【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、スワラが溶損するメカニズムを鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。一例として油燃料を用いた場合におけるスワラの溶損メカニズムについて、
図10〜
図12を参照して説明する。なお、
図10はスワラに燃料が付着した状態を示す燃焼バーナの正面図で、
図11は従来の燃焼バーナにおける空気流れを説明する断面図で、
図12は従来のスワラ近傍の空気流れを説明する斜視図である。
【0010】
スワラ88は空気に旋回をかけて燃焼空間100に旋回流92を形成するが、旋回流92から一部の空気流れが剥離し、この剥離した空気流れによってスワラ88側へ向かう逆流94が発生する。燃料供給ノズル82から噴霧される噴霧油滴のうち微粒子がこの逆流94に搬送されて巻き戻り、スワラ88に衝突し付着する。付着した油は火炎の輻射熱で加熱されて、
図10に示すように残留炭素90が主にスワラ88の内周側に固着する。この残留炭素90が堆積し、隣り合うスワラ88の羽根88aの間を塞いで火炎を引き付け、付着油が加熱されてスワラ88の溶損に至る。
さらに本発明者らは、旋回流92からの空気流れの剥離が発生する原因を探求した結果、スワラ88の各羽根88aの端面及び燃料供給ノズル(内管)82の端面に負圧領域95が形成されることが主な原因であることを見出した。すなわち、この負圧領域95によって旋回流92から空気流れが剥離し、スワラ88の羽根88aの基部(内管側)へ強い逆流94が発生することとなる。そしてこの逆流94の存在によって、上記したメカニズムによりスワラ88が溶損する。
【0011】
そこで、幾つかの実施形態に係る燃焼バーナは、燃料と空気とを噴射してボイラ火炉の燃焼空間に火炎を形成するボイラ用燃焼バーナであって、前記燃料を供給する燃料供給路が内周側に形成された内筒と、前記内筒を囲むように配置され、該内筒との間に空気供給路を形成する外筒と、前記空気供給路に設けられ、該空気供給路を通る前記空気に旋回をかけるスワラとを備え、前記スワラは、前記空気供給路の空気供給側から前記燃焼空間側に向けて延在し、前記内筒と前記外筒との間に放射状に複数設けられた羽根を有し、前記羽根の少なくとも前記内筒側にて、バーナ軸方向において前記羽根の厚さが異なる部位が存在し、前記燃焼空間側の端部の前記羽根の厚さが該羽根の最大肉厚部の厚さより薄いことを特徴とする。なお、羽根の最大肉厚部とは、羽根の空気供給側端部から燃焼空間側端部までの間で最も肉厚が厚い部位をいう。
【0012】
上記燃焼バーナでは、スワラの羽根の燃焼空間側端部の厚さが該羽根の最大肉厚部の厚さより薄くなるように形成されているので、羽根の燃焼空間側端面に形成される負圧領域を小さくすることができる。そのため、負圧領域によって生じる旋回流の剥離を抑制でき、剥離した流れがスワラ側へ向かう逆流の発生を抑制できる。そして、スワラへの燃料の付着を低減できるので、スワラの溶損を防止でき、スワラの保炎機能を長期間維持することが可能となる。
また、上述したように旋回流の剥離に基づく空気流れの逆流は主に内筒側で発生するので、少なくとも内筒側における羽根の厚さを最大肉厚部より薄くすることによって、スワラへの燃料の付着を確実に防止できる。なお、内筒側のみでなく、内筒側から外筒側まで羽根の薄い部分を設けてもよいことは勿論である。
さらに、燃料が付着しやすい羽根の燃焼空間側端部の厚さを薄くして付着面積を小さくしているので、羽根端面での剥離を起点にした逆流で羽根へ巻き戻る燃料があっても、スワラへの燃料の付着量をより一層低減することが可能である。
【0013】
少なくとも一実施形態において、前記羽根は、少なくとも前記内筒側の側面に、前記燃焼空間側の端部に向けて厚さが薄くなるように傾斜した傾斜部が設けられていてもよい。なお、傾斜部は、羽根の側面のうち少なくとも一方の側面に設けられる。
このように、羽根の側面に傾斜部を設けて羽根の燃焼空間側端部を薄くするようにしたので、スワラの羽根と羽根の間の空気流れを妨げることなく円滑に旋回流を形成することが可能である。
【0014】
この場合、前記羽根の両側面にそれぞれ前記傾斜部が設けられ、これら2つの前記傾斜部によって前記燃焼空間側の端部がテーパ形状に形成されていてもよい。
通常、スワラは、ボイラ火炉で適切な保炎を行うために、吹き出す空気を適切な角度で旋回するよう設計されている。羽根の燃焼空間側端部を薄くするために傾斜部を設けようとすると、吹き出す空気の角度が適切な角度範囲から外れてしまう可能性がある。そこで、羽根の両側面に傾斜部を設けることによって一つの傾斜部の角度を小さくすることができ、吹き出す空気の角度を適正な角度範囲内に設定し易くなる。すなわち、スワラから吹き出す空気の角度に対して傾斜部が与える影響を最小限とすることができる。また、一つの傾斜部の角度を小さくすることができることから、テーパ開始位置で空気流れが剥離してしまう可能性も回避できる。
【0015】
少なくとも一実施形態において上記燃焼バーナは、前記バーナの軸方向に対して傾斜して前記羽根が取り付けられており、前記羽根は、前記空気供給側に曲率中心を有するように該空気供給側が屈曲した屈曲領域と、前記燃焼空間側が直線状に形成された直線領域とを有し、前記傾斜部は前記直線領域に形成されていてもよい。
このように、羽根が、空気供給側である上流側(空気流れ方向)に屈曲領域を有し、燃焼空間側である下流側に直線領域を有することによって、羽根と羽根の間に導入された空気流れが屈曲領域で円滑に方向を変え、その後直線領域で整流化されるので、効果的に旋回流を形成することが可能となる。また、傾斜部が直線領域に形成されるようにしたので、屈曲領域に形成される場合に比べて傾斜部の加工精度(例えば角度等)を向上させることが可能である。
【0016】
この場合、前記傾斜部は、前記直線領域の羽根側面に対して5〜10°の範囲で傾斜していてもよい。
これにより、旋回流の剥離を防ぐとともに、空気流れが傾斜部で剥離してしまうことを防止できる。すなわち、傾斜部の勾配値が5°未満である場合、羽根の燃焼空間側端部を十分に薄くすることが難しく、旋回流の剥離が発生してしまう。一方、傾斜部の勾配値が10°を超える場合、空気流れが傾斜部で剥離してしまう可能性がある。
【0017】
少なくとも一実施形態において、前記羽根は、前記燃焼空間側の端部に機械的強度が確保される厚さの端面を有していてもよい。
なお、「機械的強度が確保される厚さ」とは、ボイラ火炉からの熱や空気流れに晒されても長期間破損せずに保持される厚さをいう。
このように、羽根の燃焼空間側端部が端面で形成されることによって、スワラの耐久性を向上させることができる。また、羽根の燃焼空間側端部が端面である方が加工上有利であり、且つ腐食に対する耐久性も向上する。
【0018】
少なくとも一実施形態において、前記羽根は、少なくとも前記内筒側にて前記燃焼空間に面する部位が、前記バーナの軸方向に切り欠かれた切欠部を含んでいてもよい。
このように、羽根の少なくとも内筒側に切欠部を設けることによって、羽根端面での剥離を起点にした逆流で羽根へ巻き戻る燃料があっても、切欠部によって羽根への燃料の付着を抑制することが可能である。
【0019】
この場合、複数の前記羽根が前記バーナの軸方向に対して同一方向に傾斜するとともに前記バーナの周方向に互いに離間して配置され、且つ、隣り合う前記羽根の前記空気供給側の端部と前記燃焼空間側の端部とが前記バーナの軸方向に重なり合うように配置されており、前記重なり合う領域が残存するように前記切欠部が形成されていてもよい。
スワラの隣り合う羽根と羽根の間に、バーナの軸方向に貫通する空間が存在すると旋回流の形成に支障をきたす可能性がある。そこで、隣り合う羽根同士が重なり合う領域が残存するようにして切欠部を形成することで、旋回流の形成に影響を及ぼすことなくスワラへの燃料の付着を抑制できる。