(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104564
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】リモコン受信機
(51)【国際特許分類】
H04B 1/40 20150101AFI20170316BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
H04B1/40
H04Q9/00 301B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-237061(P2012-237061)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-87013(P2014-87013A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390004374
【氏名又は名称】三和電子機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砥綿 久徳
【審査官】
野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−033056(JP,A)
【文献】
特開2004−197431(JP,A)
【文献】
特開2011−078707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/40
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線送信機から送信される送信信号を受信し、前記送信信号に含まれている送信データを復調するデータ復調手段と、
登録モードで、前記送信データに含まれている送信機の識別符号を識別符号記憶部に登録する識別符号登録手段と、
通常モードで、前記送信データに含まれている送信機の識別符号と前記識別符号記憶部に登録されている識別符号との一致を判定する識別符号判定手段と、
前記識別符号が一致しているとき、前記送信データに含まれている操作データに応じた制御信号を出力する操作データ処理手段と、
を備えたリモコン受信機において、
前記識別符号記憶部は複数の識別符号を記憶する領域を備え、
前記識別符号登録手段は、電源投入直後に検出したモード設定スイッチの状態が前記登録モードの状態であるとき、送信機から送信される、送信機の識別符号を含む送信信号をサーチし、見つかった識別符号を前記識別符号記憶部に対して先入れ先出し方式で登録するものであり、
前記識別符号判定手段は、登録されている前記複数の識別符号のうち一致する識別符号の有無を検知するものであり、
前記送信信号または前記送信データの有無を検知し、無ければ、前記識別符号判定手段による判定へ処理状態を戻し、前記送信信号の喪失時に、前記送信データに含まれる、信号喪失時に行うべきフェールセーフの操作データに応じて前記制御信号をフェールセーフ動作させる状態制御手段を備えたことを特徴とするリモコン受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送信機から送信される無線信号を受信して負荷装置を制御するリモコン受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を利用して、例えば模型自動車や模型飛行機を操作するリモコン(ラジコン:R/C)において、従来のAM信号方式やFM信号方式のものでは、周波数が一致していれば、異なった送信機であっても利用できた。すなわち、送信機の周波数(バンド)を受信機が使用する通信信号の周波数(バンド)に合わせれば通信可能であるので、利用しようとする複数の送信機のバンドを予め受信機のバンドに合わせておけば、それらの送信機のいずれかで受信機を制御することができた。
【0003】
しかし例えば2.4GHz帯を利用するディジタル方式の通信では、送信機が送信する信号(送信データ)に送信機固有の識別符号が含まれていて、その識別符号に応じて通信信号を周波数ホッピング方式(FHSS方式)でスペクトラム拡散される。受信機側では目的の信号を復調するために、そのホッピングパターンに同期しながら復調する。そのため、通信を開始する前に、送信機と受信機とを認証させるバインド処理が必要である。このような事情により、ディジタル方式の通信では、送信機と受信機は基本的に1:1の関係で使用するものとなった。
【0004】
一方、バインド処理が必要なリモコンシステムにおいて、複数の送信機と複数の受信機とでバインドできるようにしたリモコンシステムが特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−166065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の送信機のうちいずれかで1つの受信機を制御するためには、送信機を切り替える毎にバインド処理が必要である。特許文献1に示されている構成では、複数のバインドが可能であるが、送信機を切り替える際には手動操作が必要になる。
【0007】
このように、送信機の交換時にバインド処理や受信機側での操作が必要であると、送信機の交換時に時間が掛かってしまう。例えば模型自動車の耐久レースなどにおいてドライバーの交代時に、各自の送信機を用いて交代を行うとタイムロスが生じることになる。
【0008】
本発明の目的は、送信機の交換時にバインド処理や受信機側での操作が不要なリモコン受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明のリモコン受信機は、無線送信機から送信される送信信号(電波)を受信し、前記送信信号に含まれている送信データを復調するデータ復調手段と、
登録モードで、前記送信データに含まれている送信機の識別符号を識別符号記憶部に登録する識別符号登録手段と、
通常モードで、前記送信データに含まれている送信機の識別符号と前記識別符号記憶部に登録されている識別符号との一致を判定する識別符号判定手段と、
前記識別符号が一致しているとき、前記送信データに含まれている操作データに応じた制御信号を出力する操作データ処理手段と、
を備えたリモコン受信機において、
前記識別符号記憶部は複数の識別符号を記憶する領域を備え、
前記識別符号登録手段は、電源投入直後に検出したモード設定スイッチの状態が前記登録モードの状態であるとき、送信機から送信される、送信機の識別符号を含む送信信号をサーチし、見つかった識別符号を前記識別符号記憶部に登録するものであり、
前記識別符号判定手段は、登録されている前記複数の識別符号のうち一致する識別符号の有無を検知するものであり、
前記送信信号または前記送信データの有無を検知し、無ければ(見失ったとき)、前記識別符号判定手段による判定へ処理状態を戻す状態制御手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
(2)前記状態制御手段は、前記送信データに含まれるフェールセーフデータに応じて前記制御信号をフェールセーフ状態とするものであることが好ましい。
【0011】
(3)前記識別符号登録手段は、前記識別符号記憶部に対して先入れ先出し方式で識別符号を登録するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、送信機の交換時にバインド処理や受信機側での操作が不要なリモコン受信機が構成され、送信機の交換を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係るリモコン受信機101の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は受信機101と通信する送信機201の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は
図1に示した受信機のRXコントローラ13内に設けられている識別符号記憶部の概念図である。
【
図4】
図4は受信機101のRXコントローラ13の処理内容を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は送信機201のTXコントローラ23およびRFモジュール22の処理内容を併せて示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態であるリモコン受信機について各図を参照して順次説明する。
【0015】
図1はリモコン受信機(以下、単に「受信機」)101の構成を示すブロック図である。
図1において、RFモジュール12はアンテナ11で受けた電波を受信し、RXコントローラ13から指示されるデータに基づいて受信信号のサーチおよび周波数ホッピング同期を行うとともに復調を行う。RXコントローラ13はRFモジュール12から復調結果を読み取り、受信データに含まれている操作データに応じて駆動部(サーボモータなどの負荷装置)へ制御信号(駆動信号)を出力する。また、RXコントローラ13はモード設定スイッチ14の状態を読み取り、それに応じた処理を行う。
【0016】
図2は前記受信機101と通信する送信機201の構成を示すブロック図である。表示部24は各種状態を表示する液晶パネル等の表示部であり、操作部25は、操縦用の入力装置および各種設定用のキー入力装置である。例えばピストルタイプの送信機であれば、操作部25にはホイールやレバーを含み、スティックタイプの送信機であれば、スティックを含む。TXコントローラ23は表示部24の駆動、操作部25の操作量や操作状態の読み取りを行い、その情報をRFモジュール22へ送る。
【0017】
RFモジュール22は送信機固有ID(送信機の識別符号)を備えている。RFモジュール22は、送信機固有IDと誤り検出用のコードと合わせて送信データを作成し、送信機固有IDに応じて周波数ホッピング変調し、アンテナ21から送信する。
【0018】
なお、TXコントローラ23は操作部25の操作量または操作状態に応じて操作データを作成し、この操作データと送信機固有ID(送信機の識別符号)および誤り検出用のコードを含む送信データを作成し、RFモジュール22へシリアルデータとして出力するようにしてもよい。その場合には、RFモジュール22は前記シリアルデータを前記IDに応じたパターンで周波数ホッピング変調し、アンテナ21から送信する。
【0019】
図3は
図1に示した受信機のRXコントローラ13内に設けられている識別符号記憶部の概念図である。識別符号記憶部には2つの送信機固有ID(ID1,ID2)を登録する領域を備えている。識別符号記憶部は例えばフラッシュメモリやEEPROMで構成されている。後に示すように、受信機101は、受信データに含まれている送信機固有IDと、登録されている2つのIDのうち一致するIDがあれば、その受信データは自分に対するデータと見なして処理を行う。
【0020】
図4は受信機101のRXコントローラ13の処理内容を示すフローチャートである。電源投入時にこのフローチャートに示す手順を実行する。電源投入直後、先ず、モード設定スイッチの状態を読み取り、モード設定状態であればLEDの点滅を開始し、そのことでBINDコードを待機している状態を表す(S1→S2)。その後、送信機からBINDコードが送信されるのを待つ。送信機から送信される信号は周波数ホッピングされているが、予め定めた待ち受け用の周波数ホッピングパターンでサーチし、或る周波数チャンネルでキャリアがあれば、コードを復調し、そのコードに含まれている情報からBINDコードであるか否かを判定する(S3→S4→S5→S3、のループ)。
【0021】
例えば10秒経過してもBINDコードを受信できなければ、LEDを消灯し、後に述べる通常モードの動作へ移る(S5→S8→S9)。
【0022】
また、電源投入時にモード設定スイッチが通常状態であれば、後に述べる通常モードの動作へ移る(S1→S9)。
【0023】
BINDコードを受信すれば、BINDコードに含まれている送信機固有IDを識別符号記憶部に登録する(S4→S6)。そして、LEDを一定時間高速点滅することによって、登録が完了したことを表示する(S7)。このとき、2つの送信機固有ID(ID1,ID2)を登録する領域に対して先入れ先出し方式(FIFO方式)で書き込む。これにより、常に新しい送信機固有IDが2つまで保持されることになる。
【0024】
上記バインド処理完了後、または電源投入時にモード設定スイッチが通常状態であれば、送信機からの送信信号を、予め定めた待ち受け用のホッピングパターンでサーチし、或る周波数チャンネルでキャリアがあれば、コードを復調し、そのコードに含まれている送信機固有IDが識別符号記憶部に登録されている2つのIDのうちいずれかと一致するのを待つ(S9→S10→S9)。一致すれば、以降は周波数ホッピングに同期して復調を行う(S10→S11)。すなわち、送信機から送信される信号は送信機固有IDに応じたパターンで周波数ホッピングされているので、そのパターンに追従するように受信チャンネルを順次切り替えて受信する。
【0025】
その後、復調したデータに含まれる操作データに応じた信号を駆動部15(
図1参照)へ出力する(S12→S13)。
【0026】
もし、受信信号を受信できない状態または復調に失敗する状態となればタイマーをスタートさせ、その状態が一定時間継続すれば(送信信号が無くなれば)、フェールセーフ動作を行う(S12→S14→S15)。その後、ステップS9へ戻る(S9→S10→S9)。送信データ内の操作データには、信号喪失時に行うべきフェールセーフの操作データを含んでいる。ここでは、信号を喪失する直前のフェールセーフの操作データに応じた信号を駆動部15(
図1参照)へ出力する。例えば模型自動車であれば、そのままの状態で走行を停止するように設定しておけばよい。
【0027】
使用する送信機を切り替えるとき、先ず、使用していた1台目の送信機の電源を切り、BIND処理済みの2台目の送信機の電源を投入する。これにより、ステップS9で、2台目の送信機から送信される信号の受信および復調に成功する。その後の処理は上述と同様である。
【0028】
図5は送信機201のTXコントローラ23およびRFモジュール22の処理内容を併せて示すフローチャートである。先ず、TXコントローラ23は操作部25(
図1参照)の状態を読み取り、操作部25の操作量や操作状態に応じた、所定バイト数の操作データを作成する(S21→S22)。そして、この操作データをRFモジュール22へ出力する。RFモジュール22はこの操作データと送信機固有ID(送信機の識別符号)および誤り検出用のコードを含む送信データを作成し、送信する(S23→S24)。
【0029】
送信機201のTXコントローラ23は、以上の処理を所定周期で繰り返す。
【0030】
以上に示した構成により、2台の送信機についてBIND処理を予め行い、使用する送信機を切り替えるときに、先ず、使用していた1台目の送信機の電源を切り、2台目の送信機の電源を投入するだけでよい。または、1台目の送信機の電源を切る前に2台目の送信機の電源を投入し、その後に1台目の送信機の電源を切ってもよい。その場合でも1台目の送信機からの送信信号の受信および復調ができなくなった直後、2台目の送信機からの送信信号のサーチに成功するので、2台目の送信機は直ちに引き継ぐことができる。
【0031】
なお、識別符号記憶部に書き込まれる送信機固有IDは先入れ先出し方式で更新されるので、新たな送信機固有IDを登録する操作を繰り返せば、古い送信機固有IDを消去することができ、その古い送信機での操作を実質的に禁止することもできる。
【0032】
以上に示した実施形態では2つの送信機固有IDを登録するようにしたが、送信機固有IDは3つ以上登録できるように構成してもよい。
【0033】
また、以上に示した実施形態では周波数ホッピング方式(FHSS方式)で通信を行う例を挙げたが、直接拡散方式(DSSS方式)で通信する場合にも同様に適用できる。DSSS方式の場合には、送信機固有IDに応じた擬似雑音符号(PNコード)を生成して変調する。受信機は送信機固有IDに応じた擬似雑音符号を生成して復調する。また、DSSS方式の場合には、BINDコードの受信時に、予め定められた待ち受け用の周波数ホッピングパターンでサーチするのではなく、固定周波数で待ち受けすることも可能である。
【0034】
以上に示したとおり、本発明は複数の送信機固有IDを登録可能とし、受信機の電源を切ったり、BIND処理を行ったりすることなく、送信機の引き継ぎを速やかに行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
11…アンテナ
12…RFモジュール
13…RXコントローラ
14…モード設定スイッチ
15…駆動部
21…アンテナ
22…RFモジュール
23…TXコントローラ
24…表示部
25…操作部
101…リモコン受信機
201…送信機