特許第6104508号(P6104508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6104508超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含むエネルギー伝達装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104508
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含むエネルギー伝達装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20170316BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   A61B17/00 700
   A61B18/18 100
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-29390(P2012-29390)
(22)【出願日】2012年2月14日
(65)【公開番号】特開2012-170822(P2012-170822A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2014年11月12日
(31)【優先権主張番号】13/029,521
(32)【優先日】2011年2月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513109016
【氏名又は名称】コビディエン エルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ,ディー.ブラナン
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0221999(US,A1)
【文献】 特開昭58−046949(JP,A)
【文献】 特開平06−197908(JP,A)
【文献】 特開2004−113624(JP,A)
【文献】 特開2001−340350(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0016032(US,A1)
【文献】 特表平11−511043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織へのエネルギー伝達に適した医療装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された位相アンテナアレイと、
前記ハウジングに接続され、かつ前記位相アンテナアレイによって組織領域内に伝達される電磁エネルギーの放射パターンを使用者が選択的に調整することができるように構成されたユーザインタフェースと、
前記ハウジング内に配置され、かつ前記位相アンテナアレイによって組織領域内にエネルギーが伝達されている間に前記組織領域を表すデータを取得するように構成された超音波トランスデューサアレイと、
前記位相アンテナアレイを整相するための設定と、前記ユーザインタフェースの操作との間のマッピングを表すデータを格納するメモリと、
を含み、
前記ユーザインタフェースは、前記医療装置による組織内への電磁エネルギー伝達の少なくとも1つの使用者が選択可能なパラメータを表わす表示を前記ハウジングの表面上に備え、
前記表示は、前記ハウジングの第1の軸に平行した方向に方向づけられた、表示目盛り線と角度を含む第1の目盛りを有し、前記ハウジングの第2の軸に平行した方向に方向づけられた、表示目盛り線とエネルギー強度レベルを示す一連の連続的な正の整数を含む第2の目盛りを有する、医療装置。
【請求項2】
前記超音波トランスデューサ装置および前記位相アンテナアレイをその中に含むように構成された内部チャンバを画定する本体部材を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記位相アンテナアレイは、電気外科手術用電力発生源に動作可能に接続されている、請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記超音波トランスデューサアレイは、超音波画像化システムに通信可能に接続されている、請求項2に記載の医療装置。
【請求項5】
前記本体部材は遠位端を含み、前記遠位端に組織接触面を画定している、請求項2に記載の医療装置。
【請求項6】
前記組織接触面は、超音波透過窓を画定する第1の領域を含む、請求項5に記載の医療装置。
【請求項7】
前記超音波トランスデューサアレイは、前記超音波透過窓に動作可能に関連づけられている、請求項6に記載の医療装置。
【請求項8】
前記組織接触面は、マイクロ波透過窓を画定する第2の領域をさらに含む、請求項6に記載の医療装置。
【請求項9】
前記位相アンテナアレイは、前記マイクロ波透過窓に動作可能に関連づけられている、請求項8に記載の医療装置。
【請求項10】
前記位相アンテナアレイは、前記マイクロ波透過窓に動作可能に関連づけられている、請求項8に記載の医療装置。
【請求項11】
前記ユーザインタフェースはポインティングデバイスを含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項12】
前記医療装置による組織への電磁エネルギー伝達の前記少なくとも1つのパラメータは、前記ポインティングデバイスの指示方向と相関している、請求項11に記載の医療装置。
【請求項13】
前記位相アンテナアレイは複数の放射素子を含む、請求項11に記載の医療装置。
【請求項14】
前記ユーザインタフェースから出力された少なくとも1つの電気信号は、使用者が行った前記ポインティングデバイスの移動に応答したものであり、前記少なくとも1つの電気信号は、前記複数の放射素子の位相を決定するために使用される、請求項13に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織焼灼用途に適した電気外科手術装置に関し、より詳細には、超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含むエネルギー伝達装置およびそれを含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の疾患の治療では、悪性の組織増殖(例えば腫瘍)を破壊する必要がある。腫瘍細胞を加熱および破壊するために電磁放射線を使用することができる。治療では、癌性腫瘍が認められた組織に焼灼プローブを挿入する場合がある。プローブを配置したら、電磁エネルギーをプローブから周囲組織内に送る。
【0003】
癌などの疾患の治療では、ある種の腫瘍細胞が、健康な細胞に通常有害である温度よりも僅かに低い高温で変性することが分かっている。温熱療法などの公知の治療方法は、隣接する健康な細胞を不可逆的な細胞破壊が生じる温度よりも低い温度に維持しながら、異常細胞を41℃超の温度に加熱する。このような方法では、組織を加熱、焼灼および/または凝固させるために電磁放射線の照射を行う。このような方法を行うために、時としてマイクロ波エネルギーが利用される。電磁放射線を利用して組織を加熱する他の処置も組織の凝固、切断および/または焼灼を含む。
【0004】
電磁放射線を利用する電気外科手術装置は、様々な使用および用途のために開発されている。短時間に高バーストエネルギーを提供して様々な組織に対する切断および凝固作用を達成するのに使用することができる複数の装置が利用可能である。焼灼処置を行うために使用することができる複数の異なる種類の装置が存在する。典型的には、焼灼処置で使用されるマイクロ波装置は、エネルギー源として機能するマイクロ波発生器と、標的組織にエネルギーを導くためのアンテナアセンブリを有するマイクロ波外科手術器具(例えば、マイクロ波焼灼プローブ)とを含む。マイクロ波発生器と外科手術器具は典型的に、マイクロ波エネルギーを発生器から器具に伝送するため、および、器具と発生器との間で制御、フィードバックおよび識別信号を通信するための複数の導体を有するケーブルアセンブリによって動作可能に接続されている。
【0005】
モノポール、ダイポールおよびヘリカル型などの数種類のマイクロ波プローブが使用されており、それらを組織焼灼用途で使用することができる。モノポールおよびダイポールアンテナアセンブリでは、マイクロ波エネルギーは一般に、導体の軸から離れるように垂直に放射される。モノポールアンテナアセンブリは通常、単一の細長い導体を含む。典型的なダイポールアンテナアセンブリは、2つの細長い導体を含み、それらは直線状に並べられ、電気絶縁体を挟んで互いに対して端と端で配置されている。ヘリカルアンテナアセンブリは、様々な寸法(例えば、直径および長さ)の螺旋状の導体構成を含む。ヘリカルアンテナアセンブリの主な動作モードは、螺旋による放射場が螺旋軸に対して垂直な平面において最大となるノーマルモード(ブロードサイド)、および螺旋軸に沿って放射が最大となる軸方向モード(エンドファイア)である。
【0006】
特定の処置の間、プローブを組織に直接に挿入してもよく、内腔(例えば、静脈、針またはカテーテル)を介して挿入してもよく、あるいは手技を用いて体内に配置してもよい。プローブの配置を助けるために、焼灼処置の前に、超音波もしくはコンピュータ断層撮影(CT)誘導を使用してもよい。複数のプローブを使用して、相乗効果で大きな焼灼を生成したり、同時に別々の部位を焼灼したりしてもよい。
【0007】
所望の手術結果を達成するために、特定の種類の組織焼灼処置に応じて特定の焼灼体積を決定してもよい。焼灼体積は、アンテナ設計、アンテナ性能、アンテナインピーダンス、同時に使用されるエネルギー照射装置の数、焼灼時間およびワット数ならびに組織特性(例えば、組織インピーダンス)と相関している。特定の処置の間に、マイクロ波エネルギーが周囲組織内に照射されている程度を評価するのは難しく、そのため、焼灼された周囲組織の面積または体積の決定が難しい場合がある。
【0008】
悪性細胞を変性させるために必要な温度と、健康な細胞に通常有害な温度との差が小さいため、より予測可能な温度分布を得て、周囲の正常な組織の損傷を最小に抑えながら腫瘍などの異常細胞構造を根絶するために、公知の加熱パターンおよび精密な温度制御が必要とされる。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、ハウジングと、ハウジング内に配置された位相アンテナアレイと、ハウジングに接続されたユーザインタフェースとを含む、組織へのエネルギー伝達に適した医療装置に関する。ユーザインタフェースは、位相アンテナアレイによって組織領域内に伝達される電磁エネルギーの放射パターンを使用者が選択的に調整することができるように構成されている。医療装置は、ハウジング内に配置された超音波トランスデューサアレイも含む。超音波トランスデューサアレイは、位相アンテナアレイによって組織領域内にエネルギーを伝達している間にその組織領域を表すデータを取得するように構成されている。
【0010】
本開示は、電気外科手術用電力発生源と、電気外科手術用電力発生源に動作可能に関連づけられた手で保持可能な装置とを含むシステムにも関する。手で保持可能な装置は、位相アンテナアレイと、位相アンテナアレイによって組織領域内に伝達される電磁エネルギーの放射パターンを使用者が選択的に調整することができるように構成されたユーザインタフェースと、位相アンテナアレイによって組織領域内にエネルギーを伝達している間にその組織領域を表すデータを取得するように構成された超音波トランスデューサアレイとを含む。
【0011】
添付の図面を参照しながらその様々な実施形態についての説明を読めば、超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含む本開示のエネルギー伝達装置およびそれを含むシステムの目的および特徴は当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含むエネルギー伝達(医療)装置を含むシステムの概略斜視図である。
図2】本開示の一実施形態に係るポインティングデバイスの指示方向を表す2つの概略的に示されている軸(両矢印線で示されている)と共に示されているポインティングデバイスの拡大斜視図である。
図3】本開示の一実施形態に係る位相アンテナアレイの近位端に配置された放射電磁エネルギー透過構造を含むエネルギー伝達システムの概略図である。
図4】第1の指示方向に配置された図2のポインティングデバイスを示し、かつ本開示の一実施形態に係るポインティングデバイスの第1の指示方向に応答して医療装置によって組織内に伝達された電磁エネルギーの放射パターンの概略図を示す、図1の医療装置の上面斜視図である。
図5】第2の指示方向に配置された図2のポインティングデバイスを示し、かつ本開示の一実施形態に係るポインティングデバイスの第2の指示方向に応答して医療装置によって組織内に伝達された電磁エネルギーの放射パターンの概略図を示す、図1の医療装置の上面斜視図である。
図6】第3の指示方向に配置された図2のポインティングデバイスを示し、かつ本開示の一実施形態に係るポインティングデバイスの第3の指示方向に応答して医療装置によって組織内に伝達された電磁エネルギーの放射パターンの概略図を示す、図1の医療装置の上面斜視図である。
図7】第4の指示方向に配置された図2のポインティングデバイスを示し、かつ本開示の一実施形態に係るポインティングデバイスの第4の指示方向に応答して医療装置によって組織内に伝達された電磁エネルギーの放射パターンの概略図を示す、図1の医療装置の上面斜視図である。
図8】本開示の一実施形態に係る制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含む本開示のエネルギー伝達装置(本明細書では「医療装置」または「手持ち式装置」ともいう)およびそれを含むシステムの実施形態について説明する。図の説明全体にわたって、同様の符号は、同様もしくは同一の要素を指すものとする。図面に示しかつ本説明で使用され、かつ従来同様に、対象上の相対的な位置づけについて述べる場合、「近位」という用語は、使用者に近い方の本装置のその部分またはその部品を指し、「遠位」という用語は、使用者から遠い方の本装置のその部分またはその部品を指す。
【0014】
本説明は、「一実施形態では」、「実施形態では」、「いくつかの実施形態では」または「他の実施形態では」という語句を用いる場合があるが、これらの語句はそれぞれ、本開示に係る同一または異なる実施形態のうちの1つまたは複数を指すものとする。本説明のための「A/B」という形態の語句は、AまたはBを意味する。本説明のための「Aおよび/またはB」という形態の語句は、「(A)、(B)または(AおよびB)」を意味する。本説明のための「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ」という形態の語句は、「(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)または(A、BおよびC)」を意味する。
【0015】
電磁エネルギーは一般に、エネルギーの増加または波長の減少によって、電波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線およびガンマ線に分類される。本説明で使用されている「マイクロ波」とは一般に、300メガヘルツ(MHz)(3×10サイクル/秒)〜300ギガヘルツ(GHz)(3×1011サイクル/秒)の周波数範囲の電磁波を指す。
【0016】
本説明で使用されている「焼灼処置」とは一般に、例えば、マイクロ波焼灼、高周波(RF)焼灼またはマイクロ波もしくは高周波焼灼補助下切除などの任意の焼灼処置を指す。本説明で使用されている「エネルギー照射装置」とは一般に、マイクロ波もしくはRF電気外科手術用発生器など電力発生源から組織までエネルギーを移動させるために使用することができる任意の装置を指す。本明細書における目的では、「エネルギー照射装置」という用語は、「エネルギー伝達装置」という用語と同義である。本説明で使用されている「伝送線路」とは一般に、ある点から別の点までの信号の伝播のために使用することができる任意の伝送媒体を指す。
【0017】
本説明で使用されている「位相アンテナアレイ」とは一般に、各放射素子から放出される信号の位相をシフトして、アンテナビームを所望の方向に誘導するように建設的/相殺的干渉を与えることができる任意の多素子アンテナアレイを指す。本明細書における目的では、「放射素子」は、「アンテナ素子」という用語と同義である。本説明で使用されている「電磁窓」とは一般に、使用時に電磁信号が通過するあらゆる種類のレードームおよび窓を指す。
【0018】
本説明で使用されている「長さ」とは、電気的長さまたは物理的長さを指すものとする。一般に、電気的長さは、伝送媒体内を伝播している信号の波長に換算した伝送媒体の長さの表現である。電気的長さは通常、波長、ラジアンまたは度(°)に換算して表される。例えば、電気的長さは、伝送媒体内を伝搬している電磁波または電気信号の波長の倍数または約数として表してもよい。波長は、ラジアン、または度(°)などの理論上の角度単位で表してもよい。伝送媒体の電気的長さは、(a)伝送媒体を通る電気もしくは電磁信号の伝播時間の(b)伝送媒体の物理的長さに等しい距離にわたる自由空間における電磁波の伝播時間に対する比を乗じたその物理的長さとして表してもよい。電気的長さは一般に物理的長さとは異なる。適当なリアクタンス素子(容量性または誘導性)の追加によって、電気的長さを、物理的長さよりも著しく短くまたは長くしてもよい。
【0019】
本説明で使用されている「リアルタイム」という用語は一般に、データ処理と表示との間に観測可能な待ち時間がない状態を意味する。本説明で使用されている「ほぼリアルタイム」とは一般に、データの取得時間と表示時間との間の時間間隔が比較的短い状態を指す。
【0020】
本開示の様々な実施形態は、組織内に電磁エネルギーを導くことができる患者に直接接触する1つの装置に組み込まれた超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを提供する。超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含む本開示のエネルギー伝達装置は、組織内に伝達される電磁エネルギーの放射パターンを使用者が制御できるように構成されており、様々な処置および手術の使用に適するものであってもよい。超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含む本開示のエネルギー伝達装置の様々な実施形態は、手で保持可能であり、かつ人間工学的に配置されたユーザインタフェースを含むように構成されている
【0021】
超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含む本開示のエネルギー伝達装置の様々な実施形態は、組織内への電磁エネルギー伝達の焦点配置を、約1GHz〜約5GHzの動作周波数で、例えば、組織表面に対して約1センチメートル(cm)〜約3センチメートルの範囲の深さに使用者が制御できるように構成されている。実施形態は、組織内への電磁エネルギー伝達の焦点配置を可変的な所定の深さまたは深さ範囲に使用者が制御できるようにしてもよい。例えば、3cmの深さに焦点が配置された3cmの焼灼の場合、4.5cmの深さの組織を治療することができる。装置を拡張し、動作周波数を減少させ、かつ/またはアレイ素子の数を増加させることによって、より深い組織を治療可能にしてもよい。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサアレイによって取得されたデータを、エネルギー伝達装置から超音波画像化システムに出力してもよく、画像化システムから、臨床医がリアルタイムおよび/またはほぼリアルタイムで標的領域を視覚化するために使用し得る1つまたは複数の表示装置に出力してもよい。
【0022】
様々な実施形態に係る超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含む本開示のエネルギー伝達装置は、約300MHz〜約10GHzで動作するように設計および構成されている。実施形態は、マイクロ波周波数、RF周波数または他の周波数の電磁放射線を用いて実施してもよい。
【0023】
超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含む本開示のエネルギー伝達装置の様々な実施形態は、マイクロ波もしくはRF焼灼に適しており、マイクロ波もしくはRF焼灼補助下外科的切除のために組織を予め凝固させるのに用いられる。以下に説明する様々な方法は、標的組織のマイクロ波焼灼および完全な破壊を目的としているが、電磁放射線を導く方法は、標的組織が部分的に破壊または損傷される他の治療法と共に使用し得ることを理解されたい。さらに、以下の説明は、マイクロ波位相アンテナアレイの使用について記載しているが、本開示の教示を他の種類のユーザ制御可能な位相アンテナアレイに適用してもよい。
【0024】
様々な実施形態に係る超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含むエネルギー伝達装置を含む電気外科手術システムは、電磁エネルギーに誘発された熱治療の間に、例えば、臨床医に、熱治療中により良好に視覚化させ、かつ組織のより最適化された結果の達成方法を理解させるように、リアルタイムおよび/またはほぼリアルタイムな画像フィードバックを提供することができる。
【0025】
図1は、超音波トランスデューサアレイ67およびマイクロ波位相アンテナアレイ61を含むエネルギー伝達装置10を含む本開示の一実施形態に係る電気外科手術システム(全体として100で示されている)を示す。マイクロ波位相アンテナアレイ61は一般に、所望の数の行または列を形成するように配置された複数の放射素子(例えば、図3に示す「A」、「A」、「A」、「A」〜「A」)を含む。いくつかの実施形態では、放射素子は、S、LまたはCバンド周波数で動作する開口(導波管)アンテナまたは線状(ダイポール)アンテナであってもよい。いくつかの実施形態では、放射素子は、螺旋、ダイポール、スロットまたは任意の種類のマイクロストリップアンテナ、例えばパッチアンテナ(長方形のマイクロストリップアンテナとしても知られている)であってもよく、例えば、従来のプリント回路基板(PCB)製造技術を用いて誘電性シート材料などの基板上に形成されていてもよい。
【0026】
超音波トランスデューサ装置67(本明細書では「超音波トランスデューサアレイ」ともいう)は、超音波を生成、伝送および受信することできる任意の好適な装置であってもよい。超音波トランスデューサ装置67は、トランスデューサ素子の1次元もしくは多次元アレイ(図示せず)を含んでいてもよい。超音波トランスデューサ装置67は、超音波トランスデューサ装置67によって受信された反射超音波信号を増幅するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサアレイ67は、例えば3次元の体積測定領域をスキャンするのに適した2次元アレイを形成するように個々に制御可能および動作可能である複数のトランスデューサ素子を含む。個々のトランスデューサ素子は、例えば2次元の平面領域をスキャンするのに適した1次元アレイを形成するように個々に選択可能かつ一緒に動作可能であってもよい。超音波トランスデューサアレイ67は、医療装置10から半径方向に超音波エネルギーを繰り返しに伝送および受信することによって生成されるセクタスキャン画像などの超広角画像を生成するように構成されていてもよい。超音波画像化処理によって、治療中に臨床医が、異常な組織構造(例えば腫瘍)と正常な組織構造(例えば、血管および組織境界)との関係を観察できるようにしてもよい。
【0027】
エネルギー伝達装置10は、一般に第1の軸「A」−「A」(例えば、中心長手軸)および第1の軸「A」−「A」に対して垂直に配置された第2の軸「A」−「A」を画定するハウジング15を含む。いくつかの実施形態では、ハウジング15は、2つのハウジング半体(図示せず)から形成されている。ハウジング15の各半体は、対応する一連の機械的インタフェース(図示せず)に嵌合的に係合して、2つのハウジング半体をエネルギー伝達装置10の内側部品およびアセンブリの周りで位置合わせさせるように構成された機械的インタフェース部品(図示せず)を含んでいてもよい。
【0028】
図1に示すように、ハウジング15は、遠位端13を含む本体部材17を含む。本体部材17は、遠位端13に組織接触面14と、組織接触面14に接続される近位縁部を含む上面12と、超音波トランスデューサ装置67およびマイクロ波位相アンテナアレイ61をその中に含むように構成された内部チャンバ7とを画定している。組織接触面14は、任意の好適な構成(例えば、平坦、平面または湾曲構成)を有していてもよく、上面12に対してほぼ垂直に配置されていてもよい。
【0029】
組織接触面14は一般に、使用時に電磁信号が通過する1つまたは複数の電磁窓を画定する1つまたは複数の領域を含む。いくつかの実施形態では、組織接触面14は、超音波透過窓27を画定する第1の領域28と、マイクロ波透過窓21を画定する第2の領域22とを含む。図1に示すように、第1の領域28は組織接触面14の下部に対応し、第2の領域22は組織接触面14の上部に対応する。超音波トランスデューサ装置67の動作は、超音波透過窓27を通して超音波エネルギーを導き、超音波透過窓27を通して超音波エネルギーを受信することを伴ってもよい。
【0030】
超音波透過窓27およびマイクロ波透過窓21は、低損失誘電体で構成されていてもよい。当然のことながら、超音波透過窓27およびマイクロ波透過窓21が互いに対して任意の好適な関係で(例えば、一方が他方の上(または下)に)配置されていてもよく、例えば、本体部材17内に収容された超音波トランスデューサ装置67および/またはマイクロ波位相アンテナアレイ61の特定の構成に応じて、任意の好適な形状を有していてもよい。
【0031】
本体部材17またはその一部は、金属、熱可塑性材料(例えば、ポリカーボネート)、複合体(例えば、プラスチック金属もしくはセラミック金属複合体)または他の材料で形成されていてもよく、手で保持可能であるように構成されていてもよい。超音波透過窓27およびマイクロ波透過窓21の設計または材料は、例えば、所望の電気性能を達成するために、組織接触面14の1つまたは複数の構造部分と比較して異なっていてもよい。ハウジング15の大きさおよび形状は、図1に示す構成とは異なっていてもよい。
【0032】
図1に示すように、電気外科手術システム100は一般に、電気外科手術用電力発生源120(例えば、マイクロ波もしくはRF電気外科手術用発生器)と、エネルギー伝達装置10に関連づけられたユーザインタフェース46と、位相アンテナアレイ61に通信可能に接続された処理装置150とを含む。ユーザインタフェース46は、処理装置150および/または他の処理装置(図示せず)に通信可能に接続されていてもよい。電気外科手術システム100は、超音波トランスデューサアレイ67に通信可能に接続された超音波画像化システム140を含んでいてもよい。超音波画像化システム140は、超音波画像化システム140からの出力を表示するために、臨床医がリアルタイムおよび/またはほぼリアルタイムで焼灼プロセスを視覚化し得る1つまたは複数の表示装置および/またはスクリーン146(例えば、LCD(液晶表示装置)、プラズマ、OLED(有機発光ダイオード)、ホログラフィック、平面型など)に接続されていてもよい。
【0033】
医療装置10による組織内への電磁エネルギー伝達の1つまたは複数のパラメータを使用者が選択的に制御できるようにするために、ユーザインタフェース46は、処理装置150および/または他のプロセッサ(図示せず)と連携的に動作するように構成されていてもよい。ユーザインタフェース46は、ハウジング15上に配置されていても、ハウジング15に別の方法で関連づけられていてもよく、例えば、本体部材17の上面12に人間工学的に配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース46は、処理装置150に通信可能に接続されたポインティングデバイス45(例えば、ジョイスティックまたはトラックボールなど)を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、使用者が行ったポインティングデバイス45の移動は、ポインティングデバイス45の指示方向を表わす「X」および「Y」軸(図2では両矢印で概略的に示されている)に対して定義されている。軸「Y」は、ハウジング15の第1の軸「A」−「A」に平行した方向に方向づけられていてもよく、軸「X」は、ハウジング15の第2の軸「A」―「A」に平行した方向に方向づけられていてもよい。本説明では後でより詳細に説明するように、医療装置10による組織内への電磁エネルギー伝達の1つまたは複数のパラメータは、ポインティングデバイス45の指示方向と相関していてもよい。
【0035】
使用者が親指、指または手掌でポインティングデバイス45を容易に制御することができるように、ポインティングデバイス45は本体部材17の上面12に人間工学的に配置されていてもよい。ポインティングデバイス45に代わるものとして(またはそれに加えて)、ユーザインタフェース46は、例えば、処理装置150または処理装置150に接続された別個のデジタルモジュール内に組み込まれたハードウェアおよび/またはソフトウェアなどの音声入力技術を含んでいてもよい。音声入力技術としては、音声認識、ボイスアクチベーション、音声修正(voice rectification)および/または埋め込み音声が挙げられる。
【0036】
ユーザインタフェース46は、追加または代わりとして、電源スイッチ44を含んでいてもよい。電源スイッチ44は、ハウジング15上に配置されていてもハウジング15に別の方法で関連づけられていてもよく、例えば、上面12に人間工学的に配置されていてもよく、任意の好適な構成、例えば、回転ノブ、押下ボタン、トグルスイッチ、スライドスイッチ、音声もしくは音作動式スイッチ、または医療装置10の電源を切ることができる任意の他の好適な装置を有していてもよい。電源スイッチ44は、フットスイッチ、ハンドスイッチまたは口作動式スイッチなどのリモート操作可能な装置として実施してもよい。ユーザインタフェース46は、追加または代わりとして、電源のオン/オフを使用者に警告または合図するために、可聴および/または視覚インジケータなどのインジケータ(図示せず)、例えば、照明付きインジケータ(例えば、単色もしくは色が変わるLEDインジケータ)を含んでいてもよい。
【0037】
使用者が組織内のエネルギー伝達焦点を様々な位置に選択的に誘導することができ、かつ/または使用者がエネルギー付与パターン(例えば、組織内照射焼灼領域)を制御することができるようにするために、ユーザインタフェース46は、処理装置150と連携的に動作するように構成されていてもよい。例えば、使用者が行ったポインティングデバイス45の移動に応答してユーザインタフェース46から出力されかつ処理装置150によって受信された1つまたは複数の電気信号を使用して、例えば、組織内のエネルギー伝達焦点をリアルタイムおよび/またはほぼリアルタイムで適所に変えることができるように、マイクロ波位相アンテナアレイ61の放射素子の位相を決定および設定してもよい。
【0038】
処理装置150は、処理装置150に関連づけられたメモリ(例えば、メモリ151)内に格納された一連の命令を実行することができる計算装置、計算回路あるいは任意の種類のプロセッサまたは処理回路を含んでいてもよい。処理装置150は、オペレーティングシステムプラットホームおよびアプリケーションプログラムを実行するように構成されていてもよい。処理装置150は図1では独立型モジュールとして示されているが、処理装置150は、電気外科手術用電力発生源120または電気外科手術システム100の他の部品に完全にあるいは部分的に組み込まれ得ることを理解されたい。医療装置10は、本体部材17内に配置され、かつ処理装置150に通信可能に接続され、かつ/または内部プロセッサ(図示せず)に通信可能に接続されたメモリ51と共に構成されていてもよい。
【0039】
処理装置150は、ポインティングデバイス45(例えば、ジョイスティックまたはトラックボール)および/または処理装置150に通信可能に接続された他の装置の位置および/または相対的移動を示す電気信号などのユーザ入力を、ユーザインタフェース46から受信してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、ビームおよび/またはエネルギー伝達焦点を所望の方向および/または組織内の所望の位置に誘導することができるように、データ「D」(所望の放射パターンを達成するために、位相アンテナアレイ61を適切に整相する設定に対するポインティングデバイス45の指示方向のマッピングを表わす)が、プロセッサ150によって使用される好適なメモリ内に格納されている。データ「D」は、ルックアップテーブルまたは他のデータ構造などの任意の好適なデータ構造に格納されていてもよい。データ「D」は、メモリ51(医療装置10に内蔵)に格納されてもよく、かつ/またはメモリ151(医療装置10に外付け)に格納されていてもよい。いくつかの実施形態では、データ「D」は、プロセッサ150に通信可能に接続されたライブラリー(図示せず)に格納されていてもよい。本説明で使用されている「ライブラリー」とは一般に、任意のリポジトリ、データバンク、データベース、キャッシュおよび記憶装置などを指す。
【0040】
電気外科手術用電力発生源120は、電気外科手術装置と共に使用するのに適した任意の発生器であってもよく、様々な周波数の電磁エネルギーを提供するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、電力発生源120は、約300MHz〜約10GHzの動作周波数でマイクロ波エネルギーを提供するように構成されている。電気外科手術用エネルギー源としての使用に適し得る915MHzのエネルギーを伝達する電気外科手術用発生器の例は、Covidien社によって提供されているEVIDENT(商標)マイクロ波焼灼発生器という商標で市販されている。
【0041】
電気外科手術用電力発生源120は、処理装置150に動作可能に連通するユーザインタフェース125を含んでいてもよい。電気外科手術用電力発生源120は、エネルギー照射装置データ、例えば、1つまたは複数のエネルギー伝達装置に関連するパラメータを格納および読み出しするように構成されたデータベースを含んでもいてもよい。使用中、臨床医は、エネルギー伝達装置(例えば、医療装置100)の動作特性をプレビューするために、ユーザインタフェース125と対話してもよい。ユーザインタフェース125は、1つまたは複数のユーザインタフェース要素を視覚的に表示するように構成された表示装置(図示せず)を含んでいてもよい。表示装置は、タッチスクリーン機能、例えば、スタイラスまたは指先で表示装置の表示パネルに接触することによって、例えば、表示装置との直接的な物理的対話によってユーザ入力を受信する機能を備えていてもよい。
【0042】
マイクロ波位相アンテナアレイ61は、ケーブル接続または無線接続(例えば、高周波もしくは赤外線リンク)によって処理装置150または電気外科手術用電力発生源120に動作可能に接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、エネルギー伝達装置10は第1のコネクタ35に動作可能に接続された第1のケーブルアセンブリ31を含み、第1のケーブルアセンブリ31によって、さらに、位相アンテナアレイ61が第1の伝送線路104を介して処理装置150に動作可能に接続されている。第1のケーブルアセンブリ31は、電気外科手術用エネルギー源120への接続に適した近位端を有していてもよい。
【0043】
エネルギー伝達装置10は、追加または代わりとして、第2のコネクタ36に動作可能に接続された第2のケーブルアセンブリ32を含んでいてもよく、第2のケーブルアセンブリ32によって、さらに、超音波トランスデューサ装置61が第2の伝送線路109を介して超音波画像化システム140に動作可能に接続されている。第2のケーブルアセンブリ32は、超音波画像化システム140への接続に適した近位端を有していてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、例えば、表示に適した画像フォーマットを提供する処理のために、超音波トランスデューサアレイ61から取得したデータを、エネルギー伝達装置100から超音波画像化システム140に出力し、画像化システム140から、治療中に標的領域および/または焼灼等温体積をリアルタイムまたはほぼリアルタイムで視覚化するために臨床医が使用し得る1つまたは複数の表示装置146に出力してもよい。超音波トランスデューサアレイ61が作動している間、例えば、熱的に誘発された腫瘤の相転移(例えば、液体−気体相転移)によって生じる気泡場すなわち極微小気泡の雲が標的領域に生成されてもよく、超音波画像化中に目視により観察可能であってもよい。標的領域に生成された気泡雲の時間的展開および空間分布の観察によって、臨床医に、組織の熱治療の間に、より十分に視覚化させ、かつより最適化された結果の達成方法を理解させ、例えば、大血管、健康な臓器または生体膜の障壁などの敏感な構造を焼灼するのを回避させてもよい。
【0045】
電気外科手術システム100は、医療装置10の1つまたは複数の部品と流体連通するように接続された冷却液供給システム(例えば、図3に示す350)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、冷却液供給システムは、冷却流体(例えば、図3に示す「F」)を、ハウジング15の近位端13に配置された電磁窓(例えば、図3に示す390)を出入りしながら循環させるように構成されていてもよい。
【0046】
例えば、電気外科手術システム100を用いるマイクロ波焼灼の間、医療装置10を組織に隣接して配置し、マイクロ波エネルギーをそこに供給する。臨床医は、マイクロ波エネルギーが照射される時間長さを事前に決定してもよい。照射持続時間は、腫瘍の大きさおよび位置ならびに腫瘍が続発性もしくは原発性癌であるか否かなどの多くの要因によって決められてもよい。医療装置10を用いるマイクロ波エネルギー照射の持続時間は、破壊される組織領域および/または周囲組織における熱分布の進行によって決められてもよい。特定の腫瘍の治療では、例えば、腫瘍がプローブよりも大きい場合や入手可能なプローブ形状または放射パターンに一致しない形状を有する場合に、焼灼処置中にプローブの再配置を行う場合もある。
【0047】
ユーザインタフェース46は、医療装置10による組織内への電磁エネルギー伝達に関する使用者が選択可能な1つまたは複数のパラメータを表わす表示(indicia)、例えば、第1の目盛り「S」および第2の目盛り「S」をその上に含んでいてもよい。図2に示すように、第1の目盛り「S」は、表示目盛り線および角度(°)(例えば、45°、0°、45°)を含み、第2の目盛り「S」は、表示目盛り線と、エネルギー強度レベルを示すエネルギー強度のレベルの増加に対応する一連の連続的な正の整数(例えば、1、2、3)とを含む。表示は、例えば、上面12にポインティングデバイス45に隣接して、例えば、エッチングまたは刻印されているか形成されていてもよい。表示の設計は、図2に示す構成とは異なっていてもよい。
【0048】
医療装置10による組織内への電磁エネルギー伝達の1つまたは複数のパラメータは、ポインティングデバイス45の指示方向と相関していてもよい。使用者が行ったポインティングデバイス45の移動は、第1の方向(例えば、X軸方向)への移動および第1の方向に垂直な第2の方向(例えば、Y軸方向)への移動に関して定義してもよい。ポインティングデバイス45の指示方向を表わすポインティングデバイス45から出力された信号は、組織内への電磁エネルギー伝達の1つまたは複数のパラメータと相関していてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1の方向(例えば、X軸方向)、第2の方向(例えば、Y軸方向)および/または第3の方向(例えば、Z軸方向)への使用者が行うインティングデバイス45の移動は、所望の方向および/または組織「T」内の所望の位置への医療装置10によるエネルギー伝達ビームの誘導および/または焦点の誘導を可能にする位相アンテナアレイ61の所定の位相と相関している。
【0050】
いくつかの実施形態では、医療装置10は、第1の方向(例えば、X軸方向)への使用者が行ったポインティングデバイス45の移動に応答して、電力パラメータ(例えば、電圧、電力および/または電流の強さ)および/または、認識される出力強度に影響を与える電力/インピーダンス曲線の形状を調整するように構成されている。例えば、遠位方向へのポインティングデバイス45の横方向の移動が大きくなる程、位相アンテナアレイ61に伝送される電力パラメータのレベルは大きくなる。例えば、位相アンテナアレイ61の放射素子の構成、所望の手術効果、手術の専門性および/または外科医の嗜好に基づいて、強度設定を事前に行い、ルックアップテーブルから選択してもよい。この選択は自動的に行っても、使用者が手動で行ってもよい。強度値は、使用者が事前に決定するか調整してもよい。
【0051】
図3は、信号源310と、信号源310に接続された位相アンテナアレイ360と、位相アンテナアレイ360の近位端に配置された放射電磁エネルギー透過構造390(本明細書では「電磁窓」ともいう)とを含むエネルギー伝達システム(全体として300で示されている)の一実施形態の概略図である。信号源310は一般に、マイクロ波周波数出力信号を提供するように構成されている。
【0052】
位相アンテナアレイ360は、信号源310に接続されたマイクロ波増幅器320と、マイクロ波増幅器320に接続されたマイクロ波電力分割器330と、マイクロ波電力分割器330に接続された制御装置340と、制御装置340に接続された複数の放射素子「A」、「A」、「A」、「A」〜「A」とを含む。マイクロ波増幅器320は、任意の好適な入力電力および出力電力を有していてもよい。電力分割器330は、限定されるものではないが、コプレーナストリップ線、コプレーナ導波管、ウィルキンソン電力分配器および/または他の好適な電力分配器などの様々な部品によって実施してもよい。いくつかの実施形態では、電力分割器330を、所定の位相関係を実質的に維持しながら、その出力ポートで分割される均等もしくは不均等な電力分割を提供する任意の好適な電力分配器によって実施してもよい。
【0053】
制御装置340は一般に、複数の移相器「S」、「S」、「S」、「S」〜「S」を含む。制御装置340は、移相器「S」〜「S」のうちの1つまたは複数の出力を制御して位相アンテナアレイ360の各チャネルに所望の位相関係の電気信号を提供するために、移相器「S」、「S」、「S」、「S」〜「S」に接続された複数の処理装置(図示せず)を含んでいてもよい。処理装置は、マルチプロセッサおよび/またはマルチコアCPUを含んでいてもよく、マイクロプロセッサ、デジタル信号処理装置またはマイクロコントローラなどのソフトウェアを実行することができる任意の種類のプロセッサを含んでいてもよい。
【0054】
エネルギー伝達システム300は、位相アンテナアレイ360と組織「T」との間に配置される電磁窓390を含む。電磁窓390は、水ボーラス(water bolus)または他の誘電体を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、電磁窓390は、冷却液源355を含む冷却液供給システム350と流体連通するように接続されている。
【0055】
冷却液源355は、冷却流体「F」の貯蔵部を含む任意の好適なハウジングであってもよく、冷却流体「F」を所定の温度に維持するものであってもよい。例えば、冷却液源355は、電磁窓390から戻ってきた冷却流体「F」を冷却することができる冷却装置(図示せず)を含んでいてもよい。冷却流体「F」は、電磁窓390を冷却または緩衝するために使用することができる任意の好適な流体、例えば、脱イオン水または他の好適な冷却媒体であってもよい。冷却流体「F」は、誘電性特性を有していてもよく、位相アンテナアレイ360を緩衝する誘電性インピーダンスを提供してもよい。種々の流体、例えば、限定されるものではないが、水、食塩水、Minnesota Mining and Manufacturing社(3M)によって提供されている市販のフロリナート(Fluorinert)(登録商標)パーフルオロカーボン液体などのパーフルオロカーボン、液体クロロジフルオロメタンなどの液体を使用してもよい。他の変形形態では、気体(例えば、亜酸化窒素、窒素、二酸化炭素など)を冷却流体として利用してもよい。さらに別の変形形態では、例えば、上述の液体および/または気体などの液体および/または気体の組み合わせを冷却流体「F」として利用してもよい。
【0056】
図4図7は、様々な指示方向に配置されたポインティングデバイス45と共に示され、かつポインティングデバイス45の指示方向に応答して医療装置10によって組織内に伝達された電磁エネルギーの放射パターンの概略図と共に示されている、組織「T」内への電磁エネルギー伝達のために配置される医療装置10を示す。ポインティングデバイス45の指示方向および電磁エネルギーの放射パターンは例示のためのみに提供されており、本開示の医療装置10の実施形態を、ポインティングデバイス45の多くの異なる指示方向および多くの異なる放射パターンで利用し得ることを理解されたい。
【0057】
図4は、ポインティングデバイス45が第1の指示方向「I」に配置された状態で、治療中に組織「T」に隣接して配置された医療装置10(例えば、焼灼処置)の組織接触面14を示す。例えば、第1の指示方向「I」は、30°のビーム角および強度レベル「1」(例えば、低強度レベル)と相関してもよい。図4は、本開示の一実施形態に係るポインティングデバイス45の第1の指示方向「I」に応答して医療装置10によって組織「T」内に伝達された電磁エネルギーの放射パターン「P」の概略図である。
【0058】
図5は、ポインティングデバイス45が第2の指示方向「I」に配置された状態で、治療中に組織「T」に隣接して配置された医療装置10の組織接触面14を示す。例えば、第2の指示方向「I」は、0°のビーム角および強度レベル「2」(例えば、中強度レベル)と相関してもよい。図5は、本開示の一実施形態に係るポインティングデバイス45の第2の指示方向「I」に応答して医療装置によって組織「T」内に伝達された電磁エネルギーの放射パターン「P」の概略図である。
【0059】
図6は、ポインティングデバイス45が第3の指示方向「I」に配置された状態で、治療中に組織「T」に隣接して配置された医療装置10の組織接触面14を示す。例えば、第3の指示方向「I」は、0°のビーム角および強度レベル「3」(例えば、高強度レベル)と相関してもよい。図6は、本開示の一実施形態に係るポインティングデバイス45の第3の指示方向「I」に応答して医療装置によって組織「T」内に伝達された電磁エネルギーの放射パターン「P」の概略図である。
【0060】
図7は、ポインティングデバイス45が第4の指示方向「I」に配置された状態で、治療中に組織「T」に隣接して配置された医療装置10の組織接触面14を示す。例えば、第4の指示方向「I」は、−30°のビーム角および強度レベル「1」(例えば、低強度レベル)と相関してもよい。図7は、本開示の一実施形態に係るポインティングデバイス45の第4の指示方向「I」に応答して医療装置10によって組織「T」内に伝達された電磁エネルギーの放射パターン「P」の概略図である。
【0061】
図8は、電源ボタン810に通信可能に接続され、かつ強度およびビーム角を示すジョイスティック位置信号820を利用するように構成された、本開示に係る制御システム800の一実施形態の概略図である。図8に概略的に示されているように、制御システム800は、例えば、組織内のエネルギー伝達焦点をリアルタイムおよび/またはほぼリアルタイムで適所に変えることができるように、ジョイスティック位置信号820を利用して、アンテナおよび/または増幅器利得830を調整するか否かを決定し、かつ/または位相アンテナアレイ861の放射素子(1〜N)の位相を決定する。
【0062】
制御システム800は、電源ボタン810が「オン」の状態である場合、アンテナおよび/または増幅器利得830の調整を可能にし、電源ボタン810が「オフ」の状態である場合、アンテナおよび/または増幅器利得830の調整を可能にしないように構成されている。位相アンテナアレイ861の放射ビームを選択的に誘導できるように、ジョイスティック位置信号820をルックアップテーブル840と共に使用してもよい。ルックアップテーブル840は、位相アンテナアレイ861の位相に対するジョイスティックの位置のマッピングを表わすデータを含む。図8に概略的に示されているように、制御システム800は、ルックアップテーブル840を利用して、位相アンテナアレイ861の放射素子(1〜N)の位相を決定する。
【0063】
超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含む上記エネルギー伝達装置は、エネルギーを組織内に導くことができ、様々な処置および手術の使用に適するものであってもよい。超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含む本開示のエネルギー伝達装置は、マイクロ波周波数、RF周波数または他の周波数の電磁放射線を用いて実施してもよい。
【0064】
本開示の実施形態に係る超音波トランスデューサアレイおよび位相アンテナアレイを含む上記エネルギー伝達装置は、手で保持可能であり、かつ人間工学的に配置されたユーザインタフェースを含むように構成されている。
【0065】
上記電気外科手術システムによって、臨床医は、組織領域内にエネルギーを伝達する間にその組織領域を視覚化することができる。上記電気外科手術システムでは、超音波トランスデューサアレイによって取得されたデータを、上記エネルギー伝達装置から超音波画像化システムに出力してもよく、画像化システムから、リアルタイムおよび/またはほぼリアルタイムで標的領域を視覚化するために臨床医によって使用され得る1つまたは複数の表示装置および/またはスクリーンに出力してもよい。
【0066】
例示および説明のために添付の図面を参照しながら実施形態について詳細に説明してきたが、本発明の方法および装置はそれらによって限定されるものとして解釈されるべきでないことを理解されたい。本開示の範囲から逸脱することなく、上記実施形態に対する様々な修正が可能であることは当業者に明らかとなるであろう。
【0067】
(付記項1)
電気外科手術用電力発生源と、
前記電気外科手術用電力発生源に動作可能に関連づけられた手で保持可能な装置と、
を含み、前記手で保持可能な装置は、
位相アンテナアレイと、
前記位相アンテナアレイによって組織領域内に伝達される電磁エネルギーの放射パターンを使用者が選択的に調整することができるように構成されたユーザインタフェースと、
前記位相アンテナアレイによって組織領域内にエネルギーが伝達されている間に前記組織領域を表すデータを取得するように構成された超音波トランスデューサアレイと、
を含むシステム。
【0068】
(付記項2)
前記手で保持可能な装置は電磁窓をさらに含む、付記項1に記載のシステム。
【0069】
(付記項3)
前記電磁窓と流体連通している冷却液供給システムをさらに含む、付記項2に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8