特許第6104577号(P6104577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104577
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ポインティングスティック
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0338 20130101AFI20170316BHJP
【FI】
   G06F3/0338 411
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-261767(P2012-261767)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-106932(P2014-106932A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】森 公生
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−175390(JP,A)
【文献】 特開2001−096628(JP,A)
【文献】 特開2005−017549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報入力装置の画面上に表示されるカーソルの移動操作を行う操作部と、
該操作部を立設可能に取り付ける取付部を備えるポインティングスティックにおいて、
前記ポインティングスティックの操作部は、スティックと、当該スティックを支持する基台とを有し、前記基台には前記スティックの動きに応じて抵抗値が変わるひずみゲージが配置され、
前記基台には取付脚が突出して設けられており、ポインティングスティック組み立て時において前記取付脚を前記取付部に形成されている挿通孔に挿通させるとともに、ポインティングスティック組み立て後において前記取付脚を、前記操作部が立設される面と対向する前記取付部の裏面から突出しないように固定するポインティングスティックであって、
前記取付脚は樹脂材料からなり、ポインティングスティック組み立て時に該取付脚の先端を溶融させて前記取付部に溶着固定させる場合において、前記溶融された樹脂材料が収まるように、前記挿通孔の一端側は前記取付部裏面に向けて漸次拡径する面取り部が形成され、
前記面取部が形成された溶着固定部の前記操作部の軸心方向に対応する距離は、前記ポインティングスティックに作用する操作力に基づき前記操作部に発生する引っ張り力に対して前記溶着固定部が剥離しないために必要とされる距離となっていることを特徴とするポインティングスティック。
【請求項2】
前記取付脚の先端を溶融させる端面に凹部を形成することを特徴とする請求項1に記載のポインティングスティック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部の傾倒操作によりカーソル操作が可能なポインティングスティックに関し、特にノート型コンピュータ(ノートパソコン)やゲーム機などに用いられ、小型化および低背化に好適なポインティングスティックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばノートパソコンの普及に伴い、そのディスプレイ上のカーソル移動においてポインティングスティックが用いられるようになっている。このようなノートパソコンは、ディスプレイ上のカーソルを移動する際にマウスを用いる必要がないので、作業スペース上の観点から省スペース化が図られ、特に、飛行機や電車等の移動中に用いる場合に使い勝手が良いとされている。
【0003】
従来から、移動中の狭い車内での使用や携帯上の利便性の観点から、ノートパソコンなどの小型化が産業界から強く要請されていた。これに伴い、ノートパソコンなどに搭載するポインティングスティックの設置スペースもより狭いものになっていた。
【0004】
係る事情から、小型化に好適な入力装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−246860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ノートパソコンを始め携帯型ゲーム機や携帯電話などの携帯用機器において、小型化に加え低背化への需要者要求が目覚ましく、これら小型化や低背化の要求が産業界からますます強く提起されてきている。
【0007】
このような状況において、ノートパソコンなどに搭載されるポインティングスティックも、さらなる小型化や低背化に応える必要が生じている。
【0008】
一方、係る小型化や低背化を追求すると、ポインティングスティックはノートパソコンなどの携帯用機器を構成する一要素であるため、その部品はさらに小さくなる傾向にある。そのため、ポインティングスティックを構成する各部品はさらに小さくなり、組み立てに困難性を伴ってきている。特に、ポインティングスティックの組み立てにおいては、操作部を取付部材に固定するときに樹脂製材料の操作部を熱溶着させて固定する手法が取られる場合がある。係る場合は組み立て作業者により溶着後の潰し形状に誤差を生じ、統一した高さにポインティングスティックを組み立てることができないという問題が指摘されている。このため、ノートパソコンの低背化が中々実現できなかったり、また、ポインティングスティックの設置スペースも小さな限られた領域であることに起因して、ノートパソコンの組み立て作業において、ポインティングスティックが他の部品と干渉してしまったりする場合もあった。
【0009】
本発明の目的は、前述したような課題に対し発明者らが鋭意工夫して、低背化を実現しかつ組み立て性に優れたポインティングスティックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のポインティングスティックは、
情報入力装置の画面上に表示されるカーソルの移動操作を行う操作部と、
該操作部を立設可能に取り付ける取付部を備えるポインティングスティックにおいて、
前記ポインティングスティックの操作部は、スティックと、当該スティックを支持する基台とを有し、前記基台には前記スティックの動きに応じて抵抗値が変わるひずみゲージが配置され、
前記基台には取付脚が突出して設けられており、ポインティングスティック組み立て時において前記取付脚を前記取付部に形成されている挿通孔に挿通させるとともに、ポインティングスティック組み立て後において前記取付脚を、前記操作部が立設される面と対向する前記取付部の裏面から突出しないように固定するポインティングスティックであって、
前記取付脚は樹脂材料からなり、ポインティングスティック組み立て時に該取付脚の先端を溶融させて前記取付部に溶着固定させる場合において、前記溶融された樹脂材料が収まるように、前記挿通孔の一端側は前記取付部裏面に向けて漸次拡径する面取り部が形成され、
前記面取部が形成された溶着固定部の前記操作部の軸心方向に対応する距離は、前記ポインティングスティックに作用する操作力に基づき前記操作部に発生する引っ張り力に対して前記溶着固定部が剥離しないために必要とされる距離となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載のポインティングスティックがこのような構成を有することで、ポインティングスティックの低背化及び組み立て性の向上を実現することができる。
【0013】
また、上記ポインティングスティックがこのような構成を有することで、ポインティングスティックの低背化及び組み立て性の向上を実現することに加えて、ポインティングスティック組み立て後の操作耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の請求項に係るポインティングスティックは、請求項1に記載のポインティングスティックにおいて、
前記取付脚の先端を溶融させる端面に凹部を形成することを特徴としている。
【0015】
請求項に記載のポインティングスティックがこのような構成を有することで、ポインティングスティックの低背化及び組み立て性の向上を実現することに加えて、ポインティングスティック組み立て後の操作耐久性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、低背化を実現すると共に組み立て性に優れたポインティングスティックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るポインティングスティックを示す断面図である。
図2図1に示したポインティングスティックの取付部の脚挿通孔近傍を部分的に拡大して示す断面図である。
図3】本実施形態に係るポインティングスティックの作用を説明する説明図である。
図4】従来のポインティングスティックの作用を図3に対応して説明する説明図である。
図5】本実施形態にかかるポインティングスティックの実際の使用態様の一例を拡大して示す断面図(図5(a))及び従来のポインティングスティックの実際の使用態様の一例を拡大して示す断面図(図5(b))である。
図6】本実施形態にかかるポインティングスティックの図5とは異なる実際の使用態様を拡大して示す説明図(図6(a))及び従来のポインティングスティックの図5とは異なる使用態様を拡大して示す説明図(図6(b))である。
図7】従来のポインティングスティックの取付脚が取付部に溶着する前後の実際の状態を拡大して示す断面図である。
図8図7に示した従来のポインティングスティックを操作した際に生じる不具合を説明する説明図である。
図9】本発明の一実施形態に係るポインティングスティックの組み立て工程を示す説明図(図9(a))及び本実施形態の変形例に係るポインティングスティックの組み立て工程を示す説明図(図9(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るポインティングスティックについて説明する。本発明の一実施形態に係るポインティングスティック1は、情報入力装置の画面上に表示されるカーソルの移動操作を行う操作部10と、操作部を立設可能に取り付ける取付部20を備えている。そして、操作部10には取付脚13が突出して設けられており、取付脚13を取付部20に形成されている脚挿通孔21に係合させると共に、ポインティングスティック組み立て後に取付脚13を、操作部10の立設面と対向する取付部20の裏面20bから突出しないように固定している。
【0019】
以下、このポインティングスティックの具体的構成を図面に基づいてより詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るポインティングスティック1を示す断面図である。また、図2は、図1に示したポインティングスティック1の脚挿通孔21の近傍を部分的に拡大して示す断面図である。
【0020】
本発明の一実施形態に係るポインティングスティック1は、ディスプレイを有したノートパソコンに備わっている。そして、このポインティングスティック1は、ノートパソコンのディスプレイに表示されるカーソルの位置決め制御やマウスを用いた場合の左クリック操作に相当するスティック操作の検知を行うようになっている。
【0021】
ポインティングスティック1の操作部10は、スティック11と、スティック11を支持する可撓性の基台12とを有し、可撓性の基台12にはスティック11の動きに応じて抵抗値が変わる(ここでは図示しない)4つのひずみゲージが並列して配置されている。この4つのひずみゲージは、スティック11を操作することで、それぞれ後述するノートパソコンのディスプレイのカーソルを所望の方向に移動させると共に、マウスを用いた場合の左クリック操作に相当するスティック操作を検知するようになっている。また、基台12のスティック突出側と反対面12aからは、本実施形態の場合、ポインティングスティック組み立て時において3本の取付脚13が突出している(図2の二点鎖線参照)。
【0022】
操作部10のスティック11、基台12、及び取付脚13は、例えばABS樹脂などの樹脂材料からなり、各取付脚13の先端を溶融させ、後述する取付部20に形成された面取り部(以下「溶着空間23」とする)に溶融された樹脂材料が収まるようにして、取付部20に溶着固定させるようになっている。
【0023】
また、ポインティングスティック1は、上述したように操作部10を取り付ける十分な強度と剛性を有した取付部20を備えている。ここで取付部20は、本実施形態ではステンレス(SUS)等の金属製の板材からなり、操作部10の3本の取付脚13を挿通させて溶着させる3つの脚挿通孔21を有している。各脚挿通孔21は、溶融前の取付脚13をポインティングスティック組み立て時にそれぞれ余裕をもって挿通させるためにある程度の組み立て公差を有し、取付部20の操作部取り付け側に設けられた貫通孔22と、この貫通孔22に連続して形成され取付部20の操作部取り付け側と対向する側に開口部23aを有する溶着空間23を有している。
【0024】
溶着空間23は、貫通孔22と同芯状に形成されこの貫通孔22との連結部から開口部23aに向かって徐々に拡径した円錐形状の凹み部からなる。即ち、溶着空間23は、その中心軸線周りに周方向全周面にわたって一定の角度をなしたテーパ面23cを有することで貫通孔22の一端から開口部23aに向けて徐々に拡径する面取り部となっている。この溶着空間23の内周面のテーパ角度は、本実施形態の場合、溶着空間23の開口部23aに対して約30度と浅い角度となっている。
【0025】
なお、溶着空間23の深さと貫通孔22の全長の比率は、本実施形態の場合、約2:1となっている。即ち、取付部20の厚み方向で見て操作部10の取り付け側から厚さ約1/3に貫通孔22が形成され、これに連なる操作部10の取付面20aと反対側の裏面から厚さ約2/3に溶着空間23が形成されている。
【0026】
操作部10を取付部20に取り付けるに当たって、操作部10の3本の取付脚13をそれぞれ取付部20の3つの脚挿通孔21に貫通孔22の開口部23aから挿入し、各取付脚13の先端及びその近傍部分を取付部20の3つの脚挿通孔21の溶着空間23の開口部23aから突出させる。(以下、この突出した部位を「溶融前突出部13a」とし、溶融後溶着した部位を「溶着固定部13b」とする。)そして、この各取付脚13の溶融前突出部13aを後述する溶着チップ100(図9(a)参照)を介して溶融させ、取付部20の対向面20bから取付脚が突出しないように溶着空間23に各取付脚13の溶融前突出部13aを収容する。この際、上述した溶着チップ100を介して溶着空間23の内周をなすテーパ面23cに取付脚13の溶融前突出部13aが溶融して溶着固定部13bとなり、この溶着固定部13bが取付部20に均一に接合するようにする。即ち、取付脚13の溶着固定部13bは、溶着空間23のテーパ状をなす面積のかなり大きい内周面全体にわたって周方向に均一な接合力で溶融接合している。
【0027】
続いて、本実施形態に係るポインティングスティック1の従来例に比べて有利な作用について両者を比較しながら説明する。図3は、本実施形態に係るポインティングスティック1の作用を説明する説明図である。また、図4は、従来のポインティングスティック5における作用を説明する図3に対応する説明図である。
【0028】
ここで、各図における力F1は、ポインティングスティック1,5に作用する操作力を示し、力P1はこの力F1に応じてポインティングスティック1,5に発生する引っ張り力を示している。そして、図3における距離b1は、引っ張り力P1に対してポインティングスティック1の溶着固定部13bが剥離しないために必要とされる距離を表している。また、図4における距離a1は、この構成において従来のポインティングスティックに作用する引っ張り力P1の大きさと最も密接に関連する距離を表している。なお、図4において高さh1は、取付部60から突出した取付脚53を溶融した溶着突出部53bの断面円弧状の高さを示している。この高さh1は、ポインティングスティック5の低背化を実現するために必要とされる高さである。
【0029】
そして、図4において操作力F1を与えると引っ張り力P1が生じるが、この際ポインティングスティック5の低背化を図るために高さh1をある程度低くせざるを得ないので、高さh1に対応して引っ張り力P1’に溶着突出部53bが耐え得る高さよりa1の距離が小さくなるため、溶着突出部53bの図中右端の部分が二点鎖線で示すように剥離してしまう。このような剥離現象を回避するために、溶着突出部53bの高さを図中点線で示すようにh2まで高めなければならないが、このような対策を取ると、ポインティングスティック5の低背化の要請に反することになってしまう。
【0030】
一方、図3に示す本実施形態にかかるポインティングスティック1の場合、取付脚13の溶着固定部13bが、溶着空間23のテーパ状をなす面積のかなり大きい内周面全体にわたって周方向に均一な接合力で溶融接合しているので、図3における短い距離b1を確保するだけで、取付部20の操作部側との反対面から溶着固定部13bを突出させずに済む。これによって、ポインティングスティック1の低背化の要請に応じることができる。
【0031】
続いて、本実施形態に係るポインティングスティック1の第2の作用を従来のポインティングスティック5と比較して説明する。図5(a)は、本実施形態に係るポインティングスティック1の操作部10が立設される面と対向する取付部20の裏面(反対面)(以下、単に「対向面20b」とする)の回路基板90を当接させた状態を示している。本実施形態にかかるポインティングスティック1の場合、上述したように取付脚13の溶着固定部13bが、溶着空間23のテーパ状をなす面積のかなり大きい内周面全体にわたって周方向に均一な接合力で溶着接合しているので、同図から明らかなように、本実施形態に係るポインティングスティック1の操作部10の取付脚13は、対向面20bから突出させることなく、操作部10を取付部20にしっかりと固定させた状態を保ちながら、対向面20bに回路基板90をぴったりと当接させることができる。これによって、ポインティングスティック1の低背化、ひいては、このポインティングスティック1が搭載される機器の低背化を実現することが可能となる。
【0032】
また、図5(b)は従来のポインティングスティック5の操作部50が立設される面と対向する取付部60の裏面(反対面)(以下、単に「対向面60b」とする)と回路基板90を当接させた状態を示している。同図からも明らかなように、操作部50の取付脚53の溶着突出部53bが対向面60bから下方に突出しているため、この部分の逃げるための空間として逃げ孔91を回路基板上に形成しなければならない。そのため、回路基板90の製造コストがその分高くなると共に、溶着突出部53bと回路基板90とが両者の組み付け時に干渉しないように余裕を持った空間を確保しなければならず、この空間に対応する部分が回路基板90の配線パターン(ここでは図示せず)のデッドスペースになってしまい、配線パターンの自由度が低下してしまう。
【0033】
一方、本実施形態に係るポインティングスティック1の場合、上述したように取付脚13の溶着固定部13bの端面13cにも回路基板90を当接させることができるので、回路基板90の配線パターンのデッドスペースもなくなり、配線パターン設計の自由度が向上する。
【0034】
続いて、本実施形態にかかるポインティングスティック1の従来例に係るポインティングスティック5に比べて有利な第3の作用について両者を比較しながら説明する。図6は、本実施形態にかかるポインティングスティック1の取付部20の下側にコンデンサ等の表面実装部品92を実装した回路基板90を配置した状態を示す説明図(図6(a))及び従来のポインティングスティック5の取付部60の下側にコンデンサ等の表面実装部品92を実装した回路基板90を配置した状態を示す説明図(図6(b))である。これらの図面を比較すると明らかなように、両者の取付部20,60と回路基板90との間には上述した表面実装部品92を実装するための隙間80が設けられているが、本実施形態の場合、取付脚13の溶着固定部13bの端面13cに位置するように表面実装部品92を回路基板90上に配置することができる。そのため、回路基板90上であってこの取付脚13の端面13cに対応する領域を表面実装領域として有効に利用することができる。
【0035】
その一方、従来のポインティングスティック5は、取付脚53の溶着突出部53bが回路基板90の表面実装部品配置側に突出しているので、この溶着突出部53bに回路基板90及び表面実装部品92が干渉しないようにする必要がある。その結果、取付部60の、溶着突出部53bに対応する部分及びその近傍領域がデッドスペースなってしまい、部品の高密度実装を妨げる。また、組み立て作業に慣れない初心者がポインティングスティック5の組み立て作業を行う際に、回路基板90に実装された表面実装部品92を取付部60の対向面60bから取付脚53の突出した溶着突出部53bにぶつけてしまい、表面実装部品92が回路基板90から剥離したり表面実装部品92自体の故障を招いたりする虞もある。
【0036】
一方、本実施形態にかかるポインティングスティック1の場合、上述したように取付脚13の溶着固定部13bが取付部20の回路基板90と対向する対向面20bから突出していないので、上述した従来例に係るポインティングスティック5の組み立て時の不具合が生じるようなことがない。
【0037】
続いて、本実施形態に係るポインティングスティック1の第4の作用を従来のポインティングスティック5と比較して説明する。図7は従来のポインティングスティック5の取付脚53が取付部60に溶着突出部53bとして溶着させる前後の実際の状態を拡大して示す断面図である。また、図8は、図7に示した従来のポインティングスティック5を操作した際に生じる不具合を説明する説明図である。図7に示すように、従来のポインティングスティック5は、その組立性向上のための組立公差として、操作部50の取付脚53の外径よりも脚貫通孔61の内径の方がある程度大きく形成されている。従って、図7に示すように、取付脚53を溶融した後、溶着突出部53bは、図7の二点鎖線で示すように、対向面60bに接合するように形成される。
【0038】
このような形成の仕方によると、操作部50の基台52が当接する取付部60の当接面60aと溶着突出部53bの上述した取付部60の対向面60bとの間で生じる挟持力によって取付部60を挟み込んだ状態で操作部50が取付部60に取り付けられた状態となる。
【0039】
このような取り付け状態によると、図8に示すように、操作部50のスティック51に力F1を長期に亘って加え続けると、上述した挟持力が弱まり、取付脚貫通孔内の組立公差分に沿ってスティック51が力F1の作用方向にずれたりしてしまう(図8における寸法d参照)。このような現象が起こると、使用者がスティック51を操作するごとに操作方向にスティック51のこのような若干のずれ現象が生じただけでも、使用者に違和感を与えるようになって好ましくない。
【0040】
一方、本実施形態に係るポインティングスティック1の場合、溶着空間23のテーパ面23cに溶着固定部13bがしっかりと接合している。そのため、上述のようなポインティングスティック1の組み付け性向上のための脚挿通孔21の内径と取付脚13の外径との間に若干の組付公差を有していても、上述した従来例のポインティングスティック5のようなずれを生じることがない。従って、本実施形態にかかるポインティングスティック1を長期に亘って使用しても上述したような従来例のポインティングスティック5が使用者に与える違和感をこのポインティングスティック1が使用者に与えることはない。
【0041】
続いて、本実施形態に係るポインティングスティック1の取付脚13の溶着方法及び本実施形態の変形例に係るポインティングスティックの取付脚13’の溶着方法について説明する。図9(a)は、本発明の一実施形態に係るポインティングスティック1の取付脚13の溶着方法である。図9(a)において、取付部20から突出した溶融前の取付脚13に向かって(図中矢印方向参照)加熱した円筒状の溶着チップ100を押し付ける。これによって、取付部20から突出した取付脚13の溶融前突出部13a(図2参照)が溶着空間23に収容されると共に、溶着チップ100の押し付け力によって溶着固定部13bのテーパ状の外周部は溶着空間23の周面を形成するテーパ面23cに全周に亘ってしっかりと溶着する。テーパ面23cは上述したようにテーパ角度が浅いため、その部分の面積が大きく取付脚13を取付部20にしっかりと溶着させることができる。
【0042】
一方、図9(b)に示した本実施形態の変形例の場合、溶着チップ200の先端にチップ本体210よりも縮径した同心円状の突出部220が形成されている。そして、この溶着チップ200の軸線を取付脚13’の軸線と一致させながら同図の矢印に示すように取付部20からの溶融前突出部13aに押し付けることによって、図9(a)のような形状に加えて溶着固定部13b’の中央部に凹み部14が形成される。このような凹み部14が形成されるように、溶着チップ200の突出部220を溶融前突出部13aの先端に押し付けることによって、溶融された樹脂がテーパ面23cに向かって、より充填され易くなるため、溶着固定部13bのテーパ状の外周部を溶着空間23の一部をなすテーパ面23cの全周に亘ってよりしっかりと溶着させることができる。
【0043】
なお、変形例に係る溶着チップ200の突出部220は、図9(b)に示した形状に限定されることはない。具体的には、取付脚の溶着固定部をテーパ面の全周に亘って周方向均等な力で押し付けるような形状であれば、例えば円錐状や半球状の形状をなした突出部をなしても良い。このような突出部によっても同様な上述した作用と同様の作用を持って取付脚の溶着固定部を取付部のテーパ面に全周に亘ってしっかりと取り付けることができる。
【0044】
また、本発明においてポインティングスティックの操作部は樹脂材料に限定されず、金属性材料であっても良い。ただし、この場合は、取付脚を取付部の面取り部(本実施形態における「溶着空間」に相当する部分)カシメて固定することになる。取付部の対向面から取付脚が飛び出さないようにカシメることにより、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
また、上述の実施形態において記載した材質、形状、寸法、個数はあくまで一例として挙げたものであり、本発明の範囲を逸脱しない限り、他の材質、形状、寸法、個数を適宜選択可能であることは言うまでもない。
【0046】
また、本実施形態においては、本発明をノート型パソコンに適応したが、必ずしもこれに限定されず、携帯型ゲーム機の操作スティックなどに適用しても構わない。
【符号の説明】
【0047】
1,5 ポインティングスティック
10 操作部
11 スティック
12 基台
12a 反対面
13,13’ 取付脚
13a 溶融前突出部
13b 溶着固定部
13c 端面
13b’ 溶着固定部
14 凹み部
20 取付部
20a 取付面
20b 対向面
21 脚挿通孔
22 貫通孔
23 溶着空間
23a 開口部
23c テーパ面
50 操作部
51 スティック
52 基台
53 取付脚
53b 溶着突出部
60 取付部
60a 当接面
60b 対向面
61 脚貫通孔
90 回路基板
91 逃げ孔
92 表面実装部品
100,200 溶着チップ
210 チップ本体
220 突出部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9