光L1は、分光素子20の分光部21に到達し、分光部21によって分光されると共に反射される。分光部21によって分光されると共に反射された光L2は、光検出素子30の光検出部31に到達し、光検出素子30によって検出される。このとき、光検出素子30の光検出部31に対する電気信号の入出力は、光検出素子30の端子34、ワイヤ8、配線12及びリードピン3を介して行われる。
【0038】
次に、分光器1Aの製造方法について説明する。まず、一体的に形成されたベース壁部41、側壁部42,43及び突出部11に配線12が設けられた成形回路部品を準備する。そして、
図4に示されるように、支持体40のベース壁部41の内側表面41aに設けられたアライメントマーク47を基準として、内側表面41aに光検出素子30を接着する。続いて、対応する光検出素子30の端子34と配線12の第1端子部12aとを、ワイヤ8を用いたワイヤボンディングによって電気的に接続する。続いて、支持体40の側壁部42の端面42aに設けられたアライメントマーク48を基準として、側壁部42,43の切欠き部44,45に分光素子20を接着する。
【0039】
このように製造された光学ユニット10Aでは、分光部21と光検出部31とは、アライメントマーク47,48を基準とした実装によって、X軸方向及びY軸方向において精度良く位置決めされている。また、分光部21と光検出部31とは、切欠き部44,45の底面44a,45aとベース壁部41の内側表面41aとの高低差によって、Z軸方向において精度良く位置決めされている。ここで、光検出素子30では、その製造時においてスリット33と光検出部31とが精度良く位置決めされている。したがって、光学ユニット10Aは、スリット33、分光部21及び光検出部31が相互に精度良く位置決めされたものとなっている。
【0040】
続いて、
図2及び
図3に示されるように、貫通孔4bにリードピン3が固定されたステム4を準備し、光学ユニット10Aの突出部11の貫通孔11cにリードピン3を挿通させつつ、ステム4の内側表面4cに光学ユニット10Aを接着する。続いて、対応するリードピン3と配線12の第2端子部12bとを、導電性樹脂或いは半田、金ワイヤ等によって電気的に接続する。続いて、
図1及び
図2に示されるように、光入射部6が設けられたキャップ5を準備し、ステム4とキャップ5とを気密に接合する。以上により、分光器1Aが製造される。
【0041】
次に、分光器1Aによって奏される効果について説明する。まず、分光器1Aでは、光検出素子30を支持する支持体40から突出する突出部11に、光検出素子30と電気的に接続された配線12の第2端子部12bが配置されており、この突出部11において、リードピン3と配線12との電気的な接続が実現されている。これにより、リードピン3と配線12との電気的な接続が確実化される。加えて、パッケージ2の外側においてリードピン3に何らかの外力が作用しても、リードピン3がステム4を貫通しているので、突出部11におけるリードピン3と配線12との電気的な接続個所に外力が及び難くなる。更に、光検出素子30を支持する支持体40から突出する突出部11が、ステム4から離間する位置に配置されており、この突出部11に、リードピン3が挿通されて嵌められている。これにより、リードピン3が支えとなってその分だけ更に支持体40が歪み難くなり、支持体40がステム4上に固定されていることと相俟って、ステム4に対する支持体40の安定性が向上し、分光素子20の分光部21と光検出素子30の光検出部31との位置関係に狂いが生じ難くなる。加えて、突出部11にリードピン3が挿通されて嵌められることで、パッケージ2に対して光学ユニット10Aが位置決めされることになる。以上により、分光器1Aによれば、光検出素子30と外部配線との電気的な接続の確実化、及び分光素子20の分光部21と光検出素子30の光検出部31との位置関係の安定化の両立を図ることができる。
【0042】
また、ステム4から離間する位置に突出部11が配置されていることで各リードピン3が長くなるため、複数のリードピン3の相互間の位置関係にばらつきが生じても、突出部11の各貫通孔11cにリードピン3を容易に挿通させることができる。更に、リードピン3の挿通後も、光学ユニット10Aをステム4に対してX軸方向及びY軸方向に移動させ易いため、パッケージ2に対して光学ユニット10Aをより精度良く位置決めすることができる。
【0043】
また、リードピン3を貫通孔4bに固定するためのハーメティックシール部材がステム4の内側表面4c上に盛り上がっても、盛り上がったハーメティックシール部材に突出部11が干渉することが避けられるため、支持体40に浮き等を生じさせることなく、支持体40をステム4の内側表面4c上に確実に固定することができる。
【0044】
また、各側壁部43とキャップ5との間の空間が、突出部11によって、ベース壁部41の光通過孔46と遮断されるので、当該空間における光の反射等に起因して迷光が発生するのを抑制することができる。
【0045】
また、分光器1Aでは、ストッパ3aがステム4側から突出部11に接触した状態で、リードピン3が突出部11に挿通されている。これにより、リードピン3を第2端子部12bに電気的に接続する際に、導電性樹脂や半田等がリードピン3を伝ってステム4側に流れるのを防止することができる。
【0046】
また、分光器1Aでは、配線12が、一体的に形成されたベース壁部41、側壁部42,43及び突出部11に設けられることで、成形回路部品を構成している。これにより、ベース壁部41、側壁部42,43及び突出部11の相互間の位置関係の安定化を図りつつ、配線12を適切に取り回すことができる。
【0047】
また、分光器1Aでは、支持体40が、ベース壁部41と、一対の側壁部42と、一対の側壁部43と、を含む中空構造体であり、突出部11が、側壁部43のそれぞれから分光部21と反対側に突出している。これにより、支持体40の構成の単純化を図ることができる。
【0048】
また、分光器1Aでは、中空構造体である支持体40のベース壁部41に、光入射部6からパッケージ2内に入射した光L1を通過させる光通過孔46が形成されている。これにより、不要な光が分光部21に入射するのを抑制することができる。また、分光器1Aでは、中空構造体である支持体40のベース壁部41に対してステム4側に、光検出素子30が配置されている。これにより、不要な光が光検出素子30の光検出部31に入射するのを抑制することができる。支持体40内への不要な光の進入を防止したり、支持体40内における迷光の発生を抑制したりするために、支持体40を光吸収性の材料で形成したり、或いは、支持体40の外側表面や内側表面、分光素子20の基板22の表面22aに光吸収性の膜を形成したりしてもよい。
【0049】
また、分光器1Aでは、分光部21が、基板22上に設けられることで、分光素子20を構成している。これにより、パッケージ2内における分光部21の配置の自由度を向上させることができる。
【0050】
また、分光器1Aでは、分光素子20がステム4上に固定されている。これにより、ステム4を介した熱の授受によって、分光部21の温度を制御することができる。したがって、温度変化に起因する分光部21の変形(例えば、グレーティングピッチの変化等)を抑制し、波長シフト等を低減することが可能となる。
【0051】
また、分光器1Aは、光入射部6から分光部21に至る光L1の光路、及び分光部21から光検出部31に至る光L2の光路が空間に形成されていることから、小型化に有利である。その理由について、光L1,L2の光路が空間に形成されている場合(以下、「空間光路の場合」という)と、光L1,L2の光路がガラス中に形成されている場合(以下、「ガラス光路の場合」という)とを比較して説明する。ガラスの屈折率は、空間の屈折率よりも大きい。そのため、入射NAが同じであれば、ガラス光路の場合における光の広がり角は、空間光路の場合における光の広がり角よりも小さくなる。また、分光部21のグレーティングピッチが同じであれば、ガラス光路の場合における光の回折角は、空間光路の場合における光の回折角よりも小さくなる。
【0052】
分光器1Aを小型化するには、光入射部6と分光部21との距離、及び分光部21と光検出部31との距離を小さくする必要がある。そして、分光部21と光検出部31との距離が小さくなると、光検出部31に対する分光部21の集光距離が小さくなることから、分光部21の曲率半径を小さくする必要がある。更に、分光部21の曲率半径が小さくなると、広がりを有する光が分光部21に入射する角度の関係で、分光部21での光の回折角を大きくする必要がある。また、光入射部6と分光部21との距離を小さくした場合でも、分光部21に照射される光の面積を十分に確保する必要がある。
【0053】
ここで、上述したように、入射NAが同じであれば、ガラス光路の場合における光の広がり角は、空間光路の場合における光の広がり角よりも小さくなる。また、分光部21のグレーティングピッチが同じであれば、ガラス光路の場合における光の回折角は、空間光路の場合における光の回折角よりも小さくなる。したがって、分光部21での光の回折角を大きくする必要があり、また、分光部21に照射される光の面積を十分に確保する必要がある分光器1Aの小型化には、ガラス光路の場合よりも空間光路の場合のほうが有利である。
【0054】
次に、上述した分光器1Aの変形例について説明する。
図5に示されるように、支持体40は、分光素子20上に固定されていてもよい。すなわち、支持体40には、切欠き部44,45が形成されておらず、支持体40は、各側壁部42の端面42a及び各側壁部43の端面43aが分光素子20の基板22の表面22aに接着されることで、分光素子20上に固定されている。このような構成によっても、光検出素子30と外部配線との電気的な接続の確実化、及び分光素子20の分光部21と光検出素子30の光検出部31との位置関係の安定化の両立を図ることができる。
[第2実施形態]
【0055】
図6に示されるように、分光器1Bは、突出部11が各側壁部43の中間部(ステム4側の端部と、ステム4と反対側の端部との間の部分)に配置されている点で、上述した分光器1Aと主に相違している。分光器1Bの光学ユニット10Bにおいては、突出部11は、各側壁部43の中間部から分光部21と反対側(すなわち、中空構造体である支持体40の外側)に突出している。各リードピン3は、突出部11の貫通孔11cに挿通されて嵌められており、突出部11の表面11aに配置された配線12の第2端子部12bに導電性樹脂或いは半田等によって電気的に接続されている。
【0056】
以上のように構成された分光器1Bによれば、上述した分光器1Aと共通の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、突出部11が側壁部43の補強部材として機能し、中空構造体である支持体40の強度を向上させることができる。
【0057】
また、
図7に示されるように、支持体40が分光素子20上に固定されている場合において、突出部11が各側壁部43におけるステム4側の端部に配置されていてもよい。このような構成によれば、支持体40と分光素子20との接着を確実化することができる。更に、各リードピン3が短くなる分、分光器1Bの製造時において、リードピン3の曲がり等を防止することができる。
[第3実施形態]
【0058】
図8に示されるように、分光器1Cは、支持体40に対向部13が設けられている点で、上述した分光器1Aと主に相違している。分光器1Cの光学ユニット10Cにおいては、各側壁部43の中間部から分光部21と反対側(すなわち、中空構造体である支持体40の外側)に、対向部13が突出しており、各対向部13は、突出部11と同様にX軸方向に延在している。つまり、対向部13は、ステム4側において、突出部11と対向している。各リードピン3は、Z軸方向において対向する対向部13及び突出部11に挿通されており、この状態で、突出部11において配線12の第2端子部12bに電気的に接続されている。なお、対向部13、突出部11の順にリードピン3を挿通させる必要があるため、リードピン3には、スットパ3aが設けられていない。
【0059】
以上のように構成された分光器1Cによれば、上述した分光器1Aと共通の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、対向部13が側壁部43の補強部材として機能し、中空構造体である支持体40の強度を向上させることができる。
【0060】
また、
図9に示されるように、支持体40が分光素子20上に固定されており、突出部11が各側壁部43におけるステム4側の端部に配置されている場合において、各側壁部43のステム4と反対側の端部から、分光部21と反対側に、対向部13が突出しており、各対向部13が当該端部に沿ってX軸方向に延在していてもよい。つまり、対向部13が、ステム4と反対側において、突出部11と対向していてもよい。この場合、各リードピン3は、配線12の第2端子部12bとの電気的な接続のために突出部11に挿通されることは必須であるが、対向部13には挿通されてもよいし、挿通されなくてもよい。このような構成によっても、対向部13が側壁部43の補強部材として機能し、中空構造体である支持体40の強度を向上させることができる。更に、各側壁部43とキャップ5との間の空間が、対向部13によって、ベース壁部41の光通過孔46と遮断されるので、当該空間における光の反射等に起因して迷光が発生するのを抑制することができる。
【0061】
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、分光器1A,1B,1Cでは、リードピン3が、突出部11に挿通された状態で、配線12の第2端子部12bに電気的に接続されていたが、その形態に限定されない。一例として、ステム4側に開口するように突出部11に凹部を形成し、当該凹部にリードピン3の端部を嵌めてもよい。その場合には、当該凹部の内面に第2端子部12bを露出させ、当該凹部内においてリードピン3と第2端子部12bとを電気的に接続すればよい。このような構成によっても、リードピン3と第2端子部12bとの電気的な接続、及びパッケージ2に対する光学ユニット10A,10B,10Cの位置決めを、確実に且つ容易に実現することができる。
【0062】
また、
図10に示されるように、外側(すなわち、支持体40と反対側)に開口するように突出部11に切欠き部11dを形成し、当該切欠き部11dにリードピン3の端部を嵌めてもよい。その場合には、切欠き部11dごとに突出部11の表面11aに第2端子部12bを配置し、各第2端子部12bを支持体40の外側且つパッケージ2の内側の空間に露出させる。そして、各切欠き部11dに嵌められたリードピン3の端部と、各切欠き部11dに対応する第2端子部12bとを、導電性樹脂或いは半田、金ワイヤ等によって電気的に接続する。このような構成によっても、リードピン3と第2端子部12bとの電気的な接続、及びパッケージ2に対する光学ユニット10Aの位置決めを、確実に且つ容易に実現することができる。しかも、複数のリードピン3を複数の貫通孔11cに挿通させる必要がないので、光学ユニット10Aをステム4上に容易に実装することができる。更に、特殊な実装装置も不要となり、リードピン3が曲がるなどのエラーを避けられるため、分光器1Aの製造歩留りも向上する。特に、リードピン3にストッパ3aが設けられている場合には、外側に開口した切欠き部11dから導電性樹脂や半田が流れ出すことが防止されるため、本構造は有効である。
【0063】
また、突出部11は、支持体40の側壁部42,43のうちのいずれか一つに設けられていればよい。隣り合う側壁部42及び側壁部43に渡って突出部11を設ければ、支持体40が歪むのを効果的に抑制することができる。また、ワイヤ8を用いたワイヤボンディングを実施する際に、支持体40とワイヤボンディング装置のツールとの干渉を避けるために、側壁部42,43の一部等、支持体40の一部を切り欠いてもよい。また、ベース壁部41、側壁部42,43及び突出部11は、それぞれ別体として準備され、組み立てられるものであってもよい。
【0064】
また、光検出素子30において、基板32の表面32bに端子34を形成してもよい。その場合には、Au或いは半田等のバンプを用いたフリップチップボンディングによって、端子34と配線12の第1端子部12aとの電気的な接続、及び光検出素子30のベース壁部41への固定を実現することができる。また、基板32にスリット33を形成せず、ベース壁部41の光通過孔46を覆わないように光検出素子30をベース壁部41に固定してもよい。その場合には、スリットチップ(例えば、シリコンからなる本体にスリットを形成したものや、スリット状の開口を有する光吸収性の膜を光透過性の本体の表面に形成したもの等)をベース壁部41に取り付けてもよい。スリットチップを嵌める凹部をベース壁部41に形成すれば、スリットチップ、分光素子20の分光部21及び光検出素子30の光検出部31を相互に精度良く位置決めすることができる。
【0065】
また、本発明の分光器の光学ユニットにおいては、分光部が設けられた分光素子が、支持体と接触していなくてもよい。一例として、分光部21が設けられた分光素子20の基板22が、間隙を介して支持体40の側壁部42,43に包囲されていてもよい。また、配線12の第2端子部12bは、突出部11の表面11aに限定されず、突出部11の表面11b、或いは突出部11の貫通孔11cや切欠き部11dの内面に形成されていてもよい。それらの場合にも、突出部11がステム4から離間しているため、第2端子部12bとステム4とのショートが防止される。
【0066】
また、分光素子20は、ステム4から離間した状態で、支持体40によって支持されていてもよい。すなわち、側壁部42,43の切欠き部44,45に分光素子20が配置された状態で、略面一となっている各側壁部42の端面42a、及び各側壁部43の端面43aよりも、分光素子20の基板22の表面22bが、中空構造である支持体40の内側(すなわち、ステム4と反対側)に位置していてもよい。このような構成によれば、ステム4の内側表面4cと分光素子20の基板22の表面22bとの間に空間が形成されることになる。そのため、ステム4を介して外部から分光部21に熱の影響が及ぶのを抑制することができる。したがって、温度変化に起因する分光部21の変形(例えば、グレーティングピッチの変化等)を抑制し、波長シフト等を低減することが可能となる。この構成は、ステム4を介した熱の授受による分光部21の温度の制御(上述した分光器1A)を行わない場合に有効である。
【0067】
また、リードピン3に設けられたストッパ3aの形状は、フランジ状に限定されない。更に、必ずしもリードピン3にストッパ3aが設けられていなくてもよい。また、光通過孔46に対して光検出部31と反対側に、分光部21で発生した0次光をカットするための構成(例えば、光吸収性の材料からなり、入射した0次光を光L1,L2の光路と反対側に反射し得る面を有するもの等)を配置してもよい。当該構成については、ベース壁部41に一体的に形成しても、或いは、別体として準備してベース壁部41に固定してもよい。以上のように、分光器1A〜1Dの各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を適用することができる。
【解決手段】分光器1Aは、ステム4及びキャップ5を有するパッケージ2と、ステム4上に配置された光学ユニット10Aと、ステム4を貫通する複数のリードピン3と、を備える。光学ユニット10Aは、キャップ5の光入射部6から入射した光を分光すると共に反射する分光部21と、分光部21によって分光されると共に反射された光を検出する光検出素子30と、分光部21との間に空間が形成されるように光検出素子30を支持する支持体40と、支持体40から突出する突出部11と、支持体40に設けられ、光検出素子30と電気的に接続された配線12と、を有する。突出部11は、ステム4から離間する位置に配置され、リードピン3は、突出部11に嵌められて、配線12に電気的に接続されている。