(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記式(1)で表される官能基でオルガノシリカゾル1gあたり0.55〜5.5mmol修飾された修飾オルガノシリカゾルで正極活物質が表面処理されている非水系蓄電デバイス用材料であって、正極活物質に対する前記修飾オルガノシリカゾル量が、0.2重量%以上0.5重量%以下であることを特徴とする非水系蓄電デバイス用材料。
MOS(=O)2−R1−Si(−O−)3 (1)
{式中Mはアルカリ金属イオン、R1は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。}
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素削減などの環境問題の観点から、ハイブリッド自動車や電気自動車に対する期待が高まり、一部実用化されている。ハイブリッド自動車などに搭載する電源として、リチウムイオン電池やキャパシタなどの非水系蓄電デバイス及びそれを用いた電源装置の開発が盛んに進められている。
【0003】
ハイブリッド自動車のような車載用途の非水系蓄電デバイスでは、高入出力密度化が重要な課題となっている。すなわち、自動車の発進時などにおける加速性能を確保するために電源装置のより一層の高出力化が重要視されており、さらには、回生によるエネルギーの有効活用を図るために入力特性の向上も要求されている。また、ハイブリッド自動車では、電気だけの動力源により都市部での走行が可能な、いわゆるデュアルモード(プラグインハイブリッド)の要望も高まりつつある。従って、入出力特性を向上させる、すなわち、内部抵抗を低減させる電池技術は、このようなハイブリッド自動車の分野のみならず、種々の分野での実用化を図る上で、極めて重要な課題である。
【0004】
従来、リチウム二次電池では、活物質を含む合剤を集電体に塗工することで正負極板が形成されており、正負極板がセパレータを介して捲回又は積層された電極群が電池容器内に収容されている。車載用などの電源に用いられるリチウム二次電池では、入出力特性を向上させるために、活物質材料、活物質粒径、電極組成(導電材、バインダー)、活物質層−集電体界面の検討が進められている。また、これら活物質レベル、電極設計からの改善のみならず、携帯電話機器に使用される電池と比較して、正負極板の膜厚が薄くされ、かつ、大面積化が図られ、更には、集電構造などの工夫も行われている。
【0005】
しかし、これら蓄電デバイス材料、部材などの改良検討以外に、例えば、電極表面での非水電解液の分布を均一化することを目的とし、正極合剤、負極合剤及びセパレータのいずれかに耐熱多孔相を設けることで入出力のバランスがとれた電池を提供する技術が開示されている(特許文献1)。また、負極板やセパレータと非水電解液との濡れ性を向上させる技術として、例えば、負極合剤中に界面活性剤を添加する技術(特許文献2)、セパレータに界面活性剤を塗布する技術(特許文献3)、セパレータ表面をコロナ処理などすることで電解液との濡れ性を向上させる技術(特許文献4)など、非水系蓄電デバイス用材料の表面に係る検討も進められている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、説明すれば以下のとおりである。本発明における蓄電デバイス用材料は、特定の修飾
オルガノシリカゾルで表面処理されており、蓄電デバイス用材料としては正極活物
質が挙げられる。
【0015】
本発明における正極活物質としては、特に限定されるものではないが、リチウムイオン電池用正極活物質しては、例えば、リチウムドープ及び脱ドープ可能な材料であり、公知のリチウムイオン電池材料として使用されている、リチウム複合コバルト酸化物、リチウム複合ニッケル酸化物、リチウム複合マンガン酸化物、或いはこれらの混合物、更にはこれら複合酸化物に異種金属元素を一種以上添加した系、鉄リン酸リチウムなどの種々の遷移金属とポリアニオンとで形成される材料、更には、五酸化バナジウム、二酸化マンガン、二硫化モリブデンなどのリチウムを吸蔵、放出可能であるがリチウムを含まない金属酸化物も用いることが可能である。また、これらリチウム吸蔵、放出可能な金属酸化物又は硫化物の粒子形態及び粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば単分散粒子、凝集粒子、或いはこれらの混合物、更にはこれらリチウムを吸蔵、放出可能な金属酸化物又は硫化物の異なる粒子径及び比表面積を有する粒子の混合物を用いることが可能である。また、キャパシタ用正極活物質としては、例えば、公知のキャパシタ用材料として使用されている活性炭、炭素材料、ポリアセン系材料、上記材料などを用いることが可能である。
【0016】
本発明における負極活物質としては、特に限定されるものではないが、リチウムイオン電池用正極活物質としては、リチウムドープ及び脱ドープ可能な材料であり、公知のリチウムイオン電池材料として使用されている黒鉛系物質、炭素系物質、錫酸化物系、ケイ素系酸化物などの金属酸化物などが挙げられる。また、キャパシタ用負極活物質としては、例えば、公知のキャパシタ用材料として使用されている活性炭、炭素材料、ポリアセン系材料、上記材料などを用いることが可能である。
【0017】
本発明におけるセパレータは、蓄電デバイス構成時、正極、負極の間に絶縁、電解液保持の目的で配置されるものであり、特に限定されるものではないが、ポリエチレン微多孔膜、ポリプロピレン微多孔膜、或いはポリエチレンとポリプロピレンの積層膜、セルロース、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリアクリルニトリル繊維などを用いることが可能である。セパレータに関しては、孔径が例えば1μm以下の微多孔膜を本発明の特定の修飾
オルガノシリカゾルで修飾した場合、低抵抗化の効果が大きい。
【0018】
本発明における導電材は、特に限定されるものではないが、カーボンブラック、アセチレンブラックなどの炭素材料、黒鉛を用いることが可能である。
【0019】
本発明における蓄電デバイス用材料(正極活物
質)は、以下に説明する非水電解液耐性の高い修飾
オルガノシリカゾルで表面処理されている。
【0020】
本発明において、蓄電デバイス用材料(正極活物質)は下記式(1)で表される官能基で修飾された
オルガノシリカゾルで表面処理される。
MOS(=O)
2−R
1−Si
(−O−)3 (1)
{式中Mは
アルカリ金属イオン、R
1は炭素数1
〜5のアルキレン
基を表す。}
【0021】
上記式(1)において、R
1の炭素数1〜
5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基などが挙げられる。これらのうち、コスト及び原料入手の点を考慮すると、好ましくはプロピレン基である。
【0022】
Mは、親水性、抗菌性などの点を考慮すると、好ましくは
、アルカリ金属イオ
ンである。
【0024】
アルカリ金属イオ
ンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン
及びカリウムイオ
ンなどが挙げられる。
これらのう
ち特に好ましいのはリチウムイオン、ナトリウムイオンである。
【0025】
式(1)で表される官能基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
LiOSO
2−CH
2CH
2CH
2Si(−O−)
3
NaOSO
2−CH
2CH
2CH
2Si(−O−)
3
KOSO
2−CH
2CH
2CH
2Si(−O−)
3
【0027】
オルガノゾルとは、有機溶媒にナノレベルの、表面改質をしたコロイダルシリカを安定的に分散させたコロイド溶液であり、アルコール、ケトン、エーテル、トルエンなどの各種有機溶媒に分散可能である。具体的には日産化学社製のオルガノシリカゾル(メタノールシリカゾル、IPA−ST、IPA−ST、IPA−ST−UP、IPA−ST−ZL、EG−ST、NPC−ST−30、DMAC−ST、MEK−ST、MIBK−ST、PMA−ST及びPGM−ST)や扶桑化学社製の高純度オルガノシリカゾル(PL−1−IPA、PL−2L−PGME及びPL−2L−MEK)などが挙げられる。これらは単独のみならず、複数で用いてもよい。
【0028】
本発明の修飾
オルガノシリカゾルは以下の製造方法により得られる。すなわち、
オルガノシリカゾルに、化学的にスルホン酸基に変換できる官能基を有する下記式(SC1)又は(SC2)で表されるシランカップリング剤を添加して
オルガノシリカゾル上のシラノールと上記シランカップリング剤を反応させた後、チオール基をスルホン酸基に変換後、必要により金属塩で中和する方法によって得られる。
HS−R
1−Si(CH
3)
n(−Y)
3−n (SC1)
(Y−)
3−n(CH
3)Si−R
1−S−S−R
1−Si(CH
3)
n(−Y)
3−n (SC2)
{式中R
1は炭素数1〜10のアルキレン基(本アルキレン鎖中に、ウレタン結合又はウレア結合を含有していてもよい)であり、Yは同一或いは異なってもよい炭素数1〜4のアルコキシ基又は水酸基、nは0又は1を表す。}
【0029】
式(SC1)又は(SC2)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0030】
HSCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3
HSCH
2CH
2Si(OCH
3)
3
HSCH
2CH
2Si(OC
2H
5)
3
(OC
2H
5)
3SiCH
2CH
2CH
2−S−S−CH
2CH
2CH
2Si(OC
2H
5)
3
【0032】
オルガノシリカゾルにシランカップリング剤を反応させる場合の溶媒としては、アルコール系溶媒:メタノール、エタノール、イソプロパンール、n−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及び1,4−ブタンジオールなど、エーテル系溶媒:ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン及びジオキサンなど、ケトン系溶媒:アセトン及びメチルエチルケトンなど、非プロトン溶媒:ジメチルスルホキサイド、N,N−ジメチルホルムアミドなど及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。これらのうち好ましいのは、アルコール系溶媒であり、これらの溶媒は1種又は2種以上で使用できる。
【0033】
溶媒に対する原料の
オルガノシリカゾルの濃度は1〜50重量%であり、好ましくは1〜30重量%である。
【0034】
オルガノシリカゾルに対する化学的にスルホン酸基に変換できる官能基を有するシランカップリング剤の量は
オルガノシリカゾル1gに対して0.55〜5.5mmolであり、好ましくは2.0〜5.0mmolである。0.55mmol未満であるとスルホン酸基の濃度が低すぎ、親水性及び帯電防止性能が低下し、5.5mmolを超えると金属酸化物上のシラノールが不足して前記シランカップリング剤同士が自己縮合する恐れがあり、また成膜性が低下して好ましくない。
【0035】
化学的にスルホン酸基に変換できる官能基を有するカップリング剤を添加する際の温度は限定されないが、常温(約20℃)から沸点が好ましい。反応温度も限定されないが、常温(約20℃)から沸点が好ましい。反応時間も限定されないが、10分から48時間が好ましく、6時間から24時間が特に好ましい。
【0036】
過酸化物としては、有機過酸化物(過酢酸、m−クロロ過安息香酸、過酸化ベンゾイルなど)、無機過酸化物(オゾン、過酸化水素、過酸化カルシウムなど)が挙げられる。これらのうち、好ましいのは過酸化水素と過酢酸であり、特に好ましいのは過酸化水素である。過酸化物は前段階の製造工程(
オルガノシリカゾルに化学的にスルホン酸基に変換できる官能基を有するシランカップリング剤を結合させる工程)の中に一度に或は分割して投入することができる。
【0037】
用いる過酸化物の量は、スルホン酸基に変換できる官能基を有するシランカップリング剤に対して、200〜5000モル%、好ましくは300〜5000モル%、さらに好ましくは500〜5000モル%である。
【0038】
過酸化物を添加する際の温度は限定されないが、常温(約20℃)が好ましい。反応温度も限定されないが、常温(約20℃)から沸点が好ましい。反応時間も限定されないが、10分から48時間が好ましく、6時間から24時間が特に好ましい。
【0039】
塩基としては、水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、酢酸塩(酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及び酢酸銀など)、金属酸化物(酸化銀など)、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。
【0040】
中和するときの温度は特に制限はなく、通常室温で行えばよい。
【0041】
加える塩基はそのまま加えても、溶媒(例えば、水など)で希釈してから加えてもよい。
【0042】
本発明の蓄電デバイス用材料(正極活物
質)は上記修飾
オルガノシリカゾルの溶液に含浸、噴霧などによりコーティングすることにより表面処理することができる。粉体である正極活物
質の場合、粉体のまま上記修飾
オルガノシリカゾル溶液に含浸した後、ろ過・乾燥するか、或いは含浸した後溶媒を常圧或いは減圧下で除去し乾燥してもよい。
【0043】
また、乾燥した正極活物
質は、そのまま使用してもよいが更に熱処理してもよい。
熱処理温度は50℃〜250℃であり、好ましくは100℃〜200℃である。
【0044】
熱処理時間は特に限定されないが30秒〜24時間であり、好ましくは60秒〜3時間である。
【0045】
また、後述する電極(正
極)に成形した後、上記修飾
オルガノシリカゾル溶液を含浸或いは噴霧した後乾燥、熱処理してもよく、熱処理温度、熱処理時間は粉体の場合と同様である。
【0046】
本発明においては、正極活物
質に対する上記修飾
オルガノシリカゾルの量は、特に、本発明の効果が得られれば限定されるものではなく、正極活物
質、修飾
オルガノシリカゾルの比重、及び電池特性を考慮し決定されるものである。しかし、正極活物
質の表面処理をする修飾
オルガノシリカゾルが多すぎる場合、逆に、抵抗が高くなり放電特性が低下する場合がある。例えば、コバルト酸リチウム(正極活物質)にLiOSO
2−CH
2CH
2CH
2Si(−O−)
3基で修飾されたイソプロパノールシリカゾル(修飾
オルガノシリカゾル)で表面処理を施す場合、正極活物質に対する修飾
オルガノシリカゾル量が、0.5重量
%以下で所望の効果が得られ、更に0.3重量
%以下ならより高い効果が得られ、適切な表面処理量が存在する。
【0047】
また、導電材においても修飾
オルガノシリカゾルが多すぎる場合、電極の導電性が低下する場合があり、適切な表面処理量で処理することが好ましい。
【0048】
フィルムであるセパレータの場合、上記修飾
オルガノシリカゾル溶液をディッピング或いは噴霧などによりコーティングすることにより得ることができ、熱処理温度、熱処理時間は粉体の場合と同様である。
【0049】
また必要に応じて、フィルムと上記修飾金属酸化物との接着性を向上させるためプライマー或いは表面活性化処理(基材表面の表面エネルギーを高くする手法)を用いても良く、またこれらの方法を組み合わせてもよい。
【0050】
プライマーとしては、アミノ基或いは活性水素と反応する官能基(例えば、イソシアネート基或いは酸無水基)を有する化合物(例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、無水酢酸、無水安息香酸など)が挙げられる。
【0051】
表面活性化処理としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、UV処理、オゾン処理及びフレーム処理などが挙げられる。
【0052】
本発明の非水系蓄電デバイスは、少なくとも1種類以上の上記非水系蓄電デバイス用材料を用いる。例えば、上記修飾
オルガノシリカゾルで表面処理した正極活物質のみを用い、負極活物質、セパレータ、導電材などは表面処理したものを使用することも可能であり、蓄電デバイスの抵抗を律速している材料を表面処理することが重要となる。
【0053】
本発明の非水系蓄電デバイスの電極(正極、負極)は、活物質(正極、負極)に、必要に応じ、導電材、バインダーを用いる。バインダーの種類は、特に限定されるものではないが、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレンなどのフッ素系樹脂類、フッ素ゴム、SBR、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類などが例示される。バインダー量は、特に限定されない。また、導電材の種類は、特に限定されるものではないが、カーボンブラック、アセチレンブラックが例示される。導電材量は、特に限定されるものでない。また、本発明の非水系二次電池に用いる正極は、塗布成形、プレス成形、ロール成形など一般的な電極成形法を用いて製造することが可能である。
【0054】
電極成形時において溶剤を使用する場合、上記修飾
オルガノシリカゾルは、例えば、NMPなどの使用する溶媒に溶解しないことが望ましく、このような場合は電極に成形してから、表面処理を施すことが重要である。また、蓄電デバイスの組み立て前には、脱水の目的で70℃から400℃、好ましくは、100℃から200℃で乾燥されるが、上記修飾
オルガノシリカゾルは、乾燥により分解、劣化、昇華など、乾燥による影響を受けないものを選定することが好ましい。
【0055】
本発明の非水系蓄電デバイスは、上記方法で作製された正極、負極の間に絶縁、電解液保持の目的でセパレータが配置される。また、正極、負極、セパレータに電解液が含浸される。
【0056】
本発明の蓄電デバイスは、非水系電解液を用いる。本発明において用いる非水系電解液としては、正極材料の種類、負極材料の性状、充電電圧などの使用条件などに対応して、適宜決定される。例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタなどのリチウム系蓄電デバイスの場合、リチウム塩を含む非水系電解液を用い、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4などのリチウム塩をプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、酢酸メチル、蟻酸メチルなどの1種又は2種以上からなる有機溶媒に溶解したものを用いることができる。また、電気二重層キャパシタの場合、非水系電解液としては、非プロトン性の有機溶媒に電解質を溶解したものあり、有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリルなどの公知のものが使用できる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく、或いは2種以上を混合して使用してもよい。また、電解質としても、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートなどの公知のものを使用することができる。これらの電解質も、単独で使用してもよく、或いは2種以上を併用してもよい。電解液の濃度は、特に限定されるものではないが、一般的に0.5〜2mol/l程度が実用的である。電解液は、当然のことながら、水分が100ppm以下のものを用いることが好ましい。また、イオン性液体、固体電解質なども用いることが可能であり、特に、イオン性液体、200℃を超える高沸点有機溶剤、1.3mol/lを超えるような高濃度の非水系電解液を用いる場合、本発明の効果は大きい。
【0057】
本発明の蓄電デバイスの形状は特に限定されるものではなく、コイン型、円筒型、角型、フィルム型など、その目的に応じ、適宜決定することが可能である。
【0058】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。実施例は、本発明を説明するものであり、制限を加えるものではない。以下特記しない限り、部は重量部を意味する。
【実施例】
【0059】
(修飾
オルガノシリカゾルの合成例)
3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−チオール(チッソ製)1.0部(5.1モル部)をエタノール36部に溶解させた後、オルガノシリカゾル(日産化学製、30%イソプロパノール溶液)6.0部、水6.5部を加え24時間加熱還流した。冷却後過酸化水素水(三徳化学製、30%水溶液)3.5部(30.8モル部)を加え24時間加熱還流した。反応終了後室温まで冷却後、水酸化リチウム1水和物0.214部(5.1モル部)を少量の水に溶かして加え中和後、水を加えて全体の量を50部にすることにより、本発明の化合物、LiOSO
2−CH
2CH
2CH
2Si(−O−)
3基で修飾されたイソプロパノールシリカゾルを含むエタノール溶液を得た。
【0060】
(正極活物質の修飾
オルガノシリカゾルを用いた表面処理例)
正極活物質としてLiCoO
2(平均粒径:10μm)を用いた。上記合成例で得たエタノール溶液を、エタノールで20倍に希釈した溶液50部にLiCoO
210部を加え5分間超音波照射した。吸引ろ過後、乳鉢ですりつぶした後、150℃で2時間熱処理することによ
り修飾
イソプロパノールシリカゾルで表面処理した正極活物質を得た。正極活物質に対し、修飾
イソプロパノールシリカゾルの重量は0.2%であった(処理正極活物質1)。
【0061】
また、上記合成例で得たエタノール溶液を、エタノールで20倍に希釈した溶液20部に上記LiCoO
210部を加え5分間超音波照射した。吸引ろ過後、乳鉢ですりつぶした後、150℃で2時間熱処理することによ
り修飾
イソプロパノールシリカゾルで表面処理した正極活物質を得た。正極活物質に対し、修飾
イソプロパノールシリカゾルの重量は0.6%であった(処理正極活物質2)。
【0062】
(蓄電デバイスの試作及び評価)
未処理正極活物質(LiCoO
2)、処理正極活物質1、処理正極活物質2を用い、正極を試作した。まず、前記3種類の活物質91重量部に導電材であるアセチレンブラックを4重量部、乾式混合した。バインダーであるPTFEを5重量部、加え混練し、更に、アセトンを加え、2軸ロールを用い混練混合し、圧延ロールを用いて厚さ80μmの正極シートを得た。この正極シートを所定の電極面積(14mm×20mm)に打ち抜き、導電性接着剤で厚さ20μmのアルミニウム箔に貼り付け、170℃で10時間真空乾燥することにより、3種類の正極(未処理正極、処理正極1、処理正極2)を得た。前記、Al箔上の電極層の密度はいずれも3.2g/cm
3であった。
【0063】
黒鉛化MCMB(粒径:25μm)を用い、負極を試作した。まず、前記活物質に導電材であるアセチレンブラックを乾式混合した。バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に、得られた混合物を均一に分散させて、スラリーを調製した。この時、スラリー中の固形分重量比は、活物質が93重量部、導電材が2重量部、バインダーが5重量部となるよう調整した。次いで、スラリーを集電体となる厚さ18μmの銅箔に塗布し、120℃で10分乾燥した。前記銅箔上の電極層をその密度が1.5g/cm
3の密度となるようロールプレスで成形後、170℃で10時間真空乾燥し、負極(電極面積:15mm×21mm)を得た。
【0064】
上記作製正極(未処理正極、処理正極1、処理正極2)3種類と上記作製負極を組み合わせ、セパレータには気孔率40%、厚さ25μmのポリエチレン製微多孔膜、電解液には、1mol/l−LiPF
6、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(体積比30:70)を用いて3種類の評価用セル(アルミラミネート外装)を作製した。
【0065】
以上の工程で作製したセルを、以下に示す試験条件にて初期特性を評価した。
【0066】
25℃におけるセルの初期充放電容量を測定した。初期充放電容量は1.4mAの一定電流で4.2Vまで充電し、4.2Vの定電圧を印加(充電開始から8時間で終止)して1.4mAの定電流で3.0Vまで放電した。次に同じ条件で3サイクル充放電を繰り返した。3サイクル目には、いずれのセルも99%の充放電効率を示し、修飾
オルガノシリカゾルの反応による効率低下は見られなかった。その後、4.2Vまで充電し、25℃における交流内部抵抗を測定した。測定条件は10mVの交流(周波数:20000Hz〜0.1Hz)を印加した。下表に初期充放電特性結果、代表的な周波数における内部抵抗値を表1に示す。また、
図1には交流内部抵抗の複素インピーダンスプロットを示す。低周波数側の円弧の大きさ(正極の電荷移動抵抗を含む)がセル1(未処理正極)で2.8Ω、セル2(処理正極1)で2.3Ω、セル3(処理正極2)で2.9Ωであり、本実施例(LiOSO
2−CH
2CH
2CH
2Si(−O−)
3基で修飾されたイソプロパノールシリカゾルで表面処理)の場合、正極活物質に対し修飾
オルガノシリカゾルの重量が0.2%である処理正極活物質1を用いることにより、低周波数側の円弧の大きさが20%低下し、表面処理による正極の電荷移動抵抗低減効果が認められた。
【0067】
【表1】
【0068】
また、修飾
オルガノシリカゾルの安定性を調べるため、60日間、25℃で保存し、再度、交流内部抵抗を測定した。3種類のセルにおいて、いずれも10%程度の内部抵抗上昇が見られたが、修飾
オルガノシリカゾルによる表面処理効果は持続しており、本発明の修飾
オルガノシリカゾルは、非水電解液に対する耐性を有していた。